説明

シクロヘキサンカルボキサミド誘導体および農園芸用殺菌剤

【課題】シクロヘキサンカルボキサミド誘導体及び各種植物病害に対して防除効果を示す農園芸用殺菌剤の提供。
【解決手段】下記一般式


[式(I)において、nは0〜5の整数を、X、Y、Zは各種置換基を、Aは硫黄又は酸素原子を示す。]で表されるシクロヘキサンカルボキサミド誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なシクロヘキサンカルボキサミド誘導体および農園芸用殺菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに本発明のシクロヘキサンカルボキサミド誘導体の類似化合物としては、下記に記載の一般式(II)〜(VI)で表わされる化合物などが知られている(特許文献1〜6参照)。
【0003】
これらの化合物は、各種植物病害に対して殺菌活性を有することが知られており、特にイネいもち病ならびにトマト、キュウリ、およびインゲンの灰色かび病に対して有用である。
【0004】
各種植物病害の中でもイネいもち病は重要病害の一つであり、これまでにも多くの殺菌剤が開発されている。しかしながら、茎葉散布による防除効果は有するものの、土壌処理(箱処理)および水面施用場面でも十分な防除効果を示す薬剤は少ないのが現状である。また薬剤によっては耐性菌の出現により防除効果の低下しているものもあり、従って、新規な化学構造を有する薬剤が強く望まれている。さらに、農家従事者の減少・高齢化が進む今日の情勢においては、予防・治療活性、浸透移行性、長期残効性などの特性を有した防除作業の軽減・省力化を促進する薬剤が望まれている。また農薬の本田での茎葉散布によるイネいもち病の防除は、薬剤の飛散による周辺環境への影響や使用者の安全が懸念されるため、安心できる防除方法ではない。そのため、消費者はもちろん、施用場面における使用者および周辺環境の安全性を確保するためにも、土壌処理(箱処理)および水面施用場面でも十分な防除効果を発揮できる薬剤が強く求められている。
【0005】
しかし、下記に記載した特許文献1〜6に記載の化合物はイネいもち病に対して茎葉散布による防除効果は有するものの、土壌処理(箱処理)効果および水面施用効果が弱いという欠点があった。
【0006】
【化2】

(式中、一般式(II)におけるR、XmおよびZnは特許文献1、2に従って定義され、一般式(III)におけるA、W、Xm、Yn、Zpは特許文献3に従って定義され、一般式(IV)におけるA、B、Xm、Yp、Zは特許文献4に従って定義され、一般式(V)におけるA、R、X、Ynは特許文献5に従って定義され、一般式(VI)におけるA、Wp、Xm、Yn、Zは特許文献6に従って定義される。)
【特許文献1】国際公開第02/88086号パンフレット
【特許文献2】特開2004−143045号公報
【特許文献3】国際公開第04/5261号パンフレット
【特許文献4】特開2004−115435号公報
【特許文献5】国際公開第04/39783号パンフレット
【特許文献6】特開2005−206517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような従来の欠点に鑑み、イネいもち病に対して求められる高い土壌処理効果および水面施用効果を有する、新規なシクロヘキサンカルボキサミド誘導体を提供すること、およびそれらの化合物を有効成分として使用する殺菌剤、特にイネいもち病防除剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の新規なシクロヘキサンカルボキサミド誘導体またはその塩が種々の植物病害に対して殺菌活性を有し、特にイネいもち病に対して優れた土壌処理効果および水面施用効果を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
したがって、本願の第1の発明は、下記一般式(I)で表される新規なシクロヘキサンカルボキサミド誘導体またはその塩に関するものである。
【化3】

一般式(I)において、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアシルオキシ基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、1もしくは2のアルキル基を有していてもよいアミノ基またはメルカプト基を示し、nは、0〜5の整数を示し、nが2以上のときは、それぞれのXは同一または相異なっていてもよく、Y、Zは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基を示し、Aは、硫黄原子または酸素原子を示す。
【0010】
本願の第2の発明は、上記の一般式(I)で表されるシクロヘキサンカルボキサミド誘導体またはその塩を含有することを特徴とする、農園芸用殺菌剤に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシクロヘキサンカルボキサミド誘導体またはその塩を農園芸用殺菌剤として用いると次のような効果が奏される。
第1に、本発明化合物は、キュウリ灰色カビ病、オオムギうどん粉病、コムギ赤さび病、イネいもち病などの植物病害に対し防除活性を示し、農園芸用殺菌剤として有用である。
第2に、本発明化合物は、土壌処理及び水面施用した場合でも稲体内への浸透移行性を示し、イネいもち病を土壌処理及び水面施用によっても防除できる。
第3に、本発明化合物は、特にいもち病に対して予防効果と治療効果を兼ね備えており、またその効果は長期残効性を示す。
第4に、本発明の農園芸用殺菌剤は、有用作物には薬害を与えることがなく、安心して使用できる。
したがって、本発明に係る化合物を有効成分として含有する農園芸用殺菌剤は、農園芸用作物の種々の病害に対して茎葉散布、土壌処理及び水面施用などにより使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る新規シクロヘキサンカルボキサミド誘導体、その製造方法並びにこれを有効成分として含有する農園芸用殺菌剤について、具体的に説明する。
【0013】
[シクロヘキサンカルボキサミド誘導体]
本発明のシクロヘキサンカルボキサミド誘導体は、前記一般式(I)で表される化合物である。本発明のシクロヘキサンカルボキサミド誘導体は各種の塩になることができる。例えば、塩酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、硝酸塩のような無機酸塩、または酢酸塩、メタンスルホン酸塩などの有機酸塩になり得る。
【0014】
以下において、前記一般式(I)におけるX、Y、ZおよびAで示される各置換基、並びにnについて説明する。ただし、前記一般式(I)におけるX、Y,ZおよびA、並びにnがここに示す例に限定されることはない。
【0015】
一般式(I)におけるXで示されるハロゲン原子としては、具体的にはフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子などを挙げることができる。好ましくはフッ素原子、塩素原子である。
【0016】
Xで示される炭素数1〜6のアルキル基としては、炭素数が1〜6の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を挙げることができる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、1−エチル−2−メチル−プロピル基、1−メチル−1−エチルプロピル基、1−メチル−2−エチルプロピル基、2−メチル−1−エチルプロピル基または2−メチル−2−エチルプロピル基などを挙げることができる。好ましくは、メチル基である。
【0017】
Xで示される炭素数1〜6のハロアルキル基とは、アルキル基中の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された、直鎖状または分岐鎖状のハロアルキル基を意味し、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。具体的には、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリクロロメチル基、2−フルオロエチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、1,1−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3−クロロプロピル基または3−ヨードプロピル基などを挙げることができる。好ましくは、トリフルオロメチル基である。
【0018】
Xで示される炭素数1〜6のアルコキシ基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、3−メチルブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基または3−エチルブトキシ基などを挙げることができる。好ましくは、メトキシ基である。
【0019】
Xで示される炭素数1〜6のハロアルコキシ基としては、アルコキシ基中の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された直鎖状または分岐鎖状のハロアルコキシ基を意味し、具体的には、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ペンタフルオロプロポキシ基、ペンタフルオロブトキシ基、ペンタフルオロペントキシ基などを挙げることができる。好ましくは、トリフルオロメトキシ基である。
【0020】
Xで示される炭素数1〜6のアシルオキシ基としては、具体的には、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、イソバレリルオキシ基またはピバロイル基などを挙げることができる。好ましくはアセトキシ基である。
【0021】
Xで示されるアミノ基は、無置換のアミノ基またはモノアルキルアミノ基もしくはジアルキルアミノ基などの置換アミノ基のいずれでもよい。
【0022】
Xで示されるモノアルキルアミノ基としては、アルキル部分が炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状アルキルであるアルキルアミノ基を挙げることができる。具体的にはメチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、s−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基またはn−ペンチルアミノ基などを挙げることができる。これらのうち、好ましくはメチルアミノ基である。
【0023】
Xで示されるジアルキルアミノ基としては、それぞれのアルキル部分が炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状アルキルであるジアルキルアミノ基をあげることができる。具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジn−ブチルアミノ基、エチルメチルアミノ基またはn−プロピルメチルアミノ基などを挙げることができる。これらのうち、好ましくはジメチルアミノ基である。
【0024】
一般式(I)において、置換基Xの置換数を示すnは、0〜5の整数を示し、好ましくは0または1である。なお、置換基Xが結合していないベンゼン環炭素には水素原子が結合していることはいうまでもない。
【0025】
一般式(I)において、Y、Zで示される炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を挙げることができる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、1−エチル−2−メチル−プロピル基、1−メチル−1−エチルプロピル基、1−メチル−2−エチルプロピル基、2−メチル−1−エチルプロピル基または2−メチル−2−エチルプロピル基などを挙げることができる。好ましくは、メチル基である。
【0026】
一般式(I)において、Y、Zで示される炭素数1〜6のアルコキシ基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基を挙げることができる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、3−メチルブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基または3−エチルブトキシ基などを挙げることができる。好ましくは、メトキシ基である。
【0027】
一般式(I)において、Y、Zは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基を示すが、このなかで、好ましくは、Y、Zがともに水素原子またはYが炭素数1〜6のアルコキシ基、Zが水素原子である。
【0028】
一般式(I)において、Aは、硫黄原子または酸素原子である。
【0029】
次に、一般式(I)で表される化合物の具体例を表1−1〜表1−10に示すが、本発明の化合物がここに例示された化合物に限定されることはない。
表1において、それぞれ「Me」はメチル基、「Et」はエチル基、「Pr」はプロピル基、「Bu」はブチル基を表す。
なお、表1中の化合物番号は、以下の表2、実施例、製剤例および試験例でも参照される。
【化5】

【0030】
【表1−1】

【0031】
【表1−2】

【0032】
【表1−3】

【0033】
【表1−4】

【0034】
【表1−5】

【0035】
【表1−6】

【0036】
【表1−7】

【0037】
【表1−8】

【0038】
【表1−9】

【0039】
【表1−10】

【0040】
次に、本発明のシクロヘキサンカルボキサミド誘導体の一部について、そのプロトンNMRデータを表2−1〜表2−2に示す。
なお、各化合物のH−NMRスペクトルデータは、標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)、溶媒として重クロロホルム(CDCl)を用い、日本電子データム(株)製JNM−LA300型核磁気共鳴装置により測定した。
【0041】
【表2−1】

【0042】
【表2−2】

【0043】
[本発明化合物の製造方法]
本発明に係る一般式(I)で表される化合物は、任意の方法により合成することができるが、特に好ましい一般的製造方法を下記する製造スキーム1および製造スキーム2に示す。
下記の一般式(IX)で表される化合物において、Aが硫黄原子である化合物は、文献既知化合物であって、例えばJ. Org. Chem.,34巻2号347項(1969年)に記載の方法で、チエノ[2,3‐b]ピリジンを得、次いでJournal of Heterocyclic Chemistry
7巻1号81項(1970年)に記載の方法に従って(IX)を合成し、利用することができるが、これらの方法に限定されない。
また、一般式(IX)において、Aが酸素原子である化合物は、文献既知化合物であって、例えばJournal of Heterocyclic Chemistry 3巻202項(1966年)に記載の方法で、5−ニトロ-フロ[2,3‐b]ピリジン‐2‐カルボン酸を得、次いでJournal of Heterocyclic Chemistry 8巻5号735項(1971年)に記載の方法に従って(IX)を合成し、利用することができるが、これらの方法に限定されない。
【0044】
【化6】

(式中、Xn、Y、ZおよびAは、それぞれ前記と同様であり、Halはハロゲン原子を表す。)
【0045】
製造スキーム1は、一般式(VII)で示されるシクロヘキサンカルボン酸誘導体をハロゲン化した一般式(VIII)で示される酸ハロゲン化物と、一般式(IX)で示されるアミンとを縮合させて、本発明化合物(I)を製造する方法である。
【0046】
(工程1−1)
一般式(VIII)で示される酸ハロゲン化物は、一般式(VII)で示されるシクロヘキサンカルボン酸誘導体を、ハロゲン化剤によってハロゲン化することにより製造することができる。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類などが挙げられる。ハロゲン化剤としてはオキサリルクロリド、塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リンなどが挙げられる。好適にはオキサリルクロリドが挙げられる。
この反応では、シクロヘキサンカルボン酸誘導体(VII)1モルに対して、ハロゲン化剤は通常1〜2モル、好ましくは1〜1.5モルの量で用いられる。この反応は、通常0〜100℃、好ましくは20〜80℃の温度範囲で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常1時間から6時間で完結することが多い。
【0047】
(工程1−2)
一般式(I)で示される本発明化合物は、塩基存在下、一般式(VIII)で示される酸ハロゲン化物と一般式(IX)で示されるアミンとを反応させることにより製造することができる。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類が挙げられ、場合によってはこれらの有機溶媒と水との混合溶媒として用いることもできる。
用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機塩基類、ピリジン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基類が挙げられる。
酸ハロゲン化物(VIII)の使用量は、アミン(IX)1モルに対して、通常1〜2モル、好ましくは1.05モルである。また、塩基は通常1〜5モル、好ましくは1〜2モルの量で用いられる。この反応は、通常0〜80℃、好ましくは0〜40℃の温度範囲で行われる。本反応の反応時間は、反応が終了する任意の時間としてもよい。反応が終了するとは、例えば溶媒中の原料の一方または両方が消費されることをいい、例えば薄層クロマトグラフィ−などによって確認できる。一般的には1時間〜24時間の範囲内である。
反応終了後、本発明化合物(I)は、たとえば本発明化合物(I)が含まれた反応溶液に、水と有機溶媒を加えて抽出後、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去することにより得られる。
得られた目的物は、必要ならば、さらにカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶などの操作によって精製することができる。
【0048】
【化7】

(式中、Xn、Y、ZおよびAは、それぞれ前記と同様である。)
【0049】
製造スキーム2は、塩基存在下、一般式(VII)で示されるシクロヘキサンカルボン酸誘導体と一般式(IX)で示されるアミンとを縮合剤により脱水縮合させて、本発明化合物(I)を製造する方法である。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素類、アセトニトリルなどのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類が挙げられる。
縮合剤としては、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物などが挙げられる。
用いられる塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンなどが挙げられる。
シクロヘキサンカルボン酸誘導体(VII)の使用量は、アミン(IX)1モルに対して、1〜2モル、好ましくは、1.05モルである。
縮合剤の使用量は、シクロヘキサンカルボン酸誘導体(VII)1モルに対して、通常1〜2モル、好ましくは1〜1.1モルであり、塩基は通常1〜4モル、好ましくは1〜2モルの量で用いられる。この反応は、通常0〜80℃、好ましくは0〜40℃の温度範囲で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常1時間から24時間で完結することが多い。反応終了後、本発明化合物(I)は、本発明化合物(I)が含まれた反応溶液に水と有機溶媒を加えて抽出後、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去することにより得られる。得られた目的物(I)は、必要ならば、さらにカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶などの操作によって精製することができる。
【0050】
次に本発明化合物の製造中間体である一般式(VII)で示されるシクロヘキサンカルボン酸誘導体の代表的な製造方法を下記する製造スキーム3に示す。
【0051】
【化8】

(式中、Xn、Y、ZおよびHalは、前記と同様である。Pは、炭素数1〜6のアルキル基を表し、具体的にはメチル基、エチル基などが挙げられる。Qは、炭素数1〜6のアルキル基を表し、具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基などが挙げられる。Rは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、具体的にはメチル基などが挙げられる。)
【0052】
(工程3−1)
Yが水素原子または炭素数1〜6のアルキル基で、Zが水素原子を示す場合の一般式(XII)で示される化合物(例えば、(Y,Z)=(H,H),(Me,H),(Et,H),(iPr,H)などを示す。)は、一般式(X)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステルと一般式(XI)で示されるベンジルハライドとを塩基存在下反応させることにより製造することができる。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類が挙げられる。
用いられる塩基としては、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類、ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラザンなどの有機金属類が挙げられる。
ベンジルハライド(XI)の使用量は、シクロヘキサンカルボン酸エステル(X)1モルに対して、1〜1.5モルで、好ましくは1〜1.2モルである。塩基の使用量は1〜10モルで、好ましくは1.1〜5モルの量で用いられる。
この反応は、通常−70〜80℃、好ましくは−70〜40℃の温度範囲で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常10分から24時間で完結することが多い。反応終了後、化合物(XII)は、化合物(XII)が含まれた反応溶液に水と有機溶媒を加えて抽出後、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去することにより得られる。得られた目的物(XII)は、必要ならば、さらにカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶などの操作によって精製することもがきる。
本工程で使用される化合物(X)は公知化合物である。
本工程で使用される化合物(XI)は公知化合物であるか、または公知の方法、例えば、J. Am. Chem.
Soc., 110巻8153貢(1988年)、J. Org. Chem., 58巻964貢(1993年)に記載の方法で合成することができる。
【0053】
(工程3−2及び3−3)
Yが炭素数1〜6のアルコキシ基で、Zが水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す場合の一般式(XII)で示される化合物(例えば、(Y,Z)=(OMe,H),(OMe,Me),(OEt,H),(OMe,Me),(OiPr,H),(OiPr,Me)などを示す。)は、一般式(X)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステルをシリルエノール化した一般式(XIII)で示される化合物と、一般式(XIV)で示されるアセタールとをルイス酸存在下反応させることにより製造することができる。下記に、工程3−2と工程3−3をそれぞれ具体的に示す。
【0054】
(工程3−2)
一般式(XIII)で示される化合物は、一般式(X)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステルとトリメチルシリルクロリドとを、塩基存在下反応させることにより製造することができる。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類が挙げられる。
用いられる塩基としては、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類、ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラザンなどの有機金属類が挙げられる。
トリメチルシリルクロリド(TMSCl)の使用量は、シクロヘキサンカルボン酸エステル(X)1モルに対して、1〜2.0モルで、好ましくは2.0モルである。塩基の使用量は1〜10モルで、好ましくは1.1〜5モルの量で用いられる。
この反応は、通常−70〜80℃、好ましくは−70〜40℃の温度範囲で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常10分から24時間で完結することが多い。反応終了後、化合物(XIII)は、化合物(XIII)が含まれた反応溶液に水と有機溶媒を加えて抽出後、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去することにより得られる。得られた目的物(XIII)は、通常精製することなく次の工程に用いることができる。
【0055】
(工程3−3)
Yが炭素数1〜6のアルコキシ基で、Zが水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す場合の一般式(XII)で示される化合物は、一般式(XIII)で示されるシリルエノールエーテルと一般式(XIV)で示されるアセタールとをルイス酸存在下反応させることにより製造することができる。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルムなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフランなどのエーテル類が挙げられ、好ましくはジクロロメタンが挙げられる。
用いられるルイス酸としては、塩化亜鉛、四塩化チタン、塩化アルミニウム、テトラフルオロホウ酸などが挙げられ、好ましくは塩化亜鉛が挙げられる。
アセタール(XIV)の使用量は、シリルエノールエーテル(XIII)1モルに対して、1.0〜2.0モルで、好ましくは1.0〜1.5モルの量で用いられる。ルイス酸の使用量は0.01〜0.2モルで、好ましくは、0.01〜0.1モルの量で用いられる。
この反応は、通常−20〜150℃、好ましくは−10〜40℃の温度範囲で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常10分から24時間で完結することが多い。反応終了後、化合物(XIV)は、化合物(XIV)が含まれた反応溶液に水と有機溶媒を加えて抽出後、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去することにより得られる。得られた目的物(XIV)は、必要ならば、さらにカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶などの操作によって精製することができる。
本工程で使用される化合物(XIV)は公知化合物であるか、または公知の方法、例えば、Synth. Commun.,7巻409貢(1977年)、J. Org.Chem.,60巻7334貢(1995年)に記載の方法で合成することができる。
【0056】
(工程3−4)
シクロヘキサンカルボン酸誘導体(VII)は、一般式(XII)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体を、塩基存在下で加水分解することにより容易に得られる。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、水と、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシドなどとの混合物溶媒などが挙げられる。
用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、もしくはカリウムt−ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類が挙げられる。
塩基の使用量はシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体1モルに対して、1〜3モル、好ましくは1〜2モルの量で用いられる。反応は、通常10〜100℃、好ましくは20〜60℃の温度範囲で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常1時間から6時間で完結することが多い。
反応終了後、シクロヘキサンカルボン酸誘導体(VII)は、化合物(VII)を含む反応溶液に水を加えたのち、塩酸、硫酸などを加えて酸性とし、ジエチルエーテル、トルエン、酢酸エチルなどの抽出用溶媒により抽出後、水および飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去することにより得られる。
一般式(VII)で表される化合物は、必要に応じて、融点、赤外線吸収スペクトル、H−NMRスペクトル、13C−NMRスペクトル、質量分析、X線構造解析などによって分析し、確認、同定することができる。
【0057】
本発明に係る一般式(I)で表される化合物の、より具体的な製造例を後述の実施例1〜4に示す。
【0058】
[本発明の農園芸用殺菌剤]
本発明に係る一般式(I)で表される化合物は、広範囲の種類の糸状菌、例えば、ネコブカビ類(Plasmodiophoromycetes)、藻菌類(Oomycetes)、子のう(嚢)菌類(Ascomycetes)、不完全菌類(Deuteromycetes)、担子菌類(Basidiomycetes)に属する菌に対し、低薬量で防除することができ、例えば農園芸用の殺菌性組成物として有用である。
【0059】
本発明により防除することのできる植物病害として具体的に挙げれば、例えば、イネのいもち病(Pyricularia grisea)、ごま葉枯病(Cochliobolus
miyabeanus)、紋枯病(Thanatephorus cucumeris、ばか苗病(Gibberella fujikuroi)、苗立枯病(Fusarium 菌、Rhizopus菌、Pythium菌、Trichoderma
viride)、稲こうじ病(Claviceps virens)、ムギ類の赤かび病(Gibberella zeae、Fusarium avenaceum、Fusarium culmorum、Monographella nivale)、雪腐病(Pythium菌、Typhula菌、Monographella
nivalis、Myriosclerotinia borealis)、裸黒穂病(Ustilago nuda)、なまぐさ黒穂病(Tilletia
controversa)、眼紋病(Pseudocercosporella herpotrichoides)、葉枯病(Septoria tritici)、ふ枯病(Phaeosphaeria
nodorum)、カンキツ類の黒点病(Diaporthe citri)、小黒点病(Diaporthe medusa, Alternaria citri)、そうか病(Elsinoe
fawcettii)、褐色腐敗病(Phytophthora citrophthra)、緑かび病(Penicillium digitatum)、青かび病(Penicillium
italicum)、リンゴのモニリア病(Monilinia mali)、黒星病(Venturia inaequalis)、斑点落葉病(Alternaria mali)、黒点病(Mycosphaerella pomi)、すす斑病(Gloeodes
pomigena)、すす点病(Zygophiala jamaicensis)、輪紋病(Botryosphaeria berengeriana)、褐斑病(Diplocarpon
mali)、赤星病(Gymnosporangium yamadae)、腐らん病(Valsa ceratosperma)、ナシの黒星病(Venturia
nashicola)、赤星病(Gymnosporangium asiaticum)、輪紋病(Botryosphaeria berengeriana)、胴枯病(Phomopsis
fukushii)、モモの縮葉病(Taphrina deformans)、灰星病(Monilinia fructicola、 Monilinia fructigena)、黒星病(Cladosporium carpophilum)、ホモプシス腐敗病(Phomopsis)、オウトウの灰星病(Monilinia fructicola 、Monilinia fructigena)、幼果菌核病(Monilinia kusanoi)、ウメの黒星病(Cladosporium
carpophilum)、ブドウの黒とう病(Elsinoe ampelina)、晩腐病(Colletotrichum acutatum、Glomerella
cingulata)、褐斑病(Pseudocercospora vitis)、つる割病(Phomopsis viticola)カキの角斑落葉病(Cercospora
kaki)、円星落葉病(Mycosphaerella nawae)、チヤの輪斑病(Pestalotiopsis longiseta、Pestalotiopsis
theae)、褐色円星病(Pseudocercospora ocellata、Cercospora chaae)、もち病(Exobasidium vexans)、網もち病(Exobasidium reticulatum)、ウリ類のつる枯病(Mycosphaerella
melonis)、つる割病(Fusarium oxysporum)、黒星病(Cladosporium cucumerinum)、褐斑病(Corynespora
cassiicola)、トマトの葉かび病(Fulvia fulva)、輪紋病(Alternaria solani)、ナスの褐紋病(Phomopsis vexans)、すすかび病(Mycovellosiella nattrassii)、アブラナ科野菜の白さび病(Albugo
macrospora)、白斑病(Cercosporella brassicae、Pseudocercosporella capsellae)、タマネギの灰色腐敗病(Botrytis
allii)、イチゴのじゃのめ病(Mycosphaerella fragariae)、ジャガイモの夏疫病(Alternaria solani)、ダイズの茎疫病(Phytophthora
sojae)、紫斑病( Cercospora kikuchii)、アズキの茎疫病(Phytophthora vignae)、ラッカセイの褐斑病(Mycosphaerella
arachidis)、テンサイの褐斑病(Cercospora beticola)、葉腐病(Thanatephorus cucumeris)、シバのカーブラリア葉枯病(Curvularia菌)、ダラースポット病(Sclerotinia homoeocarpa)、ヘルミントスポリウム葉枯病(Cochliobolus菌)、バラの黒星病(Diplocarpon rosae)、キクの白さび病(Puccinia
horiana)、および各種作物のべと病(Peronospora菌、Pseudoperonospora菌、Plasmopara菌、Bremia菌)、疫病(Phytophthora菌)、うどんこ病(Erysiphe菌、Blumeria菌、Sphaerotheca菌、Podosphaerea菌、Phyllactinia菌、Uncinula菌、Oidiopsis菌)、さび病(Puccinia菌、Uromyces菌、Physopella菌)、炭疽病(Glomerella菌、 Colletotrichum菌、Gloeosporium菌)、黒斑病(Alternaria菌)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、白紋羽病(Rosellinia
necatrix)、紫紋羽病(Helicobasidium mompa)、白絹病(Sclerotium rolfsii)、その他各種土壌病害(Fusarium菌、Rhizoctonia菌、Pythium菌、Aphanomyces菌、Phoma菌、Verticillium菌、Plasmodiophora brassicaeなど)
などの病害を挙げることができる。
【0060】
本発明に係る一般式(I)で表されるシクロヘキサンカルボキサミド誘導体は、殺菌活性を示す。したがって、一般式(I)で表される化合物を含む組成物を殺菌剤として使用することができる。特に、一般式(I)で表される化合物を活性成分として含む組成物を、農園芸用殺菌剤として用いることができる。
【0061】
本発明に係る一般式(I)で表される化合物を活性成分として含む農園芸用殺菌剤の組成は、活性成分として一般式(I)で表される化合物を含む以外は、通常の農園芸用殺菌剤の組成としてもよい。通常の組成とは、たとえば、農薬製剤ガイド(1997編集:日本農薬学会施用法研究会、発行:社団法人日本植物防疫協会)に記載される。すなわち、一般式(I)で表される化合物、適当な担体、補助剤、界面活性剤、結合剤、および安定剤などを配合してもよい。
【0062】
本発明に係る一般式(I)で表される化合物を含む農園芸用殺菌剤の組成物は、農薬の剤型として一般に使用されている任意の剤型に製剤化することができる。たとえば、粉剤、粗粉剤、DL(ドリフトレス型)粉剤、フローダスト剤、微粒剤、細粒剤、粒剤、水和剤、顆粒水和剤、液剤、ゾル剤(フロアブル剤)、乳剤、および油剤などに製剤化することができるが、これらに限定されない。
【0063】
本発明に係る一般式(I)で表される化合物の含有量は、製剤の剤型、および使用方法により、適宜選択することができる。一般に好ましい含有量は、製剤全体量に対して0.1〜90重量%の範囲である。
【0064】
本発明の式(I)の活性化合物は、農薬として使用する場合には必要に応じて製剤時または散布時に、殺菌剤(殺かび剤、殺細菌剤、抗ウィルス剤、植物抵抗性誘導剤)、殺虫剤、殺ダニ剤、殺センチュウ剤、除草剤、鳥類忌避剤、生長調整剤、肥料及び/又は土壌改良剤等と混合、混用施用してもよい。
【0065】
本発明の式(I)の化合物等と混合、混用して使用できる代表例を以下に示すが、必ずしもこれらのみに限定されるものではない。
殺菌剤:
プロベナゾール(probenazole)、アシベンゾラール(acibenzolar)、チアジニル(tiadinil)、カルプロパミド(carpropamid)、ジクロシメット(diclocymet)、フェノキサニル(fenoxanil)、フサライド(phthalide)、ピロキロン(pyroquilon)、トリシクラゾール(tricyclazole)、アゾキシストロビン(azoxystrobin)、メトミノストロビン(metominostrobin)、オリザストロビン(oryzastrobin)、ブラストサイジン−S(blasticidin-S)、カスガマイシン(kasugamycin)、フェリムゾン(ferimzone)、イソプロチオラン(isoprothiolane)、イプロベンホス(iprobenfos)、ベノミル(benomyl)、チオファネート−メチル(thiophanate-methyl)、ペフラゾエート(pefurzoate)、イプコナゾール(ipconazole)、プロクロラズ(prochloraz)、トリフルミゾール(triflumizole)、フルジオキソニル(fludioxonil)、チラム(thiram)、
フルトラニル(flutolanil)、メプロニル(Mepronil)、チフルザミド(thifluzamide)、フラメトピル(furametpyr)、ペンシクロン(pencycuron)、ジクロメジン(diclomedine)、バリダマイシン(validamycin)、メタラキシル(metalaxyl)、ヒメキサゾール(hymexazol)、クルルタロニル(chlorothalonil)
【0066】
殺虫剤:
フィプロニル(fipronil)、ジノテフラン(dinotefuran)、イミダクロプリド(imidacloprid)、クロチアニジン(clothianidin)、チアクロプリド(thiaclopid)、チアメトキサム(thiamethoxam)、ニテンピラム(nitenpyram)、アセタミピリド(acetamipirid)、カルボスルファン(carbosulfan)、ベンフラカルブ(benfuracarb)、シラフルオフェン(silafluofen)、スピノサド(spinosad)、カルタップ(cartap)フェンチオン(fenthion)、フェニトロチオン(fenitrothion)、ブプロフェジン(buprofezin)、エトフェンプロックス(etofenprox)、フェノブカルブ(fenobucarb)、テブフェノジド(tebfenozide)、ベンスルタップ(bensultap)、アセフェート(acephate)、エチプロール(ethiprole)、ピメトロジン(pymetrozine)等。
【0067】
本発明に係る一般式(I)で表される化合物を活性成分として含む農園芸用殺菌剤は、一般の農園芸用殺菌剤が使用される方法と同様の方法で使用することができる。具体的には、水和剤、液剤、乳剤、ゾル剤(フロアブル剤)、顆粒水和剤、または油剤の場合は、水で50〜10、000倍に希釈して、一般に活性成分が1〜10、000ppmの濃度の液になるように調製し、この希釈液を、水稲や果樹など作物形態により異なるが、農耕地10アール当たり50〜1、000リットル、通常は、100〜600リットルの範囲で植物の病害発生部位の茎葉に散布しうる。
【0068】
また、液剤、乳剤、またはゾル剤(フロアブル剤)の場合は、水で希釈することなく、または50倍以内に希釈して、微量散布剤として10アール当たり、5〜5000mLの量を、主に空中散布することもできる。空中散布は、ヘリコプターなどを用いて実施される。
【0069】
また、粉剤、粗粒剤、DL粉剤、フローダスト剤、微粒剤、細粒剤、または粒剤の場合は、10アール当たり0.3〜5kgの剤(活性成分含有量は約5〜500g)を、植物の病害発生部位の茎葉、土壌表面、土壌中、または水面に施用してもよい。
【0070】
また、水稲などの育苗箱栽培においては、粒剤などを育苗箱(標準サイズ:30cm×60cm×5cm)当り10〜100gを、フロアブルなどは希釈せずにそのままあるいは希釈して、30〜1、000mlを、播種時前あるいは後、育苗期中の土壌表面に施用することができる。
【0071】
本発明に係る一般式(I)で表される化合物を農園芸用殺菌剤として製剤化する方法の具体例を、後述の実施例5〜9に示す。
【0072】
また本発明に係る一般式(I)で表される化合物を含む農園芸用殺菌剤の有用性、すなわち殺菌活性を後述の試験例1〜6により具体的に示す。
【0073】
以下、本発明を実施例、および試験例により具体的に説明するが、これらにより本発明の範囲が限定されるものではない。
【実施例1】
【0074】
1−(4−フルオロベンジル)−N−(5−[2,3−b]チエノピリジル)−シクロヘキサンカルボキサミド(化合物番号6)の製造
【化9】

【0075】
[製造スキーム3]
(工程3−1)
1−(4−フルオロベンジル)−1−シクロヘキサンカルボン酸メチルの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、テトラヒドロフラン20mlに溶解したジイソプロピルアミン0.392g(3.87mmol)を入れ、−70℃に冷却後、1.60mol/lのn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液2.42ml(3.87mmol)を加え、1時間攪拌した。これに、シクロヘキサンカルボン酸メチル0.500g(3.52mmol)を加え、1時間攪拌後、塩化(4−フルオロベンジル)0.509g(3.52mmol)を加え、−60℃で1時間攪拌した。
反応終了後、水20mlおよび酢酸エチル40mlを加えて抽出処理した。得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル; Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=65:1(容量比))により精製して、標記化合物0.775g(油状物、収率88%)を得た。
【0076】
(工程3−4)
1−(4−フルオロベンジル)−1−シクロヘキサンカルボン酸の合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、ジメチルスルホキシド20mlに溶解した1−(4−フルオロベンジル)−1−シクロヘキサンカルボン酸メチル0.775g(3.10mmol)、水2mlおよび水酸化カリウム0.522g(9.30mmol)を入れ、90℃で2時間攪拌した。
反応終了後、水20mlおよびジエチルエーテル20mlで洗浄後、1N塩酸水溶液で酸性とし、酢酸エチル40mlで抽出処理した。得られた酢酸エチル層を水20mlおよび飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去して、粗標記化合物0.689g(無色固体、粗収率94%)を得た。これは精製することなく次のステップで使用した。
【0077】
[製造スキーム1]
1−(4−フルオロベンジル)−N−(5−[2,3−b]チエノピリジル)−1−シクロヘキサンカルボキサミドの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、ジクロロメタン20mlに溶解した 1−(4−フルオロベンジル)−1−シクロヘキサンカルボン酸0.689g(2.92mmol)を入れ、0℃に冷却後、オキサリルクロリド0.408g(3.21mmol)および触媒量のN,N−ジメチルホルムアミドを加え、室温で攪拌した。1時間後、この反応液を減圧下で濃縮し、得られた残渣をジクロロメタン5mlに溶解した。次いで、この溶解液を別途用意したチエノ[2,3−b]ピリジン−5−アミン0.29g(1.95mmol)、トリエチルアミン0.592g(5.85mmol)およびジクロロメタン20mlの溶液中に加え、室温で24時間攪拌した。
反応終了後、得られた反応混合液を水20mlおよび飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去して、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル; Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=3:1(容量比))により精製して、標記化合物0.503g(無色固体、収率70%、融点123−4℃)を得た。
【実施例2】
【0078】
1−(1−フェニルエチル)−N−(5−[2,3−b]チエノピリジル)−シクロヘキサンカルボキサミド(化合物番号58)の製造
【化10】

【0079】
[製造スキーム3]
(工程3−1)
1−(1−フェニルエチル)−1−シクロヘキサンカルボン酸メチルの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、テトラヒドロフラン20mlに溶解したジイソプロピルアミン0.392g(3.87mmol)を入れ、−70℃に冷却後、1.60mol/lのn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液2.42ml(3.87mmol)を加え、1時間攪拌した。これに、シクロヘキサンカルボン酸メチル0.500g(3.52mmol)を加え、1時間攪拌した後、(1−ブロモエチル)ベンゼン0.651g(3.52mmol)を加え、−60℃で1時間攪拌し、さらに12時間室温で攪拌した。
反応終了後、水20mlおよび酢酸エチル40mlを加えて抽出処理した。得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル; Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=65:1(容量比))により精製して、標記化合物0.546g(油状物、収率63%)を得た。
【0080】
(工程3−4)
1−(1−フェニルエチル)−1−シクロヘキサンカルボン酸の合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、
ジメチルスルホキシド20mlに溶解した1−(1−フェニルエチル)−1−シクロヘキサンカルボン酸メチル0.546g(2.22mmol)およびカリウムt−ブトキシド0.747g(6.66mmol)を入れ、50℃で8時間攪拌した。
反応終了後、水20mlおよびジエチルエーテル20mlで洗浄後、1N塩酸水溶液で酸性とし、酢酸エチル40mlで抽出処理した。得られた酢酸エチル層を水20mlおよび飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去して、粗標記化合物0.222g(油状物、粗収率43%)を得た。これは精製することなく次のステップで使用した。
【0081】
[製造スキーム1]
1−(1−フェニルエチル)−N−(5−[2,3−b]チエノピリジル)−1−シクロヘキサンカルボキサミドの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、ジクロロメタン20mlに溶解した 1−(1−フェニルエチル)−1−シクロヘキサンカルボン酸0.222g(0.956mmol)を入れ、0℃に冷却後、オキサリルクロリド0.133g(1.05mmol)および触媒量のN,N−ジメチルホルムアミドを加え、室温で攪拌した。1時間後、反応液を減圧下で濃縮し、得られた残渣をジクロロメタン5mlに溶解した。次いで、この溶解液を別途用意したチエノ[2,3−b]ピリジン−5−アミン95.7mg(0.637mmol)、トリエチルアミン0.193g(1.91mmol)およびジクロロメタン20mlの溶液中に加え、24時間、室温で攪拌した。
反応終了後、反応混合液を水20mlおよび飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル; Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=3:1(容量比))により精製して、標記化合物0.186g(アモルファス、収率80%)を得た。
【実施例3】
【0082】
1−(1−メトキシ−1−フェニルエチル)−N−(5−[2,3−b]チエノピリジル)−シクロヘキサンカルボキサミド(化合物番号110)の製造
【化11】

【0083】
[製造スキーム3]
(工程3−2)
[メトキシ(トリメチルシリルオキシ)メチレン]シクロヘキサンの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、テトラヒドロフラン20mlに溶解したジイソプロピルアミン0.392g(3.87mmol)を入れ、−70℃に冷却後、1.60mol/lのn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液2.42ml(3.87mmol)を加え、1時間攪拌した。次いで、シクロヘキサンカルボン酸メチル0.500g(3.52mmol)を加え、1時間攪拌後、塩化トリメチルシリル0.764g(7.04mmol)を加え、−60℃で1時間攪拌した。
反応終了後、水20mlを加え、ヘキサン40mlで抽出処理した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去して、粗標記化合物0.753g(油状物、粗収率100%)を得た。これは精製することなく次のステップで使用した。
【0084】
(工程3−3)
1−(1−メトキシ−1−フェニルエチル)−1−シクロヘキサンカルボン酸メチルの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、ジクロロメタン20mlに溶解した[メトキシ(トリメチルシリルオキシ)メチレン]シクロヘキサン0.753g(3.52mmol)、(1,1−ジメトキシエチル)ベンゼン0.585g(3.52mmol)および塩化亜鉛23.9mg(0.176mmol)を入れ、室温で1時間攪拌した。
反応終了後、水20mlを加え、クロロホルム20mlで抽出処理した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去して、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=50:1(容量比))により精製して、標記化合物0.603g(油状物、収率62%)を得た。
【0085】
(工程3−4)
1−(1−メトキシ−1−フェニルエチル)−1−シクロヘキサンカルボン酸の合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、ジメチルスルホキシド20mlに溶解した1−(1−メトキシ−1−フェニルエチル)−1−シクロヘキサンカルボン酸メチル0.603g(2.18mmol)、水2mlおよび水酸化カリウム0.367g(6.55mmol)を入れ、90℃で8時間攪拌した。
反応終了後、水20mlを加え、ジエチルエーテル20mlで洗浄後、1N塩酸水溶液で酸性とし、酢酸エチル40mlで抽出処理した。酢酸エチル層を水20mlおよび飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去して、粗標記化合物0.526g(油状物、粗収率92%)を得た。これは精製することなく次のステップで使用した。
【0086】
[製造スキーム1]
1−(1−メトキシ−1−フェニルエチル)−N−(5−[2,3−b]チエノピリジル)−1−シクロヘキサンカルボキサミドの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、ジクロロメタン20mlに溶解した1−(1−メトキシ−1−フェニルエチル)−1−シクロヘキサンカルボン酸0.526g(2.01mmol)を入れ、0℃に冷却後、オキサリルクロリド0.281g(2.21mmol)および触媒量のN,N−ジメチルホルムアミドを加え、室温で攪拌した。1時間後、この反応液を濃縮して得られた残渣をジクロロメタン5mlに溶解した。次いで、この溶解液を別途用意したチエノ[2,3−b]ピリジン−5−アミン0.201g(1.34mmol)、トリエチルアミン0.407g(4.02mmol)およびジクロロメタン20mlの溶液中に加え、室温で24時間攪拌した。
反応終了後、有機層を水20mlおよび飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル; Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=3:1(容量比))により精製して、標記化合物0.270g(無色固体、収率51%、融点158−160℃)を得た。
【実施例4】
【0087】
1−[メトキシ(フェニル)メチル)]−N−(5−[2,3−b]フロピリジル)−シクロヘキサンカルボキサミド(化合物番号230)の製造
【化12】

【0088】
[製造スキーム3]
(工程3−2)
[メトキシ(トリメチルシリルオキシ)メチレン]シクロヘキサンの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、テトラヒドロフラン20mlに溶解したジイソプロピルアミン0.392g(3.87mmol)を入れ、−70℃に冷却後、1.60mol/lのn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液2.42ml(3.87mmol)を加え、1時間攪拌した。この溶液に、シクロヘキサンカルボン酸メチル0.500g(3.52mmol)を加え、1時間攪拌後、塩化トリメチルシリル0.764g(7.04mmol)を加え、−60℃で1時間攪拌した。
反応終了後、水20mlを加え、ヘキサン40mlで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去して、粗標記化合物0.753g(油状物、粗収率100%)を得た。これは精製することなく次のステップで使用した。
【0089】
(工程3−3)
1−[メトキシ(フェニル)メチル)]−1−シクロヘキサンカルボン酸メチルの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、ジクロロメタン20mlに溶解した[メトキシ(トリメチルシリルオキシ)メチレン]シクロヘキサン0.753g(3.52mmol)、ベンズアルデヒドジメチルアセタール0.535g(3.52mmol)および塩化亜鉛23.9mg(0.176mmol)を入れ、室温で1時間攪拌した。
反応終了後、水20mlを加え、クロロホルム20mlで抽出処理した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=55:1(容量比))により精製して、標記化合物0.637g(油状物、収率69%)を得た。
【0090】
(工程3−4)
1−[メトキシ(フェニル)メチル)]−1−シクロヘキサンカルボン酸の合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、ジメチルスルホキシド20mlに溶解した1−[メトキシ(フェニル)メチル)]−1−シクロヘキサンカルボン酸メチル0.637g(2.43mmol)、水2mlおよび水酸化カリウム0.408g(7.29mmol)を入れ、90℃で8時間攪拌した。
反応終了後、水20mlおよびジエチルエーテル20mlで洗浄後、1N塩酸水溶液で酸性とし、酢酸エチル40mlで抽出処理した。酢酸エチル層を水20mlおよび飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去して、粗標記化合物0.501g(油状物、粗収率83%)を得た。これは精製することなく次のステップで使用した。
【0091】
[製造スキーム1]
1−[メトキシ(フェニル)メチル)]−N−(5−[2,3−b]フロピリジル)−1−シクロヘキサンカルボキサミドの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、ジクロロメタン20mlに溶解した1−[メトキシ(フェニル)メチル)]−1−シクロヘキサンカルボン酸0.501g(2.02mmol)を入れ、0℃に冷却後、オキサリルクロリド0.282g(2.22mmol)および触媒量のN,N−ジメチルホルムアミドを加え、室温で攪拌した。い時間後、この反応液を濃縮して得られた残渣をジクロロメタン5mlに溶解した。次いで、この溶解液を別途用意したフロ[2,3−b]ピリジン−5−アミン0.181g(1.35mmol)、トリエチルアミン0.410g(4.05mmol)およびジクロロメタン20mlの溶液中に加え、24時間攪拌した。
反応終了後、有機層を水20mlおよび飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=3:1(容量比))により精製して、標記化合物0.236g(油状物、収率48%、nD20 1.5738)を得た。
【0092】
[製造スキーム2]
1−[メトキシ(フェニル)メチル)]−N−(5−[2,3−b]フロピリジル)−1−シクロヘキサンカルボキサミドの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、ジクロロメタン20mlに溶解した 1−[メトキシ(フェニル)メチル)]−1−シクロヘキサンカルボン酸0.501g(2.02mmol)、フロ[2,3−b]ピリジン−5−アミン0.181g(1.35mmol)およびピリジン0.320g(4.05mmol)を入れ、0℃に冷却後、1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩0.425g(2.22mmol)および触媒量の4−(ジメチルアミノ)ピリジンを加え、室温で48時間攪拌した。
反応終了後、有機層を1N塩酸水溶液20mlおよび飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル; Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=3:1(容量比))により精製して、標記化合物0.148g(油状物、収率30%、nD20 1.5738)を得た。
【実施例5】
【0093】
(粉剤)
化合物番号1の化合物(2重量部)、PAP(イソプロピルリン酸エステル、物理性改良剤)(1重量部)およびクレ−(97重量部)の混合物を、均一に粉砕混合して、活性成分を2重量%含有する粉剤を得ることができる。さらに、化合物番号1に替えて、表1に記載の各化合物を用いること以外は、同様の方法により、それぞれの粉剤を得ることができる。
【実施例6】
【0094】
(水和剤)
化合物番号6の化合物(20重量部)、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(3重量部)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(5重量部)および白土(72重量部)の混合物を均一に混合し、粉砕することにより、活性成分を20重量%含有する水和剤を得ることができる。さらに、化合物番号6の化合物に替えて、表1に記載の各化合物を用いること以外は、同様の方法により、それぞれ水和剤を得ることができる。
【実施例7】
【0095】
(乳剤)
化合物番号27の化合物(30重量部)、メチルエチルケトン(40重量部)およびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(30重量部)混合して溶解することにより、活性成分を30重量%含有する乳剤を得ることができる。さらに、化合物番号27の化合物に替えて、表1に記載の各化合物を用いること以外は、同様の方法により、それぞれ乳剤を得ることができる。
【実施例8】
【0096】
ゾル剤(フロアブル剤)
化合物番号230の化合物(25重量部)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(1重量部)、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム(1重量部)、カルボキシメチルセルロース(1重量部)および水(72重量部)の混合物を均一に混合することにより、活性成分を25重量%含有するゾル剤を得ることができる。さらに、化合物番号230の化合物に替えて、表1に記載の各化合物を用いること以外は、同様の方法により、それぞれのゾルを得ることができる。
【実施例9】
【0097】
(粒剤)
化合物番号230の化合物(5重量部)、ラウリル硫酸ナトリウム(1重量部)、リグニンスルホン酸カルシウム(5重量部)、ベントナイト(30重量部)、およびクレー(59重量部)の混合物に、さらに水(15重量部)を加えて混練機で混練したのち、造粒機で造粒し、流動乾燥機で乾燥して、活性成分を5重量%含有する粒剤を得ることができる。さらに、化合物番号230の化合物に替えて、表1に記載の各化合物を用いること以外は、同様の方法により、それぞれの粒剤を得ることができる。
【0098】
以下に、本発明化合物(I)を有効成分として含む農園芸用殺菌剤の有用性について、以下の試験例1〜6に示すが、本発明の有用性は、これらの試験例に限定されるものではない。
なお、供試化合物番号は、表1で表す化合物と同一の番号を表す。
【0099】
試験例1
イネいもち病に対する箱処理による防除効果試験(フロアブル剤)
温室内で育苗箱(標準育苗箱の1/10面積サイズ:12cm×15cm×高さ4cm)を用いて育苗した水稲(品種:朝日)の2.5葉期苗に、実施例8に準じて調製したフロアブル剤の希釈液(5000ppm)を50ml潅注した。この薬剤処理した水稲苗を直ちに水田土(湛水)を詰めたポット(1/10000アールサイズ)に5苗/ポットで移植した。温室内で4週間栽培後、あらかじめ、別の水稲葉上で形成させたイネいもち病菌(Pyricularia grisea)の分生胞子を薬剤処理した水稲に接種し、24℃の接種箱内に24時間静置した後、24℃の人工気象室内において、発病を促した。接種の7日後に、水稲の1株当りのイネいもち病の病斑数を調査し、平均病斑数を求め、下記の式1により防除価(%)を算出した。そして、下記の表3に従い、防除価を評価値に換算した。この評価値は、試験例2〜6においても適用した。本試験は、1薬剤区当り、1区1ポットの5連制で行った。
【0100】
【数1】

【0101】
【表3】

【0102】
また、下記の基準により、水稲に対する薬害程度を調査した。
薬害程度の調査指数(6段階で評価)
5:激甚 4:甚 3:多 2:若干 1:わずか 0:なし
この薬害程度の調査指数は、試験例2〜6においても適用した。
これらの結果を下記の表4に示す。
【0103】
【表4】

【0104】
表4における比較薬剤Aとは、下記の化合物を示す。比較薬剤Aは、国際公開第04/55261号パンフレットに記載されている。
【化13】

また、この比較薬剤Aは、試験例2、3においても、比較薬剤として用いる。
【0105】
試験例2
イネいもち病に対する箱処理による防除効果試験(粒剤)
温室内で育苗箱(標準育苗箱の1/10面積サイズ:12cm×15cm×高さ4cm)を用いて育苗した水稲(品種:朝日)の2.5葉期苗に、実施例9に準じて調製した粒剤5gを育苗箱上部より散布した。この薬剤処理した水稲苗を直ちに水田土(湛水)を詰めたポット(1/10000アールサイズ)に5苗/ポットで移植した。温室内で6週間栽培後、あらかじめ、別の水稲葉上で形成させたイネいもち病菌(Pyricularia grisea)の分生胞子を薬剤処理した水稲に接種し、24℃の接種箱内に24時間静置した後、24℃の人工気象室内において、発病を促した。接種の7日後に、水稲の1株当りのイネいもち病の病斑数を調査し、平均病斑数を求め、下記の式2により防除価(%)を算出した。本試験は、1薬剤区当り、1区1ポットの5連制で行った。
【0106】
【数2】

これらの結果を以下の表5に示す。
【0107】
【表5】

【0108】
試験例3
イネいもち病に対する水面施用による防除効果試験(フロアブル剤)
温室内で水田土(湛水)を詰めたポット(1/10000アールサイズ)で栽培した水稲(品種:朝日)の5葉期苗(5苗/株、1株/ポット)に、実施例8に準じて調製したフロアブル剤の希釈液(1000ppm)1mlを田面水へ点滴処理した。温室内で1週間栽培後、あらかじめ、別の水稲葉上で形成させたイネいもち病菌(Pyricularia grisea)の分生胞子を薬剤処理した水稲に接種し、24℃の接種箱内に24時間静置した後、24℃の人工気象室内において、発病を促した。接種の7日後に、水稲の1株当りのイネいもち病の病斑数を調査し、平均病斑数を求め、下記の式3により防除価(%)を算出した。本試験は、1薬剤区当り、1区1ポットの5連制で行った。
【0109】
【数3】

これらの結果を以下の表6に示す。
【0110】
【表6】

【0111】
試験例4
オオムギうどんこ病防除効果試験
温室内で直径6cmの大きさのプラスチックポットで栽培した大麦(品種:あかぎ二条)の1.5葉期苗に、実施例6に準じて調製した水和剤の希釈液(500ppm)を1ポットあたり10ml散布(茎葉散布)した。薬剤処理をした翌日、あらかじめ、別の大麦葉上で形成させたオオムギうどんこ病菌(Erysiphe graminis)の分生胞子の胞子懸濁液(胞子濃度5×10個/ml)を薬剤散布したポット上に1ポットあたり5ml噴霧接種し、20℃の人工気象室内において、発病を管理した。接種の7日後に、第1葉上のオオムギうどんこ病の病斑面積歩合(%)を調査し、下記の式4により防除価(%)を算出した。本試験は、1薬液濃度当り、1区1ポットの三連制で行った。その平均の防除効果の評価値を求めた。
【0112】
【数4】

これらの結果を以下の表7に示す。
【0113】
【表7】

【0114】
試験例5
コムギ赤さび病防除効果試験
温室内で直径6cmの大きさのプラスチックポットで栽培した小麦(品種:農林61号)の1.5葉期苗に、実施例6に準じて調製した水和剤の希釈液(500ppm)を1ポットあたり10ml散布した(茎葉散布)。薬剤処理をした翌日、あらかじめ別の小麦葉上で形成させたコムギ赤さび病菌(Puccinia recondite)の夏胞子の胞子懸濁液(胞子濃度5X10個/ml)を薬剤散布したポット上に1ポットあたり5ml噴霧接種し、20℃の人工気象室内において、発病を管理した。接種の10日後に、第1葉上の病斑数を調査し、下記の式5により防除価(%)を算出した。本試験は、1薬液濃度当り、1区1ポットの3連制で行った。その平均の防除効果の評価値を求めた。
【0115】
【数5】

これらの結果を以下の表8に示す。
【0116】
【表8】

【0117】
試験例6
キュウリ灰色かび病防除効果試験
温室内で直径6cmの大きさのプラスチックポットで栽培したキュウリ(品種:相模半白)の1.5葉期苗に、実施例4に準じて調製した水和剤の希釈液(100ppm)を1ポットあたり10ml散布した(茎葉散布)。薬剤処理をした翌日、あらかじめジャガイモ煎汁培地上で培養したキュウリ灰色かび病菌(Botrytis cinerea)の含菌寒天片(直径5mm)を薬剤処理したキュウリの第1葉上に接種し、20℃の温室内に入れた。接種の4日後に、病斑直径(cm)を測定し、下記の式6により防除価(%)を算出した。本試験は、1薬液濃度当り、1区1ポットの3連制で行った。その平均の防除効果の評価値を求めた。
【0118】
【数6】

これらの結果を以下の表9に示す。
【0119】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(一般式(I)において、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアシルオキシ基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、1もしくは2のアルキル基を有していてもよいアミノ基またはメルカプト基を示し、nは、0〜5の整数を示し、nが2以上のときは、それぞれのXは同一または相異なっていてもよく、Y、Zは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基を示し、Aは、硫黄原子または酸素原子を示す。)で表されるシクロヘキサンカルボキサミド誘導体またはその塩。
【請求項2】
前記一般式(I)において、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基またはシアノ基を示し、nは、0〜5の整数を示し、nが2以上のときは、それぞれのXは同一でも相異なっていてもよく、Yは,炭素数1〜6のアルコキシ基を示し、Zは、水素原子を示し、Aは、硫黄原子または酸素原子を示すことを特徴とする、請求項1に記載のシクロヘキサンカルボキサミド誘導体またはその塩。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の一般式(I)で表されるシクロヘキサンカルボキサミド誘導体またはその塩を含有することを特徴とする、農園芸用殺菌剤。

【公開番号】特開2008−280274(P2008−280274A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124750(P2007−124750)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000242002)北興化学工業株式会社 (182)
【Fターム(参考)】