説明

シクロペンタン発泡用硬質ポリウレタンフォーム用ポリイソシアネート組成物、及びこれを用いた硬質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】 キュア性に優れ、短時間で脱形成形可能であり、熱伝導率も良好なシクロペン
タン発泡の厚物断熱材用硬質ポリウレタンフォーム、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリメリックMDI(a1)と、側鎖アルキル基を有しかつ側鎖の全炭素
数が4個以上で分子量が200以下の低分子ポリオール(a2)と、整泡剤(a3)とか
らなるイソシアネート基含有プレポリマー(A)を含有し、(a2)の添加量が(A)に
対して3〜10質量%であることを特徴とする、シクロペンタン発泡用硬質ポリウレタン
フォーム用ポリイソシアネート組成物を使用することにより解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロペンタン発泡用硬質ポリウレタンフォーム用ポリイソシアネート組成
物に関する。詳しくは、地球環境に優しいシクロペンタン及び/又は水を用いた発泡シス
テムに適合し、貯蔵安定性・キュア性に優れ、短時間で成形可能であり、かつ、良好な熱
伝導特性を有する硬質ポリウレタンフォームを得ることができるシクロペンタン発泡用硬
質ポリウレタンフォーム用ポリイソシアネート組成物及びそれを用いた硬質ポリウレタン
フォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームは、断熱材として有用であり、成形性や加工性にも優れてい
るところから、電気冷蔵庫の断熱を始め、ビル、低温倉庫、貯蔵タンク、冷凍船配管等の
断熱に至るまで、広い分野に用いられている。その熱伝導率も年々改良され、現在では、
商品レベルで0.0215W/mK(非特許文献1参照)に達しており、常温付近で用い
られる断熱材としては、最も高い断熱性能を有すると言われている。しかしながら、近年
の省エネルギーの高まりを背景として、断熱材の更なる低熱伝導率化の要求が一層高まっ
ている。
【0003】
従来、このような硬質ポリウレタンフォームを製造するには、ポリオール、触媒、発泡
剤及び整泡剤を主成分とするA成分と、有機イソシアネートを主成分とするB成分とを混
合反応させ、発泡プロセスと硬化プロセスとを平行して進行させて、フォームを形成する
ワンショット法が一般に用いられている。このような硬質ポリウレタンフォームの製造に
おいて、発泡剤としては、従来、主として、トリクロロモノフルオロメタン(以後、R−
11と略称する)が用いられていたが、R−11に代表される従来のフロンは、化学的に
安定であり、成層圏まで拡散してオゾン層を破壊することが知られており、重大な地球環
境の破壊原因を為すとして、最近その禁止されるに至っている。
【0004】
そこで近年、このようなフロンに代わる発泡剤について、鋭意研究が行なわれており、
例えばハイドロクロロフルオロカーボン(以後、HCFCと略称する)である1,1−ジ
クロロ−1−フルオロエタン(以後、HCFC−141bと略称する)等やメチレンクロ
ライド等がR−11の代替物として候補に挙げられている。
【0005】
しかしながら、前述のHCFC等もまだ分子中に塩素原子を含むので、R−11よりは
オゾン層への影響は少ないが、依然としてオゾン層を破壊する特性を有している為に、や
はり生産・使用の中止が決定されている。したがって地球環境保護の観点から、オゾン層
破壊に全く影響しない発泡剤の使用が新たに提案されて、一部の用途では既に塩素原子を
全く含まずオゾン層を破壊する危険性のない炭化水素系の発泡剤、例えばシクロペンタン
が導入適用されている。
【0006】
しかしながら、シクロペンタンは地球環境に優しい発泡剤として最適ではあるが、いく
つかの問題点を抱えている。特に、シクロペンタン自身のガスの熱伝導度が高いため、単
にシクロペンタンを使用した硬質ポリウレタンフォームの断熱性能は、従来のHCFC−
141bを使用したものより劣り、このため断熱特性の改善が求められている。
【0007】
シクロペンタン発泡フォームの熱伝導率の改善に当たって、フォーム原料とシクロペン
タンとの相溶性を低下させて、セルの微細化を図ることが提案されている。特許文献1に
は、(1)芳香族ポリイソシアネートからなる有機ポリイソシアネート、(2)ポリエー
テルポリオール及び/又はポリエステルポリオールからなるポリオール、(3)発泡剤、
(4)整泡剤、触媒及びその他の助剤より硬質ポリウレタンフォームを製造する方法であ
って、発泡剤(3)が、シクロペンタン及び水であり、ポリオール(2)が、シクロペン
タンとの相溶性が低いポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールであり
、シクロペンタンを成分(2)〜(4)からなるポリオールプレミックス中に混合分散す
ることを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法が提案されている。
【0008】
また、シクロペンタン発泡フォームの熱伝導率の改善に当たって、ポリメリックMDI
を短鎖ポリオールのみで変性することを特徴とするシクロペンタン発泡用硬質ポリウレタ
ンフォーム用ポリイソシアネート組成物が提案されている(特許文献2)。さらに、イソ
シアネート基末端プレポリマーに整泡剤を使用した、キュア性に優れ、短時間で成形可能
な厚物用シクロペンタン発泡の硬質ポリウレタンフォームの製造方法が提案されている(
特許文献3)。しかし、特許文献2では特定の低分子ポリオールを使用することにより熱
伝導率が優れた硬質ポリウレタンフォームを提供するものであり、特許文献3はイソシア
ネート組成物とポリオール成分とのシステム全体としてキュア性の優れた硬質ポリウレタ
ンフォームを提供するものである。従って、熱伝導率及びキュア性の優れた硬質ポリウレ
タンフォームを提供することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−128951号公報
【特許文献2】特開2008−260843号公報
【特許文献3】特開2009−179752号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】宇和断熱工業株式会社ホームページ、製品情報、シクロペンタン2006年2月1日検索URL:http://www.uwa-ud.co.jp/cyclopentane.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、地球環境に優しく、貯蔵安定性・キュア性に優れ、短時間で成形可能であり
、良好な熱伝導特性を有する硬質ポリウレタンフォームを得ることができるシクロペンタ
ン発泡用硬質ポリウレタンフォーム用ポリイソシアネート組成物およびそれを用いた硬質
ポリウレタンフォームの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明は、以下の(1)〜(4)に示されるものである。
(1ポリメリックMDI(a1)と、側鎖アルキル基を有しかつ側鎖の全炭素数が4個
以上で分子量が200以下の低分子ポリオール(a2)と、整泡剤(a3)とからなるイ
ソシアネート基含有プレポリマー(A)を含有し、(a2)の添加量が(A)に対して3
〜10質量%であることを特徴とする、シクロペンタン発泡用硬質ポリウレタンフォーム
用ポリイソシアネート組成物。
(2) 整泡剤(a3)が水酸基を含有することを特徴とする前記(1)に記載のシク
ロペンタン発泡用硬質ポリウレタンフォーム用ポリイソシアネート組成物。
(3) 前記(1)又は(2)に記載のイソシアネート基含有プレポリマー(A)と、ポ
リオール(B)とを、触媒(C)、シクロペンタン(D1)の存在下で反応・発泡させる
硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
(4) 触媒(C)が、ウレタン化触媒(c1)及び三量化触媒(c2)を含有するも
のであり、発泡剤がシクロペンタン(D1)及び水(D2)を併用することを特徴とする
、請求項3に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、地球環境に優しく、貯蔵安定性・キュア性に優れ短時間で成形可能であ
り、かつ、良好な熱伝導特性を有するシクロペンタン発泡用硬質ポリウレタンフォーム用
ポリイソシアネート組成物およびそれを用いた製造方法の提供が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のシクロペンタン発泡用硬質ポリウレタンフォーム用ポリイソシアネート組成物
は、ポリメリックMDI(a1)と、側鎖アルキル基を有しかつ側鎖の全炭素数が4個以
上で分子量が200以下の低分子ポリオール(a2)と、整泡剤(a3)とからなるイソ
シアネート基含有プレポリマー(A)を含有することを特徴とする。
【0015】
このポリメリックMDIは、アニリンとホルマリンとの縮合反応によって得られる縮合
混合物(ポリアミン)をホスゲン化等によりアミノ基をイソシアネート基に転化すること
によって得られる、縮合度の異なる有機イソシアネート化合物の混合物を意味し、縮合時
の原料組成比や反応条件を変えることによって、最終的に得られるポリメリックMDIの
組成を変えることができる。本発明に用いられるポリメリックMDIは、イソシアネート
基への転化後の反応液、又は反応液から溶媒の除去、又は一部MDIを留出分離した缶出
液、反応条件や分離条件等の異なった数種の混合物であってもよい。また、イソシアネー
ト基の一部をビウレット、アロファネート、カルボジイミド、オキサゾリドン、アミド、
イミド等に変性したものであってもよい。
【0016】
ポリメリックMDIの平均官能基数は2.3以上であり、好ましくは官能基数が2.3
〜3.1である。イソシアネート含量は、28〜33質量%であり、好ましくは28.5
〜32.5質量%である。また粘度(25℃)は50〜500mPa・sが好ましく、特
に100〜300mPa・sが特に好ましい。
【0017】
ポリメリックMDI中には、1分子中にベンゼン環及びイソシアネート基を各2個有す
るジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、いわゆる二核体と言われている成分を
含有する。MDIを構成する異性体は、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート(
以後、2,2′−MDIと略称する)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(
以後、2,4′−MDIと略称する)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(
以後、4,4′−MDIと略称する)の3種類である。MDIの異性体構成比は特に限定
はないが、4,4′−MDI含有量が70質量%以上、好ましくは90〜99.9質量%
であるほうが、得られるフォームの強度が向上するので好ましい。なお、ポリメリックM
DIのMDI含有量や、MDIの異性体構成比は、GPCやガスクロマトグラフィー(以
下、GCと略記する)によって得られる各ピークの面積百分率を基に検量線から求めるこ
とができる。
【0018】
本発明に用いられるポリメリックMDIは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー
(以下、GPCと略記する)における二核体(1分子中にベンゼン環を2個有するもの)
成分のピーク面積比が20〜70%となるものであり、好ましくは25〜65%となるも
のである。二核体のピーク面積比が70%を越えると、得られる硬質ポリウレタンフォー
ムの強度が低下し、かつ、脆くなりやすくなる。一方20%未満の場合は、得られるポリ
イソシアネートの粘度が高くなり、金型への充填性が低下しやすい。
【0019】
本発明では必要に応じて、前述のポリメリックMDI以外のポリイソシアネートも用い
ることができる。例えば、MDIのイソシアヌレート変性物、ウレトンイミン変性物、ア
ロファネート変性物等が挙げられる。また、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6
−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3
−ジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシ
アネート、p−フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレ
ンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタン
ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジ
イソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネー
ト、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げら
れる。また、これらのポリメリック体やウレタン化物、ウレア化物、アロファネート化物
、ビウレット化物、カルボジイミド化物、ウレトンイミン化物、ウレトジオン化物、イソ
シアヌレート化物等が挙げられ、更にこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0020】
本発明に用いられる低分子ポリオール(a2)は、側鎖アルキル基を有しかつ側鎖の全
炭素数が4個以上の低分子ポリオールである。好ましくは、全炭素数が4個以上8以下で
ある。ポリメリックMDI(a1)を、ポリイソシアネート組成物(A)に対して3〜1
0質量%の低分子ポリオール(a2)でウレタン変性することにより、イソシアネートに
極性の高いウレタン基を付与することになる。これにより、イソシアネートとシクロペン
タンとの相溶性が低下し、シクロペンタンが系中に細かく分散されることになる。(a2
)の変性量が下限未満だとポリイソシアネート組成物(A)に濁りが発生して、液が分離
するといった問題が生じ、濁りを解消するためには整泡剤の添加量を減らす必要性がある
ため、熱伝導率やキュア性の物性が悪化してしまう。また、上限を超えるとポリイソシア
ネート組成物(A)の粘度が高くなるため成形性が悪化する問題が生じる。
【0021】
得られるフォームの熱伝導率は、セルが細かいほど良好となるので、本発明のポリイソシ
アネート組成物を用いた硬質ポリウレタンフォームは良好な熱伝導率を有することになる
。なお、側鎖アルキル基はイソシアネート基含有プレポリマー製造時の分子間の凝集を防
止し、ポリイソシアネート組成物の貯蔵安定性に寄与するものである。なお、側鎖アルキ
ル基の炭素数が少なすぎる場合は、ウレタン基による凝集のため、イソシアネートに濁り
が生じやすくなり、炭素数が多すぎる場合は得られるフォームの寸法安定性が悪くなると
いった問題が発生する。また、数平均分子量が200を超える場合は、得られるフォーム
の寸法安定性が悪くなる といった問題が発生する。
【0022】
このような低分子ポリオール(a2)としては、2,2−ジエチル−1,3−プロパン
ジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチロールヘプタ
ン等が挙げられる。
【0023】
本発明に用いられる整泡剤(a3)としては、公知のシリコーン系界面活性剤が挙げら
れ、例えば東レ・ダウコーニング製のL−5340、L−5420、L−5421、L−
5740、L−580、SZ−1142、SZ−1642、SZ−1605、SZ−16
49、SZ−1675、SH−190、SH−192、SH−193、SF−2945F
、SF−2940F、SF−2936F、SF−2938F、SRX−294A、信越化
学工業製のF−305、F−341、F−343、F−374、F−345、F−348
、ゴールドシュミット製のB−8404、B−8407、B−8465、B−8444、
B−8467、B−8433、B−8466、B−8870、B−8450等の1種又は
2種以上の混合物が挙げられる。この中でも、水酸基を含有する整泡剤の方が熱伝導率及
びキュア性が優れる点で好ましい。整泡剤(a3)の使用量は、ポリイソシアネート組成
物全重量に対して、0.3〜1.4質量%となる量が液の貯蔵安定性といった理由で好ま
しい。
【0024】
本発明に用いられるイソシアネート基含有プレポリマー(A)は、前述のポリメリック
MDI(a1)と側鎖アルキル基を有しかつ側鎖の全炭素数が4個以上で分子量が200
以下の低分子ポリオール(a2)とを40〜100℃にて反応させて、イソシアネート基
含有プレポリマーを合成し、整泡剤(a3)を添加又は反応させることで得られる。この
ようにして得られたポリイソシアネート(A)のイソシアネート含量は28〜31質量%
が好ましく、29〜30.5質量%が特に好ましい。
【0025】
本発明のポリイソシアネート組成物には、イソシアネート基含有プレポリマー(A)の
他に、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、可塑剤、顔料・染料、抗菌剤・
抗カビ剤等の各種添加剤や助剤を添加することも可能である。
【0026】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法の具体的な手順は、前述のイソシアネー
ト基末端プレポリマー(A)を含有するポリイソシアネート組成物と、前述のポリオール
(B)とを、触媒(C)、発泡剤(D)、発泡剤(E)、及びその他の添加剤等の存在下
、後述する装置を用いて混合し、発泡、硬化させるという方法である。
【0027】
ポリオール(B)としては特に制限はなく、公知のウレタン工業に用いられるものが使
用でき、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネート
ポリオール等が挙げられる。また、フォームの強度等を考慮して、低分子ポリオール、低
分子ポリアミン、低分子アミノアルコール等も併用できる。
【0028】
本発明に用いられる触媒(C)は、ウレタン化触媒(C1)と三量化触媒(C2)を含
有することを特徴とする。ウレタン化触媒(C1)としては、N−メチルイミダゾール、
トリメチルアミノエチルピペラジン、トリプロピルアミン、テトラメチルヘキサメチレン
ジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、ジメチル
シクロヘキシルアミン、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート等の錫化合物
、アセチルアセトン金属塩等の金属錯化合物等が挙げられる。三量化触媒(C2)として
は、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,3,5−トリス(ジ
メチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン等のトリアジン類、2,4−ビス
(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−エチルヘキサン酸カリウム、2−エチルヘキ
サン酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、2−エチルアジリジン等のアジリジ
ン類等のアミン系化合物、3級アミンのカルボン酸塩等の第四級アンモニウム化合物、ジ
アザビシクロウンデセン、ナフテン酸鉛、オクチル酸鉛等の鉛化合物、ナトリウムメトキ
シド等のアルコラート化合物、カリウムフェノキシド等のフェノラート化合物等を挙げる
ことができる。これらの(C1)及び(C2)は、1種又は2種以上併用して用いること
がでる。全触媒(C)の使用量は、金型への充填性 といった理由
からポリオールに対して、0.01〜15質量%となる量が適当である。
【0029】
発泡剤は、シクロペンタン(D1)、又は、(D1)と水(D2)を併用して用いる。
発泡剤がシクロペンタンのみの場合は、得られるフォームが収縮しやすい。発泡剤の使用
量は、ポリオールに対してシクロペンタンが0.1〜30質量%、水が0.1〜3質量%
である。
【0030】
更に、反応促進のための助触媒として、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカー
ボネート等のカーボネート化合物を使用することができる。
【0031】
本発明ではその他の添加剤を用いることができる。この添加剤としては、可塑剤、充填
剤、着色剤、難燃剤、有機又は無機の充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料
・染料、抗菌剤・抗カビ剤等が挙げられる。本発明では、難燃剤を用いるのが好ましい。
難燃剤としては、トリエチルホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート
等のリン酸エステル類、亜リン酸エチル、亜リン酸ジエチル等の亜リン酸エステル類のリ
ン酸化合物等が挙げられる。
【0032】
本発明によって得られる硬質ポリウレタンフォームは、ウレタン結合やウレア結合とい
った化学結合を有するものである。また、製造条件によっては、発泡時にイソシアヌレー
ト基を生成させることができる。イソシアヌレート基は、イソシアネート基を触媒により
三量化させて生成され、機械的強度や耐熱性等を向上させることができる。
【0033】
この際のイソシアネートインデックス(全イソシアネート基/全活性水素基×100)
は、50〜800、好ましくは80〜300である。
【0034】
硬質ポリウレタンフォームを製造するにあたっては、各原料液を均一に混合可能であれ
ばいかなる装置でも使用することができる。例えば、小型ミキサーや、一般のウレタンフ
ォームを製造する際に使用する、注入発泡用の低圧又は高圧発泡機、スラブ発泡用の低圧
又は高圧発泡機、連続ライン用の低圧又は高圧発泡機、吹き付け工事用のスプレー発泡機
等を使用することができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるもの
ではない。なお、実施例及び比較例中において、「%」は「質量%」を示す。
【0036】
〔硬質ポリウレタンフォーム用ポリイソシアネートの合成〕
<合成例1>
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器に、P−MDI(1)を985.9
kg仕込み、攪拌しながら40℃に加温した。次いでDMHを5kg仕込み、攪拌しなが
ら80℃にて4時間反応させ、その後、L−6900を1.8kg、B−8466を7.
3kg仕込み、均一に混合して硬質ポリウレタンフォーム用ポリイソシアネートNCO−
1を得た。NCO−1のNCO含量は30.1%であった。
【0037】
合成例2〜6
合成例1と同様にして、表1に示す原料、仕込み比で硬質ポリウレタンフォーム用ポリ
イソシアネート組成物NCO−2〜6を得た。NCO−5とNCO−7については相溶性
の問題から、プレポリマーが濁った。
【0038】
【表1】

【0039】
合成例1〜7、表1おいて
MR−200:日本ポリウレタン工業製ポリメリックMDI
商品名、ミリオネート(登録商標)MR−200
イソシアネート含量=31.1%
MDI含有量=40%
MDI中の4,4′−MDI以外の異性体含有量=0.1%
25℃の粘度=130mPa・s
※表2においても同じ
DMH :3,3−ジメチロールヘプタン
DEPD :2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール
1,4BD :1,4−ブタンジオール
SUR−1 :シリコン系整泡剤、商品名「L−6900(モメンティブ製)」
SUR−2 :シリコン系整泡剤、商品名「B8466(エボニック製)」

【0040】
〔ポリオールプレミックスの配合〕
表2に示す質量配合比で混合して、ポリオールプレミックスOH−1〜OH−2を得た


【0041】
【表2】

【0042】
上記配合例において
ポリオール−1: シュークロースを開始剤としてプロピレンオキサイドの付加により得
られたポリエーテル ポリオールを主成分としたポリエ
ーテルポリオール、公称水酸基価=390
ポリオール−2: ソルビトールを開始剤としてプロピレンオキサイドの付加により得ら
れたポリエーテル
ポリオールを主成分としたポリエーテルポリオール、公称官能基数=5.0、公称水酸基
価=460
ポリオール−3: トルエンジアミンを開始剤としたポリエーテルポリオール、公称水酸
基価=460
CAT−1 : テトラメチルエチレンジアミン、商品名「TOYOCAT−TE(東
ソー製)」
CAT−2 : トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサハイドロ−s−トリアジン
、商品名「TOYOCAT−TRC(東ソー製)」
CAT−3 : ペンタメチルジエチレントリアミン、商品名「TOYOCAT−DT
(東ソー製)」
【0043】
<硬質ポリウレタンフォームの成型>
NCO−1とOH−1(実施例1)、という組み合わせで、イソシアネートを45℃±
1℃、ポリオールを20℃±1℃に調整した後、2.0リットルのポリエチレン製ビーカ
ーにイソシアネートインデックス120で配合し、回転数5000rpmで攪拌ミキサー
により数秒間攪拌混合し、あらかじめ45℃に保温した500×500×100mmのア
ルミ製モールド中でモールド発泡を行い、得られたフォームについてキュア性等を確認し
た。パック率は165%とした。結果を表3に示す。
【0044】
実施例1と同様に、実施例2〜3、比較例1〜4、について硬質ポリウレタンフォー
ムを成型し、キュア性等を確認した。結果を表3に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
<外観>
20℃雰囲気下でガラス瓶に保管し、約24時間経過後、目視で状態を確認する。
クリアー:濁度がなく向こう側を確認することができる
濁り :液に濁度があり向こう側が見えない
分離 :液の下部に沈殿物がある状態
【0047】
<キュア性試験>
(1)500×500×100mmtの横型モールドにパック率165になるようにフォ
ームを注入。
(2)所定時間経過後、脱型する。
(3)脱型後、フォームを真ん中でカットし、4等分にする。
(4)カット面の厚みを測定する。
(5)カット面の厚みが小さいほど脱型性は良好と判断する。
【0048】
<熱伝導率試験>
英弘精機株式会社製の熱伝導率測定装置HC−074(オートΛ)を用いて、JIS A
1412に準拠して測定を行った。
測定値が小さいほど熱伝導率は良好と判断する。
伝熱量=熱伝導する面積(m)÷物体の厚さ(m)×熱伝導率(W/mK)×温度差
で表され、熱伝導率の測定値が小さいほど、伝熱量は小さくなり、エネルギーのロスも少
なくなる。
【0049】
低分子ポリオール(a2)を用いないポリイソシアネート組成物を使用してフォームを
製造した場合は、熱伝導率が大幅に悪化する結果となる(実施例1、比較例1)。また、
低分子ポリオール(a2)を使用した場合であっても、ポリオールプレミックスに整泡剤
を添加した場合は、ポリオールプレミックスに濁りが発生するだけではなく(OH−2)
、熱伝導率およびキュア性が悪化する結果となる(実施例1、比較例3)。
【0050】
低分子ポリオール(a2)の添加量が下限未満である場合は、ポリイソシアネート組成物
に整泡剤の凝集力が原因で濁りが発生し、さらに、熱伝導率およびキュア性が悪化する結
果となる(実施例1、比較例2)。
【0051】
低分子ポリオールの側鎖の炭素数が4未満である場合は、ポリイソシアネート組成物に
低分子ポリオールの凝集力が強すぎるため濁りが発生し、この濁り物が沈殿してしまい、
液が分離してしまい良好な硬質ポリウレタンフォームを得ることができなかったため、熱
伝導率やキュア性等の評価を行うことができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明により得られる硬質ポリウレタンフォーム用ポリイソシアネート組成物および硬
質ポリウレタンフォームは、厚物断熱材として最適なものであるが、このほかにもボード
、パネル、冷蔵庫、庇、ドア、雨戸、サッシ、コンクリート系住宅、バスタブ、低温タン
ク機器、冷凍倉庫、パイプカバー、合板への吹き付け、結露防止、スラブ等、各種断熱材
用途に適用できる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメリックMDI(a1)と、側鎖アルキル基を有しかつ側鎖の全炭素数が4個以上
で分子量が200以下の低分子ポリオール(a2)と、整泡剤(a3)とからなるイソシ
アネート基含有プレポリマー(A)を含有し、(a2)の添加量が(A)に対して3〜1
0質量%であることを特徴とする、シクロペンタン発泡用硬質ポリウレタンフォーム用ポ
リイソシアネート組成物。
【請求項2】
整泡剤(a3)が水酸基を含有することを特徴とする請求項1に記載のシクロペンタン発
泡用硬質ポリウレタンフォーム用ポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のイソシアネート基含有プレポリマー(A)を含有するポリイソシ
アネート組成物と、ポリオール(B)とを、触媒(C)、シクロペンタン(D1)の存在
下で反応・発泡させる硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項4】
触媒(C)が、ウレタン化触媒(c1)及び三量化触媒(c2)を含有するものであり、
発泡剤がシクロペンタン(D1)及び水(D2)を併用することを特徴とする、請求項3
に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。



【公開番号】特開2011−190438(P2011−190438A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30097(P2011−30097)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】