説明

サルベージ線付菱目溶接金網

【課題】金網帯幅方向両縁の厚さ方向に生じる波打ちが小さいサルベージ線付菱目溶接金網帯を提供する。
【解決手段】網入りガラス板用サルベージ線5付き溶接菱網帯状体であって、サルベージ線5とそれに接する隣り合う2本の金属線3,4との溶接点7,7間のサルベージ線5部分をその中間部分で湾曲するように塑性曲げ変形させることにより、両隣接溶接点7,7間の距離を短くして、網帯状体縁部の隣接金属線の間隔を網帯状体中央部の隣接金属線の間隔に近づけるようにした網入りガラス板用菱網帯状体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築用窓ガラスに用いられる金網入りガラス板を製造するために用いられる金網特にサルベージ線付菱目溶接金網に関する。
【背景技術】
【0002】
金網入りガラス板は、破損時にガラス片が飛び散りにくく飛散防止に優れ、割れたとしても金網に支えられ崩れ落ちることがなく、火災時に類焼を防ぐ働きがあり建築用窓ガラスとして広く用いられる。
【0003】
この金網入ガラス板に封入する金網帯状体としてその長さ方向に対して約45度の斜め方向に所定間隔で平行に配置した多数の直線状の金属線Aの上に、網帯状体の長さ方向に対して約45度で上記金属線Aとは逆の斜め方向に上記所定間隔で平行に配置した多数の直線状の金属線Bが重ね合わされて、隣り合う2本の金属線Aと隣り合う2本の金属線Bとが交叉して正方形または菱形の網目を形成するように配置されている状態で各金属線Aと各金属線Bとが各交叉点の位置で互いに溶接された菱網帯状体が広く用いられている。
【0004】
金網入りガラス板の製造において、この菱網帯状体をリボン状ガラスに挿入する際には、網帯状体は引張って挿入されるがこの引張力が変化した場合に網目形状が変形し易い。このような変形を防ぐために菱網帯状体の幅方向の両端縁に沿ってサルベージ線を溶接して網帯状体の両縁を拘束したサルベージ線付菱目溶接金網帯を使用することにより、網目に変形が生じることを防止できることが特許文献1、特許文献2および特許文献3で知られている。
【特許文献1】WO2003/028919号公報(第21〜22頁)
【特許文献2】特開2007−001776号公報
【特許文献3】特開2007−153663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このサルベージ線付菱目溶接金網帯はその製網時に巻取りロールに巻き取られたり、また製網後に鍍金等の表面処理された後にロールに巻き取られる際にその長さ方向に引張り外力が加えられる。金網帯のうち金属線が約45度に斜交して溶接されている網目部分は引張り外力により容易に変形するが、金網帯が巻取りロールから巻きほぐされて引張り外力が無くなると元の網目形状に復元する。この引張り外力により金網帯の網目部分の金属線にとっては曲げ弾性限以内の応力が作用するけれども、サルベージ線にはその弾性限以上の応力がかかるのでサルベージ線は塑性変形(伸び)を生じ、引張り外力が解消しても縮まず元の長さに戻らない。従って巻取りロールから巻きほぐされた状態では金網帯の幅方向中央部と両縁近傍のサルベージ線との間に長さの違いが生じる。その結果、巻取りロールに巻き取った金網帯を巻きほぐして平面上に繰り拡げると、金網帯はその幅方向中央部よりも両縁の長さが長くなって、金網帯幅方向両縁に厚さ方向の波打ちが生じる。金網入りガラス板の製造の際に、このように縁部が波打った状態で金網をガラス帯中に封入するとガラス中の網深さが一定せず、時にはガラスからはみ出たり、また網端部が折れ曲がって重なって封入されるなどの不都合がある。
【0006】
本発明の課題は、上記のように従来技術の問題点を除去して、金網帯幅方向両縁に厚さ方向の波打ちが小さい網入りガラス板用のサルベージ線付菱目溶接金網帯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、網入りガラス板用菱網帯状体であって、網帯状体の長さ方向に対して所定角度の斜め方向に所定間隔で平行に配置した多数の直線状の金属線Aの上に、網帯状体の長さ方向に対して上記所定角度と同じ角度で上記金属線Aとは逆の斜め方向に上記所定間隔で平行に配置した多数の直線状の金属線Bが重ね合わされて、隣り合う2本の金属線Aと隣り合う2本の金属線Bとが交叉して正方形または菱形の網目を形成するように配置されている状態で各金属線Aと各金属線Bとが各交叉点の位置で互いに溶接されており、この網帯状体の上にその幅方向の両側の各縁に沿ってそれぞれサルベージ線が配置されていてサルベージ線はそれと接する金属線Aとの各交叉点および金属線Bとの各交叉点で互いに溶接されており、隣り合う両溶接点間のサルベージ線部分をその中間部分で湾曲するように塑性曲げ変形させることにより、両隣接溶接点間の距離を短くして、網帯状体縁部の隣接金属線の間隔を網帯状体中央部の隣接金属線の間隔に近づけるようにした網入りガラス板用菱網帯状体である。
【0008】
以下本発明について例をあげて詳しく説明する。
本発明の網入りガラス板用菱網帯状体は図1および図2に示すように網帯状体1の長さ方向2に対して所定角度α例えば約45度の斜め方向に所定間隔例えば約20mmで平行に配置した多数の直線状の金属線A3と、その上に重ね合わされた、網帯状体の長さ方向2に対して上記所定角度と同じ角度約45度で上記線A3とは逆の斜め方向に上記所定間隔約20mmで平行に配置した多数の直線状の金属線B4と、その上に重ね合わされ、網帯状体の幅方向の両側の各縁に沿ってサルベージ線5とからなり、金属線A3と金属線B4はその交叉箇所6で溶接されており、金属線A3とサルベージ線5はその交叉箇所7でそして金属線B4とサルベージ線5はその交叉箇所7’でそれぞれ溶接されている。隣り合う金属線A3と隣り合う金属線B4とは正方形または菱形の網目8を形成している。サルベージ線5は金属線A3と金属線B4との交叉箇所6を避けて金属線A、Bと溶接することが好ましい。交叉箇所6と交叉箇所7、7’が重なると網帯状体の厚みが増加するからである。交叉箇所7、7’が網目の2辺(金属線A、B)のそれぞれのほぼ中央に位置するようにサルベージ線5を配置することがより好ましい。
【0009】
図3に示すように隣り合う金属線A3と金属線B4とサルベージ線5の両溶接点7、7’間のサルベージ線金属部分5は、サルベージ線の長さ方向を横切る方向例えばその上方から矢印に示すように押圧することにより、その中間部分で湾曲するように塑性曲げ変形させられて5’になり、金属線A3とB4はそれぞれ3’、4’となる。曲がりの最も大きな部分ともとの位置との差を曲がり値dとする。帯状体の長さに沿って連続するサルベージ線部分5の20カ所についての曲がり値dの平均値を平均曲がり値とする。両溶接点間のサルベージ線部分5の長さ自体は変わらずに曲げ変形されるので、両溶接点7、7’の間の距離はKからk’へと短くなる。それに応じて隣り合う金属線A3の間隔および隣り合う金属線B4の間隔も短くなる。
【0010】
もし両溶接点間のサルベージ線部分の塑性曲げ変形を行わなかったときには、編網時などの引っ張り外力により網帯中央部の隣り合う金属線の間隔は金属線A,Bの弾性曲げ変形により拡大され、他方網縁部のサルベージ線近辺ではサルベージ線の塑性伸び変形により隣り合う金属線の間隔はほぼ上記と同じ間隔に拡大する。この状態で巻き取られた網を巻き取りロールから繰り出すと、引っ張り外力が解除されて網中央部の隣り合う金属線の間隔はもとの間隔に戻るが、網縁部のサルベージ線近辺ではサルベージ線の溶接部付近の金属線の間隔は縮小せずにそのままである。従ってこの間隔の差により網には波打ちが発生する。本発明の場合にはサルベージ線の溶接部の金属線の間隔は短くなっているので、巻き取りロールから繰り出した網では網中央部の隣り合う金属線の間隔と網縁部の隣り合う金属線の間隔との差が小さくなって波打ちは防止される。
【0011】
隣り合う2本の金属線とサルベージ線5の両隣接溶接点間の各サルベージ線部分をその中間部分で湾曲するように塑性曲げ変形させる方向、向きとしては、図3のように網の厚さ方向の内向きに湾曲させる以外に、図4に示すように網の厚さ方向の外向きに湾曲させるてもよく、図5に示すように網の巾方向の内向きにまたは図6に示すように網の巾方向の外向きにそれぞれ湾曲させるか、またはこれらを複合した方向、向きを取ることができる。これらの中で図3に示すように網の厚さ方向の内向きに湾曲させるのが最も簡単に行うことができるので好ましい。
【0012】
両隣接溶接点間のサルベージ線部分を湾曲するように塑性曲げ変形させる具体的な方法の一つとしては、巻き取りロール、運搬ロールその他の支持体の上を進行する網帯状体のサルベージ線の上に円筒形または円錐台形の押圧子を載置して押圧子を自由回転させながらその自重でサルベージ線を連続的に加圧して、溶接点間のサルベージ線部分を網帯の厚み方向内向きに曲げる方法が挙げられる。これによればサルベージ線と金属線Bとの溶接部分は押圧子の荷重が分散されるため殆ど変形しないが、サルベージ線の溶接部と溶接部の中間部分は押圧子の荷重により下方に塑性曲げ変形する。押圧子の自重による加圧に代えて油圧などを利用して押圧子の加圧を行ってもよい。また端部に放射状に突起を設けたロールを巻取り前のサルベージ線に下から押し当てて網帯の厚み方向の反対側から加圧するようにすれば溶接点間のサルベージ線部分を網帯の厚み方向外向きに曲げることができる。このようにサルベージ線を厚み方向に曲げる場合、厚みの内向きに曲げる方が、厚みの外向きに曲げるよりも、操作が簡単なので好ましい。
【0013】
サルベージ線を網の巾方向に曲げる具体的な方法の例としては、端部に放射状円錐形突起又は半球状突起を設けたロールをサルベージ線の上又は下から突起の中心を僅かだけサルベージ線の幅方向例えば幅方向内側にずらして線の横に押し当てることにより、サルベージ線の溶接部と溶接部の中間部分を網の巾方向外向きに湾曲させることができる。また上記突起の中心をサルベージ線の幅方向外側にずらせばサルベージ線の溶接部と溶接部の中間部分を網の巾方向外向きに湾曲させることができる。
【0014】
上記塑性曲げ変形の程度は小さすぎると波打ち防止の効果が充分ではなく、逆に大きすぎると網の中央部が凸状または凹状に変形する。上記塑性曲げ変形の適正な範囲は、個々の編網装置、網用線およびサルベージ線の材料、寸法、網の網目寸法などによって異なるが、隣り合う2本の金属線とサルベージ線の両隣接溶接点間の各サルベージ線部分をその中間部分で湾曲するように塑性曲げ変形させる場合には、その中間部分の曲げ値(図3のd)を平均値で0.10〜0.50mmの深さまたは巾とすることが好ましい。この値は上記押圧子の荷重、寸法などを調節することによって制御することができる。
【0015】
編網したものを巻き取りロールに巻き取る場合、隣接両溶接点間の各サルベージ線部分をその中間部分で湾曲するように塑性曲げ変形させる場所としては、サルベージ線と金属線Bとサルベージ線とを溶接する工程〜運搬工程〜巻き取りロールに巻き取る工程のいずれでもよいが、最も大きな引張り外力が作用した後か、または作用している時点で行うのが最も効果的であり、例えば巻き取りロールに巻き取る工程で行うのが最も好ましい。もし引張り外力が作用する以前に塑性曲げ変形させた場合には、その後に引張り外力が作用したときにこの曲げが消失してしまうので波打ち防止の効果は得られない。
【0016】
編網した網帯状体を巻き取る上記の場合の網帯状体に働く引張り外力に比して、編網した網をメッキのような表面処理した後に巻き取る場合の方が網帯状体に働く引張り外力が一般的には大きいので、後者の方が従来技術では波打ちが発生しやすい。従って網をメッキ処理その他の表面処理して巻き取る場合には、溶接点間の各サルベージ線部分をその中間部分で湾曲するように塑性曲げ変形させる場所としては、前処理工程、メッキ工程、洗浄工程および乾燥工程、巻き取り工程のいずれでもよいが、最も大きな引張り外力が作用した後か、または作用している時点で行うのが最も効果的であり、上記と同様に巻き取りロールに巻き取る工程で塑性曲げ変形させるのが好ましい。
【0017】
以上は、隣り合う2本の金属線とサルベージ線の両隣接溶接点間のサルベージ線部分をその中間部分で湾曲するように塑性曲げ変形させる場合について説明したが、以下に述べるように、間に1個隔てて隣り合う2個の金属線・サルベージ線の隔離両溶接点間の各サルベージ線部分をサルベージ線部分がその中間部分で湾曲するように塑性曲げ変形させる場合も同じ効果が得られる。
【0018】
図7に示すように、間に1本の金属線A10を隔てて隣り合う2本の金属線B11、11とサルベージ線13の両溶接点14、14間のサルベージ線部分15はその中間部分で湾曲するように塑性曲げ変形させられて15’になる。それに伴って金属線A10、金属線B11、11はそれぞれ10’.11’.11’に移動する。両溶接点間のサルベージ線部分15の長さ自体は変わらずに曲げ変形されるので、両溶接点14、14の間の距離Mは短くなり、隣り合う金属線B14’,14’の間隔M’になる。このように隔離両溶接点間の距離を短くして、網帯状体縁部の隣接金属線の網帯状体平面に沿って測った間隔を網帯状体中央部の隣接金属線の間隔に近づける。これにより、巻き取りロールから繰り出した網では網中央部の隣り合う金属線の間隔と網縁部の隣り合う金属線の間隔との差が小さくなって波打ちは防止される。上記中間部分の曲げ値(図7のd)は平均値で0.20〜1.0mmの深さとすることが好ましい。
【0019】
このサルベージ線部分の塑性曲げ変形は例えば次に述べるようにサルベージ線溶接の工程で網の厚さ方向に湾曲させることにより行うことができる。
【0020】
サルベージ線の溶接は、図8および図9に示すように、金属線A16と金属線B17が溶接された金網を2目づつ矢印に示す方向に間歇的に送りながら、上方よりサルベージ線18を供給し、下部電極板19と2本の上部電極棒20、21とで、金属線B17とサルベージ線18との隣接する交点2箇所が両電極の間に来た時点で2本の上部電極棒20、21を降下させて、上部電極棒20に接するサルベージ線18の部分を押し下げ、押圧状態下で上部電極棒間に通電して溶接する。下部電極板19上の前記2交点が押圧される位置に上下段差を設けるとともに、前記2本の上部電極棒の下端面を下部電極段差に相当する上下差を設けて押圧溶接することにより金属線B17とサルベージ線の溶接点を1目毎に厚み方向段差を付けることができる。
【0021】
このサルベージ線部分の塑性曲げ変形の他の例として、編網または表面処理を経た網を巻き取りロールに向かって進行させる工程で、サルベージ線の上方に押圧子を設置しておき、そこを通過する金属線AおよびBの一方例えば金属線Aを検出してサルベージ線と金属線Aとの溶接点を押圧して網の厚さ方向内向きに湾曲させることにより行うことができる。
【0022】
金網を構成する金属線およびサルベージ線としては軟鋼またはフェライト系ステンレスの材質のものが用いられ、必要に応じてこれらの線に、化学研磨またはニッケルメッキ、クロムメッキ、スズメッキのメッキなどの表面処理を施したものが用いられる。これら線の直径が0.35〜0.65mmのものが好ましく用いられる。
【0023】
編網される網としては、網目の一辺の寸法が16〜21mmであり正方形または正方形に近い菱形の網目形状を有するものが好ましく製造される。
菱形金網帯はガラス帯に挿入される際に進行方向に引き伸ばされ、金網網目の菱形形状は上記進行方向に伸びる形状に変形するので、網目が正方形の網入りガラス板を製造するためには、網目を構成する金属線A,Bは網帯状体の長さ方向に対して45度よりも大きな角度、好ましくは46〜49度の傾斜角度で配置させた金網が好ましく用いられる。
【0024】
金網帯をガラス中に封入する場合、網たるみを防ぐため網の送り出し速度をガラスの送り速度よりもわずか小さくして網入りガラス板を製造する。このため当然ながら網に張力がかかり網はガラス中で又はガラス中封入前に伸ばされる。張力はサルベージ線に集中しやすいためにサルベージ線切れの事故が従来生じやすかった。本発明によればサルベージ線を予め曲げておくことにより、この曲がり部分が真っ直ぐになろうとして張力が緩和されるので、サルベージ線切れを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、幅方向両縁での厚さ方向の波打ちが小さいサルベージ線付菱目溶接金網帯が得られ、これを用いてガラス中の網深さが一定な網入りガラス板を製造することができる。
さらに本発明によれば、金網をガラス中に封入する際に、従来生じ易かったサルベージ線切れを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を具体的に説明する。
図10には、本発明に係る網入りガラス板用菱網帯状体を製造する編網装置が示されている。編網装置は、金属線例えばステンレス鋼線を引き出して交叉配置し金属線交叉物とする線材引出部と、各金属線の交叉部を溶接固定して網を形成する固定手段と、金属線例えばステンレス鋼線からなるサルベージ線を引き出して前記金属線交叉物の両縁部上に載置してサルベージ線と金属線との交叉部を溶接固定するサルベージ線固定手段と、この網を図10中右下方向に引き寄せながら巻き取る巻取ロールと押圧子を備えている。
【0027】
線材引出部31は、金属線A41を巻き付けたボビン(図示せず)から金属線A41を引き出す下線側トロッコ35Aと、金属線B42を巻き付けたボビン(図示せず)から金属線B42を引き出す上線側トロッコ35Bと、下線側トロッコ35Aおよび上線側トロッコ35Bにより金属線A41および金属線B42を交叉配置した線材交叉物43を搬送するコンベア35Cとを有している。
【0028】
下線側トロッコ35Aおよび上線側トロッコ35Bは、製造する網帯状体44の搬送方向に対してはぼ45度の角度で、かつ互いに異なる方向に向けて配向されている。従って下線側トロッコ35Aおよび上線側トロッコ35Bは、製造する網帯状体44の搬送方向に対して金属線A41および金属線B42をほぼ45度の角度で、かつ互いに異なる方向に向けて所定間隔で往復させながら供給する。
【0029】
従って、このような線材引出部31は、菱形状の網目における対角線の一方が搬送方向に平行になるように金属線A41および金属線B42を交差配置するようになっている。一方、コンベア35Cは、所定幅の板材35Dが無限軌道状に多数配列されていて、これらの各板材35Dの長手方向両端部に金属線A41および金属線B42を係止して往復するようように引き回すため、各金属線の間隔は所望の間隔に確実に維持される。固定手段33は線材交叉物43の各金属線の交叉部を挟持する上電極部38および下電極部39を有するスポット溶接機となっている。固定手段33は、固定された下電極部39に対して上電極部38が近接離反できるようになっている。上電極部38および下電極部39による挟持圧力、電流値、近接時間(金属線を挟持する時間)を適宜選択できるようになっている。
【0030】
このようにして製造された網帯状体44は、その搬送方向両端部44Aが切除される。なお、前記下線側トロッコ35Aおよび上線側トロッコ35Bは金属線A41および金属線B42を切断せずに連続して両端で折り返して供給しているが、もしこれらトロッコとして金属線A,Bを両端で切断してそれぞれ直線状にした金属線を供給するタイプのものを使用した場合には、上記網帯状体44の両端部44Aの切除は不要である。そのすぐ後ろに両縁部の上方に配置されたサルベージ線材引出部45からサルベージ線46が線材交叉物帯の両縁部の上に載置され、ついで線材交叉物帯の両縁部の上方および下方に配置されたサルベージ線固定手段により、金属線A41とサルベージ線46との交叉部および金属線B42とサルベージ線46との交叉部が溶接して固定される。このサルベージ線材固定手段は上電極部47および下電極部48からなり、前記固定手段33と同様な構造を有する。
【0031】
このようにして製造された網44は、サルベージ線を含む搬送方向両端部とともに巻取ロール34により巻き取られる。巻き取りロール上に巻き取る際に、金網帯が巻き取りロールに接する箇所の各端縁部のサルベージ線46上に押圧子49が配置され、この押圧子の荷重をかけながら金網帯を巻取ロールに巻取る。この押圧子の荷重による加圧により金属線A41とサルベージ線46との溶接点とこれに隣接する金属線B42とサルベージ線46との溶接点の間のサルベージ線部分は網帯状体の厚み方向内向きに曲げられる。このようにして巻取ロール34により巻き取られた網状体は、網入りガラス板の製造工程において使用される。
【0032】
上記押圧子の詳細を示す図11によれば、金網帯44が巻き取りロール34に接する箇所の各端縁部のサルベージ線46上に円錐台形の押圧子49を外径が大きい部分が外側になるように軸心の周りに回転可能に配置し、この押圧子は金網帯44の進行に伴って回転し、その大径部の押圧子部分がサルベージ線の上に押圧子の自重の荷重をかけながら金網帯44は巻取ロール34に巻取られる。金網帯44が巻取ロールに巻取られてその巻取り体の直径が増加しても、押圧子49はその加圧を続行できるように、押圧子の軸心が上下移動可能な枠体(図示せず)に支持されている。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を具体的に説明する。
実施例1
C:0.01、Si:0.0、Mn:0.13、P:0.012、S:0.005各重量%含有する軟鋼からなり、直径が0.50mmである線材を金網用線材およびサルベージ線として用いて、先に図10、11を用いて説明した方法により、網目の1辺の長さが19.3mm、網目の対角線長さ:縦25.4mm、横29.2mmの菱形状である網入りガラス板用サルベージ線付菱目溶接金網帯(網の長さは500m、網の巾は2.8m)を作製した。
【0034】
下線側トロッコ35Aおよび上線側トロッコ35Bとして金属線A,Bを両端で切断してそれぞれ直線状にした金属線を供給するタイプのものを使用した。そしてサルベージ線は網の縁部の金属線A,Bの交点から約7.4mm巾方向内側の位置で金属線AおよびBと溶接させた。
【0035】
網を巻き取りロール上に巻き取る際の押圧子としては重さが3kgで、外径10cmと6cmの円錐台形の押圧子を用い、外径10cmの部分が外側になるように配置した。巻き終わった金網帯を約5mの長さに平面上に繰り広げて波打ちの値を測定した。波打ちの値は図12に示すように縁部の波の谷の高さと山の高さの差hで定義する。また波の周期は縁部の波の山と山の間の距離Lで定義する。波打ちの値は0cm(測定下限未満)であり、波打ちは全く生じていなかった。サルベージ線は金網の厚さ方向内向きに曲がり値(図3のd)は0.1〜0.4mmで、平均の曲がり値は0.25mmであった。
【0036】
比較例1
上記実施例1で押圧子を設けなかった以外は実施例1と同様にしてサルベージ線付き金網帯を巻取ロールに巻取る。その後実施例1と同様にして金網帯を平面上に繰り広げて縁部波打ちの程度を測定したところ、波打ちの値は5cmであり、波の周期は55〜80cmであった。またサルベージ線の曲がりは0.1mm以下であった。
【0037】
実施例2
比較例1で得られたサルベージ線付菱目溶接金網を巻取ロールから連続的に繰り出して前処理槽、メッキ槽、洗浄槽および乾燥炉からなる錫メッキ表面処理装置の順に通過させた後、巻取ロールに巻き取らせた。巻き取りロール上に巻き取る際に、金網帯が巻き取りロールに接する箇所の各端縁部のサルベージ線上に重さが0.5kgで、外径5cmの円筒形の押圧子を載せてこの押圧子を回転させながらサルベージ線の上に押圧子の自重の荷重で押圧する。巻取ロールに巻き終わった後、金網帯を巻取ロールを繰り出して約5mの長さ、平面上に繰り広げて縁部波打ちの程度を測定したところ、波打ちの値は0cm(測定限度以下)であり、波打ちは全く生じていなかった。サルベージ線は金網の厚さ方向内向きに曲がり値0.2〜0.5mm、平均の曲がり値で0.35mm曲げられていた。
【0038】
比較例2
上記実施例2で巻き取りロールに設けた押圧子を設けなかった以外は実施例2と同様にして錫メッキ処理したサルベージ線付き金網帯を巻取ロールに巻取る。その後実施例2と同様にして金網帯を平面上に繰り広げて縁部波打ちの程度を測定したところ、波打ちの値は8cmであり、波の周期は約30〜75cmであった。またサルベージ線の曲がりは0.1mm以下であった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例を示す平面図。
【図2】図1の部分拡大平面図。
【図3】本発明の実施例を示す側面図。
【図4】本発明の他の実施例を示す側面図。
【図5】本発明の他の実施例を示す平面図。
【図6】本発明の他の実施例を示す平面図。
【図7】本発明の他の実施例を示す側面図。
【図8】本発明の他の実施例を示す側面図。
【図9】本発明の他の実施例を示す側面図。
【図10】本発明のための装置を示す斜視図。
【図11】本発明のための装置を示す側面図。
【図12】従来技術を示す斜視図。
【符号の説明】
【0040】
1・・網帯状体
3・・金属線A
4・・金属線B
5・・サルベージ線
49・・押圧子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
網入りガラス板用菱網帯状体であって、網帯状体の長さ方向に対して所定角度の斜め方向に所定間隔で平行に配置した多数の直線状の金属線Aの上に、網帯状体の長さ方向に対して上記所定角度と同じ角度で上記金属線Aとは逆の斜め方向に上記所定間隔で平行に配置した多数の直線状の金属線Bが重ね合わされて、隣り合う2本の金属線Aと隣り合う2本の金属線Bとが交叉して正方形または菱形の網目を形成するように配置されている状態で各金属線Aと各金属線Bとが各交叉点の位置で互いに溶接されており、この網帯状体の上に、その幅方向の両側の各縁に沿ってそれぞれサルベージ線が配置されていてサルベージ線はそれと接する金属線Aとの各交叉点および金属線Bとの各交叉点で互いに溶接されており、隣り合う両溶接点間のサルベージ線部分をその中間部分で湾曲するように塑性曲げ変形させることにより、両隣接溶接点間の距離を短くして、網帯状体縁部の隣接金属線の間隔を網帯状体中央部の隣接金属線の間隔に近づけるようにした網入りガラス板用菱網帯状体。
【請求項2】
網入りガラス板用網帯状体であって、網帯状体の長さ方向に対して所定角度の斜め方向に所定間隔で平行に配置した多数の直線状の金属線Aの上に、網帯状体の長さ方向に対して上記所定角度と同じ角度で上記金属線Aとは逆の斜め方向に上記所定間隔で平行に配置した多数の直線状の金属線Bが重ね合わされて、隣り合う2本の金属線Aと隣り合う2本の金属線とが交叉して正方形または菱形の網目を形成するように配置されている状態で各金属線Aと各線金属Bとが各交叉点の位置で互いに溶接されており、この網帯状体の上にその幅方向の両側の各縁に沿ってそれぞれサルベージ線が配置されていてサルベージ線はそれと接する金属線Aとの各交叉点および金属線Bとの各交叉点で互いに溶接されており、間に一つ隔てて隣り合う2個の隔離両溶接点間の各サルベージ線部分をその中間部分で湾曲するように塑性曲げ変形させることにより、隔離両溶接点間の距離を短くして、網帯状体縁部の隣接金属線の網帯状体平面に沿って測った間隔を網帯状体中央部の隣接金属線の間隔に近づけるようにした網入りガラス板用菱網帯状体。
【請求項3】
前記隣り合う両隣接溶接点間の各サルベージ線部分がその中間部分で0.10〜0.50mmの深さまたは巾で塑性曲げ変形させられている請求項1記載の網入りガラス板用菱網帯状体。
【請求項4】
前記間に一つ隔てて隣り合う2個の両隔離溶接点間の各サルベージ線部分がその中間部分で0.20〜1.0mmの深さで塑性曲げ変形させられている請求項2記載の網入りガラス板用菱網帯状体。
【請求項5】
網帯状体の長さ方向に対して所定角度の斜め方向に所定間隔で平行に配置した多数の直線状の金属線Aの上に、網帯状体の長さ方向に対して上記所定角度と同じ角度で上記金属線Aとは逆の斜め方向に上記所定間隔で平行に配置した多数の直線状の金属線Bが重ね合わされて、隣り合う2本の金属線Aと隣り合う2本の金属線Bとが交叉して正方形または菱形の網目を形成するように配置されている状態で各金属線Aと各金属線Bとが各交叉点の位置で互いに溶接されており、この網帯状体の上に、その幅方向の両側の各縁に沿ってそれぞれサルベージ線が配置されていてサルベージ線はそれと接する金属線Aとの各交叉点および金属線Bとの各交叉点で互いに溶接された網入りガラス板用菱網帯状体を製造する方法において、前記菱網帯状体をその編網後または表面処理後に、巻取りロールに巻き取る際に、巻き取られている状態の前記菱網帯状体のサルベージ線の上から回転可能な押圧子をサルベージ線の長さ方向を横切る方向に連続的に押圧して、隣り合う両隣接溶接点間のサルベージ線部分をその中間部分で湾曲するように塑性曲げ変形させることにより、両隣接溶接点間の距離を短くして、巻き取り操作された後の網帯状体縁部の隣接金属線の間隔を網帯状体中央部の隣接金属線B間隔に近づけるようにしたことを特徴とする網入りガラス板用菱網帯状体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−136901(P2009−136901A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316755(P2007−316755)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(501381697)松井金網工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】