説明

サーマルクリーンチャンバー

【課題】測定性能の向上・省エネルギー化・省スペース化・温度慣らし時間の短縮・設備費用の低減を行なえるサーマルクリーンチャンバーを提供する。
【解決手段】サーマルクリーンチャンバー1であって、フラットパネルディスプレイ検査・製造装置3を収容し、クリーンルーム2内に配置され、クリーンルーム2からの被加工用ガラス基板4を受け入れる出入口5及びそれに連なるガラス基板搬送路5aを設け、該出入口5の上部には、所定温度で高精度に安定したエアーを供給するダクト7を設け、該ダクト7には、前記ガラス基板搬送路5a上の加工用ガラス基板4の進行方向に向け上方から噴気流を斜めに吹き付ける傾斜噴気口7aと、噴気流を下方向に吹き付け噴気流により前記検査・製造装置を囲繞するようにした垂直噴気口7bとを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイ(以下 FPDと称す)検査・製造時に用いられる装置の、周囲温度と清浄度とを高精度に安定させる、サーマルクリーンチャンバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
FPDガラス基板を検査・製造する際にはガラス基板及び検査・製造装置周囲の温度分布が均一でないと、ガラス基板もしくは検査・製造装置が温度差により伸縮し測定精度に影響を与える。従って、必ず事前に定められた設定温度の環境内で測定が行なわれなければならない。
【0003】
サーマルクリーンチャンバーはその天井部全面から精密に温度制御されたエアーを供給し、庫内に設置された検査・製造装置本体及びその周囲の温度を高精度に安定させている(特許文献1)。これを以下「全面層流方式」と呼ぶ。
しかしサーマルクリーンチャンバー内部の温度が安定していても装置外は一般のクリーンルームのため同一の設定温度とは限らずまた変動も大きい。このため装置外の温度に安定したガラス基板がサーマルクリーンチャンバー内部へ入った後、ガラス基板が精度良く測定できる温度になるまで慣らす(待機する)必要がある。この待機時間があるほど生産性は下がる。この為ガラス基板が検査・製造装置に入る前に設定温度にガラス基板を慣らすことが行なわれている。これを温度慣らしと呼ぶ。
【0004】
FPDガラス基板のサイズは、最終製品の大型化そして歩留まり向上のため年々大型化が進んでいる。それに伴い検査・製造装置も測定面積が大きくなり、さらに広範囲での高精度な温度の安定度が必要となる。サーマルクリーンチャンバーは「全面層流方式」のため測定面積拡大により必要風量も増加しそれを処理する空調エネルギーも増えている。また大型化により「温度慣らし」の重要性も高まりそれに伴う設置スペース・空調エネルギー・設備費用等の増加も避けられないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−243098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記の点に鑑みて、測定性能の向上・省エネルギー化・省スペース化・温度慣らし時間の短縮・設備費用の低減を行なえるサーマルクリーンチャンバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、サーマルクリーンチャンバーであって、FPD検査・製造装置を収容し、クリーンルーム内に配置され、クリーンルームからの被加工用ガラス基板を受け入れる出入口及びそれに連なるガラス基板搬送路を設け、該出入口の上部には、所定温度で高精度に安定したエアーを供給するダクトを設け、該ダクトには、前記ガラス基板搬送路上の加工用ガラス基板の進行方向に向け上方から噴気流を斜めに吹き付ける傾斜噴気口と、噴気流を下方向に吹き付け噴気流により前記検査・製造装置を囲繞するようにした垂直噴気口とを設けている。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、FPD検査・製造装置3として精密自動2次元座標測定機を収容し高精度に温度制御するサーマルクリーンチャンバー1と、クリーンルーム2との間に設けた被加工用ガラス基板の出入口5に設けた自動シャッター6の上部に、所定温度のエアーをガラス基板4に向け噴出するノズル7a,7bを有するダクト7を設け、該各ノズル7a,7bはガラス基板4の進行方向を向いた傾斜噴気口としたノズル7aと垂直下部に向いた垂直噴気口としたノズル7bを設けた。また、噴出口7a,7bを設けたことにより、全面層流方式のサーマルクリーンチャンバー天井噴出部の面積を従来よりも減少し、次の如き効果を発揮することが出来る。
a.サーマルクリーンチャンバー内の搬送路5aに噴出したエアーがガラス基板4上を這う様に流れる事によって、ガラス基板4の温度慣らし時間を短縮し、同時にFPD検査・製造装置3表面温度を安定化することが出来る。
b.搬送路5aに噴出したエアーの効果により天井噴出しダクト8からのエアーは風量を減少することが出来きる。
c.温度慣らしエリアが不要になる。これよりサーマルクリーンチャンバーの容積と設置面積が大幅に縮小する。
d.垂直下方向を向いた噴出エアーはエアーカーテン効果を有し、クリーンルームからの気流入り込みを防止する。またFPD検査・製造装置3下部に気流を形成することで温度が安定し該装置の測定性能を向上させる。
e.本発明サーマルクリーンチャンバーは、FPD以外の同様な装置にも用いる事が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明サーマルクリーンチャンバーの概略縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明実施の一例を図面と共に次に説明する。
図1は装置全体の概略縦断面図である。1はサーマルクリーンチャンバーで、全自動化されたFPD工場においてクリーンルーム2内に設置され、内部にFPD検査・製造装置3(一例として)が収容されている。サーマルクリーンチャンバー1には被加工用のガラス基板4用搬送路5aの出入口5が設けられ、上下スライド式の自動シャッター6が設けられている。
【0011】
出入口5からFPD検査・製造装置3に送られるガラス基板4は、図示しない適宜搬送手段で担持されるが、出入口5からFPD検査・製造装置3に至る間にガラス基板4の温度慣らしのための気流雰囲気中を通過させるように搬送路5aを構成している。前記搬送路5aの上部には、上記搬送されるガラス基板4の上面にガラス基板4の温度慣らし用気流を吹き当てるためのダクト7を設ける。ダクト7は、ガラス基板4を搬送する進行方向(サーマルクリーンチャンバー室内側 )に向けてガラス基板4の上面から下方に向け斜め方向に気流を噴出する傾斜噴気口7aと、ガラス基板4の進行方向と直交し気流を垂直下方に噴出する垂直噴気口7bとにより構成されている。前記斜め方向の噴出気流は、ガラス基板4に接触後にガラス基板4上にて水平気流になり温度慣らし時間を短縮し、ガラス基板4がFPD検査・製造装置3上の所定位置に設置された後にはガラス基板4とFPD検査・製造装置3の温度を安定化することが可能となる。
垂直下方に向けた垂直噴気口7bの噴気は、搬送路5aの出入口5の位置において出入口を閉じるエアーカーテン効果を発揮し外部クリーンルーム2からサーマルクリーンチャンバー1内への空気誘引を防止している。またガラス基板4が通過後にFPD検査・製造装置3のガラステーブル3a下面の空間に空気の流れを形成し温度を安定化する。
サーマルクリーンチャンバー1の天井部は噴出ダクト8が設置されFPD検査・製造装置3の上位に噴気口8aを開口している。噴気口8aの噴気はガラス基板4上の水平気流が舞上がるのを防止し温度慣らし時間を短縮させ、またガラス基板4がFPD検査・製造装置3の所定位置に設置された後には同装置3上面の舞上がり気流を抑えて温度を安定化させる。
【0012】
サーマルクリーンチャンバー1はFPD検査・製造装置3を収容した作業空間1aの周囲に、冷却コイル10・ヒーター11・ファン12等を収納したダクト16を配し、ヘパフィルター13を収容したダクト8と7及びそれぞれに圧力空気を送るダクト14・15を有している。
【0013】
FPD検査・製造装置3には精密自動二次元座標測定機を使用して温度慣らし時間の短縮と装置自体の温度安定化を検証するためサンプル基盤を用いて実際に測定し、長期安定性及び短期安定性を確認した。測定機は大型石定盤上にガラス基盤を設置する高精度ガラステーブル3aと基板上の各座標点を検出する顕微鏡3cが設置され、エアスライダーやLMガイド等の駆動部3bにより高精度ガラステーブルや顕微鏡をXY軸方向へ移動させ測定する。座標位置の測定はガラス基板上の決められた基準点から測定座標までの移動量を測定しレーザースケールやガラス製リニアスケールにて行なわれる。これら装置の部品は温度が変化すると伸縮が発生し影響を受けレーザーも空気の揺らぎにより変化が生じるため、ガラス基板及び測定機本体を高精度に温度管理する必要がある。
【0014】
上記の如く構成された本発明装置はサーマルクリーンチャンバー1に組み込まれた冷却コイル10及び電気ヒーター11で所定温度にて精密に保たれたエアーがファン12からダクト14を通りダクト8内に設置されたヘパフィルター13を介して作業空間1a内に噴出すると共に、ダクト15によりガラス基板4の上部ダクト7の傾斜噴気口7aから吹き出した噴気流は、ガラス基板4に斜めに吹き当たって該ガラス基板4上を水平方向に滑らかに気流が流れ温度慣らし時間の短縮と、進行方向先端に位置するFPD検査・製造装置3の表面温度を安定化させる作用を発揮し、上部ダクト7の垂直噴気口7bから噴出した噴気はエアーカーテン効果を有し、さらにダクト16にてクリーンルーム2から空気を導入することで搬入口近傍が弱陽圧となり、サーマルクリーンチャンバー1が設置されたクリーンルーム2から不定温度のエアーと塵埃等の異物がサーマルクリーンチャンバー1内に侵入するのを防ぐ。
さらにダクト8の噴気口8aから噴出したエアーはガラス基板4とFPD検査・製造装置3の上面の舞上がり気流を抑え、また駆動部3b後方のデットゾーン9を解消し、さらに検査・製造装置後方の舞上がり気流を抑えて有効に温度慣らし作業と温度の安定化を行なっている。
【符号の説明】
【0015】
1 サーマルクリーンチャンバー
1a 作業空間
2 クリーンルーム
3 FPD検査・製造装置
3a 高精度ガラステーブル
3b 駆動部
3c 顕微鏡
4 ガラス基板
5 出入口
5a 搬送路
6 自動シャッター
7 ダクト
7a 傾斜噴気口
7b 垂直噴気口
8 ダクト
8a 噴気口
9 デットゾーン
10 冷却コイル
11 ヒーター
12 ファン
13 ヘパフィルター
14 ダクト
15 ダクト
16 ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラットパネルディスプレイ検査・製造装置を収容し、クリーンルーム内に配置されたサーマルクリーンチャンバーにおいて、クリーンルームからの被加工用ガラス基板を受け入れる出入口及びそれに連なるガラス基板搬送路を設け、該出入口の上部には、所定温度で高精度に安定したエアーを供給するダクトを設け、該ダクトには、前記ガラス基板搬送路上の加工用ガラス基板の進行方向に向け上方から噴気流を斜めに吹き付ける傾斜噴気口と垂直に下方向に吹き付ける垂直噴気口とを設けたことを特徴とするサーマルクリーンチャンバー。

【図1】
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