説明

サンシェード板

【課題】基材層を挟んで上部表面に不織布層を形成し、下部表面に表皮材層を形成したサンシェード板において、不織布層、表皮材層のいずれも質感を損なうことなく車内の臭いやホルムアルデヒドを吸着できるサンシェード板を提供する。
【解決手段】基材層2を挟んで上部表面に不織布層3を形成し、下部表面に表皮材層4を形成したサンシェード板1において、吸着剤層6を、基材層2と不織布層3との間、および基材層2と表皮材層4との間の少なくとも一方に介在させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車室天井に配設されるサンシェード板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のルーフがガラスパネルを有している場合、通常、このガラスパネルからの採光および遮光を行う開閉式のサンシェード板が車室天井に取り付けられる(例えば、特許文献1参照)。サンシェード板の断面構造の一例としては、基材層を挟んで上部表面に、つまり車外上方に臨む側に不織布層を形成し、下部表面に、つまり車室に臨む側に表皮材層を形成した構造のものが挙げられる。互いに接する各層は公知のホットメルトフィルムを介して互いに融着固定される。基材層の材質としては、フェノール樹脂、ウレタン樹脂等の合成樹脂が使用されている。
【特許文献1】特開2002−103978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
車両の内装材から放出されるホルムアルデヒド等のアルデヒド類の抑制方法として、アルデヒド類を吸着する吸着剤の層を内装材の裏面側に形成する技術が公知である。前記サンシェード板においても主に基材層からアルデヒド類が放出される場合があり、吸着剤の層を内装材の裏面側に形成する技術を適用すれば、アルデヒド類を効果的に吸着できるものと思われる。
【0004】
しかし、上部表面、下部表面にそれぞれ不織布層、表皮材層を有するサンシェード板にこの技術を適用した場合、不織布層あるいは表皮材層のどちらかにおいて、これらの材質が持つ内装としての本来の質感が吸着剤によって損なわれることとなる。表皮材層は車室内の乗員の目に触れる部位となり、不織布層はガラスパネル越しに車外からの目に触れる部位となるので、つまり両面とも意匠面となるので、どちらか一方でも質感が損なわれることは外観上好ましくない。特に、吸着剤が有色である場合には、不織布層や表皮材層の表面の色が本来の色と異なってくるので問題である。なお、吸着剤を不織布や表皮材に含浸させるという方法を採用しても、手触りや色合い等の質感が変化するため、好ましい方法とはいえない。また、人体に有害なアルデヒド類ではなくとも、例えば車内の臭いなどを吸着可能な吸着剤をサンシェード板に形成することが好ましい。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するために創案されたものであり、基材層を挟んで上部表面に不織布層を形成し、下部表面に表皮材層を形成したサンシェード板において、不織布層、表皮材層のいずれも質感を損なうことなく、車内の臭いやアルデヒド類を吸着できるサンシェード板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、自動車の車室天井に配設され、基材層を挟んで上部表面に不織布層を形成し、下部表面に表皮材層を形成したサンシェード板において、吸着剤層を、前記基材層と前記不織布層との間、および前記基材層と前記表皮材層との間の少なくとも一方に介在させたことを特徴とするサンシェード板とした。
【0007】
このサンシェード板によれば、吸着剤層がサンシェード板の表面に露出することがないため、不織布層、表皮材層のいずれも質感を損なうことなく車内の蒸散ガス等を吸着できる。
【0008】
また、本発明は、前記吸着剤層は、アルデヒド類を吸着可能な吸着剤から構成されることを特徴とするサンシェード板とした。
【0009】
このサンシェード板によれば、吸着剤層がサンシェード板の表面に露出することがないため、不織布層、表皮材層のいずれも質感を損なうことなく車内のアルデヒド類を吸着できる。
【0010】
また、本発明は、前記吸着剤層は、少なくとも臭いの成分を吸着可能な吸着剤から構成されることを特徴とするサンシェード板とした。
【0011】
このサンシェード板によれば、吸着剤層がサンシェード板の表面に露出することがないため、不織布層、表皮材層のいずれも質感を損なうことなく車内の臭い等を吸着できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るサンシェード板によれば、その表面の質感を損なうことなく車内の臭いやアルデヒド類を吸着できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は自動車の側面説明図であり、本図において、ルーフに取り付けられたガラスパネルGの下方には、ガラスパネルGからの採光および遮光を行う開閉式のサンシェード板1が車室天井に取り付けられている。
【0014】
図2はサンシェード板1の断面構造を示す説明図である。サンシェード板1は、基材層2を挟んで上部表面に不織布層3が形成され、下部表面に表皮材層4が形成される。不織布層3の表面はガラスパネルG(図1)を介して車外上方に臨む意匠面となり、表皮材層4の表面は車室に臨む意匠面となる。
【0015】
基材層2の材質としては、例えばフェノール樹脂、ウレタン樹脂等の合成樹脂、合成樹脂と繊維との混合物などである。合成樹脂と繊維との混合物の一例としては、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂と綿、麻等の繊維とを混合させたものが挙げられ、綿、麻等を解繊し、これにノボラック型フェノール樹脂を混ぜて仮焼きし、その後、板状に加工して基材層2とする。
【0016】
表皮材層4の材質としては、例えばポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等の合成繊維、綿、羊毛、麻等の天然繊維、不織布、合成皮革、天然皮革等である。このように表皮材層4に適用される材料は不織布を含めて多岐にわたる。不織布層3は、合成繊維や天然繊維等を接着剤等を用いた公知の方法で結合させたものからなる。不織布層3および表皮材層4は、それぞれ基材層2に対し公知のホットメルトフィルム5により溶着固定される。
【0017】
基材層2が熱硬化性樹脂の場合、製造時の加熱硬化に起因する副生成物としてホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等のアルデヒド類が放出される。また、材質にもよるが、表皮材層4や不織布層3からもアルデヒド類が放出される場合がある。
【0018】
本発明は、吸着剤層6を、基材層2と不織布層3との間、および基材層2と表皮材層4との間の少なくとも一方に介在させたことを主な特徴とするものである。図2(a)は基材層2と不織布層3との間に吸着剤層6を介在させた場合、図2(b)は基材層2と表皮材層4との間に吸着剤層6を介在させた場合を示している。勿論、両方の層間に吸着剤層6を介在させても良い。
【0019】
本発明における吸着剤層6とは、車内の蒸散ガスを吸着可能な吸着剤から構成され、具体的には、アルデヒド類を吸着可能な吸着剤や少なくとも臭いの成分を吸着可能な吸着剤等から構成される。前記蒸散ガスの例としては、(1)カビの臭い成分、(2)タバコの臭い成分、(3)ペットの臭い成分、(4)内装材から発生するアルデヒド類等のVOC(揮発性有機化合物)、(5)乗員の呼気、等である。特にアルデヒド類の吸着効果に優れた吸着剤の例としては、アミン系化合物、尿素系化合物、メラミン系化合物、フェノール系化合物、キトサン、タンニン、カテキン類、フラボノイド類、活性炭が挙げられる。
【0020】
吸着剤層6の形成態様としては、例えば図2(a)の層構成の場合、図4に示すように、不織布の一面側に、吸着剤槽に浸したロールを圧着させて塗布する方法が挙げられる。塗布後、所定の温度で乾燥させ、この吸着剤が塗布された一面側を基材層2に対して前記したようにホットメルトフィルム5により溶着固定する。図2(b)の層構成の場合には、表皮材に対して同様の処理を行うことになる。ただし、ロールによる圧着塗布では、塗布対象となる材料がロールから圧縮力を受けるため、例えば意匠面側が起毛面として構成されている場合、圧縮によって起毛具合が異なってくる場合もある。したがって、車室の乗員の目に間近に触れる表皮材に対して、ロールによる圧着塗布を行う場合には注意が必要である。勿論、場合によっては、スプレー塗布方式により不織布や表皮材に対して吸着剤を塗布しても良い。
【0021】
以上のように、吸着剤層6を、基材層2と不織布層3との間、および基材層2と表皮材層4との間の少なくとも一方に介在させる構成とすれば、吸着剤層6がサンシェード板1の表面に露出することがないため、不織布層3、表皮材層4のいずれも質感を損なうことなく、車内の臭いや、他の内装材から放出されるアルデヒド類、基材層2、不織布層3、表皮材層4から放出されるアルデヒド類を吸着できる。
【0022】
図3は、基材層2をウレタン樹脂とし、その両面にチョップドストランドガラスマット(ガラス繊維マット)7を介在させてから、ホットメルトフィルム5により不織布層3、表皮材層4を溶着固定した場合の層構成を示す。この層構成においても、少なくとも、図3(a)に示すように、不織布層3の下面側に吸着剤層6を形成するか、或いは図3(b)に示すように、表皮材層4の上面側に吸着剤層6を形成すれば、不織布層3、表皮材層4のいずれも質感を損なうことなく、車内の臭いや、他の内装材から放出されるアルデヒド類、基材層2、不織布層3、表皮材層4から放出されるアルデヒド類を吸着できる。
【0023】
以上、好適な実施形態を説明した。本発明は、基材層2を挟んで上部表面に不織布層3を形成し、下部表面に表皮材層4を形成した層構成を有していれば、図3に示したようにチョップドストランドガラスマット7のような他の層が間に介在している場合であっても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】サンシェード板を有した自動車の側面説明図である。
【図2】サンシェード板の断面構造の説明図であり、(a)は基材層と不織布層との間に吸着剤層を介在させた場合、(b)は基材層と表皮材層との間に吸着剤層を介在させた場合を示す。
【図3】サンシェード板の断面構造の他の例を示す説明図であり、(a)は基材層と不織布層との間に吸着剤層を介在させた場合、(b)は基材層と表皮材層との間に吸着剤層を介在させた場合を示す。
【図4】ロールによる吸着剤の圧着塗布の方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 サンシェード板
2 基材層
3 不織布層
4 表皮材層
5 ホットメルトフィルム
6 吸着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車室天井に配設され、基材層を挟んで上部表面に不織布層を形成し、下部表面に表皮材層を形成したサンシェード板において、
吸着剤層を、前記基材層と前記不織布層との間、および前記基材層と前記表皮材層との間の少なくとも一方に介在させたことを特徴とするサンシェード板。
【請求項2】
前記吸着剤層は、アルデヒド類を吸着可能な吸着剤から構成されることを特徴とする請求項1に記載のサンシェード板。
【請求項3】
前記吸着剤層は、少なくとも臭いの成分を吸着可能な吸着剤から構成されることを特徴とする請求項1に記載のサンシェード板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−290438(P2007−290438A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118025(P2006−118025)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(390023917)八千代工業株式会社 (186)
【Fターム(参考)】