説明

サーマルヘッドプリンター

【課題】 ヘッド機構部の動作の高速化を図る。
【解決手段】 印画紙100が装填される装填部3と、印画紙を搬送しプラテンローラー15を有する搬送部4と、印画紙が排出される排出部24と、インクリボンを供給するリボン駆動部6と、印画紙に対する印刷を行う印画ヘッド22を有し第1の移動位置と第2の移動位置と第3の移動位置の少なくとも三つの移動位置の間で移動されるヘッド機構部5と、ヘッド機構部を第1の移動位置と第2の移動位置の間で移動させる第1の駆動カム25と、ヘッド機構部を第2の移動位置と第3の移動位置の間で移動させる第2の駆動カム27とを設け、ヘッド機構部の移動量は第1の移動位置と第2の移動位置との間の移動量より第2の移動位置と第3の移動位置との間の移動量が小さくされ、第1の駆動カムの外形より第2の駆動カムの外形が小さくされた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーマルヘッドプリンターについての技術分野に関する。詳しくは、ヘッド機構部を移動させる第1の駆動カムと第2の駆動カムを設けてヘッド機構部の動作の高速化等を図る技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターには、印画ヘッドがインクリボンに押し付けられインクリボンに塗布されたインクを昇華させて印画紙に対する印刷を行うサーマルヘッドプリンターがある。
【0003】
サーマルヘッドプリンターには、印画ヘッドを有しインクリボン及び印画紙に対して離接する方向へ移動されるヘッド機構部と該ヘッド機構部を移動させる移動機構とが配置されている。
【0004】
ヘッド機構部は、印刷時に印画ヘッドがインクリボン及び印画紙に押し付けられる印画位置と、印刷開始前の準備状態である待機位置と、各部のメンテナンス等を行うことが可能な退避位置との間で移動可能とされている。印画位置と待機位置は印画紙に対する印刷を迅速に行うために距離が短くされており、待機位置と退避位置はヘッド機構部が大きく開放されるようにするために距離が長くされている。
【0005】
このようなサーマルヘッドプリンターにあっては、ヘッド機構部を移動させる移動機構として一つの駆動カムを設け、該駆動カムを動作させてヘッド機構部を印画位置と待機位置と退避位置の間で移動可能としたものがある。
【0006】
しかしながら、一つの駆動カムを用いてヘッド機構部を移動させる場合には、印画位置と待機位置の間でヘッド機構部を移動させるためのカム溝等の駆動部と待機位置と退避位置の間でヘッド機構部を移動させるためのカム溝等の駆動部が一つの駆動カムに形成される。
【0007】
従って、駆動カムの外形が大きくなって重量が大きくなり、その分、駆動カムの動作が遅くなり、ヘッド機構部の移動の高速化を図ることができない。
【0008】
また、上記したように、印画位置と待機位置の距離が待機位置と退避位置の距離に対して短いため、一つの駆動カムによってヘッド機構部を三つの位置の間で移動させたときに、短い距離の印画位置と待機位置の間の移動に関し位置精度が低下すると言う問題もある。
【0009】
そこで、サーマルヘッドプリンターにあっては、移動機構に二つの駆動体を設け、第1の駆動体の動作によってヘッド機構部を待機位置と退避位置の間で移動させ、第2の駆動体の動作によってヘッド機構部を印画位置と待機位置の間で移動させるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
【特許文献1】特開2009−285980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、特許文献1に記載されたサーマルヘッドプリンターにあっては、第1の駆動体としてラックとピニオンを用い、第2の駆動体として偏芯カムとカムピンを用い、ヘッド機構部にピニオンと偏芯カムが回転自在に支持された構成とされている。
【0012】
従って、ヘッド機構部とピニオンと偏芯カムが印画位置と退避位置の間で移動することになり、ピニオンと偏芯カムが存在する分、重量が大きくなり、ヘッド機構部の移動の高速化を妨げてしまうと言う問題がある。
【0013】
そこで、本発明サーマルヘッドプリンターは、上記した問題点を克服し、ヘッド機構部の動作の高速化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
サーマルヘッドプリンターは、上記した課題を解決するために、印画紙が装填される装填部と、前記装填部から前記印画紙を送り出して搬送し少なくとも印刷時に前記印画紙が接するプラテンローラーを有する搬送部と、印刷された前記印画紙が排出される排出部と、インクリボンが装填され装填されたインクリボンを供給するリボン駆動部と、前記インクリボンに押し付けられ前記インクリボンに塗布されたインクを昇華させて前記印画紙に対する印刷を行う印画ヘッドを有し第1の移動位置と第2の移動位置と第3の移動位置の少なくとも三つの移動位置の間で移動されるヘッド機構部と、前記ヘッド機構部を前記第1の移動位置と前記第2の移動位置の間で移動させる第1の駆動カムと、前記ヘッド機構部を前記第2の移動位置と前記第3の移動位置の間で移動させる第2の駆動カムとを備え、前記ヘッド機構部の移動量は前記第1の移動位置と前記第2の移動位置との間の移動量より前記第2の移動位置と前記第3の移動位置との間の移動量が小さくされ、前記第1の駆動カムの外形より前記第2の駆動カムの外形が小さくされたものである。
【0015】
従って、サーマルヘッドプリンターにあっては、ヘッド機構部の移動量の大きい退避位置と待機位置の間の移動が第1の駆動カムによって行われ、ヘッド機構部の移動量の小さい待機位置と印画位置の間の移動が第1の駆動カムより外形の小さい第2の駆動カムによって行われる。
【0016】
上記したサーマルヘッドプリンターにおいては、前記第1の移動位置は前記印画ヘッドが前記プラテンローラーから離隔した退避位置とされ、前記第2の移動位置は前記印画ヘッドが前記プラテンローラーから離隔し前記退避位置より前記印画ヘッドと前記プラテンローラーの距離が接近する待機位置とされ、前記第3の移動位置は前記印画ヘッドが前記印画紙に押し付けられ前記印画紙を前記プラテンローラーと挟持する印画位置とされることが望ましい。
【0017】
第1の移動位置が退避位置とされ第2の移動位置が待機位置とされ第3の移動位置が印画位置とされることにより、退避位置と待機位置の間の移動が第1の駆動カムによって行われ、待機位置と印画位置の間の移動が第2の駆動カムによって行われる。
【0018】
上記したサーマルヘッドプリンターにおいては、前記ヘッド機構部を回動可能とし、前記第1の駆動カムと前記第2の駆動カムがそれぞれ回転することにより前記ヘッド機構部が回動されることが望ましい。
【0019】
ヘッド機構部を回動可能とし、第1の駆動カムと第2の駆動カムがそれぞれ回転することによりヘッド機構部が回動されることにより、ヘッド機構部、第1の駆動カム及び第2の駆動カムの移動スペースが小さくなる。
【0020】
上記したサーマルヘッドプリンターにおいては、前記ヘッド機構部にカム軸を設け、前記第1の駆動カムに前記ヘッド機構部のカム軸が摺動自在に係合可能なカム溝を形成し、前記第1の駆動カムのカム溝に、前記第2の駆動カムによって前記ヘッド機構部が前記第2の移動位置と前記第3の移動位置の間で移動されるときに前記ヘッド機構部のカム軸が前記第1の駆動カムのカム溝から外れる開放部を形成することが望ましい。
【0021】
第2の駆動カムによってヘッド機構部が第2の移動位置と第3の移動位置の間で移動されるときにカム軸が第1の駆動カムのカム溝から外れる開放部を形成することにより、ヘッド機構部が第2の移動位置と第3の移動位置の間で回動されるときに、第1の駆動カムからヘッド機構部に負荷が付与されない。
【0022】
上記したサーマルヘッドプリンターにおいては、前記ヘッド機構部に係合軸を設け、前記第2の駆動カムにカム摺動部を形成し、前記ヘッド機構部に係合可能な係合部と前記第2の駆動カムのカム摺動部に摺動自在に係合可能なカムピンとを有するリンク機構を設け、前記第1の駆動カムによって前記ヘッド機構部が前記第1の移動位置と前記第2の移動位置の間で移動されるときに前記ヘッド機構部の係合軸が前記リンク機構の係合部から外れるようにすることが望ましい。
【0023】
第1の駆動カムによってヘッド機構部が第1の移動位置と第2の移動位置の間で移動されるときに係合軸がリンク機構の係合部から外れるようにすることにより、ヘッド機構部が第1の移動位置と第2の移動位置の間で回動されるときに、第2の駆動カムからヘッド機構部に負荷が付与されない。
【発明の効果】
【0024】
本発明サーマルヘッドプリンターは、印画紙が装填される装填部と、前記装填部から前記印画紙を送り出して搬送し少なくとも印刷時に前記印画紙が接するプラテンローラーを有する搬送部と、印刷された前記印画紙が排出される排出部と、インクリボンが装填され装填されたインクリボンを供給するリボン駆動部と、前記インクリボンに押し付けられ前記インクリボンに塗布されたインクを昇華させて前記印画紙に対する印刷を行う印画ヘッドを有し第1の移動位置と第2の移動位置と第3の移動位置の少なくとも三つの移動位置の間で移動されるヘッド機構部と、前記ヘッド機構部を前記第1の移動位置と前記第2の移動位置の間で移動させる第1の駆動カムと、前記ヘッド機構部を前記第2の移動位置と前記第3の移動位置の間で移動させる第2の駆動カムとを備え、前記ヘッド機構部の移動量は前記第1の移動位置と前記第2の移動位置との間の移動量より前記第2の移動位置と前記第3の移動位置との間の移動量が小さくされ、前記第1の駆動カムの外形より前記第2の駆動カムの外形が小さくされている。
【0025】
従って、移動量の小さいヘッド機構部の第2の移動位置と第3の移動位置の間の移動が外形の小さい第2の駆動カムによって行われるため、第2の駆動カムの回転速度を速くすることが可能であり、ヘッド機構部の移動の高速化を図ることができる。
【0026】
また、ヘッド機構部にピニオンやカム等の重量の大きい部材が支持されることがなく第1の移動位置と第3の移動位置の間でヘッド機構部を回動させているため、ヘッド機構部の重量が大きくならず、その分、ヘッド機構部の移動の高速化を図ることができる。
【0027】
請求項2に記載した発明にあっては、前記第1の移動位置は前記印画ヘッドが前記プラテンローラーから離隔した退避位置とされ、前記第2の移動位置は前記印画ヘッドが前記プラテンローラーから離隔し前記退避位置より前記印画ヘッドと前記プラテンローラーの距離が接近する待機位置とされ、前記第3の移動位置は前記印画ヘッドが前記印画紙に押し付けられ前記印画紙を前記プラテンローラーと挟持する印画位置とされている。
【0028】
従って、印刷の準備位置である待機位置と印刷時の位置である印画位置との間のヘッド機構部の回動が高速となり、印刷の開始までの動作の高速化を図ることができる。
【0029】
請求項3に記載した発明にあっては、前記ヘッド機構部を回動可能とし、前記第1の駆動カムと前記第2の駆動カムがそれぞれ回転することにより前記ヘッド機構部が回動されるようにしている。
【0030】
従って、ヘッド機構部、第1の駆動カム及び第2の駆動カムの移動スペースが小さくて済み、サーマルヘッドプリンターの小型化を図ることができる。
【0031】
請求項4に記載した発明にあっては、前記ヘッド機構部にカム軸を設け、前記第1の駆動カムに前記ヘッド機構部のカム軸が摺動自在に係合可能なカム溝を形成し、前記第1の駆動カムのカム溝に、前記第2の駆動カムによって前記ヘッド機構部が前記第2の移動位置と前記第3の移動位置の間で移動されるときに前記ヘッド機構部のカム軸が前記第1の駆動カムのカム溝から外れる開放部を形成している。
【0032】
従って、第2の駆動カムによってヘッド機構部が第2の移動位置と第3の移動位置の間で回動されるときに、第1の駆動カムからヘッド機構部に負荷が付与されないため、ヘッド機構部の第2の移動位置と第3の移動位置の間での円滑かつ高速の回動動作を行うことができる。
【0033】
請求項5に記載した発明にあっては、前記ヘッド機構部に係合軸を設け、前記第2の駆動カムにカム摺動部を形成し、前記ヘッド機構部に係合可能な係合部と前記第2の駆動カムのカム摺動部に摺動自在に係合可能なカムピンとを有するリンク機構を設け、前記第1の駆動カムによって前記ヘッド機構部が前記第1の移動位置と前記第2の移動位置の間で移動されるときに前記ヘッド機構部の係合軸が前記リンク機構の係合部から外れるようにしている。
【0034】
従って、第1の駆動カムによってヘッド機構部が第1の移動位置と第2の移動位置の間で回動されるときに、第2の駆動カムからヘッド機構部に負荷が付与されないため、ヘッド機構部の第1の移動位置と第2の移動位置の間での円滑かつ高速の回動動作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本発明サーマルヘッドプリンターの実施の形態を添付図面に従って説明する。
【0036】
[サーマルヘッドプリンターの構造]
サーマルヘッドプリンター1は外筐2の内外に所要の各部が配置されて成る(図1参照)。
【0037】
外筐2の内部には装填部3と搬送部4とヘッド機構部5とリボン駆動部6とカッター機構部7が配置されている。
【0038】
装填部3は外筐2の内部における下方側に配置され、装填部3にはロール状に巻回された印画紙100が装填される。装填部3に装填された印画紙100はロール部100aが装填部3に対して回転可能な状態とされる。
【0039】
搬送部4は給紙ローラー8と折返しローラー9と送りガイド10とガイド11、12とキャプスタン13とピンチローラー14とプラテンローラー15を有している。
【0040】
給紙ローラー8は、例えば、ゴム材料によって形成され、装填部3の印画紙100が引き出される引出口の近傍において図示しないモーターによって回転される。給紙ローラー8の回転によって印画紙100が装填部3から引き出されて搬送される。
【0041】
折返しローラー9は給紙ローラー8の下方において回転自在に支持され、給紙ローラー8によって送られた印画紙100をU字状に略180°折り返して搬送する機能を有している。折返しローラー9が設けられていることにより、印画紙100の搬送経路を形成するためのスペースが小さくて済み小型化を図ることができる。また、折返しローラー9が設けられていることにより、印画紙100の表裏の向きを反転することができ、装填部3や後述する排出部(排紙トレイ)を所望の向きに設定することが可能であり、設計の自由度の向上及び操作性の向上を図ることができる。
【0042】
折返しローラー9は送りガイド10に回転自在に支持されている。送りガイド10には折返しローラー9の外周面に沿って配置された複数の送りコロ16、16、・・・が回転自在に支持されている。
【0043】
ガイド11、12は折返しローラー9の上方に配置されている。ガイド11、12は対向した状態で配置され、ガイド12には印画紙100の搬送経路に沿って配置された複数の送りローラー17、17、・・・が回転自在に支持されている。
【0044】
キャプスタン13は同軸上に配置されたプーリー18の中心部に固定され、駆動モーター19の駆動力によって回転される。駆動モーター19のモーター軸19aとプーリー18の間には動力伝達ベルト20が巻回されている。従って、キャプスタン13は駆動モーター19の駆動力が動力伝達ベルト20及びプーリー18を介して伝達されて回転される。
【0045】
ピンチローラー14は印画紙100を挟んでキャプスタン13に接触されキャプスタン13の回転に伴って回転されて印画紙100をキャプスタン13と挟持して搬送する機能を有する。
【0046】
プラテンローラー15はピンチローラー14の近傍に位置されており、印画紙100に対する印刷時にヘッド機構部5が動作されたときに印画紙100が押し付けられる。
【0047】
ヘッド機構部5は回動自在に支持されたヒートシンク21と該ヒートシンク21の先端部に設けられた印画ヘッド22とヒートシンク21の先端部において印画ヘッド22の前後両側に設けられたリボン用ローラー23、23とを有している。
【0048】
ヒートシンク21は印刷時に印画ヘッド22に設けられている複数の発熱素子が通電されたときに発生する熱を放出する放熱作用を有している。ヒートシンク21は印画ヘッド22が設けられた側と反対側の端部が回動支点21aとして設けられ、それぞれ側方へ突出されたカム軸21bと係合軸21cを有している。
【0049】
カム軸21bは回動支点21a寄りの位置に設けられ、係合軸21cは印画ヘッド22寄りの位置に設けられている。
【0050】
リボン駆動部6は印刷時にインクリボン200を供給する機能を有している。リボン駆動部6はリボントレイ6aと該リボントレイ6aに各別に回転自在に支持された供給リール6b及び巻取リール6cとを有している。
【0051】
インクリボン200は供給リール6bから供給され巻取リール6cによって巻き取られる。インクリボン200はヘッド機構部5の動作により印画ヘッド22が印画紙100に接近されたときにリボン用ローラー23、23に押圧されて印画紙100に近付く方向へ押し出され、リボン用ローラー23、23の間に位置する部分が印画紙100にプラテンローラー15の反対側から押し付けられる。リボン駆動部6にあっては、巻取リール6cが図示しないリボン供給用モーターの駆動力によって回転されインクリボン200が供給リール6bから供給される。
【0052】
カッター機構部7はカッターを有し、印刷が行われた印画紙100の所定の位置を切断する機能を有している。
【0053】
外筐2には排出部として機能する排紙トレイ24が装着されている。排紙トレイ24には印画ヘッド22によって印刷されカッターによって切断された印画紙100が排出される。
【0054】
外筐2の内部には第1の駆動カム25が回転自在に支持されている。第1の駆動カム25は外周部に環状に形成されたカム溝26を有している。カム溝26は略L字状に形成された変位部26aと該変位部26aに連続し第1の駆動カム25の回転中心を中心とした略円弧状に形成された無変位部26bとを有している。第1の駆動カム25にはカム溝26の無変位部26bに外方に開口された開放部26cが形成されている。
【0055】
第1の駆動カム25のカム溝26にはヘッド機構部5のヒートシンク21に設けられたカム軸21bが摺動自在に係合可能とされている。
【0056】
外筐2の内部には円板状に形成された第2の駆動カム27が回転自在に支持されている。第2の駆動カム27は外形が第1の駆動カム25より小さくされ、中心部には側方へ突出された連結用突部27aが設けられている。第2の駆動カム27は内側にカム摺動部28を有し、該カム摺動部28は第2の駆動カム27の回転中心からの距離が変位する第1のカム部28aと第2の駆動カム27の回転中心を中心とした円弧状に形成された第2のカム部28bとから成る。
【0057】
第2の駆動カム27にはリンク機構29が連結されている。リンク機構29は直線状の連結アーム30と該連結アーム30の一端部に回動自在に支持された係合レバー31とから成る。
【0058】
連結アーム30には他端寄りの位置に前後に長い連結孔30aが形成され、該連結孔30aが第2の駆動カム27の連結用突部27aに摺動可能な状態で連結されている。連結アーム30の他端部には側方へ突出されたカムピン30bが設けられ、該カムピン30bが第2の駆動カム27のカム摺動部28に摺動自在に係合されている。連結アーム30は図示しない付勢バネによって後方へ付勢されている。
【0059】
係合レバー31の先端部には凹状の係合部31aが形成され、該係合部31aがヘッド機構部5のヒートシンク21に設けられた係合軸21cに摺動自在に係合可能とされている。係合レバー31は略中央部を支点として回動可能とされている。
【0060】
[サーマルヘッドプリンターの印刷動作]
上記のように構成されたサーマルヘッドプリンター1において、給紙ローラー8の回転によって印画紙100が装填部3から取り出されて排出トレイ24へ向けて送り出されると、印画紙100は折返しローラー9によって搬送方向が反転され送りガイド10及びガイド11、12に案内され、キャプスタン13の回転によって排紙トレイ24へ向けて搬送されていく。このとき印画紙100は送りガイド10に支持された回転可能な送りコロ16、16、・・・及びガイド12に支持された回転可能な送りローラー17、17、・・・と接触しながら円滑に搬送される。
【0061】
印画紙100がプラテンローラー15上を搬送されるときには、供給リール6bからインクリボン200が供給されると共にヘッド機構部5が動作されて印画ヘッド22がインクリボン200及び印画紙100に接近する。印画ヘッド22がインクリボン200及び印画紙100に接近して接触すると、印画ヘッド22に設けられている複数の発熱素子が選択的に通電されて駆動しインクリボン200に塗布されているインクが昇華されて印画紙100に対する印刷が行われる。
【0062】
印刷が行われた印画紙100は引き続き排紙トレイ24へ向けて搬送され、カッター機構部7の駆動により動作されたカッターによって印画紙100が切断されて排紙トレイ24に排出される。
【0063】
[ヘッド機構部の動作]
ヘッド機構部5は、印画ヘッド22がプラテンローラー15から離隔した退避位置(第1の移動位置)と、印画ヘッド22がプラテンローラー15から離隔し退避位置より印画ヘッド22とプラテンローラー15の距離が接近する待機位置(第2の移動位置)と、印画ヘッド22が印画紙100をプラテンローラー15と挟持する印画位置(第3の移動位置)との間で回動される。
【0064】
退避位置は各部のメンテナンス等を行うことが可能な位置であり、待機位置は印刷開始前の準備状態の位置であり、印画位置は印刷時に印画ヘッド22がインクリボン200及び印画紙100に押し付けられる位置である。ヘッド機構部5の移動量は退避位置と待機位置の間の移動量より待機位置と印画位置の移動量が小さくされている。
【0065】
ヘッド機構部5が退避位置にある状態においては、図2に示すように、カム軸21bが第1の駆動カム25のカム溝26における変位部26aに係合され、リンク機構29における連結アーム30のカムピン30bが第2の駆動カム27のカム摺動部28における第1のカム部28aに係合されている。このときリンク機構29における係合レバー31の係合部31aはヘッド機構部5の係合軸21cから離隔した位置にある。
【0066】
ヘッド機構部5が退避位置にある状態において第1の駆動カム25が所定の方向へ回転されると、カム軸21bがカム溝26の変位部26aを摺動され無変位部26bに係合される(図3参照)。従って、ヘッド機構部5は印画ヘッド22がプラテンローラー15に近付く方向へ回動されて待機位置に至る。このとき第2の駆動カム27は回転されず、連結アーム30のカムピン30bがカム摺動部28の第1のカム部28aに係合された状態が保持される。
【0067】
ヘッド機構部5が退避位置から待機位置まで回動されると、係合軸21cが係合レバー31に接近して係合部31aに接触される。
【0068】
ヘッド機構部5が待機位置まで移動された状態において、印画紙100が搬送部4によって搬送され印画ヘッド22とプラテンローラー15の間に送られると共にインクリボン200が供給リール6aから供給され印画ヘッド22とプラテンローラー15の間に送られる。
【0069】
ヘッド機構部5が待機位置にある状態において第1の駆動カム25がさらに同じ方向へ回転されると、カム軸21bが開放部26cから外側へ変位されカム溝26の無変位部26bに沿って移動される(図4参照)。
【0070】
このとき第2の駆動カム27の回転が開始され、連結アーム30のカムピン30bがカム摺動部28の第1のカム部28aと第2のカム部28bを連続して摺動され第2のカム部28bに係合される。連結アーム30のカムピン30bがカム摺動部28の第2のカム部28bを摺動されるときには、連結アーム30が後方へ移動され、係合レバー31が回動される。従って、係合レバー31の回動力が係合軸21cに伝達され、ヘッド機構部5は印画ヘッド22がプラテンローラー15に近付く方向へ回動され印画ヘッド22がインクリボン200及び印画紙100を介してプラテンローラー15に押し付けられて印画位置に至る。印画位置においては、上記したように、インクリボン200に塗布されているインクが昇華されて印画紙100に対する印刷が行われる。
【0071】
印画紙100に対する印刷が終了しヘッド機構部5が印画位置にある状態において、第1の駆動カム25が上記とは逆方向へ回転されると、カム軸21bがカム溝26の無変位部26bに沿って移動される(図3参照)。
【0072】
このとき第2の駆動カム27も回転され、連結アーム30のカムピン30bがカム摺動部28の第2のカム部28bと第1のカム部28aに連続して摺動され第1のカム部28aに係合される。連結アーム30のカムピン30bがカム摺動部28の第1のカム部28aを摺動されるときには、連結アーム30が前方へ移動され、係合レバー31が回動される。従って、係合レバー31の回動力が係合軸21cに伝達され、ヘッド機構部5は印画ヘッド22がプラテンローラー15から離隔する方向へ回動され印画ヘッド22がプラテンローラー15から離隔して待機位置に至る。
【0073】
ヘッド機構部5が待機位置にある状態において第1の駆動カム25がさらに逆方向へ回転されると、カム軸21bがカム溝26の無変位部26bから変位部26aを摺動される(図2参照)。従って、ヘッド機構部5は印画ヘッド22がプラテンローラー15からさらに離隔する方向へ回動されて退避位置に至る。このとき第2の駆動カム27は回転されず、連結アーム30のカムピン30bがカム摺動部28の第1のカム部28aに係合された状態が保持される。
【0074】
ヘッド機構部5が待機位置から退避位置まで回動されるときには、係合軸21cが係合レバー31から離隔して係合軸21cと係合部31aの係合が解除される。
【0075】
[まとめ]
以上に記載した通り、サーマルヘッドプリンター1にあっては、移動量の大きい第1の移動位置(退避位置)と第2の移動位置(待機位置)のヘッド機構部5の移動が外形の大きい第1の駆動カム25によって行われ、移動量の小さい第2の移動位置と第3の移動位置(印画位置)のヘッド機構部5の移動が外形の小さい第2の駆動カム27によって行われる。
【0076】
従って、移動量の小さいヘッド機構部5の第2の移動位置と第3の移動位置の間の移動が外形の小さい第2の駆動カム27によって行われるため、第2の駆動カム27の回転速度を速くすることが可能であり、ヘッド機構部5の移動の高速化を図ることができる。
【0077】
また、短い距離の第2の移動位置と第3の移動位置の間の移動が外形の大きい第1の駆動カム25とは別の第2の駆動カム27によって行われるため、第2の移動位置と第3の移動位置の間の移動に関し位置精度の向上を図ることができる。
【0078】
さらに、ヘッド機構部5にピニオンやカム等の重量の大きい部材が支持されることがなく第1の移動位置と第3の移動位置の間でヘッド機構部5を回動させているため、ヘッド機構部5の重量が大きくならず、その分、ヘッド機構部5の移動の高速化を図ることができる。
【0079】
さらにまた、第1の移動位置が退避位置とされ第2の移動位置が待機位置とされ第3の移動位置が印画位置とされており、印刷の準備位置である待機位置と印刷時の位置である印画位置との間のヘッド機構部5の回動が高速となり、印刷の開始までの動作の高速化を図ることができる。
【0080】
また、ヘッド機構部5を回動可能とし、第1の駆動カム25と第2の駆動カム27がそれぞれ回転することによりヘッド機構部5が回動されるため、ヘッド機構部5、第1の駆動カム25及び第2の駆動カム27の移動スペースが小さくて済み、サーマルヘッドプリンター1の小型化を図ることができる。
【0081】
さらに、サーマルヘッドプリンター1にあっては、第2の駆動カム27によってヘッド機構部5が待機位置と印画位置の間で回動されるときに、ヘッド機構部5のカム軸21bが第1の駆動カム25のカム溝26の開放部26cから外方へ変位される。従って、第2の駆動カム27によってヘッド機構部5が待機位置と印画位置の間で回動されるときに、第1の駆動カム25からヘッド機構部5に負荷が付与されないため、ヘッド機構部5の待機位置と印画位置の間での円滑かつ高速の回動動作を行うことができる。
【0082】
加えて、サーマルヘッドプリンター1にあっては、第1の駆動カム25によってヘッド機構部5が退避位置と待機位置の間で回動されるときに、ヘッド機構部5の係合軸21cがリンク機構29における係合レバー31の係合部31aから外れる。従って、第1の駆動カム25によってヘッド機構部5が退避位置と待機位置の間で回動されるときに、第2の駆動カム27からヘッド機構部5に負荷が付与されないため、ヘッド機構部5の退避位置と待機位置の間での円滑かつ高速の回動動作を行うことができる。
【0083】
上記した最良の形態において示した各部の具体的な形状及び構造は、何れも本発明を実施する際の具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図2乃至図4と共に本発明サーマルヘッドプリンターの実施の形態を示すものであり、本図は、サーマルヘッドプリンターの概略側面図である。
【図2】退避位置にある状態を示す概略側面図である。
【図3】待機位置にある状態を示す概略側面図である。
【図4】印画位置にある状態を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0085】
1…サーマルヘッドプリンター、3…装填部、4…搬送部、5…ヘッド機構部、6…リボン駆動部、7…カッター機構部、15…プラテンローラー、21b…カム軸、21c…係合軸、22…印画ヘッド、24…排紙トレイ(排出部)、25…第1の駆動カム、26…カム溝、26c…開放部、27…第2の駆動カム、28…カム摺動部、29…リンク機構、30b…カムピン、31a…係合部、100…印画紙、200…インクリボン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印画紙が装填される装填部と、
前記装填部から前記印画紙を送り出して搬送し少なくとも印刷時に前記印画紙が接するプラテンローラーを有する搬送部と、
印刷された前記印画紙が排出される排出部と、
インクリボンが装填され装填されたインクリボンを供給するリボン駆動部と、
前記インクリボンに押し付けられ前記インクリボンに塗布されたインクを昇華させて前記印画紙に対する印刷を行う印画ヘッドを有し第1の移動位置と第2の移動位置と第3の移動位置の少なくとも三つの移動位置の間で移動されるヘッド機構部と、
前記ヘッド機構部を前記第1の移動位置と前記第2の移動位置の間で移動させる第1の駆動カムと、
前記ヘッド機構部を前記第2の移動位置と前記第3の移動位置の間で移動させる第2の駆動カムとを備え、
前記ヘッド機構部の移動量は前記第1の移動位置と前記第2の移動位置との間の移動量より前記第2の移動位置と前記第3の移動位置との間の移動量が小さくされ、
前記第1の駆動カムの外形より前記第2の駆動カムの外形が小さくされた
サーマルヘッドプリンター。
【請求項2】
前記第1の移動位置は前記印画ヘッドが前記プラテンローラーから離隔した退避位置とされ、
前記第2の移動位置は前記印画ヘッドが前記プラテンローラーから離隔し前記退避位置より前記印画ヘッドと前記プラテンローラーの距離が接近する待機位置とされ、
前記第3の移動位置は前記印画ヘッドが前記印画紙に押し付けられ前記印画紙を前記プラテンローラーと挟持する印画位置とされた
請求項1に記載のサーマルヘッドプリンター。
【請求項3】
前記ヘッド機構部を回動可能とし、
前記第1の駆動カムと前記第2の駆動カムがそれぞれ回転することにより前記ヘッド機構部が回動されるようにした
請求項1に記載のサーマルヘッドプリンター。
【請求項4】
前記ヘッド機構部にカム軸を設け、
前記第1の駆動カムに前記ヘッド機構部のカム軸が摺動自在に係合可能なカム溝を形成し、
前記第1の駆動カムのカム溝に、前記第2の駆動カムによって前記ヘッド機構部が前記第2の移動位置と前記第3の移動位置の間で移動されるときに前記ヘッド機構部のカム軸が前記第1の駆動カムのカム溝から外れる開放部を形成した
請求項1に記載のサーマルヘッドプリンター。
【請求項5】
前記ヘッド機構部に係合軸を設け、
前記第2の駆動カムにカム摺動部を形成し、
前記ヘッド機構部に係合可能な係合部と前記第2の駆動カムのカム摺動部に摺動自在に係合可能なカムピンとを有するリンク機構を設け、
前記第1の駆動カムによって前記ヘッド機構部が前記第1の移動位置と前記第2の移動位置の間で移動されるときに前記ヘッド機構部の係合軸が前記リンク機構の係合部から外れるようにした
請求項1に記載のサーマルヘッドプリンター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−230305(P2011−230305A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100047(P2010−100047)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】