説明

サンルーフ車両のルーフラック締結装置

【課題】サンルーフ車両に於いて、雨水の漏れを防止すると共に、部品数を減少させ、作業工数を減らしてコスト節減を図ることが可能なルーフラック締結装置を提供する。
【解決手段】一端部がサンルーフ作動部を覆い、他端部がサイドアウターパネルに結合するサンルーフ外部フレームと、サンルーフ外部フレームの他端部に上方に、盛り上がるように設けられる締結部と、下端面に前記締結部が挿入される挿入溝が設けられ、挿入溝の内部に締結部に結合する結合部が設けられるルーフラックと、サンルーフ外部フレームの他端部と前記サイドアウターパネルとの間に設けられ、室内への雨水の流入を遮断するシーラーと、を含むするサンルーフ車両のルーフラック締結装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンルーフが設置された車両に係り、より詳細には、サンルーフの両側に設置されたルーフラックを固定するためのサンルーフ車両のルーフラック締結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の車両には、搭乗者の利便を図るために各種の装置が設置されている。その代表的なものとしてサンルーフを挙げることができる。サンルーフは、コンバーチブル型車両ではなく、クーペ型の車両またはセダン型の車両において、車両のルーフに窓を形成し、その窓をスライドさせて開放または閉鎖できるようにしたものである。
サンルーフを装備することによって、搭乗者は、天気の良い日にサンルーフを開放して外気を吸い、爽やかな開放感に浸ることができる。
サンルーフには、ルーフの一部分に開口部を設けその開口部を開閉する一般な形態、及びルーフの大部分をガラスとし、そのガラスの前方部をスライドさせて開放する形態がある。後者の、ルーフの大部分をガラスとする形態を特に「パノラマサンルーフ」と呼んでいる。
【0003】
搭乗者の利便を図るための車両に設けられるもう一つの装置として、ルーフラックがある。ルーフラックは、車両のルーフの両側部に設けられるバー型の積載物の固定機構である。
車両の室内空間とトランクとは、空間の制約によって積載可能な荷物に制限がある。この制限を超える荷物を積載する際は、ルーフラックを用いてルーフに荷物を積載する。荷物の支持はルーフラックを連結するクロスバーを介して行われる。クロスバーはルーフの上面を横切るように設けられ、ルーフラックの間でスライド可能に設置される。
【0004】
図1はパノラマサンルーフおよびルーフラックが取り付けられたパノラマサンルーフ車両の一例を示す斜視図である。図1に示すように、パノラマサンルーフ車両のルーフの大部分はガラスからなる。ガラスは前方ガラス12と後方ガラス14とに分けられ、前方ガラス12は後方ガラス14の上面側にスライドされて開閉される。各サンルーフガラスの側端部にはルーフラック30が設置される。サンルーフ10とルーフラック30との両方を設置する場合(例えば特許文献1を参照)、両装置の設置部分が重なり合って内部構成とデザインの設計に制約が伴うことが多い(例えば特許文献2を参照)。
【0005】
図2は、従来の、ルーフラックが設置されたサンルーフ車両のルーフラック締結装置の断面図である。ルーフラック30は、サイドアウターパネル50にボルト54付きのブラケット53を介して設置される。ルーフラック30とサイドアウターパネル50との間にはルーフサイドモールディング60が設けられる。パノラマサンルーフのサンルーフ外部フレーム20は、一端がサンルーフガラスを支持し、他端がサイドアウターパネル50側に設置される。そのサンルーフ外部フレーム20の他端とサイドアウターパネル50とは補助フレーム72を介して連結される。補助フレーム72は、サンルーフ外部フレーム20とシーラー74によって結合して防水を行い、サイドアウターパネル50と溶接によって固定される。
【0006】
従来のサンルーフ車両のルーフラック締結装置は、サンルーフとルーフラックとの両方を設置するために、サンルーフ外部フレーム20とルーフラックブラケット52との両方を固定する補助フレーム72を採用した。
【0007】
しかし、補助フレーム72の使用により作業工数、製造コストおよび重量が増大した。また、補助フレーム72とサイドアウターパネル50との間は溶接によって固定(例えば特許文献3を参照)されたが、そのため雨水が漏れるという問題点があった。
また、ルーフラック30を固定するために別途のブラケット52を設置しなければならないので、製造コストと作業工数が増大するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−86673号公報
【特許文献2】特開平06−855号公報
【特許文献3】特開平11−334386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するために為されたものであって、サンルーフ車両に於いて、雨水の漏れを防止すると共に、部品数を減少させ、作業工数を減らしてコスト節減を図ることが可能なルーフラック締結装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明のサンルーフ車両のルーフラック締結装置は、一端部がサンルーフ作動部を覆い、他端部がサイドアウターパネルに結合するサンルーフ外部フレームと、サンルーフ外部フレームの他端部に上方に、盛り上がるように設けられる締結部と、下端面に締結部が挿入される挿入溝が設けられ、挿入溝の内部に締結部に結合する結合部が設けられるルーフラックと、サンルーフ外部フレームの他端部とサイドアウターパネルとの間に設けられ、室内への雨水の流入を遮断するシーラーと、を含んでなることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、サンルーフ外部フレームの他端部とルーフラックとの間に、サンルーフガラスの側端に隣り合ってルーフサイドモールディングが設けられ、締結部は、ルーフサイドモールディングを貫通して挿入溝に挿入された後、結合部に締結されることが好ましい。
【0012】
更に本発明のサンルーフ外部フレームは、中央部が下方に折り曲げられて凹んだ形状をなし、中央部にはサンルーフレールが設置されることが好ましい。
【0013】
また本発明は、サイドアウターパネルのサンルーフ側の端部にフランジが設けられ、サンルーフ外部フレームの他端部はフランジの上面にシーラーを介して密着するように設置されることが好ましい。
【0014】
また本発明のサンルーフ外部フレームの締結部はスタッドボルトであり、ルーフラックの結合部は挿入溝の内部に設けられてスタッドボルトと締結されるナットであることが好ましい。
また本発明は、サンルーフ外部フレームの他端部にはスタッドボルトが固定される突出部が設けられ、突出部を支持する複数の支持リブが突出部に向かって設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るサンルーフ車両のルーフラック締結装置によれば、サンルーフ外部フレーム、サイドアウターパネルおよびルーフラックが直接締結されて部品数が減少し、作業工数も減少して製造コストが節減される。
【0016】
また、本発明に係るサンルーフ車両のルーフラック締結装置によれば、溶接によって固定されていた部分がシーラーによって固定されるようになり、雨水が室内に流入しなくなった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】パノラマサンルーフおよびルーフラックが取り付けられたパノラマサンルーフ車両の一例を示す斜視図である。
【図2】従来の、ルーフラックが設置されたサンルーフ車両のルーフラック締結装置の断面図である。
【図3】本発明の一実施例に係るパノラマサンルーフと、その両側に設けられたルーフラック締結装置を示す斜視図である。
【図4】図3に示したサンルーフ車両のルーフラック締結装置をスタッドボルトを含む車幅方向の垂直面で切開した断面図である。
【図5】スタッドボルトを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。前述したように様々な種類のサンルーフが存在するが、以下の実施例ではそれらの中でもパノラマサンルーフのについて考察する。
【0019】
図3は本発明の一実施例に係るパノラマサンルーフと、その両側に設けられたルーフラック締結装置の斜視図である。
パノラマサンルーフには、前方ガラス12と後方ガラス14とが設置される。ルーフラックを締結するために、パノラマサンルーフの両側にはそれぞれ5個ずつルーフラック締結装置Mを設けることができる。また、夫々のルーフラック締結装置Mは、図示したように、サンルーフ外部フレーム100やサイドアウターパネル50などを共有し、各々は離隔された状態でスタッドボルト500を形成するようにしてもよい。ルーフラック(図示せず)はスタッドボルト500に上方から結合される。
【0020】
図4は、図3に示したサンルーフ車両のルーフラック締結装置をスタッドボルトを含む車幅方向の垂直面で切開した断面図である。
サンルーフ車両のルーフラック締結装置Mは、
一端部120がサンルーフ作動部620を覆い、他端部160がサイドアウターパネル50に結合するサンルーフ外部フレーム100と、
サンルーフ外部フレーム100の他端部160に、上方に盛り上がるように設けられた締結部500と、
下端面に締結部500が挿入される挿入溝322が設けられ、挿入溝322の内部に締結部500に結合する結合部340が設けられるルーフラック300と、
サンルーフ外部フレーム100の他端部160とサイドアウターパネル50との間に設けられ、室内への雨水の流入を遮断するシーラー164と、を含んでなる。
【0021】
サンルーフは、主として、前方ガラス12、後方ガラス14、サンルーフ作動部620、サンルーフ外部フレーム100、およびサンルーフレール640から構成される。図4は、前方ガラス12が後方ガラス14の上方にスライドされた状態を示す。後方ガラス14の下端にはサンルーフ作動部620が設けられ、これにより前方ガラス12を前後にスライドさせる。サンルーフ作動部620はサンルーフ外部フレーム100に覆われた形状である。サンルーフ外部フレーム100は、多様な形状で形成することが可能であるが、その主要機能は、作動部620を覆い、サンルーフレール640を設置を設置できるようにすることである。
【0022】
サンルーフ外部フレーム100は、一端部120がサンルーフ作動部620を覆う形状で、中央部140が下方に折り曲げられて凹んだ形状をなし、他端部160がサイドアウターパネル50に直接結合するように設けられる。下方に折り曲げられた中央部140にはサンルーフレール640が設置される。
【0023】
サイドアウターパネル50のサンルーフ側の端部にフランジ52が設けられる。サンルーフ外部フレーム100の他端部160は、様々な方法でサイドアウターパネル50に結合することができるが、図示した実施例では、サイドアウターパネル50のフランジ52の上面にシーラー164を介して密着するように設置される。車室内に雨水が流入する経路は、サンルーフ外部フレーム100とサイドアウターパネル50との隙間のみであるが、サンルーフ外部フレーム100とサイドアウターパネル50とをシーラー164を介して水密に連結することにより、車室内への雨水流入が防止される。
【0024】
サンルーフ外部フレーム100の他端部160には、ルーフラック300が結合される。ルーフラック300を結合するために、締結部500が設けられる。締結部500は、多様な形状が可能であるが、図示したスタッドボルト500の形状で構成することが好ましい。
【0025】
ルーフラック300は、種々の構造で設けることができるが、図示したように、下端部に結合ブラケット320を有する構造であってもよい。結合ブラケット320の内部には締結部500が挿入される挿入溝322が設けられ、挿入溝322の内部にはスタッドボルト500と結合するナット340が設けられる。
【0026】
また、サンルーフ外部フレーム100の他端部160とルーフラック300との間に、サンルーフガラスの側端に隣り合ってルーフサイドモールディング700を設けてもよい。ルーフサイドモールディング700にはスタッドボルト500が貫通する孔が設けられる。
【0027】
サンルーフ作動部620を覆うサンルーフ外部フレーム100は、シーラー164を介してサイドアウターパネル50に直接結合される。サンルーフ外部フレーム100には、締結部500としてスタッドボルト500が設けられる。
【0028】
スタッドボルト500は、ルーフサイドモールディング700を貫通し、ルーフラック300の下端の挿入溝322に挿入されて結合部340としてのナットによって螺着される。これにより、サンルーフ外部フレーム100、サイドアウターパネル50、およびルーフラック300は、一箇所で直接締結されるとともに、従来の補助フレームを使用する方法に比べてその作業工程が単純になる。
【0029】
また、本発明によれば、補助フレームを省くことができて製造コストが節減され、溶接ではなくシーラー164を介して結合することにより、室内へ雨水が流入するのを防ぐことができる。
【0030】
図5はスタッドボルト500を示す斜視図である。サンルーフ外部フレーム100の他端部160にはルーフラック300に挿入されるスタッドボルト500が設けられる。スタッドボルト500は、サンルーフ外部フレーム100の突出部520に設けられ、この突出部520を支持する複数の支持リブ522が突出部520に向かって設けられる。
【0031】
また、支持リブ522の外側には隔壁162を設けることにより、支持リブ522が安定して突出部520を支持するようにする。隔壁162、支持リブ522および突出部520の構成によって、スタッドボルト500は移動することなくルーフラック300を強く固定することができる。
【0032】
以上、本発明の特定の実施例について図示、説明したが、特許請求の範囲によって提供される本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、種々の改良および変更を加え得ることは、当該分野における通常の知識を有する者には自明であろう。
【符号の説明】
【0033】
12 前方ガラス
14 後方ガラス
50 サイドアウターパネル
52 フランジ
100 サンルーフ外部フレーム
120 一端部
140 中央部
160 他端部
164 シーラー
300 ルーフラック
320 結合ブラケット
322 挿入溝
340 結合部(ナット)
500 締結部(スタッドボルト)
520 突出部
522 支持リブ
620 サンルーフ作動部
640 サンルーフレール
700 ルーフサイドモールディング
M ルーフラック締結装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部がサンルーフ作動部を覆い、他端部がサイドアウターパネルに結合されるサンルーフ外部フレームと、
前記サンルーフ外部フレームの他端部に、上方に盛り上がるように設けられる締結部と、
下端面に前記締結部が挿入される挿入溝が設けられ、前記挿入溝の内部に前記締結部に結合する結合部が設けられるルーフラックと、
前記サンルーフ外部フレームの他端部と前記サイドアウターパネルとの間に設けられ、室内への雨水の流入を遮断するシーラーと、
を含んでなることを特徴とするサンルーフ車両のルーフラック締結装置。
【請求項2】
前記サンルーフ外部フレームの他端部と前記ルーフラックとの間に、サンルーフガラスの側端に隣り合ってルーフサイドモールディングが設けられ、前記締結部は、ルーフサイドモールディングを貫通して前記挿入溝に挿入された後、前記結合部に締結されることを特徴とする請求項1記載のサンルーフ車両のルーフラック締結装置。
【請求項3】
前記サンルーフ外部フレームは、中央部が下方に折り曲げられて凹んだ形状をなし、前記中央部にはサンルーフレールが設置されることを特徴とする請求項1記載のサンルーフ車両のルーフラック締結装置。
【請求項4】
前記サイドアウターパネルの前記サンルーフ側の端部にフランジが設けられ、前記サンルーフ外部フレームの他端部は前記フランジの上面に前記シーラーを介して密着するように設置されることを特徴とする請求項1記載のサンルーフ車両のルーフラック締結装置。
【請求項5】
前記サンルーフ外部フレームの前記締結部はスタッドボルトであり、前記ルーフラックの前記結合部は前記挿入溝の内部に設けられて前記スタッドボルトと締結されるナットであることを特徴とする請求項1記載のサンルーフ車両のルーフラック締結装置。
【請求項6】
前記サンルーフ外部フレームの他端部には前記スタッドボルトが固定される突出部が設けられ、前記突出部を支持する複数の支持リブが突出部に向かって設けられることを特徴とする請求項5記載のサンルーフ車両のルーフラック締結装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−111374(P2010−111374A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46087(P2009−46087)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】