説明

サンドイッチ成形品及びチェーン

【課題】良好に成形することができ、コア層に含まれる機能添加剤が良好にスキン層表面に滲出し、良好な性能が得られて持続し得るサンドイッチ成形品、及びチェーンを提供する。
【解決手段】サンドイッチ成形品10は、ベース樹脂としてのPOM13に、主機能添加剤としてのエチレングリコールジステアレート14を配合したコア層11の外側に、POM13に滲出助長剤としてのPE15を配合したスキン層12を形成してなる。スキン層12の非晶部に存在し、スキン層12の内外方向に並んでいるPE15を通って、エチレングリコールジステアレート14はスキン層12の表面に良好に滲出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な成形性及び性能を有するサンドイッチ成形品及びチェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
物品を載置する平坦部を有するリンクを連結ピンで連結したコンベヤチェーンのリンク等は、合成樹脂成形により製造されている。この合成樹脂成形品に摺動特性、帯電防止性、難燃性等の性能を付与するために、合成樹脂(ベース樹脂)に、潤滑剤、帯電防止剤、難燃剤等の機能添加剤を配合することが行われている(例えば特許文献1)。
【0003】
機能添加剤の中には、成形工程で合成樹脂材料(合成樹脂組成物)の成形性を悪化させて外観不良を発生させたり、合成樹脂の表面に滲出(ブリードアウト)して金型に付着し、汚染を引き起こしたりするものがある。従って、機能添加剤の種類及び配合量は、性能及び性能の持続性という観点ではなく、本来の目的とは異なる成形性等の観点から決定しなければならないという問題があった。
さらに、機能の異なる複数の添加剤を配合する場合、添加剤同士の相性を考慮しないと、成形性が悪化したり、成形品ウエルド部での著しい強度低下を引き起こしたりすることがあるため、機能添加剤の組み合わせ及び配合量が制限されるという問題があった。
【0004】
ところで、合成樹脂成形の中には、サンドイッチ成形がある。
サンドイッチ成形とは、スキン層(外層)を形成する合成樹脂材料を金型のキャビティ内に注入し、次いでこの合成樹脂材料層の内部にコア層(内層)を形成する合成樹脂材料を注入し、これらの合成樹脂材料を冷却固化することでスキン層の内部にコア層が形成された3層構造の樹脂成形体を形成する成形をいう。
【0005】
この成形法によれば、通常の単一層からなる成形品よりも高機能化、多目的化を図ることができるという利点がある。例えば、特許文献2には、スキン層に新品の合成樹脂材料を、コア層にリサイクル品の合成樹脂材料を用い、廃プラスチックの活用を図ったサンドイッチ成形品の発明が開示されている。特許文献3には、スキン層に一般的な合成樹脂材料を、コア層に発泡剤を配合した合成樹脂材料を用い、表面平滑性及び外観品位の向上を図ったサンドイッチ成形品の発明が開示されている。特許文献4には、スキン層に一般的な合成樹脂材料を、コア層にガラス繊維を含有する高強度の合成樹脂材料を用い、耐摩耗性と機械的強度との両立を図ったサンドイッチ成形品の発明が開示されている。
【0006】
サンドイッチ成形品において、機能添加剤の配合によりサンドイッチ成形品の高機能化を図る場合、スキン層の合成樹脂に機能添加剤を配合するのが一般的である。この方法によれば、機能添加剤の配合量は少なくて済むが、機能添加剤による成形性の悪化を抑制することはできず、複数の添加剤を配合することの問題点は解決できていなかった。
【特許文献1】特開2000−72214号公報
【特許文献2】特開2001−225351号公報
【特許文献3】特開2000−33635号公報
【特許文献4】特開2004−125139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、コア層の合成樹脂に機能添加剤を配合してサンドイッチ成形し、ガラス転移温度(Tg)以上に加熱することにより、コア層の合成樹脂材料中の機能添加剤がスキン層の非晶部(非晶質部)のブラウン運動によりスキン層表面(成型品表面)に滲出されることを見出した。しかし、スキン層の合成樹脂の種類によっては、機能添加剤が成型品表面に滲出しにくい場合、又は滲出しない場合があったので、さらに検討を行った結果、拡散性が低い合成樹脂に拡散性が高い合成樹脂を滲出助長剤として混合することにより、滲出助長剤が通路的役割を果たし、コア層中の機能添加剤が良好にスキン層表面に拡散することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、良好に成形することができ、コア層に含まれる機能添加剤が良好にスキン層表面に滲出し、良好な性能が得られて該性能が持続し得るサンドイッチ成形品、及び該サンドイッチ成形品を用いたチェーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係るサンドイッチ成形品は、合成樹脂及び機能添加剤を含むコア層と、前記合成樹脂、又は該合成樹脂と異なる合成樹脂を含むスキン層とを備えるサンドイッチ成形品において、前記スキン層は、前記機能添加剤が該スキン層の表面に滲出するのを助長する滲出助長剤を含むことを特徴とする。
【0010】
コア層に機能添加剤を含有させた場合、該機能添加剤はスキン層の非晶部を通ってスキン層表面に滲出する。しかし、上述したように、スキン層を構成する合成樹脂によっては、機能添加剤がスキン層表面に滲出しにくい場合、又は滲出しない場合がある。
本発明においては、スキン層の合成樹脂に、結晶化度、ガラス転移温度、極性及び機能添加剤との相性等が好転する滲出助長剤を配合しているので、機能添加剤がコア層からスキン層表面に良好に滲出される。このとき、機能添加剤は、スキン層の非晶部に存在する滲出助長剤の非晶部を通って、スキン層表面に滲出するものと考えられる。
【0011】
第2発明に係るサンドイッチ成形品は、第1発明において、前記スキン層は、第2の機能添加剤を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、サンドイッチ成形品において複数の性能を向上させ、相乗効果も付与することができ、より良好に性能を発揮させて、該性能を持続させることができる。
【0013】
第3発明に係るサンドイッチ成形品は、第1又は第2発明において、合成樹脂は、ポリアセタール又はポリアミドであることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、強度、弾性率、及び耐衝撃性等が良好である。
【0015】
第4発明に係るサンドイッチ成形品は、第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記滲出助長剤は、ポリオレフィン又はポリウレタンであることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、スキン層のポリアセタール及びポリアミド等の合成樹脂にポリオレフィン又はポリウレタンを配合することで、スキン層中に点在する滲出助長剤が機能添加剤の通り道となって、コア層からスキン層の表面へ機能性添加剤が良好に滲出される。
【0017】
第5発明に係るチェーンは、リンクを連結ピンで複数連結してなるチェーンにおいて、前記リンクは、第1乃至第4発明のいずれかのサンドイッチ成形品であることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、目的に応じて、リンクに潤滑性、帯電防止性、難燃性等の性能を付与することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スキン層中に機能添加剤の拡散性が高い相を点在させる目的で、主成分の合成樹脂に対応して滲出助長剤を選択し、該合成樹脂に配合するので、加熱処理後又は使用中に、コア層の機能添加剤がスキン層の表面に良好に滲出し、所望の性能を発現させることができる。
スキン層には成形性に悪影響を及ぼす機能添加剤を含有せず、機能添加剤を含有する場合には成形性に影響を及ぼさない機能添加剤を含有するので、強度が低下することなく、良好に成形することができ、外観品位が良好なサンドイッチ成形品が得られる。
そして、機能添加剤は、コア層に高濃度に含有させることができるので、性能向上効果を長期に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のサンドイッチ成形品は、搬送分野のコンベヤチェーン及びチェーンガイド、車両エンジン分野のタイミングシステムにおけるテンショナレバー、ケーブル類及びホース等を移動案内させるためのケーブルベア(登録商標)と言われるケーブル類保護案内装置等に適用することができる。
【0021】
本発明のサンドイッチ成形品は、合成樹脂及び主機能添加剤(機能添加剤)を含むコア層と、前記合成樹脂又は該合成樹脂と異なる合成樹脂、及び滲出助長剤を含むスキン層とを備える。スキン層は副機能添加剤(第2の機能添加剤)をさらに含むことができる。
【0022】
サンドイッチ成形品のベース樹脂(合成樹脂)としては、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。中でも、POM及びPAが好ましい。ベース樹脂は単独で用いても2種以上を併用してもよい。スキン層及びコア層のベース樹脂の種類は同一であっても異なっていてもよいが、リサイクル性の観点から同一であるのが好ましい。
POMとしては、ホルムアルデヒド若しくはトリオキサンをモノマーとして重合反応により得られる、オキシメチレン基を主成分とするホモポリマー、又は環状エーテル化合物とのコポリマー等が挙げられる。
【0023】
主機能添加剤とは、サンドイッチ成形品に、摺動特性、帯電防止性、難燃性、抗菌・防カビ性等の付加価値を発現させるために合成樹脂に配合するものをいう。具体的には、炭化水素系潤滑剤、脂肪酸系潤滑剤、脂肪酸アミド系潤滑剤、エステル系潤滑剤等の潤滑剤;カチオン活性剤、アニオン活性剤、両性活性剤等の帯電防止剤;塩素系難燃剤、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤等の難燃剤;有機系抗菌・防カビ剤、無機系抗菌・防カビ剤等の抗菌・防カビ剤等が挙げられる。
潤滑剤の具体例としては、アルキルエステル、エチレングリコールジステアレート等の一塩基性脂肪酸と2価アルコールとのエステル、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスステアロアマイド(EBS)、ポリオレフィンワックス等が挙げられる。ポリオレフィンワックスとしては、Mn/Mw=2000/12000以下であり、ベース樹脂がPOMである場合、POMとの極性面を考慮して、わずかに極性を有する酸化型PEワックスが好ましい。
【0024】
上述の主機能添加剤はスキン層の合成樹脂に配合した場合、成形性が悪化するが、コア層の合成樹脂に配合するので、成形品外観には影響しない。従って、この主機能添加剤の合成樹脂材料(合成樹脂組成物)中の含有量を多くすることができ、添加剤の効果を長期に維持することができる。
主機能添加剤は、スキン層の非晶部を構成する滲出助長剤を通って、スキン層表面に滲出するので、分子量が大きすぎないものを選択する。
良好な性能の発揮及び維持という観点から、主機能添加剤は、コア層の合成樹脂材料中に3質量%以上20質量%以下含有させるのが好ましい。
【0025】
副機能添加剤とは、主機能添加剤とは異なる添加剤であって、スキン層に配合しても成形に悪影響を及ぼさないものをいう。具体的には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、カーボン、二硫化モリブテン、シリコーンポリマー等の固体潤滑剤;導電ポリマー等が挙げられる。シリコーンポリマーとしては、ポリジメチルシロキサン基を有するジメチルシリコーンポリマー等のストレートシリコーンポリマー、側鎖又は末端に有機基が導入された変性シリコーンポリマー等が挙げられる。
良好な性能の発揮及び維持、並びに良好な成形性の保有という観点から、副機能添加剤は、スキン層の合成樹脂材料中に1質量%以上10質量%以下含有させるのが好ましい。
【0026】
コア層に含まれる主機能添加剤の拡散を容易にするために、スキン層の厚みは薄い方が好ましく、再薄部分の厚みが略1mm以下であるのがより好ましい。そして、スキン層を薄くするために、コア層の合成樹脂材料の粘度をスキン層の合成樹脂材料の粘度より高くするのが好ましい。
【0027】
スキン層の滲出助長剤は、ベース樹脂の結晶化度、Tg、極性、及び主機能添加剤との相性等により選択する。ベース樹脂がPOMである場合、滲出助長剤として、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、及びポリウレタン(PUR)が挙げられる。ベース樹脂に該滲出助長剤を配合することにより、コア層の主機能添加剤が、スキン層の非晶部に存在する滲出助長剤の非晶部を通ってスキン層表面へ滲出し易くなる。
滲出助長剤がPEである場合、分子量が数万以下であるLDPE(低密度PE)及びHDPE(高密度PE)、分子量が400万程度である超高分子量PEのいずれのPEを用いてもスキン層表面に主機能添加剤が滲出するのが確認されている。高分子量PEの場合、主機能添加剤の滲出に時間を要するが、サンドイッチ成形品の性能の向上という観点からPEの種類を選択する。
サンドイッチ成形品の強度が良好に保持されるように、スキン層合成樹脂材料の滲出助長剤の含有量の上限は10質量%とするのが好ましい。
【0028】
本発明のサンドイッチ成形品においては、上述したように、コア層に主機能添加剤、スキン層に副機能添加剤を含有することで、同時にベース樹脂に配合した場合、成形に悪影響を及ぼしたり成形品の強度低下を及ぼしたりするおそれがあるとされていた機能添加剤を組み合わせることができる。
例えば、スキン層に副機能添加剤として、上述のPTFE、カーボン、二硫化モリブテン、シリコーンポリマー等の固体潤滑剤を配合し、コア層に主機能添加剤としてオレフィン系ワックス及び脂肪酸エステル等の半固体潤滑剤又は液体潤滑剤を配合し、「低面圧・高速」及び「高面圧・低速」のいずれの条件でも高摺動特性を長時間維持できるように組み合わせることができる。
【0029】
また、スキン層に摺動添加剤を配合し、コア層に界面活性剤系の帯電防止剤を配合し、摺動特性と帯電防止性とを併せ持つように組み合わせることができる。
そして、スキン層に導電ポリマーを配合し、コア層に半固体潤滑剤又は液体潤滑剤を配合し、摺動特性と帯電防止性とを併せ持つように組み合わせることができる。
【0030】
また、コア層及びスキン層の合成樹脂には、機能添加剤及び滲出助長剤の他に、加工安定剤、充填剤、分散剤等の一般的に使用される添加剤を用いることができる。
【0031】
サンドイッチ成形の後処理工程として加熱処理する場合、合成樹脂材料のTg以上、溶融温度未満で行う。加熱処理温度は、Tg以上、(Tg+20〜30℃)以下であるのがより好ましい。加熱処理は、コア層の主機能添加剤がスキン層表面に滲出するのに十分な時間行う。
そして、加熱処理をサンドイッチ成形後の後処理工程として実施せずに、サンドイッチ成形品の使用に際して発生する熱を利用することにしてもよい。サンドイッチ成形品が、例えば搬送分野の合成樹脂製チェーン及びチェーンガイド等の摺動部品として用いられる場合、使用時の摺動熱により主機能添加剤の拡散が進行する。また、サンドイッチ成形品が車両エンジン分野のタイミングシステムにおけるテンショナレバー等の灼熱雰囲気下で使用する部品として用いられる場合、使用時の灼熱により拡散が進行するので、使用前の加熱処理を省略することができる。
【0032】
以下に、本発明のサンドイッチ成形品をコンベヤチェーンに適用した場合について説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るコンベヤチェーン1を示す正面図、図2はコンベヤチェーン1を示す平面図、図3はコンベヤチェーン1を示す裏面図である。
コンベヤチェーン1は、サンドイッチ成形品のリンク2を合成樹脂製又は金属製の連結ピン8により無端状に連結してなる。リンク2は、平面視が矩形状であるリンク本体3の上側に、物品を載置するトッププレート7を一体成形してなる。
【0033】
トッププレート7の一長辺の略中央部には、ピン穴4a,4aが設けられた一対のヒンジ部4,4が形成されている。トッププレート7の他長辺の、ヒンジ部4,4の間に対応する位置には、ピン穴5aが設けられたヒンジ部5が形成され、ヒンジ部4,4のリンク長手方向の両側に対応する位置にはピン穴6a,6aが設けられたヒンジ部6,6が形成されている。
【0034】
コンベヤチェーン1は、隣り合うリンク2のヒンジ部4,4と、ヒンジ部5及びヒンジ部6,6とを、各ピン孔4a,4a,5a,6a,6aに連結ピン8を挿入してヒンジ連結することにより連結される。ヒンジ部は他の位置に設けたものでもよく、隣り合うトッププレート7が連結ピン8によりヒンジ連結されるものであればよい。
【0035】
目的に対応して、リンク2のコア層に上述の主機能添加剤を含有させ、必要に応じスキン層に副機能添加剤を含有させ、滲出助長剤により主機能添加剤をスキン層表面に滲出させることで、リンク2の性能が向上する。
例えば、リンク2のコア層に潤滑剤等の主機能添加剤を含有させ、スキン層表面に滲出させることで、リンク2の摺動特性が向上する。従って、物品の搬送時及びスリップ時に物品の転倒を防止することができ、物品の搬送中にストップバーで物品の流れを止める場合に、物品をチェーン上で良好にスリップさせて待機させること等ができる。
また、コア層及びスキン層に、潤滑剤及び帯電防止剤を分離して含有させることで、物品の搬送中にコンベヤチェーン1及び物品が帯電するのを防止することができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
コア層のベース樹脂として「ジュラコンM90−44」(コポリマーのPOM:ポリプラスチックス株式会社製)を用い、該ベース樹脂に主機能添加剤の脂肪酸エステルとしての「エマノーン 3201MH−V」(エチレングリコールジステアレート:花王株式会社製)を配合して、コア層の合成樹脂材料を調整した。合成樹脂材料中の「エマノーン 3201MH−V」の含有量は5質量%である。
そして、スキン層の合成樹脂材料として、ベース樹脂としてのコポリマーのPOMにPEが配合されている「ジュラコンNW−02」(ポリプラスチックス株式会社製)を用いた。本実施例においては、PEが滲出助長剤として機能する。「ジュラコンNW−02」は、本来、本実施例のように、主機能添加剤の滲出助長を目的としてPOMにPEを配合しているのではない。
【0037】
前記スキン層の合成樹脂材料を金型のキャビティ内に注入し、この合成樹脂材料層の内部にコア層の合成樹脂材料を注入し、これらの合成樹脂材料を冷却固化することでスキン層の内部にコア層が形成された3層構造のサンドイッチ成形品を得た。
【0038】
図4は、実施例1のサンドイッチ成形品10を示す一部破断模式的斜視図である。
サンドイッチ成形品10は、上述したように、POM13にエチレングリコールジステアレート14を配合したコア層11の外側に、POM13にPE15を配合したスキン層12を形成してなる。
【0039】
図4の拡大部分中、色の濃い部分はエチレングリコールジステアレート14の濃度が高く、色の薄い部分はエチレングリコールジステアレート14の濃度が低いことを示す。白矢印の実線部分(PE15の内部)はエチレングリコールジステアレート14の拡散速度が高く、白矢印の破線部分は拡散速度が低いことを示す。
エチレングリコールジステアレート14のスキン層12中の拡散は非常に遅い。
図4の拡大部分に示すように、スキン層12に点在するPE15内においては、PE15の非晶部のブラウン運動によりエチレングリコールジステアレート14の拡散は速く、短時間で濃度が均一になる。図4の白矢印で示すように、PE15の粒子が近接してスキン層12の内外方向に並んでいる場合、PE15を通路として、コア層11からのエチレングリコールジステアレート14の拡散が加速度的に進行し、エチレングリコールジステアレート14はスキン層12の表面まで良好に拡散する。
【0040】
[実施例2]
コア層のベース樹脂として「デルリン100P」(ホモポリマーのPOM:デュポン株式会社製)を用い、該ベース樹脂に主機能添加剤としての前記「エマノーン 3201MH−V」を配合して、コア層の合成樹脂材料を調整した。合成樹脂材料中の「エマノーン 3201MH−V」の含有量は5質量%である。
そして、スキン層の合成樹脂材料として、ベース樹脂としてのホモポリマーのPOMにPURが配合されている「デルリン100ST」(デュポン株式会社製)を用いた。本実施例においては、PURが滲出助長剤として機能する。「デルリン100ST」は、本来、本実施例のように、主機能添加剤の滲出助長を目的としてPOMにPURを配合しているのではない。
前記コア層の合成樹脂材料及びスキン層の合成樹脂材料を用いて、実施例1と同様にして実施例2のサンドイッチ成形品を作製した。
【0041】
[主機能添加剤の滲出の確認]
実施例1のサンドイッチ成形品につき、加熱処理を施し、その前後の表面をFT−IR(フーリエ変換型赤外分光)分析し、スキン層12の合成樹脂材料のみを成形したものにつき、前記加熱処理を施した後の表面をFT−IR分析して、それぞれ主機能添加剤の滲出の有無を確認した。また、実施例2のサンドイッチ成形品につき、前記加熱処理を施した後の表面、及びスキン層の合成樹脂材料のみを成形したものにつき、前記加熱処理を施した後の表面それぞれをFT−IR分析して、主機能添加剤の滲出の有無を確認した。その結果を図5及び図6に示す。
【0042】
図5(a)は実施例1のサンドイッチ成形品10の加熱処理前のIRチャートを示すグラフ、図5(b)はスキン層12の合成樹脂材料のみを成形したものにつき、加熱処理を施した後のIRチャートを示すグラフ、図5(c)はサンドイッチ成形品10の加熱処理後のIRチャートを示すグラフである。
図6(a)は実施例2のスキン層の合成樹脂材料のみを成形したものにつき、加熱処理を施した後のIRチャートを示すグラフ、図6(b)はサンドイッチ成形品の加熱処理後のIRチャートを示すグラフである。
主機能添加剤に起因するエステル特有の1735〜1740cm-1(図5及び図6中、破線の楕円で示す範囲)のピークの有無の判断により、主機能添加剤の滲出の有無を判断した。
【0043】
図5より、サンドイッチ成形品10を加熱処理することにより、コア層から成形品表面に主機能添加剤が滲出することが確認された。
また、図6より、サンドイッチ成形品を加熱処理することにより、コア層から成形品表面に主機能添加剤が滲出することが確認された。
【0044】
以上より、スキン層に滲出助長剤を含むサンドイッチ成形品を加熱処理することにより、コア層から成形品表面に主機能添加剤が良好に滲出することが確認され、所望の性能が発揮されることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態に係るコンベヤチェーンを示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るコンベヤチェーンを示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るコンベヤチェーンを示す裏面図である。
【図4】実施例1のサンドイッチ成形品を示す一部破断模式的斜視図である。
【図5】(a)は実施例1のサンドイッチ成形品の加熱処理前のIRチャートを示すグラフ、(b)はスキン層の合成樹脂材料のみを成形したものにつき、加熱処理を施した後のIRチャートを示すグラフ、(c)はサンドイッチ成形品の加熱処理後のIRチャートを示すグラフである。
【図6】(a)は実施例2のスキン層の合成樹脂材料のみを成形したものにつき、加熱処理を施した後のIRチャートを示すグラフ、(b)はサンドイッチ成形品の加熱処理後のIRチャートを示すグラフである。
【符号の説明】
【0046】
1 コンベヤチェーン
2 リンク
3 リンク本体
4、5、6 ヒンジ部
4a、5a、6a ピン穴
7 トッププレート
8 連結ピン
10 サンドイッチ成形品
11 コア層
12 スキン層
13 POM
14 エチレングリコールジステアレート
15 PE

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂及び機能添加剤を含むコア層と、前記合成樹脂、又は該合成樹脂と異なる合成樹脂を含むスキン層とを備えるサンドイッチ成形品において、
前記スキン層は、前記機能添加剤が該スキン層の表面に滲出するのを助長する滲出助長剤を含むことを特徴とするサンドイッチ成形品。
【請求項2】
前記スキン層は、第2の機能添加剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のサンドイッチ成形品。
【請求項3】
合成樹脂は、ポリアセタール又はポリアミドであることを特徴とする請求項1又は2に記載のサンドイッチ成形品。
【請求項4】
前記滲出助長剤は、ポリオレフィン又はポリウレタンであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のサンドイッチ成形品。
【請求項5】
リンクを連結ピンで複数連結してなるチェーンにおいて、
前記リンクは、請求項1乃至4のいずれかに記載のサンドイッチ成形品であることを特徴とするチェーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−115882(P2010−115882A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291427(P2008−291427)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】