説明

サーマルプリンタ、および、インクカセット

【課題】 巻き取りが完了する前にインクリボンを交換する場合に、インクリボンの色インク面の露出を防ぐことが可能なインクリボンユニットを提供する。
【解決手段】 色インク面32と、非色インク面33とが、搬送方向に交互に形成されているインクリボン3と、インクリボン3が巻きつけられた供給ボビン4と、インクリボン3を巻き取る巻き取りボビン5と、供給ボビン4および巻き取りボビン5を収容する筐体6と、を有し、色インク面32のインクを転写中にエラーが発生した場合に、供給ボビン4および巻き取りボビン5との間でインクカセットから露出している部分のインクリボンが非色インク面33となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクリボンを交換可能なサーマルプリンタ、および、サーマルプリンタに着脱可能なインクカセットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、サーマルプリンタで使われるインクリボンカセットは、ユーザの使い勝手を考慮した使い捨て交換型が主流である。使い捨て交換型の場合、インクリボンカセットの内部に収容されたインクリボンは、使い切った後、新品に交換される。
【0003】
新品のインクリボンをインクリボンカセットに取り付ける際、剥き出しとなった新品のインクリボンの表面に手が触れる場合がある。この場合、インクリボンの表面に塗布された染料(インク)により、手が汚れる可能性がある。また、インクリボンの表面に手が触れることによって、手の汗(指紋)やホコリなどの異物がインクリボンの表面に付着する可能性がある。表面に異物が付着したインクリボンを用いて熱転写による印画が行われると、熱転写時に印画不良が発生し、その結果、色抜けや色ムラなどの画質劣化が懸念される。そこで、このような問題を解決するためのインクリボンカセットが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載のインクリボンカセットでは、インクリボンの両端にインクが塗布されていないリードテープが設けられている。このリードテープの長さは、インクリボンが供給リール(ボビン)または巻き取りリール(ボビン)の一方に完全に巻きつけられたときのインクリボンの最外周面を覆うことができる長さとなっている。そのため、このリードテープにより、インクリボンの表面を保護すると共に、インクリボンの交換時に手がインクリボンに触れないようにすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−34451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のインクリボンカセットでは、インクリボンが供給リールから巻き取りリールに全て巻き取られた後、インクリボンを交換することを前提としている。そのため、例えば、用紙サイズの変更に伴って、インクリボンが全て巻き取られる前にインクリボンを交換する場合、特開平11−34451に記載のインクリボンは、染料(インク)面が露出しているのでインクが手に触れる場合があり、ユーザの手にインクが付着してしまう場合がある。また、この場合、このインクリボンを再利用すると、上述したように画質劣化が発生するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、インクリボンを交換する場合に、インクリボンの色インク面の露出を防ぐことが可能なインクリボンユニット、およびサーマルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明のサーマルプリンタは、
記録紙に色インクを転写するサーマルプリンタであって、
色インクが塗布された色インク面と、色インクが塗布されていない非色インク面とが、搬送方向に交互に形成されているインクリボンと、サーマルプリンタにより色インクの転写が行われる前のインクリボンが巻きつけられている供給ボビンと、供給ボビンから引き出されたインクリボンを巻き取る巻き取りボビンと、供給ボビンと巻き取りボビンとの間でインクリボンを露出させるように供給ボビンおよび巻き取りボビンを離れた状態で支持する筐体とを有するインクカセットと、インクカセットをサーマルプリンタに装着するための装着部と、色インクを転写中にエラーが発生した場合に、露出される部分のインクリボンが、非色インク面となるように、インクリボンを搬送させるリボン搬送手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明のインクカセットは、サーマルヘッドにより、インクリボンのインクを記録紙に転写するサーマルプリンタに着脱可能なインクカセットであって、色インクが塗布されたインク面と、色インクが塗布されていない非色インク面とが、搬送方向に交互に形成されているインクリボンと、サーマルプリンタにより色インクの転写が行われる前のインクリボンが巻きつけられている供給ボビンと、供給ボビンから引き出されたインクリボンを巻き取る巻き取りボビンと、供給ボビンと巻き取りボビンとの間でインクリボンを露出させるように供給ボビンおよび巻き取りボビンを離れた状態で支持する筐体とを有し、色インク面は、複数の色インクが塗布されており、非色インク面は、1色分の色インク面よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、色インクを転写中にエラーが発生した場合であっても、インクリボンの露出部分を非色インク面で占めることが可能となる。これにより、インクカセットを交換する場合に、インクリボンの色インク面の露出を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のサーマルプリンタの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明のインクリボンカセットの一実施形態を示す斜視図である。
【図3】図2に示すインクリボンカセットに設けられたインクリボンの構成を示す上面図である。
【図4】図3に示す切断線A−Aに沿った断面図である。
【図5】図2に示すインクリボンカセットがサーマルプリンタに取り付けられている状態を示す断面図である。
【図6】図1に示すサーマルプリンタにおいて、印画動作時に実行されるインクリボンの搬送動作の手順を示すフローチャートである。
【図7】図8に示すインクリボンよりも透明面の長さが短いインクリボンを示す上面図である。
【図8】図2に示すインクリボンカセットに設けられたインクリボンの構成を示す上面図である。
【図9】本発明において、インクリボンの巻き取りが開始された直後の状態を示す断面図である。
【図10】本発明において、インクリボンの巻き取りが完了した直後の状態を示す断面図である。
【図11】本発明のサーマルプリンタの他の実施形態を示す斜視図である。
【図12】図11に示すインクリボンカセットを本体に取り付ける際の動作を説明する断面図である。
【図13】図11に示すサーマルプリンタに設けられたインクリボンカセットの構成を示す斜視図である。
【図14】図11に示すサーマルプリンタの本体内部の構成を示す断面図である。
【図15】図13に示すインクリボンカセットに設けられたインクリボンの構成を示す上面図である。
【図16】図11に示すサーマルプリンタの本体内部に設けられた印画動作の制御構成を示すブロック図である。
【図17】実施形態3のサーマルプリンタの印画動作の手順を示すフローチャートである。
【図18】実施形態4のサーマルプリンタの印画動作の手順を示すフローチャートである。
【図19】実施形態5のサーマルプリンタの印画動作の手順を示すフローチャートである。
【図20】実施形態5におけるインクリボンを中断位置まで巻き取るのに必要な巻き取り量を説明するための断面図である。
【図21】インクリボンカセットの形状の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
図1は、本発明のサーマルプリンタの一実施形態を示す斜視図である。本実施形態のサーマルプリンタ10は、図1に示すように、本体1と、本体1に交換可能に取り付けられるインクリボンカセット2と、を有する。本体1の両脇には、未印画の記録媒体9が搭載される給紙部7と、印画済の記録媒体9が搭載される排紙部8とが設けられている。サーマルプリンタ10では、記録媒体9が給紙部7から本体1に搬入される。そして、本体1で印画された後、記録媒体9は本体1から排紙部16に搬出される。なお、本発明では、枚葉紙、ロール状の巻取紙などが記録媒体9として適用できる。
【0013】
図2は、本発明のインクリボンカセットの一実施形態を示す斜視図である。
【0014】
図2に示すインクリボンカセットは、図1に示すインクリボンカセット2を下から見た斜視図である。インクリボンカセット2は、インクリボン3と、供給ボビン4と、巻き取りボビン5と、筐体6と、を有する。供給ボビン4と巻き取りボビン5とは互いに離れた状態で筐体6に回転可能に収容されている。インクリボンカセット2では、供給ボビン4に未使用のインクリボン3がロール状に巻きつけられ、使用済のインクリボン3が巻き取りボビン5にロール状に巻き取られる。供給ボビン4および巻き取りボビン5は、筐体6に収容される。このとき、供給ボビン4と巻き取りボビン5との間でインクリボン3は露出している。
【0015】
図3は、本実施形態のインクリボンの構成を示す上面図である。また、図4は、図3に示す切断線A−Aに沿った断面図である。本実施形態では、図4に示すインクリボン3では、PET(ポリエチレンテレフタレート)から構成される基材シート31の表面に記録媒体9に熱転写される染料(色インク)が塗布された色インク面32と、染料が塗布されない非色インク面33とが形成されている。基材シート31の裏面には、背面層34が形成されている。この背面層34を加熱することによって、色インク面32に塗布されている染料が記録媒体9に転写される。すなわち、色インク面32は、染料を記録媒体9に熱転写する印画動作の前後で染料が塗布された状態から染料が記録媒体9に熱転写された状態に変化する。
【0016】
インクリボン3では、図3に示すように、色インク面32と非色インク面33とがインクリボン3の搬送方向(矢印100参照)に交互に形成されている。インクリボン3は、一組の色インク面32および非色インク面33を1セットとして1画面を記録媒体9に印画し、20画面〜50画面を印画できる長さを有する。各セットの境界には、図3に示すように互いに近接して並べられている2本のリボンマーカ35aが形成されている。
【0017】
色インク面32では、Ye(イエロー)面32aを先頭に、Mg(マゼンダ)面32b、Cy(シアン)面32cが搬送方向の前方から順次並べられている。Ye面32aとMg面32bの境界にはリボンマーカ35bが形成されている。Mg面32bとCy面32cとの境界にはリボンマーカ35cが形成されている。Cy面32cと非色インク面33との境界にはリボンマーカ35dが形成されている。リボンマーカ35b、35c、35dは、リボンマーカ35aとは異なっており、1本のリボンマーカで構成されている。一方、非色インク面33では、リボンマーカ35dに対して搬送方向の後方に保護インク面33aが連続して形成され、保護インク面33aに対して搬送方向の後方に透明面33bが連続して形成されている。保護インク面33aには、記録媒体9に転写された染料を保護する無色透明な保護インクが塗布されている。本実施形態では、保護インクは、透明な熱可塑性樹脂を材料とする接着剤である。透明面33bには、何も塗布されていない。インクリボン3が巻き取りボビン5に巻き取られていくと、巻き取りボビン5に形成されるインクリボン3の巻き取り円の外周の周長が増加する。これにより、使用済のインクリボン3を巻き取りボビン5に巻き取るのに必要な長さが増加する。そのため、保護インク面33aとリボンマーカ35aとの間隔が小さいと、リボンマーカ35aが保護インク面33aとともに巻き取りボビン5に巻き取られてしまう場合がある。この場合、このリボンマーカ35aに対して搬送方向の後方に位置するYe面32aが検知されなくなる。そこで、透明面33bが、保護インク面33aとリボンマーカ35aとの間隔を確保するために設けられている。
【0018】
本実施形態では、Ye面32a、Mg面32b、およびCy面32cは同じ長さXを持ち、保護インク面33aは、長さXと同等もしくはそれ以上の長さを持つものとする(図3参照)。また、非色インク面33の長さYは、供給ボビン4と巻き取りボビン5との間におけるインクリボン3の露出部分の長さよりも長い。
【0019】
図5は、本実施形態のインクリボンカセットがサーマルプリンタに取り付けられている状態を示す断面図である。供給ボビン4には、記録媒体9に熱転写されるインクがYe面32a、Mg面32b、およびCy面32cに塗布されている状態(未使用の状態)のインクリボン3がロール状に巻きつけられている。そして、印画動作時に、供給ボビン4から引き出されたインクリボン3の背面層34がサーマルヘッド11に設けられている発熱体14によって加熱される。これにより色インク面32に塗布された各色のインクが記録媒体9に転写される。その後、使用済となったインクリボン3は、巻き取りボビン5に巻き取られる。
【0020】
なお、本実施形態では、インクリボン3は、供給ボビン4において色インク面32を内側にして巻回され、巻き取りボビン5において色インク面32を外側にして巻回されている。しかし、本発明は、このようにインクリボン3が供給ボビン4および巻き取りボビン5に巻回されることを限定するものでは無い。インクリボン3が供給ボビン4および巻き取りボビン5に対して図5に示す状態とは反対に巻回されていても、インクリボン3の非色インク面33の長さがインクリボン3の露出部分13の長さよりも長ければ良い。ここで、この露出部分13を3つの領域に区切って各領域について詳しく説明する。
【0021】
図5に破線で示された領域aの範囲は、発熱体14直下の位置から、搬送方向の前方に位置する露出部分13の先端部P2までである。領域aから搬送方向の後方に連続する領域bの範囲は、発熱体14直下の位置から、インクリボン3が筐体6の縁12に当たり、インクリボン3の送り角度が変わる位置までである。領域bから搬送方向の後方に連続する領域cの範囲は、筐体6の縁12から搬送方向の後方(供給ボビン4側)に位置する筺体の縁があるP3までにおいて、インクリボン3が露出する範囲を示している。実際には、P1からP3の筺体6側のインクリボンは露出していないが、P3からP1までの筺体6がない側のインクシートは露出しているので、図5のように、露出しているインクシートがあるP1までの点線部分を露出部分13としている。
【0022】
つまり、露出部分13は、供給ボビン4から巻き取りボビン5に巻き取られるインクシートのうち、筐体6に隠れておらず、供給ボビン4および巻き取りボビン5の最外周に巻かれていて筐体6から露出している全ての部分を含むインクシートの部分である。
【0023】
次に、本実施形態のサーマルプリンタにおいて、印画動作時に実行されるインクリボンの搬送動作の手順について説明する。図6は、本実施形態のサーマルプリンタにおいて、印画動作時に実行されるインクリボンの搬送動作の手順を示すフローチャートである。
【0024】
印画動作が開始された後、まず、画面頭出し動作が実行される(ステップS131)。具体的には、Ye面32aの始端部を印画開始位置(発熱体14の直下の位置)に合わせるため、光センサ(不図示)がリボンマーカ35a(図3参照)を検知するまでインクリボン3は供給ボビン4から巻き取りボビン5まで搬送される。リボンマーカ35aが検知されると、インクリボン3の搬送は停止される。次に、Ye面32aに塗布されたインクの熱転写が、インクリボン3を送りながら実施される(ステップS132)。熱転写を実施する際、記録媒体9にインクリボン3を重ねて同時に搬送するため、リボン送りが発生する。次に、Mg面32bの頭出し動作が実行される(ステップS133)。具体的には、リボンマーカ35b(図3参照)が上述した光センサに検知されるまでインクリボン3が搬送される。次に、Mg面32bに塗布されたインクの熱転写が、インクリボン3を送りながら実施される(ステップS134)。次に、Cy面32cの頭出し動作が実行される(ステップS135)。具体的には、リボンマーカ35c(図3参照)が上述した光センサに検知されるまでインクリボン3が搬送される。次に、Cy面32cに塗布されたインクの熱転写が、インクリボン3を送りながら実施される(ステップS136)。次に、保護インク面33aの頭出し動作が実行される(ステップS137)。具体的には、リボンマーカ35dが上述した光センサに検知されるまで、インクリボン3が搬送される。この時、透明面33bは認識されず読み飛ばされる。次に、保護インク面33aに塗布された保護インクの熱転写が、インクリボン3を送りながら実施される(ステップS138)。これにより、1画面分の印画動作が完了する。
【0025】
図7は、本実施形態のインクリボンよりも透明面の長さが短いインクリボンを示す上面図である。また、図8は、本実施形態のインクリボンを示す上面図である。
【0026】
図7に示すインクリボン300では、1画面分の印画動作の完了時に保護インク面330aが先端部P2に位置している。このとき、透明面330bの長さd1が約10mmと短いので、次のYe面320aの一部(図7の斜線部B参照)が露出している。そのため、この状態でインクリボン300の交換が行われると、イエローのインクが手に触れる可能性がある。そこで、本発明では、図8に示すように、透明面33bの長さd2を約20mmと長くすることによって、1画面分の印画動作が完了したときに次のYe面32aを露出させないようにしている。そのため、この状態でインクリボン3の交換が行われても、色インクが手に触れることはない。なお、図7、8に示す領域a0は、図5に示す領域aに位置しているインクリボン3、300の部分を示し、本実施形態ではその長さは15.8mmとする。また、領域b0は、図5に示す領域bに位置しているインクリボン3、300の部分を示し、本実施形態ではその長さは25.3mmとする。また、領域c0は、図5に示す領域cに位置しているインクリボン3、300の部分を示し、本実施形態ではその長さは25.3mmとする。
【0027】
本実施形態では、印画動作の完了時に露出部分13の先端部P2に位置する保護インク面33aから搬送方向の後方に位置する透明面33bの終端部までの長さが露出部分13の長さよりも長い。そのため、インクリボン3が巻き取りボビン5に完全に巻き取られる前の状態であっても色インク面32を露出させないようにすることが可能となる。したがって、巻き取りが完了する前にインクリボン3を交換する場合に、インクリボン3の色インク面32の露出を防ぐことが可能となる。
【0028】
印画動作の完了時に露出部分13の先端部P2に位置する保護インク面33aは、保護インク面33aの保護インクを転写するのに必要となるインク面の後端であるので、非色インク面の搬送方向の長さは、保護インクを転写するのに必要となるインク面の長さと、領域cで露出するインクシートの長さとを足した長さよりも長くすればよい。
【0029】
なお、本実施形態では、透明面33bの長さd2を長くする構成によって、印画動作の完了時に色インク面32を露出させないようにしたが、保護インク面33aを長くする構成であってもよい。
【0030】
また、本実施形態では、図5のようなインクカセットを例に説明したが、図21(a)のようなインクカセットで本発明を実現してもよい。図21の各部には、図5と同じものには同じ番号を付与している。図21(a)のインクカセットにおいても、図5のインクカセット度同様に、露出部分13は、インクが転写される発熱体14から巻き取りボビン5側の露出部分a3と、インクが転写される発熱体14から供給ボビン4側の露出部分b3とがある(図21(b)参照)。インクリボンのa3の領域については、すでにインクの転写が終わっている領域であるので、ユーザが触ったとしても、印画画質に影響はでない。供給ボビン側の領域b3については、これから使用するインクリボンとなるため、ユーザが触ったりすると印画画質に影響が出る可能性がある。そのため、図21(c)のように、非色インク面33のうちの保護インクの転写に使用するインク面の後端から少なくともb3の長さの部分は非色インク面となるように、非色インク面を構成している。これにより、保護インクの転写完了時に、インクカセットからは色インクが露出しないようにすることができる。
【0031】
また、図3のように、非色インク面33の搬送方向の長さだけを長くして、色インク面32の各色の面32a、32b、32cには透明部を設けていない。これは、各色ごとに透明部を設けると、インクリボンが長くなってしまい、インクカセットが大型になってしまうためである。色インク面32の各色の面32a、32b、32c、および、保護インク面33aについては、特定のサイズの用紙にインクを転写するのに必要なサイズの面であり、印画処理の最後にインクの転写が行われる保護インクの後ろにだけ透明部を設けている。また、保護インクは、透明であるためユーザが触ったとしても色が移らない。
【0032】
また、本実施形態では、用紙に転写された色インク面のインクの上に保護インクを転写する構成であるが、保護インクを用いない場合は、保護インク面33aを配置せずに、露出部分13の長さ以上の透明面33bのみを配置してインクリボンを構成してもよい。
【0033】
(実施形態2)
本実施形態のサーマルプリンタについて説明する。なお、実施形態1のサーマルプリンタと同様の構成については、詳細な説明を省略する。本実施形態では、インクリボンの構成が実施形態1と異なる。実施形態1では、透明面33bの長さd2(図8参照)が一定であった。しかし、本実施形態では、印画動作の完了時に色インク面32を露出させないために必要な透明面33bの長さが、インクリボン3の巻き取り状態に応じて変化することに着目し、透明面33bの長さがより適切に定められている。
【0034】
図9は、インクリボンの巻き取りが開始された直後の状態を示す断面図である。図9に示す領域a1、領域b1、および領域c1は、図5に示すインクリボン3の露出部分13の領域a、領域b、および領域cにそれぞれ相当する。
【0035】
領域cの長さは、供給ボビン4に巻きつけられているインクリボン3の巻き径R1が大きいほど短くなるため、領域c1の長さが最小値となる。領域aの長さは、巻き取りボビン5に巻きつけられているインクリボン3の巻き径R2が小さいほど短くなるため、領域a1の長さが最小値となる。領域bの長さは、巻き径R1、R2の影響を受けないため一定値となる。すなわち領域bの長さと領域b1の長さとは同じである。
【0036】
図10は、インクリボンの巻き取りが完了した直後の状態を示す断面図である。図10に示す領域a2、領域b2、および領域c2は、図5に示すインクリボン3の搬送路の領域a、領域b、および領域cにそれぞれ相当する。
【0037】
領域cの長さは、上述したように巻き径R1が大きいほど短くなる(巻き径R1が小さいほど長くなる)ため、領域c2の長さが最大値となる。領域aの長さは、上述したように巻き径R2が小さいほど短くなる(巻き径R2が大きいほど長くなる)ため、領域a2の長さが最大値となる。領域bの長さは、上述したように巻き径R1、R2の影響を受けないため、領域bの長さと領域b2の長さとは同じである。
【0038】
本実形態では、巻き径R2が小さい時(図10参照)、印画動作の完了時に色インク面32を露出させないために必要な透明面33bの長さが、巻き径R2が大きい時(図11参照)に比べて短くできる点を利用して、透明面33bの長さが決められている。
【0039】
本実施形態では、巻き径R2の変化を印画枚数の変化に対応付けて透明面33bの寸法が決められている。具体的には、インクリボン3が50画面を印画できる場合、透明面33bの長さは、印画枚数が10画面までは5mm、11〜30画面までは10mm、31〜50画面までは20mmとする。この場合、合計の長さは650mmとなる。一方、実施形態1では、透明面33bの長さが20mmに統一されていたので、合計の長さは1000mmとなる。そのため、本実施形態では、実施形態1に比べインクリボン3の全長が350mm短くなる。
【0040】
本実施形態では、インクリボン3の透明面33bの長さは、印画枚数が少ない領域ほど短くなっている。すなわちインクリボンの先頭側の透明面33bの長さが、後端側の透明面33bの長さよりも大きくなり、搬送方向後端側になるにつれて透明面33bの搬送方向の長さが段階的に短くなる。これにより、実施形態1に比べインクリボン3の長さを節約できる。これにより、インクリボン3のコストを低減することが可能となる。
【0041】
(実施形態3)
図11は、本実施形態のサーマルプリンタの斜視図である。図11(a)は本実施形態のサーマルプリンタ20を正面から見た斜視図であり、図11(b)は、図11(a)に示すサーマルプリンタ20を側面から見た斜視図である。
【0042】
図11に示すように、本実施形態のサーマルプリンタ20は、本体50と、本体50に交換可能に取り付けられるインクリボンカセット60と、を有する。
【0043】
本体50の側面には、インクリボンカセット60が挿入される挿入口51が設けられている。本体50の上面には、表示部52が設けられている。表示部52は、電源部(不図示)が起動すると本体50のステータスを表示する。ステータスとは、例えばインクリボンカセット60の本体50への挿入の有無などが挙げられる。また、本体50の上面には操作部53が設けられている。操作部53は、電源のONまたはOFF、画像の選択、印刷設定、印刷コマンド送信などの操作を行うために使用される。なお、インクリボンカセット60の本体50への着脱はこの操作部53の使用で可能になる。
【0044】
次に、図12を参照してインクリボンカセット60を本体50に取り付ける際の動作について説明する。図12(a)はインクリボンカセット60が本体50に取り付けられた状態を示す断面図である。また、図12(b)は、インクリボンカセット60が本体50から取り外し可能な状態を示す断面図である。
【0045】
本体50の内部において、挿入口51の近傍には係止部材91が設けられている。係止部材91は突起91aおよび91bが設けられている。突起91aは、本体50の側面に設けられた穴91cから本体50の外部に向かって突出している。一方、突起91bは、本体50の内部に向かって突出している。係止部材91の下部にはバネ92が取り付けられている。また、本体50の内部には移動可能な移動部材93が設けられている。
【0046】
図12(a)に示すように、インクリボンカセット60が挿入口51を通じて本体50に収容された後、係止部材91は、バネ92の弾性力によってインクリボンカセット60と挿入口51との間に移動する。このとき、移動部材93は係止部材91を固定させる第1の位置に移動する。具体的には、移動部材93は突起91bと係合する位置に移動して係止部材91が下降しないようにさせる。移動部材93が係止部材91から離れて係止部材91の固定を解除する第2の位置に移動し、突起91aが押し下げられると、図12(b)に示すように、インクリボンカセット60が本体50から取り外し可能な状態となる。
【0047】
次に、図13を参照してインクリボンカセット60の構成について説明する。図13(a)はインクリボンカセット60の外観を示す斜視図であり、図13(b)はインクリボンカセット60の分解斜視図である。図13(b)に示すインクリボンカセット60は、筐体を構成する上蓋81と下蓋82とを有する。下蓋82の中には、インクリボン70が巻き取りボビン83、供給ボビン84にロール状に連続して巻かれた状態で装着される。装着後、上蓋81をかぶせることにより、インクリボンカセット60が完成する(図13(a)参照)。
【0048】
図14は、本実施形態のサーマルプリンタの本体内部の構成を示す断面図である。
【0049】
本実施形態のサーマルプリンタ20の本体50の内部には、熱源装置であるサーマルヘッド11と、サーマルヘッド11に対向するプラテンローラ94とが設けられている。サーマルヘッド11には、プラテンローラ94に対向する面に設けられた回路基板上に複数の発熱体(不図示)が並べられている。プラテンローラ94は、発熱体に圧接された状態で回動可能なように、その両端が支持されている。
【0050】
印画動作時に、記録媒体9およびインクリボン70は、サーマルヘッド11とプラテンローラ94により圧接狭持される。この状態でサーマルヘッド11の発熱体が発熱することにより、インクリボン70に塗布されたインクが記録媒体9に熱転写されて、ラインごとに、印画が行われる。記録媒体9は、グリップローラ95とピンチローラ96とからなる一対のローラによって圧接狭持される。そして、印画動作時に、記録媒体9は、グリップローラ95の回転により記録媒体9の搬送方向(図14のX方向)に搬送される。このとき、巻き取りボビン83が回転する。これにより、インクリボン70は、供給ボビン84から引き出され、X方向に搬送され、巻き取りボビン83に巻き取られる。
【0051】
記録媒体9およびインクリボン70の搬送に同期して、サーマルヘッド11の発熱体が、繰り返し発熱することによりライン状の画像が搬送方向(X方向)に転写されていき1枚の画像が形成される。
【0052】
サーマルヘッド11から巻き取りボビン83までのインクリボン70の露出部分の上方にはマーカセンサ97が配置されている。マーカセンサ97は、光センサであり、受光強度の変化を検知することによってインクリボン70に形成されたリボンマーカの通過を検知する。
【0053】
図14に示すように記録媒体9の搬送路とインクリボン70の搬送路は途中で分岐している。分岐するまでは記録媒体9とインクリボン70は貼り付いた状態にあり、分岐時にそれらが引き剥がされることになる。その剥離の起点としてインクリボン70側に剥離部材98が設けられている。インクリボン70の搬送路は、剥離部材98を起点として記録媒体9の搬送路に対して折れ曲がった経路となる。
【0054】
次に、図15を用いてインクリボン70の構成について説明する。なお、インクリボン70は、図3および図4に示すインクリボン3と同様の構成である。インクリボン70では、色インク面71と、非色インク面72とがインクリボン70の搬送方向(矢印200参照)に交互に形成されている。なお、図15に示す色インク面71は、イエロー、マゼンダ、シアンのインク面を有しているが、単色のインク面でも構わない。非色インク面72には、インクリボン3と同様に保護インクが塗布されており、この保護インクは、1枚の画像について色インク面71の転写が全て終了したのち転写される。
【0055】
本実施形態では、インクリボン70は、図14に示すように、供給ボビン84および巻き取りボビン83において色インク面71を内側にしてロール状に連続して巻きつけられる。また、インクリボン70は、インクリボン3と同様に、供給ボビン84と巻き取りボビン83との間におけるインクリボン70の露出部分の長さよりも非色インク面72の長さが長い。なお、本実施形態では、インクリボン70の露出部分は、供給ボビン84に巻きつけられたままのインクリボン70の搬送方向の後方に位置する部分に覆われていない。かつ巻き取りボビン83に巻き取られたインクリボン70の搬送方向の前方に位置する部分に覆われていない。かつ筐体(上蓋81および下蓋82)に隠れていない。
【0056】
インクリボン70では、搬送方向の後方に位置する色インク面71の終端部と該終端部に対して搬送方向の後方に位置する非色インク面72の始端部との境界には、リボンマーカ35aと同様なリボンマーカ73aが形成されている。また、搬送方向の後方に位置する色インク面71の終端部と該終端部に対して搬送方向の後方に位置する非色インク面72の始端部との境界、および色インク面71における各インク面の境界には、リボンマーカ73aと種類の異なるリボンマーカ73bが形成されている。リボンマーカ73a、73bは、転写が完了した面の検知などに用いられる。
【0057】
次に、本実施形態のサーマルプリンタが行う印画動作の制御構成について説明する。図16は、本実施形態のサーマルプリンタの本体内部に設けられた印画動作の制御構成を示すブロック図である。
【0058】
本体50には、操作部53および表示部52に接続されている制御部66が設けられている。制御部66は、ヘッド制御部61、モータ制御部65、センサ制御部67等で構成されている。ヘッド制御部61は、サーマルヘッド11の動作を制御する。モータ制御部65は、巻き取りボビン83を回転させるモータ64の動作を制御する。センサ制御部67は、マーカセンサ97の動作を制御する。また、本体50には、制御部66に接続されている記憶部62および画像処理部63が設けられている。記憶部62は、マーカセンサ97で検知されたインクリボン70のリボンマーカの本数など種々のデータを格納する。画像処理部63では、印画対象の画像データをシアン、マゼンダ、イエロー各色の濃度を示したCMYベースのデータに変換し、画像補正がなされる。
【0059】
次に、本実施形態のサーマルプリンタの印画動作の手順について説明する。
【0060】
図17は、本実施形態のサーマルプリンタの印画動作の手順を示すフローチャートである。
【0061】
図17に示すフローチャートにおいて、操作部53を通じてサーマルプリンタ20の電源がオンされ(ステップS101)、印画開始のコマンドが発せられる(ステップS102)と、操作部53と制御部66との間で通信が行なわれる(ステップS103)。そして、記録媒体9が給紙される(ステップS104)。ここでの給紙とは、記録媒体9の印画開始位置がサーマルヘッド11の発熱体の直下に位置するように制御部66が記録媒体9を搬送させることをいう。また、印画開始のコマンドは操作部53に設けられている印画ボタン(不図示)の押下により発せられる。
【0062】
ステップS104に続いて、インクリボン70の巻き取り動作が行なわれる(ステップS105)。ここでの巻き取り動作とは、インクリボン70の色インク面71に塗布されたインクの記録媒体4への転写を開始できるようにモータ制御部65がモータ64を通じて巻き取りボビン83を回転させることを示す。これによりインクリボン70が巻き取りボビン83に巻き取られる。インクリボン70の巻き取りの際に、センサ制御部67が、転写対象のインク面の直前にあるリボンマーカ73bがマーカセンサ97を通過したか否かを検知する(ステップS106)。通過していない場合は通過するまでステップS105の動作が行われる。マーカセンサ97がリボンマーカ73bの通過を検知すると、その旨がセンサ制御部67に通知される。そして、ヘッド制御部61に制御されるサーマルヘッド11による、記録媒体9への転写が始まる(ステップS107)。転写中にヘッド制御部61は、操作部53から印画動作の中止を決定したか否かを検知し(ステップS108)、印画動作の中止がなされない場合はそのまま転写が進み、ヘッド制御部61は、転写中にエラーが発生するか否かを検知する(ステップS109)。このエラーには、例えばインクリボン70の詰まりによりモータ64が過負荷状態になることが含まれる。
【0063】
ステップS109の後、記録媒体9の逆送(X方向と反対方向に記録媒体9を搬送すること)が次のインク面を転写するために行なわれる(ステップS110)。記録媒体9の逆送中にもヘッド制御部61は、印画中止の決定(ステップS111)やエラーの発生(ステップS112)を検知し、検知しなかった場合は印画に必要な色インク面71の転写が完了した否かを判別する(ステップS124)。ここでの判別方法として、一枚の画像を印画するための転写が開始してからマーカセンサ97が検知したリボンマーカの本数をセンサ制御部67が記憶部62に記憶させることにより可能になる。ステップS124で色インク面71の印画が完了した場合は、保護インク面72に塗布された保護インクの転写が行なわれる(ステップS125)。保護インクの転写がエラーなく完了した場合は、実施形態1または2のようなインクカセットを適応すれば、露出される部分は非インク面となるため、保護インクの転写後には、インクリボンを搬送しない。インクリボンの搬送は、再びS102のように印画ボタンが押下され次の印画動作の指示が入力された場合に行われる。保護インクの転写後、記録媒体9が排紙され(ステップS126)、一連の印画動作が完了する(ステップS127)。
【0064】
ステップS108もしくはステップS111にて操作部53を介して印画動作または記録媒体9の逆送動作が中止された場合、次に本体50の電源をオフにするか否かが判別される(ステップS113)。具体的には、ヘッド制御部61が、操作部53から電源をオフする旨のコマンドが入力されたか否か判別する。電源がオフされない場合はステップS102の動作にフィードバックされる。ステップS109もしくはステップS112にてエラーが発生した場合、ヘッド制御部61によって転写動作もしくは記録媒体9の逆送動作が中断される(ステップS114)。続いて、ヘッド制御部61は、印画を終了するか否かの選択を促す表示を表示部52に行わせ、ユーザが操作部53を介していずれか一方を選択する(ステップS115)。印画を続行する場合はエラーの内容に応じてエラーリカバリが行なわれ(ステップS130)、再び転写動作が行なわれるための通信(ステップS103)が行われる。ステップS115にて印画動作の終了が選択された場合は、ヘッド制御部61は、操作部53を通じてインクリボンカセット70が取り出されるか否かを判別する(ステップS116)。取り出されると判別された場合は、ヘッド制御部61は、移動部材93を第1の位置に保持させることによって、インクリボンカセット60を固定させる(ステップS117)。その後、ヘッド制御部61は、インクリボンカセット60の取り出しが不可能である旨の第1の表示を表示部52に行わせる(ステップS118)。本実施形態では、「お待ち下さい」が第1の表示として表示部52に表示される。その後、インクリボン70の巻き取り動作が開始される(ステップS119)。この巻き取り動作では、まず、センサ制御部67が、色インク面71の終端部と非色インク面72の始端部との境界に形成されたリボンマーカ73bがマーカセンサ97に検知されたか否かを判別する(S120)。このリボンマーカ73bが検知されていない場合は、検知されるまでモータ制御部65がモータ64を介して巻き取りボビン83にインクリボン70を巻き取らせる。その後、リボンマーカ73bが検知された場合は、モータ制御部65が検知後に巻き取りボビン10の回転量が所定量であるか否かを判別する(ステップS121)。具体的には、リボンマーカ73bが検知された位置を基準として設定された回転量に達するまでモータ制御部65が巻き取りボビン83を回転させる。ステップS121では、インクリボン70について、露出部分が非色インク面72で占められる中断位置までインクリボン70が巻き取られている。そのため、巻き取りボビン83の回転量の最大値は、図15に示す領域Fがインクリボン70の露出部分となるために必要な値となる。この場合、非色インク面72の終端部が露出部分の後端部に位置している。巻き取りボビン83の回転量の最小値は、ステップS121で検知されたリボンマーカ73bを露出部分の先端部まで搬送するために必要な値となる。巻き取りボビン83の回転量が少ないほど、ステップS121の動作に要する時間を短縮できる。なお、非色インク面72の巻き取り量は巻き取りボビン83の回転速度ならびに時間から判別することが可能であるが、本発明はこれに限られたものではない。
【0065】
所定量の巻き取りが完了した後、ヘッド制御部61は、移動部材93を第2の位置へ移動させる。これにより、インクリボンカセット60の固定が解除される(ステップS122)。続いて、ヘッド制御部61は、インクリボンカセット60の取り出しが可能になった旨の第2の表示を表示部52に行わせる(ステップS123)。本実施形態では、「取り出しOK」が第2の表示として表示部52に表示される。
【0066】
また、ステップS108またはステップS111にて操作部53を介して印画動作ならびに記録媒体9の逆送動作が中止され、なおかつ次にステップS113にてユーザが操作部53を操作して電源をオフにした場合、先述のステップS117の動作が実行される。以後、先述の動作と同様、インクリボン70の巻き取りが行なわれる。
【0067】
本実施形態では、印画動作の途中にエラーが生じた場合、インクリボン70の露出部分が非色インク面72で占められるようにインクリボン70の巻き取り動作が実行される。その後、インクリボンカセット60が本体50から取り外し可能な状態となる。そのため、印画動作の途中にエラーが発生した場合であっても、インクリボン70の交換時に色インク面71の露出を防ぐことが可能となる。
【0068】
(実施形態4)
本実施形態のサーマルプリンタについて説明する。本実施形態のサーマルプリンタは、印画動作の手順が異なる点を除いて実施形態3のサーマルプリンタ20と同様である。そのため、実施形態3で説明した事項と重複する部分については詳細な説明を省略する。
【0069】
図18は、本実施形態のサーマルプリンタの印画動作の手順を示すフローチャートである。なお、エラーが発生しない場合の動作手順については実施形態3と同様なのでこの動作手順の説明は省略する。
【0070】
転写動作もしくは記録媒体9の逆送動作の最中にエラーが発生した場合(ステップS209、ステップS212)、印画動作が中断される(ステップS214)。続いて、ヘッド制御部61は、印画を終了するか否かの選択を促す表示を表示部52に行わせ、ユーザが操作部53を介していずれか一方を選択する(ステップS215)。ステップS215で印画の終了が選択された場合、ヘッド制御部61は、エラーのレベル値をしきい値と比較する(S216)。エラーのレベル値を示すデータは記憶部63に格納されている。ヘッド制御部61は、エラーを検知した場合、検知したエラーのレベル値を記憶部63のデータから読み出し、読み出したレベル値をしきい値と比較する。エラーのレベル値がしきい値よりも小さい場合(エラーの内容が軽度な場合)、エラーリカバリが行なわれる(ステップS224)。エラーのレベルがしきい値よりも大きい場合(エラーの内容が重度な場合)、ヘッド制御部61は、移動部材93を上述した第1の位置に保持させることによって、インクリボンカセット60を固定させる(ステップS217)。その後、ヘッド制御部61は、上述した第1の表示を表示部52に行わせる(S218)。その後、インクリボン70の巻き取り動作が開始される(S219)。なお、重度のエラーとしては、例えばインクリボン70が本体50内で詰まり巻き取り不能になるエラーなどが挙げられる。また、インクリボン70の巻き取り動作(ステップS219からステップS229までの動作)の内容については、実施形態3で説明した内容と同じなので説明を省略する。
【0071】
本実施形態では、印画動作の途中にインクリボン70の交換が必要なエラーが発生した場合に、インクリボン70の露出部分が非色インク面72で占められるようにインクリボン70を巻き取る動作が実行される。これにより、インクリボン70の交換が不要なエラーが発生した場合には巻き取り動作が行われないので、エラー発生時にインクリボン70の巻き取り動作の可否を適切に判断することが可能となる。
【0072】
(実施形態5)
本実施形態のサーマルプリンタについて説明する。本実施形態のサーマルプリンタは、印画動作の手順が異なる点を除いて実施形態3のサーマルプリンタ20と同様である。そのため、実施形態3で説明した事項と重複する部分については詳細な説明を省略する。
【0073】
図19は、本実施形態のサーマルプリンタの印画動作の手順を示すフローチャートである。なお、エラーが発生しない場合の動作手順については実施形態3と同様なのでこの動作手順の説明は省略する。
【0074】
転写動作もしくは記録媒体9の逆送動作の最中にエラーが発生した場合(ステップS309、ステップS312)、印画動作が中断される(ステップS314)。続いて、ヘッド制御部61は、印画を終了するか否かの選択を促す表示を表示部52に行わせ、ユーザが操作部53を介していずれか一方を選択する(ステップS315)。ステップS315で印画の終了が選択された場合、インクリボン70の巻き取り動作が開始される(ステップS319)。この巻き取り動作では、まず、センサ制御部67が、色インク面71の終端部と非色インク面72の始端部との境界に形成されているリボンマーカ73bがマーカセンサ97に検知されたか否かを判別する(ステップS320)。このリボンマーカ73bが検知された場合は、上述した中断位置までインクリボン70を巻き取るのに必要な巻き取りボビン83の回転量が算出される。ここで、この回転量の算出方法について図20を参照しながら説明する。
【0075】
図20は、インクリボン70を中断位置まで巻き取るのに必要な巻き取り量を説明するための断面図である。図20では、色インク面71の終端部と非色インク面72の始端部との境界に形成されたリボンマーカ73bがマーカセンサ97の直下に位置している状態を示す。図20では、半径rは巻き取りボビン83に形成されるインクリボン70の巻き取り円の半径を示し、接点Aは巻き取り円とインクリボン70の接点(インクリボン70の露出部分の先端部)を示し、接点Mはマーカセンサ97とインクリボン70の接点を示す。
【0076】
モータ制御部65は、記憶部63に記録されたデータを参照して、リボンマーカ73bが検知されたときの半径r、接点Aから接点Mまでの距離Dを算出する(ステップS321)。本実施形態では、モータ制御部65は、印画動作中に記憶部63に記憶されたリボンマーカ73bの検知本数から半径rの値および距離Dの値を算出している。リボンマーカ73bの検知本数が多いほど半径rおよび距離Dは長くなり、反対にリボンマーカ73bの検知本数が少ないほど半径Rおよび距離Dは短くなる。すなわち、半径rおよび距離Dは、リボンマーカ73bの検知本数に対応している。なお、半径rの算出方法はこれに限られたものではない。半径r、距離Dの算出後、再びインクリボン70の巻き取り動作がなされ(ステップS322)、モータ制御部65は、インクリボン70の巻き取り量が所定量さに達したか否かを判別する(ステップS323)。具体的には、モータ制御部65は、巻き取りボビン83の回転量が巻き取り円の外周の周長2πrと距離Dの総和の長さに対応する回転量に達したか否か判別する。ステップS323で所定量の巻き取りが行なわれた場合は、インクリボンカセット60の取り出しが可能になる(ステップS324〜326)。ステップS323で所定量の巻き取りが行なわれなかった場合、ステップS319に戻りインクリボン70の巻き取り動作が再び行なわれる。このようにして巻き取り量が不足している場合は先述の所定量の巻き取り量になるまで巻き取り動作が行なわれる。
【0077】
本実施形態では、印画動作の途中にエラーが発生した場合、そのときのインクリボン70の巻き取り状態に応じてインクリボン70の巻き取り量(巻き取りボビン83の回転量)を決定している。そのため、インクリボン70の露出部分に非色インク面72を位置させるときにインクリボン70を必要以上に巻き取るのを防ぐことが可能となる。
【0078】
また、本実施形態では、色インク面71を内側にしてインクリボン70が巻き取りボビン83に巻き取られている。そのため、染料が残っている色インク面71が巻き取りボビン83に巻き取られても、この色インク面71を露出させないようにすることが可能となる。
【0079】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態の一部を適宜組み合わせてもよい。また、上述の実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、記録媒体から直接、或いは有線/無線通信を用いてプログラムを実行可能なコンピュータを有するシステム又は装置に供給し、そのプログラムを実行する場合も本発明に含む。従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータに供給、インストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も本発明に含まれる。その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、ハードディスク、磁気テープ等の磁気記録媒体、光/光磁気記憶媒体、不揮発性の半導体メモリでもよい。また、プログラムの供給方法としては、コンピュータネットワーク上のサーバに本発明を形成するコンピュータプログラムを記憶し、接続のあったクライアントコンピュータはがコンピュータプログラムをダウンロードしてプログラムするような方法も考えられる。
【符号の説明】
【0080】
1、50 本体
2、60 インクリボンカセット
3、70 インクリボン
4、84 供給ボビン
5、83 巻き取りボビン
9 記録媒体
10、20 サーマルプリンタ
32、71 色インク面
33、72 非色インク面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙に色インクを転写するサーマルプリンタであって、
前記色インクが塗布された色インク面と、前記色インクが塗布されていない非色インク面とが、搬送方向に交互に形成されているインクリボンと、前記サーマルプリンタにより色インクの転写が行われる前の前記インクリボンが巻きつけられている供給ボビンと、前記供給ボビンから引き出された前記インクリボンを巻き取る巻き取りボビンと、前記供給ボビンと前記巻き取りボビンとの間で前記インクリボンを露出させるように前記供給ボビンおよび前記巻き取りボビンを離れた状態で支持する筐体とを有するインクカセットと、
前記インクカセットを前記サーマルプリンタに装着するための装着部と、
前記色インクを転写中にエラーが発生した場合に、前記露出される部分のインクリボンが、前記非色インク面となるように、前記インクリボンを搬送させるリボン搬送手段と、を有することを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記非色インク面は、透明インクが塗布されている面またはインクが塗布されていない面を含むことを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記インクリボンの前記色インク面の先頭または前記非色インク面の先頭に設けられたマーカを検出するマーカ検出手段をさらに有し、
前記リボン搬送手段は、前記マーカ検出手段によるマーカの検出に基づいて、前記インクリボンの搬送量を決定することを特徴とする請求項1または2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記リボン搬送手段は、色インクを転写中にエラーが発生した後に前記インクカセットが前記装着部から取り出される場合に、前記露出される部分のインクリボンが、前記非色インク面となるように、前記インクリボンを搬送させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記非色インク面は、前記記録紙に転写された色インクを保護するための透明インクが塗布されている面を有し、
前記リボン搬送手段は、エラーが発生しない場合、前記色インクおよび前記透明インクの転写終了後はインクリボン搬送を搬送させず、次の転写の開始が指示に応じて、インクリボンの搬送を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項6】
前記色インク面は、複数の色インクが塗布されており、前記非色インク面は、1色分の色インク面よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載のサーマルプリンタ。
【請求項7】
前記非色インク面は、前記記録紙に転写された色インクを保護するための透明インクが塗布されている面を有し、前記非色インク面の搬送方向の長さは、前記透明インクを転写するために必要な長さと、前記透明インクを転写する位置から前記供給ボビン側で前記インクカセットから露出されなくなるまでのインクリボンの長さとを足した長さよりも長いことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項8】
前記インクリボンの搬送方向先頭側の非色インク面のほうが、前記インクリボンの搬送方向後端側の非色インク面よりも大きいことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項9】
サーマルヘッドにより、インクリボンのインクを記録紙に転写するサーマルプリンタに着脱可能なインクカセットであって、
色インクが塗布されたインク面と、前記色インクが塗布されていない非色インク面とが、搬送方向に交互に形成されているインクリボンと、
前記サーマルプリンタにより色インクの転写が行われる前の前記インクリボンが巻きつけられている供給ボビンと、
前記供給ボビンから引き出された前記インクリボンを巻き取る巻き取りボビンと、
前記供給ボビンと前記巻き取りボビンとの間で前記インクリボンを露出させるように前記供給ボビンおよび前記巻き取りボビンを離れた状態で支持する筐体とを有し、
前記色インク面は、複数の色インクが塗布されており、前記非色インク面は、1色分の色インク面よりも大きいことを特徴とするインクカセット。
【請求項10】
前記非色インク面は、透明インクが塗布されている面またはインクが塗布されていない面であることを特徴とする請求項9に記載のインクカセット。
【請求項11】
前記非色インク面は、前記記録紙に転写された色インクを保護するための透明インクが塗布されている面を有し、前記非色インク面の搬送方向の長さは、前記透明インクを転写するために必要な長さと、前記透明インクを転写する位置から前記供給ボビン側で前記インクカセットから露出されなくなるまでのインクリボンの長さとを足した長さよりも長いことを特徴とする請求項9に記載のインクカセット。
【請求項12】
前記インクリボンの搬送方向先頭側の非色インク面のほうが、前記インクリボンの搬送方向後端側の非色インク面よりも大きいことを特徴とする請求項9ないし11のいずれか1項に記載のインクカセット。
【請求項13】
色インクが塗布されたインク面と、前記色インクが塗布されていない非色インク面とが、搬送方向に交互に形成されているインクリボンと、前記サーマルプリンタにより色インクの転写が行われる前の前記インクリボンが巻きつけられている供給ボビンと、前記供給ボビンから引き出された前記インクリボンを巻き取る巻き取りボビンと、前記供給ボビンと前記巻き取りボビンとの間で前記インクリボンを露出させるように前記供給ボビンおよび前記巻き取りボビンを離れた状態で支持する筐体とを有する、サーマルプリンタに着脱可能なインクカセットを装着するための装着部を有し、記録紙に前記色インクを転写するためのサーマルプリンタの方法であって、
前記色インクを転写中にエラーが発生した場合に、色インクの転写を中止する中止工程と、
前記色インクを転写中にエラーが発生し、前記色インクの転写を中止した場合に、前記露出される部分のインクリボンが、前記非色インク面となるように、前記インクリボンを搬送させるリボン搬送工程と、を有することを特徴とするサーマルプリンタの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−30578(P2012−30578A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134543(P2011−134543)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】