説明

サーボアクチュエータ

【課題】エネルギ効率を向上するサーボアクチュエータを提供すること。
【解決手段】本発明のサーボアクチュエータは、出力軸22を回転する電動モータ部20と、出力軸の回転を主軸1の軸方向変位に変換する回転変換部30と、これらを取り付けるケース40とを備え、回転変換部は、ボールねじ機構50と、ボールねじ機構の回転を阻止するとともに、軸方向への移動を許容する案内機構55を備え、案内機構は、主軸の中心において略直交する2つの面上に形成された一対のレール面34aを有するレール34と、ボールねじナット31に取り付けられ、各レール面を転動する一対のローラ33aとからなる一対の案内ユニット33を、主軸を挟んで対称位置に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加振試験装置に使用するサーボアクチュエータの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、油圧式サーボアクチュエータを適用した加振試験装置が知られている。この加振試験装置は、試験装置本体とは別に試験装置を駆動する油圧源を配置し、一方向にのみ回転駆動する油圧源は、加振試験装置のシリンダと油圧ホースを介して接続される。さらに加振試験装置と駆動源の間の油圧ホースに高速応答性のサーボ弁を接続し、サーボ弁の切り換えにより、シリンダの移動速度や荷重を制御している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭53−23682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の加振試験装置にあっては、油圧源が常に試験装置の最大負荷に対応した圧力、流量を発生しているため、実際に要求される圧力や流量が低い場合にはエネルギ損失が大きくなる。エネルギ損失が大きくなることで、発熱量が増大し、熱を放出するための冷却装置の容量が大きくなる。
【0004】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、エネルギ効率の高いサーボアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、出力軸を回転する電動モータを備えた電動モータ部と、前記出力軸の回転を主軸の軸方向変位に変換する回転変換部と、前記電動モータ部と前記回転変換部とをそれぞれ取り付けるケースとを備え、前記回転変換部は、前記出力軸の外周面に形成されたボールねじと、このボールねじにボールを介して螺合し、前記主軸に連結するボールねじナットとからなるボールねじ機構と、前記ボールねじナットの回転を阻止するとともに、軸方向への移動を許容する案内機構とを備え、前記案内機構は、前記主軸の中心において略直交する2つの面上に形成された一対のレール面を有する前記主軸と平行なレールと、前記ボールねじナットに取り付けられ、前記各レール面を転動する一対のローラとからなる一対の案内ユニットを、前記主軸を挟んで対称位置に配置したことを特徴とするサーボアクチュエータである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電気エネルギーをサーボアクチュエータの駆動源とすることで、エネルギ消費が負荷に対応し、無駄なエネルギ消費が抑制される。その結果、サーボアクチュエータのエネルギー効率を向上させることができる。サーボアクチュエータを構成する電動モータ部と回転変換部とをケースを取り付けて一体的に構成したので、サーボアクチュエータの運搬や設置が容易となる。一対のレール面を有する主軸と平行なレールと、各レール面を転動する一対のローラとからなる一対の案内ユニットを、主軸を挟んで対称位置に配置したため、主軸が軸方向へ移動する際のガタを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は加振試験装置に適用される本発明のサーボアクチュエータの正面図であり、図2は図1のA−A断面図であり、図3は図2のB−B断面図であり、図4は背面図であり、図5は平面図である。
【0008】
本発明のサーボアクチュエータは、図2に示すように、加振軸(主軸)1を軸方向に摺動可能に支持する支持部10と、この加振軸1を軸方向にストロークさせるダイレクトドライブモータ(以下、単にモータという。)2を備える電動モータ部20と、このモータ2の回転を加振軸1の軸方向の直線運動に変換する回転変換部30と、これら支持部10と電動モータ部20と回転変換部30を一体的に結合するケース40とを備える。ここで、ダイレクトドライブモータ2は、回転を間接的機構(ギアボックスなど)を介さずに直接、駆動対象(後述の出力軸22)に伝達する。
【0009】
支持部10は、加振軸1の径方向に延出する鍔部12aを備え、加振軸1が貫通する円筒部材12と、円筒部材12の内周面に設置され、加振軸1を摺動可能に支持する軸受メタル13とからなり、ボルト14bを介して円筒部材12の鍔部12aがケース40に固定される。支持部10は、加振軸1を軸方向へ摺動可能に支持すると共に、加振対象から入力する軸直角方向(径方向)の外力に抗して加振軸1を支持し、加振軸1の振れ回りを抑制する。
【0010】
電動モータ部20は、加振軸1と同軸に配置されたモータ2と、モータ2のロータ2aに同軸的に固定され、支持部10側に延びる出力軸22とを備える。出力軸22に加わる軸方向及び径方向の荷重を支持するために、ロータ2aを挟んで同軸に第1連結材24と連結軸26とがそれぞれロータ2aに固定される。第1連結材24は、内部を出力軸22が貫通し、第1ベアリング23を介してケース40に回転自在に支持される。連結軸26は、第1連結材24と反対側でロータ2aに固定され、第2ベアリング25を介してケース40に回転自在に支持される。さらに連結軸26の端部には、ロータ2aの回転位置を検出するエンコーダ27が設けられる。
【0011】
モータ2のロータ2aには、出力軸22と同軸にテーパ形状の貫通孔2fが形成される。出力軸22のロータ2a側の端部22aの外周面は、貫通孔2fのテーパ形状と同一形状に形成され、ロータ2aの貫通孔2fに出力軸22の端部22aが嵌り込む。出力軸22とロータ2aとは、出力軸22の端部に形成されたオネジ22cにナット28が螺合することにより結合する。このようにテーパ面を介して出力軸22とロータ2aとを直接に結合することにより、ロータ2aと出力軸22の間に遊びが生じず、ロータ2aの回転が効率よく出力軸22へ伝達される。
【0012】
ケース40は、電動モータ部20を内装する第1本体部41と、回転変換部30を内装する第2本体部42とが軸方向に結合して構成される。第1本体部41は、その内周面にモータ2のステータ2bが固定される円筒状の第1筒部41aと、第1筒部41aの両側の開口部を塞ぐ一対の第1蓋部41bと第2蓋部41cとから構成する。第1筒部41aは、図4に示すように、その外周面に放射状に複数のフィン43を備える。モータ2の熱を放出する。第1蓋部41bは、出力軸22と同軸の第1孔部41dを備え、この第1孔部41dに回転変換部30を構成するレール34を支持する第2連結材37が嵌合し、ボルト41fにより第1蓋部41bに固定される。第2連結材37の内周面には、第1ベアリング23が嵌合し、第1連結材24を回転可能に支持する。第2蓋部41cは、出力軸22と同軸の第2孔部41eを備え、この第2孔部41eに第2ベアリング25が嵌合し、第2ベアリング25が連結軸26を回転可能に支持する。また、この第2蓋部41cには、エンコーダ27を覆うカバー44が取り付けられる。
【0013】
第2本体部42は、回転変換部30を内装する第2筒部42aと、この第2筒部42aの一方の開口端を閉止する第3蓋部42bとを備える。第2筒部42aの他方の開口端は、第1本体部41の第1蓋部41bに突き当てられ、第2本体部42と第1本体部41とがボルト45、ナット46により結合する。第3蓋部42bの内面には、レール34を支持する第3連結材47がボルト14aにより固定され、その外面には、支持部10の円筒部材12がボルト14bにより固定される。
【0014】
次に、モータ2の回転を加振軸1の軸方向の直線運動に変換する回転変換部30を説明する。回転変換部30は、モータ2の回転を加振軸1の軸方向への直線運動へ変換するボールねじ機構50と、ボールねじナット31の軸方向への移動を許容しつつ、軸回りの回転を規制する案内機構55とを備える。
【0015】
ボールねじ機構50は、出力軸22に形成したボールねじ22bと、これに螺合するボールねじナット31とにより形成する。支持部10に支持される加振軸1は、ボールねじナット31に固定される。加振軸1の内部には軸心に沿って出力軸22の長さに応じた所定深さの孔1aが形成され、この孔1aに出力軸22が入り込む。ボールねじ22bが出力軸22の外周面に形成され、ボールねじナット31に複数のボールを介して螺合する。ボールねじ22bの長さは、加振軸1の軸方向の移動量、つまりサーボアクチュエータのストローク量に応じて設定する。案内機構55は、図3に示すように、ボールねじ機構50の外周部に配置する。
【0016】
図2と図3を参照すると、案内機構55は、加振軸1の上下に対称的に配置された一対の案内ユニット33を備える。案内ユニット33は、レール34と、このレールに転接する一対のローラ33aとから構成される。各レール34は、加振軸1の中心線と平行に配置され、両端を第2連結材37と第3連結材47とに支持される。
【0017】
各レール34は、2つのレール面34aを備える。これらのレール面34aは、軸方向から見て加振軸1の中心を通る垂直面の左右に対称に配置され、各レール面34aの延長線は、加振軸1の中心を通る垂線上で交差する。したがって、形成された4つのレール面34aは周方向に90度ごとの間隔で配置される。
【0018】
ボールねじナット31には、軸方向から見てレール面34aに平行、かつ加振軸1の軸芯に直交する軸周りに回転自在に支持された4つのローラ33aが取り付けられる。これら4つのローラ33aは、上下に2つずつ配置され、各一対のローラ33aが1つのレール34の一対のレール面34aを外側から挟持しつつ、レール面34a上を軸方向に転動する。
【0019】
次に作用を説明する。
【0020】
モータ2に通電すると、モータ2のロータ2aに直接的に結合した出力軸22が回転する。出力軸22の回転は、回転を直線変位に変換する回転変換部30のボールねじ機構50により加振軸1の軸方向の変位へと変換される。このため、モータ2の回転方向や回転速度などの運転条件を制御することにより、加振軸1を所定のストローク量、荷重、周波数等で加振することができる。また、モータ2を駆動源としてサーボアクチュエータを構成することで、駆動源として油圧シリンダを用いた場合に比してエネルギ効率を向上することができる。
【0021】
本発明のサーボアクチュエータは、支持部10と電動モータ部20と回転変換部30とから構成され、それぞれをケース40を介して一体化した。各部を一体化したことで、サーボアクチュエータの運搬や設置が容易となる。また、一体化した状態で性能検査を行い、出荷すれば、製品としての性能保証が可能となる。
【0022】
また、回転変換部30の案内機構55は、一対のレール面34aを備えるレール34と、ボールねじナット31に取り付けられ、各レール面34aに沿って転接する各一対のローラ33aからなる2基の案内ユニット33を加振軸1の上下に対称に配置している。このため、ボールねじナット31は加振軸1の中心回りの回転が阻止され、モータ2の回転が加振軸1の軸方向への変位に確実に変換される。加振軸1が軸方向へ変位する際に、ローラ33aがレール34に接しながら軸方向へ変動するので、4個のローラ33aが加振軸1をガイドすることになり、加振軸1の回転を確実に直線運動に変換することができる。また、加振軸1をガイドする案内ユニット33を加振軸1の上下に対称に配置するため、加振軸1が直線運動する際のガタを抑制することができる。
【0023】
また、ケース40を電動モータ部20を内装する第1本体部40aと、回転変換部30を内装する第2本体部40bとに分割して形成したので、サーボアクチュエータの組み立てを容易にすることができる。
【0024】
第2本体部40bは、軸方向に渡って配置されたレール34を固定するので、レール34をケース40に容易に精度よく組み立てることができる。
【0025】
駆動源としてのモータ2にダイレクトドライブモータを用いたので、損失、特にフリクションロスを低減することができる。
【0026】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のサーボアクチュエータは、加振試験装置に限らず、種々の工作機械等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のサーボアクチュエータの正面図である。
【図2】図1のA−A断面の断面図である。
【図3】図2のB−B断面の断面図である。
【図4】サーボアクチュエータの背面図である。
【図5】サーボアクチュエータの平面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 加振軸(主軸)
2 モータ
2a ロータ
2b ステータ
10 支持部
20 電動モータ部
22 出力軸
22b ボールねじ
26 連結軸
30 回転変換部
31 ボールねじナット
33 案内ユニット
33a ローラ
34 レール
34a レール面
37 第2連結材
40 ケース
47 第3連結材
50 ボールねじ機構
55 案内機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸を回転する電動モータを備えた電動モータ部と、
前記出力軸の回転を主軸の軸方向変位に変換する回転変換部と、
前記電動モータ部と前記回転変換部とをそれぞれ取り付けるケースとを備え、
前記回転変換部は、前記出力軸の外周面に形成されたボールねじと、このボールねじにボールを介して螺合し、前記主軸に連結するボールねじナットとからなるボールねじ機構と、前記ボールねじナットの回転を阻止するとともに、軸方向への移動を許容する案内機構とを備え、
前記案内機構は、前記主軸の中心において略直交する2つの面上に形成された一対のレール面を有する前記主軸と平行なレールと、前記ボールねじナットに取り付けられ、前記各レール面を転動する一対のローラとからなる一対の案内ユニットを、前記主軸を挟んで対称位置に配置したことを特徴とするサーボアクチュエータ。
【請求項2】
前記ケースは、前記電動モータ部を内装する第1本体部と、前記回転変換部を内装する第2本体部とを軸方向に結合して構成され、
前記レールは、前記第2本体部内に固定されることを特徴とする請求項1に記載のサーボアクチュエータ。
【請求項3】
前記主軸を軸方向へ摺動可能に支持するとともに、前記主軸に作用する軸直角方向の外力を支持する支持部を備え、この支持部を前記ケースに取り付けることを特徴とする請求項1または2に記載のサーボアクチュエータ。
【請求項4】
前記電動モータは、回転を前記出力軸に直接的に伝達するダイレクトドライブモータであることを特徴とする請求項1に記載のサーボアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−150758(P2009−150758A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328462(P2007−328462)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)
【Fターム(参考)】