説明

サーマルヘッドプリンタ

【課題】 RFID用紙に対する情報交信及び印刷時間の短縮化を図り、RFID用紙処理のスループットの向上を図ることができるサーマルヘッドプリンタを提供すること。
【解決手段】 基板11aと、基板11a上に設けられ、RFID用紙20に印刷を行う印刷部12と、印刷部12側の基板11aに設けられ、RFID用紙20の印刷開始位置において、RFID用紙20と情報交信するアンテナ部13とを備えたプリンタヘッド11と、印刷開始位置にてアンテナ部13と対峙してインレット23を配置したRFID用紙20と、を備えてサーマルヘッドプリンタ10を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーマルヘッドプリンタにかかるもので、詳しくはRFID用紙に対して印刷及び情報交信(書き込み及び読み出し)処理を行うサーマルヘッドプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、RFID用紙(メモリ機能を有するICチップと当該ICチップと外部との情報交信に必要なアンテナとからなるインレットを有する)に対して、印刷及び情報交信を行うプリンタヘッドが存在する。
特許文献1に記載の第2の実施の形態には、印刷を行い且つ情報交信を行うアンテナが設けられたプリンタヘッドを備えたサーマルヘッドプリンタに関する技術が開示されている。
図4には、従来のサーマルヘッドプリンタの概略側面図を示す。
図4に示すように、この実施の形態に依れば、プリンタヘッド2は、基板3上に発熱素子4が搭載された印刷部5と、印刷部5の配線等が格納された金属部分6と、金属部分6にGNDを介して設置したアンテナ部7とを備えてサーマルヘッドプリンタ1を構成している。
【0003】
プリンタヘッド2にはアンテナ部7が設けられ、金属部分6とアンテナ部7とのGNDを接触させることで、アンテナ部7のGND面積を拡大させて交信電波の指向性向上が図られている。
従来例のサーマルヘッドプリンタ1では、印刷前にRFID用紙20を所定の位置に停止して情報交信し、次いでRFID用紙20を印刷開始位置にフィードして印刷を行っていた。
【0004】
図5には、従来例のサーマルヘッドプリンタ1におけるRFID用紙20の動作説明図を示す。
図5の(1)には、前のRFID用紙20aの印刷が終了し、次に印刷されるRFID
用紙20bが初期位置にフィードした状態を示す。この初期位置が印刷開始位置Pとなる。
図5の(2)には、RFID用紙20bが情報交信する位置を示す。RFID用紙20bは情報交信位置Wまでバックワードフィードし、そこで情報の書き込み及び読み出しチェックが行われる。
図5の(3)には、RFID用紙20bの印刷開始位置を示す。RFID用紙20bは
印刷開始位置Pまでフォワードフィードされる。
図5の(4)には、RFID用紙20bの印刷が終了して次に処理するRFID用紙が
初期位置にフィードした状態を示す。
【0005】
従来例のサーマルヘッドプリンタ1では、先ずRFID用紙20aの印刷が終えると、
次に処理されるRFID用紙20bを情報交信位置Wまでバックワードフィードし情報の書き込み及び読み出しチェックが行われる。次いで、RFID用紙20bは印刷開始位置Pまでフォワードフィードされて印刷が行われる。
つまり、従来例では、RFID用紙20に情報交信と印刷とを行うためにバック及びフォワードフィード動作を介して情報交信位置Wと印刷開始位置Pとの2箇所に停止させる必要がある。
このように、従来例においては、RFID用紙20に対する処理動作(情報交信、書き込み及び読み出し)に経時要素が多く効率が悪いことから、RFID用紙20処理のスループット向上が望まれていた。
【0006】
また、従来例においては、アンテナ部7とRFID用紙20との距離が近いため、短い縦幅(RFID用紙の搬送方向の長さ)のRFID用紙20の場合、交信対象外のRFID用紙20にも情報交信する可能性があり、誤書き込みの虞がある。
【0007】
【特許文献1】特開2007−219805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上のような諸問題にかんがみてなされたもので、RFID用紙に対する情報交信及び印刷時間の短縮化を図り、RFID用紙処理のスループットの向上を図ることができるサーマルヘッドプリンタを提供することを課題とする。
【0009】
また、本発明は、縦幅に関係なくRFID用紙に対する書き込み精度に優れたサーマルヘッドプリンタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、RFID用紙処理時におけるRFID用紙とプリンタヘッドとの位置関係を工夫すること、具体的には、印刷と情報交信とを同じ位置でできる構成に着目したもので、
搬送径路上を移送するアンテナおよびICチップからなるインレットを有するRFID用紙に、情報交信及び印刷を行うサーマルヘッドプリンタにおいて、
基板と、当該基板上に設けられ上記RFID用紙に印刷を行う発熱素子を備えた印刷部と、当該印刷部側の基板に設けられ、上記RFID用紙の印刷開始位置において、上記RFID用紙と情報交信するアンテナ部とを備えたプリンタヘッドと、
上記印刷開始位置にて上記アンテナ部と対峙する上記インレットを配置したRFID用紙と、を備えて構成したことを特徴とするサーマルヘッドプリンタである。
【0011】
印刷開始位置において、アンテナ部とインレットとが対峙し、当該位置でRFID用紙に対する情報交信と印刷とを行う。プリンタヘッドにおけるアンテナ部の位置、RFID用紙におけるインレットの位置は特定せず、対峙状態にあればよい。対峙状態とは、アンテナ部の信号出力領域にインレットが位置していることを意味し、対峙距離や対峙方角は限定されない。
また、情報交信方式も限定されず、電磁結合方式(MF帯利用)、電磁誘導方式(LF帯利用)、マイクロ波方式(HF帯利用)、電波方式(UHF帯利用)、光方式(赤外線等利用)の方式を採用することができる。
【0012】
上記アンテナ部は、印刷部に隣接配置した。
隣接位置は、前後左右どの方向でもよく限定されることはない。印刷部とアンテナ部とを隣接配置したことにより、RFID用紙におけるインレットの位置が印刷部寄りとなり、短い縦幅のRFID用紙も利用できる。
【0013】
上記プリンタヘッドは、上記印刷部を下方に傾斜させて配置した。
アンテナ部とインレットの対峙方向とRFID用紙の搬送径路面とが鋭角を形成するので、印刷部とアンテナ部とを隣接配置したことにより、アンテナ部とインレットとの距離は短縮する。この距離の短縮は、情報交信領域を狭めて交信出力量の抑制に作用する。
【0014】
上記アンテナ部は、上記印刷部よりRFID用紙径路上流側最短2mm〜4mm隔離して配置した。
2mm未満の場合は、印刷部の配線構成により生じる磁場が情報交信に影響を与えてしまう。
また、4mmを超えると小さなサイズのRFID用紙への情報交信精度が低下してしまう。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によれば、
印刷開始位置にてRFID用紙との情報交信可能に、印刷部と同じ側にアンテナ部を設けたので、RFID用紙との情報交信のために印刷開始位置前の所定の位置に停止することなく、印刷開始位置にてRFID用紙に書き込み読み出し処理を行うことが可能である。
また、書き込み読み出し処理後、フィード動作することなく続けて印刷を開始することが可能である。また、情報交信速度が高速であれば、書き込み読み出し処理と共に印刷を開始することが可能である。
【0016】
すなわち、本発明によれば、RFID用紙に対する情報交信及び印刷のフィード動作による経時要素を割愛することができるので、RFID用紙処理のスループットの向上を図ることが可能である。
また、発熱素子による印刷方式なので、RFID用紙の印刷面は感熱表記可能な材質であればよい。また、インクリボンを用いて熱転写する機構にすれば、RFID用紙の印刷面は熱転写可能な材質であればよい。
【0017】
また、本発明は、上記印刷部の隣に上記アンテナ部を配置したので、アンテナ部に対峙するインレットも印刷部寄りに配置され、縦幅の短縮化が可能になる。
本発明のサーマルヘッドプリンタでは、印刷開始位置からインレットの配置箇所までが縦幅の下限値となり、この下限値以上のRFID用紙が利用できる。RFID用紙の横幅(搬送方向に垂直な方向の長さ)については、限定せず必要とする長さとすることができる。
RFID用紙の縦幅が短縮すれば、下限値のピッチサイズ(印刷開始位置から下限値までの縦幅が最小縦幅になる)まで用いるRFID用紙の利用サイズ範囲を広げることができる。
【0018】
更に、本発明は、上記プリンタヘッドを、上記印刷部を下方に傾斜させて配置したので、印刷部とアンテナ部とが隣接配置していることから、アンテナ部とインレットとの距離が短縮し、情報交信領域が狭まる。
よって、情報交信出力量を抑えて情報交信を行うことができる(消費エネルギーの抑制)と共に、情報交信対象とするRFID用紙のみに対して書き込みを行うことが容易になり書き込み精度の向上が図られる。
【0019】
更に、本発明は、上記アンテナ部を、上記印刷部より2mm〜4mm隔離して配置したので、印刷開始位置におけるRFID用紙との情報交信を確実にすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
つぎに本発明の実施の形態によるサーマルヘッドプリンタを図1乃至図3にもとづき説明する。
図1の(1)には、本発明のサーマルヘッドプリンタ10の概略側面図を示す。
サーマルヘッドプリンタ10は、プリンタヘッド11と、印刷部12と、アンテナ部13と、プラテン14と、RFID用紙の搬送径路15と、用紙センサ16と、制御部17とを備える。
図1の(2)には、本発明のサーマルヘッドプリンタ10の底面図を示す。
【0021】
プリンタヘッド11は、平板状の基板11a上、一端側に印刷部12と印刷部12に隣接したアンテナ部13とを設けて構成した。
プリンタヘッド11は、RFID用紙20の搬送径路15に印刷部12が下方に接するように配置した。
【0022】
印刷部12は、複数の発熱素子12aを列状に配置している。この発熱素子12aの列は、RFID用紙20のフィード方向に垂直になるように形成している。発熱素子12aは、コネクタを介して制御部17に接続するように配線している。
発熱素子12aは、制御部17から供給される印刷データを受け、列単位または列を分割した単位で発熱しRFID用紙20に対して印刷を行う。
【0023】
アンテナ部13は、特に限定しないが矩形ループ状に形成し、印刷部12と最短2mmの距離を置いて配置した。アンテナ部13は、コネクタを介して制御部17に接続するように配線している。アンテナ部13においては、RFID用紙20へ書き込む情報の送信処理と、書き込まれた情報の受信処理とを行う。アンテナ部13において送受信された情報は、制御部17にてマッチング処理され誤書き込みのチェックがされる。
【0024】
プラテン14は円筒形状に形成し、円周面が印刷部12と搬送径路15を介して対峙するように構成した。
【0025】
用紙センサ16は、RFID用紙20の搬送径路15過程に設けた。用紙センサ16は、光学センサであり、RFID用紙20の間隔を検出しRFID用紙20の位置決め情報を制御部17に提供する。
【0026】
制御部17は、印刷部12へ印刷データを供給するとともに、アンテナ部13に対する交信情報の送受信を行なう。アンテナ部13から情報交信する場合には、交信出力の制御も行なう。
【0027】
図2には、本発明のサーマルヘッドプリンタ10を構成するRFID用紙20を示す。
ここで用いるRFID用紙20は、再書き込み可能なメモリ機能を有するICチップ21と外部との情報交信に必要なアンテナ22とからなるインレット23を包含する印刷媒体であり、印刷面には発熱素子の発熱温度により感熱表記する材質が用いられている。
また、インレット23は、RFID用紙20の印刷開始位置においてアンテナ部13と対峙するようにRFID用紙20において搬送方向寄りに位置させている。アンテナ部13を印刷部12により近づけて配置すれば、インレット23の位置もより印刷開始位置へ近づけることができる。RFID用紙20は、剥離紙30上に所定間隔で複数配置されている。
【0028】
図3には、本発明のサーマルヘッドプリンタ10によるRFID用紙20への印刷及び情報交信時におけるRFID用紙20の動作説明図を示す。
図3の(1)は、前のRFID用紙20aの印刷が終了し、次に印刷されるRFID用
紙20bが初期位置にフィードした状態を示す。この初期位置が印刷開始位置Pとなる。
図3の(2)は、RFID用紙20bが情報交信する位置を示す。RFID用紙20bは移動されることなく、情報交信は印刷開始位置Pにおいて行われる。
図3の(3)は、印刷終了後のRFID用紙20bの位置を示す。情報交信が終了した
RFID用紙20bは、バックワードフィードされることなく印刷開始位置Pからフォワードフィードされながら印刷され、初期位置状態に位置する。
【0029】
本発明のサーマルヘッドプリンタ10を用いれば、従来例のようにRFID用紙20をバックワードフィードすることなく、フォワードフィード動作のみより、情報交信及び印刷を行うことができる。また、RFID用紙20の情報交信位置Wは、印刷開始位置Pでもあるので、情報交信後フィードすることなく印刷を行うことができる。更に、印刷終了後の初期位置移動もフォワードフィードで行なわれる。このように、経時動作が割愛されるのでRFID用紙処理のスループットが向上する。
また、アンテナ部14とインレット23の距離に応じた情報交信出力量を設定できるので、距離が近いほど情報交信出力量が抑えられることになる。
上記経時動作の割愛と情報交信出力量の抑制の結果、RFID用紙処理におけるエネルギー消費が抑制できる結果、サーマルヘッドプリンタ10の省エネも実現できる。
【0030】
また、一連の処理の初期位置を印刷開始位置Pにすることができるので、RFID用紙20の縦幅の下限値以上の長さであれば情報交信をすることができる。すなわち、インレットが格納できる小さなサイズ以上であれば用いるRFID用紙20の縦幅の上限値には制限がないので、利用できるRFID用紙サイズの範囲を拡大することができる。
【0031】
以上の如く、本発明を上記実施の形態にて説明したが、当該実施の形態に限定されることはない。例えば、印刷部を複数列形成すれば、印字処理効率を更に高めることができ、RFID用紙処理のスループットが向上する。
RFID用紙との情報交信量が少ない場合やRFID用紙との高速情報交信が可能の場合には、印刷をしながら印刷対象または印刷前後のRFID用紙に対して情報交信を行うことができる。このような場合には、更にRFID用紙処理のスループットが向上する。
また、印刷部とアンテナ部とが接触しないように磁気シールドを設けることで、双方磁場の影響を受け難いサーマルヘッドプリンタが構成できる。
また、アンテナ部を印刷部のRFID用紙の搬送方向下流側に配置することにより、印刷部で印字後にRFID用紙と情報交信することができ、印刷部及び搬送経路でRFID用紙が故障する等の障害があっても、それを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のサーマルヘッドプリンタの概略側面図及びプリンタヘッドの底面図を示す。
【図2】本発明のサーマルヘッドプリンタを構成するRFID用紙の説明図である。
【図3】本発明のサーマルヘッドプリンタによるRFID用紙への印刷及び情報交信におけるRFID用紙の動作説明図である。
【図4】従来例のサーマルヘッドプリンタの概略側面図である。
【図5】従来例のサーマルヘッドプリンタによるRFID用紙への印刷及び情報交信におけるRFID用紙の動作説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 サーマルヘッドプリンタ
2 基板
3 プリンタヘッド
4 発熱素子
5 印刷部
6 金属部分
7 アンテナ部
10 サーマルヘッドプリンタ
11 プリンタヘッド
11a 基板
12 印刷部
12a 発熱素子
13 アンテナ部
14 プラテン
15 搬送径路
16 用紙センサ
17 制御部
20 RFID用紙
20a RFID用紙
20b RFID用紙
21 ICチップ
22 アンテナ
23 インレット
30 剥離紙
P 印刷開始位置
W 情報交信位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送径路上を移送するアンテナおよびICチップからなるインレットを有するRFID用紙に、情報交信及び印刷を行うサーマルヘッドプリンタにおいて、
基板と、当該基板上に設けられ上記RFID用紙に印刷を行う発熱素子を備えた印刷部と、当該印刷部側の基板に設けられ、上記RFID用紙の印刷開始位置において、上記RFID用紙と情報交信するアンテナ部とを備えたプリンタヘッドと、
上記印刷開始位置にて上記アンテナ部と対峙する上記インレットを配置したRFID用紙と、を備えて構成したことを特徴とするサーマルヘッドプリンタ。
【請求項2】
上記アンテナ部は、上記印刷部に隣接配置したことを特徴とする請求項1記載のサーマルヘッドプリンタ。
【請求項3】
上記プリンタヘッドは、上記印刷部を下方に傾斜させて配置したことを特徴とする請求項2記載のサーマルヘッドプリンタ。
【請求項4】
上記アンテナ部は、上記印刷部より上記搬送径路上流側最短2mm〜4mm隔離して配置したことを特徴とする請求項2または3記載のサーマルヘッドプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−107278(P2009−107278A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283776(P2007−283776)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(307010993)株式会社サトー知識財産研究所 (588)
【出願人】(000130581)株式会社サトー (1,153)
【Fターム(参考)】