説明

サーボライタ

【課題】本発明は、サーボ信号の書き込み前に磁気テープ表面の汚れを除去して、サーボ信号の記録または再生を高精度で行うことができるサーボライタを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るサーボライタ10は、走行する磁気テープMTと摺接して、サーボバンドを磁気テープMTの長手方向の一方向に磁化するDC消去ヘッド13と、DC消去ヘッド13の磁気テープMT走行方向下流側に設けられ、磁気テープMTに対してサーボバンドの磁化の方向が一方向と逆の方向を向くようにサーボ信号を書き込むサーボ信号書込ヘッド14と、磁気テープMT表面に摺接して磁気テープMTの磁性面の付着物を拭き取るクリーナ16と、を備え、クリーナ16は、DC消去ヘッド13とサーボ信号書込ヘッド14との間に配置されて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープのサーボバンド上にサーボ信号を書き込むためのサーボライタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気テープは、高密度記録化が進んでおり、コンピュータのバックアップ用では、400ギガバイト程度の記憶容量を有するものがある。そのために、磁気テープにはテープ幅方向に数百本のデータトラックが形成されている。したがって、データトラックの幅は非常に狭くなっており、隣接するデータトラック間も非常に狭くなっている。そのため、磁気ヘッドの記録/再生素子をデータトラックにトレースさせるため、あらかじめ磁気テープにサーボ信号を書き込んでおき、磁気ヘッドでこのサーボ信号を読み取りつつ、磁気ヘッドの位置(磁気テープの幅方向の位置)を制御している。
【0003】
ところで、磁気テープは、数十テラバイト程度まで記憶容量の増大化が進むことが予測される。そのため、磁気テープは、データトラック数が増え、データトラックの幅および隣接するデータトラック間は一層狭くなるとともに、磁気テープ自体も薄層化する。これに伴い、サーボ信号を読み取るときに検出できる磁気の量は減少し、サーボ信号読取素子で検出できるサーボ信号の磁化量の変化も小さくなる。したがって、サーボ信号の読取信号のピーク電圧値は小さくなり、読取信号のSN比が劣化する。その結果、磁気テープの記録再生装置において、サーボ信号を正確に読み取ることができなくなり、高精度な磁気ヘッドの位置制御を行うことができなくなる。
【0004】
そこで、DC消去ヘッドにより、あらかじめサーボバンドを磁気テープの長手方向の一方向に磁化(直流磁化)した後、サーボ信号を逆方向に磁化して記録することが考えられている(例えば、特許文献1参照)。サーボ信号読取素子がサーボ信号を読み取った出力(ピーク電圧値)は、信号が記録されていない部分と、信号が記録されている部分の切り替わりの変化率または変化量に依存するので、順方向に磁化されたサーボバンドの地の部分から逆方向に磁化されたサーボパターンの切り替わりの部分で順方向から逆方向へ大きく磁気の向きが変わる。そのため、この大きな磁気の変化に応じてサーボ信号の読取信号のSN比が良化し、その結果、高密度記録を可能とするサーボライタが提案されている。
【特許文献1】米国特許第6970312号明細書
【特許文献2】特開2003−110396号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0099718号明細書
【特許文献4】米国特許出願再公開第2005/0105967号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0168869号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0219734号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、サーボ信号の書き込みは、磁性を高速で反転させることにより行われるため、高密度記録化に伴い記録波長が短くなるにつれて、磁気テープ表面に僅かでも付着物があると、その部分でドロップアウトが起こり、高精度なサーボ信号の記録再生に支障をきたしていた。このような付着物を除去する手段として、ナイフエッジ状のブレードをテープ走行系の少なくとも一箇所に設け、磁気テープの磁性面にエッジを当接させて磁気テープの磁性面の付着物を削り取っていた。しかし、ブレードにより除去し切れなかった付着物が磁性面に残存したり、削り取った付着物が再び磁性面に付着したりすることがあり、結局、ドロップアウトの発生を防止し切れなかった。
【0006】
また、DC消去ヘッドを組み込んだことにより、DC消去ヘッドの磁気テープとの摺接面と磁気テープの磁性面とが摺接して磁性面が削りとられて磁性粉となり、この磁性粉が磁気テープの磁性面に付着してしまうことがあり、高精度なサーボ信号の記録再生により一層深刻な影響を及ぼしていた。
このような磁気テープ表面の付着物や磁性粉などの塵埃を除去する手段として、従来、布性材料などからなるクリーニングテープを磁気テープの磁性面に摺接させて磁性面を拭き取ることがおこなわれていた。
しかし、従来のサーボライタの構成では、クリーナ、DC消去ヘッド、サーボ信号書込ヘッドの順番で配置されているため、前記したDC消去ヘッドによる塵埃を取り除くことができず、結局、サーボ信号の書き込み時のドロップアウトの発生を防止することができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、サーボ信号の書き込み前に磁気テープの磁性面の汚れを除去して、サーボ信号の記録または再生を高精度で行うことができるサーボライタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決した本発明のサーボライタは、磁気テープのサーボバンド上にサーボ信号を書き込むためのサーボライタであって、走行する磁気テープと摺接して、前記サーボバンドを磁気テープの長手方向の一方向に磁化するDC消去ヘッドと、前記DC消去ヘッドの前記磁気テープ走行方向下流側に設けられ、前記磁気テープに対して前記サーボバンドの磁化の方向が前記一方向と逆の方向を向くようにサーボ信号を書き込むサーボ信号書込ヘッドと、前記磁気テープ表面に摺接して磁気テープの磁性面の付着物を拭き取るクリーナと、を備え、前記クリーナは、前記DC消去ヘッドと前記サーボ信号書込ヘッドとの間に配置されたことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、クリーナをDC消去ヘッドとサーボ信号書込ヘッドとの間に設けていることから、ブレードにより除去し切れなかった付着物や、DC消去ヘッドと磁気テープの磁性面が摺接することにより生じた磁性粉などの磁性面上の付着物を、サーボ信号の書き込み前に取り除くことができる。これにより、サーボ信号書き込み時のドロップアウトを起こし難くすることができ、高精度なサーボ信号の記録再生を行うことができるサーボライタを得ることができる。
一方、DC消去ヘッドは、消磁電流を一方向に供給しつづけるのみであることより、磁気テープの磁性面(少なくともサーボバンド)を十分に直流磁化することができる磁界を発生することが可能となり、付着物の巻き込み等によるスペーシングロスが発生したとしても直流磁化作用への影響は少ない。
【0010】
また、前記DC消去ヘッドは、前記磁気テープに摺接する摺接面の少なくとも一方の端部に角部を有していてもよい。
【0011】
これによれば、DC消去ヘッドにより磁気テープの磁性面が一方向に直流磁化されることに加えて、DC消去ヘッドの角部と磁気テープの磁性面とが摺接することにより、磁気テープの磁性面の付着物が取り除かれる。このため、付着物の除去のために、別途、ブレードなどを設ける必要がなくなり、簡易な構成で高精度なサーボ信号の記録再生を行うことができるサーボライタを得ることができる。なお、角部は、磁気テープ走行方向上流側に設けるのが望ましい。
【0012】
また、前記摺接面は硬質材料により形成されていてもよい。
【0013】
これによれば、角部の硬度が増すことにより、磁気テープの磁性面に付着した付着物(再付着物を含む)や磁性粉などの塵埃がより効果的に取り除かれる。
また、DC消去ヘッドの摺接面が磁気テープの磁性面と摺接することによるDC消去ヘッドの磨耗を防止することができる。例えば、摺接部をセラミックから構成した場合は、耐摩擦性に優れ、長期間の使用に耐えうるという利点が得られる。
【0014】
また、前記摺接面は、DLC(Diamond Like Carbon)膜により覆われていてもよい。
【0015】
これによれば、DC消去ヘッドの磁気テープとの摺接面が非常に平滑となるため、磁気テープの磁性面と摺接することによるDC消去ヘッドの磨耗をさらに効果的に防止することができ、DC消去ヘッドの耐用期間をより長くすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、サーボ信号書込ヘッドによるサーボ信号の書き込み時に、付着物(再付着物を含む)や塵埃のない磁性面を送出することができ、高品質なサーボ信号を記録再生が可能となる。また、DC消去ヘッドにより磁気テープの磁性面の付着物を除去することによりサーボライタのクリーニング機構が簡素化され、サーボライタの小型化および製造コストの低減を図ることができることに加え、DC消去ヘッドの偏磨耗を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るサーボライタの実施形態について、適宜図面を参照して詳細に説明する。参照する図面において、図1は、本発明の第1実施形態に係るサーボライタを示す平面図である。なお、以下に「付着物」というときは、再付着物をも含むものとする。
【0018】
図1に示すように、サーボライタ10は、主に、送出リール11と、巻取リール12と、DC消去ヘッド13と、サーボ信号書込ヘッド14と、サーボ信号読取ヘッド15と、クリーナ16と、ブレード18と、複数のガイド19と、巻取リール駆動装置31と、制御装置32と、パルス発生装置33と、を備えている。また、サーボライタ10は、磁気テープMTの張力を所定張力に調整するための図示しない張力調整装置、張力検出装置、電源装置等も備えている。以下、サーボライタ10の各部について詳しく説明する。
【0019】
送出リール11には、幅広のウェブ原反から製品幅に裁断された磁気テープMTが大径巻のパンケーキでセットされている。この送出リール11は、サーボ信号の書き込み時に、磁気テープMTを送り出している。送出リール11から送り出された磁気テープMTは、各ガイド19に案内されて、ブレード18、DC消去ヘッド13、クリーナ16、サーボ信号書込ヘッド14、サーボ信号読取ヘッド15を経た後、巻取リール12に巻き取られる。
【0020】
ここで、DC消去ヘッド13とサーボ信号書込ヘッド14について、図4を参照して説明する。図4は、本発明の第1の実施形態に係るサーボライタの磁気テープMTの磁化状態を説明する図である。
図4に示すように、DC消去ヘッド13は、走行する磁気テープMTと摺接して、その磁気テープMTのサーボバンドSBを磁気テープMTの長手方向の一方向に磁化(直流磁化)するための磁気ヘッドである。DC消去ヘッド13は、磁束を発生させるためのコイル(図示せず)と、磁気テープMTのサーボバンドSB,SBの幅方向位置に対応して一列に配置される消磁ギャップ13b,13bとを備えている。各消磁ギャップ13bはそれぞれ独立したコイル(図示しない)と接続されている。後記する制御装置32の制御信号に基づいて後記するパルス発生回路から図示しない各コイルに直流電流が供給される。このDC消去ヘッド13は、後記するパルス発生回路から消磁電流(記録電流)が供給されたときに、消磁ギャップ13bからの漏れ磁束によって磁気テープMTの磁性層を磁化する。なお、本実施形態では、磁気テープMTの磁性層を磁気テープMTの走行方向(以下、「順方向」という)に磁化している。
【0021】
サーボ信号書込ヘッド14は、磁気テープMTにサーボパターンを書き込むための磁気ヘッドであり、ガイド19で案内されつつ走行する磁気テープMTと摺接するように配置されている(図1参照)。このサーボ信号書込ヘッド14は、磁気テープMTとの摺接面14aに書込ギャップ14bが形成されている。書込ギャップ14bは、その平面形状がハの字状になっている。なお、本実施形態におけるサーボ信号書込ヘッド14では、磁気テープMTの幅方向に等間隔に並ぶように書込ギャップ14b、14bが形成されている。各書込ギャップ14bは、サーボ信号書込ヘッド14の図示しないコイルにパルス電流が付与されることによって、摺接面14aから磁気テープMT側に向けて漏れ出る漏れ磁束を発生させるようになっている。つまり、書込ギャップ14bは、供給されるパルス電流で断続的に発生する漏れ磁束によって、磁気テープMTの走行方向に沿う方向にハの字状のサーボパターンSPが連なった互いに平行なサーボバンドSB,SBを形成するようになっている。このとき、サーボ信号書込ヘッド14は、サーボバンドSBの地の磁化の向きとは逆向きにサーボバンドSBを磁化してサーボパターンSPを形成するようになっている。
【0022】
再び図1に示すように、サーボ信号読取ヘッド15は、サーボ信号書込ヘッド14が書き込んだサーボ信号SSを検査するためのヘッドであって、磁気テープMTとの摺接面15aにサーボ信号SSの読取ギャップ15bを有している。サーボ信号読取ヘッド15は、サーボ信号書込ヘッド14の下流側に設けられ、走行する磁気テープMTと摺接して、書込ギャップ14bにより、サーボバンドSB上に書き込まれたサーボ信号SSを読み取っている。なお、読取ギャップ15bは、サーボバンドSBごとに設けても良いし、一の読取ギャップ15bで全てのサーボバンドSBのサーボ信号SSを読み取るようにしてもよい。
【0023】
クリーナ16は、DC消去ヘッド13とサーボ信号書込ヘッド14との間に配置され、フェルトなどの布製材料からなるクリーニングテープCTと、クリーニングテープCTが走行するクリーニングローラ17とを備える。なお、クリーニングテープCTは、研磨材料からなっていてもよい。
【0024】
クリーニングローラ17は、クリーニングテープCTを磁気テープMTの磁性面に摺接させる摺接ローラ17aと、クリーニングテープCTを送り出す送出ローラ17bと、クリーニングテープCTを巻き取る巻取ローラ17cとからなり、送出ローラ17b及び巻取ローラ17cは、クリーニングテープCTが磁気テープMTの磁性面と所定角度で接するよう圧接ローラ17aを中心として左右対称となるように配置されている。
【0025】
クリーニングテープCTは、送出ローラ17bから磁気テープMTの走行方向と反対方向に所定の速度で搬送され、摺接ローラ17aで磁気テープMTの磁性面と摺接して磁気テープMTの磁性面の付着物を拭き取りつつ、巻取ローラ17cに巻き取られる。ここで、クリーナ16のクリーニングテープCTの走行速度は、磁気テープMTの磁性面の汚れを効果的に除去するために、磁気テープMTの搬送速度より遅くなるように設定されている。例えば、磁気テープMTの走行速度を4m/sとすると、クリーニングテープCTの走行速度は1mm/s程度であることが望ましい。
【0026】
ブレード18は、ナイフエッジ状であって、走行する磁気テープMTと摺接して、磁気テープMT上の付着物を除去するものであり、例えば、サファイアなどの硬質材料からなる。エッジ面が磁気テープMTの磁性面と摺接して、磁気テープMTの磁性面または磁気テープMTに埋め込まれた付着物を削り取っている。
【0027】
ガイド19は、送出リール11と巻取リール12との間に適宜配置される磁気テープMTを案内する円柱状部材であって、磁気テープMTを各ヘッドに沿わせて走行させている。
【0028】
巻取リール駆動装置31は、巻取リール12を回転駆動させるための装置であり、図示しない、モータや、モータに電流を供給するためのモータ駆動回路や、モータの軸と巻取リール12とを連結するためのギヤ等を備えている。
【0029】
制御装置32は、サーボライタ10の各部の動作を制御する装置であり、CPU(Central Processing Unit)や各種記憶装置等を備えている。この制御装置32は、サーボ信号SSの書き込み時の磁気テープMTの走行速度を一定にするために、巻取リール駆動装置31のモータ電流を制御するためのモータ電流信号を生成し、巻取リール駆動装置31に送信している。また、制御装置32は、サーボパターンSPを形成するためのパルス制御信号を後記するパルス発生回路33に送信している。
【0030】
パルス発生回路33は、サーボ信号SSの書き込み時に制御装置32から送信されてくる信号に基づいて、サーボ信号書込ヘッド14に対し、所定の電流値となるプラスパルス電流を有した記録パルス電流を供給する回路である。また、このパルス発生回路33は、制御装置32から送信されてくる信号に基づいて、DC消去ヘッド13に対し、所定の消磁電流を連続的に付与する回路でもある。
【0031】
次に、以上のように構成されたサーボライタ10の動作について説明する。
【0032】
図1に示すように、サーボライタ10の送出リール11に、パンケーキ状の磁気テープMTがセットされ、その磁気テープMTの先端が巻取リール12の巻心へ結合される。磁気テープMTは、ガイド19等に案内されながら図示しない巻取リール駆動装置により駆動される巻取リール12に巻き取られて走行する。
【0033】
送出リール11から送り出された磁気テープMTは、ブレード18、DC消去ヘッド13、クリーナ16、サーボ信号書込ヘッド14、サーボ信号読取ヘッド15を経て巻取リール12に巻き取られる。
【0034】
そして、磁気テープMTが走行すると磁性面には、まず、ブレード18のエッジ面が圧接する。このとき、ブレード18で磁性面表面の付着物や磁性層に埋没している付着物が削り取られる。次に、磁気テープMTがDC消去ヘッド13の位置まで走行すると、DC消去ヘッド13の摺接面13aと摺接して、消磁ギャップ13bからの漏れ磁束により、磁気テープMTのサーボバンドSB(図4参照)が所定の磁化力で一方向に直流磁化される。このとき、DC消去ヘッド13から供給される電流量は、少なくともサーボバンドSBを直流磁化しうる電流量以上が供給されていれば制限はない。このため、十分大きな値の直流電流が供給されていれば、磁気テープMTの磁性面に付着物などがあっても直流磁化への影響は少ない。なお、DC消去ヘッド13の摺接面13aにより磁気テープMTの磁性面が一部削られて磁性粉となり、その一部または全部が磁気テープMTの磁性面に付着する。
【0035】
そして、DC消去ヘッド13により一方向に直流磁化された状態で磁気テープMTがさらに走行すると、磁気テープMTの走行方向と反対方向に走行するクリーニングテープCTが摺接する。この一連の動作により、ブレード18で除去し切れなかった付着物や、一旦はブレード18で削り取られたが再度磁性面に付着した再付着物、さらには、DC消去ヘッドにより削り取られた磁性面の磁性粉などは、最終的にクリーニングテープCTに拭き取られて取り除かれる。さらに、磁気テープMTがサーボ信号書込ヘッド14の位置まで走行すると、順方向に磁化されたサーボバンドSBがサーボ信号書込ヘッド14により逆方向に磁化され、サーボ信号SSが書き込まれる。その結果、磁気テープMTの順方向に磁化された地のサーボバンドSB上に、逆方向に磁化したサーボパターンSPが形成される(図4参照)。
【0036】
以上によれば、第1の実施形態に係るサーボライタ10により次のような効果を得ることができる。
DC消去ヘッド13とサーボ信号書込ヘッド14との間にクリーナ16を設けたことにより、ブレード18により削り取られた付着物のみならず、DC消去ヘッド13に削り取られて磁気テープMTに付着した磁性粉などの塵埃についてもサーボ信号SSの書き込み前に取り除くことができ、ドロップアウトやサーマルアスペリティを効果的に防止して、高精度なサーボ信号SSの記録再生が可能となる。
【0037】
続いて、本発明の第2の実施形態に係るサーボライタ20について説明する。参照する図面において、図2は、本発明の第2の実施形態に係るサーボライタのDC消去ヘッドの部分拡大図である。なお、第1の実施形態に係るサーボライタ10と同様の構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0038】
図2に示すように、DC消去ヘッド23の磁気テープMTとの摺接面23aはアルミニウムで形成され、磁気テープMTの走行方向上流側に突端した角部24を有している。この角部24は磁気テープMTの磁性面の付着物や塵埃を削り取るものであって、第1の実施形態におけるブレード18と同様の機能を果たし、ブレード18に代替する。そして、磁気テープMTは、角部24を支点としてDC消去ヘッド23の摺接面23aに対して所定のラップ角度θを有するように調整されている。
【0039】
このように構成されたサーボライタ20の動作について説明する。
磁気テープMTが走行すると、磁気テープMTの磁性面がDC消去ヘッド23の角部24と当接し、角部24によって、磁気テープMTの磁性面の付着物や塵埃が削り取られる。
そして、磁気テープMTがさらに走行すると、磁気テープMTの磁性面はクリーナ16と摺接して、クリーナ16により、角部24により削り取られた付着物や塵埃が拭き取られて、磁性面に付着物や塵埃などがない状態で、サーボ信号書込ヘッド14に送出される。
【0040】
なお、DC消去ヘッド23は、磁気テープMTを直流磁化する機能も果たすことはもちろんであって、DC消去ヘッド23の摺接面23aからは、常に所定量の消磁電流が供給され、磁気テープMTの磁性面を一方向に直流磁化している。
【0041】
第2の実施形態に係るサーボライタ20によれば、次のような効果を得ることができる。
DC消去ヘッド23の摺接面23aにより、磁気テープMTの磁性面を一方向に直流磁化しつつ、角部24により、磁気テープMTの磁性面の付着物を削り取ることができるので、別途、ブレードなどを設ける必要が無くなり、簡易な構成でありながら高精度なサーボ信号の記録再生が可能となる。
【0042】
次に、本発明の第3の実施形態に係るサーボライタ30について説明する。参照する図面において、図3は、本発明の第3の実施形態に係るDC消去ヘッドの部分拡大図である。なお、第3の実施形態に係るサーボライタ30は、本発明の第2の実施形態に係るサーボライタ20のDC消去ヘッド23を変更したものであるので、第2の実施形態に係るサーボライタ20と同様の構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0043】
図3に示すように、第3の実施形態のDC消去ヘッド33は、磁気テープMTの磁性面との摺接面23aがDLC(Diamond Like Carbon)膜34で覆われている。これにより、摺接面23aが非常に平滑になる。
そして、磁気テープMTが走行すると、磁気テープMTの磁性面はDLC膜34に被覆された摺接面23aと摺接することとなり、摺接面23aの摩擦による磨耗が少なくなる。
なお、このとき、角部24により磁気テープMTの磁性面の粗大突起物がカットされる。
【0044】
第3の実施形態に係るサーボライタ30によれば、次のような効果を得ることができる。
DC消去ヘッド33の摺接面23aが非常に平滑となるため、耐摩擦性が向上し、DC消去ヘッド33の摺接面23aの磨耗を抑止することができる。
このため、ドロップアウトやサーマルアスペリティをより効果的に防止することができ、高精度なサーボ信号の記録再生が可能となる。
【0045】
以上、本発明は、前記各実施形態に限定されることなく、様々な形態で実施される。
第2の実施形態に係るDC消去ヘッド23は、摺接面23aの全面がアルミニウムで形成されていたが、これに限らず、角部24のみをアルミニウムで形成しても良い。
【0046】
また、第2の実施形態に係るDC消去ヘッド23の角部24は、アルミニウムにより形成されていたが、これに限らず、Al2O3TiCなどを用いてもよい。
【0047】
また、DC消去ヘッド23は、磁気テープMTの走行方向上流側の端部に角部24を設け、角部24を支点としてDC消去ヘッド23の摺接面23aに対し所定のラップ角を有するように配置したが、これに限らず、角部24で磁気テープMTの磁性面に付着した磁性粉を削り取るのに足りるラップ角θを確保することができれば、適宜配置を変更しても良い。また、角部24は、摺接面23aの端部の少なくとも一方に設けられていればよく、磁気テープMTの走行方向下流側の端部、あるいは、両側の端部に設けても良いことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るサーボライタを示す平面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るサーボライタのDC消去ヘッドの部分拡大図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るDC消去ヘッドの部分拡大図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るサーボライタのDC消去ヘッドとサーボ信号書込14とのヘッドギャップ部分の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0049】
10、20、30 サーボライタ
11 送出リール
12 巻取リール
13、23、33 DC消去ヘッド
14 サーボ信号書込ヘッド
15 サーボ信号読取ヘッド
16 クリーナ
18 ブレード
19 ガイド
23a 摺接面
24 角部
34 DLC膜
MT 磁気テープ
SS サーボ信号
SB サーボバンド
SP サーボパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気テープのサーボバンド上にサーボ信号を書き込むためのサーボライタであって、
走行する磁気テープと摺接して、前記サーボバンドを磁気テープの長手方向の一方向に磁化するDC消去ヘッドと、
前記DC消去ヘッドの前記磁気テープ走行方向下流側に設けられ、前記磁気テープに対して前記サーボバンドの磁化の方向が前記一方向と逆の方向を向くようにサーボ信号を書き込むサーボ信号書込ヘッドと、
前記磁気テープ表面に摺接して磁気テープの磁性面の付着物を拭き取るクリーナと、を備え、
前記クリーナは、前記DC消去ヘッドと前記サーボ信号書込ヘッドとの間に配置されたことを特徴とするサーボライタ。
【請求項2】
前記DC消去ヘッドは、前記磁気テープに摺接する摺接面の少なくとも一方の端部に角部を有することを特徴とする請求項1に記載のサーボライタ。
【請求項3】
前記摺接面は硬質材料により形成されたことを特徴とする請求項2に記載のサーボライタ。
【請求項4】
前記摺接面は、DLC膜により覆われたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のサーボライタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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