説明

サブフレーム

【課題】一部を車両中心側の固定点より上側に配置した場合でも、衝突時にボディ下方へ屈曲するサブフレームを提供する。
【解決手段】車長方向に配置された左右1対のサイドメンバの下方に取り付けられ、左右1対のサイドパイプ11を有するサブフレーム10であって、サイドパイプ11の水平部分11b〜11dの一部に車両中心側のボルト固定点FPより位置が高い突設部分11cを設けたサブフレーム10において、突設部分11cを設ける際に形成されたサイドパイプ10の折部であって、突設部分11cより車両中心側の折部の前後に跨がって、一方の端部がボルト固定点FPより低い位置となる補強部材17を設け、補強部材17により衝突時における折れ点BPをボルト固定点FPより低い位置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体構造を構成するサブフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体構造(シャーシ部材)として、車両側部には、左右1対のサイドメンバが車長方向に沿って配置されており、例えば、車両前側においては、サイドメンバの下方にサブフレームが取り付けられている。サブフレームは、左右1対のサイドパイプとサイドパイプ同士を連結する2本のクロスパイプからなり、上面視において井桁形状となっている。このようなサブフレームの上に、エンジン、駆動装置、操舵装置等が取り付けられる。
【0003】
従来のサブフレームにおいては、車長方向における衝突の衝撃を吸収するため、サイドパイプに折部(折れ角)を設け、サイドメンバ(ボディ側)への後端側(車両中心側)の固定点より折部(折れ角)を下側又は水平に配置し、衝突時にサブフレームを下方に屈曲させて、サブフレームをボディ下側へ逃がすようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−018778号公報
【特許文献2】特開2009−073243号公報
【特許文献3】特開2005−186727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両レイアウトによっては、サブフレームの一部を後端側(車両中心側)の固定点より上側に配置したい場合がある。このような場合、サイドパイプの折部(折れ角)も後端側(車両中心側)の固定点より上側となる場合があり、その場合、衝突時にサブフレームが上方に屈曲してしまい(後述の図5参照)、ボディ側の部材、例えば、ダッシュパネル等と干渉してしまう。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、一部を車両中心側の固定点より上側に配置した場合でも、衝突時にボディ下方へ屈曲するサブフレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する第1の発明に係るサブフレームは、
車長方向に配置された左右1対のサイドメンバの下方に取り付けられ、左右1対のサイドパイプを有するサブフレームであって、前記サイドパイプの水平部分の一部に車両中心側の固定点より位置が高い突設部分を設けたサブフレームにおいて、
前記突設部分を設ける際に形成された前記サイドパイプの折部であって、前記突設部分より車両中心側の折部の前後に跨がって、一方の端部が前記固定点より低い位置となる補強部材を設け、当該補強部材により衝突時における折れ点を前記固定点より低い位置としたことを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する第2の発明に係るサブフレームは、
上記第1の発明に記載のサブフレームにおいて、
前記サイドパイプに取り付ける前記補強部材の前記一方の端部の面を、前記サイドパイプの軸線に対して垂直に形成したことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第3の発明に係るサブフレームは、
上記第1又は第2の発明に記載のサブフレームにおいて、
サスペンションを取り付けるブラケットを前記突設部分に設けると共に、前記補強部材の他方の端部を前記ブラケットに取り付けたことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第4の発明に係るサブフレームは、
上記第3の発明に記載のサブフレームにおいて、
前記ブラケットと前記補強部材を一体としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サイドパイプの一部を車両中心側の固定点より上側に配置した場合でも、サイドパイプの折部の部分に補強部材を設け、衝突時におけるサイドパイプの折れ点を車両中心側の固定点より下側にしたので、車長方向からの衝突時にサイドパイプがボディ下方に屈曲し、ボディ下側へ逃げることになり、衝突安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るサブフレームの実施形態の一例を示す斜視図である。
【図2】(a)は、図1に示したサブフレームの上面図であり、(b)は、図1に示したサブフレームの側面図である。
【図3】本発明に係るサブフレームに取り付ける補強部材を示す図であり、(a)は、その斜視図、(b)は、その上面図、(c)は、その側面図である。
【図4】補強部材取付前のサブフレームを示す図であり、(a)は、その上面図、(b)は、その側面図である。
【図5】図4に示した補強部材取付前のサブフレームにおける衝突実験結果を示す側面図である。
【図6】図1〜図2に示した補強部材取付後のサブフレームにおける衝突実験結果を示す側面図である。
【図7】図1〜図2に示した補強部材取付後のサブフレームにおける衝突実験結果を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図7を参照して、本発明に係るサブフレームの実施形態を説明する。なお、ここでは、車両前側のサブフレームを図示して説明するが、本発明は、車両後側のサブフレームにも適用可能である。
【0014】
(実施例1)
図1は、本実施例のサブフレームを示す斜視図であり、図2(a)は、その上面図、図2(b)は、その側面図である。又、図3(a)は、サブフレームに取り付ける補強部材の斜視図であり、図3(b)は、その上面図、図3(c)は、その側面図である。又、本実施例の構成を説明するため、補強部材取付前のサブフレームとして、図4(a)に上面図、図4(b)に側面図を示している。加えて、本実施例の効果を説明するため、図5には、図4に示した補強部材取付前のサブフレームにおける衝突実験結果の側面図を、図6〜図7には、図1〜図2に示した補強部材取付後のサブフレームにおける衝突実験結果の側面図及び下面図を図示している。
【0015】
本実施例のサブフレーム10は、主に、左右1対のサイドパイプ11とサイドパイプ11同士を連結する2本のクロスパイプ12a、12bからなり、上面視において井桁形状となっている。図示は省略しているが、エンジン、駆動装置、操舵装置等がサブフレーム10の上に取り付けられる。又、エンジン、駆動装置、操舵装置等を取り付けるための多数のブラケットがサブフレーム10に設けられるが、ここでは、主なブラケットのみ図示している。
【0016】
サイドパイプ11、クロスパイプ12a、12bは、例えば、円筒形状(パイプ形状)の鋼管から形成されており、断面中空となっている。1対のサイドパイプ11は、左右のサイドメンバ各々の下方に、サイドメンバと略同一の車長方向に沿って配置されており、互いに左右対称の形状となっている。クロスパイプ12a、12bは、車幅方向に配置されており、溶接等により固定されて、左右のサイドパイプ11同士を連結している。又、後側のクロスパイプ12bの両端には、サイドパイプ11との間に補強用のステイ15が設けられている。ステイ15としては、例えば、平板形状の部材にビード等を施すことで、補強の機能を果たしている。
【0017】
サイドパイプ11は、側面視において、略L字形状となるように曲げ加工されており、主に、鉛直上方に立ち上がる鉛直部11aと略水平となる水平部11b〜11dとからなり、鉛直部11aが車両前側に配置されている。サイドパイプ11の前端部には固定ブラケット13が取り付けられており、この固定ブラケット13に挿通孔14aが設けられている。又、サイドパイプ11の後端部にも挿通孔14bが設けられている。
【0018】
図示は省略しているが、車両の車体構造として、車両側部には、左右1対のサイドメンバが車長方向に沿って配置されている。そして、上述した挿通孔14a、14bにボルトを挿通し、ナットで締結することにより、サイドメンバの下方にサブフレーム10が取り付けられることになる。つまり、挿通孔14aがボディ側(サイドメンバ)への前端側のボルト固定点、挿通孔14bがボディ側(サイドメンバ)への後端側(車両中心側)のボルト固定点となる。ここでは、後述の説明で用いるため、後端側のボルト固定点をFPと呼ぶ。
【0019】
本実施例において、サイドパイプ11の水平部11b〜11dは、全体としては略水平であるが、曲げ加工することにより、中側の水平部11cを上方に突出させ、水平部11b、11dより高い位置としている。なお、以降、水平部11cを突設部11cと呼び、水平部11b、11dと区別する。
【0020】
突設部11cの車両外側の位置には、コの字断面形状のサスペンションブラケット16が取り付けられており、このサスペンションブラケット16にサスペンションのロアアームが取り付けられる。このように、車両レイアウト上、サスペンションのロアアームを高い位置に取り付けたい場合、サスペンションブラケット16を取り付けるサイドパイプ11の水平部分の一部(突設部11c)が高くなる形状としている。
【0021】
又、突設部11cの部分は、互いに、クロスパイプ12b及びステイ15により連結されており、サスペンションを保持するための強度が確保されている。
【0022】
又、上面視において、水平部11dの部分は、車両中心側(車両後方側)から見て、ハの字形状の配置となるように、サイドパイプ11の曲げ加工が行われている。詳細は後述の図7で説明するが、水平部11dがハの字形状の配置となっているので、衝突時には、ボルト固定点FP(挿通孔14b)を回転中心として、サイドパイプ11が屈曲することになる。
【0023】
上述したように、サイドパイプ11を曲げ加工して、突設部11cを設けているため、突設部11cのすぐ後方(車両中心側)に下方への折部(折れ角)が形成される。従って、衝突時における折れ点BP0がこの折部(折れ角)の位置に設定されることになり、その結果、折れ点BP0の位置もボルト固定点FPより高い位置となってしまう(図4(a)、(b)参照)。
【0024】
加えて、本実施例においては、突設部11cにサスペンションブラケット16を設けており、サスペンションブラケット16が、謂わば、補強部材のように機能するので、サスペンションブラケット16のすぐ後方であり、突設部11cのすぐ後方のサイドパイプ11の折部(折れ角)が衝突時における折れ点BP0となってしまう。
【0025】
そして、折れ点BP0がボルト固定点FPより高いと、衝突時には、図4(b)、図5に示すように、折れ点BP0が上方に屈曲してしまう。
【0026】
そこで、本実施例においては、突設部11cの後方(車両中心側)の折部の前後に跨がって、一方(車両中心側)の端部がボルト固定点FPより低い位置となる補強部材17を設けている。
【0027】
例えば、補強部材17は、その一方の端部を円筒状のサイドパイプ11の外周面に取り付けており、その他方の端部をコの字断面形状のサスペンションブラケット16に取り付けており、サスペンションブラケット16を後方に延長するように設けられている。
【0028】
更に具体的には、補強部材17は、基本的には、コの字断面形状をしており、図3に示すように、サスペンションブラケット16に溶接接合する第1接合部17aはサスペンションブラケット16の形状に合わせて形成されている。一方、サイドパイプ11の外周に溶接接合する第2接合部17bにおいて、その接合部分は、サイドパイプ11の外周面に取り付けられるように、サイドパイプ11の形状に合わせて、半円形に切り欠きされており、更に、第2接合部17bを形成する面は、溶接接合する部分のサイドパイプ11の軸線に対し、直角又は略直角となるように折り曲げて形成されている。つまり、補強部材17の後方(車両中心側)の端部において、サイドパイプ11周囲の実質的な断面を急変させる形状としている。
【0029】
このようにして、補強部材17の一方の端部(第2接合部17b)はサイドパイプ11の外周に溶接接合されて、補強部材17の他方の端部(第1接合部17a)はサスペンションブラケット16に溶接接合され、補強部材17が、突設部11cのすぐ後方の折部(折れ角)の前後に跨がるように配置されている。そして、サイドパイプ11とサスペンションブラケット16、補強部材17を含めた断面の面積は、サイドパイプ11の軸線に対して直角又は略直角に接合する第2接合部17bの部分で急変している。そのため、補強部材17のすぐ後方に、新たな折れ点BPが設定されて、その位置がボルト固定点FPより低い位置となる(図2(a)、(b)参照)。
【0030】
ここで、補強部材17の有無による変形モードの相違を、図5〜図7を参照して説明する。
【0031】
図5は、図4に示すサブフレーム10(補強部材17無し)における衝突実験結果を示す側面図である。図5に示すように、車長方向からの衝撃が加わると、サイドメンバ18がその方向に圧縮され、潰れるように変形する。サイドメンバ18の変形と共にサイドパイプ11も変形することになり、鉛直部11aはサイドメンバ18により後方へ屈曲するが、水平部11b〜11dにおいては、折れ点BP0で上方へ屈曲することになる。この場合、サブフレーム10の近傍に設けられているダッシュパネル19にサブフレーム10がぶつかり(図5中の領域A参照)、車体(特に車室)を大きく変形させてしまう。
【0032】
一方、図6〜図7は、図1〜図2に示すサブフレーム10(補強部材17有り)における衝突実験結果を示す側面図及び下面図である。図6に示すように、車長方向からの衝撃が加わると、サイドメンバ18がその方向に圧縮され、潰れるように変形し、サイドメンバ18の変形と共にサイドパイプ11の鉛直部11aもサイドメンバ18により後方へ屈曲する。一方、サイドパイプ11の水平部11b〜11dにおいては、補強部材17が設けられているので、折れ点BPで下方へ屈曲することになる。この場合、サブフレーム10の近傍に設けられているダッシュパネル19にサブフレーム10が干渉することはなく(図6中の領域B参照)、車体(特に車室)を変形させることがなくなる。
【0033】
又、図7に示すように、サブフレーム10の各サイドパイプ11は、ボルト固定点FPを回転中心とし、車両内側かつ後方に回転するように、U字形状に屈曲することになる。
【0034】
このように、補強部材17により、断面面積が急変する位置を設け、折れ点BPがボルト固定点FPより下方の位置に移動するので、サイドパイプ11が下側に逃げるように屈曲することになる。この結果、衝突時におけるサイドパイプ11と車体との干渉を回避し、近傍に設けられているダッシュパネルの変形を抑制して、衝突安全性を向上させることができる。
【0035】
なお、本実施例においては、サスペンションブラケット16と補強部材17とを独立した部材としているが、サスペンションブラケット16と補強部材17は一体で形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係るサブフレームは、前側の車体構造として好適なものであるが、後側の車体構造としても適用可能である。又、エンジン車だけでなく、電気自動車(EV車)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 サブフレーム
11 サイドパイプ
12a、12b クロスパイプ
13 固定ブラケット
14a、14b 挿通孔
15 ステイ
16 サスペンションブラケット
17 補強部材
18 サイドメンバ
19 ダッシュパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車長方向に配置された左右1対のサイドメンバの下方に取り付けられ、左右1対のサイドパイプを有するサブフレームであって、前記サイドパイプの水平部分の一部に車両中心側の固定点より位置が高い突設部分を設けたサブフレームにおいて、
前記突設部分を設ける際に形成された前記サイドパイプの折部であって、前記突設部分より車両中心側の折部の前後に跨がって、一方の端部が前記固定点より低い位置となる補強部材を設け、当該補強部材により衝突時における折れ点を前記固定点より低い位置としたことを特徴とするサブフレーム。
【請求項2】
請求項1に記載のサブフレームにおいて、
前記サイドパイプに取り付ける前記補強部材の前記一方の端部の面を、前記サイドパイプの軸線に対して垂直に形成したことを特徴とするサブフレーム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のサブフレームにおいて、
サスペンションを取り付けるブラケットを前記突設部分に設けると共に、前記補強部材の他方の端部を前記ブラケットに取り付けたことを特徴とするサブフレーム。
【請求項4】
請求項3に記載のサブフレームにおいて、
前記ブラケットと前記補強部材を一体としたことを特徴とするサブフレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−148728(P2012−148728A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10505(P2011−10505)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】