説明

サーマルプリンタ

【課題】本発明は、部品や組み立てのバラツキによって支持シャフトがプラテンローラと平行でない場合でも、ヘッド圧の左右バランスをとることができ、安価な部品構成であっても所望の印字品質を確保することができるサーマルプリンタを提供することを課題とする。
【解決手段】被印字媒体の幅方向に掛け渡され、サーマルヘッド12を被印字媒体の搬送方向において位置決めして支持する軸支部82を設け、サーマルヘッド12は、軸支部82によって、印字面に対して垂直な方向において幅方向中央を中心に左右に揺動可能に支持されるように構成することにより、部品や組み立てのバラツキによって軸支部82がプラテンローラ11と平行でない場合でも、幅方向中央を中心にサーマルヘッド12が揺動され、プラテンローラ11に対してサーマルヘッド12が平行に押圧される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被印字媒体をプラテンローラとサーマルヘッドとの間に挟持搬送して印字を施すサーマルプリンタに関し、特にサーマルヘッドを支持する支持シャフトによってサーマルヘッドのプラテンローラに対する位置決めを行うサーマルプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のサーマルヘッドを用いて帯状台紙にラベルが仮着されているラベル連続体等の帯状の被印字媒体に印字を行うサーマルプリンタにおいては、印字用紙の厚さや材質などによって印字用紙に加えられる印字圧が変化し、印字品質が悪化する恐れがある。そこで、サーマルヘッドを移動させてサーマルヘッドとプラテンローラの相対位置を変化させ、適正の印字圧を最適に設定する技術が知られている。例えば、サーマルヘッドが固定されるヘッドハウジングを支持シャフトによって回動可能に保持すると共に、支持シャフトよりも被印字媒体の搬送方向上流側でヘッドハウジングを上下方向に移動可能に保持することで、部品の着脱を行うことなく、簡単な操作でサーマルヘッドとプラテンローラの相対位置を変化させることができるサーマルプリンタが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来技術では、サーマルヘッドが支持シャフトによって支持されているため、支持シャフトとプラテンローラとの平行を確保する部品品質が必要となり、装置が高価なものになってしまうという問題点があった。また、支持シャフトとプラテンローラとの平行を確保する部品品質が確保されない場合には、部品や組み立てのバラツキによって支持シャフトがプラテンローラと平行でなくなり、ヘッド圧の左右バランスが崩れ、印字品質が悪化する虞があるという問題点があった。
【0004】
【特許文献1】特開2007−62211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は斯かる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、部品や組み立てのバラツキによって支持シャフトがプラテンローラと平行でない場合でも、ヘッド圧の左右バランスをとることができ、安価な部品構成であっても所望の印字品質を確保することができるサーマルプリンタを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
請求項1記載の発明の要旨は、被印字媒体をプラテンローラとサーマルヘッドとの間で挟持搬送して印字を施すサーマルプリンタであって、前記被印字媒体の幅方向に掛け渡され、前記サーマルヘッドを前記被印字媒体の搬送方向において位置決めして支持する支持シャフトを具備し、前記サーマルヘッドは、前記支持シャフトによって、印字面に対して垂直な方向において幅方向中央を中心に左右に揺動可能に支持されていることを特徴とするサーマルプリンタに存する。
また請求項2記載の発明の要旨は、前記サーマルヘッドは、ヘッドハウジングを介して前記支持シャフトに支持されており、前記ヘッドハウジングは、両側面にそれぞれ形成され、印字面に垂直な方向が長手方向となり、且つ短手方向が前記支持シャフトの径と略同一の長孔と、該長孔に貫通された前記支持シャフトに幅方向中央で当接する当接手段とを具備し、前記長孔に貫通された前記支持シャフトによって、前記長孔の短手方向である前記被印字媒体の搬送方向において前記ヘッドハウジングが位置決めされて支持されると共に、印字面に対して垂直な方向において前記当接手段を中心に左右に揺動可能に前記ヘッドハウジングが支持されることを特徴とする請求項1記載のサーマルプリンタに存する。
また請求項3記載の発明の要旨は、前記支持シャフトは、回動可能に支持されていると共に、前記ヘッドハウジングの長孔を貫通している箇所は、回動軸に対して偏心しており、前記サーマルヘッドは、前記支持シャフトの回動によって前記被印字媒体の搬送方向において移動可能であることを特徴とする請求項2記載のサーマルプリンタに存する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のサーマルプリンタは、被印字媒体の幅方向に掛け渡され、サーマルヘッドを被印字媒体の搬送方向において位置決めして支持する支持シャフトを設け、サーマルヘッドは、前記支持シャフトによって、印字面に対して垂直な方向において幅方向中央を中心に左右に揺動可能に支持されるように構成することにより、部品や組み立てのバラツキによって支持シャフトがプラテンローラと平行でない場合でも、幅方向中央を中心にサーマルヘッドが揺動され、プラテンローラに対してサーマルヘッドが平行に押圧されることになるため、ヘッド圧の左右バランスをとることができ、安価な部品構成であっても所望の印字品質を確保することができるという効果を奏する。
【0008】
さらに、本発明のサーマルプリンタにおいては、サーマルヘッドは、ヘッドハウジングを介して支持シャフトに支持されており、ヘッドハウジングは、両側面にそれぞれ形成され、印字面に垂直な方向が長手方向となり、且つ短手方向が支持シャフトの径と略同一の長孔と、長孔に貫通された支持シャフトに幅方向中央で当接する当接手段とを設けることにより、簡単な構成で、長孔の短手方向である被印字媒体の搬送方向においてヘッドハウジング(サーマルヘッド)を位置決めして支持することができると共に、印字面に対して垂直な方向において当接手段を中心に左右に揺動可能にヘッドハウジング(サーマルヘッド)を支持することができるという効果を奏する。
【0009】
さらに、本発明のサーマルプリンタにおいては、支持シャフトは、回動可能に支持されていると共に、ヘッドハウジングの長孔を貫通している箇所を回動軸に対して偏心させることにより、支持シャフトの回動によって被印字媒体の搬送方向においてサーマルヘッドが移動可能であり、用紙の厚さや材質に応じてプラテンローラに対するサーマルヘッドのヘッド位置を調整することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明に係るサーマルプリンタの実施の形態の構成を示す概略側面図であり、図2は、本発明に係るサーマルプリンタの実施の形態の閉状態を示す外観斜視図であり、図3は、本発明に係るサーマルプリンタの実施の形態の開状態を示す外観斜視図であり、図4は、図3に示すヘッドハウジングの構成を示す斜視図であり、(a)および(b)は、前面側から見た前面図であり、(c)は、後面側から見た後面図である。図5は、図3に示す印字ユニットの構成を示す斜視図であり、図6は、図3に示すフレームカバーの構成を示す斜視図である。
【0012】
本実施の形態のサーマルプリンタ10は、図1を参照すると、印字部として、プラテンローラ11と、複数の発熱体が幅方向に形成されている面(以下、印字面と称す)がプラテンローラ11に対向するように配置されたサーマルヘッド12とを有し、複数枚のラベルが帯状台紙に仮着されているラベル連続体等の被印字媒体1とインクリボン2とを重ねてプラテンローラ11とサーマルヘッド12との間に挟持搬送し、サーマルヘッド12の発熱体を選択的に発熱させることにより、被印字媒体1にインクリボン2からインクを転写させて印字を施すように構成されている。
【0013】
被印字媒体1は、紙管等の筒状体にロール状に巻き回された状態、すなわちロール紙3として供給部13に回転可能に支持され、供給部13からプラテンローラ11とサーマルヘッド12との間に供給される。また、インクリボン2は、プラテンローラ11に連動して回転駆動されるリボン巻き取り軸14とリボン供給軸15との間に架け渡され、リボン供給軸15にロール状に巻き回された状態で支持されたインクリボン2が、プラテンローラ11とサーマルヘッド12との間に被印字媒体1と共に供給され、転写後のインクリボン2が、リボン巻き取り軸14によって巻き取られるようになっている。
【0014】
また、サーマルプリンタ10は、プラテンローラ11および供給部13を備え、上部が解放された本体20と、本体20の上部を覆う上蓋部30と、サーマルヘッド12、リボン巻き取り軸14およびリボン供給軸15を備え、本体20と上蓋部30との間に配置された印字ユニット40とからなり、上蓋部30と印字ユニット40とは、本体20の奥側に設けられている支持軸17によって、回動自在に支持され、印字済みの印字媒体が排出される排出口16が設けられている手前側から開くように構成されている。
【0015】
図2は、上蓋部30が閉じられた閉状態のサーマルプリンタ10の外観が示されており、閉状態では、図1に示すように、印字ユニット40が本体20と上蓋部30とに挟まれて位置決めされ、印字ユニット40に備えられたサーマルヘッド12が本体に備えられたプラテンローラ11に押し当てられて位置決めされる。なお、印字ユニット40は、上蓋部30に嵌装可能に構成されており、図2に示す閉状態において、印字ユニット40は、上蓋部30に嵌装された嵌装状態となっている。
【0016】
図3は、上蓋部30が開けられた開状態のサーマルプリンタ10が示されており、上蓋部30と、印字ユニット40とをそれぞれ独立して回動させることができるようになっている。上蓋部30は、開閉ストッパ31によって、手を離しても図3に示す開状態に維持されるように構成されていると共に、印字ユニット40は、開閉ストッパ31の内側に突出する凸部31aにアーム部41が引っかかることで、図3に示す状態で印字ユニット40から独立して停止させることができるようになっている。なお、上蓋部30には、印字ユニット40に弾性を有して当接することで、印字ユニット40を嵌装状態に維持する図示しない当接部材が設けられており、図2に示す閉状態から上蓋部30を開く際には、印字ユニット40も嵌装状態で上蓋部30と共に回動され、その後に、上蓋部30から印字ユニット40を引き出すことによって、図3に示す開状態となる。
【0017】
サーマルヘッド12は、ヘッドハウジング60に支持された状態で印字ユニット40に組み付けられるように構成されている。ヘッドハウジング60は、図4を参照すると、右側面62と、当該右側面62と平行な左側面64と、リボン供給軸15からプラテンローラ11とサーマルヘッド12との間に供給されるインクリボン2を案内するガイド面として機能する下面65とを有している。右側面62には、印字ユニット40に組み付けた際に、サーマルヘッド12(形成されている発熱体)よりも被印字媒体1の搬送方向上流側に位置する円形の被支持用凹部61aおよび当該被支持用凹部61aの下流側に位置して被支持用凹部61aと同一の径である円形の被支持用凹部61bが形成されている。また、左側面64には、印字ユニット40に組み付けた際に、サーマルヘッド12(形成されている発熱体)よりも被印字媒体1の搬送方向上流側に位置する円形の被支持用突起63a(支持手段)および当該被支持用突起63aの下流側に位置して被支持用突起63aと同一の径である円形の被支持用突起63bが形成されている。右側面62の被支持用凹部61aと左側面64の被支持用突起63aとが、軸心が一致するように対向して形成されていると共に、右側面62の被支持用凹部61bと左側面64の被支持用突起63bとが、軸心が一致するように対向して形成されている。
【0018】
また、ヘッドハウジング60には、サーマルヘッド12が固着されており、サーマルヘッド12の印字面の反対面側には、ヘッドハウジング60を印字ユニット40に組み付けた際に、後述する当接部材に当接する押圧部材66が、印字面に対して垂直な方向に移動可能に支持されており、サーマルヘッド12と押圧部材66との間には、バネ67が介装されている。これにより、ヘッドハウジング60に固着されているサーマルヘッド12が、バネ67の付勢力によってプラテンローラ11に押圧されるようになっている。
【0019】
さらに、右側面62および左側面64には、印字ユニット40に組み付けた際に、サーマルヘッド12(形成されている発熱体)よりも被印字媒体1の搬送方向上流側で、且つ被支持用凹部61aおよび被支持用突起63aよりも被印字媒体1の搬送方向下流側の対向する位置に、印字面に対して垂直な方向が長手方向となる長孔68がそれぞれ形成されている。長孔68は、ヘッドハウジング60を支持する支点軸となる後述する支持シャフトが貫通される貫通孔であり、右側面62および左側面64にそれぞれ形成された長孔68を貫通した支持シャフトによって、被印字媒体1の搬送方向、すなわち長孔68の短手方向においてヘッドハウジング60が印字ユニット40に位置決めされる。また、長孔68を貫通した支持シャフトには、ヘッドハウジング60の幅方向中央に設けられたV字突起69が当接することで、印字面に対して垂直な方向においてヘッドハウジング60が幅方向中央の一点で印字ユニット40に位置決めされる。
【0020】
印字ユニット40は、図3および図5を参照すると、一方端が支持軸17に支持されたアーム部41の解放端側に、リボン巻き取り軸14およびリボン供給軸15が回転可能にそれぞれ架け渡される右リボンフレーム42と左リボンフレーム43とが設けられている。右リボンフレーム42と左リボンフレーム43との間隔は、ヘッドハウジング60の幅よりも若干広く設定されており、右リボンフレーム42と左リボンフレーム43との間にヘッドハウジング60が組み付けられるようになっている。また、組み付けられるヘッドハウジング60の上方、すなわち押圧部材66側には、押圧部材66に当接することで、サーマルヘッド12をプラテンローラ11に所定のヘッド圧で押圧させる当接部材44が設けられている。
【0021】
左リボンフレーム43には、プラテンローラ11と共に回転駆動される伝達ギヤ21に対して図2に示す閉状態において咬合される被伝達ギヤ46と、被伝達ギヤ46からリボン巻き取り軸14に回転駆動力を伝達するギヤ等の図示しない駆動力伝達機構とが設けられている。また、左リボンフレーム43の右リボンフレーム42に対向する対向面には、ヘッドハウジング60の左側面64に形成されている被支持用突起63aよりも大きい径を有し、被支持用突起63aが緩装される円形の支持用凹部47aと、ヘッドハウジング60の左側面64に形成されている被支持用突起63bよりも大きい径を有し、被支持用突起63bが緩装される円形の支持用凹部47bとが形成されている。
【0022】
右リボンフレーム42の左リボンフレーム43に対向する対向面の反対側の外面には、当該外面に対して垂直な枠部48が周縁部に形成されており、枠部48に囲われた領域は、被嵌装部49として機能し、図6に示すフレームカバー70が嵌脱可能になっている。なお、フレームカバー70は、樹脂製の板状部材であり、被嵌装部49およびフレームカバー70の形状は、非対称になっており、被嵌装部49に対してフレームカバー70が一意の向きで嵌装される。
【0023】
被嵌装部49には、図5および図6を参照すると、右リボンフレーム42を貫通して、リボン巻き取り軸14およびリボン供給軸15が延出されていると共に、フレームカバー70には、被嵌装部49に延出しているリボン巻き取り軸14およびリボン供給軸15が挿入される貫通孔71、72が形成されている。従って、フレームカバー70を被嵌装部49に嵌装させた場合でも、リボン巻き取り軸14およびリボン供給軸15を操作できるようになっている。なお、リボン巻き取り軸14およびリボン供給軸15を被嵌装部49に延出させることなく、リボン巻き取り軸14およびリボン供給軸15に対応する箇所に形成された貫通孔71、72を介して、ドライバや専用の治具等によって操作するようにしても良い。また、駆動力伝達機構が障害にならない場合には、左リボンフレーム43側からリボン巻き取り軸14およびリボン供給軸15を操作できるように構成しても良い。
【0024】
被嵌装部49に位置する右リボンフレーム42には、組み付けられるヘッドハウジング60の右側面62に形成されている被支持用凹部61aおよび被支持用凹部61bにそれぞれ対応する箇所に、貫通孔50aおよび貫通孔50bがそれぞれ形成されている。フレームカバー70には、ヘッドハウジング60の右側面62に形成されている被支持用凹部61aよりも小さい径を有し、フレームカバー70の被嵌装部49への嵌装時に、貫通孔50aを貫通して被支持用凹部61aに緩装される円形の支持用突起74と、ヘッドハウジング60の右側面62に形成されている被支持用凹部61bよりも小さい径を有し、フレームカバー70の被嵌装部49への嵌装時に、貫通孔50bを貫通して被支持用凹部61bに緩装される円形の支持用突起75とが形成されている。
【0025】
フレームカバー70の側面、すなわち嵌装時に枠部48に対向する面には、枠部48に対して垂直な方向に変位する樹脂バネ部76が対向する2箇所に形成されており、樹脂バネ部76には、係合凸部77が形成されていると共に、枠部48には、嵌装時にフレームカバー70の樹脂バネ部76を操作できるように、樹脂バネ部76に対向する箇所に切り欠き51が形成されており、切り欠き51の近傍には、フレームカバー70の嵌装時に係合凸部77と係合する係合凹部52が形成されている。なお、本実施の形態において、係合凹部52は、枠部48を貫通する貫通孔として形成されている。
【0026】
左リボンフレーム43の右リボンフレーム42に対向する対向面には、支持シャフト80を軸支する円形の支持用凹部47cが、右リボンフレーム42には、支持シャフト80が貫通される貫通孔50cがそれぞれ形成されている。支持シャフト80は、ヘッドハウジング60を支持する支点軸であり、左リボンフレーム43に形成された支持用凹部47cに嵌装される回動軸81aと、右リボンフレーム42に形成された貫通孔50cに嵌装され、回動軸81aと同一軸の回動軸81bとを有する。また、支持シャフト80において、回動軸81aと回動軸81bとの間は、ヘッドハウジング60に形成された長孔68に貫通されると共にV字突起69が当接することでヘッドハウジング60を軸支する円柱状の軸支部82となっている。軸支部82は、長孔68の短手方向と略同一の径を有し、長孔68の短手方向、すなわち被印字媒体1の搬送方向においてヘッドハウジング60を位置決めする。軸支部82の軸と、回動軸81aおよび回動軸81bの軸とは、異なるように設定され、回動軸81aおよび回動軸81bに対して、軸支部82は、偏心部材として機能する。また、回動軸81bからは、被嵌装部49に延出する延出片83が形成されていると共に、延出片83には、支持シャフト80の回動を操作するための操作片84が形成されている。なお、フレームカバー70には、延出片83が移動可能な移動空間78が形成されていると共に、操作片84を操作するための開口79が形成されている。
【0027】
次に、本実施の形態における印字ユニット40へのヘッドハウジング60の組み付け動作について図7乃至図10を参照して詳細に説明する。
図7乃至図9は、図3に示す印字ユニットへのヘッドハウジングの組み付け動作を説明するための斜視図であり、図10は、図3に示す印字ユニットにヘッドハウジングが組み付けられた状態を示す斜視図である。
【0028】
印字ユニット40へのサーマルヘッド12を備えたヘッドハウジング60の組み付けは、まず、図7に示すように、ヘッドハウジング60の左側面64に形成されている被支持用突起63aを左リボンフレーム43の対向面に形成されている支持用凹部47aに緩装させると共に、ヘッドハウジング60の左側面64に形成されている被支持用突起63bを左リボンフレーム43の対向面に形成されている支持用凹部47bに緩装させ、図8に示すように、ヘッドハウジング60を右リボンフレーム42と左リボンフレーム43との間の所定の位置に挟み込む。
【0029】
これにより、ヘッドハウジング60の左側面64が、左リボンフレーム43の対向面に対して略位置決めされた状態となり、左リボンフレーム43の対向面に形成されている支持用凹部47cがヘッドハウジング60の左側面64に形成されている長孔68と、右リボンフレーム42の対向面に形成されている貫通孔50cがヘッドハウジング60の右側面62に形成されている長孔68とそれぞれ対向した状態となる。
【0030】
次に、右リボンフレーム42の対向面に形成されている貫通孔50cから、回動軸81aを先端にして支持シャフト80を挿入していき、ヘッドハウジング60の右側面62および左側面64にそれぞれ形成されている長孔68を貫通させ、回動軸81aを左リボンフレーム43の対向面に形成されている支持用凹部47cに、回動軸81bが右リボンフレーム42の対向面に形成されている貫通孔50cにそれぞれ嵌装させる。これにより、支持シャフト80は、左リボンフレーム43と右リボンフレーム42との間に掛け渡されて回動可能に位置決めされると共に、軸支部82によってヘッドハウジング60が軸支された状態となる。
【0031】
次に、図9に矢印で示すように、側面に形成された樹脂バネ部76を押さえながら、フレームカバー70を被嵌装部49に嵌装させ、樹脂バネ部76を解放する。これにより、樹脂バネ部76に形成された係合凸部77が、枠部48に形成された係合凹部52に係合し、フレームカバー70が被嵌装部49に嵌装させた状態でロックされることになる。
【0032】
フレームカバー70が被嵌装部49に嵌装された状態では、フレームカバー70に形成されている支持用突起74が貫通孔50aを貫通して被支持用凹部61aに緩装されると共に、フレームカバー70に形成されている支持用突起75が貫通孔50bを貫通して被支持用凹部61bに緩装される。
【0033】
また、被嵌装部49に延出しているリボン巻き取り軸14、リボン供給軸15および操作片84は、図10に示すように、フレームカバー70に形成されている貫通孔71、72および開口79にそれぞれ挿入され、貫通孔71、72および開口79を介してリボン巻き取り軸14、リボン供給軸15および操作片84をそれぞれ操作することができるようになっている。
【0034】
印字ユニット40に組み付けられているヘッドハウジング60の取り外し動作は、印字ユニット40へのヘッドハウジング60の組み付け動作の反対の手順で行われる。すなわち、切り欠き51を介して、フレームカバー70の側面に形成された樹脂バネ部76を押さえることで、樹脂バネ部76に形成された係合凸部77と枠部48に形成された係合凹部52との係合を解除させ、側面に形成された樹脂バネ部76を押さえながら、フレームカバー70を被嵌装部49から取り外す。次に、支持シャフト80を抜き取ることで、右リボンフレーム42と左リボンフレーム43との間からヘッドハウジング60を取り外すことができるようになる。
【0035】
次に、本実施の形態におけるヘッド位置調整方法について図11を参照して詳細に説明する。
図11は、本発明に係るサーマルプリンタの実施の形態におけるヘッド位置調整方法を説明するための説明図である。
【0036】
本実施の形態のサーマルプリンタ10は、被印字媒体1としてタグやラベル等の厚さや材質の異なる用紙に対応することができ、用紙の厚さや材質に応じてプラテンローラ11に対するサーマルヘッド12のヘッド位置を調整できるようになっている。
【0037】
印字ユニット40にヘッドハウジング60が組み付けられた状態では、被印字媒体1の搬送方向におけるヘッドハウジング60の位置決めは、ヘッドハウジング60の右側面62および左側面64にそれぞれ形成された長孔68を貫通した支持シャフト80によって行われている。すなわち支持シャフト80の軸支部82は、長孔68の短手方向と略同一の径を有しているため、支持シャフト80の軸支部82が長孔68に貫通されることで、長孔68の短手方向、すなわち被印字媒体1の搬送方向においてヘッドハウジング60が位置決めされる。
【0038】
一方、軸支部82の軸と、回動軸81aおよび回動軸81bの軸とは、異なるように設定され、回動軸81aは、左リボンフレーム43に形成された支持用凹部47cに嵌装される回動軸81aに、回動軸81bは、右リボンフレーム42に形成された貫通孔50cにそれぞれ嵌装されて回動可能に支持されている。
【0039】
従って、図11(a)、(b)に示すように、操作片84を操作して、支持シャフト80を回動軸81aおよび回動軸81bを中心に回動させることで、軸支部82は、回動軸81aおよび回動軸81bに対して偏心部材として機能し、ヘッドハウジング60、すなわちサーマルヘッド12が被印字媒体1の搬送方向に移動させ、プラテンローラ11に対するサーマルヘッド12のヘッド位置を調整することができる。
【0040】
なお、ヘッドハウジング60は、軸心が一致する右側面62の被支持用凹部61aおよび左側面64の被支持用突起63aが、フレームカバー70の支持用突起74および左リボンフレーム43の支持用凹部47aにそれぞれ緩装されると共に、軸心が一致する右側面62の被支持用凹部61bおよび左側面64の被支持用突起63bが、フレームカバー70の支持用突起75および左リボンフレーム43の支持用凹部47bにそれぞれ緩装さているが、被印字媒体1の搬送方向の遊びは、ヘッド位置を調整の移動範囲以上に設定されている。
【0041】
次に、本実施の形態におけるヘッド圧の左右バランス自動調整機能について図12を参照して詳細に説明する。
図12は、本発明に係るサーマルプリンタの実施の形態におけるヘッド圧の左右バランス自動調整機能を説明するための説明図である。
【0042】
図12(a)を参照すると、印字ユニット40にヘッドハウジング60が組み付けられた状態では、印字面に対して垂直な方向におけるヘッドハウジング60、すなわちサーマルヘッド12の位置決めは、支持シャフト80の軸支部82にヘッドハウジング60の幅方向中央に設けられたV字突起69が当接することで、サーマルヘッド12が幅方向中央の一点で位置決めされる。
【0043】
また、支持シャフト80が貫通される、ヘッドハウジング60の右側面62および左側面64にそれぞれ形成された長孔68は、印字面に対して垂直な方向が長手方向であり、
支持シャフト80に対してサーマルヘッド12は、幅方向中央のV字突起69を中心に左右に揺動可能に支持されている。
【0044】
従って、印字ユニット40にヘッドハウジング60(サーマルヘッド12)の組み付けた際に、プラテンローラ11に対してサーマルヘッド12が平行に組み付けられなかった場合であっても、図12(a)に示すように、V字突起69を中心にサーマルヘッド12が揺動され、プラテンローラ11に対してサーマルヘッド12が平行に押圧されることになる。
【0045】
また、部品や組み立てのバラツキによって、支持シャフト80の軸支部82がプラテンローラ11と平行でない場合であっても、図12(b)、(c)に示すように、V字突起69を中心にサーマルヘッド12が揺動され、プラテンローラ11に対してサーマルヘッド12が平行に押圧されることになる。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態によれば、被印字媒体1の幅方向に掛け渡され、サーマルヘッド12を被印字媒体1の搬送方向において位置決めして支持する支持シャフト80(軸支部82)を設け、サーマルヘッド12は、支持シャフト80(軸支部82)によって、印字面に対して垂直な方向において幅方向中央を中心に左右に揺動可能に支持されるように構成することにより、部品や組み立てのバラツキによって支持シャフト80(軸支部82)がプラテンローラ11と平行でない場合でも、幅方向中央を中心にサーマルヘッド12が揺動され、プラテンローラ11に対してサーマルヘッド12が平行に押圧されることになるため、ヘッド圧の左右バランスをとることができ、安価な部品構成であっても所望の印字品質を確保することができるという効果を奏する。
【0047】
さらに、本実施の形態によれば、サーマルヘッド12は、ヘッドハウジング60を介して支持シャフト80に支持されており、ヘッドハウジング60は、右側面62および左側面64にそれぞれ形成され、印字面に垂直な方向が長手方向となり、且つ短手方向が支持シャフト80の径と略同一の長孔68と、長孔68に貫通された支持シャフト80に幅方向中央で当接するV字突起69とを設けることにより、簡単な構成で、長孔68の短手方向である被印字媒体1の搬送方向においてヘッドハウジング60(サーマルヘッド12)を位置決めして支持することができると共に、印字面に対して垂直な方向においてV字突起69を中心に左右に揺動可能にヘッドハウジング60(サーマルヘッド12)を支持することができるという効果を奏する。
【0048】
さらに、本実施の形態によれば、支持シャフト80は、回動可能に支持されていると共に、ヘッドハウジング60の長孔68を貫通している箇所を回動軸81a、81bに対して偏心させることにより、支持シャフト80の回動によって被印字媒体1の搬送方向においてサーマルヘッド12が移動可能であり、用紙の厚さや材質に応じてプラテンローラ11に対するサーマルヘッド12のヘッド位置を調整することができるという効果を奏する。
【0049】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付している。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係るサーマルプリンタの実施の形態の構成を示す概略側面図である。
【図2】本発明に係るサーマルプリンタの実施の形態の閉状態を示す外観斜視図である。
【図3】本発明に係るサーマルプリンタの実施の形態の開状態を示す外観斜視図である。
【図4】図3に示すヘッドハウジングの構成を示す斜視図であり、(a)および(b)は、前面側から見た前面図であり、(c)は、後面側から見た後面図である。
【図5】図3に示す印字ユニットの構成を示す斜視図である。
【図6】図3に示すフレームカバーの構成を示す斜視図である。
【図7】図3に示す印字ユニットへのヘッドハウジングの組み付け動作を説明するための斜視図である。
【図8】図3に示す印字ユニットへのヘッドハウジングの組み付け動作を説明するための斜視図である。
【図9】図3に示す印字ユニットへのヘッドハウジングの組み付け動作を説明するための斜視図である。
【図10】図3に示す印字ユニットにヘッドハウジングが組み付けられた状態を示す斜視図である。
【図11】本発明に係るサーマルプリンタの実施の形態におけるヘッド位置調整方法を説明するための説明図である。
【図12】本発明に係るサーマルプリンタの実施の形態におけるヘッド圧の左右バランス自動調整機能を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 被印字媒体
2 インクリボン
3 ロール紙
10 サーマルプリンタ
11 プラテンローラ
12 サーマルヘッド
13 供給部
14 リボン巻き取り軸
15 リボン供給軸
16 排出口
17 支持軸
20 本体
30 上蓋部
31 開閉ストッパ
31a 凸部
40 印字ユニット
41 アーム部
42 右リボンフレーム
43 左リボンフレーム
44 当接部材
46 被伝達ギヤ
47a、47b、47c 支持用凹部
48 枠部
49 被嵌装部
50a、50b、50c 貫通孔
51 切り欠き
52 係合凹部
60 ヘッドハウジング
61a、61b 被支持用凹部
62 右側面
63a、63b 被支持用突起
64 左側面
65 下面
66 押圧部材
67 バネ
68 長孔
69 V字突起
70 フレームカバー
71、72 貫通孔
74、75 支持用突起
76 樹脂バネ部
77 係合凸部
80 支持シャフト
81a、81b 回動軸
82 軸支部
83 延出片
84 操作片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印字媒体をプラテンローラとサーマルヘッドとの間で挟持搬送して印字を施すサーマルプリンタであって、
前記被印字媒体の幅方向に掛け渡され、前記サーマルヘッドを前記被印字媒体の搬送方向において位置決めして支持する支持シャフトを具備し、
前記サーマルヘッドは、前記支持シャフトによって、印字面に対して垂直な方向において幅方向中央を中心に左右に揺動可能に支持されていることを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記サーマルヘッドは、ヘッドハウジングを介して前記支持シャフトに支持されており、
前記ヘッドハウジングは、両側面にそれぞれ形成され、印字面に垂直な方向が長手方向となり、且つ短手方向が前記支持シャフトの径と略同一の長孔と、
該長孔に貫通された前記支持シャフトに幅方向中央で当接する当接手段とを具備し、
前記長孔に貫通された前記支持シャフトによって、前記長孔の短手方向である前記被印字媒体の搬送方向において前記ヘッドハウジングが位置決めされて支持されると共に、印字面に対して垂直な方向において前記当接手段を中心に左右に揺動可能に前記ヘッドハウジングが支持されることを特徴とする請求項1記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記支持シャフトは、回動可能に支持されていると共に、前記ヘッドハウジングの長孔を貫通している箇所は、回動軸に対して偏心しており、
前記サーマルヘッドは、前記支持シャフトの回動によって前記被印字媒体の搬送方向において移動可能であることを特徴とする請求項2記載のサーマルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−149324(P2010−149324A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327995(P2008−327995)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(307010993)株式会社サトー知識財産研究所 (588)
【出願人】(000130581)株式会社サトー (1,153)
【Fターム(参考)】