サーボ誤差信号演算回路およびそれを用いた光ディスク装置
【課題】サーボ誤差演算方式を効率良く変更すること可能で回路規模が小さなサーボ誤差信号演算回路を提供する。
【解決手段】このフォーカス誤差信号演算部6は、入力端子T1〜T16に入力された16個の信号を受け、各2つの信号の差を示す信号と和を示す信号とを出力する演算回路10と、その各2つの出力信号の差を示す信号と和を示す信号とを出力する演算回路20と、その16個の出力信号から4つの信号を選択し、選択した各2つの信号の差を示す信号と和を示す信号とを出力する選択演算回路30,31と、それらの4つの出力信号のうちのいずれか2つの信号を選択し、選択した2つの信号の差を示す信号をフォーカス誤差信号FESとして出力する選択演算回路32とを備える。したがって、サーボ誤差演算方式を効率良く変更することができ、回路規模が小さくて済む。
【解決手段】このフォーカス誤差信号演算部6は、入力端子T1〜T16に入力された16個の信号を受け、各2つの信号の差を示す信号と和を示す信号とを出力する演算回路10と、その各2つの出力信号の差を示す信号と和を示す信号とを出力する演算回路20と、その16個の出力信号から4つの信号を選択し、選択した各2つの信号の差を示す信号と和を示す信号とを出力する選択演算回路30,31と、それらの4つの出力信号のうちのいずれか2つの信号を選択し、選択した2つの信号の差を示す信号をフォーカス誤差信号FESとして出力する選択演算回路32とを備える。したがって、サーボ誤差演算方式を効率良く変更することができ、回路規模が小さくて済む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はサーボ誤差信号演算回路およびそれを用いた光ディスク装置に関し、特に、光ディスクからの反射光を検出する受光素子の出力信号に基づいて光ピックアップのサーボ誤差信号を演算するサーボ誤差信号演算回路と、それを用いた光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、市場ではCD−R/RW、DVD−ROM、DVD−R/RW、DVD+R/RW、さらに青色レーザを使用したBlu−ray Discなど、様々な光ディスクが発売されており、これらの光ディスクに情報を記録したり、記録された情報を再生する光ディスク装置はAV用途やコンピュータ用途として広く普及している。
【0003】
図17は、そのような光ディスク装置の構成を示すブロック図である。図17において、この光ディスク装置では、光ディスク51は、スピンドルモータ52に装填されて回転される。光ピックアップ53は、レーザ光を光ディスク51に照射する。光ディスク51からの反射光は、光ピックアップ53の受光部に入射されて電気信号に変換される。光ピックアップ53の出力信号は、アナログ信号処理部54に入力される。
【0004】
アナログ信号処理部54は、サーボ誤差信号演算部55とRF信号処理部56を含む。サーボ誤差信号演算部55は、光ディスク51に照射されるレーザ光の焦点位置と光ディスク1の情報記録面との位置誤差を示すフォーカス誤差信号FESと、レーザ光と情報トラックとの位置誤差を示すトラッキング誤差信号TESとを生成する。RF信号処理部56は、入力信号に所定のフィルタ処理を施し、後段のデジタル信号処理部57に再生信号RFを出力する。近年、アナログ信号処理部54は、1チップの集積回路として構成される。
【0005】
デジタル信号処理部57は、A/D変換部58、サーボ制御部59、D/A変換部60および再生信号処理部61を含む。A/D変換部58は、アナログ信号であるサーボ誤差信号FES,TESおよび再生信号RFをデジタル信号に変換する。サーボ制御部59は、通常DSPなどで構成され、A/D変換部58でA/D変換された信号FES,TESを受け、必要な位相補償を施して光ピックアップ53のアクチュエータ(図示せず)を制御する。D/A変換部60は、サーボ制御部59から出力されるデジタル信号をアナログ信号に変換する。再生信号処理部61は、A/D変換部58でA/D変換された再生信号RFを受け、信号の復調を行なう。
【0006】
また、図17には図示していないが、光ディスク51に記録を行なう記録信号処理部もデジタル信号処理部57内に構成される場合もある。このデジタル信号処理部57もアナログ信号処理部54と同様、近年は1チップに集積化されている。制御部62は、これらアナログ信号処理部54およびデジタル信号処理部57の全体制御や各種の設定を行なうものであり、通常CPUによって構成され、制御用プログラムに従って動作する。ドライバ部63は、D/A変換部60によってD/A変換されたサーボ制御部59の出力信号に従って、スピンドルモータ52と、光ピックアップ53内のアクチュエータ(図示せず)を駆動する。
【0007】
ところで上述のように、近年、アナログ信号処理部54は集積回路とされており、サーボ誤差信号演算部55が複数のサーボ演算方式に対応しているものは少ない。各光ピックアップ51には特有のサーボ誤差演算方式があるため、現状で主流となっているサーボ演算方式を採用しない光ピックアップ53を接続するには、その光ピックアップ53用のサーボ演算方式を有する集積回路に変更する必要がある。
【0008】
つまり、異なったサーボ演算方式の光ピックアップ53を採用するためには、アナログ信号処理部54を構成する集積回路も同時に変更する必要がある。これは、開発資産の有効活用の観点から見ると非常に効率が悪い。つまり、光ピックアップ53の種類を変更するためには後段の集積回路まで変更する必要があるということであり、そのために通常CPUで構成される制御部62の制御プログラムまで大幅に変更する必要があることになる。
【0009】
この問題は、複数のサーボ演算方式に対応可能なアナログ信号処理部54を設ければ、ある程度解決できる。しかしながら、現状で既知のサーボ演算方式に対応しているだけでは、新たに有効なサーボ演算方式が開発された場合にはやはり集積回路を変更する必要が生じる。このような場合、新たなサーボ演算方式に合致するようにアナログ信号処理部54を変更して集積回路化することは非常にコストがかかる。このため、アナログ信号処理部54は、様々な既存のサーボ演算方式だけでなく、新規なサーボ演算方式に対しても柔軟に対応できるものであることが望ましい。
【0010】
そこで、光ピックアップ53の出力信号をA/D変換器によりデジタル化し、サーボ誤差信号の演算をデジタル方式で行なう方法が提案された(たとえば、特許文献1参照)。このように、サーボ誤差信号の演算をデジタル方式で行なうようにしておけば、演算方法の変更を比較的容易に行なうことができる。
【特許文献1】特開平11−238245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、光ピックアップ53の出力信号を直接デジタル信号に変換して、サーボ誤差信号をデジタル方式で演算する方法では、サーボ誤差信号はデジタル信号となる。しかし、後段のデジタル信号処理部57はアナログ信号の入力を前提としており、入力部にはA/D変換部58が設けられている。このため、デジタル方式でサーボ誤差信号を演算した場合でも、後段に通常のデジタル信号処理部57を接続するにはサーボ誤差信号を再びアナログ信号に変換してデジタル信号処理部57に与え、デジタル信号処理部57内で再びデジタル化する必要があり、非常に効率が悪い。また、本来は不必要であるデジタル/アナログ変換により、丸め誤差などの変換誤差が生じてしまう。
【0012】
デジタル方式で演算回路を実現するのではなく、アナログ方式によって演算回路を実現し、入力される信号の全ての組合わせの演算を予め用意しておくことにより、上記問題を解決することは理論上可能である。しかし、全ての組合わせを用意しておくということは非常に効率が悪い。たとえば、入力端子を仮に10個用意しておくとすると、入力信号同士の減算のためには10C2(=45)通りの演算回路が必要である。さらに2つの入力信号を加算した後に減算する場合は10C2*8C2(=45*28)通りの演算回路が必要である。これら以外にも考えられる演算回路の構成は多数あるため、全ての演算回路を実現するためには、非常に多くの演算回路を用意する必要があり、回路規模、消費電力、コストのあらゆる面で現実的ではない。
【0013】
それゆえに、この発明の主たる目的は、サーボ誤差演算方式を効率良く変更すること可能で回路規模が小さなサーボ誤差信号演算回路およびそれを用いた光ディスク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に係るサーボ誤差信号演算回路は、光ディスクからの反射光を検出する受光素子のM対(ただし、Mは自然数である)の出力信号に基づいて光ピックアップのサーボ誤差信号を演算するサーボ誤差信号演算回路であって、N対(ただし、NはM以上の整数である)の入力端子を備え、N対の入力端子のうちのM対の入力端子は受光素子のM対の出力信号を受け、残りのN−M対の入力端子の各々はゼロレベルの信号を受ける。このサーボ誤差信号演算装置は、さらに、N対の入力端子に入力されたN対の信号を受け、各対をなす2つの信号の差を示す信号と和を示す信号とを生成し、生成した2N個の信号をN個の第1グループに等分割して出力する第1の演算回路と、第1の演算回路から出力されるN個の第1グループの信号を受け、各第1グループに属する2つの信号の差を示す信号と和を示す信号とを生成し、生成した2N個の信号を2つの第2グループに等分割して出力する第2の演算回路と、第2の演算回路から出力される2つの第2グループの信号を受け、各第2グループに属するN個の信号のうちのいずれか2つの信号を選択し、選択した2つの信号の差を示す信号と和を示す信号とを生成し、生成した4つの信号を2つの第3グループに等分割して出力する第1の選択演算回路と、第1の選択演算回路から出力される2つの第3グループの信号を受け、各第3グループに属する2つの信号のうちのいずれかの信号を選択し、選択した2つの信号の差を示す信号を生成し、生成した信号をサーボ誤差信号として出力する第2の選択演算回路とを備える。
【0015】
好ましくは、第1および第2の演算回路の各々は、各信号に対応して設けられて対応の信号を増幅するゲイン調整の可能なアンプを含む。
【0016】
また好ましくは、Nは8である。
また、この発明に係る光ディスク装置は、上記サーボ誤差信号演算回路と、そのサーボ誤差信号演算回路を制御する制御部とを備えたものである。
【0017】
好ましくは、サーボ誤差信号演算回路が複数設けられている。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係るサーボ誤差信号演算回路および光ディスク装置では、上記N対の入力端子、第1の演算回路、第2の演算回路、第1の選択演算回路、および第2の選択演算回路を設けたので、受光素子から出力されるN対以下のM対の信号に基づいて、種々のサーボ誤差演算方式に対応することができる。したがって、これまでのサーボ誤差演算方式とは異なる方式の光ピックアップを採用するような場合でも、過去の開発資産を有効活用することが可能となり、非常に効率のよい開発を行なうことができる。
【0019】
また、アナログ方式で演算し、不必要にアナログからデジタル、デジタルからアナログという変換を行なうことがないので、不要な丸め誤差などの変換誤差が生じることがない。また、各種のサーボ誤差演算方式に特化した専用の回路構成を採用するのではなく、光ディスク装置のサーボ誤差演算方式の特徴を利用してプログラマブルに演算方式を選択できるような回路構成を採用したので、回路規模が小さくて済み、新たに開発されるようなサーボ誤差演算方式に対しても対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の一実施の形態について図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、背景技術で用いたものと同じ機能を有する部材には同じ符号を付して説明を省略する。
【0021】
光ディスク装置のサーボ誤差信号(フォーカス誤差信号FES、トラッキング誤差信号TES)の検出および演算方法は種々提案されている。まず、既存の種々のサーボ誤差信号の検出および演算方法について説明する。
【0022】
図1〜図4は、光ピックアップ53内に設けられ、光ディスク51からの反射光を受光する受光素子であるディテクタ1〜4の構成をそれぞれ示す図である。図1のディテクタ1は、いわゆる非点収差法によってフォーカス誤差信号FESを検出するものである(たとえば、特開2005−149619号公報参照)。
【0023】
図1において、ディテクタ1は、4つの領域に分割されている。レーザ光の焦点位置と光ディスク51の位置が一致している、いわゆるフォーカスが合っている(合焦している)場合、光ディスク51からの反射光はディテクタ1上で真円となるように光学的に設定されている。一方、フォーカスがずれている場合はディテクタ1上で反射光は楕円となるように光学的に設定される。したがって、ディテクタ1上に集光される反射光が真円となるように光ピックアップ53を制御することでフォーカス制御が行なわれる。このようなディテクタ1を持つ光ピックアップ53では、ディテクタ1の4つの領域の出力信号をA〜Dとすると、フォーカス誤差信号FESは次式(1)で表される。
FES=(A+D)−(B+C) …(1)
次に図2のディテクタ2は、いわゆるナイフエッジ法でフォーカス誤差信号FETを検出し、プッシュプル法でトラッキング誤差信号TEFを検出するものである(たとえば、特開2006−4579号公報参照)。図2において、ディテクタ2は、6つ領域に分割されている。このナイフエッジ法では、ディテクタ2の6つの領域の出力信号をA〜Fとすると、フォーカス誤差信号FESは次式(2)で表される。
FES=(B+C)−(A+D) …(2)
しかし、上式(2)においてフォーカス誤差信号FESを得るための主たる領域は信号A,Bを出力する領域であり、信号C,Dを出力する領域はいわゆる多層ディスクに対応するための補助ディテクタを構成している。信号A,Dを出力する2つの領域および信号B,Cを出力する2つの領域は、それぞれ光ピックアップ53内で結線されている。このためナイフエッジ法では、フォーカス誤差信号FESは次式(3)で表される。
FES=B−A …(3)
また、プッシュプル法では、トラッキング誤差信号TESは次式(4)で表される。
TES=E−F …(4)
また、図3のディテクタ3は、いわゆる差動プッシュプル(DPP)法を用いてトラッキング誤差信号TEFを検出するものである(たとえば、特開2004−310907号公報参照)。ディテクタ3は、9個の領域に分割されている。DPP法は、メインプッシュプル信号に生じるレンズシフトによるオフセットを除去するため、メインビームの前後に配置されるサブビームを用いることを特徴とするものである。このDPP法では、9個の領域の出力信号をA〜Iとし、設計の時点で決定するゲイン係数をgとすると、トラッキング誤差信号TESは次式(5)で表される。
TES=(H−I)−g{(C−E)+(D−F)} …(5)
また、図4のディテクタ4は、いわゆるスポットサイズ(SSD)法を用いてフォーカス誤差信号FESを検出し、差動プッシュプル(DPP)法を用いてトラッキング誤差信号TESを検出するものである(たとえば、特開2005−276391号公報)。ディテクタ4は、24の領域に分割されている。24の領域は、それぞれ信号A1,A2;…;H1,H2;I1〜I4;J1〜J4を出力する。ただし、A1とA2、B1とB2というように同一の記号が振られている信号を出力する領域は結線されている。つまり、光ピックアップ53から後段のサーボ誤差信号演算部には10個の信号A〜Jが与えられる。SSD法では、フォーカス誤差信号FESは、次式(6)で表される。
FES=(B+C+F+G)−(A+D+E+H) …(6)
また、DPP法では、設計の時点で決定するゲイン係数をgとすると、トラッキング誤差信号TESは次式(7)で表される。
TES=(A+B+C+D)−(E+F+G+H)−g(I−J) …(7)
このように、種々のサーボ誤差信号検出および演算方法があるが、各方法毎に演算回路を用意するだけでは、将来的に新たなサーボ演算方式が提案された場合には対応できない。このため、この実施の形態では、既存の種々のサーボ演算方式に対応可能であり、かつ新規なサーボ演算方式にも対応可能なサーボ誤差信号演算部を提供する。
【0024】
ここで、上述の種々のサーボ誤差信号の演算式(1)〜(7)を参照すると、以下のような特徴があることが分かる。まず、フォーカス誤差信号FESあるいはトラッキング誤差信号TESの演算に用いられる光ピックアップ53からの信号は10個以下の偶数個である。また、ディテクタの領域の数が増えて信号数が増えることは光ピックアップ53を小型化する上で非常に不都合であるので、将来的にも信号数が増加する可能性は低い。このため、信号入力端子はせいぜい16個程度を用意しておけば、将来のサーボ演算方式にも対応できる可能性が高い。したがって、演算する入力信号数は、16個以下とすることができる。これにより、不必要に多い入力信号数を用意することがなくなり、演算回路の規模を小さくすることが可能となる。
【0025】
また、サーボ誤差信号の演算式(1)〜(7)は、X−Yのような形式で表されるものが大半である。ここで、X,Yの各々は、入力信号、あるいは入力信号の和もしくは差である。つまり、2つの信号の差がサーボ誤差信号である。これは、サーボ誤差の検出であるため、最終的には差信号が所望の誤差信号であることを意味する。また、これらの演算式(1)〜(7)では、2のべき乗の個数(1、2、4)の信号同士の演算が多いことが特徴である。
【0026】
したがって、光ピックアップ53からの信号を複数のグループに分割し、各グループ内で信号の加算および減算を行ない、これらの演算結果の減算を行なう構成とする。このことで、たとえば異なった信号入力数同士の差信号の演算回路を持たないことが可能であり、また、たとえば全入力の加算のようにサーボ誤差信号の演算には必要のない演算回路を用意することがない構成が可能となる。
【0027】
図5は、この発明の一実施の形態による光ディスク装置の構成を示すブロック図であって、図17と対比される図である。図5において、この光ディスク装置が図17の光ディスク装置と異なる点は、サーボ誤差信号演算部55がサーボ誤差信号演算部5で置換されている点である。サーボ誤差信号演算部5は、制御部62から各種設定を行なわれるような構成となっている。
【0028】
図6は、このサーボ誤差信号演算部5の構成を示すブロック図である。図6において、サーボ誤差信号演算部5は、フォーカス誤差信号生成部6およびトラッキング誤差信号生成部7を含む。フォーカス誤差信号生成部6とトラッキング誤差信号生成部7は、同様の構成であり、制御部62からの設定信号STに応じて動作する。
【0029】
図7は、フォーカス誤差信号生成部6の具体的な構成を示すブロック図である。図7において、フォーカス誤差信号生成部6は、入力端子T1〜T16、演算回路10,20および選択演算ユニット30〜32を備え、演算回路10は演算ユニット11〜18を含み、演算回路20は演算ユニット21〜28を含む。このフォーカス誤差信号生成部6では、入力信号の数は16個に設定されており、8個の信号毎に演算を行なう構成としている。演算ユニット11〜18は、それぞれ入力端子T1,T2;…;T15,T16に入力された信号A,B;…;O,Pの加算および減算を行なうものである。
【0030】
図8は、演算ユニット11の構成を示すブロック図である。図8において、演算ユニット11は、減算器35、加算器36およびアンプ37,38を含む。減算器35は、入力信号Aのレベルから入力信号Bのレベルを減算し、減算結果に応じたレベルの信号A−Bを出力する。加算器36は、入力信号AとBのレベルを加算し、加算結果に応じたレベルの信号A+Bを出力する。アンプ37は、減算器35の出力信号を、制御部62からのゲイン設定信号GA1で示されるゲインで増幅する。アンプ38は、加算器36の出力信号を、制御部62からのゲイン設定信号GA2で示されるゲインで増幅する。ゲイン設定信号GA1,GA2は、制御部62からの設定信号STに含まれる。なお、図8では、減算器35とアンプ37、および加算器36とアンプ38をそれぞれ別の回路ブロックで表しているが、それぞれ1つの回路ブロックとして実現しても構わない。他の演算ユニット12〜18も演算ユニット11と同じ構成である。
【0031】
図7に戻って、演算ユニット11,12の減算結果を示す信号A−B,C−Dは演算ユニット21に与えられ、演算ユニット11,12の加算結果を示す信号A+B,C+Dは演算ユニット22に与えられる。演算ユニット13,14の減算結果を示す信号E−F,G−Hは演算ユニット23に与えられ、演算ユニット13,14の加算結果を示す信号E+F,G+Hは演算ユニット24に与えられる。
【0032】
演算ユニット15,16の減算結果を示す信号I−J,K−Lは演算ユニット25に与えられ、演算ユニット15,16の加算結果を示す信号I+J,K+Lは演算ユニット26に与えられる。演算ユニット17,18の減算結果を示す信号M−N,O−Pは演算ユニット27に与えられ、演算ユニット17,18の加算結果を示す信号M+N,O+Pは演算ユニット28に与えられる。
【0033】
演算ユニット21〜28は、演算ユニット11〜18と同一の構成であり、制御部62からゲインを設定できる構成となっている。演算ユニット21,22の減算結果を示す信号(A−B)−(C−D),(A+B)−(C+D)および加算結果を示す信号(A−B)+(C−D),(A+B)+(C+D)は選択演算ユニット30に与えられる。演算ユニット23,24の減算結果を示す信号(E−F)−(G−H),(E+F)−(G+H)および加算結果を示す信号(E−F)+(G−H),(E+F)+(G+H)は選択演算ユニット30に与えられる。
【0034】
演算ユニット25,26の減算結果を示す信号(I−J)−(K−L),(I+J)−(K+L)および加算結果を示す信号(I−J)+(K−L),(I+J)+(K+L)は選択演算ユニット31に与えられる。演算ユニット27,28の減算結果を示す信号(M−N)−(O−P),(M+N)−(O+P)および加算結果を示す信号(M−N)+(O−P),(M+N)+(O+P)は選択演算ユニット31に与えられる。
【0035】
図9は、選択演算ユニット30の構成を示すブロック図である。図9において、選択演算ユニット30は、選択部40,41、減算器42および加算器43を含む。選択部40は、制御部62からの信号SE1に従って、演算ユニット21,22の出力信号(A−B)−(C−D),(A−B)+(C−D),(A+B)−(C+D),(A+B)+(C+D)のうちのいずれかの信号を選択し、選択した信号を減算器42および加算器43に与える。選択部41は、制御部62からの信号SE2に従って、演算ユニット23,24の出力信号(E−F)−(G−H),(E−F)+(G−H),(E+F)−(G+H),(E+F)+(G+H)のうちのいずれかの信号を選択し、選択した信号を減算器42および加算器43に与える。
【0036】
減算器42は、選択部40で選択された信号から選択部41で選択された信号を減算し、減算結果を示す信号を選択演算ユニット32に与える。加算器43は、選択部40で選択された信号と選択部41で選択された信号を加算し、加算結果を示す信号を選択演算ユニット32に与える。
【0037】
選択演算ユニット31は、選択演算ユニット30と同様の構成であり、演算ユニット25,26の出力信号(I−J)−(K−L),(I−J)+(K−L),(I+J)−(K+L),(I+J)+(K+L)のうちのいずれかの信号を選択するとともに、演算ユニット27,28の出力信号(M−N)−(O−P),(M−N)+(O−P),(M+N)−(O+P),(M+N)+(O+P)のうちのいずれかの信号を選択し、選択した2つの信号の加算結果を示す信号と減算結果を示す信号とを選択演算ユニット32に与える。
【0038】
図10は、選択演算ユニット32の構成を示すブロック図である。図10において、選択演算ユニット32は、選択部44,45および減算器46を含む。選択部44は、制御部62からの信号SE3に従って、選択演算ユニット30の2つの出力信号のうちのいずれかの信号を選択し、選択した信号を減算器46に与える。選択部45は、制御部62からの信号SE4に従って、選択演算ユニット31の出力信号のうちのいずれかの信号を選択し、選択した信号を減算器46に与える。減算器46は、選択部44で選択された信号から選択部45で選択された信号を減算し、減算結果を示す信号をフォーカス誤差信号FESとして後段のデジタル信号処理部57に与える。
【0039】
なお、サーボ誤差信号演算部5は、同一の回路構成からなるフォーカス誤差信号生成部6およびトラッキング誤差信号生成部7から構成されている。しかし、同一の構成を有する別の演算部を持つことも可能である。これは、近年の光ディスク51の大容量化のために光ディスク51と光軸とのずれを検出したり、光ディスク51のカバー層厚みの変化により生じる球面収差を検出したりする必要が生じる場合に備えるためのものである。このように予備の演算部を持つことでさらに将来のサーボ誤差検出方法に対応することが可能である。
【0040】
次に、このサーボ誤差信号演算部5により、先に説明した各種のサーボ誤差演算方式によるサーボ誤差信号の演算が可能であることを図11〜図16を用いて説明する。
【0041】
図11は、図1および数式(1)を用いて説明した非点収差方式によるフォーカス誤差信号FES=(A+D)−(B+C)を生成する方法を示すブロック図である。図11において、4分割されたディテクタ1の出力信号A〜Dをそれぞれ入力端子T1〜T4を介して演算ユニット11,12に導入し、他の演算ユニット13〜18に対応する入力端子T5〜T16の各々を信号のゼロレベル(接地電位)に設定する。これにより、演算ユニット21のアンプ37から信号(A+D)−(B+C)が出力される。また、選択演算ユニット30の選択部40で信号(A+D)−(B+C)を選択するとともに選択部41でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器42および加算器43の各々から信号(A+D)−(B+C)が出力される。さらに、選択演算ユニット32の選択部44で信号(A+D)−(B+C)を選択するとともに選択部45でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器46から非点収差方式によるフォーカス誤差信号FES=(A+D)−(B+C)が出力される。
【0042】
また、図12は、図2および数式(3)を用いて説明したナイフエッジ方式によるフォーカス誤差信号FES=B−Aを生成する方法を示すブロック図である。図12において、6分割されたディテクタ2の出力信号B,Aを入力端子T1,T2を介して演算ユニット11に導入し、他の演算ユニット12〜18に対応する入力端子T3〜T16の各々を信号のゼロレベルに設定する。これにより、演算ユニット21のアンプ37から信号B−Aが出力される。また、選択演算ユニット30の選択部40で信号B−Aを選択するとともに選択部41でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器42および加算器43の各々から信号B−Aが出力される。さらに、選択演算ユニット32の選択部44で信号B−Aを選択するとともに選択部45でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器46からナイフエッジ方式によるフォーカス誤差信号FES=B−Aが出力される。
【0043】
また、図13は、図2および数式(4)を用いて説明したプッシュプル方式によるトラッキング誤差信号TES=E−Fを生成する方法を示すブロック図である。図13において、6分割されたディテクタ2の出力信号E,Fを入力端子T5,T6を介して演算ユニット13に導入し、他の演算ユニット11,12,14〜18に対応する入力端子T1〜T4,T7〜T16の各々を信号のゼロレベルに設定する。これにより、演算ユニット23のアンプ37から信号E−Fが出力される。また、選択演算ユニット30の選択部40で信号E−Fを選択するとともに選択部41でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器42および加算器43の各々から信号E−Fが出力される。さらに、選択演算ユニット32の選択部44で信号E−Fを選択するとともに選択部45でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器46からプッシュプル方式によるトラッキング誤差信号TES=E−Fが出力される。
【0044】
また、図14は、図3および数式(5)を用いて説明した差動プッシュプル方式によるトラッキング誤差信号TES=(H−I)−g{(C−E)+(D−F)}を生成する方法を示すブロック図である。図14において、9分割されたディテクタ3の出力信号H,I;C,D;E,Fをそれぞれ入力端子T1,T2;T9,T10;T11,T12を介して演算ユニット11,15,16に導入し、演算ユニット26のゲインをgに設定し、他の演算ユニット12〜14,17,18に対応する入力端子T3〜T8,T13〜T16の各々を信号のゼロレベルに設定する。これにより、演算ユニット11のアンプ37から信号H−Iが出力され、演算ユニット15のアンプ38から信号C+Dが出力され、演算ユニット16のアンプ38から信号E+Fが出力される。また、演算ユニット21のアンプ37から信号H−Iが出力され、演算ユニット26のアンプ37から信号g{(C−E)+(D−F)}が出力される。
【0045】
また、選択演算ユニット30の選択部40で信号H−Iを選択するとともに選択部41でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器42および加算器43の各々から信号H−Iが出力される。また、選択演算ユニット31の選択部40で信号g{(C−E)+(D−F)}を選択するとともに選択部41でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器42および加算器43の各々から信号g{(C−E)+(D−F)}が出力される。さらに、選択演算ユニット32の選択部44で信号H−Iを選択するとともに選択部45で信号g{(C−E)+(D−F)}を選択すると、減算器46から差動プッシュプル方式によるトラッキング誤差信号TES=(H−I)−g{(C−E)+(D−F)}が出力される。
【0046】
また、図15は、図4および数式(6)を用いて説明したスポットサイズ(SSD)法によるフォーカス誤差信号FES=(B+C+F+G)−(A+D+E+H)を生成する方法を示すブロック図である。図15において、24分割されたディテクタ4の出力信号B,A;C,D;E,F;H,Gをそれぞれ入力端子T1,T2;T3,T4;T9,T10;T11,T12を介して演算ユニット11,12,15,16に導入し、他の演算ユニット13,14,17,18に対応する入力端子T5〜T8,T13〜T16の各々を信号のゼロレベルに設定する。これにより、演算ユニット11,12,15,16のアンプ37からそれぞれ信号B−A,C−D,E−F,H−Gが出力される。また、演算ユニット21のアンプ38から信号B−A+C−Dが出力され、演算ユニット25のアンプ38から信号E−F+H−Gが出力される。
【0047】
また、選択演算ユニット30の選択部40で信号B−A+C−Dを選択するとともに選択部41でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器42および加算器43の各々から信号B−A+C−Dが出力される。また、選択演算ユニット31の選択部40で信号E−F+H−Gを選択するとともに選択部41でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器42および加算器43の各々から信号E−F+H−Gが出力される。さらに、選択演算ユニット32の選択部44で信号B−A+C−Dを選択するとともに選択部45で信号E−F+H−Gを選択すると、減算器46からスポットサイズ(SSD)法によるフォーカス誤差信号FES=(B+C+F+G)−(A+D+E+H)が出力される。
【0048】
また、図16は、図4および数式(7)を用いて説明した差動プッシュプル(DPP)法によるトラッキング誤差信号TES=(A+B+C+D)−(E+F+G+H)−g(I−J)を生成する方法を示すブロック図である。図16において、24分割されたディテクタ4の出力信号A〜Jをそれぞれ入力端子T1〜T10を介して演算ユニット11〜15に導入し、演算ユニット15のゲインをgに設定し、他の演算ユニット16〜18に対応する入力端子T11〜T16の各々を信号のゼロレベルに設定する。これにより、演算ユニット11〜14のアンプ38からそれぞれ信号A+B,C+D,E+F,G+Hが出力され、演算ユニット15のアンプ37から信号g(I−J)が出力される。また、演算ユニット22のアンプ38から信号A+B+C+Dが出力され、演算ユニット24のアンプ38から信号E+F+G+Hが出力される。
【0049】
また、選択演算ユニット30の選択部40で信号A+B+C+Dを選択するとともに選択部41で信号E+F+G+Hを選択すると、減算器42から信号(A+B+C+D)−(E+F+G+H)が出力される。また、選択演算ユニット31の選択部40で信号g(I−J)を選択するとともに選択部41でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器42および加算器43の各々から信号g(I−J)が出力される。さらに、選択演算ユニット32の選択部44で信号(A+B+C+D)−(E+F+G+H)を選択するとともに選択部45で信号g(I−J)を選択すると、減算器46から差動プッシュプル(DPP)法によるトラッキング誤差信号TES=(A+B+C+D)−(E+F+G+H)−g(I−J)が出力される。
【0050】
このように、サーボ誤差信号演算部5を用いることで代表的な方式のフォーカス誤差信号FESおよびトラッキング誤差信号TESを演算できることが分かる。また、これらの演算はサーボ誤差信号演算部5の一部の回路のみを使用して実行可能であり、これら以外にも様々な演算を実行可能であることは言うまでもない。しかも、これらの様々な演算方式の実現のために全ての演算回路を網羅するのではなく、光ディスク装置のサーボ誤差信号の演算方式の特徴を利用して少ない回路規模でかつアナログ方式による演算回路で実現することができる。このため、種々のサーボ演算方式の光ピックアップ51との接続が可能であり、かつ後段のデジタル信号処理部57にはアナログ信号のサーボ誤差信号を出力する。したがって、既存のデジタル信号処理部57の集積回路に接続可能となり、新たなコスト、開発の手間をかけることなくサーボ演算方式の変更が可能である。また、新規なサーボ演算方式に対しても十分対応できる。
【0051】
なお、本願発明は、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、Blu−ray Discなどの光ディスク記録/再生装置に適用可能である。
【0052】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】ディテクタの構成を示す図である。
【図2】他のディテクタの構成を示す図である。
【図3】さらに他のディテクタの構成を示す図である。
【図4】さらに他のディテクタの構成を示す図である。
【図5】この発明の一実施の形態による光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図5に示したサーボ誤差信号演算部の構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示したフォーカス誤差信号生成部の構成を示すブロック図である。
【図8】図7に示した演算ユニットの構成を示すブロック図である。
【図9】図7に示した選択演算ユニット30の構成を示すブロック図である。
【図10】図7に示した選択演算ユニット32の構成を示すブロック図である。
【図11】図5に示したサーボ誤差信号演算部の使用方法を示すブロック図である。
【図12】図5に示したサーボ誤差信号演算部の他の使用方法を示すブロック図である。
【図13】図5に示したサーボ誤差信号演算部のさらに他の使用方法を示すブロック図である。
【図14】図5に示したサーボ誤差信号演算部のさらに他の使用方法を示すブロック図である。
【図15】図5に示したサーボ誤差信号演算部のさらに他の使用方法を示すブロック図である。
【図16】図5に示したサーボ誤差信号演算部のさらに他の使用方法を示すブロック図である。
【図17】従来の光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0054】
1〜4 ディテクタ、5,55 サーボ誤差信号演算部、6 フォーカス誤差信号生成部、7 トラッキング誤差信号生成部、T1〜T16 入力端子、10,20 演算回路、11〜18,21〜28 演算ユニット、30〜32 選択演算ユニット、35,42,46 減算器、36,43 加算器、37,38 アンプ、40,41,44,45 選択部、51 光ディスク、52 スピンドルモータ、53 光ピックアップ、54 アナログ信号処理部、56 RF信号処理部、57 デジタル信号処理部、58 A/D変換部、59 サーボ制御部、60 D/A変換部、61 再生信号処理部、62 制御部、63 ドライバ部。
【技術分野】
【0001】
この発明はサーボ誤差信号演算回路およびそれを用いた光ディスク装置に関し、特に、光ディスクからの反射光を検出する受光素子の出力信号に基づいて光ピックアップのサーボ誤差信号を演算するサーボ誤差信号演算回路と、それを用いた光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、市場ではCD−R/RW、DVD−ROM、DVD−R/RW、DVD+R/RW、さらに青色レーザを使用したBlu−ray Discなど、様々な光ディスクが発売されており、これらの光ディスクに情報を記録したり、記録された情報を再生する光ディスク装置はAV用途やコンピュータ用途として広く普及している。
【0003】
図17は、そのような光ディスク装置の構成を示すブロック図である。図17において、この光ディスク装置では、光ディスク51は、スピンドルモータ52に装填されて回転される。光ピックアップ53は、レーザ光を光ディスク51に照射する。光ディスク51からの反射光は、光ピックアップ53の受光部に入射されて電気信号に変換される。光ピックアップ53の出力信号は、アナログ信号処理部54に入力される。
【0004】
アナログ信号処理部54は、サーボ誤差信号演算部55とRF信号処理部56を含む。サーボ誤差信号演算部55は、光ディスク51に照射されるレーザ光の焦点位置と光ディスク1の情報記録面との位置誤差を示すフォーカス誤差信号FESと、レーザ光と情報トラックとの位置誤差を示すトラッキング誤差信号TESとを生成する。RF信号処理部56は、入力信号に所定のフィルタ処理を施し、後段のデジタル信号処理部57に再生信号RFを出力する。近年、アナログ信号処理部54は、1チップの集積回路として構成される。
【0005】
デジタル信号処理部57は、A/D変換部58、サーボ制御部59、D/A変換部60および再生信号処理部61を含む。A/D変換部58は、アナログ信号であるサーボ誤差信号FES,TESおよび再生信号RFをデジタル信号に変換する。サーボ制御部59は、通常DSPなどで構成され、A/D変換部58でA/D変換された信号FES,TESを受け、必要な位相補償を施して光ピックアップ53のアクチュエータ(図示せず)を制御する。D/A変換部60は、サーボ制御部59から出力されるデジタル信号をアナログ信号に変換する。再生信号処理部61は、A/D変換部58でA/D変換された再生信号RFを受け、信号の復調を行なう。
【0006】
また、図17には図示していないが、光ディスク51に記録を行なう記録信号処理部もデジタル信号処理部57内に構成される場合もある。このデジタル信号処理部57もアナログ信号処理部54と同様、近年は1チップに集積化されている。制御部62は、これらアナログ信号処理部54およびデジタル信号処理部57の全体制御や各種の設定を行なうものであり、通常CPUによって構成され、制御用プログラムに従って動作する。ドライバ部63は、D/A変換部60によってD/A変換されたサーボ制御部59の出力信号に従って、スピンドルモータ52と、光ピックアップ53内のアクチュエータ(図示せず)を駆動する。
【0007】
ところで上述のように、近年、アナログ信号処理部54は集積回路とされており、サーボ誤差信号演算部55が複数のサーボ演算方式に対応しているものは少ない。各光ピックアップ51には特有のサーボ誤差演算方式があるため、現状で主流となっているサーボ演算方式を採用しない光ピックアップ53を接続するには、その光ピックアップ53用のサーボ演算方式を有する集積回路に変更する必要がある。
【0008】
つまり、異なったサーボ演算方式の光ピックアップ53を採用するためには、アナログ信号処理部54を構成する集積回路も同時に変更する必要がある。これは、開発資産の有効活用の観点から見ると非常に効率が悪い。つまり、光ピックアップ53の種類を変更するためには後段の集積回路まで変更する必要があるということであり、そのために通常CPUで構成される制御部62の制御プログラムまで大幅に変更する必要があることになる。
【0009】
この問題は、複数のサーボ演算方式に対応可能なアナログ信号処理部54を設ければ、ある程度解決できる。しかしながら、現状で既知のサーボ演算方式に対応しているだけでは、新たに有効なサーボ演算方式が開発された場合にはやはり集積回路を変更する必要が生じる。このような場合、新たなサーボ演算方式に合致するようにアナログ信号処理部54を変更して集積回路化することは非常にコストがかかる。このため、アナログ信号処理部54は、様々な既存のサーボ演算方式だけでなく、新規なサーボ演算方式に対しても柔軟に対応できるものであることが望ましい。
【0010】
そこで、光ピックアップ53の出力信号をA/D変換器によりデジタル化し、サーボ誤差信号の演算をデジタル方式で行なう方法が提案された(たとえば、特許文献1参照)。このように、サーボ誤差信号の演算をデジタル方式で行なうようにしておけば、演算方法の変更を比較的容易に行なうことができる。
【特許文献1】特開平11−238245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、光ピックアップ53の出力信号を直接デジタル信号に変換して、サーボ誤差信号をデジタル方式で演算する方法では、サーボ誤差信号はデジタル信号となる。しかし、後段のデジタル信号処理部57はアナログ信号の入力を前提としており、入力部にはA/D変換部58が設けられている。このため、デジタル方式でサーボ誤差信号を演算した場合でも、後段に通常のデジタル信号処理部57を接続するにはサーボ誤差信号を再びアナログ信号に変換してデジタル信号処理部57に与え、デジタル信号処理部57内で再びデジタル化する必要があり、非常に効率が悪い。また、本来は不必要であるデジタル/アナログ変換により、丸め誤差などの変換誤差が生じてしまう。
【0012】
デジタル方式で演算回路を実現するのではなく、アナログ方式によって演算回路を実現し、入力される信号の全ての組合わせの演算を予め用意しておくことにより、上記問題を解決することは理論上可能である。しかし、全ての組合わせを用意しておくということは非常に効率が悪い。たとえば、入力端子を仮に10個用意しておくとすると、入力信号同士の減算のためには10C2(=45)通りの演算回路が必要である。さらに2つの入力信号を加算した後に減算する場合は10C2*8C2(=45*28)通りの演算回路が必要である。これら以外にも考えられる演算回路の構成は多数あるため、全ての演算回路を実現するためには、非常に多くの演算回路を用意する必要があり、回路規模、消費電力、コストのあらゆる面で現実的ではない。
【0013】
それゆえに、この発明の主たる目的は、サーボ誤差演算方式を効率良く変更すること可能で回路規模が小さなサーボ誤差信号演算回路およびそれを用いた光ディスク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に係るサーボ誤差信号演算回路は、光ディスクからの反射光を検出する受光素子のM対(ただし、Mは自然数である)の出力信号に基づいて光ピックアップのサーボ誤差信号を演算するサーボ誤差信号演算回路であって、N対(ただし、NはM以上の整数である)の入力端子を備え、N対の入力端子のうちのM対の入力端子は受光素子のM対の出力信号を受け、残りのN−M対の入力端子の各々はゼロレベルの信号を受ける。このサーボ誤差信号演算装置は、さらに、N対の入力端子に入力されたN対の信号を受け、各対をなす2つの信号の差を示す信号と和を示す信号とを生成し、生成した2N個の信号をN個の第1グループに等分割して出力する第1の演算回路と、第1の演算回路から出力されるN個の第1グループの信号を受け、各第1グループに属する2つの信号の差を示す信号と和を示す信号とを生成し、生成した2N個の信号を2つの第2グループに等分割して出力する第2の演算回路と、第2の演算回路から出力される2つの第2グループの信号を受け、各第2グループに属するN個の信号のうちのいずれか2つの信号を選択し、選択した2つの信号の差を示す信号と和を示す信号とを生成し、生成した4つの信号を2つの第3グループに等分割して出力する第1の選択演算回路と、第1の選択演算回路から出力される2つの第3グループの信号を受け、各第3グループに属する2つの信号のうちのいずれかの信号を選択し、選択した2つの信号の差を示す信号を生成し、生成した信号をサーボ誤差信号として出力する第2の選択演算回路とを備える。
【0015】
好ましくは、第1および第2の演算回路の各々は、各信号に対応して設けられて対応の信号を増幅するゲイン調整の可能なアンプを含む。
【0016】
また好ましくは、Nは8である。
また、この発明に係る光ディスク装置は、上記サーボ誤差信号演算回路と、そのサーボ誤差信号演算回路を制御する制御部とを備えたものである。
【0017】
好ましくは、サーボ誤差信号演算回路が複数設けられている。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係るサーボ誤差信号演算回路および光ディスク装置では、上記N対の入力端子、第1の演算回路、第2の演算回路、第1の選択演算回路、および第2の選択演算回路を設けたので、受光素子から出力されるN対以下のM対の信号に基づいて、種々のサーボ誤差演算方式に対応することができる。したがって、これまでのサーボ誤差演算方式とは異なる方式の光ピックアップを採用するような場合でも、過去の開発資産を有効活用することが可能となり、非常に効率のよい開発を行なうことができる。
【0019】
また、アナログ方式で演算し、不必要にアナログからデジタル、デジタルからアナログという変換を行なうことがないので、不要な丸め誤差などの変換誤差が生じることがない。また、各種のサーボ誤差演算方式に特化した専用の回路構成を採用するのではなく、光ディスク装置のサーボ誤差演算方式の特徴を利用してプログラマブルに演算方式を選択できるような回路構成を採用したので、回路規模が小さくて済み、新たに開発されるようなサーボ誤差演算方式に対しても対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の一実施の形態について図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、背景技術で用いたものと同じ機能を有する部材には同じ符号を付して説明を省略する。
【0021】
光ディスク装置のサーボ誤差信号(フォーカス誤差信号FES、トラッキング誤差信号TES)の検出および演算方法は種々提案されている。まず、既存の種々のサーボ誤差信号の検出および演算方法について説明する。
【0022】
図1〜図4は、光ピックアップ53内に設けられ、光ディスク51からの反射光を受光する受光素子であるディテクタ1〜4の構成をそれぞれ示す図である。図1のディテクタ1は、いわゆる非点収差法によってフォーカス誤差信号FESを検出するものである(たとえば、特開2005−149619号公報参照)。
【0023】
図1において、ディテクタ1は、4つの領域に分割されている。レーザ光の焦点位置と光ディスク51の位置が一致している、いわゆるフォーカスが合っている(合焦している)場合、光ディスク51からの反射光はディテクタ1上で真円となるように光学的に設定されている。一方、フォーカスがずれている場合はディテクタ1上で反射光は楕円となるように光学的に設定される。したがって、ディテクタ1上に集光される反射光が真円となるように光ピックアップ53を制御することでフォーカス制御が行なわれる。このようなディテクタ1を持つ光ピックアップ53では、ディテクタ1の4つの領域の出力信号をA〜Dとすると、フォーカス誤差信号FESは次式(1)で表される。
FES=(A+D)−(B+C) …(1)
次に図2のディテクタ2は、いわゆるナイフエッジ法でフォーカス誤差信号FETを検出し、プッシュプル法でトラッキング誤差信号TEFを検出するものである(たとえば、特開2006−4579号公報参照)。図2において、ディテクタ2は、6つ領域に分割されている。このナイフエッジ法では、ディテクタ2の6つの領域の出力信号をA〜Fとすると、フォーカス誤差信号FESは次式(2)で表される。
FES=(B+C)−(A+D) …(2)
しかし、上式(2)においてフォーカス誤差信号FESを得るための主たる領域は信号A,Bを出力する領域であり、信号C,Dを出力する領域はいわゆる多層ディスクに対応するための補助ディテクタを構成している。信号A,Dを出力する2つの領域および信号B,Cを出力する2つの領域は、それぞれ光ピックアップ53内で結線されている。このためナイフエッジ法では、フォーカス誤差信号FESは次式(3)で表される。
FES=B−A …(3)
また、プッシュプル法では、トラッキング誤差信号TESは次式(4)で表される。
TES=E−F …(4)
また、図3のディテクタ3は、いわゆる差動プッシュプル(DPP)法を用いてトラッキング誤差信号TEFを検出するものである(たとえば、特開2004−310907号公報参照)。ディテクタ3は、9個の領域に分割されている。DPP法は、メインプッシュプル信号に生じるレンズシフトによるオフセットを除去するため、メインビームの前後に配置されるサブビームを用いることを特徴とするものである。このDPP法では、9個の領域の出力信号をA〜Iとし、設計の時点で決定するゲイン係数をgとすると、トラッキング誤差信号TESは次式(5)で表される。
TES=(H−I)−g{(C−E)+(D−F)} …(5)
また、図4のディテクタ4は、いわゆるスポットサイズ(SSD)法を用いてフォーカス誤差信号FESを検出し、差動プッシュプル(DPP)法を用いてトラッキング誤差信号TESを検出するものである(たとえば、特開2005−276391号公報)。ディテクタ4は、24の領域に分割されている。24の領域は、それぞれ信号A1,A2;…;H1,H2;I1〜I4;J1〜J4を出力する。ただし、A1とA2、B1とB2というように同一の記号が振られている信号を出力する領域は結線されている。つまり、光ピックアップ53から後段のサーボ誤差信号演算部には10個の信号A〜Jが与えられる。SSD法では、フォーカス誤差信号FESは、次式(6)で表される。
FES=(B+C+F+G)−(A+D+E+H) …(6)
また、DPP法では、設計の時点で決定するゲイン係数をgとすると、トラッキング誤差信号TESは次式(7)で表される。
TES=(A+B+C+D)−(E+F+G+H)−g(I−J) …(7)
このように、種々のサーボ誤差信号検出および演算方法があるが、各方法毎に演算回路を用意するだけでは、将来的に新たなサーボ演算方式が提案された場合には対応できない。このため、この実施の形態では、既存の種々のサーボ演算方式に対応可能であり、かつ新規なサーボ演算方式にも対応可能なサーボ誤差信号演算部を提供する。
【0024】
ここで、上述の種々のサーボ誤差信号の演算式(1)〜(7)を参照すると、以下のような特徴があることが分かる。まず、フォーカス誤差信号FESあるいはトラッキング誤差信号TESの演算に用いられる光ピックアップ53からの信号は10個以下の偶数個である。また、ディテクタの領域の数が増えて信号数が増えることは光ピックアップ53を小型化する上で非常に不都合であるので、将来的にも信号数が増加する可能性は低い。このため、信号入力端子はせいぜい16個程度を用意しておけば、将来のサーボ演算方式にも対応できる可能性が高い。したがって、演算する入力信号数は、16個以下とすることができる。これにより、不必要に多い入力信号数を用意することがなくなり、演算回路の規模を小さくすることが可能となる。
【0025】
また、サーボ誤差信号の演算式(1)〜(7)は、X−Yのような形式で表されるものが大半である。ここで、X,Yの各々は、入力信号、あるいは入力信号の和もしくは差である。つまり、2つの信号の差がサーボ誤差信号である。これは、サーボ誤差の検出であるため、最終的には差信号が所望の誤差信号であることを意味する。また、これらの演算式(1)〜(7)では、2のべき乗の個数(1、2、4)の信号同士の演算が多いことが特徴である。
【0026】
したがって、光ピックアップ53からの信号を複数のグループに分割し、各グループ内で信号の加算および減算を行ない、これらの演算結果の減算を行なう構成とする。このことで、たとえば異なった信号入力数同士の差信号の演算回路を持たないことが可能であり、また、たとえば全入力の加算のようにサーボ誤差信号の演算には必要のない演算回路を用意することがない構成が可能となる。
【0027】
図5は、この発明の一実施の形態による光ディスク装置の構成を示すブロック図であって、図17と対比される図である。図5において、この光ディスク装置が図17の光ディスク装置と異なる点は、サーボ誤差信号演算部55がサーボ誤差信号演算部5で置換されている点である。サーボ誤差信号演算部5は、制御部62から各種設定を行なわれるような構成となっている。
【0028】
図6は、このサーボ誤差信号演算部5の構成を示すブロック図である。図6において、サーボ誤差信号演算部5は、フォーカス誤差信号生成部6およびトラッキング誤差信号生成部7を含む。フォーカス誤差信号生成部6とトラッキング誤差信号生成部7は、同様の構成であり、制御部62からの設定信号STに応じて動作する。
【0029】
図7は、フォーカス誤差信号生成部6の具体的な構成を示すブロック図である。図7において、フォーカス誤差信号生成部6は、入力端子T1〜T16、演算回路10,20および選択演算ユニット30〜32を備え、演算回路10は演算ユニット11〜18を含み、演算回路20は演算ユニット21〜28を含む。このフォーカス誤差信号生成部6では、入力信号の数は16個に設定されており、8個の信号毎に演算を行なう構成としている。演算ユニット11〜18は、それぞれ入力端子T1,T2;…;T15,T16に入力された信号A,B;…;O,Pの加算および減算を行なうものである。
【0030】
図8は、演算ユニット11の構成を示すブロック図である。図8において、演算ユニット11は、減算器35、加算器36およびアンプ37,38を含む。減算器35は、入力信号Aのレベルから入力信号Bのレベルを減算し、減算結果に応じたレベルの信号A−Bを出力する。加算器36は、入力信号AとBのレベルを加算し、加算結果に応じたレベルの信号A+Bを出力する。アンプ37は、減算器35の出力信号を、制御部62からのゲイン設定信号GA1で示されるゲインで増幅する。アンプ38は、加算器36の出力信号を、制御部62からのゲイン設定信号GA2で示されるゲインで増幅する。ゲイン設定信号GA1,GA2は、制御部62からの設定信号STに含まれる。なお、図8では、減算器35とアンプ37、および加算器36とアンプ38をそれぞれ別の回路ブロックで表しているが、それぞれ1つの回路ブロックとして実現しても構わない。他の演算ユニット12〜18も演算ユニット11と同じ構成である。
【0031】
図7に戻って、演算ユニット11,12の減算結果を示す信号A−B,C−Dは演算ユニット21に与えられ、演算ユニット11,12の加算結果を示す信号A+B,C+Dは演算ユニット22に与えられる。演算ユニット13,14の減算結果を示す信号E−F,G−Hは演算ユニット23に与えられ、演算ユニット13,14の加算結果を示す信号E+F,G+Hは演算ユニット24に与えられる。
【0032】
演算ユニット15,16の減算結果を示す信号I−J,K−Lは演算ユニット25に与えられ、演算ユニット15,16の加算結果を示す信号I+J,K+Lは演算ユニット26に与えられる。演算ユニット17,18の減算結果を示す信号M−N,O−Pは演算ユニット27に与えられ、演算ユニット17,18の加算結果を示す信号M+N,O+Pは演算ユニット28に与えられる。
【0033】
演算ユニット21〜28は、演算ユニット11〜18と同一の構成であり、制御部62からゲインを設定できる構成となっている。演算ユニット21,22の減算結果を示す信号(A−B)−(C−D),(A+B)−(C+D)および加算結果を示す信号(A−B)+(C−D),(A+B)+(C+D)は選択演算ユニット30に与えられる。演算ユニット23,24の減算結果を示す信号(E−F)−(G−H),(E+F)−(G+H)および加算結果を示す信号(E−F)+(G−H),(E+F)+(G+H)は選択演算ユニット30に与えられる。
【0034】
演算ユニット25,26の減算結果を示す信号(I−J)−(K−L),(I+J)−(K+L)および加算結果を示す信号(I−J)+(K−L),(I+J)+(K+L)は選択演算ユニット31に与えられる。演算ユニット27,28の減算結果を示す信号(M−N)−(O−P),(M+N)−(O+P)および加算結果を示す信号(M−N)+(O−P),(M+N)+(O+P)は選択演算ユニット31に与えられる。
【0035】
図9は、選択演算ユニット30の構成を示すブロック図である。図9において、選択演算ユニット30は、選択部40,41、減算器42および加算器43を含む。選択部40は、制御部62からの信号SE1に従って、演算ユニット21,22の出力信号(A−B)−(C−D),(A−B)+(C−D),(A+B)−(C+D),(A+B)+(C+D)のうちのいずれかの信号を選択し、選択した信号を減算器42および加算器43に与える。選択部41は、制御部62からの信号SE2に従って、演算ユニット23,24の出力信号(E−F)−(G−H),(E−F)+(G−H),(E+F)−(G+H),(E+F)+(G+H)のうちのいずれかの信号を選択し、選択した信号を減算器42および加算器43に与える。
【0036】
減算器42は、選択部40で選択された信号から選択部41で選択された信号を減算し、減算結果を示す信号を選択演算ユニット32に与える。加算器43は、選択部40で選択された信号と選択部41で選択された信号を加算し、加算結果を示す信号を選択演算ユニット32に与える。
【0037】
選択演算ユニット31は、選択演算ユニット30と同様の構成であり、演算ユニット25,26の出力信号(I−J)−(K−L),(I−J)+(K−L),(I+J)−(K+L),(I+J)+(K+L)のうちのいずれかの信号を選択するとともに、演算ユニット27,28の出力信号(M−N)−(O−P),(M−N)+(O−P),(M+N)−(O+P),(M+N)+(O+P)のうちのいずれかの信号を選択し、選択した2つの信号の加算結果を示す信号と減算結果を示す信号とを選択演算ユニット32に与える。
【0038】
図10は、選択演算ユニット32の構成を示すブロック図である。図10において、選択演算ユニット32は、選択部44,45および減算器46を含む。選択部44は、制御部62からの信号SE3に従って、選択演算ユニット30の2つの出力信号のうちのいずれかの信号を選択し、選択した信号を減算器46に与える。選択部45は、制御部62からの信号SE4に従って、選択演算ユニット31の出力信号のうちのいずれかの信号を選択し、選択した信号を減算器46に与える。減算器46は、選択部44で選択された信号から選択部45で選択された信号を減算し、減算結果を示す信号をフォーカス誤差信号FESとして後段のデジタル信号処理部57に与える。
【0039】
なお、サーボ誤差信号演算部5は、同一の回路構成からなるフォーカス誤差信号生成部6およびトラッキング誤差信号生成部7から構成されている。しかし、同一の構成を有する別の演算部を持つことも可能である。これは、近年の光ディスク51の大容量化のために光ディスク51と光軸とのずれを検出したり、光ディスク51のカバー層厚みの変化により生じる球面収差を検出したりする必要が生じる場合に備えるためのものである。このように予備の演算部を持つことでさらに将来のサーボ誤差検出方法に対応することが可能である。
【0040】
次に、このサーボ誤差信号演算部5により、先に説明した各種のサーボ誤差演算方式によるサーボ誤差信号の演算が可能であることを図11〜図16を用いて説明する。
【0041】
図11は、図1および数式(1)を用いて説明した非点収差方式によるフォーカス誤差信号FES=(A+D)−(B+C)を生成する方法を示すブロック図である。図11において、4分割されたディテクタ1の出力信号A〜Dをそれぞれ入力端子T1〜T4を介して演算ユニット11,12に導入し、他の演算ユニット13〜18に対応する入力端子T5〜T16の各々を信号のゼロレベル(接地電位)に設定する。これにより、演算ユニット21のアンプ37から信号(A+D)−(B+C)が出力される。また、選択演算ユニット30の選択部40で信号(A+D)−(B+C)を選択するとともに選択部41でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器42および加算器43の各々から信号(A+D)−(B+C)が出力される。さらに、選択演算ユニット32の選択部44で信号(A+D)−(B+C)を選択するとともに選択部45でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器46から非点収差方式によるフォーカス誤差信号FES=(A+D)−(B+C)が出力される。
【0042】
また、図12は、図2および数式(3)を用いて説明したナイフエッジ方式によるフォーカス誤差信号FES=B−Aを生成する方法を示すブロック図である。図12において、6分割されたディテクタ2の出力信号B,Aを入力端子T1,T2を介して演算ユニット11に導入し、他の演算ユニット12〜18に対応する入力端子T3〜T16の各々を信号のゼロレベルに設定する。これにより、演算ユニット21のアンプ37から信号B−Aが出力される。また、選択演算ユニット30の選択部40で信号B−Aを選択するとともに選択部41でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器42および加算器43の各々から信号B−Aが出力される。さらに、選択演算ユニット32の選択部44で信号B−Aを選択するとともに選択部45でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器46からナイフエッジ方式によるフォーカス誤差信号FES=B−Aが出力される。
【0043】
また、図13は、図2および数式(4)を用いて説明したプッシュプル方式によるトラッキング誤差信号TES=E−Fを生成する方法を示すブロック図である。図13において、6分割されたディテクタ2の出力信号E,Fを入力端子T5,T6を介して演算ユニット13に導入し、他の演算ユニット11,12,14〜18に対応する入力端子T1〜T4,T7〜T16の各々を信号のゼロレベルに設定する。これにより、演算ユニット23のアンプ37から信号E−Fが出力される。また、選択演算ユニット30の選択部40で信号E−Fを選択するとともに選択部41でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器42および加算器43の各々から信号E−Fが出力される。さらに、選択演算ユニット32の選択部44で信号E−Fを選択するとともに選択部45でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器46からプッシュプル方式によるトラッキング誤差信号TES=E−Fが出力される。
【0044】
また、図14は、図3および数式(5)を用いて説明した差動プッシュプル方式によるトラッキング誤差信号TES=(H−I)−g{(C−E)+(D−F)}を生成する方法を示すブロック図である。図14において、9分割されたディテクタ3の出力信号H,I;C,D;E,Fをそれぞれ入力端子T1,T2;T9,T10;T11,T12を介して演算ユニット11,15,16に導入し、演算ユニット26のゲインをgに設定し、他の演算ユニット12〜14,17,18に対応する入力端子T3〜T8,T13〜T16の各々を信号のゼロレベルに設定する。これにより、演算ユニット11のアンプ37から信号H−Iが出力され、演算ユニット15のアンプ38から信号C+Dが出力され、演算ユニット16のアンプ38から信号E+Fが出力される。また、演算ユニット21のアンプ37から信号H−Iが出力され、演算ユニット26のアンプ37から信号g{(C−E)+(D−F)}が出力される。
【0045】
また、選択演算ユニット30の選択部40で信号H−Iを選択するとともに選択部41でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器42および加算器43の各々から信号H−Iが出力される。また、選択演算ユニット31の選択部40で信号g{(C−E)+(D−F)}を選択するとともに選択部41でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器42および加算器43の各々から信号g{(C−E)+(D−F)}が出力される。さらに、選択演算ユニット32の選択部44で信号H−Iを選択するとともに選択部45で信号g{(C−E)+(D−F)}を選択すると、減算器46から差動プッシュプル方式によるトラッキング誤差信号TES=(H−I)−g{(C−E)+(D−F)}が出力される。
【0046】
また、図15は、図4および数式(6)を用いて説明したスポットサイズ(SSD)法によるフォーカス誤差信号FES=(B+C+F+G)−(A+D+E+H)を生成する方法を示すブロック図である。図15において、24分割されたディテクタ4の出力信号B,A;C,D;E,F;H,Gをそれぞれ入力端子T1,T2;T3,T4;T9,T10;T11,T12を介して演算ユニット11,12,15,16に導入し、他の演算ユニット13,14,17,18に対応する入力端子T5〜T8,T13〜T16の各々を信号のゼロレベルに設定する。これにより、演算ユニット11,12,15,16のアンプ37からそれぞれ信号B−A,C−D,E−F,H−Gが出力される。また、演算ユニット21のアンプ38から信号B−A+C−Dが出力され、演算ユニット25のアンプ38から信号E−F+H−Gが出力される。
【0047】
また、選択演算ユニット30の選択部40で信号B−A+C−Dを選択するとともに選択部41でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器42および加算器43の各々から信号B−A+C−Dが出力される。また、選択演算ユニット31の選択部40で信号E−F+H−Gを選択するとともに選択部41でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器42および加算器43の各々から信号E−F+H−Gが出力される。さらに、選択演算ユニット32の選択部44で信号B−A+C−Dを選択するとともに選択部45で信号E−F+H−Gを選択すると、減算器46からスポットサイズ(SSD)法によるフォーカス誤差信号FES=(B+C+F+G)−(A+D+E+H)が出力される。
【0048】
また、図16は、図4および数式(7)を用いて説明した差動プッシュプル(DPP)法によるトラッキング誤差信号TES=(A+B+C+D)−(E+F+G+H)−g(I−J)を生成する方法を示すブロック図である。図16において、24分割されたディテクタ4の出力信号A〜Jをそれぞれ入力端子T1〜T10を介して演算ユニット11〜15に導入し、演算ユニット15のゲインをgに設定し、他の演算ユニット16〜18に対応する入力端子T11〜T16の各々を信号のゼロレベルに設定する。これにより、演算ユニット11〜14のアンプ38からそれぞれ信号A+B,C+D,E+F,G+Hが出力され、演算ユニット15のアンプ37から信号g(I−J)が出力される。また、演算ユニット22のアンプ38から信号A+B+C+Dが出力され、演算ユニット24のアンプ38から信号E+F+G+Hが出力される。
【0049】
また、選択演算ユニット30の選択部40で信号A+B+C+Dを選択するとともに選択部41で信号E+F+G+Hを選択すると、減算器42から信号(A+B+C+D)−(E+F+G+H)が出力される。また、選択演算ユニット31の選択部40で信号g(I−J)を選択するとともに選択部41でゼロレベルの信号0を選択すると、減算器42および加算器43の各々から信号g(I−J)が出力される。さらに、選択演算ユニット32の選択部44で信号(A+B+C+D)−(E+F+G+H)を選択するとともに選択部45で信号g(I−J)を選択すると、減算器46から差動プッシュプル(DPP)法によるトラッキング誤差信号TES=(A+B+C+D)−(E+F+G+H)−g(I−J)が出力される。
【0050】
このように、サーボ誤差信号演算部5を用いることで代表的な方式のフォーカス誤差信号FESおよびトラッキング誤差信号TESを演算できることが分かる。また、これらの演算はサーボ誤差信号演算部5の一部の回路のみを使用して実行可能であり、これら以外にも様々な演算を実行可能であることは言うまでもない。しかも、これらの様々な演算方式の実現のために全ての演算回路を網羅するのではなく、光ディスク装置のサーボ誤差信号の演算方式の特徴を利用して少ない回路規模でかつアナログ方式による演算回路で実現することができる。このため、種々のサーボ演算方式の光ピックアップ51との接続が可能であり、かつ後段のデジタル信号処理部57にはアナログ信号のサーボ誤差信号を出力する。したがって、既存のデジタル信号処理部57の集積回路に接続可能となり、新たなコスト、開発の手間をかけることなくサーボ演算方式の変更が可能である。また、新規なサーボ演算方式に対しても十分対応できる。
【0051】
なお、本願発明は、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、Blu−ray Discなどの光ディスク記録/再生装置に適用可能である。
【0052】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】ディテクタの構成を示す図である。
【図2】他のディテクタの構成を示す図である。
【図3】さらに他のディテクタの構成を示す図である。
【図4】さらに他のディテクタの構成を示す図である。
【図5】この発明の一実施の形態による光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図5に示したサーボ誤差信号演算部の構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示したフォーカス誤差信号生成部の構成を示すブロック図である。
【図8】図7に示した演算ユニットの構成を示すブロック図である。
【図9】図7に示した選択演算ユニット30の構成を示すブロック図である。
【図10】図7に示した選択演算ユニット32の構成を示すブロック図である。
【図11】図5に示したサーボ誤差信号演算部の使用方法を示すブロック図である。
【図12】図5に示したサーボ誤差信号演算部の他の使用方法を示すブロック図である。
【図13】図5に示したサーボ誤差信号演算部のさらに他の使用方法を示すブロック図である。
【図14】図5に示したサーボ誤差信号演算部のさらに他の使用方法を示すブロック図である。
【図15】図5に示したサーボ誤差信号演算部のさらに他の使用方法を示すブロック図である。
【図16】図5に示したサーボ誤差信号演算部のさらに他の使用方法を示すブロック図である。
【図17】従来の光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0054】
1〜4 ディテクタ、5,55 サーボ誤差信号演算部、6 フォーカス誤差信号生成部、7 トラッキング誤差信号生成部、T1〜T16 入力端子、10,20 演算回路、11〜18,21〜28 演算ユニット、30〜32 選択演算ユニット、35,42,46 減算器、36,43 加算器、37,38 アンプ、40,41,44,45 選択部、51 光ディスク、52 スピンドルモータ、53 光ピックアップ、54 アナログ信号処理部、56 RF信号処理部、57 デジタル信号処理部、58 A/D変換部、59 サーボ制御部、60 D/A変換部、61 再生信号処理部、62 制御部、63 ドライバ部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクからの反射光を検出する受光素子のM対(ただし、Mは自然数である)の出力信号に基づいて光ピックアップのサーボ誤差信号を演算するサーボ誤差信号演算回路であって、
N対(ただし、NはM以上の整数である)の入力端子を備え、前記N対の入力端子のうちのM対の入力端子は前記受光素子の前記M対の出力信号を受け、残りのN−M対の入力端子の各々はゼロレベルの信号を受け、
さらに、前記N対の入力端子に入力されたN対の信号を受け、各対をなす2つの信号の差を示す信号と和を示す信号とを生成し、生成した2N個の信号をN個の第1グループに等分割して出力する第1の演算回路と、
前記第1の演算回路から出力されるN個の第1グループの信号を受け、各第1グループに属する2つの信号の差を示す信号と和を示す信号とを生成し、生成した2N個の信号を2つの第2グループに等分割して出力する第2の演算回路と、
前記第2の演算回路から出力される2つの第2グループの信号を受け、各第2グループに属するN個の信号のうちのいずれか2つの信号を選択し、選択した2つの信号の差を示す信号と和を示す信号とを生成し、生成した4つの信号を2つの第3グループに等分割して出力する第1の選択演算回路と、
前記第1の選択演算回路から出力される2つの第3グループの信号を受け、各第3グループに属する2つの信号のうちのいずれかの信号を選択し、選択した2つの信号の差を示す信号を生成し、生成した信号を前記サーボ誤差信号として出力する第2の選択演算回路とを備える、サーボ誤差信号演算回路。
【請求項2】
前記第1および第2の演算回路の各々は、各信号に対応して設けられて対応の信号を増幅するゲイン調整の可能なアンプを含む、請求項1に記載のサーボ誤差信号演算回路。
【請求項3】
前記Nは8である、請求項1または請求項2に記載のサーボ誤差信号演算回路。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載のサーボ誤差信号演算回路と、
前記サーボ誤差信号演算回路を制御する制御部とを備えた、光ディスク装置。
【請求項5】
前記サーボ誤差信号演算回路が複数設けられている、請求項4に記載の光ディスク装置。
【請求項1】
光ディスクからの反射光を検出する受光素子のM対(ただし、Mは自然数である)の出力信号に基づいて光ピックアップのサーボ誤差信号を演算するサーボ誤差信号演算回路であって、
N対(ただし、NはM以上の整数である)の入力端子を備え、前記N対の入力端子のうちのM対の入力端子は前記受光素子の前記M対の出力信号を受け、残りのN−M対の入力端子の各々はゼロレベルの信号を受け、
さらに、前記N対の入力端子に入力されたN対の信号を受け、各対をなす2つの信号の差を示す信号と和を示す信号とを生成し、生成した2N個の信号をN個の第1グループに等分割して出力する第1の演算回路と、
前記第1の演算回路から出力されるN個の第1グループの信号を受け、各第1グループに属する2つの信号の差を示す信号と和を示す信号とを生成し、生成した2N個の信号を2つの第2グループに等分割して出力する第2の演算回路と、
前記第2の演算回路から出力される2つの第2グループの信号を受け、各第2グループに属するN個の信号のうちのいずれか2つの信号を選択し、選択した2つの信号の差を示す信号と和を示す信号とを生成し、生成した4つの信号を2つの第3グループに等分割して出力する第1の選択演算回路と、
前記第1の選択演算回路から出力される2つの第3グループの信号を受け、各第3グループに属する2つの信号のうちのいずれかの信号を選択し、選択した2つの信号の差を示す信号を生成し、生成した信号を前記サーボ誤差信号として出力する第2の選択演算回路とを備える、サーボ誤差信号演算回路。
【請求項2】
前記第1および第2の演算回路の各々は、各信号に対応して設けられて対応の信号を増幅するゲイン調整の可能なアンプを含む、請求項1に記載のサーボ誤差信号演算回路。
【請求項3】
前記Nは8である、請求項1または請求項2に記載のサーボ誤差信号演算回路。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載のサーボ誤差信号演算回路と、
前記サーボ誤差信号演算回路を制御する制御部とを備えた、光ディスク装置。
【請求項5】
前記サーボ誤差信号演算回路が複数設けられている、請求項4に記載の光ディスク装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−305191(P2007−305191A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130308(P2006−130308)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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