説明

サービス品質制御方法およびシステム

【課題】集線装置の複雑化を回避でき、信頼性の向上および消費電力低減を達成できるサービス品質制御方法およびシステムを提供する。
【解決手段】集線装置(10)に複数の下位装置(#00−#0n)が接続され、各下位装置からの上りデータフローのQoS制御システムであって、集線装置はフロー制御部(101)とフェアネス制御部(103)とを有し、各下位装置はパケット送信制御部(20.0−20.n)を有し、各パケット送信制御部はフェアネス制御部により割り当てられた送信許可帯域に従って上りデータフローの優先度制御を行い、優先度制御された上りデータフローを集線装置へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は集線装置を含むアクセス系データ伝送システムに係り、特にサービス品質(QoS:Quality of Service)の制御方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多数のキャリアからエンドユーザ向けインターネット接続サービスが提供され、広く普及している状況である。これらのインターネット接続は、安価なサービス提供を実現するためにネットワークアクセスエッジ部に集線装置を設け、集線装置で加入者線を集約する共に公平制御や優先制御のQoS制御を実施している(たとえば特許文献1、特許文献2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−021918号公報
【特許文献2】特開2009−141552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、集線装置はQoS機能を実現する為に、多くのパケットバッファメモリと大規模なQoS制御機能を有しており、その結果として部品点数の増加による信頼性の低下やそれに伴う可用性の低下、また装置の消費電力や発熱量増加を招来している。特に、近年の低消費エネルギー化への潮流のなかで情報機器に対しても省エネ化が求められており、信頼性の低下やそれに伴う可用性の低下だけでなく消費電力および発熱量の増加も抑制することが求められている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、集線装置の複雑化を回避でき、信頼性の向上および消費電力低減を達成できるサービス品質制御方法およびシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるサービス品質制御システムは、集線装置に複数の下位装置が接続され、各下位装置から前記集線装置へ送信される上りデータフローのサービス品質を制御するシステムであって、前記集線装置はフロー制御手段とフェアネス制御手段とを有し、前記複数の下位装置の各々は送信制御手段を有し、各下位装置の前記送信制御手段は、前記フェアネス制御手段により割り当てられた送信許可帯域に従って上りデータフローの優先度制御を行い、優先度制御された上りデータフローを前記集線装置へ送信する、ことを特徴とする。
【0007】
本発明によるサービス品質制御方法は、集線装置に複数の下位装置が接続され、各下位装置から前記集線装置へ送信される上りデータフローのサービス品質を制御する方法であって、前記集線装置はフロー制御手段とフェアネス制御手段とを有し、前記複数の下位装置の各々は送信制御手段を有し、前記フェアネス制御手段が各下位装置から受信した使用帯域要求に対して公平制御により送信許可帯域を決定し、各下位装置の前記送信制御手段が前記送信許可帯域に従って上りデータフローの優先度制御を実行し、優先度制御された上りデータフローを前記集線装置へ送信する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明よれば、集線装置の複雑化を回避でき信頼性の向上および消費電力低減を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は本発明の一実施形態によるQoS分散制御システムを適用した集線装置および下位装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】図2は本実施形態におけるQoS分散制御動作の一例を示すシーケンス図である。
【図3】図3(A)は本実施形態において用いられる帯域要求パケットのフォーマット図、図3(B)は本実施形態において用いられる許可帯域通知パケットのフォーマット図である。
【図4】図4は本実施形態における下位装置の優先制御動作を示すフローチャートである。
【図5】図5(A)は本実施形態における集線装置の公平制御動作を示すフローチャート、図5(B)は本実施形態における集線装置のデータ通信時の通信制御動作を示すフローチャートである。
【図6】図6(A)は本実施形態における集線装置に各下位装置から要求された帯域総量の変化を示すグラフ、図6(B)は本実施形態における集線装置の公平制御により得られた各下位装置の送信許可帯域の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明によれば、これまで集線装置で実行されていたQoS制御を集線装置が収容する複数の下位装置との間で分担することにより、構成の簡素化および集線装置の信頼性の向上および消費電力低減が可能となる。具体的には、下位装置へお使用帯域割当制御機能(フェアネス制御)と実際の送信時の輻輳抑止機能とを集線装置側で、クラス優先制御機能を下位側装置側でそれぞれ分散処理することにより、集線装置内でのパケット輻輳抑止のためのパケットバッファメモリの排除と、QoS制御機能の規模縮小と、負荷分散による集線装置の信頼性向上および消費電力の低減とを達成することができる。なお、本発明は多重化され輻輳の発生する可能性のある上り方向の通信量制御を主としている。
【0011】
1.構成
図1において、本発明の一実施形態によるアクセス系伝送システムは、集線装置1がn個の下位装置#00〜#0nにそれぞれ接続されたn本の回線を収容しているものとする。下位装置#00〜#0nは、たとえば各戸に設けられたホームゲートウェイなどであり、ここでは各下位装置にユーザ端末が接続されているものとする。
【0012】
集線装置10は、フロー制御部101、多重化/分離部102およびフェアネス制御部103を機能的に含んでおり、フロー制御部101には、帯域割当要求抽出部110、送信許可帯域通知部111および上りパケット廃棄制御部112の各機能が含まれている。後述するように、各下位装置からの帯域要求を受けてフェアネス制御部103が各下位装置に対して送信帯域を割り当てると、各下位装置からの上りデータパケットは上りパケット廃棄制御部112により割輻輳抑止されつつ多重化/分離部102へ転送される。多重化/分離部102は上りデータパケットを多重化してネットワークへ送信する。
【0013】
下位装置#00〜#0nには、パケット送信制御部20.0〜20.nがそれぞれ設けられ、後述するようにユーザ端末からの送信パケットに対してクラス優先度制御を実行し、集線装置10へ送信する。
【0014】
なお、集線装置10のフロー制御部101およびフェアネス制御部103の機能は、図示しないプログラム制御プロセッサ上でメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現することも可能である。また、各下位装置のパケット送信制御部も同様に、下位装置のプログラム制御プロセッサ上でメモリに格納されたプログラムを実行することにより同等の機能を実現することができる。以下、本実施形態によるQoS分散制御システムの動作を図2および図3を参照しながら説明する。
【0015】
2.動作
2.1)システムシーケンス
図2において、下位装置#00〜#0nのパケット送信制御部20.0〜20.nがそれぞれ帯域要求パケットP00〜P0nを集線装置10へ送信したとする。帯域要求パケットP00〜P0nは、図3(A)に示すように、通常ヘッダに続いて、送信元である下位装置を識別する番号と当該下位装置が要求する送信帯域量とを含む。
【0016】
集線装置10が帯域要求パケットP00〜P0nを受信すると、フロー制御部101の帯域割当要求抽出部110は、各帯域要求パケットの送信元識別番号とその帯域要求量とを抽出してフェアネス制御部103へ提供する。
【0017】
フェアネス制御部103は、下位装置間の使用帯域が公平になるように使用帯域を割り当て、その割当結果をフロー制御部101に戻す(ステップ301)。
【0018】
フロー制御部101の通信許可帯域通知部111は、各下位装置に割当許可された使用帯域を格納した許可帯域通知パケットP10〜P1nを生成し、それぞれの宛先である下位装置#00〜#0nへ送信する。許可帯域通知パケットP10〜P1nは、図3(B)に示すように、通常ヘッダに続いて、送信先となる下位装置を識別する番号と当該下位装置に許可された送信帯域情報とを含む。
【0019】
下位装置#00〜#0nが許可帯域通知パケットP10〜P1nをそれぞれ受信すると、各下位装置のパケット送信制御部は、自局に割り当てられた許可帯域内での通常の送信パケットの優先度制御を実行し(ステップCP0−CPn)、こうして優先度制御された上り送信パケットP−U0〜P−Unが集線装置10へ送信される。
【0020】
上り送信パケットP−U0〜P−Unを集線装置10が受信すると、フロー制御部101の上りパケット廃棄制御部112は、上り送信パケットP−U0〜P−Unに対して送信許可帯域内での帯域チェックと過剰帯域分の廃棄制御を行い、多重化/分離部102により多重化されてネットワークへ送出される(ステップ302)。
【0021】
2.2)下位装置の動作
図4において、まず、下記装置#0i(i=1,2,・・・n)のパケット送信制御部20.iは、予め設定された時間間隔で、ユーザ端末#iとの通信量を元に使用予定帯域を計算し(ステップ401)、上述した帯域要求パケットP0iを生成して集線装置10へ送信する(ステップ402)。帯域要求パケットP0iを送信すると、パケット送信制御部20.iは集線装置10からの送信許可帯域通知を待つ(ステップ403)。
【0022】
所定時間経過前に上述した許可帯域通知パケットP1iを受信すると(ステップ403のYES)、パケット送信制御部20.iは許可された割当送信帯域内でユーザ端末#iからの送信パケットを優先度制御し、上り送信パケットP−Uiを集線装置10へ送信する(ステップ404)。所定時間経過しても許可帯域通知パケットP1iを受信しなかった場合には(ステップ403のNO)、パケット送信制御部20.iは予め決められた最低保証帯域内でユーザ端末#iからの送信パケットを優先度制御し、上り送信パケットP−Uiを集線装置10へ送信する(ステップ405)。
【0023】
2.3)集線装置の動作
図5(A)において、まず、帯域要求パケットP00〜P0nを受信すると、フロー制御部101の帯域割当要求抽出部110は各帯域要求をフェアネス制御部103へ出力する(ステップ501)。
【0024】
フェアネス制御部103は、各下位装置からの要求帯域に対して、下位装置間の一定時間ごとの使用可能帯域が公平となるように各下位装置の帯域割当てを行う(ステップ502)。具体的には、各下位装置からの要求帯域を比較し、ある一定時間の間で帯域割当て結果が公平になるように各下位装置間の要求帯域について調停を行う。この調停は、下位装置#00〜#0nに割り当てられる送信可能帯域の合計値がアップリンク側回線の総帯域を越えないように行われる。
【0025】
たとえば、図6(A)に示すように、下位装置#00、#01および#0nからそれぞれの要求帯域が受信されたとしても、フェアネス制御部103により、図6(B)に示すように、アップリンク側回線の総帯域以下で送信帯域を各下位装置へ公平に割り当てられる。
【0026】
こうして下位装置間の使用帯域が公平になるように使用帯域を割り当てられると、その割当結果がフロー制御部101に戻される。通信許可帯域通知部111は、各下位装置に割当許可された使用帯域を格納した許可帯域通知パケットP10〜P1nを生成し、それぞれの宛先である下位装置#00〜#0nへ送信する(ステップ503)。許可帯域通知パケットP10〜P1nの送信方法としては、たとえばネットワークからの下り通信パケットが多重化/分離部102により宛先の下位装置ごとに分離され、対応する下位装置#0i宛の下り通信パケットストリームに、許可帯域通知パケットP1iを下り通信路に挿入して送信する。
【0027】
図5(B)において、上り送信パケットP−Uiを受信すると(ステップ504)、フロー制御部101の上りパケット廃棄制御部112は、上り送信パケットP−Uiの通信量が送信許可帯域内であるか否かを判定する(ステップ505)。上り送信パケットP−Uiの通信量が割当て帯域を上回る場合には(ステップ505のNO)、上りパケット廃棄制御部112は、過剰帯域分のパケットのみ廃棄を行い割当て帯域内に収まるように制御し(ステップ506)、上り送信パケットP−Uiの通信量が割当て帯域以内であれば(ステップ505のYES)、そのまま多重化/分離部102で多重化しネットワークへ送信する(ステップ507)。
【0028】
3.効果
本実施形態によれば、QoS機能を集線装置10と各下位装置とに分散配置したことにより、集線装置10の機能集中を解消する事ができ、結果として構成簡素化による信頼性の向上、可用性の向上および消費電力の低減が可能となる。さらに、装置構成の簡素化とパケット輻輳を排除した事により無駄な通信を抑止でき雑音を抑える効果もある。
【0029】
4.他の実施形態
なお本発明はパケット通信を使用している上記実施形態に限定されるものではなく、たとえば交通トラフィックの制御など、他の集線装置でバッファリングを行うものに適用できる更なる拡張性を持つものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、トラフィック集線処理機構を有するデータ処理装置、通信装置あるいは伝送装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
#1〜#n ユーザ端末
#00〜#0n 下位装置
10 集線装置
20.0〜20.n パケット送信制御部
101 フロー制御部
102 多重化/分離部102
103 フェアネス制御部
110 帯域割当て要求抽出部
111 送信許可帯域通知部
112 上りパケット廃棄制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集線装置に複数の下位装置が接続され、各下位装置から前記集線装置へ送信される上りデータフローのサービス品質を制御するシステムであって、
前記集線装置はフロー制御手段とフェアネス制御手段とを有し、
前記複数の下位装置の各々は送信制御手段を有し、
各下位装置の前記送信制御手段は、前記フェアネス制御手段により割り当てられた送信許可帯域に従って上りデータフローの優先度制御を行い、優先度制御された上りデータフローを前記集線装置へ送信する、ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記集線装置の前記フロー制御手段は、各下位装置から受信した前記上りデータフローに対して前記送信許可帯域を超える帯域分のデータを廃棄することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記下位装置の前記送信制御手段は使用帯域要求を前記集線装置へ送信し、前記集線装置の前記フェアネス制御手段は各下位装置から受信した使用帯域要求に対して公平制御により送信許可帯域を決定して前記下位装置へ返信することを特徴とする請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
複数の下位装置の各々に接続した回線を収容する集線装置であって、
複数の上りデータフローを多重化してネットワークへ送信する多重化手段と、
各下位装置から受信した使用帯域要求に対して公平制御により送信許可帯域を決定して前記下位装置へ返信するフェアネス制御手段と、
各下位装置で優先度制御された上りデータフローを受信し前記多重化手段へ転送するフロー制御手段と、
を有することを特徴とする集線装置。
【請求項5】
前記フロー制御手段は、各下位装置からの上りデータフローにおける前記送信許可帯域を超える帯域分のデータを廃棄することを特徴とする請求項4に記載の集線装置。
【請求項6】
集線装置に複数の下位装置が接続され、各下位装置から前記集線装置へ送信される上りデータフローのサービス品質を制御する方法であって、
前記集線装置はフロー制御手段とフェアネス制御手段とを有し、前記複数の下位装置の各々は送信制御手段を有し、
前記フェアネス制御手段が各下位装置から受信した使用帯域要求に対して公平制御により送信許可帯域を決定し、
各下位装置の前記送信制御手段が前記送信許可帯域に従って上りデータフローの優先度制御を実行し、優先度制御された上りデータフローを前記集線装置へ送信する、
ことを特徴とするサービス品質制御方法。
【請求項7】
前記集線装置の前記フロー制御手段は、各下位装置から受信した前記上りデータフローに対して前記送信許可帯域を超える帯域分のデータを廃棄することを特徴とする請求項6に記載のサービス品質制御方法。
【請求項8】
前記下位装置の前記送信制御手段は使用帯域要求を前記集線装置へ送信し、前記集線装置の前記フェアネス制御手段は各下位装置から受信した使用帯域要求に対して公平制御により送信許可帯域を決定して前記下位装置へ返信することを特徴とする請求項6または7に記載のサービス品質制御方法。
【請求項9】
複数の下位装置の各々に接続した回線を収容する集線装置におけるプログラム制御プロセッサを機能させるプログラムであって、
フェアネス制御手段が各下位装置から受信した使用帯域要求に対して公平制御により送信許可帯域を決定して前記下位装置へ返信し、
フロー制御手段が各下位装置で優先度制御された上りデータフローを受信し多重化手段へ転送し、
前記多重化手段が複数の上りデータフローを多重化してネットワークへ送信する、
ように前記プログラム制御プロセッサを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
前記フロー制御手段が各下位装置からの上りデータフローにおける前記送信許可帯域を超える帯域分のデータを廃棄することを特徴とする請求項9に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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