説明

システインタグ付きブドウ球菌タンパク質G変異体

本発明は、N末端システインタグ付き連鎖球菌タンパク質G変異体に関する。前記変形体は、バイオチップおよびバイオセンサの表面に方向性をもって結合するので、システインをタグ付けしていないタンパク質Gに比べて抗体固定能力が向上したバイオチップおよびバイトセンサを提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、N末端システインタグ付き連鎖球菌タンパク質G変異体、これをコードする核酸配列、発現ベクターおよび宿主細胞、前記変異体を製造する方法、並びに前記変異体または重合体を用いて製造されたバイオチップおよびバイオセンサに関する。
【0002】
[背景技術]
抗体は、抗原に特異的に結合するために、疾病の診断および治療に関連した医学的研究と生物学的分析に広範囲に使用されてきた(Curr. Opin. Biotechnol. 12 (2001) 65-69, Curr. Opin. Chem. Biol. 5(2001) 40-45)。最近では、免疫学的測定法の一環として、抗体を固体支持物質に固定化し、電流、抵抗、質量の変化および光学的特徴などを測定する免疫センサが開発されている(Affinity Biosensors. vol. 7: Techniques and Protocols)。これらの中でも、光学的な特徴を用いた表面プラズモン共鳴に基づいた免疫センサが商業化されたが、表面プラズモン共鳴に基づいたバイオセンサは、定性的情報(2分子が特異的に結合するか)と定量的情報(反応速度と平衡定数)を提供するだけでなく、標識なしで実時間で感知することができるため、抗原・抗体の結合の測定に特に有用である(J. Mol. Recognit. 1999, 12, 390-408)。
【0003】
免疫センサでは、固体支持物質に抗体を選択的且つ安定的に固定化することが非常に重要である。抗体固定化技術は化学的な固定化方法と物理的な固定化方法に大別される。物理的な方法(Trends Anal. Chem.2000 19, 530-540)は、再現性が少なく、タンパク質を変性させるため、殆ど使用されていない。これに対し、化学的な方法(Langumur, 1997, 13, 6485-6490)は、タンパク質を共有結合によって結合させて再現性が良く、適用範囲が広いため、多く使用されている。ところが、化学的な方法によって抗体を固定化するとき、抗体が非対称巨大分子なので、抗体が方向性および抗原との結合活性を失うことがある(Analyst 121, 29R-32R)。
【0004】
抗体の抗原結合能力をさらに良くするために、抗体を固体支持物質に結合させる前に支持体を使用する場合があり、この支持体としてタンパク質Gを使用する技術が公知になっている。ところが、このようなタンパク質G自体も、支持体に結合するとき、方向性を失って抗体との結合能力が減少するという問題がある。
【0005】
したがって、このような問題を解決するために様々な方法が提案された。例えば、連鎖球菌タンパク質Gに2−イミノチオラン(2-iminothiolane)を処理してタンパク質のアミノ酸基をリン酸化した後、リン酸化された連鎖球菌タンパク質Gを用いて抗体を固定することである。ところが、この方法は、特定の部分をリン酸化するのではなく、アミノ基を有するアミノ酸(Arg、Asn、Gln、Lys)のアミノ基をリン酸化するので、特異性が低下するうえ、化学処理の後で精製を行わなければならないという煩わしさがある(Biosensors and Bioelectronics, 2005, 21, 103-110)。
【0006】
[発明の開示]
[技術的課題]
そこで、本発明者らは、上述した免疫センサにおいて抗体が結合するときに方向性を失うという問題点を解消するために研究した結果、N末端システインタグ付きタンパク質G変異体を製造し、その有用性を実験によって確認した。
【0007】
[技術的解決方法]
本発明の目的は、N末端システインタグ付きタンパク質G変異体、およびこれをコードする核酸配列を提供することにある。タンパク質Gは、例えば、連鎖球菌に由来したものである。前記システインタグはリンカーを介してタンパク質Gに連結できる。
【0008】
本発明の他の目的は、システインタグ付きタンパク質G変異体をコードする核酸配列を含む発現ベクターと、前記発現ベクターで形質転換された宿主細胞を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、前記発現ベクターを含む宿主細胞を培養してタンパク質G変異体を発現させ、これを分離することを特徴とするタンパク質G変異体の製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、前記タンパク質G変異体を固体支持物質の表面に結合させて製造されたバイオセンサ、並びにチオール基を介してタンパク質G変異体を固体支持物質に結合させることを特徴とするバイオチップおよびバイオセンサの製造方法を提供することにある。
【0011】
[図面の簡単な説明]
図1は連鎖球菌タンパク質Gが抗体と結合する結合ドメインB1、B2を示す。
【0012】
図2Aはタンパク質Gを作るために製作したフラグメントおよびタンパク質G変異体を作るために製作した5つのフラグメントを示し、図2Bは前記フラグメントを挿入するベクターおよびフラグメントを挿入して連鎖球菌タンパク質Gに1個〜5個のシステインをタグ付けしたタンパク質G変異体を作るために発現ベクターを製造する方法を示す(pET−cys1−L−proteinG、pET−cys2−L−proteinG、pET−cys3−L−proteinG、pET−cys4−L−proteinG、pET−cys5−L−proteinG、cys:システイン、L:リンカー、4個のアスパラギンと1個のリシン、proteinG:連鎖球菌タンパク質Gの構造である。)
【0013】
図3はシステインタグ付き連鎖球菌タンパク質G変異体の大腸菌における発現様相を示すタンパク質電気泳動写真(SDS−PAGE)である。
【0014】
図4は金薄膜の表面に4個の異なる種類の連鎖球菌タンパク質G変異体を結合させて測定した表面プラズモン共鳴信号の変化を示すグラフである(4個の異なる種類の連鎖球菌タンパク質G;proteinG:対照群としてチオール基が結合していない連鎖球菌タンパク質G、cys1−G:1個のシステインが結合している連鎖球菌タンパク質G、cys2−G:2個のシステインが結合している連鎖球菌タンパク質G、cys3−G:3個のシステインが結合している連鎖球菌タンパク質G)。
【0015】
図5は金薄膜の表面に4個の異なる種類の連鎖球菌タンパク質G変異体(図4に示したものと同一)が結合している層上にヒトの抗体を反応させて得た表面プラズモン共鳴信号の変化を示すグラフである。
【0016】
図6は金ナノ粒子に4個の異なる種類の連鎖球菌タンパク質G変異体(図4に示したものと同一)を固定化した後、抗体を結合させて抗体の固定化様相をタンパク質電気泳動によって示す写真である。
【0017】
図7はマレイミド基が結合しているガラス表面にシステインをタグ付けした連鎖球菌タンパク質G変異体を固定化した後、その表面に、蛍光標識物質が付いている抗体モノクローナル抗−ビオチンCy3および対照群としてのストレプトアビジン−Cy3のアレイをマイクロアレイを用いて作った後、蛍光スキャナを用いて得たイメージ写真である。
【0018】
図8は金薄膜の表面に4個の異なる種類の連鎖球菌タンパク質G変異体(図4に示したものと同一)が結合している層上にPSAに対する抗体(0.5μg/mL)を反応させた後、抗原としてのPSA(0.5μg/mL)を反応させて得た表面プラズモン共鳴信号の変化を示すグラフである。
【0019】
図9はN末端システインタグ付きタンパク質G変異体とC末端システインタグ付きタンパク質G変異体を金薄膜の表面に結合させ、抗体の結合能力を、表面プラズモン共鳴に基づいたバイオセンサ(SPR)を介して表面プラズモン共鳴信号の変化を測定した結果である。
【0020】
[発明を実施するための最善の様態]
前述した本発明の目的を達成するための第1様態として、本発明は、下記構造を有する、システインタグ付き連鎖球菌タンパク質G変異体に関する。
【0021】
Metx−(Cys)n−Ly−タンパク質G−Q2
(Metはメチオニン、Lはリンカー、タンパク質Gは抗体に結合する2つのドメイン(B1、B2)を含み、Qはタンパク質精製のためのタグであり、x、yおよびzはそれぞれ0または1であり、nは1〜10である。)
タンパク質Gは、グループG連鎖球菌(streptococci)から分離されたバクテリア細胞膜タンパク質であって、哺乳動物の抗体のFc部分およびFab部分に結合するものと知られている (J. Immunol. Methods 1988, 112,113-120)。ところが、タンパク質Gは、抗体のFc部分に対する結合力がFab部分に対する結合力より約10倍程度高いと知られている。天然のタンパク質GのDNA配列は分析されて公知になっている。連鎖球菌タンパク質G変異体と連鎖球菌タンパク質Aは、グラム陽性細菌(Gram-positive bacteria)から発見される、細胞表面に関連した多様なタンパク質の一つであって、免疫グロブリン抗体に結合するという特徴がある。それらの中でも、連鎖球菌タンパク質G変異体が連鎖球菌タンパク質Aよりさらに有用に用いられているが、これは、連鎖球菌タンパク質G変異体がより広い範囲の哺乳動物の抗体と結合することができるから、抗体の受容体としての使用にさらに適するためである。
【0022】
本発明において、タンパク質Gは、その起源が特に制限されず、抗体結合力を保有する限りは、天然型のタンパク質Gにアミノ酸の欠失、付加、置換などがなされたものも本発明の目的に応じて使用できる。本発明の実施例では、連鎖球菌タンパク質Gの遺伝子のうち抗体に結合する結合ドメイン(B1、B2)のみを使用した。
【0023】
タンパク質G−B1ドメインは3つのβ−sheetと1つのα−helixから構成されるが、これらの中でもC末端の3番目のβ−sheetとα−helixが抗体Gとの結合に関与する。B1ドメインは配列番号1で示し、B2ドメインは配列番号2で示す。B1のアミノ酸配列とB2のアミノ酸配列とを比較すると、4個の配列の差異があるが、構造の差異は殆どない。本実施例では、B1ドメインの場合、N末端側に10個のアミノ酸を除去した形態を使用したが(図1)、10個のアミノ酸が除去された形態は抗体との結合機能に何の影響もないことが知られている(Biochem. J. (1990) 267, 171-177, J. mol. Biol (1994) 243, 906-918, Biochemistry (2000) 39, 6564-6571)。
【0024】
本発明において、システインタグ「(Cys)n」とは、タンパク質GのN末端に融合する少なくとも一つのシステインからなるペプチドのことをいう。システインタグは、例えば1〜10個のシステインから構成される。好ましくは、システインは1〜5個のシステイン、さらに好ましくは1〜3個のシステインからなるタグである。
【0025】
本発明のタンパク質G変異体において、システインタグは、タンパク質Gに直接共有結合によってあるいはリンカーLを介して連結できる。リンカーは、タンパク質Gとシステインとの間に挿入されるもので、任意の配列を有するペプチドである。リンカーは2個〜10個のアミノ酸からなるペプチドであれば済む。本発明の実施例では、5個のアミノ酸からなるリンカーを使用した。本発明のシステインタグは、タンパク質Gの内部に挿入されたものではなく、タンパク質Gが固体支持物質に付着するときに方向性を提供するためのものであって、リンカーを付着させると、チオール基が外部にさらに露出され易くてバイオセンサに効率よく方向性を付与して結合させることができる。
【0026】
本発明のタンパク質G変異体は、分離を便利にするために、C末端にタンパク質精製のためのタグ(Q)をさらに含むことができる。本発明の実施例では、ヘキサヒスチジンをC末端に結合させたが、本発明の目的上、タンパク質精製のためのタグは公知のタグを制限なく使用することができる。本発明の変異体は、原核細胞の開始コドンであるメチオニンを含んでもよく、含まなくてもよい。本発明の実施例では、それぞれ1〜5個のシステインが連結された変異体を製造した。
【0027】
本発明は、前記タンパク質G変異体をコードする核酸配列、これを含む発現ベクター、および前記発現ベクターで形質転換された宿主細胞に関する。ベクターは、宿主細胞にDNAを導入してタンパク質G変異体を発現させるための手段であって、プラスミドベクター、コスミドベクター、バクテリオファージベクターなどが使用でき、プラスミドベクターが好ましい。本発明の目的上、発現ベクターはプロモータ、開始コドン、終止コドン、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサなどの発現調節エレメントを含むことができる。
【0028】
実施例では、N末端に1〜5個のシステインがタグ付けされた連鎖球菌タンパク質G変異体をコードする塩基配列を含む発現ベクター(pET−cys1−L−proteinG、pET−cys2−L−proteinG、pET−cys3−L−proteinG、pET−cys4−L−proteinG、pET−cys5−L−proteinG)を図2に示すように製造した。図3は前記発現ベクターによって形質転換されたE.coliから発現されたシステインタグ付きタンパク質の発現様相を示すタンパク質電気泳動写真(SDS−PAGE)である。
【0029】
宿主細胞は、本発明のタンパク質G変異体を発現することが可能な任意の宿主細胞を使用することができる。大腸菌(E. coli)、バチルスサブチリス(Bacillus subtilis)などがその例である。
【0030】
本発明のタンパク質G変異体は、ペプチド合成法によって製造することもできるが、遺伝工学的方法によって特に効率よく製造することができる。遺伝工学的方法は、遺伝子操作によって所望のタンパク質を大腸菌(E. coli)などの宿主細胞から多量発現させる方法であって、これに関する技術は、公知の文献に詳細に記述されている(molecular biotechnology: Principle and Application of Recombinant DNA ; ASM Press: 1994, J. chem. Technol. Biotechnol. 1993, 56, 3-13)。
【0031】
システインはチオール残基を持っているアミノ酸であり、このシステインを遺伝工学的にタンパク質に挿入すればタンパク質を特異的に固定化することができることが知られている(FEBS Lett. 1990, 270, 41-44, Biotechnol. Lett. 1993, 15, 29-34)。連鎖球菌タンパク質GのC末端にシステインを結合させる方法は公知になっている。ところが、本発明では、連鎖球菌タンパク質G変異体の活性部位から遠く離れているN末端に、チオール基のあるシステインをタグ付けした。連鎖球菌タンパク質Gが抗体に結合する活性部位はC末端(3番目のβ−sheetとα−helix)に存在するので、システインをタンパク質G変異体の内部ではなくN末端に付着させることにより、C末端にシステインをタグ付けするなどの方法によるときに生じうる抗体の結合能力喪失を最小化した。
【0032】
これを立証する具体的な一実施例として、本発明者らは、N末端システインタグ付きタンパク質G変異体とC末端システインタグ付きタンパク質G変異体を金薄膜の表面に結合させ、抗体の結合能力を、表面プラズモン共鳴に基づいたバイオセンサ(SPR)によって表面プラズモン共鳴信号の変化から測定した。同一濃度のN末端システインタグ付きタンパク質G変異体とC末端システインタグ付きタンパク質G変異体とを金薄膜の表面に結合させ、類似な量のタンパク質が結合したことを確認した。その後、低濃度の抗体(0.5μg/mL)を反応させ、N末端システインタグ付きタンパク質G変異体とC末端システインタグ付きタンパク質G変異体の抗体結合能力を確認した。その結果、0.5μg/mLの抗体を反応させたとき、支持体に固定されたN末端システインタグ付きタンパク質G変異体の抗体結合能力が、支持体に固定されたC末端システインタグ付きタンパク質G変異体に比べて約30%(N末端:396RU、C末端:276RU)程度高かった。上記結果より、低濃度では支持体に固体されたN末端システインタグ付きタンパク質G変異体が、支持体に固定されたC末端システインタグ付きタンパク質G変異体より高い抗体結合率を持つことが分かった。よって、N末端システインタグ付きタンパク質Gが、抗体に結合する活性部位としてのC末端部位から遠く離れているので、タンパク質Gが抗体に結合する能力の喪失が最小化されたことを立証した(図9)。
【0033】
本発明の実施例では、1個、2個、3個、4個および5個のシステインを結合させた連鎖球菌タンパク質G変異体を製造した(実施例2)。上記の発明によって遺伝子操作を行った後、タンパク質発現ベクターに挿入してタンパク質を発現させ、しかる後に、タンパク質電気泳動によってタンパク質を分離した。この際、1個〜3個のシステインをタグ付けした場合より多い活性型の組み換え連鎖球菌タンパク質G変異体が生産された。
【0034】
本発明の他の様態では、前記タンパク質G変異体を固体支持物質の表面に結合させて製造されたバイオチップおよびバイオセンサの製造方法に関する。
【0035】
前記固体支持物質としては、表1に記載された金属またはメンブレイン、セラミック、ガラス、高分子表面またはシリカなどが使用できる。
【0036】
【表1】

【0037】
本発明の好適な一具体例では、前記で製造したタンパク質G変異体が直接金属表面(金、銀、銅、鉄、白金、亜鉛など)および半導体に結合して固定化されたバイオチップおよびバイオセンサを提供する。本発明では、システインタグ付きタンパク質G変異体が金薄膜の表面に吸着される反応を実時間で感知することが可能な表面プラズモン共鳴に基づいたバイオセンサ(SPR)によって表面プラズモン共鳴信号の変化を測定した。その結果、1個〜3個のシステインをタグ付けした組み換えタンパク質(平均約2400RU)と、タグ付けしていない組み換えタンパク質(平均約2700RU)の表面プラズモン共鳴信号の変化にあまり差異がなかったが(図4)。1〜3個のシステインをタグ付けしたタンパク質Gを金薄膜の表面に結合させた後、抗体に結合させたとき、表面プラズモン共鳴信号の変化が、タグ付けしていない組み換えタンパク質(1000RU)に比べて、1個のシステインをタグ付けした組み換えタンパク質は約4倍(4000RU)、2個のシステインをタグ付けした組み換えタンパク質は約3.2倍(3200RU)、3個のシステインをタグ付けしたタンパク質は約4.8倍(4800RU)程度それぞれ増加した(図5)。これは、本発明に係るタンパク質G変異体が金薄膜の表面に抗体を固定化することに非常に有用であることを示す。
【0038】
本発明の別の具体例では、システインタグ付き連鎖球菌タンパク質G変異体によって抗体が結合した金ナノ粒子を提供する。金ナノ粒子に、システインをタグ付けしていない組み換えタンパク質Gと1個、2個および3個のシステインをタグ付けした組み換え連鎖球菌タンパク質G変異体が結合した後、抗体と反応する様相をタンパク質電気泳動によって確認した。その結果、金ナノ粒子に抗体のみ反応したときよりは、連鎖球菌タンパク質G変異体を結合させた後で抗体を反応させたときにさらに多くの抗原が結合した。また、タグ付けしていない組み換えタンパク質より、1個、2個および3個のシステインをタグ付けした組み換え連鎖球菌タンパク質G変異体はさらに多くの抗原が結合した。上記の結果より、システインタグ付き組み換え連鎖球菌タンパク質G変異体が、金ナノ粒子における抗原の固定化に有用であることを確認することができた(図6)。
【0039】
本発明の別の実施例では、本発明のシステインタグのチオール基がセラミック、ガラス、高分子、シリコン、メンブレインなどに結合しているマレイミド基、エポキシ基、ニトロフェノールプロリン基およびヨウ化メチル基に共有結合してタンパク質G変異体を固体支持物質に固定させた後、これに抗体を結合させたバイオセンサに関する。
【0040】
本発明の実施例では、ガラス表面上に作られたマレイミド基に、1個、2個、3個のシステインを有するシステインタグのチオール基を用いて特異的に連鎖球菌タンパク質G変異体を結合させた後、蛍光で標識されている抗体および対照群としてのストレプトアビジン−Cy3のアレイをマイクロアレイを用いて作り、しかる後に、蛍光スキャナーを用いて特異的タンパク質の結合度合いと非特異的結合が及ぼす影響を測定した。その結果、ストレプトアビジン−Cy3(1mg/mL)の蛍光シグナルが現れておらず、抗体モノクローナル抗−ビオチンCy3の濃度が増加するほど、蛍光シグナルが増加することからみて、1個、2個、および3個のシステインをタグ付けした連鎖球菌タンパク質G変異体と抗体反応が特異的に行われたことを確認した。また、同一濃度の連鎖球菌タンパク質G変異体をそれぞれ反応させた後、抗体を反応させたとき、低濃度の抗体と高い結合力を示すことからみて、1個、2個および3個のシステインがタグ付けされた組み換え連鎖球菌タンパク質Gのマレイミド基が結合しているガラス表面などに抗体を固定させることに有用であることを確認することができた(図7)。
【0041】
本発明の別の具体例では、タンパク質G変異体を前記固体支持物質に固定させた後、これに抗体を結合させたバイオセンサを用いて抗原を感知するものに関する。金薄膜の表面にシステインをタグ付けしていない組み換えタンパク質、1個、2個および3個のシステインをタグ付けした組み換え連鎖球菌タンパク質G変異体を結合させた後、抗体を固定化し、しかる後に、抗原が結合することを、表面プラズモン共鳴に基づくバイオセンサ(SPR)によって表面プラズモン共鳴信号の変化から測定した。抗体を結合するにおいて、高濃度の抗体を結合することは抗原の認識に寧ろ妨害になると知られているため(Biosensors and Bioeletronics 21 (2005) 103-110)、低濃度の抗体(0.5μg/mL)を固定化した後、抗原を結合した。その結果、抗体(anti−human Kallikrein 3/PSA antibody、R&D systems)を結合したとき、表面プラズモン共鳴信号の変化が、タグ付きしていない組み換えタンパク質は(114RU)、1個のシステインをタグ付けした組み換えタンパク質は(472RU)、2個のシステインをタグ付けした組み換えタンパク質は(376RU)、3個のシステインをタグ付けしたタンパク質は(491RU)程度増加した。その上に、抗体に結合する抗原(Recombinant Human Kallikrein 3/PSA、0.5μg/mL)を反応させたところ、表面プラズモン共鳴信号の変化が、タグ付けしていない組み換えタンパク質は(7RU)、1つのシステインをタグ付けした組み換えタンパク質は(49RU)、2つのシステインをタグ付けした組み換えタンパク質は(41RU)、3つのシステインをタグ付けした組み換えタンパク質は(74RU)程度増加した。この実験によって、3つのシステインをタグ付けした組み換えタンパク質が効果的に抗原を結合させるということが分かった(図8)。
【0042】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0043】
[発明の様態]
実施例1:システインタグ付き連鎖球菌タンパク質G変異体のタンパク質発現の分析
<1−1>1個、2個、3個、4個および5個のシステインをタグ付けした連鎖球菌タンパク質G変異体の遺伝子製作
N末端に1個、2個、3個、4個および5個のシステインをタグ付けするために、6個のプライマーを製作した。これらの6個のプライマーのうち、5個のセンスプライマーの塩基配列にはATG(開始コドン)の後にTGC(システインコドン)を1個〜5個まで添加し、タンパク質Gとの連結環としてGAC GAC GAC GAC AAG(4個のAspコドンと1個のリシンコドン)を含んでいる。また、この遺伝子を発現ベクターpET21a(Novagen)に挿入するために、N末端のプライマーにはNdeIを、C末端のプライマーにはXhoI制限酵素切断部位を導入した。連鎖球菌ゲノム遺伝子を得て前記プライマー(配列番号3と配列番号8の塩基対、配列番号4と配列番号8の塩基対、配列番号5と配列番号8の塩基対、配列番号6と配列番号8の塩基対、配列番号7と配列番号8の塩基対)で重合鎖反応(PCR(polymerase chain reaction))して、抗体に結合するドメインとして知られている(B1[10個の切断された初期アミノ酸残基を有する形態]、B2)アミノ酸部分のみを得た。得られたフラグメントを各プライマーに導入された制限酵素で切断した後、NdeIおよびXhoI制限酵素で切断されたpET21aベクターに挿入してpET−cys1−L−proteinG、pET−cys2−L−proteinG、pET−cys3−L−proteinG、pET−cys4−L−proteinG、pET−cys5−L−proteinGベクターを製作した(図2)。前記発現ベクターはN末端にMetを発現する。
プライマー1:センス(配列番号3)
5’−CATATGTGCGACGACGACGACAAGAAAGGCGAAACAACTACTGAAG−3’
プライマー2:センス(配列番号4)
5’−CATATGTGCTGCGACGACGACGACAAGAAAGGCGAAACAACTACTGAAG−3’
プライマー3:センス(配列番号5)
5’−CATATGTGCTGCTGCGACGACGACGACAAGAAAGGCGAAACAACTACTGAAG−3’
プライマー4:センス(配列番号6)
5’−CATATGTGCTGCTGCTGCGACGACGACGACAAGAAAGGCGAAACAACTACTGAAG−3’
プライマー5:センス(配列番号7)
5’−CATATGTGCTGCTGCTGCTGCGACGACGACGACAAGAAAGGCGAAACAACTACTGAAG−3’
プライマー6:アンチセンス(配列番号8)
5’−CTCGAGTTCAGTTACCGTAAAGGTCTTAGT−3’
【0044】
<1−2>1個、2個、3個、4個および5個のシステインをタグ付けした連鎖球菌タンパク質G変異体の発現を示すタンパク質電気泳動写真
製作されたpET−cys1−L−proteinG、pET−cys2−L−proteinG、pET−cys3−L−proteinG、pET−cys4−L−proteinG、pET−cys5−L−proteinGによって形質転換されたE.Coli BL21を37℃でO.D.(optical density)(A600nm)0.6となるまで振とう培養した後、総濃度1mMのIPTG(isopropyl β- D-thiogalactopyranoside)を添加して25℃でタンパク質発現を誘導した。14時間の後、細胞を遠心分離して得た大腸菌を超音波(Brason、Sonifier450、3KHz、3W、5min)で破砕した後、全体タンパク質溶液を得た。また、遠心分離によって溶解性分画タンパク質溶液と非溶解性分画タンパク質に分離して溶液をそれぞれ得た。ここで得られたタンパク質溶液を緩衝液(12mM Tris−Cl、pH6.8、5%グリセロール、2.88mMメルカプトエタノール、0.4% SDS、0.02%臭化フェノールブルー)と混合して100℃で5分間加熱した後、厚さ1mmの15%分離ゲル(pH8.8、横20cm、縦10cm)上に5%貯蔵ゲル(pH6.8、横10cm、縦12.0cm)を覆ったポリアクリルアミドゲルにロードした後、200〜100V、25mAで1時間電気永動し、クマシー染色液で染色して組み換えタンパク質を確認した。
【0045】
図2のLaneの説明は、次のとおりである。
【0046】
(A)Lane1:タンパク質サイズマーカー
Lane2:プラスミドpET−cys1−L−proteinGで形質転換された大腸菌の全体タンパク質
Lane3:プラスミドpET−cys1−L−proteinGで形質転換された大腸菌の溶解性分画タンパク質
Lane4:プラスミドpET−cys1−L−proteinGで形質転換された大腸菌の非溶解性分画タンパク質
Lane5:プラスミドpET−cys2−L−proteinGで形質転換された大腸菌の全体タンパク質
Lane6:プラスミドpET−cys2−L−proteinGで形質転換された大腸菌の溶解性分画タンパク質
Lane7:プラスミドpET−cys2−L−proteinGで形質転換された大腸菌の非溶解性分画タンパク質
Lane8:プラスミドpET−cys3−L−proteinGで形質転換された大腸菌の全体タンパク質
Lane9:プラスミドpET−cys3−L−proteinGで形質転換された大腸菌の溶解性分画タンパク質
Lane10:プラスミドpET−cys3−L−proteinGで形質転換された大腸菌の非溶解性分画タンパク質
(B)Lane1:タンパク質サイズマーカー
Lane2:プラスミドpET−cys4−L−proteinGで形質転換された大腸菌の全体タンパク質
Lane3:プラスミドpET−cys4−L−proteinGで形質転換された大腸菌の溶解性分画タンパク質
Lane4:プラスミドpET−cys4−L−proteinGで形質転換された大腸菌の非溶解性分画タンパク質
Lane5:プラスミドpET−cys5−L−proteinGで形質転換された大腸菌の全体タンパク質
Lane6:プラスミドpET−cys5−L−proteinGで形質転換された大腸菌の溶解性分画タンパク質
Lane7:プラスミドpET−cys5−L−proteinGで形質転換された大腸菌の非溶解性分画タンパク質
プラスミドpET−cys1−L−proteinGで生産されたタンパク質:cys1−G
プラスミドpET−cys2−L−proteinGで生産されたタンパク質:cys2−G
プラスミドpET−cys3−L−proteinGで生産されたタンパク質:cys3−G
プラスミドpET−cys4−L−proteinGで生産されたタンパク質:cys4−G
プラスミドpET−cys5−L−proteinGで生産されたタンパク質:cys5−G
【0047】
<1−3>1個、2個または3個のシステインをタグ付けした連鎖球菌タンパク質G変異体と対照群(システインをタグ付けしていない連鎖球菌タンパク質G変異体)の発現および精製
<1−2>のように発現した後で得られた溶解性タンパク質溶液を精製するために、IDA excelluloseで充填されたカラムにヘキサヒスチジンが結合されている6種の組み換え遺伝子を発現させた細胞を破砕した溶液をロードした。ヒスチジンが結合されている6種の組み換えタンパク質を溶離溶液(50mM Tris−Cl、0.5Mイミダゾール、0.5M NaCl、pH8.0)で溶離した。溶離されたタンパク質溶液は緩衝溶液PBS(pH7.4)で透析した。
【0048】
実施例2:1個、2個または3個のシステインをタグ付けした連鎖球菌タンパク質G変異体と、タグ付けしていない連鎖球菌タンパク質G変異体組み換えタンパク質を金薄膜の表面に結合させて抗体を固定化:表面プラズモン共鳴センサを介して表面上の変形された組み換えタンパク質を金薄膜の表面に結合させ、抗体を固定化する反応を表面プラズモン共鳴信号の変化から測定。
【0049】
金薄膜チップを95%硫酸と30%過酸化水素水(体積比3:1)の混合溶液(65℃)で30分間処理し、3次蒸留水でチップを洗浄した後、エタノールで洗浄し、3次蒸留水でチップを洗浄した。その後、窒素ガスでチップを乾燥させてBia−core表面プラズモン共鳴センサに装着した。装着されたチップに濃度200μg/mLの1個、2個および3個のシステインをタグ付けした組み換えタンパク質と、タグ付けしていない組み換えタンパク質を150μLずつ金薄膜の表面に5μL/minの流れ率で注入させ、前記タンパク質を固定化した。金薄膜の表面と前記タンパク質とを反応させた後、非特異的な反応を防ぐために、BSA(3mg/mL)100μLを5μL/minの流れ率で注入した。その後、抗体(100μg/mL、human IgG、Sigma)、100μLを5μL/minの流れ率で注入して金薄膜にタンパク質G変異体および抗体が固定されたバイオセンサを製作し、プラズモン共鳴信号の変化を測定した(図5)。
【0050】
実施例3:金ナノ粒子に1個、2個または3個のシステインをタグ付けした連鎖球菌タンパク質G変異体と、タグ付けしていない連鎖球菌タンパク質G変異体とを結合させ、抗体を固定化:金ナノ粒子に1個、2個または3個のシステインをタグ付けした連鎖球菌タンパク質G変異体と、タグ付けしていない連鎖球菌タンパク質G変異体とを結合させ、抗体を固定化してタンパク質電気泳動によって確認
2.5O.D/mLの金ナノ粒子をPBS緩衝溶液で洗浄した後、100μLの一連の連鎖球菌タンパク質G変異体(200μg/mL)と4℃で16時間反応させた後、抗体10μL(3.5g/mL、抗−ウサギIgG(Whole Molecule)−TRITCコンジュケート、Sigma)を常温で2時間反応させた。また、対照群として2.5O.D/mLの金ナノ粒子に抗体10μL(3.5g/mL)を常温で2時間反応させた。前記反応の後、遠心分離を用いて、反応していない抗体を除去し、PBS緩衝溶液で洗浄した。
【0051】
その後、金ナノ粒子に結合されているタンパク質は、タンパク質電気泳動によって確認した。図6のlaneの説明は次のとおりである;
lane1:金ナノ粒子に直接抗体を結合、
lane2:金ナノ粒子に、システインをタグ付けしていないタンパク質Gを固定化した後、抗体を結合
lane3:金ナノ粒子に、1個のシステインをタグ付けしたタンパク質Gを固定化した後、抗体を結合
lane4:金ナノ粒子に、2個のシステインをタグ付けしたタンパク質Gを固定化した後、抗体を結合
lane5:ナノ粒子に、3個のシステインをタグ付けしたタンパク質Gを固定化した後、抗体を結合
その結果、金ナノ粒子に抗体のみ反応したときよりは、連鎖球菌タンパク質G変異体を結合し抗体を反応させたときにさらに多くの抗原が結合した。また、タグ付けしていない組み換えタンパク質より、1個、2個および3個のシステインをタグ付けした組み換え連鎖球菌タンパク質G変異体はさらに多くの抗原が結合した。上記の結果より、システインタグ付き組み換え連鎖球菌タンパク質G変異体が金ナノ粒子における抗原の固定化に有用であることを確認することができた(図6)。
【0052】
実施例4:ガラス表面上に作られたマレイミド基に、1個、2個、3個のシステインをタグ付けした連鎖球菌タンパク質G変異体を反応させて抗体を固定化:蛍光スキャナを用いて前記変形された組み換えタンパク質を、ガラス表面上にチオール基と共有結合するマレイミド基に結合させ、特異的に抗体が結合する反応を測定
ガラス表面をピラニア(硫酸:過酸化水素、3:1v/v)溶液に浸漬させて20分間90℃のオーブンで反応させた。反応の後、水とエタノールで洗った後、アミン表面を作るために、1%APTS((3-Aminopropyl)trimethoxysilane、09326、SIGMA−ALDRICH)が含まれたエタノール15〜20分間浸漬させて反応させた。反応済みのガラス表面はエタノールで洗浄した後、100℃のオーブンで使用する前まで加熱した。作られたアミン表面上に10mM BMPS(N-[b-Maleimidopropyloxy]succinimide ester、22298、PIERCE、USA)をDMS(dimethyl sulfoxide、D2650、SIGMA−ALDRICH)に溶かして30分間浸漬させて反応させた。SH基と共有結合すべき、最終ガラスの表面上に作られたマレイミド基と1個、2個、3個のシステインをタグ付けした連鎖球菌タンパク質G変異体を表面上に反応させてタンパク質を固定化した。一連の連鎖球菌タンパク質G変異体が固定化された表面に、蛍光標識物質を付着させた抗体モノクローナル抗−ビオチンCy3(C5585、SIGMA−ALDIRCH)および対照群としてのストレプトアビジン−Cy3(Streptavidin-Cy3 from Streptomyces avidinii、S6420 SIGMA−ALDRICH)のアレイをマイクロアレイを用いて作った後、蛍光スキャナを用いて特異的タンパク質の結合度合いと非特異的結合が及ぼす影響を測定した。その結果、ストレプトアビジン−Cy3(1mg/mL)の蛍光シグナルが現れておらず、抗体モノクローナル抗−ビオチンCy3の濃度が増加するほど蛍光シグナルが増加することからみて、1個、2個および3個のシステインをタグ付けした連鎖球菌G変異体との抗体反応が特異的に行われたことを確認した。また、同一濃度の連鎖球菌タンパク質G変異体をそれぞれ反応させた後で抗体を反応させたとき、低濃度の抗体と高い結合力を示すことからみて、1個、2個および3個のシステインをタグ付けした組み換え連鎖球菌タンパク質Gが、マレイミド基が結合されているガラスの表面などに抗体を固定化することに有用であることを確認することができた(図7)。
【0053】
実施例5:1個、2個、3個のシステインをタグ付けした連鎖球菌タンパク質G変異体と、タグ付けしていない連鎖球菌タンパク質G変異体組み換えタンパク質を金薄膜の表面に結合させた後、抗原−抗体反応:表面プラズモン共鳴センサによって表面上の変形された組み換えタンパク質を金薄膜の表面に結合させ、抗体を固定化した後、抗原を感知する反応を表面プラズモン共鳴信号の変化から測定
金薄膜チップを95%硫酸と30%過酸化水素水(体積比3:1)との混合溶液(65℃)で30分間処理し、3次蒸留水でチップを洗浄した後、エタノールで洗浄し、3次蒸留水でチップを洗浄した。その後、窒素ガスでチップを乾燥させてBia−core表面プラズモン共鳴センサに装着した。装着されたチップの金薄膜の表面に、濃度200μg/mLの1個、2個および3個のシステインをタグ付けした組み換えタンパク質とタグ付けしていない組み換えタンパク質を150μLずつ5μL/minの流れ率で注入させて前記タンパク質を固定化した。金薄膜の表面と前記タンパク質を反応させた後、非特異的な反応を防ぐために、BSA(3mg/mL)100μLを5μL/minの流れ率で注入させた。その後、抗体(0.5μg/mL、抗−human Kallikrein 3/PSA抗体、R&D systems)100μLを5μL/minの流れ率で注入して、抗体が固定されたバイオセンサに50μLの抗原(0.5μg/mL、Recombinant Human Kallikrein 3/PSA)を反応させてプラズモン共鳴信号の変化を測定した(図8)。
【0054】
[産業上の利用可能性]
本発明に係るシステインタグ付きタンパク質G変異体は、そのチオール基を介してバイオセンサの固体支持物質に方向性をもって結合して抗体を効率よく結合させることにより、抗原−抗体反応を用いるバイオチップおよびバイオセンサに有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は連鎖球菌タンパク質Gが抗体と結合する結合ドメインB1、B2を示す。
【図2】図2Aはタンパク質Gを作るために製作したフラグメントおよびタンパク質G変異体を作るために製作した5つのフラグメントを示し、図2Bは前記フラグメントを挿入するベクターおよびフラグメントを挿入して連鎖球菌タンパク質Gに1個〜5個のシステインをタグ付けしたタンパク質G変異体を作るために発現ベクターを製造する方法を示す(pET−cys1−L−proteinG、pET−cys2−L−proteinG、pET−cys3−L−proteinG、pET−cys4−L−proteinG、pET−cys5−L−proteinG、cys:システイン、L:リンカー、4個のアスパラギンと1個のリシン、proteinG:連鎖球菌タンパク質Gの構造である。)
【図3】図3はシステインタグ付き連鎖球菌タンパク質G変異体の大腸菌における発現様相を示すタンパク質電気泳動写真(SDS−PAGE)である。
【図4】図4は金薄膜の表面に4個の異なる種類の連鎖球菌タンパク質G変異体を結合させて測定した表面プラズモン共鳴信号の変化を示すグラフである(4個の異なる種類の連鎖球菌タンパク質G;proteinG:対照群としてチオール基が結合していない連鎖球菌タンパク質G、cys1−G:1個のシステインが結合している連鎖球菌タンパク質G、cys2−G:2個のシステインが結合している連鎖球菌タンパク質G、cys3−G:3個のシステインが結合している連鎖球菌タンパク質G)。
【図5】図5は金薄膜の表面に4個の異なる種類の連鎖球菌タンパク質G変異体(図4に示したものと同一)が結合している層上にヒトの抗体を反応させて得た表面プラズモン共鳴信号の変化を示すグラフである。
【図6】図6は金ナノ粒子に4個の異なる種類の連鎖球菌タンパク質G変異体(図4に示したものと同一)を固定化した後、抗体を結合させて抗体の固定化様相をタンパク質電気泳動によって示す写真である。
【図7】図7はマレイミド基が結合しているガラス表面にシステインをタグ付けした連鎖球菌タンパク質G変異体を固定化した後、その表面に、蛍光標識物質が付いている抗体モノクローナル抗−ビオチンCy3および対照群としてのストレプトアビジン−Cy3のアレイをマイクロアレイを用いて作った後、蛍光スキャナを用いて得たイメージ写真である。
【図8】図8は金薄膜の表面に4個の異なる種類の連鎖球菌タンパク質G変異体(図4に示したものと同一)が結合している層上にPSAに対する抗体(0.5μg/mL)を反応させた後、抗原としてのPSA(0.5μg/mL)を反応させて得た表面プラズモン共鳴信号の変化を示すグラフである。
【図9】図9はN末端システインタグ付きタンパク質G変異体とC末端システインタグ付きタンパク質G変異体を金薄膜の表面に結合させ、抗体の結合能力を、表面プラズモン共鳴に基づいたバイオセンサ(SPR)を介して表面プラズモン共鳴信号の変化を測定した結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で表される、N末端システインタグ付きタンパク質G変異体。
Metx−(Cys)n−Ly−タンパク質G−Qz
(Metはメチオニン、Lはリンカー、Qはタンパク質精製のためのタグであり、x、yおよびzはそれぞれ0または1であり、nは1〜10である。)
【請求項2】
前記タンパク質Gは連鎖球菌に由来したタンパク質GのB1およびB2ドメインからなることを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質G変異体。
【請求項3】
前記タンパク質GのB1ドメインはN末端の10個のアミノ酸が除去されたことを特徴とする、請求項2に記載のタンパク質G変異体。
【請求項4】
システインタグが1〜5個のシステインからなる、請求項1または2に記載のタンパク質G変異体。
【請求項5】
システインタグが3個のシステインからなる、請求項2に記載のタンパク質G変異体。
【請求項6】
リンカーが4個のアスパラギンと1個のリシンからなる、請求項1に記載のタンパク質G変異体。
【請求項7】
請求項2または3のタンパク質をコードする核酸配列。
【請求項8】
請求項7の核酸配列を含む発現ベクター。
【請求項9】
請求項8の発現ベクターを含むKCTC10948BP、KCTC10949BP、KCTC10950BP、KCTC10951BP、およびKCTC10952BPよりなる群から選択される、宿主細胞。
【請求項10】
請求項9の宿主細胞を培養し、これからタンパク質G変異体を分離することを特徴とする、タンパク質G変異体の製造方法。
【請求項11】
請求項1のタンパク質を固体支持物質の表面に結合させて製造されたバイオチップまたはバイオセンサ。
【請求項12】
固体支持物質がセラミック、ガラス、高分子、シリコンおよび金属の中から選ばれることを特徴とする、請求項10に記載のバイオチップまたはバイオセンサ。
【請求項13】
前記金属が金である、請求項11に記載のバイオチップまたはバイオセンサ。
【請求項14】
請求項1のタンパク質に抗体を結合させて製造された、請求項10〜12のいずれか1項に記載のバイオチップイまたはバイオセンサ。
【請求項15】
固体支持物はセラミック、ガラス、高分子およびシリコンの中から選ばれ、これらの表面はマレイミド基、エポキシ基、ニトロフェノールプロリン基およびヨウ化メチル基から選ばれるいずれか一つの基で修飾されたことを特徴とする、請求項12に記載のバイオチップまたはバイオセンサ。
【請求項16】
請求項1のタンパク質がチオール基を介して前記表面のマレイミド基、エポキシ基、ニトロフェノールプロリン基およびヨウ化メチル基のいずれか一つに共有結合されることを特徴とする、請求項15に記載のバイオチップまたはバイオセンサ。
【請求項17】
請求項14のバイオチップまたはバイオセンサを用いて抗原を分析する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−542203(P2009−542203A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517964(P2009−517964)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【国際出願番号】PCT/KR2007/002996
【国際公開番号】WO2008/016221
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(505093367)コリア リサーチ インスティチュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (13)
【Fターム(参考)】