説明

サーバシステム、サーバ用コンピュータ及びブートプログラム

【課題】マスタデータを保護することによって高い信頼性が得られ、必要とされるサービスに応じて円滑に運用できるサーバ用コンピュータを提供する。
【解決手段】 アプリケーションと、このアプリケーションを動作させるためのオペレーティングシステムとを含むマスタデータMをコピーして保存する第1ブート部202、第1ブート部202によるマスタデータMのコピーの後、コピーされたマスタデータを内部メモリ204に展開する第2ブート部203、第2ブート部203によって展開されたマスタデータMにアクセスしてコンピュータを動作させるCPU205によってサーバ用コンピュータを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバシステム、サーバ用コンピュータ及びブートプログラムに係り、特にブレードサーバに使用されるサーバシステム、サーバ用コンピュータ及びブートプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、サーバシステムの分野において、ラックに複数のブレードサーバを搭載して運用することが行われている。このようなブレードサーバの多くは、複数のクライアントによって使用されていて、複数のブレードサーバの一部が一のクライアントに割当てられている。ブレードサーバの従来例としては、例えば、特許文献1が挙げられる。
特許文献1の発明では、複数のブレードサーバを管理サーバによって監理している。管理サーバは、一のクライアントによって使用されるブレードサーバをグループ化して管理する。そして、識別子によってクライアントを認証し、ブレードサーバを使用する正当な権限があるクライアントによる制御要求だけを受付けている。
このような従来技術によれば、正当な権限がないクライアントがブレードサーバを制御する、いわゆる「なりすまし」を防ぐことができる。
【特許文献1】特開2007−156587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、周知のように、コンピュータでは、電源が投入された後にOS(Operating System)を起動するためのブート(boot)処理が行われる。近年のコンピュータの多くは、HDD(Hard Disk Drive)からブートローダがブート用のプログラムを読み込んでブートを実行する。このようなブートは、利便性が高く、操作が簡易である。
しかしながら、HDDからプログラムを読み出すブートでは、HDDのディスクとコンピュータのメモリとが双方向に連携して処理をするため、ディスクに異常が発生することがある。ディスクの異常は、サーバ機能を損ない、サーバによるサービスに対するクライアントの信頼性を低下させることになる。
【0004】
また、サーバには、Webの閲覧やメール等の多様なサービスを短時間に、かつ円滑に提供することが要求されている。サーバに要求されるサービスの種別や処理量は、平日あるいは休日といった日や、午前中と夜間といった時間帯によって変化することが予測される。
しかしながら、従来技術に挙げた発明は、同様の構成を持ったブレードサーバを複数ラックに搭載しているため、日や時間帯等によるサービスの変化に対応することはできない。したがって、例えば、日中にはメールを処理する資源が不足し、夜間はメール機能に余裕があってWebのサービスにあてられる資源が不足するおそれがある。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであって、マスタデータを保護することによって高い信頼性が得られ、必要とされるサービスに応じて円滑に運用できるサーバシステム、サーバ用コンピュータ、ブートプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、本発明の請求項1に記載のサーバシステムは、複数のコンピュータを含むサーバシステムであって、前記コンピュータが、アプリケーションと、当該アプリケーションを動作させるためのオペレーティングシステムとを含むデータであるマスタデータをコピーして保存する第1ブート手段と、前記第1ブート手段によるマスタデータのコピーの後、コピーされたマスタデータをメモリに展開する第2ブート手段と、前記第2ブート手段によって展開されたマスタデータにアクセスしてコンピュータを動作させる制御手段と、を備え、各コンピュータの前記第1ブート手段は、コンピュータの稼動日、稼動の時間帯、稼動状況の少なくとも1つに基づいて選択されたマスタデータをコピーすることを特徴とする。
【0006】
このような発明によれば、コピー元のマスタデータがブートに使用されないので、コピー元のマスタデータを保護することができる。このため、ブートされたマスタデータに不具合が生じた場合にもコピー元のマスタデータを使って再度ブートすることによってサーバが長期間ダウンすることを防ぐことができる。このため、信頼性が高いサーバシステムを提供することができる。また、運用スケジュールに基づいてマスタデータをブートするので、スケジュールに沿ってコンピュータの機能を変更することができ、円滑に運用できるサーバシステムを提供することができる。
【0007】
請求項2に記載のサーバシステムは、請求項1に記載の発明において、複数の前記コンピュータの状態を監視すると共に遠隔操作によって制御する監視装置をさらに含み、前記監視装置は、コンピュータの稼動日、稼動の時間帯、稼動状況の少なくとも1つに基づいて運用スケジュールを設定し、前記運用スケジュールに基づいて決定されたマスタデータが前記第1ブート手段によってコピーされることを特徴とする。
【0008】
このような発明によれば、運用スケジュールをコンピュータの稼動日、稼動の時間帯、稼動状況の少なくとも1つに基づいて設定することができる。このため、必要とされるサービスに応じてコンピュータの機能を変更することができ、円滑に運用できるサーバシステムを提供することができる。
また、請求項3に記載のサーバシステムは、請求項1または2に記載の発明において、前記監視装置が、前記マスタデータを変更するための変更データを前記コンピュータに送信することを特徴とする。
【0009】
このような発明によれば、コピー元のマスタデータを最新のデータに更新することができる。そして、更新後のマスタデータを再ブート等することによってコンピュータが常に最新のマスタデータを使ってブートすることができる。
また、請求項4に記載のサーバ用コンピュータは、アプリケーションと、当該アプリケーションを動作させるためのオペレーティングシステムとを含むデータであるマスタデータをコピーして保存する第1ブート手段と、前記第1ブート手段によるマスタデータのコピーの後、コピーされたマスタデータをメモリに展開する第2ブート手段と、前記第2ブート手段によって展開されたマスタデータにアクセスしてコンピュータを動作させる制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
このような発明によれば、コピー元のマスタデータがブートに使用されないので、コピー元のマスタデータを保護することができる。このため、ブートされたマスタデータに不具合が生じた場合にもコピー元のマスタデータを使って再度ブートすることによってサーバが長期間ダウンすることを防ぐことができる。このため、信頼性が高いサーバシステムを提供することができる。
【0011】
また、請求項5に記載のサーバ用コンピュータは、請求項4に記載の発明において、前記第1ブート手段は、直接接続された記録媒体、通信回線を介して接続される他のコンピュータ内部のメモリまたは他のコンピュータに接続された記録媒体からマスタデータをコピーすることを特徴とする。
このような発明によれば、コンピュータに接続された記録媒体ばかりでなく、通信回線上の他のコンピュータに記録されているマスタデータを使ってブートを実行することができる。
【0012】
また、請求項6に記載のサーバ用コンピュータは、請求項4または5に記載の発明において、マスタデータが前記メモリのアドレスと共に記録され、前記制御手段は前記アドレスが予め記録されているアドレス記録手段を含んでなり、前記第2ブート手段は、前記記録媒体から読み出したマスタデータを前記メモリ内の前記アドレスに展開し、前記制御手段は、前記アドレス記録手段から読み出された前記アドレスにアクセスすることを特徴とする。
【0013】
このようなマスタデータによれば、マスタデータを展開するにあたってメモリを変換する処理や展開できる領域を検索する処理が不要になる。このため、ブートにかかる処理の簡易化を図り、処理時間を短縮することができる。さらに、ブート処理の演算量や必要とされるメモリ容量も軽減し、小型化、低廉化に有利なサーバ用コンピュータを提供することができる。
【0014】
また、請求項7に記載のサーバ用コンピュータは、請求項4から6のいずれか1項に記載の発明において、前記第1ブート手段が、コンピュータの稼動日、稼動の時間帯、稼動状況の少なくとも1つに基づく運用スケジュールに基づいて選択されたマスタデータをコピーすることを特徴とする。
このような発明によれば、運用スケジュールに基づいてマスタデータをブートするので、稼働状況に対応してコンピュータの機能を変更することができ、円滑に運用できるサーバ用コンピュータを提供することができる。
【0015】
また、請求項8に記載のサーバ用コンピュータは、請求項4から7のいずれか1項に記載の発明において、他のサーバ用コンピュータと共にラックに搭載された場合に前記ラックを介して電力の供給を受ける第1コネクタと、単独で直接電力の供給を受ける第2コネクタとをさらに備えることを特徴とする。
このような発明によれば、ラックに搭載された状態の複数のサーバ用コンピュータに一括して電力を供給することができる。また、ラックから外された単独のサーバ用コンピュータに電力を供給することができるので、サーバ用コンピュータを作業者が作業しやすい机上等に移動させてデバック等の作業をすることができる。このため、作業者によるメンテナンスの作業性を高めることができる。
【0016】
また、請求項9に記載のブートプログラムは、コンピュータに、アプリケーションと、当該アプリケーションを動作させるためのオペレーティングシステムとを含むデータであるマスタデータと、当該マスタデータを展開すべきアドレスとをメモリにコピーさせる第1ブート機能と、前記第1ブート機能によってコピーされたマスタデータを、前記アドレスに展開させる第2ブート機能と、を実現させることを特徴とする。
【0017】
このような発明によれば、コピー元のマスタデータがブートに使用されないので、コピー元のマスタデータを保護することができる。このため、ブートされたマスタデータに不具合が生じた場合にもコピー元のマスタデータを使って再度ブートすることによってサーバが長期間ダウンすることを防ぐことができる。このため、信頼性が高いブートプログラムを提供することができる。
また、マスタデータを展開するにあたってメモリを変換する処理や展開できる領域を検索する処理が不要になる。このため、ブートにかかる処理の簡易化を図り、処理時間を短縮することができる。さらに、ブート処理の演算量や必要とされるメモリ容量も軽減し、小型化、低廉化に有利なブートプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図を参照して本発明に係るサーバシステム、サーバ用コンピュータ及びブートプログラムの実施形態1、実施形態2、実施形態3を説明する。
・実施形態1
(1)サーバシステム
図1は、実施形態1のサーバシステムを説明するための図である。実施形態1のサーバシステムは、複数のコンピュータ101を含んでいる。実施形態1では、コンピュータ101が記録媒体に記録されているデータを読み込み、読み込まれたデータを使って動作する。なお、実施形態1では、記録媒体をCF(Compact Flash)とし、図2に示すものとする。また、コンピュータ101は、サーバ用コンピュータである。
【0019】
各コンピュータ101は、電源のオン、オフ状態を通知するためのPOWER−SW信号a、リセットされたことを通知するRESET−SW信号b、HALT状態であることを示すHALTステータス信号cを遠隔制御システム104に出力する。また、IDC設備102の側にある遠隔制御システム104は、顧客事務所103における操作にしたがって制御信号eをコンピュータ101に出力してコンピュータ101を制御している。
なお、実施形態1では、コンピュータ101の物理的なスイッチの操作は、コンピュータ101を直接操作しなければすることができない。
【0020】
(2)コンピュータ
図2は、CF201と実施形態1のコンピュータ101を説明するための図である。CF201は、アプリケーションと、このアプリケーションを動作させるためのオペレーティングシステム(OS)とを含むデータを記憶している。実施形態1では、このデータをマスタデータMと記す。アプリケーションとは、ある目的のための作成された応用ソフトであって、実施形態1では、Webページを閲覧するためのWebサーバソフト、メールの送受信に使用されるmailサーバソフト、ファイルの転送に使用されるftp(File Transfer Protocol)サーバソフト、その他のアプリケーションソフトであるaplサーバソフトがある。
【0021】
また、コンピュータ101は、マスタデータMをコピーして内部メモリ204に保存する第1ブート部202と、第1ブート部202によるマスタデータMのコピーの後、コピーされたマスタデータMを内部メモリ204に展開して運用する第2ブート部203と、を備えている。さらに、コンピュータ101は、サーバとして機能するため、あるいは遠隔制御システム104と通信するための通信制御部206、以上の構成を統括的に制御するためのCPU205を有している。
なお、実施形態1では、CF201に保存されているマスタデータMを修正等の目的で変更する必要が生じた場合、遠隔制御システム104の管理者が通信制御部206を介して変更用のデータを送信する。CPU205は、変更用のデータによってCF201のマスタデータMを更新する。
【0022】
図3(a)、(b)、(c)は、実施形態1のコンピュータの動作を説明するための図である。すなわち、本実施形態では、予めCPU205においてアプリケーションのデータと、アプリケーションの実行に必要なデータをマスタデータMとしてCF201に記録しておく(焼き込んでおく)。アプリケーションの実行に必要なデータとは、アプリケーションプログラムの他、ハードウェアを動作させるためのドライバ、アプリケーションプログラムを他のプログラムから利用できるように部品化したライブイラリ、OSの中核として機能するカーネルがある(a)。
【0023】
CF201がデバイスドライバに挿入されると、第1ブート部202は、CF201からデータを読み出して内部メモリ204にコピーする。この動作によって、第1ブート(1st.Boot)が完了する。第1ブートによってマスタデータMが内部メモリ204上にコピーされる。メモリブートには容量に制限があるため、CF201には必要なモジュールだけが焼き込まれている。CF201の容量が1GBである場合、マスタデータM用の256MB、ユーザ用に768MB程度が使用できる。
【0024】
第1ブートの実行後、第2ブート部203は、マスタデータMを内部メモリ204上に展開して第2ブート(2st.Boot)を実行する(b)。なお、実施形態1では、マスタデータMのコピーと展開がいずれも内部メモリ204においてされるものとしているが、内部メモリ204はデータを保存するためのメモリとワークメモリとを含む概念であって、マスタデータMが同じメモリにコピー、展開される構成に限定するものではない。
【0025】
第2ブートの完了後、CPU205は、展開されたマスタデータにアクセスしてコンピュータ101を動作させる。このようなCPU205は、実施形態1の制御手段に相当する。
実施形態1では、CF201にマスタデータMとマスタデータMを展開すべき内部メモリ204のアドレスとが記録されている。また、このアドレスはROM207に予め保存されていて、CPU205はROM207からアドレスを読み出して制御に使用できる状態にある。このようなROM207は、実施形態1のアドレス記録手段となる。
【0026】
第1ブート部202は、CF201からマスタデータMとアドレスとを読み出してコピーする。第2ブート部203は、コピーされているアドレスにマスタデータMを展開して第2ブートを実行する。CPU205は、ROM207から読み出したアドレスにアクセスすることによって展開されたマスタデータMにアクセスし、コンピュータ101を運用する(c)。
【0027】
このような実施形態1によれば、CPU205が、CF201においても内部メモリ204においてもアドレス変換等の処理をすることなくマスタデータMにアクセスすることができる。このため、コンピュータ101をブートするための処理時間を短縮し、コンピュータの操作性を高めることができる。また、アドレス変換に必要なメモリ等が不要になって、コンピュータ101の小型化、低廉化に寄与することができる。
【0028】
また、実施形態1では、第2ブートの実行後、CPU205は内部メモリ204に展開されたマスタデータMにアクセスしてコンピュータを運用している。このため、コンピュータ101のブート処理に障害が発生した場合にもCF201のマスタデータが損なわれることがない。したがって、障害の発生によって内部メモリ204に展開されたマスタデータMが破損した場合にも、再度第1ブート、第2ブートを実行することによって展開されたマスタデータを修復することができる。
【0029】
さらに、実施形態1では、マスタデータMをCF201と内部メモリ204とに二重化して保存している。このため、CF201のマスタデータMを、コンピュータ101を停止させることなく遠隔制御システム104を介して修正することができる。また、修正データを適切なタイミングで再度ブートすることによって内部メモリ204に展開されたデータに反映させることが可能になる。
図4は、以上述べた実施形態1のコンピュータ101において実行されるブートプログラムを説明するためのフローチャートである。
【0030】
実施形態1では、予めシステムの管理者によってマスタデータMを作成し、CF201に書き込んでいる。マスタデータMは、前記したように、アプリケーションのデータとアプリケーションの実行に必要なデータとをあわせたデータである。アプリケーションの実行に必要なデータとは、アプリケーションプログラムの他、ハードウェアを動作させるためのドライバ、アプリケーションプログラムを他のプログラムから利用できるように部品化したライブラリ、OSの中核をして機能するカーネルがある。
【0031】
実施形態1のマスタデータMは、コンピュータ101用にインストールされるOSやアプリケーションから、目的のアプリ動作に必要最小限のファイルやライブラリ、ドライバを選択し、抽出したものである。
マスタデータMの作成は、ブートされるシステムのイメージを利用して行われる。このため、マスタデータMを作成する際には、イメージのデータが取り出されて編集される。編集されたデータは、マスタデータMとしてCF201に記録される。
【0032】
マスタデータMが記録されたCF201がディスクドライバに挿入されると、CPU205がCF201に記録されているマスタデータMを読み込ませる(ステップS401)。第1ブート部202は、MFS(Memory File System)を作成する(ステップS402)。MFSとは、第1ブート部202がマスタデータMをコピーすることによって作成される、コンピュータ101の実行データを記録するための領域である。
【0033】
第1ブート部202は、CF201からカーネル等と共にファイルシステム(マスタデータMの管理情報)をMFSにコピーする(ステップS403)。コピーされたファイルシステムは、さらに、第2ブート部203によって内部メモリ204に展開される。以降、コンピュータ101の制御は、CPU205からコピーされたファイルシステムに移行される(ステップS404)。
【0034】
(実施形態2)
次に、実施形態2のサーバシステムについて説明する。
図5は、実施形態2のサーバシステムを説明するための図である。なお、コンピュータ101個々の機能及び動作は、実施形態1で説明したコンピュータと同様であるから、図示及び説明を一部省くものとする。
実施形態2では、サーバ装置として動作するコンピュータ101をラック501に複数搭載してサーバシステム601を構築している。そして、遠隔制御システム104がコンピュータ101の稼動日、稼動の時間帯、稼動状況の少なくとも1つに基づいて運用スケジュールを設定する。そして、各コンピュータ101の第1ブート部202が、運用スケジュールに基づいて決定されたマスタデータMをコピーする。
【0035】
この際、ラック501に搭載されている例えば100台のコンピュータ101の各々にCF201を作成するのでは、CF201にデータを焼く作業にかかる負荷が大きくなるばかりでなく、多数のCF201の管理にかかる負荷も大きくなる。CF201の作成や管理にかかる負荷が大きくなれば、サーバシステムの運用効率が低下することにもなり得る。
【0036】
実施形態2のサーバシステムでは、マスタデータMをデータベース化しておき(データベースを図中にBoot−Masterと記す)、Boot−MasterにWebサーバソフト、mailサーバソフト、ftpサーバソフト、aplサーバソフトが記録されている。また、Boot−Masterには、コンピュータ101の運用スケジュールがコンピュータ101ごとに記録されている。図中では、各コンピュータ101の運用スケジュールを、個別設定−1〜個別設定−nとして示している。
【0037】
Boot−Masterは、コンピュータとネットワーク等によって通信可能な他のコンピュータ上にあってもよいし、遠隔制御システム104にデータベースとして存在するものであってもよい。また、Boot−Masterは、コンピュータやデータベースに一括して記録されるものであってもよいし、複数のコンピュータ101やコンピュータ101と遠隔制御システム104に分散して記憶されるものであってもよい。
【0038】
図6は、サーバシステム601同士がネットワークNを介して複数接続された実施形態2の構成を説明するための図である。ネットワークNにはコンピュータ101ばかりでなく、遠隔制御システム104や顧客事務所103の端末装置103aが接続されている。このように構成することにより、遠隔制御システム104は、複数のサーバシステム601を一元的に管理することができる。
【0039】
遠隔制御システム104が複数のサーバシステム601を管理することにより、各コンピュータ101の第1ブート部202は、自装置に直接接続されたCF201等の記録媒体の他、ネットワークNを介して接続される他のコンピュータ内部のHDD等のメモリまたは他のコンピュータに接続されたCF201からマスタデータMをコピーして第1ブートすることができるようになる。自装置に挿入されたCF201から第1ブートすることを媒体ブート、ネットワークNに接続される他のコンピュータからマスタデータMをコピーする第1ブートを、以降、ネットブートと記す。
以下、運用スケジュール、運用スケジュールにしたがって実行される媒体ブート、ネットブートについて説明する。
【0040】
・運用スケジュール
図7(a)、(b)は、実施形態2の運用スケジュールを説明するための図である。運用スケジュールは、サーバシステム601を構成する各コンピュータにブートすべきマスタデータMのアプリケーションと、時間帯とを対応つけて表される。図(a)は、サーバシステム601を構成する各コンピュータの運用スケジュールを例示した図である。図中のA、B、C、D…は、各コンピュータ101のIDである。
【0041】
また、バー701、702、703は、いずれもマスタデータMがコンピュータ101にブートされている時間帯を示していて、網掛けの種別はアプリケーションの種類を示している。例えば、バー701はWebサーバソフトのマスタデータMがブートされている時間帯を示している。また、バー702はmailサーバソフトのマスタデータMがブートされている時間帯を示し、バー703はftpサーバソフトのマスタデータMがブートされている時間帯を示している。このような図7(a)は、A、B、C、D…コンピュータの個別設定を示したものといえる。
【0042】
また、運用スケジュールは、静的にも動的にも決定することが可能である。すなわち、遠隔制御システム104は、サーバシステム601の運用を管理するためにサーバシステム601を構成する各コンピュータ101の稼動の状況を監視している。
図7(b)は、監視対象となる稼働状況を示している。図示したように、稼働状況には、コンピュータ101にブートされているマスタデータMのアプリケーション、稼働時間、非稼働時間、稼働時間及び非稼働時間に基づいて算出される稼働率、アクセス量、データ転送量等がある。遠隔制御システム104は、(b)に示した稼動状況を一定の周期で検出し、記録している。
【0043】
運用スケジュールを静的に決定する場合、遠隔制御システム104は、稼動状況の過去のデータに基づいて稼働率やデータ転送量が高まるコンピュータ101とその時間帯、このコンピュータ101にブートされているアプリケーションを検出する。そして、稼働率等が高まる時間帯には、検出されたアプリケーションがより多くのコンピュータ101にブートされるよう運用スケジュールを設定する。また、反対に、特定のアプリケーションがブートされているコンピュータ101の稼働率等が低下する時間帯が検出された場合、遠隔制御システム104は、検出された時間帯にアプリケーションがブートされるコンピュータの数を減らすように運用スケジュールを設定する。
【0044】
なお、稼働状況の過去のデータとは、例えば、サーバシステム601の前日の稼働状況であってもよい。また、一ヶ月、一週間といった期間のデータを平均化したものであってもよい。
また、運用スケジュールを動的に決定する場合、遠隔制御システム104は、稼動状況を周期的に検出しながら、稼働率等が高まったコンピュータ101と稼働率等が低いコンピュータ101とを検出する。そして、稼働率等が高いコンピュータ101にブートされているマスタデータMを、他のコンピュータにもブートするよう運用スケジュールを決定する。
【0045】
さらに、実施形態2では、クライアントX社に割当てられたコンピュータ101にかかる負荷が過大になる時間帯にクライアントY社に割当てられたコンピュータ101に余裕が生じるといった場合、時間帯に応じてクライアントに対するコンピュータ101の割当数を変更するものであってもよい。実施形態2のサーバシステムでは、アプリケーションプログラムと共にOSもCF201に焼き込んでいるから、異なるOSを使用しているクライアント間においてもコンピュータ101の割当数を調整することが可能になる。
決定された運用スケジュールは、ネットワークNを介して各サーバシステム601に送信される。サーバシステム601を構成する複数の各コンピュータ101は、自装置のIDと対応する運用スケジュールにしたがってマスタデータMをブートする。
【0046】
・媒体ブート
媒体ブートする場合、コンピュータ101に挿入されているCF201を、運用スケジュールにしたがって交換することが必要になる。CF201の交換は、例えば、送信された運用スケジュールにしたがって作業者がCF201を交換するものであってもよい。また各々が異なるマスタデータMを記憶している複数のCF201をコンピュータ101に挿入しておき、コンピュータ101が運用スケジュールにしたがってCF201を選択してブートするものであってもよい。また、このような構成において、複数のCF201をコンピュータ101に挿入するためのデバイスは、コンピュータ101ごとに設
さらに、このようなデバイスに挿入されたCF201に複数のマスタデータMを記録しておき、第1ブート部101が、運用スケジュールにしたがってマスタデータMを選択し、コピーするものであってもよい。
【0047】
・ネットブート
ネットブートする場合、遠隔制御システム104は、自システムが管理するサーバシス601のどのコンピュータ101が、どのようなマスタデータMを保持しているか認識している。なお、マスタデータMの保持は、コンピュータ101に挿入されているCF201に記録されているものであっても、HDDに記録されているものであってもよい。遠隔制御システム104は、運用スケジュールにしたがって各コンピュータ101に必要なマスタデータMを特定する。そして、特定したマスタデータMをネットワークN上にある他のコンピュータから、マスタデータMをブートすべきコンピュータ101に送信する。送信されたマスタデータMは、第1ブート部202によって内部メモリ204にコピーされ、第2ブート部203によって展開される。
【0048】
また、ネットワークN上にあるコンピュータからネットブートできる実施形態2では、遠隔制御システム104が、マスタデータMが記録されたマスタデータMを多数保持し、運用スケジュールにしたがって特定のコンピュータ101に転送するようにしてもよい。なお、コンピュータ101と、コンピュータに転送されるマスタデータMとの対応付けは、1つのコンピュータ101に1つのマスタデータMを転送するようにしてもよい。
【0049】
なお、コンピュータ101とマスタデータMとを1対1に対応つけるとは、コンピュータ101と特定のCF201やコンピュータのHDDに記録されているマスタデータMを対応つけることを意味している。したがって、同じアプリケーションのソフトウェアであって、異なるCF201に保存されているマスタデータMはそれぞれ異なるコンピュータ101に対応つけられることになる。
さらに、複数のコンピュータ101に1つのマスタデータMを転送するようにしてもよい。この場合にも、1つのマスタデータMとは、1つのCF201やコンピュータのHDDに記録されているマスタデータMをいう。
【0050】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3を説明する。実施形態3は、ラック501に搭載された各コンピュータ101が、他のコンピュータと共にラック501に搭載された場合、ラック501を介して電力の供給を受ける第1コネクタと、単独で直接電力の供給を受ける第2コネクタとを備えるものである。
【0051】
図8は、コンピュータ101を複数搭載した状態のラック501の背面803を示している。コンピュータ101は、各々が背面8に電力の供給を受けるためのコネクタ801を有していて、ラック501に搭載された時点でコネクタ801が図示しないラック501に設けられたコネクタと電気的に接続される。ラック501には商用電源等から電力の供給を受けるためのコネクタ802があって、コネクタ802と商用電源とをケーブル等によって接続することによって複数のコンピュータ101に電力が供給される。
【0052】
図9は、コネクタ801を第1コネクタ、第2コネクタとするための構成を説明するための図である。実施形態3では、コネクタ801をカバー部材901によってカバーする。カバー部材901には導電部材でなる導電路904が設けてあって、導電路904の一端がコネクタ801と電気的に接続するコネクタ905に接続されている。また、導電路904の他端は、第1コネクタであるコネクタ903、第2コネクタであるコネクタ902に接続されている。なお、実施形態3では、コネクタ902をACアダプタとした。
【0053】
このように構成した場合、コンピュータ101は、ラック501に搭載された場合にはコネクタ903がラック501の側のコネクタと接続され、ラック501を介して電力の供給を受ける。また、コンピュータ101は、ラック501から外された場合、コネクタ902とAC電源等をケーブルによって接続することによって単独で電力の供給を受けることができる。
単独のコンピュータ101に電力を供給することにより、実施形態3では、作業者が、コンピュータ101をラック501から外し、机上でディバック等の作業をすることができる。このような実施形態3の構成は、コンピュータ101をメンテナンスする場合の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態1のサーバシステムを説明するための図である。
【図2】本発明のコンパクトディスクと実施形態1のコンピュータを説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態1のコンピュータの動作を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態1のコンピュータにおいて実行されるブートプログラムを説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態2のサーバシステムを説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態2のサーバシステムがネットワークに接続されている状態を説明するための図である。
【図7】本発明の実施形態2の運用スケジュールを説明するための図である。
【図8】本発明の実施形態3を説明するための図である。
【図9】本発明の実施形態3のコネクタを説明するための図である。
【符号の説明】
【0055】
101 コンピュータ
103 顧客事務所
104 遠隔制御システム
201 コンパクトディスク(CF)
202 第1ブート部
203 第2ブート部
204 内部メモリ
205 CPU
206 通信制御部
207 ROM
501 ラック
601 サーバシステム
801,902,903,905 コネクタ
901 カバー部材
904 導電路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンピュータを含むサーバシステムであって、
前記コンピュータは、
アプリケーションと、当該アプリケーションを動作させるためのオペレーティングシステムとを含むデータであるマスタデータをコピーして保存する第1ブート手段と、
前記第1ブート手段によるマスタデータのコピーの後、コピーされたマスタデータをメモリに展開する第2ブート手段と、
前記第2ブート手段によって展開されたマスタデータにアクセスしてコンピュータを動作させる制御手段と、を備え、
各コンピュータの前記第1ブート手段は、コンピュータの稼動日、稼動の時間帯、稼動状況の少なくとも1つに基づいて選択されたマスタデータをコピーすることを特徴とするサーバシステム。
【請求項2】
複数の前記コンピュータの状態を監視すると共に遠隔操作によって制御する監視装置をさらに含み、
前記監視装置は、
コンピュータの稼動日、稼動の時間帯、稼動状況の少なくとも1つに基づいて運用スケジュールを設定し、前記運用スケジュールに基づいて決定されたマスタデータが前記第1ブート手段によってコピーされることを特徴とする請求項1に記載のサーバシステム。
【請求項3】
前記監視装置は、前記マスタデータを変更するための変更データを前記コンピュータに送信することを特徴とする請求項1または2に記載のサーバシステム。
【請求項4】
アプリケーションと、当該アプリケーションを動作させるためのオペレーティングシステムとを含むデータであるマスタデータをコピーして保存する第1ブート手段と、
前記第1ブート手段によるマスタデータのコピーの後、コピーされたマスタデータをメモリに展開する第2ブート手段と、
前記第2ブート手段によって展開されたマスタデータにアクセスしてコンピュータを動作させる制御手段と、
を備えることを特徴とするサーバ用コンピュータ。
【請求項5】
前記第1ブート手段は、直接接続された記録媒体、通信回線を介して接続される他のコンピュータ内部のメモリまたは他のコンピュータに接続された記録媒体からマスタデータをコピーすることを特徴とする請求項4に記載のサーバ用コンピュータ。
【請求項6】
マスタデータが前記メモリのアドレスと共に記録され、前記制御手段は前記アドレスが予め記録されているアドレス記録手段を含んでなり、
前記第2ブート手段は、前記記録媒体から読み出したマスタデータを前記メモリ内の前記アドレスに展開し、
前記制御手段は、前記アドレス記録手段から読み出された前記アドレスにアクセスすることを特徴とする請求項4または5に記載のサーバ用コンピュータ。
【請求項7】
前記第1ブート手段は、コンピュータの稼動日、稼動の時間帯、稼動状況の少なくとも1つに基づく運用スケジュールに基づいて選択されたマスタデータをコピーすることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載のサーバ用コンピュータ。
【請求項8】
他のサーバ用コンピュータと共にラックに搭載された場合に前記ラックを介して電力の供給を受ける第1コネクタと、単独で直接電力の供給を受ける第2コネクタとをさらに備えることを特徴とする請求項4から7のいずれか1項に記載のサーバ用コンピュータ。
【請求項9】
コンピュータに、
アプリケーションと、当該アプリケーションを動作させるためのオペレーティングシステムとを含むデータであるマスタデータと、当該マスタデータを展開すべきアドレスとをメモリにコピーさせる第1ブート機能と、
前記第1ブート機能によってコピーされたマスタデータを、前記アドレスに展開させる第2ブート機能と、
を実現させることを特徴とするブートプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−15523(P2009−15523A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175497(P2007−175497)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(508132067)VORTECHS株式会社 (1)
【出願人】(507225562)株式会社アイピーコア研究所 (3)
【Fターム(参考)】