説明

シクロジペプチド合成酵素及びシクロ(Leu−Leu)シクロジペプチドの合成のためのその使用

シクロジペプチドの合成に関与する単離された、天然の、又は合成のポリヌクレオチド及び該ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド、該ポリヌクレオチド又は任意の実質的に相同なポリヌクレオチドを含む組換えベクター、該ポリヌクレオチド又は該組換えベクターで改変された宿主細胞、並びにシクロ(Leu-Leu)シクロジペプチド及びその誘導体のインビトロ及びインビボでの合成方法、並びにそれらの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロジペプチドの合成に関わる、単離された、天然の又は合成のポリヌクレオチド及び該ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド、該ポリヌクレオチド又はいずれの実質的に相同なポリヌクレオチドを含む組換えベクター、該ポリヌクレオチド又は組換えベクターで改変された宿主細胞、並びにシクロ(Leu-Leu)シクロジペプチド及びその誘導体をインビトロ又はインビボで合成する方法に関する。
【0002】
本発明の目的のために、用語「ジケトピペラジン誘導体」又は「DKP」又は「2,5-DKP」又は「環状ジペプチド」又は「シクロジペプチド」又は「環状ジアミノ酸」の用語は、ジケトピペラジン(ピペラジン-2,5-ジオン又は2,5-ジオキソピペラジン)環を有する分子を意味することを意図する。α,β-脱水素されたシクロジペプチド誘導体の具体的な場合は、置換基R1及びR2は、α,β-不飽和アミノアシル側鎖である(図1)。このような誘導体は、以下、「Δ」誘導体という。
【背景技術】
【0003】
DKP誘導体は、細菌、酵母、糸状菌及び苔蘚のような多くの生物により天然に生成される、増加している化合物のファミリーを構成する。他にも海綿及びヒトデのような海洋生物から単離されている。これらの誘導体の例であるシクロ(L-His-L-Pro)は、哺乳動物に存在することが示されている。
【0004】
DKP誘導体は、単純なシクロジペプチドからさらにより複雑な構造まで、非常に多様な構造を有する。単純なシクロジペプチドは、DKP誘導体のわずかな部分のみを構成し、この大部分は、主環及び/又は側鎖が多くの修飾:炭素ベース、ヒドロキシ、ニトロ、エポキシ、アセチル又はメトキシ基の導入、及びジスルフィド架橋又は複素環の形成を含む、より複雑な構造を有する。2つの炭素間の二重結合の形成も非常に多い。海洋起源のある誘導体はハロゲン原子を含んでいる。
【0005】
有用な生物学的特性が、いくつかのDKP誘導体について既に示されている。ビシクロマイシン(Bicozamine (商標))は、子牛及びブタで下痢を予防するための食品添加物として用いられる抗菌剤である(Magyarら, J. Biol. Chem, 1999, 274, 7316〜7324)。グリオトキシンは、組織拒絶の原因である免疫細胞の選択的エクスビボ除去のために評価された免疫抑制特性を有する(Waringら, Gen. Pharmacol., 1996, 27, 1311〜1316)。アンベウェルアミド(ambewelamides)、バーティシリン(verticillin)及びフェニラヒスチン(phenylahistin)のようないくつかの化合物は、種々の機構を伴う抗腫瘍活性を示す(Chuら, J. Antibiot. (Tokyo), 1995, 48, 1440〜1445 ; Kanohら, J. Antibiot. (Tokyo), 1999, 52, 134〜141; Williamsら, Tetrahedron Lett., 1998, 39, 9579〜9582)。
【0006】
ストレプトミセス・ノウルセイ(Streptomyces noursei)により生成されるアルボノウルシン(albonoursin)のようなその他の多くものが、抗菌活性を示す(Fukushimaら, J. Antibiot. (Tokyo), 1973, 26, 175〜176)。シクロ(Tyr-Tyr)及びシクロ(Tyr-Phe)は、心臓作用薬の可能性があることが示された:シクロ(Tyr-Tyr)は強心薬の可能性があり、シクロ(Tyr-Phe)は心臓抑制剤である(Kilianら, Pharmazie, 2005, 60, 305〜309)。これらの2つのシクロジペプチドは、受容体相互作用剤としても試験され、2つの化合物が、オピオイド受容体への著しい結合を示すことが見出された(Kilianら, 2005, 既出)。さらに、これらは、抗腫瘍薬としても評価され、シクロ(Tyr-Phe)は、3つの異なる培養株化細胞の成長阻害を誘導することが示された(Kilianら, 2005, 既出)。シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)により生成されるシクロ(ΔAla-L-Val)が、細菌間伝達シグナルに関与し得ることが記載されている(Holdenら, Mol. Microbiol., 1999, 33, 1254〜1266)。他の化合物は、病原性微生物の毒性に関与するか、又は鉄に結合するか、又は神経生物学的特性を有すると記載されている(Kingら, J. Agr. Food Chem., 1992, 40, 834〜837; Sammes, Fortschritte der Chemie Organischer Naturstoffe, 1975, 32, 51〜118; Alvarezら, J. Antibiot., 1994, 47, 1195〜1201)。
【0007】
既知のDKPの数は着実に増加しているが、これらの化合物の生合成経路は、いまだにほとんど探索されておらず、これらの合成についてほとんど知識が得られていないこととなっている。
【0008】
現在までに報告されているいくつかの件において、DKPの合成は、直線状ジペプチドから自発的に生じ、これについては、N-アルキル化アミノ酸又はプロリン残基の存在下ではペプチド結合のシス立体配置が好ましい。このような自発的環化は、ペプチド合成酵素メガ複合体上でのペプチド伸長の間のチオエステル結合の不安定さのために、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)におけるグラミシジンS及びチロシジンAの非リボソームペプチド合成の経過においても観察されている(Schwarzerら, Chem. Biol, 2001, 8, 997〜1010)。つまり、自発的DKP形成の既知の機構のすべてにおいて、前駆体ジペプチドの1次構造、特にそのペプチド結合の立体配置は、DKP環の形成が起こるため、及び最終的なDKP誘導体の生成をもたらす手順のための基本的な要件であるようである。
【0009】
しかし、このような自発的環化反応は、プロリン残基又はN-アルキル化残基を含まないDKP誘導体の大多数の生合成を説明できない。
【0010】
DKP誘導体の既知の製造方法は、化学合成、天然の製造者である生物からの抽出及び酵素的な方法を含む:
- 化学的な方法は、DKP誘導体を合成するために用いることができるが(Fischer, J. Pept. Sci., 2003, 9, 9〜35)、これらは、保護されたアミノアシル前駆体の使用をしばしば必要とし、かつ立体化学的な完全性の損失を導くので、費用及び効率の点で不利であるとみなされている。さらに、これらは、大量の有機溶媒などを使用するので、環境に優しい方法ではない。
【0011】
- 天然の製造者である生物からの抽出は、用いることができるが、天然生成物中の所望のDKP誘導体の含量がしばしば低いので、生産性は低いままである。
【0012】
- 酵素的な方法、すなわちインビボ(例えばシクロジペプチドを合成する酵素を発現する微生物の培養、又は培養培地から単離した微生物細胞)、又はインビトロ(例えば精製されたシクロジペプチドを合成する酵素)のいずれかで酵素を用いる方法を、用いることができる。シクロジペプチドを生成することが知られている酵素は、非リボソームペプチド合成酵素(以下、NRPSという) (Gruenewaldら, Appl. Environ. Microbiol., 2004, 70, 3282〜3291)、及びシクロジペプチド合成酵素(CDS)であるAlbCである(Lautruら, Chem. Biol., 2002, 9, 1355〜1364; 国際出願WO 2004/000879号)。
【0013】
NRPSを用いる酵素的な方法は、特定のシクロジペプチドを生成することが既に報告されている。バチルス・ブレビスからのバイモジュラー複合体(TycA/TycB1)をコードする2つの遺伝子(Mootz及びMarahiel, J. Bacteriol., 1997, 179, 6843〜6850)を、大腸菌(Escherichia coli)において同時発現させ、シクロ(DPhe-Pro)の生成を上昇させた(Gruenewaldら, Appl. Environ. Microbiol., 2004, 70, 3282〜3291)。シクロジペプチドは安定であり、大腸菌に対して毒性でなく、培養培地中に分泌された。しかし、NRPSを用いる方法は、N-アルキル化残基を含むシクロジペプチドの生成に本質的に限定されているようである。実際に、DKP誘導体の形成は、直線状ジペプチドから自発的に生じ、これについては、プロリン残基(Walzelら, Chem. Biol., 1997, 4, 223〜230 ; Schwarzerら, Chem. Biol., 2001, 8, 997〜1010)、又はN-メチル化残基(Healyら, Mol. Microbiol., 2000, 38, 794〜804)の存在下ではペプチド結合のシス立体配置が好ましい。さらに、NRPSを利用する方法は、実行が困難である:NRPSは、大きいマルチモジュラー酵素複合体であり、これらは遺伝子的又は生化学的なレベルのいずれにおいても操作が容易でない。
【0014】
AlbCを利用する酵素的な方法も、特定のシクロジペプチドを生成すると記載されている。異種宿主であるストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans) TK21又は大腸菌によるストレプトミセス・ノウルセイからのAlbCの発現は、2つのシクロジペプチド、シクロ(Phe-Leu)及びシクロ(Phe-Phe)の生成を導き、これらは培養培地に分泌された(Lautruら, Chem. Biol., 2002, 9, 1355〜1364)。AlbCは、2つのアミノアシル誘導体の縮合を触媒して、N-アルキル化された残基を含むか又は含まないシクロジペプチドを、未知の機構により形成する。このことは、非リボソームペプチド合成酵素に関係しない特定の酵素がDKP誘導体の形成を触媒できることを明確に示している。AlbCは、DKPモチーフの形成に直接関与する酵素の最初の例である。
【0015】
さらに、得られたシクロ(Phe-Leu)シクロジペプチドは、天然の基質シクロ(L-Phe-L-Leu)から始まってまずシクロ(ΔPhe-L-Leu)に導き、最後にアルボノウルシンに相当するシクロ(ΔPhe-ΔLeu)まで導く2段階の連続反応でアルボノウルシンの形成を特異的に触媒する環状ジペプチドオキシダーゼ(CDO)の存在下で、ストレプトミセス・ノウルセイにより生成される抗生物質であるシクロ(α,β-デヒドロ-ジペプチド)、すなわちアルボノウルシン又はシクロ(ΔPhe-ΔLeu)に変換され得る(Gondryら, Eur. J. Biochem., 2001, 268, 1712〜1721)。上記のCDOは、種々のシクロジペプチドを、α,β-デヒドロジペプチドにも変換し得る(Gondryら, Eur. J. Biochem., 2001, 既出)。
【0016】
DKP誘導体は、種々の生物学的機能を示すので、新規な薬剤、食品添加物などの発見及び開発のために有用な物質である。よって、これらの化合物を大量に入手可能とできることは、必要である。
【0017】
ジケトピペラジン誘導体の天然の合成についての経路の理解は、製造者である生物における道理に基づいた遺伝的改良を可能にし、生成及び精製収率の最適化により、現存する合成手順の置き換え又は改良(化学的又は生物工学的経路により)についての展望を開くだろう。さらに、ジケトピペラジン誘導体の生合成経路に関わる酵素の性質及び/又は特異性の改変は、元来の分子構造と最適化された生物学的特性とを有する新規な誘導体の創出をもたらし得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、配列番号2、配列番号4、配列番号6及び配列番号8の配列の少なくとも1つのポリペプチドと、少なくとも34%の同一性又は少なくとも56%の類似性を有し、かつシクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドの特異的形成を触媒し得るシクロジペプチドを合成する新しい酵素(又はシクロジペプチド合成酵素、CDS)を今回同定した。
【0019】
本明細書において定義される配列同一性及び配列類似性のこれらのパーセンテージは、BLASTプログラムを用いて得られた(blast2seq、デフォルトパラメータ) (Tatutsova及びMadden, FEMS Microbiol Lett., 1999, 174, 247〜250)。
上記のパーセンテージは、表Vに示すような、配列番号2、配列番号4、配列番号6及び配列番号8の全長配列を互いに比較することにより導かれた。好ましくは、上記のパーセンテージは、表Vに記載するような上記の配列の長さのパーセンテージを表すオーバーラップに対してそれらを計算することにより導かれたものである。
【0020】
配列番号2のポリペプチドは、バチルス・サチリス亜種サチリス(Bacillus subtilis subsp. subtilis) 168株のポリペプチドYvmCsub (GenBankアクセッション番号CAB15512)に相当する。配列番号4のポリペプチドは、フォトルハブダス・ルミネセンス亜種ラウモンディイ(Photorhabdus luminescens subsp. laumondii) TTO1のポリペプチドPlu0297 (Genbankアクセッション番号Q7N9M5)に相当する。配列番号6の配列のポリペプチドは、バチルス・スリンジエンシス血清型イスラエレンシス(Bacillus thuringiensis serovar israelensis) 1884株のポリペプチドYvmCthuに相当し、バチルス・スリンジエンシス血清型イスラエレンシスATCC 35646のポリペプチドRBTH_07362 (Genbankアクセッション番号EAO57133)と、94%の同一性及び98%の類似性を有する。配列番号8のポリペプチドは、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis) ATCC 14580のポリペプチドYvmClic (Genbankアクセッション番号AAU25020)に相当する。異なるデータベースで入手可能な情報は、単離されておらず、その機能が同定されていない推定タンパク質に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
よって、本発明のある目的は、配列番号2、配列番号4、配列番号6及び配列番号8の配列の少なくとも1つのポリペプチドと、少なくとも34%の同一性又は少なくとも56%の類似性を有する酵素の、シクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドの合成のための使用である。
【0022】
好ましくは、上記のシクロジペプチド合成酵素は、配列番号2、配列番号4、配列番号6及び配列番号8の配列を有する少なくとも2つのポリペプチドと、さらにより好ましくは、配列番号2、配列番号4、配列番号6及び配列番号8の配列を有する3つのポリペプチドと、少なくとも60%の同一性又は少なくとも70%の類似性を有する。
有利には、上記のシクロジペプチド合成酵素は、配列番号2、配列番号6及び配列番号8の配列を有する3つのポリペプチドと、少なくとも60%の同一性又は70%の類似性を有する。
【0023】
好ましくは、上記のシクロジペプチド合成酵素は、配列番号2、配列番号4、配列番号6及び配列番号8の配列を有する少なくとも1つのポリペプチドと、少なくとも60%の同一性、より好ましくは少なくとも65%の同一性、又は少なくとも70%の類似性、好ましくは少なくとも75%の類似性を有する。
より好ましくは、上記のシクロジペプチド合成酵素は、これらの4つの配列の少なくとも1つと、少なくとも70%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも75%の同一性、又は少なくとも75%の類似性、さらにより好ましくは少なくとも80%の類似性を有する。
有利には、上記のシクロジペプチド合成酵素は、これらの4つの配列の少なくとも1つと、少なくとも80%の同一性、より有利には少なくとも85%の同一性、又は少なくとも85%の類似性を有する。
【0024】
上記のシクロジペプチド合成酵素が、配列番号2、配列番号4、配列番号6及び配列番号8の配列の少なくとも1つと、少なくとも90%の同一性又は少なくとも90%の類似性、さらにより好ましくは少なくとも95%の同一性又は少なくとも95%の類似性、有利には少なくとも98%の同一性又は類似性、さらにより有利には少なくとも99%の同一性又は類似性を有することが好ましい。
より好ましくは、上記の酵素は、配列番号2、配列番号4、配列番号6及び配列番号8の配列のポリペプチドからなる群より選択される。
【0025】
本発明の目的は、
- 2つのLeuアミノ酸からシクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドを生成する能力を有し、かつ
- 配列番号2、配列番号4、配列番号6及び配列番号8の配列のポリペプチドの少なくとも1つと、少なくとも34%の同一性又は少なくとも56%の類似性、好ましくは配列番号2、配列番号4、配列番号6及び配列番号8を有する配列のポリペプチドの少なくとも2つと、少なくとも60%の同一性又は少なくとも70%の類似性を有するポリペプチドを含む
ことを特徴とする、単離されたシクロジペプチド合成酵素でもある。
【0026】
上記の単離されたシクロジペプチド合成酵素は、配列番号2、配列番号4、配列番号6及び配列番号8の配列からなる群より選択されることが好ましい。
【0027】
本発明の別の目的は、
a) 上記で定義されるシクロジペプチド合成酵素をコードするポリヌクレオチド;
b) ポリヌクレオチドa)の相補ポリヌクレオチド;
c) ストリンジェントな条件下で、ポリヌクレオチドa)又はb)とハイブリッド形成するポリヌクレオチド
から選択されるポリヌクレオチドの、シクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドの合成のための使用である。
【0028】
有利には、上記のポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7の配列のポリヌクレオチドからなる群より選択される。配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7の配列のポリヌクレオチドは、それぞれ、配列番号2、配列番号4、配列番号6及び配列番号8の配列のポリペプチドをコードする。
【0029】
本明細書で用いる場合、用語「ハイブリッド形成する」は、ポリヌクレオチドが記載される核酸配列又はその一部分とハイブリッド形成する経過のことである。よって、上記の核酸配列は、RNA又はDNA調製物のそれぞれノザン又はサザンブロット分析においてプローブとして有用であり得るか、或いはそれらのそれぞれのサイズに応じて、PCR分析におけるオリゴヌクレオチドプライマーとして用い得る。好ましくは、上記のハイブリッド形成するポリヌクレオチドは、少なくとも10、より好ましくは少なくとも15ヌクレオチドを有し、プローブとして用いられる本発明のハイブリッド形成するポリヌクレオチドは、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、より好ましくは少なくとも500ヌクレオチドを含む。
【0030】
当該技術において、核酸分子を用いてどのようにしてハイブリッド形成実験を行うかは公知であり、すなわち、当業者は、本発明に従って、どのハイブリッド形成条件を用いなければならないかを知っている。このようなハイブリッド形成条件は、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, 第2版 1989及び第3版 2001; Gerhardtら; Methods for General and Molecular Bacteriology; ASM Press, 1994; Lefkovits; Immunology Methods Manual: The Comprehensive Sourcebook of Techniques; Academic Press, 1997; Golemis; Protein-Protein Interactions: A Molecular Cloning Manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2002のような標準的な参考書、及び当業者に知られる他の標準的な実験手引書又は上記で引用されるものに記載される。本発明に従って好ましいものは、ストリンジェントなハイブリッド形成条件である。
【0031】
「ストリンジェントなハイブリッド形成条件」とは、例えば、50%ホルムアミド、5×SSC (750 mM NaCl, 75 mMクエン酸ナトリウム)、50 mMリン酸ナトリウム(pH 7.6)、5×デンハルト溶液、10%硫酸デキストラン、及び20μg/ml変性断片化サケ精子DNAを含む溶液中で42℃にて一晩のインキュベーションと、それに続く例えば0.2×SSC中で約65℃でのフィルタの洗浄のことである。
【0032】
また、低ストリンジェンシーハイブリッド形成条件でハイブリッド形成する核酸分子も構想される。ハイブリッド形成及びシグナル検出のストリンジェンシーの変化は、ホルムアミド濃度;塩条件、又は温度の操作によりまず達成される。例えば、より低いストリンジェンシー条件は、6×SSPE (20×SSPE = 3 mol/l NaCl; 0.2 mol/l NaH2PO4; 0.02 mol/l EDTA, pH 7.4)、0.5% SDS、30%ホルムアミド、100μg/mlサケ精子ブロッキングDNAを含む溶液中で37℃にて一晩のインキュベーションと、それに続く1×SSPE、0.1% SDSで50℃での洗浄を含む。
【0033】
さらに、さらにより低いストリンジェンシーを達成するために、ストリンジェントなハイブリッド形成の後に行う洗浄を、より高い塩濃度(例えば5×SSC)で行うことができる。上記の条件の変動は、ハイブリッド形成実験におけるバックグラウンドを抑制するために用いられるブロッキング試薬の使用及び/又は別のブロッキング試薬への交換により達成し得る。典型的なブロッキング試薬は、デンハルト試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性サケ精子DNA、及び市販で入手可能な特許登録された処方を含む。
【0034】
本発明の別の目的は、
a) 上記で定義されるシクロジペプチド合成酵素をコードするポリヌクレオチド;
b) ポリヌクレオチドa)の相補ポリヌクレオチド;
c) ストリンジェントな条件下でポリヌクレオチドa)又はb)にハイブリッド形成するポリヌクレオチド
から選択される単離されたポリヌクレオチドである。
【0035】
有利には、上記の単離されたポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7の配列のポリヌクレオチドからなる群より選択される。
【0036】
上記の単離されたポリヌクレオチドは、DNAライブラリーから、特に、微生物のDNAライブラリーから得ることができる。例えば、配列番号1の配列を有するポリヌクレオチドは、バチルス・サチリスDNAライブラリーから得ることができ、配列番号3の配列を有するポリヌクレオチドは、フォトルハブダス・ルミネセンスDNAライブラリーから得ることができ、配列番号5の配列を有するポリヌクレオチドは、バチルス・スリンジエンシスDNAライブラリーから得ることができ、配列番号7の配列を有するポリヌクレオチドは、バチルス・リケニフォルミスDNAライブラリーから得ることができる。上記のポリヌクレオチドは、それぞれの微生物のトータルDNAに対して行うポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により得ることができるか、又は同じ微生物のトータルRNAに対して行うRT-PCRにより得ることもできる。
【0037】
本発明の別の目的は、上記で定義されるポリヌクレオチドを含むことを特徴とする組換えベクターである。
上記のベクターは、従来技術で知られるいずれのベクターであり得、発現ベクターが好ましい。本発明に従って用い得るベクターとしては、特に、プラスミド、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、放線菌類の組込み要素、ウイルス又はバクテリオファージが挙げられる。
【0038】
上記のベクターは、ベクターの複製及び/又はポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの発現のために要求される任意の調節配列(プロモーター、終結部位など)も含み得る。
【0039】
本発明の別の目的は、上記で定義されるポリヌクレオチド又は本発明の組換えベクターが導入された改変宿主細胞である。
このような改変宿主細胞は、原核生物又は真核生物を宿主として用いる任意の既知の異種発現系であり得、原核生物が好ましい。例えば、動物又は昆虫細胞、好ましくは微生物、特に大腸菌のような細菌が挙げられる。
【0040】
本発明によるポリヌクレオチド又は組換えベクターの、改変される宿主細胞への導入は、任意の既知の方法、例えばトランスフェクション、インフェクション、融合、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション又は遺伝子銃により行うことができる。
【0041】
本発明の別の目的は、本発明の組換えベクター又は改変宿主細胞の、シクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドの合成のための使用である。
【0042】
別の態様において、本発明は、
(1) ロイシンを、適切な条件下で、上記で定義されるシクロジペプチド合成酵素とインキュベートし、
(2) そのようにして得られたシクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドを回収する
工程を含むことを特徴とする、シクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドの合成方法に関する。
【0043】
用語「適切な条件」は、好ましくは、その条件下でアミノ酸とシクロジペプチド合成酵素とがインキュベートされて、適切な緩衝液中でシクロジペプチドの合成が可能になる適切な条件(濃度、pH、緩衝液、温度、反応時間など)を意味することを意図する。
アミノ酸及びシクロジペプチド合成酵素の適切な濃度の例は、次のとおりである:0.1 mMと100 mMの間、好ましくは1 mMと10 mMの間の濃度のロイシン;上記で定義されるシクロジペプチド合成酵素(例えば配列番号2、配列番号4、配列番号6及び配列番号8から選択される配列のポリペプチド)は、0.1 nMと100μMの間、好ましくは1μMと100μMの間の濃度である。
【0044】
適切な緩衝液の例は、可溶性原核細胞抽出液を補った150 mM NaCl、10 mM ATP、20 mM MgCl2を含む100 mM Tris-HClである。
適切なpHは、6と8の間の範囲であり、適切な温度は、20と40℃の間の範囲であり、適切な反応時間は、12と24時間の間の範囲である。
【0045】
よって、上記の方法を行う好ましい実施形態によると、工程(1)は、0.1 mMと100 mMの間の濃度、好ましくは1 mM〜10 mMの濃度のLeu、0.1 nMと100μMの間、好ましくは1μM〜100μMの濃度の上記で定義されるシクロジペプチド合成酵素の存在下で、6と8の間のpHで、かつシクロジペプチド合成酵素を生成しない大腸菌又はストレプトミセス細胞のような原核細胞の可溶性抽出物を含む緩衝液中で行われる。
【0046】
α,β-脱水素されたシクロ(Leu-Leu)シクロペプチド誘導体は、Gondryら(Eur. J. Biochem., 2001, 既出)又は国際PCT出願WO 2004/000879号に記載される方法に従って、上記のシクロジペプチドから得ることができる。
例えば、5 10-3単位の量のCDOを、上記の方法により用いられる緩衝液に加える。1単位のCDOは、標準アッセイ条件下で、1分あたりに1μmolのシクロ(ΔPhe-His)の形成を触媒する量として定義された(Gondryら, Eur. J. Biochem., 2001, 268, 4918〜4927)。
【0047】
よって、上記の方法の好ましい実施形態によると、該方法は、
(1') ロイシンを、適切な条件下で、上記で定義されるシクロジペプチド合成酵素及び精製されたCDOとインキュベートし、
(2') α,β-脱水素されたシクロペプチドを回収する
ことを含む。
【0048】
シクロ(Leu-Leu)シクロジペプチド、又はα,β-脱水素されたその誘導体の合成方法の別の好ましい実施形態によると、シクロジペプチド合成酵素の合成のための上記で定義されるポリヌクレオチドの使用からなる予備的工程(P)を、工程(1)の前に行う。
【0049】
シクロ(Leu-Leu)シクロジペプチド、又はα,β-脱水素されたその誘導体の合成方法は、任意の適切な生物学的な系、特に例えば微生物、例えば大腸菌又はストレプトミセス・リビダンスのような細菌において、或いは原核生物又は真核生物を宿主として用いる任意の既知の異種発現系、若しくはインビトロ無細胞系において行い得る。
【0050】
本発明の別の目的は、以下の
(1') 上記で定義されたようにして本発明の改変された宿主細胞を、該宿主細胞に適する培養条件下で培養し、
(2') 培養培地からシクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドを回収する
工程を含む、シクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドの製造方法である。
【0051】
α,β-脱水素されたシクロ(Leu-Leu)シクロジペプチド誘導体は、以下の条件下で、Gondryら(Eur. J. Biochem., 2001, 既出)又は国際PCT出願WO 2004/000879号に記載される方法に従って、シクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドから得ることができる:
(1') 上記で定義される改変された宿主細胞を、該宿主細胞に適する培養条件下で培養し、
(1'') 工程(1')から得られたシクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドを、精製されたCDOとインキュベートし、
(2'') α,β-脱水素されたシクロ(Leu-Leu)シクロジペプチド誘導体を、培養培地から回収する。
【0052】
CDOを用いる条件は、上記のものと同じである。
【0053】
シクロ(Leu-Leu)シクロジペプチド、又はα,β-脱水素されたその誘導体の回収は、液相抽出技術により、或いは沈殿、又は薄層若しくは液相クロマトグラフィー技術、特に逆相HPLC、又は当該技術において知られるペプチド精製に適する任意の方法により、合成から直接行うことができる。
【0054】
本発明の別の目的は、α,β-脱水素されたシクロ(Leu-Leu)誘導体:シクロ(ΔLeu-Leu)又はシクロ(ΔLeu-ΔLeu)でもある。
【0055】
上記の規定に加えて、本発明は、本発明の実施例及び添付の図面に言及する以下の記載から明らかになる他の規定も含む。添付の図面において:
- 図1(a)は、ピペラジン-2,5-ジオン環の構造を示す。シスアミド結合を太線で示す。図1(b)は、シクロ(Leu-Leu)の構造を示す。
- 図2は、発現ベクターpEXP-YvmCsubの構築のためのクローニングストラテジを示す。
【0056】
- 図3は、YvmCsub、YvmCthu又はYvmClicタンパク質を発現する大腸菌BL21 AI細胞の培養培地のHPLC分析を示す。
【化1】

で形質転換された細胞の培養上清を、RP-HPLCで分析した。クロマトグラムを、220 nmで記録した。
【0057】
- 図4は、Plu0297タンパク質を発現する大腸菌BL21 AI細胞の培養培地のHPLC分析を示す。
【化2】

で形質転換された細胞の培養上清を、RP-HPLCで分析した。クロマトグラムを、220 nmで記録した。
【0058】
- 図5は、ピークBsubの回収されたフラクションのMS (a)及びMSMS (b)スペクトルを示す。回収されたフラクションは、質量分析計に直接注入され、オンラインでフルスキャンMSを得た(図5a)。227.0±0.1でのメインのm/zピークを、親イオンとして分離し、娘イオンスペクトルを上昇させるMSMSフラグメンテーションに供した(図5b)。86.3での丸で囲んだピークm/zは、それぞれiLeu及びiIleとよぶロイシン又はイソロイシンのイミニウムイオンに一致する。
【0059】
- 図6は、ピークBthuの回収されたフラクションのMSスペクトル(a)及びMSnスペクトル(b)を示す。回収されたフラクションは、質量分析計に直接注入され、オンラインでフルスキャンMSを得た(図6a)。227.0±0.1でのメインのm/zピークを、親イオンとして分離し、娘イオンスペクトルを上昇させるMSMSフラグメンテーションに供した(図6b)。86.3での丸で囲んだピークm/zは、それぞれiLeu及びiIleとよぶロイシン又はイソロイシンのイミニウムイオンに一致する。
【0060】
- 図7は、ピークBlicの回収されたフラクションのMSスペクトル(a)及びMSnスペクトル(b)を示す。回収されたフラクションは、質量分析計に直接注入され、オンラインでフルスキャンMSを得た(図7a)。227.0±0.1でのメインのm/zピークを、親イオンとして分離し、娘イオンスペクトルを上昇させるMSMSフラグメンテーションに供した(図7b)。86.3での丸で囲んだピークm/zは、それぞれiLeu及びiIleとよぶロイシン又はイソロイシンのイミニウムイオンに一致する。
【0061】
- 図8は、ピークDの回収されたフラクションのMSスペクトル(a)及びMSnスペクトル(b)を示す。回収されたフラクションは、質量分析計に直接注入され、オンラインでフルスキャンMSを得た(図8a)。227.0±0.1でのメインのm/zピークを、親イオンとして分離し、娘イオンスペクトルを上昇させるMSMSフラグメンテーションに供した(図8b)。86.3での丸で囲んだピークm/zは、それぞれiLeu及びiIleとよぶロイシン又はイソロイシンのイミニウムイオンに一致する。
【0062】
- 図9は、YvmCsub様及びPlu0297酵素により生成されたシクロジペプチドの同定を示す。
【化3】

を発現する大腸菌BL21 AI細胞を、M9培地で成長させた。
【0063】
2つの培養上清を、次いで、RP-HPLCにより分析した。シクロジペプチドの標準物質:
【化4】

も分析した。クロマトグラムを220 nmにて記録した(左側の目盛りは標準物質のため、及び右側の目盛りはアッセイのためである)。
【実施例】
【0064】
以下の実施例は、本発明の主題の説明のためにのみ与えられ、限定を構成するものではないことが明確に理解されるべきである。
実施例1:YvmCsubタンパク質をコードする大腸菌発現ベクターの構築
バチルスからのYvmCのいくつかのホモログが研究されているので、これらのホモログを、バチルス・サチリス亜種サチリス168株からの1つについてYvmCsub、バチルス・リケニフォルミスATCC 14580からの1つについてYvmClic、及びバチルス・スリンジエンシス血清型イスラエレンシス1884からの1つについてYvmCthuと命名した。
【0065】
上記のタンパク質をコードする発現ベクターを、Gateway (商標)クローニング技術(Invitrogen)を用いて構築した。これらは、各タンパク質を、そのN-末端に(His)6タグ、attB組換え部位の翻訳配列(クローニングのために必要)及びTEVプロテアーゼ切断部位を有する細胞質融合タンパク質として発現するように設計された。
【0066】
YvmCsubタンパク質(アクセッション番号CAB15512)をコードする発現ベクターの構築のために用いたクローニングストラテジの全体を、図2に示す。まず、組換えクローニングに適し、かつYvmCsubタンパク質をコードするattBに挟まれたDNAを、3回の連続するPCRの後に得た。YvmCsub遺伝子を、表Iに示すプライマーA及びB、並びに鋳型として、そのゲノムが完全に配列決定されている(アクセッション番号AL009126)バチルス・サチリス亜種サチリス168株のゲノムDNAを用いて、1回目のPCRで増幅させた(図2におけるPCR 1)。PCR条件は、97℃にて4分間の1回の最初の変性工程、続いて94℃にて1分間、54℃にて1分間、72℃にて2分間を25サイクル、そして72℃にて10分間の1回の最終伸長工程であった。反応混合物(50μl)は、1μlの染色体DNA (25 ng/μl)、0.3μlの100μMの各プライマー溶液、5μlのMgSO4を含む10×Pfu DNAポリメラーゼ緩衝液(Pfu DNAポリメラーゼ供給業者により供給される)、0.1μlの各10 mMのdNTPミックス、及び1μlのPfu DNAポリメラーゼ(2.5 U/μl; Fermentas)を含んでいた。PCR産物(以下、「PCR産物1」という)を、次いで、1%アガロースゲルでの電気泳動の後に(16)、「GFX PCR DNA and Gel Band Purification」キット(Amersham Biosciences)を用いて精製した。2回目のPCR (図2におけるPCR 2)により、TEVプロテアーゼ切断部位をコードする配列を、PCR産物1の5'末端に、そしてattB2コード配列を3'末端に付加することが可能になった。PCR条件は、95℃にて5分間の1回の最初の変性工程、続いて95℃にて45秒間、50℃にて45秒間、72℃にて1.5分間を30サイクル、そして72℃にて10分間の1回の最終伸長工程であった。反応混合物(50μl)は、5 ngのPCR産物1、0.4μMの表1に示すプライマーC及びD、2.5単位のExpand High Fidelity Enzymeミックス(Roche)、1.5 mM MgCl2を含む1×Expand High Fidelity緩衝液(Roche)、及び200μMの各dNTPを含んでいた。1%アガロースゲルでの電気泳動及びQIAquick Gel Extractionキット(Qiagen)を用いる精製の後に、PCR産物(以下、「PCR産物2」という)を、3回目のPCRに用い(図2におけるPCR 3)、これにより、PCR産物2の5'末端にattB1コード配列を付加することが可能になった。PCRを、上記のようにして、鋳型として5 ngのPCR産物2、並びに0.4μMの表Iに記載するプライマーE及びDを用いて行った。得られたPCR産物(以下、「PCR産物3」という)を、上記のようにして精製した。
【0067】
次に、attBに挟まれたPCR産物3を、BP clonase (商標)反応においてpDONR (商標) 221ドナーベクター(Invitrogen)と再結合させて、エントリーベクターpENT-YvmCsubを得た。pENT-YvmCsubを、ABI PRISM 310 Genetic Analyzer (Applied Biosystem)、並びに表1に示すプライマーM13フォワード、M13リバース及びFを用いて、2つの組換え部位の間の配列を決定した。pENT-YvmCsub及び市販のデスティネーションベクターpDEST-17 (Invitrogen)を、LR clonase (商標)サブクローニング反応において用いて、供給業者の推奨に従って発現ベクターpEXP-YvmCsub (配列番号26)を得た。組換え混合物を、大腸菌DH5α化学的コンピテント細胞の形質転換に用いて、陽性クローンを、コロニーPCRによる分析の後で選択した。50μlの反応混合物は、鋳型としての少量のコロニー、200μMの各dNTP、0.2μMのプライマーM13フォワード及びM13リバース、1×ThermoPol反応緩衝液(New England Biolabs)、並びに1.25単位のTaq DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)を含んでいた。用いたPCR条件は、以下のとおりであった:95℃にて5分間の1回の最初の変性工程、続いて92℃にて30秒間、50℃にて30秒間、72℃にて2分間の30サイクル。プラスミドDNAを、Wizard DNA精製システム(Promega)を用いて陽性クローンから単離し、-20℃にて保存した。
【0068】
【表1】

【0069】
実施例2:Plu0297タンパク質をコードする大腸菌発現ベクターの構築
同じクローニングストラテジを用いて、Plu0297 (アクセッション番号Q7N9M5)をコードする発現ベクターを構築した。鋳型として、そのゲノムが配列決定されている(アクセッション番号BX470251)フォトルハブダス・ルミネセンス亜種ラウモンディイTTO1から単離したゲノムDNA、並びに表IIに示すプライマーA、B、C、D及びEを用いて、組換えクローニングに適するPCR産物を得た。次いで、pENT-Plu0297及びpEXP-Plu0297を、上記のようなBP clonase (商標)及びLR clonase (商標)との組換えの後に得た。pENT-Plu0297のDNA配列は、表Iに示すプライマーM13フォワード及びM13リバース、並びに表IIに示すプライマーFを用いることにより確認した。プラスミドpEXP-Plu0297 (配列番号27の配列)を、上記のようにしてコロニーPCR分析の後に得られた陽性クローンから単離した。
【0070】
【表2】

【0071】
実施例3:YvmCthu及びYvmClicタンパク質をコードする大腸菌発現ベクターの構築
バチルス・スリンジエンシス血清型イスラエレンシス1884からのYvmCthu及びバチルス・リケニフォルミスATCC 14580からのYvmClic (アクセッション番号AAU25020)をコードする発現ベクターを創出するために、YvmCsubについて用いたのとはわずかに異なるストラテジを用いた。1回目のPCR工程(図2におけるPCR1)を省略し、YvmCthu又はYvmClicをコードするDNAを、対応する染色体DNAから、表III及びIVにそれぞれ示すオリゴヌクレオチドC及びDを用いて直接増幅させた。YvmCthuについて、バチルス・スリンジエンシス・イスラエレンシス1884から単離された染色体DNAを、及びYvmClicについて、そのゲノムが完全に配列決定されている(アクセッション番号CP000002)バチルス・リケニフォルミスATCC 14580から単離された染色体DNAを用いた。対応するpENT及びpEXPベクター(pEXP-YvmCthuについて配列番号28の配列、及びpEXP-YvmClicについて配列番号29の配列)を、YvmCsub及びPlu0297について記載したようにして構築及び確認した。
【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【0074】
実施例4:シクロジペプチドの製造のための細菌培養
4つのタンパク質全て:YvmCsub、YvmCthu、YvmClic及びPlu0297の発現のために、同じ手順を用いた。細菌を、最少培地1リットル当たり1 mlのビタミン溶液及び2 mlの微量要素(oligoelements)溶液を補った最少M9培地(6 g/l Na2HPO4, 3 g/l KH2PO4, 0.5 g/l NaCl, 1 g/l NH4Cl, 1mM MgSO4, 0.1 mM CaCl2, 1μg/mlチアミン及び0.5%グルコースまたはグリセロール) (Sambrookら, (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, New York)中で成長させた。ビタミン溶液は、1.1 mg/lビオチン、1.1 mg/l葉酸、110 mg/l パラ-アミノ安息香酸、110 mg/lリボフラビン、220 mg/lパントテン酸、220 mg/lピリドキシン-HCl、220 mg/lチアミン及び220 mg/lナイアシンアミドを50%エタノール中に含む。微量要素溶液は、FeCl2含有溶液をH2Oで50倍に希釈することにより作製した。FeCl2含有溶液は、100 mlあたりに:8 ml濃HCl、5g FeCl2.4H2O、184 mg CaCl2.2H2O、64 mg H3BO3、40 mg MnCl2.4H2O、18 mg CoCl2.6H2O、4 mg CuCl2.2H2O、340 mg ZnCl2、605 mg Na2MoO4.2H2Oを含む。
【0075】
全ての経過は、標準的な大規模手法及び材料(例えばエルレンマイヤーフラスコ)を用いて行った。50μlの化学的コンピテントBL21AI細胞(Invitrogen)を、20 ngのプラスミドで、標準的な熱ショック手法を用いて形質転換した(Sambrookら, 上記)。SOC培地(Sambrookら, 上記)中で37℃にて1時間増殖させた後に、細菌を、200μg/mlのアンピシリン含有LBプレート上に広げた。いくつかのコロニーを採取して、0.5%グルコース及び200μg/mlアンピシリンを含むビタミン及び微量要素溶液を補ったM9液体培地に接種した。振とうしながら37℃にて一晩インキュベートした後に、500μlのスターター培養物を用いて、0.5%グリセロール及び200μg/mlアンピシリンを含むビタミン及び微量要素溶液を補った25 mlのM9最少培地に接種した。培養物を、37℃にて、OD600が約0.5になるまで成長させ、0.02% L-アラビノースを加えた。培養を、20℃にて24時間継続した。培養上清を、2,500 gにて20分間の遠心分離の後に回収して、-20℃に維持した。
【0076】
対照実験として、我々は、シクロジペプチドを合成する酵素を発現しないアンピシリン耐性遺伝子保有ベクターであるpQE60 (Qiagen)で形質転換したBL21AI細胞を用いた。上記のようにして、成長及び上清の回収を行った。
【0077】
実施例5:ペプチド配列の比較
タンパク質YvmCsub、YvmClic、YvmCthu及びPlu0297の配列を比較した。2つのプログラムを用いて、これらのタンパク質の互いの類似性/同一性を測定した。結果を表Vに示す。
【0078】
【表5】

【0079】
実施例6:HPLC分析による培養培地中のシクロジペプチドの検出及び精製
培養上清(200μl)を、濃トリフルオロ酢酸を用いてpH=3まで酸性化し、次いで、HPLCにより分析した。試料を、C18カラム(4.6×250 mm, Vydac)に装填し、0.1%トリフルオロ酢酸を含む0%から55%までのアセトニトリル/脱イオン水の60分間の直線勾配により溶出した(流速、1 ml/分)。溶出を、ダイオードアレイ検出器を用いて220と500 nmの間で監視した。
【0080】
実施例7:MS及びMSMS分析によるシクロジペプチド誘導体の同定
培養上清からのHPLC溶出画分(上記を参照)を回収し、直交型大気圧インターフェースエレクトロスプレーイオン化(AP-ESI)源(Bruker Daltonik GmbH, Germany)を備えるイオントラップ型質量分析計Esquire HCTを用いて、質量分析により分析した。試料は、シリンジポンプにより、3μl/分の流速で質量分析計に直接注入した。窒素は、乾燥及び霧化ガスとして用いられ、ヘリウムガスは、効率的なトラップ及びESIにより発生するイオンの冷却のため、並びにフラグメンテーションプロセスのためにイオントラップに導入された。イオン化は、9 psiに設定された霧化ガス、5μl/分に設定された乾燥ガス及び300℃に設定された乾燥温度でのポジティブモードで行った。イオン化及び質量分析の条件(キャピラリ高電圧、スキマー及びキャピラリ出口電圧、並びにイオン移動パラメータ)は、100と400 m/zの間のシクロジペプチド質量の範囲内の化合物の最適な検出のために設定された。MSMS実験のために、1マスユニットの分離幅を、親のイオンの選択のために用いた。フラグメンテーション振幅は、少なくとも90%の単離されたプリカーサーイオンがフラグメンテーションされるまで、同調させた。フルスキャンMS及びMSMSスペクトルを、EsquireControlソフトウェアを用いて獲得し、全てのデータを、DataAnalysisソフトウェアを用いて処理した。
【0081】
質量分析及びHPLC分析用の標準物質として、シクロジペプチドの異なる供給源を用いた。シクロジペプチドであるシクロ(Leu-Leu)及びシクロ(Phe-Leu)を、それぞれSigma及びBachemから得た。シクロ(Ile-Leu)及びシクロ(Ile-Ile)は、Jeediguntaら(Tetrahedron, 2000, 56, 3303〜3307)に記載されるようにしてそれぞれ化学合成した。
【0082】
実施例8:大腸菌細胞質でのYvmCsub、YvmCthu、YvmClic又はPlu0297の発現は、シクロジペプチドの合成を導く
バチルス・サチリスのYvmCsubをコードする遺伝子、バチルス・スリンジエンシス イスラエレンシス1884のYvmCthuをコードする遺伝子、バチルス・リケニフォルミスのYvmClicをコードする遺伝子、及びフォトルハブダス・ルミネセンスのPlu0297をコードする遺伝子を、それぞれ発現ベクターにクローニングし、大腸菌細胞質におけるそれらの発現を誘導し、インビボでのシクロジペプチド合成活性を調べた。まず、それぞれの場合において、そのN-末端配列が、対応する(His)6タグ付加タンパク質について予測されるものに対応するタンパク質の合成を観察した。次いで、シクロジペプチドの推定される形成を、YvmCsub、YvmCthu、YvmClic又はPlu0297を発現する大腸菌の培養上清を分析することにより調べた。
【0083】
YvmCsub、YvmCthu又はYvmClicを発現する大腸菌の3つの培養上清のHPLC分析により、3つの同様の220 nm-クロマトグラムが得られた。3つのクロマトグラムは、同じ3つの分離されたピークを示し、それぞれ以下において「ピークA」、「ピークB」及び「ピークC」というが、これらはこれらの遺伝子のいずれも発現しない対照細胞の培養上清では見いだされなかった(図3)。よって、これらの3つのピークは、その合成がYvmCsub、YvmCthu又はYvmClicの大腸菌での発現に直接関連する生成物の溶出に相当する。さらに、3つの220nm-クロマトグラムが類似していることは、バチルスからの3つのホモログが、同じ化合物を合成したことを示唆する。ピークA及びCは、本発明に関係しない化合物の溶出に対応していた。ピークBが、主要なピークであり、これらは、35.7分の保持時間により特徴付けられた。3つの上清のピークBは、質量分析によるさらなる分析のために回収された。
【0084】
Plu0297を発現する大腸菌細胞の培養上清のHPLC分析は、220 nmに分離ピークを1つだけ示し、これは興味対象の遺伝子の1つを発現しない対照細胞の培養上清では見いだされなかった(図4)。以下において「ピークD」とよぶこのピークは、その合成が大腸菌でのPlu0297の発現に直接関連する生成物の溶出に相当した。ピークDは、35.7分の保持時間により特徴づけられた。ピークDは、質量分析によるさらなる分析のために回収された。
【0085】
実施例9:ピークB及びDに存在する化合物の質量分析による特徴付け
これらの化合物の同定の第1工程は、それらの分子質量の決定である。MS分析を、より感度が高い検出のためのポジティブスキャンモードで行った。ピークBに相当する溶出されたフラクション(以下、YvmCsub上清の分析について「ピークBsub」、YvmCthu上清の分析について「ピークBthu」、YvmClic上清の分析について「ピークBlic」という)のMSスペクトルは、227.0±0.1の同じm/zを有する主要なピークを示した(図5a、6a、7a)。ピークDに相当する溶出されたフラクションのMSスペクトルも、227.0±0.1のm/zを有する主要なピークを示した(図8a)。我々は、このm/z値を、天然のシクロジペプチドの予測される質量の値と比較した(表VIに示す)。これは、4つの可能性のあるシクロジペプチド:シクロ(Leu-Leu)、シクロ(Ile-Ile)、シクロ(Leu-Ile)及びシクロ(Glu-Pro)と一致した。
【0086】
【表6】

【0087】
第2の工程において、MSMS実験を、これらの化合物の化学構造を明らかにするために行った。異なる市販又は手製の合成シクロジペプチドに対して既に実験され(データ示さず)、また、多くのところで出版されたシクロジペプチド娘イオンスペクトルで観察されるように(Chenら, Eur Food Research Technology, 2004, 218, 589〜597 ; Starkら, J Agric Food Chem, 2005, 53, 7222〜7231)、シクロジペプチド誘導体は、以下の特徴的なパターンにフラグメンテーションされる:(i) カルボニル基(C=O基の脱離による28 umaの損失)又はアミド基(CONH3に対応する45の損失)のいずれかの側でのジケトピペラジン環の開裂による連続的なニュートラルロス、及び(ii) アミノアシル残基の同定を可能にするいわゆるイミニウムイオン及びそれらの関連するイオンのm/zピークの存在(Roepstorffら, Biomed Mass Spectrom, 1984, 11, 601 ; Johnsonら, Anal. Chem, 1987, 59, 2621〜2625) (表VII)。
【0088】
【表7】

【0089】
「ピークBsub」、「ピークBthu」、「ピークBlic」及び「ピークD」フラクションは、次いで、親イオンとして227.0±0.1でのm/zピークを単離することにより、イオントラップ型質量分析計でのフラグメンテーションに供した。それぞれの娘イオンのスペクトルにおいて示されるように、化合物Bsub、Bthu、Blic及びDからの227.0±0.1でのm/zピークのMSMSフラグメンテーションは(それぞれ図5b、6b、7b及び8b)、28及び45のニュートラルロスを有するジケトピペラジン環のフラグメンテーションの特徴的なサインと、ロイシン残基又はその等質量化合物であるイソロイシンを原因とし得る86でのm/zピークとの両方を生成する。これらの結果により、HPLCフラクションBsub、Bthu、Blic及びDにおける主要なm/zピークを、シクロ(Leu-Leu)又はシクロ(Leu-Ile)又はシクロ(Ile-Ile)のいずれかのものとすることができた。
【0090】
実施例10:YvmCsub、YvmCthu、YvmClic及びPlu0297を発現する組換え大腸菌は、シクロ(Leu-Leu)を生成する
上記で観察されたように、質量分析は、イソロイシンを含むシクロジペプチドを、ロイシン残基を含むものから区別することができない。YvmCsub、YvmCthu、YvmClic及びPlu0297により合成された生成物の最終的な同定に導き得る違いを検出するために、3つの異なるシクロジペプチドであるシクロ(Leu-Leu)、シクロ(Leu-Ile)及びシクロ(Ile-Ile)のクロマトグラフィーでの挙動を確認した。これらの3つの参照化合物の220 nmでのHPLC分析は、シクロ(Ile-Ile)が最初に34.7分で、シクロ(Ile-Leu)が34.9分で、そして最後にシクロ(Leu-Leu)が35.7分で溶出されるように、これらが異なる保持時間を示すことを示した(図9)。YvmCsub及びPlu0297により生成されるシクロジペプチドを、次いで、HPLCにより分析した。220 nmでのクロマトグラムはYvmCsub及びPlu0297により生成され、かつ227.0±0.1のm/z値を特徴とする(図5a及び8a)シクロジペプチドが、35.7分付近の保持時間で溶出され、これはシクロ(Leu-Leu)のものと同様であることを示した(図9)。この結果は、参照シクロ(Leu-Leu)と、YvmCsub及びPlu0297を発現する細胞の培養上清とを同時に注入することにより確認された。よって、ピークBsub (図3及び4)及びピークD (図5)において溶出される化合物は、シクロ(Leu-Leu)に相当する。さらに、ピークBsubのものと同じ保持時間により特徴付けられるピークBthu、Blicも、対応する溶出された化合物はシクロ(Leu-Leu)である。
【0091】
よって、大腸菌でのYvmCsub、YvmCthu、YvmClic又はPlu0297酵素の発現は、培養培地で見出されるシクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドの合成を導き、このことは、Plu0297及び3つのYvmC様タンパク質が、大腸菌において活性な形で生成され得るシクロ(Leu-Leu)合成酵素であることを示す。
【0092】
実施例11:精製YvmCsubタンパク質によるシクロ(LEU-LEU)のインビトロ生成
精製YvmCsubタンパク質の生成
最少培地をLB培地に置き換えた以外は(Sambrookら, 上記)、実施例4に既に記載したようにして、YvmCsubタンパク質の生成のための細菌培養を行った。0.02%アラビノースを用いる誘導の後に、培養を20℃にて12時間継続した。細菌細胞を、4,000 gで20分間の遠心分離により採集し、-80℃にて凍結した。次いで、細菌細胞を融解し、100 mM Tris-HCl pH 8、150 mM NaCl及び5%グリセロールで構成される1.5 mlの抽出緩衝液に再懸濁した。細胞を、イートンプレスを用いて破砕し、20,000 gで4℃にて20分間遠心分離した。可溶性タンパク質を含む得られた上清を、100 mM Tris-HCl pH 8、150 mM NaClで構成される緩衝液で平衡化したNi2+カラム(AmershamからのHisTrap HP)に装填した。カラムを、同じ緩衝液で洗浄し、イミダゾールの直線勾配に付した(0〜1 Mのイミダゾール、pH 8)。YvmCsubタンパク質は、約250 mMのイミダゾールで溶出された。精製されたYvmCsubタンパク質を、次いで、洗浄し(イミダゾールを除去するため)、Vivaspin濃縮器(Vivascience)を用いて濃縮した。
【0093】
追加のために用いる可溶性細胞抽出物の調製
空のベクターpQE60 (Qiagen)で形質転換された細菌を、上記のようにして培養して破砕した。破砕した細胞を、20,000 gで4℃にて20分間遠心分離した。得られた上清は、シクロジペプチド合成酵素を含まない大腸菌細胞の可溶性抽出物に相当する。
【0094】
シクロ(Leu-Leu)のインビトロ生成
6.0 mM Phe、7.6 mM Leu、10 mM ATP、20 mM MgCl2及び25μMの精製YvmCsubタンパク質を含む215μlの反応混合物に、上記の可溶性細胞抽出物115μlを補った。この混合物を、30℃にて12時間インキュベートした。反応を、TFAの添加により停止し、20,000 gで20分間の遠心分離に付した。次いで、上清をHPLCにより分析し、HPLCで溶出されたフラクションを、実施例6及び7に記載されるようにして質量分析により特徴付けた。対照として、精製YvmCsubを除く以外は同様の条件下で同じ実験を行った。
【0095】
結果は、YvmCsubタンパク質を含むインキュベートされた混合物が、シクロ(Leu-Leu)を含む(図5に示すものと同様の質量の特徴を有する、35.7分の保持時間でHPLCから溶出されたフラクション)が、YvmCsubタンパク質を含まないインキュベートされた混合物は、シクロジペプチドを含まないことを明確に示す。このことは、シクロ(Leu-Leu)の形成を、精製シクロ(Leu-Leu)合成酵素を用いてインビトロで行うことができることを示す。
YvmCsubタンパク質について記載した手順を、YvmCthu、YvmClic及びPlu0297に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】(a)は、ピペラジン-2,5-ジオン環の構造を示す。(b)は、シクロ(Leu-Leu)の構造を示す。
【図2】発現ベクターpEXP-YvmCsubの構築のためのクローニングストラテジを示す。
【図3】vmCsub、YvmCthu又はYvmClicタンパク質を発現する大腸菌BL21 AI細胞の培養培地のHPLC分析を示す。
【図4】Plu0297タンパク質を発現する大腸菌BL21 AI細胞の培養培地のHPLC分析を示す。
【図5】ピークBsubの回収されたフラクションのMS (a)及びMSMS (b)スペクトルを示す。
【図6】ピークBthuの回収されたフラクションのMSスペクトル(a)及びMSnスペクトル(b)を示す。
【図7】ピークBlicの回収されたフラクションのMSスペクトル(a)及びMSnスペクトル(b)を示す。
【図8】ピークDの回収されたフラクションのMSスペクトル(a)及びMSnスペクトル(b)を示す。
【図9】YvmCsub様及びPlu0297酵素により生成されたシクロジペプチドの同定を示す。
【図1a】

【図1b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2、配列番号4、配列番号6及び配列番号8の配列の少なくとも1つのポリペプチドと、少なくとも34%の同一性又は少なくとも56%の類似性を有する酵素の、シクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドの合成のための使用。
【請求項2】
前記酵素が、配列番号2、配列番号4、配列番号6及び配列番号8の配列を有するポリペプチドの少なくとも1つと、少なくとも60%の同一性又は少なくとも70%の類似性を有する請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記酵素が、配列番号2、配列番号4、配列番号6及び配列番号8の配列のポリペプチドからなる群より選択される請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
- 2つのLeuアミノ酸からシクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドを生成する能力を有し、かつ
- 配列番号2、配列番号4、配列番号6及び配列番号8の配列の少なくとも1つのポリペプチドと、少なくとも34%の同一性又は少なくとも56%の類似性を有するポリペプチド配列を含む
ことを特徴とする、単離されたシクロジペプチド合成酵素。
【請求項5】
a) 請求項1〜3のいずれか1項で定義されるシクロジペプチド合成酵素をコードするポリヌクレオチド;
b) ポリヌクレオチドa)の相補ポリヌクレオチド;及び
c) ストリンジェントな条件下で、ポリヌクレオチドa)又はb)にハイブリッド形成するポリヌクレオチド
から選択されるポリヌクレオチドの、シクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドの合成のための使用。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7の配列のポリヌクレオチドからなる群より選択される請求項5に記載の使用。
【請求項7】
a) 請求項1〜4のいずれか1項で定義されるシクロジペプチド合成酵素をコードするポリヌクレオチド;
b) ポリヌクレオチドa)の相補ポリヌクレオチド;
c) ストリンジェントな条件下で、ポリヌクレオチドa)又はb)にハイブリッド形成するポリヌクレオチド
から選択される単離されたポリヌクレオチド。
【請求項8】
配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7の配列のポリヌクレオチドからなる群より選択されることを特徴とする請求項7に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項で定義されるポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
【請求項10】
請求項5〜8のいずれか1項で定義されるポリヌクレオチド又は請求項9に記載の組換えベクターを含む改変された宿主細胞。
【請求項11】
請求項9で定義される組換えベクターの、シクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドの合成のための使用。
【請求項12】
請求項10で定義される改変された宿主細胞の、シクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドの合成のための使用。
【請求項13】
(1) 適切な条件下で、ロイシンを、請求項1〜4のいずれか1項で定義される少なくとも1つのシクロジペプチド合成酵素とインキュベートし、
(2) そのようにして得られたシクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドを回収する
工程を含むことを特徴とする、シクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドの合成方法。
【請求項14】
(1') 適切な条件下で、ロイシンを、請求項1〜4のいずれか1項で定義されるシクロジペプチド合成酵素及び精製されたCDOとインキュベートし、
(2') α,β-脱水素されたシクロジペプチドを回収する
ことを含むことを特徴とする、α,β-脱水素されたシクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドの合成方法。
【請求項15】
工程(1)又は工程(1')が、0.1 mMと100 mMの間、好ましくは1 mM〜10 mMの濃度のLeu、0.1 mMと100μMの間、好ましくは1μM〜100μMの濃度の前記シクロジペプチド合成酵素の存在下に、シクロジペプチド合成酵素を生成しない大腸菌(E. coli)又はストレプトミセス細胞のような原核細胞の可溶性抽出物を含む6と8の間のpHの緩衝液中で行われる請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
工程(1)又は工程(1')の前又は同時に、前記シクロジペプチド合成酵素を合成するために請求項5〜8のいずれか1項で定義されるポリヌクレオチドを用いることからなる工程をさらに含むことを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
(1') 請求項10に記載の宿主細胞を、該宿主細胞に適する培養条件下で培養し、
(2') 培養培地からシクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドを回収する
工程を含むことを特徴とする、シクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドを製造する方法。
【請求項18】
以下の:
(1') 請求項10に記載の改変された宿主細胞を、該宿主細胞に適する培養条件下で培養し、
(1'') 工程(1')で得られたシクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドを、精製されたCDOとインキュベートし、
(2'') 培養培地から、α,β-脱水素されたシクロ(Leu-Leu)シクロジペプチド誘導体を回収する
工程を含むことを特徴とする、α,β-脱水素されたシクロ(Leu-Leu)シクロジペプチドの合成方法。
【請求項19】
α,β-脱水素されたシクロ(Leu-Leu)誘導体:シクロ(ΔLeu-Leu)又はシクロ(ΔLeu-ΔLeu)。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−534048(P2009−534048A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507185(P2009−507185)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001849
【国際公開番号】WO2007/122446
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(506315103)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【住所又は居所原語表記】25,rue Leblanc Immeuble(Le Ponant D),75015 PARIS,France
【出願人】(308032666)協和発酵バイオ株式会社 (41)
【出願人】(508318904)ユニベルシテ パリ サッド 11 (5)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS SUD 11
【住所又は居所原語表記】15 Rue Georges Clemenceau,F−91405 Cedex Orsay,France
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【Fターム(参考)】