説明

サリチル酸誘導体、その製造法および農園芸用病害防除剤

下記の式(I・II)のサリチル酸誘導体、その製造法およびサリチル酸誘導体またはその塩を有効成分とする農園芸用病害防除剤。 【化1】 (式中、Xは、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルキル基またはハロゲン原子を表し、mは0から3の整数を表す。mが2以上の時は、Xは同一もしくは異なっていてもよい。Rは、水素原子または低級アルキル基を表し、Rは、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、ジメチルアミノ基、低級アルキル基または低級ハロアルキル基を表す。) 上述の式(I・II)で示されるサリチル酸誘導体およびその塩は、農園芸用病害防除剤の有効成分として利用でき、その農園芸用病害防除剤は、優れた病害防除効果を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サリチル酸誘導体、その製造法およびサリチル酸誘導体を有効成分として含有する農園芸用病害防除剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サリチル酸誘導体の農園芸用殺菌剤としての使用が提案されている(特許文献1及び2)。
【0003】
また、2,6−ジクロロ−4−ピリジンメタノール及びその安息香酸エステル誘導体の農薬としての使用が提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平8−291110公報
【特許文献2】特開平10−29961公報
【特許文献3】特開平11−171864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、上記の実情に鑑み、人畜に対する毒性が低く、取り扱い上での安全性が高く、且つ、広汎な植物病害に対して優れた防除効果を示す農園芸用病害防除剤を開発するために、下記の式(I・II)のサリチル酸誘導体およびその塩を合成し、それらの病害防除効果の検討を行った。したがって、本発明の目的は、サリチル酸誘導体、その製造方法およびサリチル酸誘導体またはその塩を有効成分とする農園芸用病害防除剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、かかる課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、式(I・II)で示されるサリチル酸誘導体が新規化合物であり、農園芸用病害防除剤として優れていることを見出し、本発明の完成に至ったものである。
【0006】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、本発明の第1の要旨は、下記の式(I・II)のサリチル酸誘導体またはその塩を有効成分として含有する農園芸用病害防除剤に存する。
【0007】

【0008】
式中、Xは、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルキル基またはハロゲン原子を表し、mは0から3の整数を表す。mが2以上の時は、Xは同一もしくは異なっていてもよい。Rは、水素原子または低級アルキル基を表し、Rは、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、ジメチルアミノ基、低級アルキル基または低級ハロアルキル基を表す。
【0009】
本発明の第2の要旨は、下記の式(III)の2−ヒドロキシ安息香酸誘導体と式(IV)の置換ベンジルハライドとを反応させることを特徴とする、式(II)のサリチル酸エステルの製造方法、及び、エステル部分を加水分解することを特徴とする、式(I)の置換サリチル酸の製造方法に存する。
【0010】

【0011】
式中、Xは低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルキル基またはハロゲン原子を表し、mは0から3の整数を表す。mが2以上の時には、Xは同一もしくは異なっていてもよい。Rは、低級アルキル基を表す。Rは、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、ジメチルアミノ基、低級アルキル基または低級ハロアルキル基を表し、Yは、ハロゲン原子を表す。
【0012】
本発明の第3の要旨は、上記式(I・II)のサリチル酸誘導体またはその塩に存する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、式(I・II)のサリチル酸誘導体およびその塩は農園芸用病害防除剤の有効成分として利用でき、その農園芸用病害防除剤は、優れた病害防除効果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のサリチル酸誘導体(I・II)(以下、「本発明化合物」と略称することがある)の置換基の定義の内、上位概念で示した置換基には、次の好ましい置換基が包含されている。Xの低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、1−メチルエチル基、1,1−ジメチルエチル基およびプロピル基が挙げられ、低級アルコキシとしては、メトキシ、エトキシ、1−メチルエチルオキシ、1,1−ジメチルエチルオキシ及びプロピルオキシが挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、低級ハロアルキル基としては、トリフルオロメチル基が挙げられる。好ましい整数mは、0及び1である。R及びRの低級アルキル基としては、メチル基、エチル基および1−メチルエチル基が挙げらる。Rのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、1−メチルエチル基、プロピル基および2−メチルプロピル基が挙げられ、低級ハロアルキル基としては、トリフルオロメチル基が挙げられる。サリチル酸誘導体(I・II)の塩としては、ナトリウム、カリウム、銅または1−メチルエチルアミンを含む塩が挙げられる。置換基の定義中、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルキル基において、例示した基を含む炭素数1〜4個の炭素鎖を含む基が好ましい。また、低級ハロアルキル基とは、低級アルキル基の1個以上の水素原子がハロゲン原子、好ましくはフッ素原子で置換されている基を示す。
【0015】
次に、サリチル酸誘導体(I・II)の具体例を表1に示す。
【0016】


【0017】
表中、化合物(II−11)における5−Clは、5位に結合した塩素原子を示す。化合物(II−20)における3,5−Clは、3位と5位とに塩素原子が結合していることを示す。すなわち、ハイフン(−)の前の数字は結合位置を示し、ハイフン(−)の後は置換基と、同種の置換基が2個以上ある時の個数を示す。化合物(II−1)におけるHは、無置換であることを示す。この規則は、置換基Xmにおいても使用している。
【0018】
本発明の製造方法で使用する希釈剤としては、下記のものを例示し得る。水、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などの有機酸、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジグリム、ジオキサン等のエーテル類、二硫化炭素、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、無水酢酸、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド等である。
【0019】
塩基としては、次のものを例示できる。炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム等のアルカリ金属のカルボン酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の酸化物、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム等のアルカリ土類金属、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド、水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化合物、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、フェニルリチウム等のアルカリ金属の有機金属化合物、メチルマグネシウムアイオダイド、エチルマグネシウムブロマイド、n−ブチルマグネシウムブロマイド等の有機グリニャール試薬、アルカリ金属の有機金属化合物や、グリニャール試薬と銅(I)塩から調製できる有機銅化合物、リチウムジイソプロピルアミド等のアルカリ金属アミド、アンモニア水、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水酸化アンモウニウム類、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、ベンジルアミン、エタノールアミン、ジメチルアミン、ベンジルメチルアミン、ジベンジルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ピリジン等の有機アミン類である。
【0020】
サリチル酸誘導体(I・II)の金属錯塩の製造に使用する第1遷移元素の塩としては、酢酸塩、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩(塩酸塩、硝酸塩または硫酸塩の3種類の塩を使用する時には、アルカリ金属の酢酸塩、炭酸塩または水酸化物を同時に使用するのが有利である)が挙げられる。また、酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硝酸、硫酸などの無機酸およびギ酸、酢酸、酪酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸などを例示し得る。
【0021】
置換サリチル酸(I)の前駆体であるサリチル酸エステル(II)は、2−ヒドロキシ安息香酸誘導体(III)と2,6−ジクロロ−4−ハロゲノメチルピリジン(IV)とを塩基の存在下、希釈剤中で有利に製造できる。本発明の製造方法を実施するには、例えば、2−ヒドロキシ安息香酸誘導体(III)を前掲の希釈剤に溶かしたものに、必要に応じ、上掲の塩基の存在下に、2,6−ジクロロ−4−ハロゲノメチルピリジン(IV)を通常0.5〜1.5当量加えるか、又は、逆に2,6−ジクロロ−4−ハロゲノメチルピリジン(IV)を希釈剤に溶かしたものに、2−ヒドロキシ安息香酸誘導体(III)と塩基とを加えて反応させるとよい。この際の反応温度は、溶媒としての上記希釈剤の凝固点から沸点までの任意の温度を適用し得るが、実際上は0〜100℃の範囲の温度で反応を行うことが好ましい。また、反応時間は通常1〜10時間の範囲であって、攪拌下に反応を行うことが望ましい。上記反応の終了後、反応により得られた反応混合物を冷却した後、酢酸エチル、クロロホルム、ベンゼン等の有機溶剤により抽出して有機層を分離し、次いで該有機層を水洗して乾燥した後、溶媒を減圧下に留去し、得られた残渣を精製処理することにより、サリチル酸エステル(II)を得ることができる。なお、精製処理は、再結晶またはシリカゲルカラムクロマトグラフィー等に付すことにより行い得る。
【0022】
サリチル酸エステル(II)のエステル部分の加水分解は、次の様にして行うことが出来る。含水アルコールに、サリチル酸エステル(II)とアルカリ金属水酸化物を加えて、通常20〜100℃又は20℃〜溶媒の還流点で、通常1〜20時間還流する。反応後、反応混合物を酸性にし、析出物を濾取するか、溶媒を留去して、残渣に水を加えて良くかき混ぜてから、不溶分を濾取する。ついで、濾物を再結晶して、置換サリチル酸(I)を得ることが出来る。
【0023】
この様にして得られる置換サリチル酸(I)は酸性プロトンを有するので、水素原子が適当な陽イオンで置換された塩を形成しうる。これらの塩は、一般に、金属塩、特にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または銅を含む第1遷移元素との錯塩、又は、場合によっては、アンモニウム塩、アルキル化アンモニウム塩または有機のアミン塩であり、そして、好ましくは、例えば、水、メタノール又はアセトンのような溶媒中で通常20〜100℃の温度において製造できる。
【0024】
次に、本発明に係る前記式(I・II)のサリチル酸誘導体の農園芸用病害防除剤の活性成分としての有用性について説明する。本発明のサリチル酸誘導体(I・II)は下記に示す広汎な植物病害に対して防除効果を呈する。例えば、イネいもち病(Pyricularia oryzae)、イネごま葉枯病菌(Cochliobolus miyabeanus)、イネばか苗病菌(Gibberella fujikuroi)、イネ小黒菌核病菌(Helminthosporium sigmoideum)、イネ紋枯病菌(Rhizoctonia solani)、種々の作物を犯す灰色かび病(Botrytis cinerea)、菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)、スイカつる割病菌(Fusarium oxysporum f.sp.niveum)、キュウリつる割病菌(Fusarium oxysporum f.sp.cucumerinum)、ウリ類炭そ病菌(Colletotrichum lagenarium)、テンサイ褐斑病菌(Cercospora beticola)、ダイズ紫斑病菌(Cercospora kikuchii)、モモ灰星病菌(Sclerotinia cinerea)、リンゴ斑点落葉病菌(Alternaria alternata(mali))、ナシ黒斑病菌(Alternaria alternata(kikuchiana))、ブドウ晩腐病菌(Glomerella cingulata)、キュウリべと病(Pseudoperonosora cubensis)、トマト疫病(Phytophthra infestans)、キュウリ灰色疫病菌(Phytophthora capsici)、イネ苗立枯病菌(Pythium aphanidermatum)等である。
【0025】
サリチル酸誘導体(I・II)を上述のごとき農園芸用病害防除剤として適用するには、化合物をそのまま使用することも出来るが、通常は製剤補助剤と共に、粉剤、水和剤、粒剤、乳剤などの種々の形態に製剤して使用する。このとき製剤中に、1種または2種以上のサリチル酸誘導体(I・II)が通常0.1〜95%重量、好ましくは0.5〜90%重量%、より好ましくは2〜70重量%含まれる様に製剤する。製剤補助剤として使用する坦体、希釈剤、界面活性剤を例示すれば、固体坦体として、タルク、カオリン、ベンナイト、珪藻土、ホワイトカーボン、クレー等が挙げられ、液体希釈剤として、水、キシレン、トルエン、クロロベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アルコール等が挙げられ、界面活性剤はその効果により使い分けるのがよく、乳化剤として、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられ、分散剤として、リグニンスルホン酸塩、ジブチルナフタリンスルホン酸塩などが挙げられ、湿潤剤として、アルキルスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩などが挙げられる。上記製剤には、そのまま使用するものと水などの希釈剤で所定濃度に希釈して使用するものとがある。希釈して使用する時の本発明化合物の濃度は0.001〜1.0%の範囲が好ましい。また、本発明化合物の使用量は畑、田、果樹園、温室などの農園芸地1ha当り、通常20〜5000g、好ましくは50〜1000gである。これらの使用濃度および使用量は剤形、使用時期、使用方法、使用場所、対象作物などによっても異なるため、上記の範囲にこだわることなく増減することは勿論可能である。さらに、本発明化合物は他の有効成分、例えば、殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、除草剤と組み合わせて使用することもできる。因みに、本化合物はカルボン酸を含有しているので、無機塩類、有機塩類もしくは金属錯塩などの形態でも使用し得る。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を製造例、製剤例、試験例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の製造例に限定されるものではない。なお、NMRスペクトルはTMSを内部標準にして測定し、次記の記号またはこれらを組み合わせた記号で示した。s:一重線、d:二重線、t:三重線、q:四重線、m:多重線、b:ブロードライン、dd:二重二重線、qq:四重四重線
【0027】
製造例1:
<6−クロロ−2−(2,6−ジクロロ−4−ピリジルメトキシ)安息香酸メチルエステル(化合物番号II−4)の製造>
6−クロロサリチル酸メチルエステル0.93gをアセトン50mlに溶かし、炭酸カリウム1.35g、4−クロロメチル−2,6−ジクロロピリジン1.1gを加え8時間加熱還流を行った。反応終了後、反応液に水を注ぎ、酢酸エチルで抽出を行った。有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−300 ヘキサン/酢酸エチル=8/1)で処理して、目的化合物を1.3g得た。この化合物の物性を表2に示す
【0028】

【0029】
製造例2:
<2−(2,6−ジクロロ−4−ピリジルメトキシ)−5−クロロ安息香酸メチルエステル(化合物番号II−11)の製造>
無水アセトン6mlに、5−クロロサリチル酸メチルエステル0.186gを溶解し、炭酸カリウム1.1g、4−ブロモメチル−2,6−ジクロロピリジン0.241gを加え、16時間加熱還流を行った。反応終了後、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水、水で順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、次いで減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付して精製し、目的化合物を0.294g得た。この化合物の物性を表3に示す。
【0030】

【0031】
製造例3:
<2−(2,6−ジクロロ−4−ピリジルメトキシ)−6−ヒドロキシ安息香酸(化合物番号I−2)の製造>
窒素気流下、60%油性水素化ナトリウム0.4gを無水ヘキサンにて洗浄後、無水ジメチルホルムアミド100mlに懸濁させた。氷冷攪拌下、2,6−ジヒドロキシ安息香酸メチルエステル1.68gを加えた後、4−ブロモメチル−2,6−ジクロロピリジン2.65gをジメチルホルムアミド30mlに溶解した溶液を滴下した。1時間後、反応温度を徐々に上げ、温度を30℃程度に保ちながら6時間反応させた。反応終了後、反応駅に水を加え、酢酸エチルを用いて抽出を行った。有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付して精製し、目的化合物のメチルエステルにあたるサリチル酸エステル(化合物番号II−3)を2.3g得た。この化合物の物性を表4に示す。
【0032】

【0033】
得られたサリチル酸エステル0.25gをエタノール30mlに溶解し、水20ml、水酸化ナトリウム0.5gを加えて3時間50℃で加熱を行った。反応終了後、反応液に希塩酸を加え中性にした後、クロロホルムを使用して抽出処理を行った。有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、クロロホルム−メタノールで再結晶して目的化合物0.15gを得た。この化合物の物性を表5に示す。
【0034】

【0035】
上記製造例1〜3に準じた操作で、下記表6〜7の化合物を合成した。これらの化合物の融点およびNMRデータを表6〜7に示す。
【0036】


【0037】


【0038】
製剤例1:
<粉剤>
本発明化合物(化合物番号II−2)3重量部とクレー40重量部とタルク57重量部とを粉砕混合し、散粉として使用する。
【0039】
製剤例2:
<水和剤>
本発明化合物(化合物番号II−3)50重量部とリグニンスルホン酸塩5重量部とアルキルスルホン酸塩3重量部と珪藻土42重量部とを粉砕混合して水和剤とし、水で希釈して使用する。
【0040】
製剤例3:
<粒剤>
本発明化合物(化合物番号II−7)5重量部とベンナイト43重量部とクレー45重量部とリグニンスルホン酸塩7重量部とを均一に混合しさらに水を加えて練り合わせ、押し出し式造粒機で粒状に加工乾燥して粒剤とする。
【0041】
製剤例4:
<乳剤>
本発明化合物(化合物番号II−10)20重量部とポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル10重量部とポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート3重量部とキシレン67重量部とを均一に混合溶解して乳剤とする。
【0042】
試験例1:
<イネいもち病防除効果試験(水面施用)>
水田土を詰めた1/10000aワグネルポットに3葉期のイネ(品種:コシヒカリ)を移植し20〜35日後、製剤例3に準じて調整した粒剤を所定濃度(500g/10a)となる様に水面施用した。薬剤処理10〜20日後に、イネ罹病上で形成させたイネいもち病菌の胞子懸濁液を噴霧接種し、ガラス温室内のビニールトンネル内で高湿度下に保った。接種から10〜20日後に発病面積率(%)を達観で調査し、下記表8の調査基準(中国農試葉いもち調査基準)により、発病度を一試験区あたり全苗について調査し、1ポット当たりの平均発病度から計算式:防除価=(1−処理区発病度/無処理区発病度)×100により防除価(%)を算出した。結果を表9に示す。
【0043】


【0044】

【0045】
試験例2:
<コムギうどんこ病防除効果(茎葉散布)>
角型ポット(1.5cm×2.0cm)を用いて、分げつ期温室内で栽培したコムギ(品種:農林61号)に、製剤例2に準じて調製した水和剤を所定濃度(125g/ha)に水で希釈懸濁し、1000L/haの割合で散布した。薬剤処理10〜20日後、コムギうどんこ病の胞子をふりかけ接種した。その後、ガラス温室内で発病させた。接種後10〜20日目に発病面積率(%)を達観で調査し、下記表10の調査基準により、1ポット当たりの平均発病度から計算式:防除価=(1−処理区発病度/無処理区発病度)×100により防除価(%)を算出した。結果を表11に示す。
【0046】

【0047】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I・II)のサリチル酸誘導体またはその塩を有効成分として含有する農園芸用病害防除剤。

(式中、Xは、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルキル基またはハロゲン原子を表し、mは0から3の整数を表す。mが2以上の時は、Xは同一もしくは異なっていてもよい。Rは、水素原子または低級アルキル基を表し、Rは、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、ジメチルアミノ基、低級アルキル基または低級ハロアルキル基を表す。)
【請求項2】
下記の式(III)の2−ヒドロキシ安息香酸誘導体と式(IV)の置換ベンジルハライドとを反応させることを特徴とする、式(II)のサリチル酸エステルの製造方法。


(式中、Xは、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルキル基またはハロゲン原子を表し、mは0から3の整数を表す。mが2以上の時には、Xは同一もしくは異なっていてもよい。Rは、低級アルキル基を表し、Rは、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、ジメチルアミノ基、低級アルキル基または低級ハロアルキル基を表し、Yは、ハロゲン原子を表す。)
【請求項3】
下記の式(I・II)で表されるサリチル酸誘導体またはその塩。

(式中、Xは、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルキル基またはハロゲン原子を表し、mは0から3の整数を表す。mが2以上の時は、Xは同一もしくは異なっていてもよい。Rは、水素原子または低級アルキル基を表し、Rは、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、ジメチルアミノ基、低級アルキル基または低級ハロアルキル基を表す。)

【国際公開番号】WO2005/023770
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【発行日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513659(P2005−513659)
【国際出願番号】PCT/JP2004/012721
【国際出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】