説明

サーマルプリンタ

【課題】記録媒体の位置が第一面への印刷時に比べて幅方向にズレた場合であっても第二面への熱転写制御を適切に実行するサーマルプリンタを提供する。
【解決手段】記録媒体Paの第一面への熱転写を行う第一面印刷動作と、第一面印刷動作の際にグリップローラ51の微小突起のある部位で挟持したグリップ領域Ar1がある第二面に対し、グリップ領域Ar1の位置に応じた熱転写を行う第二面印刷動作とを行う際、記録媒体Paの位置を検出する用紙位置センサ7と、この用紙位置センサ7の検出結果に基づきグリップ領域Ar1の位置を算出するために必要なパラメータ62とを設け、用紙位置センサ7による検出を、第一面印刷動作及び第二面印刷動作において両ローラ51・52が記録媒体Paを挟持しているときにそれぞれ実行し、各々の検出結果とパラメータ62とに基づきグリップ領域Ar1の位置を算出し、算出した位置に応じて第二面への熱転写を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドを加熱制御して記録媒体の両面に印刷するサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタは、例えば特許文献1に例示されるように、表面に微小突起を有するグリップローラ及びグリップローラに対向するピンチローラで記録媒体を挟持して搬送するとともに、サーマルヘッドの加熱によりリボンの転写物を記録媒体に熱転写する印刷装置である。サーマルプリンタには、特許文献1に例示されるように、記録媒体の第一面及び第一面の裏面である第二面に順次熱転写を実行することで両面印刷を行うものがある。
【0003】
このようなグリップローラにより搬送精度を高めたプリンタにおいて両面印刷を行う場合には、第一面への熱転写の際にグリップローラの微小突起のある部位で挟持したグリップ領域のある第二面に対して熱転写を行うと、グリップ領域に形成されたグリップ痕とも呼ばれる突起痕が目立ち印刷品質が損なわれることが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−228417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
突起痕を目立たなくして印刷品質を向上させる構成として、記録媒体が一旦グリップローラに把持されると、記録媒体の幅方向の位置が不変となるのを利用して、サーマルヘッドに定めたヘッド基準位置に対するグリップ領域の幅方向の相対位置を予め測定のうえ設定しておき、第二面への熱転写を行うにあたり、この相対位置に応じて熱量を変化させる等の制御を行うことが一つの有効な手段として考えられる。
【0006】
しかしながら、単一のサーマルヘッドに対して供給する記録媒体の表裏を反転させることや単一又は複数のサーマルヘッドに記録媒体を供給したりする等の新たな態様を実現するために、第一面への熱転写の後にグリップローラ及びピンチローラによる記録媒体の挟持を一旦解除する動作を行うように構成するのが考えられる。この場合、グリップローラの挟持解除に伴い記録媒体の位置が幅方向にズレるおそれがあり、記録媒体の幅方向の位置が不変であるのを条件とする第二面への熱転写制御では、印刷品質が低減してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、記録媒体の第一面及び第二面に順次熱転写するにあたり、第一面への熱転写後から第二面への熱転写前までの間にサーマルヘッドに対する記録媒体の位置が幅方向にズレた場合であっても第二面への熱転写制御を適切に実行し、印刷品質を向上させたサーマルプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0009】
すなわち、本発明のサーマルプリンタは、表面の一部位に微小突起を有するグリップローラ及び当該グリップローラに対向するピンチローラと、リボンの転写物を加熱により記録媒体に熱転写するサーマルヘッドとを備え、記録媒体の第一面及び第一面の裏面である第二面に熱転写を順次実行することで両面印刷するサーマルプリンタであって、両ローラで記録媒体を挟持して搬送しつつ第一面への熱転写を行う第一面印刷動作と、第一面印刷動作の際にグリップローラの微小突起のある部位で挟持したグリップ領域がある第二面に対し、サーマルヘッドに定めたヘッド基準位置に対するグリップ領域の幅方向の相対位置に応じた熱転写を行う第二面印刷動作とを司る制御部と、予め定めたセンサ基準位置に対する記録媒体の幅方向の相対位置を検出する用紙位置センサと、第一面印刷動作における用紙位置センサの検出結果に基づき記録媒体におけるグリップ領域の位置を算出するために必要であり且つ第二面印刷動作における用紙位置センサの検出結果と記録媒体におけるグリップ領域の位置とに基づきヘッド基準位置に対するグリップ領域の幅方向の相対位置を算出するために必要なパラメータとを具備し、前記制御部は、用紙位置センサによる検出を、第一面印刷動作において両ローラが記録媒体を挟持しているとき及び第二面印刷動作において両ローラが記録媒体を挟持しているときにそれぞれ実行し、各々の検出結果と前記パラメータとに基づきヘッド基準位置に対するグリップ領域の幅方向の相対位置を算出し、算出した相対位置に応じて第二面への熱転写を行うことを特徴とする。
【0010】
このように、第一面印刷動作において両ローラが記録媒体を挟持しているとき及び第二面印刷動作において両ローラが記録媒体を挟持しているときにそれぞれ用紙位置センサによる検出を行い、両検出結果及びパラメータに基づきヘッド基準位置に対するグリップ領域の幅方向の相対位置を取得し、取得した相対位置に応じた第二面への熱転写制御を実行するので、第一面印刷動作の後から第二面印刷動作において両ローラに記録媒体が挟持されるまでの間に、例えばグリップローラが記録媒体の挟持を一旦解除するといった動作を行い、この動作に伴い幅方向に記録媒体の位置がズレたとしても、ヘッド基準位置に対するグリップ領域の幅方向の相対位置を適切に取得でき、第二面への熱転写の制御を適切に行って印刷品質を向上させることが可能となる。
【0011】
適切な印刷を実現するためには、前記制御部は、前記第二面への熱転写を、前記算出したヘッド基準位置に対するグリップ領域の幅方向の相対位置に応じて熱量を変化させて行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上説明した構成であるから、第一面印刷動作の後から第二面印刷動作における記録媒体の幅方向の位置が確定するまでの間に、幅方向に記録媒体の位置がズレたとしても、ヘッド基準位置に対するグリップ領域の幅方向の相対位置を適切に取得可能となり、取得した相対位置を用いて第二面への熱転写制御を適切に実行することが可能となる。したがって、印刷品質を向上させたサーマルプリンタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るサーマルプリンタの全体構成を模式的に示す図。
【図2】同サーマルプリンタの制御部及びそれに関連する構成を模式的に示す図。
【図3】同サーマルプリンタにおける両面印刷の動作に関する説明図。
【図4】同サーマルプリンタにおける両面印刷の動作に関する説明図。
【図5】同サーマルプリンタにおける両面印刷の動作に関する説明図。
【図6】ヘッド基準位置に対するグリップ領域の位置を算出するために必要なパラメータに関する説明図。
【図7】ヘッド基準位置に対するグリップ領域の位置を算出するために必要なパラメータに関する説明図。
【図8】グリップ領域の基準位置に対するオフセット量に関する説明図。
【図9】制御部で実行される印刷制御処理ルーチン及び突起痕位置検出処理ルーチンを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係るサーマルプリンタを、図面を参照して説明する。
【0015】
サーマルプリンタは、図1に示すように、巻回されたロール用紙等の記録媒体Paを保持する給紙部1と、インクやラミネート層等の転写物が塗布されたリボンRbを熱転写により記録媒体Paに熱転写(印刷)する複数の印刷部2,3と、給紙部1から供給された記録媒体Paを印刷部2,3へ向けて案内する基幹路Li0と、基幹路Li0に分岐部53を介して接続され基幹路Li0と各々の印刷部2,3との間を連絡する分岐路Li1,Li2と、分岐路Li1,Li2にある記録媒体Paを搬送する搬送ローラ部5と、記録媒体Paの搬送制御や印刷部2,3の印刷制御を行う制御部6とを有し、搬送ローラ部5を通じて給紙部1に保持される記録媒体Paを印刷部2,3に順次搬送し記録媒体Paの第一面b及び第一面bの裏面である第二面fへの両面印刷を行うものである。
【0016】
給紙部1は、図1に示すように、ロール状に巻回された記録媒体Paを回転可能に保持し、図示しないモータ等の動力部により記録媒体Paをロールの軸心C1回りに正逆回転させて記録媒体Paの繰り出し及び巻き戻し動作を行い得るように構成されているとともに、対をなす送出ローラ12・12で記録媒体Paを挟持しつつ印刷部2,3に向けて供給する。さらに、給紙部1は、図1に示すように、記録媒体Paのロール全体を回転軸Cn回りに回転可能にし、給紙部1を第一の回転位置ro1とした状態で記録媒体Paを供給可能にするとともに、給紙部1を第一の回転位置ro1から180度回転させた第二の回転位置(図示せず)とした状態で記録媒体Paを供給可能にすることにより、給紙部1からヘッド部2・3に至る記録媒体Paの表裏(姿勢)を反転可能に構成されている。例えばヘッド部2に至る記録媒体Paの表裏を反転させることで、単一のヘッド部2により記録媒体Paの両面への印刷を可能にしている。
【0017】
分岐部53は、図1に示すように、基幹路Li0にある記録媒体Paの搬送先を分岐路Li1又は分岐路Li2のいずれか一方に切り換える切り替え部の役割を担うもので、制御部6によりその切り換えが制御される。
【0018】
搬送ローラ部5は、図1に示すように、両分岐路Li1,Li2の内側に配置されて図示しないモータ等の動力部から記録媒体Paを搬送する駆動力を得る金属製のフィードローラとも呼ばれるグリップローラ51と、グリップローラ51に対向するピンチローラ52・52とを有し、両ローラ51,52で分岐路Li1又は分岐路Li2にある記録媒体Paを挟持した状態でグリップローラ51を回転させることにより記録媒体Paを搬送する。グリップローラ51は、図2に示すように、記録媒体Paの搬送方向に直交する幅方向(主走査方向)において記録媒体Paの両端側二箇所を挟持する位置に、その表面周方向全体に亘って微小突起tが形成されており、この微小突起tにより記録媒体Paとの摩擦力を高めて高精度な搬送を可能としている。この微小突起を有するグリップローラ51で挟持された記録媒体Paについて本明細書では、図2に示すように、記録媒体Paのうちグリップローラ51の微小突起のある部位で挟持された領域をグリップ領域Ar1と呼び、グリップローラ51の微小突起tのある部位で挟持されていない領域を非グリップ領域Ar2と呼ぶ。グリップ領域Ar1の表面には微小突起tにより突起痕が形成される。
【0019】
図1に示すように、印刷部2は、給紙部1から基幹路Li0及び分岐路Li1を経由して供給される記録媒体Paに対し、インク等の転写物が塗布されたリボンRbを用いてリボンRbの転写物を熱転写(印刷)する。印刷部3は、印刷部2とほぼ同様の構成をなし、給紙部1から基幹路Li0及び分岐路Li2を経由して供給される記録媒体Paに対して熱転写(印刷)する。リボンRbには、リボンの繰り出し方向に沿って順に有色のイエロー、マゼンタ、シアン、透明なオーバーコート層の転写物が塗布されている。印刷部2,3は、図1に示すように、通電されることにより発熱する複数の発熱抵抗体21aが1ラインを構成するように配列されたサーマルヘッド21と(図2参照)、サーマルヘッド21に対向するプラテンローラ22と、リボンRbをサーマルヘッド21に繰り出すと共にサーマルヘッド21に至ったリボンRbを巻き取る対をなすリボン搬送手段23とを有する。サーマルヘッド21及びプラテンローラ22は、相対接離自在に構成されている。
【0020】
図2に示すように、発熱抵抗体21aは、1ラインを構成する画素(ドット)毎に対応して幅方向に沿って複数配列され、通電による発熱でリボンRbのインクやラミネート層等の転写物を記録媒体Paへ熱転写することにより、対応する画素の印刷を行うものであり、記録媒体Paを副走査方向の何れか一方向である印刷方向に移動させることにより、主走査方向の画素をライン単位で印刷しつつ、印刷方向に沿って順に画素の印刷を行う。ここでは、サーマルヘッド21の1ドット目の発熱抵抗体をヘッド基準位置21sとして設定している。
【0021】
図1に示す基幹路Li0又はその近傍には、用紙位置センサ7が設けられている。用紙位置センサ7は、CIS(Contact Image Sensor)等のセンサを、その検出方向を記録媒体Paの幅方向に一致させた状態に配置し、基幹路Li0にある記録媒体Paの幅方向のエッジeg(図2参照)を検出するエッジセンサである。用紙位置センサ7は、図2に示すように、エッジegを検出することにより、予め定めたセンサ基準位置7sに対する記録媒体Paの幅方向の相対位置を検出する。この相対位置は、CISの1ドット目をセンサ基準位置7sとして、センサ基準位置7sからエッジegまでの距離Rとして表される。用紙位置センサ7での検出は、記録媒体Paが一時的にスキュー(斜行)していると検出位置がぶれるので、例えば所定時間検出を行い、検出結果に基づき最小二乗法等で近似直線を求め、これをエッジegの位置として精度を向上させている。
【0022】
図1及び図2に示す制御部6は、次に述べる第一面印刷動作や第二面印刷動作といった両面印刷に必要な一連の動作や他の所要の動作を司るもので、各部1〜5の駆動を制御するものである。ここでいう第一面印刷動作は、例えば図3に示すように、第一面bがサーマルヘッド21に対面するように給紙部1から印刷部3に対して記録媒体Paを供給し、両ローラ51,52で記録媒体Paを挟持して搬送しつつ第一面bへの熱転写を行うといった用紙供給動作の開始から熱転写動作の完了までの一連の動作である。第二面印刷動作は、第一面bへの熱転写が完了した後に実行するもので、図4に示すように、記録媒体Paを給紙部1側に巻き取り、一旦記録媒体Paの先端を搬送ローラ部5から離間させて挟持状態を解除し、その後、図5に示すように、分岐部53による搬送先を切り換えて、再度記録媒体Paを搬送ローラ部5に繰り出して搬送ローラ部5で記録媒体Paを挟持し、第二面fがサーマルヘッド21に対面するように印刷部2に対して記録媒体Paを供給し、両ローラ51,52で記録媒体Paを挟持して搬送しつつ第二面fへの熱転写を行うといった用紙供給動作の開始から熱転写動作の完了までの一連の動作である。
【0023】
図2に戻り、制御部6は、周知のサーマルプリンタと同様にCPU、メモリ及びインターフェイスを具備する通常のマイクロコンピュータユニットにより構成されて、図9に示す印刷制御処理ルーチンや突起痕位置検出処理ルーチン等の所要のプログラムがメモリ内に書き込まれており、CPUは適宜必要なプログラムを呼び出して実行することにより、周辺ハードリソースと協働して、図2に示すように、加熱制御部61と突起痕位置検出部63とを実現する。また、パラメータ62を記憶している。
【0024】
加熱制御部61は、図2に示すように、印刷指令に係る印刷階調に応じた熱量となるように発熱抵抗体21aへの通電を制御することでサーマルヘッド21の加熱を制御するものである。加熱制御部61は、非グリップ領域Ar2に対して熱転写することを条件に所望の印刷結果が得られる熱量に関する熱データ61aを印刷階調毎に予め関連付けて記憶しており、後述する突起痕位置検出部63により取得したヘッド基準位置21sに対するグリップ領域Ar1の相対位置に応じて、熱転写先のドットがグリップ領域Ar1であるか非グリップ領域Ar2であるかを判定し、判定結果に応じた熱転写の制御を行う。具体的には、非グリップ領域Ar2に熱転写を行う場合は、印刷階調に対応する熱データ61aを用いて通電制御を行う一方で、グリップ領域Ar1に熱転写を行う場合は、グリップ領域Ar1への転写量が非グリップ領域Ar2に比べて増大するように、印刷階調に対応する熱データ61aを熱量の増大する方向に所定量補正した新たな熱データを用いて通電制御を行う。このように、第二面への熱転写を、ヘッド基準位置21sに対するグリップ領域Ar1の幅方向の相対位置に応じて熱量を変化させて行い、グリップ領域Ar1の突起痕を目立たなくして印刷品質を向上させ、適切な印刷を実現している。
【0025】
パラメータ62は、図2に示すように、第一面印刷動作における用紙位置センサ7の検出結果に基づき記録媒体Paにおけるグリップ領域Ar1の位置を算出するために必要であるとともに、第二面印刷動作における用紙位置センサ7の検出結果と記録媒体Paにおけるグリップ領域の位置とに基づきヘッド基準位置21sに対するグリップ領域Ar1の幅方向の相対位置を算出するために必要なものである。具体的には、図2、図6及び図7に示すように、幅方向におけるセンサ基準位置7sからグリップローラ51の微小突起tのある部位までの距離T(T、T)、幅方向におけるセンサ基準位置7sからヘッド基準位置21sまでの距離H(H、H)、幅方向両側にある二つのグリップ領域Ar1のうち各々のグリップ領域Ar1の外方端同士の距離D(図7参照)であり、内部メモリに予め設定されている。その他として例えばグリップ領域Ar1の幅方向寸法等が挙げられる。これら距離T及び距離Hは、用紙位置センサ7や各々の印刷部2・3のサーマルヘッド21、グリップローラ51、ピンチローラ52・52の組み付け精度によって一方の印刷部2に記録媒体Paが供給されている場合と、他方の印刷部3に記録媒体Paが供給されている場合とで異なるため、図6及び図7に示すように、印刷部2・3毎にそれぞれ設定されている。このようにパラメータ62を記録媒体Paの供給先の印刷部2・3毎に設定することで、各部7、21、51、52の組み付け精度のバラツキを制御で吸収でき、各部の組み付け作業を簡易化して、製造コストを低減することを可能にしている。これらパラメータ62は、テストプリントの結果を下にグリップ領域Ar1の位置等を実測して設定されている。なお、パラメータ62は、換言すると、グリップローラ51のうち微小突起tのある部位とセンサ基準位置7sとの幅方向の位置関係およびヘッド基準位置21sとセンサ基準位置7sとの幅方向の位置関係に関する位置情報であるとも言える。
【0026】
図2に示すように、突起痕位置検出部63は、第二面印刷動作の熱転写制御に用いる、ヘッド基準位置21sに対するグリップ領域Ar1の幅方向の相対位置を算出するもので、用紙位置センサ7による検出を、第一面印刷動作において両ローラ51,52が記録媒体Paを挟持しているとき及び第二面印刷動作において両ローラ51,52が記録媒体Paを挟持しているときにそれぞれ実行し、各々の検出結果及び予め設定されたパラメータ62に基づきヘッド基準位置21sに対するグリップ領域Ar1の幅方向の相対位置を算出する。このヘッド基準位置21sに対するグリップ領域Ar1の幅方向の相対位置は、ヘッド基準位置21sから最も近いグリップ領域Ar1までの距離Xで表され、この距離Xは、下記のように算出される。
【0027】
すなわち、図3→図4→図5のように、印刷部3で第一面bに熱転写し、その後、印刷部2で第二面fに熱転写する場合には、図6に示すように、印刷部3に記録媒体Paが供給されているときにセンサ基準位置7sからエッジegまでの距離Rを用紙位置センサ7で検出し、この検出結果および予め設定されている幅方向におけるセンサ基準位置7sからグリップローラ51の微小突起tのある部位までの距離Tに基づき、幅方向におけるエッジegから最も近いグリップ領域Ar1までの距離Yを算出する。次に、印刷部2に記録媒体Paが供給されているときにセンサ基準位置7sからエッジegまでの距離Rを用紙位置センサ7で検出し、この検出結果と上記距離Yおよび予め設定されている幅方向におけるセンサ基準位置7sからヘッド基準位置21sまでの距離Hに基づき、ヘッド基準位置21sから最も近いグリップ領域Ar1までの距離Xを算出する。算出に用いる式は、次の通りである。
Y=T−R …………数式(1)
X=R−H+Y ……数式(2)
【0028】
また、図5→図4→図3のように、印刷部2で第一面に熱転写し、その後、印刷部3で第二面に熱転写する場合には、図7に示すように、印刷部2に記録媒体Paが供給されているときにセンサ基準位置7sからエッジegまでの距離Rを用紙位置センサ7で検出し、この検出結果および予め設定されている幅方向におけるセンサ基準位置7sからグリップローラ51の微小突起tのある部位までの距離Tに基づき、幅方向におけるエッジegから最も近いグリップ領域Ar1までの距離Yを算出する。次に、印刷部3に記録媒体Paが供給されているときにセンサ基準位置7sからエッジegまでの距離Rを用紙位置センサ7で検出し、この検出結果と、上記距離Yと、予め設定されている寸法Dや幅方向におけるセンサ基準位置7sからヘッド基準位置21sまでの距離Hとに基づき、ヘッド基準位置21sから最も近いグリップ領域Ar1までの距離Xを算出する。算出に用いる式は、次の通りである。
Y=T−R ……………数式(3)
X=H−R−Y−D …数式(4)
【0029】
ここで、制御部6は、図8に示すように、記録媒体Paの幅方向両側にある二つのグリップ領域Ar1同士の間隔や単一のグリップ領域Ar1の幅寸法は固定値であるので、両グリップ領域Ar1がサーマルヘッド21の幅方向中心hcに配置されている場合のヘッド基準位置21sに対するグリップ領域Ar1の幅方向の相対位置を基準とし、この相対位置を図2に示すように基準位置データ64として予め記憶している。突起痕位置検出部63は、図8に示すように、上記で算出した距離Xから予め設定された基準値Xを差し引くことで、基準位置データ64とのズレ量を示すオフセット量Ofを算出し、図2に示すように、このオフセット量Ofを加熱制御部61に入力する。図8に示すように、オフセット量Ofが正値であると、グリップ領域Ar1が幅方向に沿って一方(例えば右)にズレていることを意味し、オフセット量Ofが負値であると、グリップ領域Ar1が幅方向に沿って他方(例えば左)にズレていることを意味する。図2の加熱制御部61は、オフセット量Of及び基準位置データ64に基づき、ヘッド基準位置21sに対するグリップ領域Ar1の幅方向の相対位置を特定し、上記の加熱制御を行う。
【0030】
すなわち、図2の制御部6は、第一面印刷動作として、図3に示すように、第一面bがサーマルヘッド21に対面するように給紙部1から印刷部3に対して記録媒体Paを供給し(図9の処理ST01参照)、両ローラ51,52で記録媒体Paを挟持して搬送しつつ第一面bへの熱転写を行う(図9の処理ST02参照)。この第一面印刷動作において記録媒体Paが印刷部3に供給されて両ローラ51,52で挟持されているときに(図9の処理ST11:YES参照)、用紙位置センサ7による検出を行い、その検出結果(R)をメモリに保持する(図9の処理ST12及びST13参照)。
【0031】
第一面bへの熱転写が完了すると、第二面印刷動作を開始し、図4に示すように、記録媒体Paを給紙部1側に巻き取り、一旦記録媒体Paの先端を搬送ローラ部5から離間させて挟持状態を解除し、その後、図5に示すように、分岐部53による搬送先を切り換えて、再度記録媒体Paを搬送ローラ部5に繰り出して搬送ローラ部5で記録媒体Paを挟持し、第二面fがサーマルヘッド21に対面するように印刷部2に対して記録媒体Paを供給する(図9の処理ST03参照)。この第二面印刷動作の供給動作において記録媒体Paが印刷部2に供給されて両ローラ51,52で挟持されているときに(図9の処理ST14:YES参照)、用紙位置センサ7による検出を行い(図9の処理ST15参照)、その検出結果(R)と処理ST13で保持した検出結果(R)と上記パラメータ62とに基づき、上記数式(1)〜(2)を用いて距離Xを算出し(図9の処理ST16参照)、算出結果からオフセット量Ofを算出する(図9の処理ST17参照)。オフセット量の算出がなされると、オフセット量Ofと図2の基準位置データ64とに応じてヘッド基準位置21sに対するグリップ領域Ar1の相対位置を特定し(図9の処理ST04参照)、この特定結果に応じて第二面への熱転写の制御がなされる(図9の処理ST05参照)。
【0032】
以上のように、本実施形態に係るサーマルプリンタは、表面の一部位に微小突起tを有するグリップローラ51及びグリップローラ51に対向するピンチローラ52と、リボンRbの転写物を加熱により記録媒体Paに熱転写するサーマルヘッド21とを備え、記録媒体Paの第一面b及び第一面bの裏面である第二面fに熱転写を順次実行することで両面印刷するサーマルプリンタであって、両ローラ51・52で記録媒体Paを挟持して搬送しつつ第一面bへの熱転写を行う第一面印刷動作と、第一面印刷動作の際にグリップローラ51の微小突起tのある部位で挟持したグリップ領域Ar1がある第二面fに対し、サーマルヘッド21に定めたヘッド基準位置21sに対するグリップ領域Ar1の幅方向の相対位置に応じた熱転写を行う第二面印刷動作とを司る制御部6と、予め定めたセンサ基準位置7sに対する記録媒体Paの幅方向の相対位置を検出する用紙位置センサ7と、第一面印刷動作における用紙位置センサ7の検出結果に基づき記録媒体Paにおけるグリップ領域Ar1の位置を算出するために必要であり且つ第二面印刷動作における用紙位置センサ7の検出結果と記録媒体Paにおけるグリップ領域Ar1の位置とに基づきヘッド基準位置21sに対するグリップ領域Ar1の幅方向の相対位置を算出するために必要なパラメータ62とを具備し、制御部6は、用紙位置センサ7による検出を、第一面印刷動作において両ローラ51・52が記録媒体Paを挟持しているとき及び第二面印刷動作において両ローラ51・52が記録媒体Paを挟持しているときにそれぞれ実行し、各々の検出結果(R、R)とパラメータ62とに基づきヘッド基準位置21sに対するグリップ領域Ar1の幅方向の相対位置を算出し、算出した相対位置に応じて第二面fへの熱転写を行うものである。
【0033】
このように、第一面印刷動作において両ローラ51・52が記録媒体Paを挟持しているとき及び第二面印刷動作において両ローラ51・52が記録媒体Paを挟持しているときにそれぞれ用紙位置センサ7による検出を行い、両検出結果(R、R)及びパラメータ62に基づきヘッド基準位置21sに対するグリップ領域Ar1の幅方向の相対位置を取得し、取得した相対位置に応じた第二面fへの熱転写制御を実行するので、第一面印刷動作の後から第二面印刷動作において両ローラ51・52に記録媒体Paが挟持されるまでの間に、例えばグリップローラ51が記録媒体Paの挟持を一旦解除するといった動作を行い、この動作に伴い幅方向に記録媒体Paの位置がズレたとしても、ヘッド基準位置21sに対するグリップ領域Ar1の幅方向の相対位置を適切に取得でき、第二面への熱転写の制御を適切に行って印刷品質を向上させることが可能となる。
【0034】
さらに、制御部6は、第二面fへの熱転写を、算出したヘッド基準位置21sに対するグリップ領域Ar1の幅方向の相対位置に応じて熱量を変化させて行うので、グリップ領域Ar1の位置に応じた適切な熱量で第二面fへの熱転写制御を行い、適切な印刷を実現することが可能となる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0036】
例えば、本実施形態では、印刷部2から印刷部3へ又は印刷部3から印刷部2へ記録媒体Paを供給して両面印刷を行っているが、例えば単一の印刷部に対し記録媒体の表裏を反転させて両面印刷する場合にも本発明を適用することができる。
【0037】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0038】
21…サーマルヘッド
21s…ヘッド基準位置
51…グリップローラ
52…ピンチローラ
51・52…両ローラ(グリップローラ・ピンチローラ)
6…制御部
62…パラメータ
7…用紙位置センサ
7s…センサ基準位置
Rb…リボン
Pa…記録媒体
b…記録媒体の第一面
f…記録媒体の第二面
t…微小突起
Ar1…グリップ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の一部位に微小突起を有するグリップローラ及び当該グリップローラに対向するピンチローラと、リボンの転写物を加熱により記録媒体に熱転写するサーマルヘッドとを備え、記録媒体の第一面及び第一面の裏面である第二面に熱転写を順次実行することで両面印刷するサーマルプリンタであって、
両ローラで記録媒体を挟持して搬送しつつ第一面への熱転写を行う第一面印刷動作と、第一面印刷動作の際にグリップローラの微小突起のある部位で挟持したグリップ領域がある第二面に対し、サーマルヘッドに定めたヘッド基準位置に対するグリップ領域の幅方向の相対位置に応じた熱転写を行う第二面印刷動作とを司る制御部と、
予め定めたセンサ基準位置に対する記録媒体の幅方向の相対位置を検出する用紙位置センサと、
第一面印刷動作における用紙位置センサの検出結果に基づき記録媒体におけるグリップ領域の位置を算出するために必要であり且つ第二面印刷動作における用紙位置センサの検出結果と記録媒体におけるグリップ領域の位置とに基づきヘッド基準位置に対するグリップ領域の幅方向の相対位置を算出するために必要なパラメータとを具備し、
前記制御部は、用紙位置センサによる検出を、第一面印刷動作において両ローラが記録媒体を挟持しているとき及び第二面印刷動作において両ローラが記録媒体を挟持しているときにそれぞれ実行し、各々の検出結果と前記パラメータとに基づきヘッド基準位置に対するグリップ領域の幅方向の相対位置を算出し、算出した相対位置に応じて第二面への熱転写を行うことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記制御部は、前記第二面への熱転写を、前記算出したヘッド基準位置に対するグリップ領域の幅方向の相対位置に応じて熱量を変化させて行う請求項1に記載のサーマルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−166345(P2012−166345A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26424(P2011−26424)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】