説明

サーボバルブの異常を検出する方法とその方法を適用したサーボバルブ

【課題】機械的フィードバックを有する2ステージサーボバルブの異常検出の簡易な方法を提案する。
【解決手段】動力制御する可動な部材が、機械的フィードバック6によってパイロットステージのトルクモーターMCのローター3に接続された、2ステージ形式のサーボバルブの異常を検出するための方法であり、誤動作信号は、トルクモーターのローターが停止部2.1に係合されたことの検出に応じて発生される。本発明は、こうした方法を実行するための手段を有するサーボバルブ1も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力分配(distributing power)のために可動な部材が機械的フィードバックによってパイロットステージのトルクモーターのローターに接続された2ステージ形の流量サーボバルブの、異常を検出するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のサーボバルブは、パワーステージの可動な動力分配部材を制御するフラッパーを備える、振動噴射式若しくは偏向噴射式の又はノズル式のパイロットステージによって構成される。パワーステージの役割は、圧力を伝搬すること又はパイロットステージへと送信される命令に比例して流すことである。
【0003】
こうしたサーボバルブにおいて、パイロットステージのハイドロリック吐出部(ノズル又はエジェクター)及びハイドロリック受容部(固定されたフラッパー、偏向部(deflector)又は受容部)の相対位置は、サーボバルブのパワーステージの、精密に移動する可動な動力分配部材に使用されるための圧力差を生じさせる。概して、ハイドロリック吐出部又はハイドロリック受容部の位置は、パイロットステージ(フラッパーノズルサーボバルブのためのフラッパー、可動エジェクターサーボバルブのためのエジェクター、及び、固定エジェクターサーボバルブのための偏向部)の1つの対向するハイドロリック要素を移動させるトルクモーターによって制御される。使用者からの要求に応じて、コンピューターは、トルクモーターに電流の形式で命令を送信する。この命令は、トルクモーターのローターを固定子に対して戻させてハイドロリック吐出部及びハイドロリック受容部の相対位置を変更することにより、パワーステージの可動な動力分配部材を隔てて圧力差を生じさせる。これは、トルクモーターによって受信した電気的命令に略比例した量だけ移動する。次いで可動な動力分配部材の移動は、一組のドリル穴加工された経路を押圧して、圧力又は流れがその動力分配部材の移動に応じて伝搬することを可能とする構成にある開口部と連通させる。望ましい効果が得られたとき、(概して、サーボバルブのパワーステージに接続されたアクチュエーターによって駆動される要素の位置)コンピューターは、停止命令を送信し、次いでサーボバルブは、圧力又は流れの伝搬を停止する。アクチュエーターの移動とサーボバルブに与えられた命令との間の制御ループは、概してコンピューターによって実現される。
【0004】
概して、こうしたサーボバルブは、トルクモーターのローターと可動な動力分配部材との間に、例えば「フィードバック」ロッドと呼ばれる機械的接続部を有する。それは可動な要素の中間に概して設置されており、フラッパー又はエジェクターに固定されてもいる。
【0005】
こうしたサーボバルブは、特に飛行制御のため、又は、1又は複数の車輪の操縦のための航空用途で広く用いられている。
【0006】
これらの部材の機能は非常に重要であるため、航空機の安全のため、サーボバルブの操作が順調であることが監視でき、それにより異常が生じたとき、はっきりとわかる制御するハードウェアの誤動作を生じるサーボバルブの異常動作の前であっても、搭載されたコンピューターが警告することが重要である。それによってパイロット又はシステムは、異常が判明した設備を外すことができ、もしあれば予備の設備を起動することができる。
【0007】
従来は、パイロットからの要求に従い、搭載されたコンピューターが、トルクモーターに、ハイドロリック要素の要求された移動を実現するために適合された圧力又は流れを生じさせるように命令を出していた。コンピューターは、要求された移動が正しく実行されたかの確認を可能とする情報も受信する。
【0008】
サーボバルブに影響し得る異常は全て、可動な動力分配部材の位置に影響を与える。特に、(a)ストロークの端部位置にあるスライドが急速にサーボ制御部を傾け(lurch)、フィードバックロッドが破損し、いくらかのパッキンガスケットが押し出された、(b)ブロックされたスライドが、流量によって多かれ少なかれ突然傾き、ブロックされたスライドにおいて、パッキンとスライドとの間に切りくずが詰まる、(c)パイロットステージへのハイドロリック供給の遮断、構造部の亀裂、第1ステージへのハイドロリック供給の詰まり、及び、電力の遮断、2つのコイルの破損、電源ワイヤーの破損、といった異常について言及することができる。この種類の異常の検出は、概してコンピューターの装置の監視による。
【0009】
サーボ制御部の傾きは、アクチュエーターのような制御するハードウェアの異常状態と認識され、急速かつ突然に1つの極限位置に至る。例えば、アクチュエーターのサーボ制御部の傾きは、アクチュエーターロッドを高速に、その完全に延出された位置又はその完全に後退された位置へと移動させる。サーボ制御ループ内のサーボバルブも、異常状態において、上述した(a)から(d)の1つの状態となるかもしれず、誤った位置にある動力部材の分配スライドによって、要求とは異なる吐出する流れ又は圧力を伝搬するかもしれない。
【0010】
コンピューターによって要求された位置とその実際の位置との間の可動な動力分配部材の位置エラーの計測は、サーボバルブの誤動作を明らかにする。
【0011】
現在、可動な動力分配部材の位置は、線形可変差動変圧器(LVDT)形式の受動直線運動センサーによって決定されている。その形式のセンサーは、動作を可能とするために「コンディショナー」と呼ばれる電子モジュールを必要とする。こうしたセンサーは、構造が簡易であるという利点及び極度に困難な環境においても高い分解能を有した操作を可能とするという利点がある。しかしながら、この形式のセンサーを組み込むと、モデルによっては、サーボバルブのサイズが10%から50%増し、あるいは、サーボバルブの重量が5%から20%増す、といった問題を生じる。この効果は、軽量であることが設備にとって不可欠な航空用途において特に有害となり、このように実装されたサーボバルブのコストは、そうでないサーボバルブよりも5%から20%高く、平均故障間隔は10%から20%伸ばされ、且つ、センサーからの条件的信号処理の要求は、更にサイズ、重量、コスト及び信頼性の態様を不利とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、機械的フィードバックを有する2ステージサーボバルブの異常検出の簡易な方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するために、本発明は、サーボバルブの異常を検出するための方法であって、動力分配のための可動な部材を備えるパワーステージと、固定子とローターであって制御された方法で動力分配するべく可動な部材を移動させるために制御される位置にあるローターとを備えるトルクモーターを有するパイロットステージと、を有し、動力分配のためのその可動な部材が、機械的フィードバックによってトルクモーターのローターに接続されている方法において、本発明に係る当該方法は、停止部と係合するモーターの可動な部分を検出することと、その検出に応じて誤動作信号を発生することと、を含む方法を提供する。
【0014】
この方法は、停止部と係合するローターの不連続状態(discrete state)の検出方法に基づいている。この状態の類は、ドライ接点又は非接触のセンサー(例えば磁性式)のような簡易な手段によって検出され得る。これらの検出手段は、実装される検出回路の、機能、特に環境によって阻害される感度又は発生された信号を処理するためのコンピューターの容量に関する機能によって選択される。これらの手段の簡易性は、装置の信頼性を向上させる効果とコスト及び重量を軽減させる効果とを有することもできる。少しの増加コスト及び増加重量で、従来式のサーボバルブを、特にロバスト性及び信頼性が高く、明確で高速の誤動作信号を発生するのに適した装置に適合させることが可能となる。
【0015】
発明者は、サーボバルブの異常動作が、概してトルクモーターのローターを停止部と係合させることを確認した。
【0016】
サーボバルブの異常時、搭載されたコンピューターは、サーボバルブに関する補正命令(ハイドロリック供給の増加/減少/停止)を出す。これはハイドロリック要素が望ましい運動を実行しない限り(ずっと)、ローターに磁気トルクを生じさせる。従って、サーボバルブが異常の場合において、一定トルクがローターに付与されたとき、ローターに接続された要素に変形を許容する十分な柔軟性があれば、それは所定の1つの停止部に係合する。
【0017】
本発明は、こうした方法を実行するための手段を有するサーボバルブも提供する。
【0018】
本発明に係る他の特徴及び利点は、特に、限定するものではない本発明に係る実施形態の、以下の説明を参照することによって明らかとなる。
【0019】
以下に、添付されている図面について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】誤動作を生じていない構成におけるサーボバルブの線図を示す。
【図2】誤動作を生じた構成におけるサーボバルブの線図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、全体関係1が示されたサーボバルブの機能的線図を示す。バルブは、航空機翼におけるフラップを制御するためのアクチュエーター12のような、ハイドロリック装置を制御するための制御回路内に組み込まれてもよい。サーボバルブは、MCで示されたトルクモーターを有してもよい。
【0022】
サーボバルブ1は、パイロットステージ及びパワーステージを有する。パイロットステージは、トルクモーターMCであって、命令チャンネル10を介して命令を当該トルクモーターMCに送信するコンピューター100に制御されて動かされる、トルクモーターMCを具備する。パワーステージは、ハイドロリック動力供給部Pと、リターンポートRと、2つの出口C1及びC2とに接続されている。出口C1及びC2は、配管14を通して複動アクチュエーター12の2つのチャンバーへと流れる。コンピューター100は、操作監視チャンネル11を通したトルクモーターからの情報と、情報チャンネル13を通したアクチュエーターの位置についての情報とを受信する。
【0023】
トルクモーターMCは、固定子2及びローター3を具備する。固定子2は、ローター3を覆うと共に極限位置におけるローターを受容するための磁性停止部2.1を有する箱である。ローター3は、固定子によって励磁される磁場によって駆動されると共にサーボバルブ1の本体に対して可動な磁性フラッパー3.1、及び、固定子から突出すると共にサーボバルブの本体の内部へと差し込む柱状部3.2、といった2つの主要な要素を具備する。
【0024】
ローター3は、固定された受容部5と対向する流体エジェクター4に固定されている。エジェクター4は、ローター3の移動に応じて選択的にハイドロリック流体を流す。フィードバックロッドの形式における機械的リターンは、体積(volume)3.2への動力分配のため、可動な部材(スライド7)と機械的に接続されている。
【0025】
この例において、ノーマルオープンスイッチ2.2の形式における停止部係合検出器は、磁性停止部2.1近傍に配置されており、ローター3が当接部内に移動したときに磁性フラッパー3.1の端部によって駆動されるように配置されている。それらは、操作監視チャンネル11を通してコンピューター100と連通している。固定された受容部5は、スライドの両側に位置するチャンバー9へとつながる線図的に示された2つの経路8を有する。ローター3の移動は、偏向部5に対してエジェクター4を移動させる。次いで2つの異なる流れは、経路8を通してスライド7の両側に位置するチャンバー9内へと向かう。これらの流れは、チャンバー9内に圧力差を生じ、それによってスライド7を並進移動させ、配管14を通してサーボバルブ1からアクチュエーター12へと、トルクモーターMCの入力に供給される制御電流に略比例して流出させる。
【0026】
図2は異常状態にあるサーボバルブ1を示し、この例において、フィードバックロッド6は破損されている。この状況において、スライド7は、チャンバー9の一方又は他方の端部に対してすぐに当接部へと移動し、サーボバルブを傾けさせる。次いで大きな流れが、サーボバルブ1によって配管14を通してアクチュエーター12へと伝搬される。情報チャンネル13によってアクチュエーター12の移動の情報を得ると、コンピューター100は、命令チャンネル10を通してサーボバルブへと補正命令を送る。これは、アクチュエーター12が望ましい戻し動作で駆動することを可能とする方向にフラッパーを移動させるため、トルクモーターMCへと供給される電流の形式である。この補正命令は、アクチュエーター12がそれに適応して動かなくなるまで(ずっと)保持される。固定子2によって一定磁気トルクを励磁されているため、ローター3の磁性フラッパー3.1は、1つの磁性停止部2.1に対して移動し、1つのスイッチ2.2を閉じる。この停止部の係合に応じて、この回路の閉止は、操作監視チャンネル11に誤動作信号を生じさせる。高い要求電流は、ローター3に瞬時的な停止部の係合を生じさせ得るため、1つのスイッチ2.2の検出閉止において、タイムアウト又はフィルターの追加が有効となり得る。しかしながら、初期段階の高速の動的応答は、本発明に係る装置が誤動作を検出する速度が、サーボバルブスライドにおいてLVDT形式のセンサーを有するシステムの速度と同等であることを意味する。
【0027】
誤動作信号は飛行機のパイロットのために警報を発生させてもよく、又は、コンピューターによって直接送信されてもよく、異常なサーボバルブを停止すると共にもしあれば予備の設備を起動することを含む安全手順の適用を決定してもよい。
【0028】
概して、本発明は、説明された実施形態に限定されず、特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲から派生する、任意の変形例を包含する。
【0029】
特に、サーボバルブは、圧力を設定値へと伝搬するサーボバルブであってもよく、停止部と係合するローター3は、例えば誘導センサー、ノーマルオープンスイッチ若しくはノーマルクローズスイッチ、圧電センサー、抵抗センサー又は固定子とローターとの間の抵抗の実測のような他の形式のセンサーによって検出されてもよく、停止部との係合は、例えば柱状部3.2のねじれ計測によってシステムの任意の位置において検出されてもよく、停止部係合センサー2.2は、ローター自身に設置され、それによってコンパクトな要素が提供されてもよく、停止部係合センサー2.2は、固定子2自身に設置され、それによって特に磁性停止部2.1の設置によってコンパクトな要素が提供されてもよく、停止部係合センサー2.2は、固定子2の箱の内部又は外部に配置されてもよく、トルクモーターMCは、ローター3にねじり力を付与してもよく、命令チャンネル10及び操作監視チャンネル11は同じ(多重)チャンネルであってもよく、停止部係合検出器と並列に接続されコイルに電流が供給されないときに閉止する回路が装置に追加されてもよく、この実施例における本発明は、固定子の形式の固定された部分とローターの形式の可動な部分とを有するトルクモーターに関するが、本発明は、固定された部分が可動な部分を並進移動させるリニアモーターに同様に十分に適用する。
【符号の説明】
【0030】
1 サーボバルブ
2 固定子
2.1 磁性停止部
2.2 ノーマルオープンスイッチ
3 ローター
3.1 磁性フラッパー
3.2 柱状部
4 流体エジェクター
5 固定された受容部
6 フィードバックロッド
7 スライド
8 経路
9 チャンバー
10 命令チャンネル
11 操作監視チャンネル
12 アクチュエーター
13 情報チャンネル
14 配管
100 コンピューター
C1 出口
C2 出口
P ハイドロリック動力供給部
R リターンポート
MC トルクモーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボバルブ(1)の異常を検出するための方法であって、前記サーボバルブ(1)が、動力分配のための可動な部材(7)を備えるパワーステージと、固定された部分(2)と可動な部分(3)であって制御された方法で動力分配するべく前記可動な部材(7)を移動させるために制御される位置にある可動な部分(3)とを備えるモーター(MC)を有するパイロットステージと、を具備し、動力分配のための前記可動な部材(7)が、フィードバック部材(6)によって前記モーター(MC)の前記可動な部分(3)に接続されている方法において、停止部と係合する前記モーター(MC)の前記可動な部分(3)を検出することと、該検出に応じて誤動作信号を発生することと、を特徴とする方法。
【請求項2】
前記停止部と係合する前記可動な部分(3)が、前記モーター(MC)の前記可動な部分(3)が前記停止部に係合したときに状態を変更するように該モーター(MC)の該可動な部分(3)に作用的に接続されたセンサー(2.2)によって検出されると共に、状態の前記変更が誤動作信号を発生する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
サーボバルブ(1)であって、動力分配のための可動な部材(7)を備えるパワーステージと、固定された部分(2)と可動な部分(3)であって制御された方法で動力分配するべく前記可動な部材(7)を移動させるために制御される位置にある可動な部分(3)とを備えるモーター(MC)を有するパイロットステージと、を具備し、動力分配のための前記可動な部材(7)が、フィードバック部材(6)によって前記モーター(MC)の前記可動な部分(3)に接続されているサーボバルブ(1)において、当該サーボバルブ(1)が、停止部と係合する前記モーター(MC)の前記可動な部分(3)を検出するための手段(2.2)に適合されていることを特徴とするサーボバルブ(1)。
【請求項4】
前記モーター(MC)の前記可動な部分(3)が前記停止部に係合したときに状態を変更するように該モーター(MC)の該可動な部分(3)に作用的に接続されたセンサー(2.2)を具備し、状態の前記変更が誤動作信号を発生する請求項3に記載のサーボバルブ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−83354(P2013−83354A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−225355(P2012−225355)
【出願日】平成24年10月10日(2012.10.10)
【出願人】(512262444)
【Fターム(参考)】