説明

システイン非含有で有効なテクネチウム(Tc)又はレニウム(Re)のキレート化ペプチドタグ及びその使用

本発明は、このペプチドタグを含む興味ある蛋白質に放射性核種を結合させるのに用いることができ、このようなタグ化蛋白質をイメージ化させる、テクネチウム(Tc)又はレニウム(Re)放射性核種を含むペプチドタグに関する。特に、本発明は、Tc又はRe原子をキレート化するが、システイン残基を含まないペプチドタグに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、このペプチドタグを含む興味ある蛋白質に放射性核種を結合させるのに用いることができ、このようなタグ化蛋白質をイメージ化させるペプチドタグに関する。特に、本発明は、Tc又はRe原子をキレート化するが、システイン残基を含まないペプチドタグ並びに該タグを組み込んだベクター及び存在する蛋白質に前記タグを結合させる化学的方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有効なイメージング剤を生産するための、抗体、蛋白質又はペプチドの放射能標識化は、適切な化合物の欠如により現在妨げられている、分子イメージングの分野において依然非常に重要な目標である。
【0003】
抗原又は受容体を標的化する天然分子の本来の能力は、それら本来の親和性及び特異性のために、非常に特異的なイメージング用又は治療用分子を生み出すことができる。イメージング剤は、基本的に、このようなペプチド又は蛋白質から標識された分子をイメージングシステムで検出可能にする特性を有する元素での標識化により得ることができる。
【0004】
開発された様々な方法のうち、99mTcでの放射能標識化は、非常に魅力的なアプローチとして長らく認識されてきた。99mTcは、テクネチウム‐99の準安定核同位体であり、これはインビボ診断イメージングにほぼ理想的な特性を有する。それは半減期(約6h)を有し、これはイメージング剤の製造を可能にしたり、診断研究を行ったりするには十分に長いが、患者を重大な照射量に曝露せずにミリキュリー量の投与を許容するには十分短い。
【0005】
140 Kevの単色光子及びその89%の同位体存在度は、γカメラ又はSPECTシステムを用いたイメージングの研究に理想的である。更に、99mTcは、元の放射性核種99Moと99mTc放射性核種との間の一過的な平衡を利用して、99Mo/99mTcジェネレータから容易に得ることができる。99Moと99mTcとの分離は、生理的食塩水溶液を用いたジェネレータからのペルテクネテートTcO4-の溶離によって容易に達成される。
【0006】
Tc核は、次いで溶離したペルテクネテートの還元によって製造できる。Tcの幾つかの酸化状態を生じることがあり、それを用いることができる。最も研究された核の1つは二原子Tc(V)核[TcO]3+に一致し、より最近になって、ペプチド及び蛋白質を標識化するTc(I)トリスカルボニル[Tc(CO)3]+の生産及び使用について多数の研究が報告された。
【0007】
レニウムは、同様に有利な特性を有し、このことは、レニウムを、放射能標識化及びインビボ/インビトロイメージング及び治療用途に適する元素たらしめる。更に、Re及びTcは非常に似た化学的性質を有し、Reが生産するのにより安価であり、その幾つかの同位体がTcよりも長い半減期を有するので、これはReを幾つかの用途についてより良い放射性核種とし得る。
【0008】
幾つかのストラテジーは、テクニチウム又はレニウムを用いて、ペプチド及び蛋白質を放射能標識化することを既に提案している:
‐第1の方法は、いわゆる直接的方法に相当し、これは興味ある分子中に存在するジスルフィドブリッジの還元及び生じたスルフヒドリル(sulfudryl)基へのTc核のキレート化を含む(1)。この第1の方法は単純で行うのが容易に見えるが、幾つかの制限を有する(2)。第1は、蛋白質の構造へのキレート化の影響、したがって標的受容体への蛋白質の結合能力に対するキレート化の影響に関する。通常、ジスルフィドブリッジは蛋白質の正確なフォールディング/構造の形成及び維持に重要な役割を果たす。ジスルフィドブリッジを崩壊させることによって、得られた標識化蛋白質は、その標的への親和性を欠落し得る。更に、キレート化したTc核は、興味ある蛋白質の結合領域と相互作用するか、又は該結合領域に位置し、その生物学的活性の部分的又は全体的な喪失をもたらし得る。
【0009】
‐第2の間接的方法により、二官能性キレート化剤(BFCA)を用いて、Tc核で蛋白質及びペプチドを標識化することが提案されてきた。この方法は、リジン残基が最も頻繁に関与する化学選択的反応による、強力なTc核配位子の蛋白質表面への化学的グラフト形成に基づいている。最も広く用いられる配位子の1つは、HYNIC(ヒドラジノニコチンアミド)基である(3,4)。このような強力な配位子の存在が標識化率及び結果として形成されたTc錯体の安定性を増加させるが、この方法の主な欠点は、蛋白質表面のBFCAの位置を制御できないことであり、よってこのことは、不均一な標識化分子の蓄積をもたらし得る。不均一な標識化分子のサブセットは、結合能力が低下されている可能性を有し、少なくとも定量的及び再現的研究を困難にさせ得る。
【0010】
‐第3のアプローチは、前形成キレート(preformed chelate)と呼ばれ、抗体を標識化することを提案してきた(5,6)。しかしながら、このアプローチは、存在する任意のリジン残基と反応する前形成Tc‐キレート錯体の位置に対する制御不能性に関して、直接及び間接的方法と同様の制限に縛られる。
【0011】
ペプチドタグ配列を用いたTc又はReでの蛋白質の部位特異的標識化は、上記の方法の代案として提唱されてきた。このアプローチは、興味ある蛋白質のN‐末端又はC‐末端の位置に、Tc/Re核をキレート化できるペプチド配列を付加することからなる。幾つかのペプチド配列は、[TcO]3+配位子として記載されている(7)。これらペプチドは、四配位座配位子と四角錐状のオキソ‐テクネチウム錯体を形成する。報告された天然アミノ酸含有ペプチドの大半は、そのチオレート基を介してキレート化に加わるシステイン残基を有する。
【0012】
このタイプのペプチドタグの例は、N3Sキレート化モチーフを有するGly‐Gly‐Cys(配列番号28)及びLys‐Gly‐Cys(配列番号29)配列並びにN2S2モチーフを有するCys‐Gly‐Cys(配列番号30)である(8,9)。しかしながら、不対システインの存在が蛋白質のフォールディングプロセスを妨害することによって、改変蛋白質の生産収率を減少させるか、又はその最終的なコンホメーションを変更させ得ることは当該技術において公知である。不対システインはまた、貯蔵中にターゲティング分子の変更をもたらし得る。
【0013】
蛋白質を生成するアミノ酸を含むがシステイン残基を含まない[TcO]3+キレート化‐ペプチド配列は、したがって、優良な候補分子であるように見えるであろう。しかしながら、このようなペプチド配列は極端に珍しく、当該技術において、グリシン及びアラニン残基を含むペプチド配列だけが、N4モチーフ内の[TcO]3+核をキレート化できることが示されている(10,11)。これらペプチドは、[TcO]3+のsyn及びanti異性体の相互変換を示し、インビボ試験より前のこれら錯体についての安定性のデータは報告されていない。解離した[TcO]3+錯体がバックグラウンドのより大きな非特異的シグナルを生じ、より低いSN比をもたらすので、安定性は放射能標識化試薬に必須の特性である。
更に、[AGGG]TcO錯体(配列番号31)が30当量のシステインに対して完全に不安定であることが近年証明された(12)。
【0014】
近年、ジペプチド配列がTcO/ReOキレート化配列として提案されている(13)。これらジペプチドは、それらがTc/Reをキレート化する官能基を3つしか含まないという大きな欠点を有し、このことが錯体の安定性に対して影響し、インビボ応用のためのそれらの有用性が低下することが予測される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ペプチド化学又は分子生物学のいずれかによって蛋白質に組み込まれ得る、新規で有効な[TcO]3+キレート化ペプチド配列の同定は、したがって、依然としてイメージング剤の開発のための重要な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明の第1の観点によれば:
a)Xa12345bc(配列番号37)、
ここで、
‐Xa又はXcは、存在するとき、少なくとも2つのアミノ酸を含み、ペプチドタグを興味ある蛋白質に結合させ、
‐Xbは、存在するとき、ペプチド配列RRMQYNRR(配列番号38)を含み、前記残基の少なくとも1つは、置き換えられる本来の残基中に存在する少なくとも1つの側鎖が存在しない非天然又は天然アミノ酸で置き換えられ、
‐X1は、その側鎖にOH基を含む任意のアミノ酸からなり;特にX1はスレオニン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸を含む群より選択され、
‐X2は、システインを除く任意のアミノ酸からなり、
‐X3は、アルギニン、グリシン、リジンからなる群より選択されるアミノ酸からなり、
‐X4は、アラニン、グリシン、リジン又はアルギニンのいずれかである少なくとも1つのアミノ酸からなり、
‐X5は、システインを除く少なくとも1つのアミノ酸を含む;
b)群a)に記載のペプチドタグのレトロインベルソ型
からなる群より選択されるペプチドタグの、Tc又はRe放射性核種で興味ある蛋白質を放射能標識化するための使用が提供される。
【0017】
本発明において、キレート化は、本発明により標識化されるペプチド又は蛋白質である二配位座又は多配位座配位子へのTc/Re核の結合を意味する。
【0018】
本発明者らは、ペプチドUBI 29‐41(配列番号1)の[TcO]3+標識化を詳細に調査した。このペプチドは、マウスのマクロファージから最初に単離された蛋白質ユビキチジンの29〜41位残基に対応するトリデカマーである(14)。UBI 29‐41は、5つのアルギニン残基及び1つのリジンを有する配列TGRAKRRMQYNRR(配列番号1)のカチオン性抗菌ペプチドである。
【0019】
システイン残基の不在にも拘らず、UBI 29‐41は、以前に直接的アプローチによって、イメージング剤としてのその使用を可能にする比放射能並びにインビトロ及びインビボでの安定性で標識化された(15‐17)。しかしながら、UBI 29‐41中の[TcO]3+核キレート化部位の明確な同定を可能にする実験データは、どの標識化研究からも報告されなかった。しかしながら、実験データがなくとも、半経験則的な予測に基づいて、UBI 29‐41中のアルギニン7又はリジン5の側鎖残基を介して、TcO核をキレート化できることが提唱されてきた(18)。
【0020】
本発明者らの発見は、[TcO]3+核にリジン5及びアルギニン7側鎖の化学官能基を介して配位したというFerro‐Floresらの提唱(18)に対する反証を挙げる。この関係において、本発明者らは、残基K5のノルロイシン残基による置換え(UBI‐A3類似体、表I)及びR7のノルバリン残基による置換え(UBI‐A5類似体、表I)が、標識化率の如何なる減少ももたらさないことを示し、これらの残基が[TcO]3+核の配位に直接的に関与しないことをはっきりと示している。
【0021】
その代わりに、本発明者らは、UBI 29‐41中の配列T1234に対応する最初の4残基X1234がキレート化に最も大きな影響を与えることを示した。特に、本発明者らは、天然のスレオニン残基(X1)の側鎖中に存在するOH基が、放射性核種のキレート化において非常に重要な役割を果たすことを見出した。これらの発見を基礎に、本発明者らは、[TcO]3+核のキレート化に用いることができ、UBI 29‐41よりも小さいサイズであり、[TcO]3+核に対する同等又はより優れた標識化率を有するペプチドタグ及び/又はUBI 29‐41と同等のサイズであるが[TcO]3+核に対する著しく優れた標識化率を有するペプチドタグの組を開発した。
【0022】
ペプチドタグは、興味ある蛋白質のC又はN末端への該タグの組込みを容易にするように、それぞれそのN又はC末端にリンカーを更に含んでいてもよい。蛋白質配列のC又はN末端への付加が、蛋白質の予測されず望ましくないコンホメーション及び/又は機能的変化をもたらし得ることは、当該技術において公知である。このような問題を多少なりとも解決するために、ペプチドリンカーを用いて、C又はN末端に位置する蛋白質の本来の機能的ドメインを新規な機能的ドメインに結合させることができる。このようなペプチドリンカーは、通常、天然又は新規のいずれかの機能的ドメインに影響を与えることが予測されない一連の幾つかのアミノ酸残基を含む。例としては、一連の6ヒスチジン残基又は2グリシン残基が含まれるが、種々の長さ及びアミノ酸組成のその他多くのリンカーが当該技術において公知である。
【0023】
更に、ペプチドタグは、UBI 29‐41の残基5〜13に対応する更なるUBI 29‐41の一部を含んでいてもよく、この中の少なくとも1つの残基が、天然残基の側鎖を欠落する非天然又は天然アミノ酸残基で置き換えられるときに、ペプチドタグの放射性核種標識化を増大させることが本発明者らにより示されている。
【0024】
これら放射能標識化蛋白質は、インビトロ及びインビボイメージング並びに放射線療法のような多様な目的のために用いられてもよい。
特に、X5はノルロイシンを含む。
特に、X2はグリシンを含む。
【0025】
特に、ペプチドタグは以下から選択される:
(配列番号14);(配列番号15);(配列番号16);(配列番号17);(配列番号18);(配列番号19);(配列番号20);(配列番号21);(配列番号22);(配列番号23);(配列番号24);(配列番号25);(配列番号26);(配列番号27)(配列番号34);(配列番号39);(配列番号2);(配列番号3);(配列番号4);(配列番号5);(配列番号6);(配列番号7);(配列番号8);(配列番号9);(配列番号10);(配列番号11);(配列番号12);(配列番号13)。
【0026】
本発明者らはまた、CO‐NHペプチド結合の代わりにNH‐CO結合を含むペプチドである、本発明者らが開発したペプチドタグのレトロインベルソ型が類似の特性を有することを示した。更に、レトロインベルソペプチドは、L‐ペプチドよりも大いに蛋白質分解に耐性であり、それゆえインビトロ及びインビボイメージング試薬のためのより優良な候補分子である。このようなレトロインベルソペプチドは、標識化される蛋白質の末端に組み込むことができる。
【0027】
特に、タグは、N末端残基上に遊離N末端を含む。
本発明者らは、遊離アミン基と共に、遊離N末端を有するペプチドタグが、遊離N末端を欠落するものよりも高いレベルの[TcO]3+核キレート化を示すことを示した。
特に、ペプチドタグは、C末端残基上に遊離カルボキシレートを含む。
特に、Tc放射性核種は99mTcである。
特に、Re放射性核種は186Re又は188Reである。
【0028】
本発明のこの観点によれば:
1)a)Xa12345bc(配列番号37)、
ここで、
‐Xa又はXcは、存在するとき、少なくとも2つのアミノ酸を含み、ペプチドタグを興味ある蛋白質に結合させ、
‐Xbは、存在するとき、ペプチド配列RRMQYNRR(配列番号38)を含み、前記残基の少なくとも1つは、置き換えられる本来の残基中に存在する少なくとも1つの側鎖が存在しない非天然又は天然アミノ酸で置き換えられ、
‐X1は、その側鎖にOH基を含む任意のアミノ酸からなり;特に、X1は、スレオニン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸を含む群より選択される。
‐X2は、システインを除く任意のアミノ酸からなり、
‐X3は、アルギニン、グリシン、リジンからなる群より選択されるアミノ酸からなり、
‐X4は、アラニン、グリシン、リジン又はアルギニンのいずれかである少なくとも1つのアミノ酸からなり、
‐X5は、システインを除く少なくとも1つのアミノ酸を含む;
b)群a)に記載のペプチドタグのレトロインベルソ型
からなる群より選択されるペプチドタグを、前記興味ある蛋白質に組み込む工程と、
2)工程1)で得られた生成物でTc又はRe放射性核種をキレート化する工程と
を含む興味ある蛋白質を放射能標識化する方法もまた提供される。
【0029】
更に、本発明のこの第1の観点はまた、本発明のこの第1の観点に記載の1つ又はそれより多いペプチドタグをコードする、単離又は精製されたヌクレオチド分子に関する。
【0030】
本発明の第2の観点によれば、本発明の第1の観点に記載のペプチドタグのコード配列と、前記ペプチドタグにインフレームで蛋白質コード配列が導入され、融合蛋白質を形成するように配置されたクローニングサイトと、標的細胞又は無細胞発現系において前記融合蛋白質を発現させるのに必要な転写因子とを含むことを特徴とするベクターが提供される。
【0031】
ベクターは、他には発現ベクター又は発現構築物として知られ、一般に、特定の遺伝子を標的細胞に導入するために用いられるプラスミドである。一旦ベクターが細胞内に入れば、遺伝子によりコードされる蛋白質は、細胞の転写及び翻訳機構により生産される。プラスミドは、エンハンサ及びプロモータ領域として作用する調節配列を含み、ベクターが有する遺伝子の効率的な転写をもたらすようにしばしば工学的に操作される。巧みに設計されたベクターの目標は、順次遺伝子産物に翻訳される安定的なメッセンジャーRNAの大量生産である。
【0032】
遺伝子産物の発現後、蛋白質の精製を要する場合があり、遺伝子産物を宿主細胞の蛋白質から精製できる。精製プロセスを簡素化するために、クローニングされた遺伝子は、連続ヒスチジン(His)タグ(multiple histidine(His) tag)又は任意のその他の適切な小さく検出可能なペプチド配列のようなタグを有していてもよい。
【0033】
興味ある蛋白質のクローニングされたコード配列を、選択されたペプチドタグにインフレームであるように配置することは、標準的な分子生物学的手法に従って、特にJoseph Sambrook及びDavid Russellによる「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」(第3版)(ISBN 978-087969576-7)に従って行われ得る。
【0034】
特に、本発明のこの観点によれば、ベクターは、少なくとも1つの真核及び/又は原核細胞において、ペプチドタグを含む蛋白質の発現を駆動できる。
或いは、本発明のこの観点によれば、ベクターは、少なくとも1つの細胞非含有発現系において、ペプチドタグを含む蛋白質の発現を駆動でき得る。
【0035】
本発明の第3の観点によれば、ペプチドタグが液相ペプチド合成(41)又は固相ペプチド合成(SPPS)(40)により合成される本発明の第1の観点に記載のペプチドタグを合成する方法が提供される。
【0036】
ペプチドは、1つのアミノ酸のカルボキシ基又はC末端を、別のアミノ酸のアミノ基又はN末端に結合させることにより合成される。意図しない反応の可能性が明瞭であるとき、保護基が通常必要となる。一般に、ペプチド合成方法は、液相又は固相で行われる。
【0037】
SPPSにおいて、不溶性であるが多孔性の小さな固体ビーズは、ペプチド鎖をその上に構築できる機能性ユニット(「リンカー」)で処理される。ペプチドは、切断試薬によりビーズから切断されるまで、ビーズに共有結合的に付着し続ける。ペプチドは、したがって、固相表面で「固定化され」、濾過プロセス中保持できるが、液相の合成試薬は洗い流される。
【0038】
この方法は、カップリング‐脱保護の反復サイクルに基づいている。固相に付着したペプチドの遊離N末端アミンは、N末端が保護されたアミノ酸の単一ユニットに結合される。このユニットは次いで脱保護され、更なるアミノ酸が付着し得る新規なN末端アミンが露われる。
【0039】
これらペプチド合成方法について多くの変化形が当該技術において存在し、これらは本発明の範囲内である。
本発明において、ペプチドタグとペプチドタグを含む蛋白質との両方を、更なる使用のために合成できる。
【0040】
本発明の第4の観点によれば、前記蛋白質が液相又は固相合成により合成される本発明の第1の観点によるペプチドタグを含む蛋白質を合成する方法が提供される。
【0041】
本発明の第5の観点によれば:
a)前記標的蛋白質の精製サンプルを活性化剤で活性化する工程と、
b)前記ペプチドタグの精製サンプルを活性化剤で活性化する工程と、
c)工程a)及び工程b)の生成物をインキュベートし、ペプチドタグ‐標的蛋白質複合体を精製する工程と
を含む、本発明の第1の観点によるペプチドタグを標的蛋白質に化学的に結合させる方法が提供される。
【0042】
液相ペプチド合成に類似の手法を用いて、ペプチドタグを興味ある蛋白質にインビトロで、ライゲーション又は架橋手法を用いることにより付着できる。当該技術においてはその他の結合手法が存在し、本発明の範囲内である。
【0043】
本発明の第6の観点によれば:
a)Xa12345bc(配列番号42)と、
ここで、
‐Xaは、存在するとき、少なくとも2つのアミノ酸を含み、KVAKQEKKKKK(配列番号43)以外のペプチド配列からなり、前記ペプチドタグを興味ある蛋白質に結合させ、
‐Xbは、存在するとき、ペプチド配列RRMQYNRR(配列番号38)を含み、前記残基の少なくとも1つは、置き換えられる本来の残基中に存在する少なくとも1つの側鎖が存在しない非天然又は天然アミノ酸で置き換えられ、
‐Xcは、存在するとき、少なくとも2つのアミノ酸を含み、RRMQYNRR(配列番号38)以外のペプチド配列からなり、前記ペプチドタグを興味ある蛋白質に結合させ、
‐X1は、その側鎖にOH基を含む任意のアミノ酸からなり、
‐X2は、システインを除く任意のアミノ酸からなり、
‐X3は、アルギニン、グリシン、リジンからなる群より選択されるアミノ酸からなり、
‐X4は、アラニン、グリシン、リジン又はアルギニンのいずれかである少なくとも1つのアミノ酸からなり、
‐X5は、システインを除く少なくとも1つのアミノ酸を含む;
b)群a)に記載のペプチドタグのレトロインベルソ型と
からなる群より選択される単離又は精製されたペプチドタグが提供される。
【0044】
特に、X5はノルロイシンを含む。
特に、X1はスレオニン、セリン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸を含む群より選択される。
特に、X2はグリシンである。
【0045】
特に、ペプチドタグは以下から選択される:
(配列番号14);(配列番号15);(配列番号16);(配列番号17);(配列番号18);(配列番号19);(配列番号20);(配列番号21);(配列番号22);(配列番号23);(配列番号24);(配列番号25);(配列番号26);(配列番号27)(配列番号34);(配列番号39);(配列番号2);(配列番号3);(配列番号4);(配列番号5);(配列番号6);(配列番号7);(配列番号8);(配列番号9);(配列番号10);(配列番号11);(配列番号12);(配列番号13)。
【0046】
本発明の第7の観点によれば、前記ペプチドタグが:
a)Xa12345bc(配列番号42)と、
ここで、
‐Xaは、存在するとき、少なくとも2つのアミノ酸を含み、KVAKQEKKKKK(配列番号43)以外のペプチド配列からなり、前記ペプチドタグを興味ある蛋白質に結合させ、
‐Xbは、存在するとき、ペプチド配列RRMQYNRR(配列番号38)を含み、前記残基の少なくとも1つは、置き換えられる本来の残基中に存在する少なくとも1つの側鎖が存在しない非天然又は天然アミノ酸で置き換えられ、
‐Xcは、存在するとき、少なくとも2つのアミノ酸を含み、RRMQYNRR(配列番号38)以外のペプチド配列からなり、前記ペプチドタグを興味ある蛋白質に結合させ、
‐X1は、その側鎖にOH基を含む任意のアミノ酸からなり、
‐X2は、システインを除く任意のアミノ酸からなり、
‐X3は、アルギニン、グリシン、リジンからなる群より選択されるアミノ酸からなり、
‐X4は、アラニン、グリシン、リジン又はアルギニンのいずれかである少なくとも1つのアミノ酸からなり、
‐X5は、システインを除く少なくとも1つのアミノ酸を含む;
b)群a)に記載のペプチドタグのレトロインベルソ型と
からなる群より選択される、単離又は精製された、Tc核をキレート化するペプチドタグが提供される。
【0047】
本発明者らは、本発明者らが開発したペプチドタグは、Tc核を安定的にキレート化できることを示した。
特に、キレート化したTc核は、(TcO)3+又は[Tc(CO)3]+、好ましくは(TcO)3+である。
【0048】
特に、X5はノルロイシンを含む。
特に、X1はスレオニン、セリン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸を含む群より選択される。
特に、X2はグリシンである。
【0049】
特に、ペプチドタグは以下からなる群より選択される:
(配列番号14);(配列番号15);(配列番号16);(配列番号17);(配列番号18);(配列番号19);(配列番号20);(配列番号21);(配列番号22);(配列番号23);(配列番号24);(配列番号25);(配列番号26);(配列番号27)(配列番号34);(配列番号39);(配列番号2);(配列番号3);(配列番号4);(配列番号5);(配列番号6);(配列番号7);(配列番号8);(配列番号9);(配列番号10);(配列番号11);(配列番号12);(配列番号13)。
【0050】
本発明の第8の観点によれば:
a)興味ある蛋白質を含む水溶液に
(i)塩基性pH条件下の還元剤の水溶液と、
(ii)テクネチウム酸(VII)の塩(ペルテクネテート塩)の水溶液と
を逐次的に加える工程と:
b)1〜10分間室温における、工程a)からの溶液をインキュベートする工程と
を含む、本発明のここまでの観点によるペプチドタグを含む興味ある蛋白質をTc核で標識化する方法が提供される。
好ましくは、還元剤の水溶液は、SnCl2である。
好ましくは、前記ペルテクネテート塩は、ナトリウム、カリウム又はリチウム塩である。
【0051】
本発明者らは、本発明者らが開発したキレート化ペプチドタグの1つを含む興味ある蛋白質が、幾つかのプロトコルを用いてTc核で標識化できることを示した。本発明者らはまた、このような標識化された興味ある蛋白質が安定的に標識化されることを示した。
好ましくは、工程a)中、(iii)テクネチウム酸(VII)のアンモニウム塩(アンモニウムペルテクネテート又はNH4TcO4)の水溶液も加える。
【0052】
本発明をより深く理解するために、そして如何にして本発明を実施できるかを示すために、例示だけの目的で、本発明に記載の特定の実施態様、方法及びプロセスを、添付の図面に関連付けて以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】UBI 29‐41の直接的[TcO]3+標識化: 99mTc/99Moジェネレータからの(99m+g)Tc(A)及び99mTc/99Moジェネレータからの[NH499TcO4]+(99m+g)Tcからの99gTc(B)を用いたUV吸収を実線で示し、放射活性を点線で示す。
【図2】遊離型(点線)及び[TcO]3+との錯体(実線)にあるUBI 29‐41の220 nmでの吸収スペクトル。
【図3】a)RC‐121(配列番号40)及びb)TGRRRGG‐RC‐121(配列番号41)の概略図。
【図4】1μgのTcO[HTGRRRGG‐RC‐121](134 μCi)(A、B)の注射並びに1μgのHTGRRRGG‐RC‐121(134 μCi)及び125μgのRC‐121(C、D)の同時注射の4時間後のAR4‐2J異種移植マウスの全身断面図。A及びCは断面の写真であり、B及びDはβ‐イメージャ(BIOSPACE inc.)で作製された99mTc(15Kev)のβ‐放射の検出を表す。
【0054】
本発明者らにより意図される特定の態様を、実施例によって以下に記載する。以下の記載において、非常に多数の詳細が、本発明の徹底的な理解を提供するために設定される。しかしながら、本発明がこれら特定の詳細に限定されずに行われ得ることは、当業者に明らかである。その他の場合において、周知の方法及び構造は、記載を不必要に不明瞭にしないように、記載していない。
【0055】
定義
‐ポリペプチド配列中のアミノ酸残基は、本明細書中で一字コードに従って示し、これにおいて、例えばQはGln又はグルタミン残基を意味し、RはArg又はアルギニン残基を意味し、DはAsp又はアスパラギン酸残基を意味する。
‐キレート化されたペプチドタグは、Tc又はRe核をキレート化しており、それに化学的に結合されている短いペプチド配列を指称する。
【0056】
‐N3Oキレート化配列は、3つの窒素原子及び1つの酸素原子を介して、TcO核をキレート化する配列を指称する。同様に、N4キレート化配列は、4つの窒素原子を介してTcO核をキレート化する配列を指称する。
‐天然残基は、別の天然又は非天然アミノ酸によるその置換え前の明記されたペプチド配列中に存在するアミノ酸残基を指称する。
【0057】
‐非天然/天然アミノ酸残基。天然アミノ酸残基は、様々な化学的手段により製造することもできるが、インビボで発見され、少なくとも1つの自然に発生する生物により生産されるものである。非天然アミノ酸残基はインビボで発生せず、様々な化学的手段によってのみ製造できる。
【0058】
‐ペプチドリンカーは、天然の機能的ドメイン又は新規な機能的ドメインのいずれにも影響しないと予測される、一連の幾つかのアミノ酸残基を指称する。例として、一連の6ヒスチジン残基又は2グリシン残基を含むが、様々な長さ及びアミノ酸組成の多くのその他のリンカーが当該技術において公知である。
‐ペプチドタグは、Tc又はRe核をキレート化できる短いペプチド配列を指称する。
【0059】
‐Tc又はRe核は、活性型に化学的に還元されているTc又はRe原子を指称する。Tc核の例として、Tc(V)二原子核[TcO]3+又はTc(I)トリスカルボニル[Tc(CO)3]+を含む。
‐TcOは、記載されたキレート化ペプチドタグ配列との錯体にあるときのTc核の呼称であり得、TcO[ペプチド]又はTcO‐ペプチドの形式にある。
【0060】
‐側鎖は、種々の自然に発生するアミノ酸残基間で異なるアミノ酸の化学基を指称し、例えばグリシンにおいてH‐であり、アラニンにおいてCH3‐である。別の残基の側鎖を欠落する天然又は非天然アミノ酸は、関連する側鎖が失われているものであり、例えばチロシンは、OH基を有する環状炭化水素からなる側鎖を含むが、類似のアミノ酸であるフェニルアラニンはOH基を含まず、よって天然の(チロシン)残基の側鎖を欠落するアミノ酸としてチロシンを置き換えるのに用いることができる。
【0061】
‐SPECTは、γ線を用いた核医薬断層撮影イメージング手法である単色光子放射型コンピュータ断層撮影法を意味する。それは、γカメラを用いた従来の核医学平面イメージングに非常に類似している。しかしながら、それは3D情報を提供できる。この情報は、患者の横断面図を提供するが、必要に応じて自由にリフォーマット又は操作できる。
‐「syn/anti異性体」‐一般に用いられるジグザグ図において、置換基は、炭素鎖と同側、すなわちsyn配向又は反対側、すなわちanti配向にあり得る。
【実施例】
【0062】
実施例1:材料及び方法
フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸(Nova Biochem, Laufelfingen, Switzerland)は、以下の側鎖保護基と共に用いた:Ser及びThrにtert‐ブチルエーテル;Asp及びGluにtert‐ブチルエステル;Argに2,2,5,7,8‐ペンタメチルクロマン‐6‐スルホニル;Cys、Gln及びAsnにトリチル;並びにLysにtert‐ブチルオキシカルボニル。ペプチド合成のための溶剤及び試薬は、SDS(Peypin, France)又はFluka(St. Quentin Fallavier, France)からであった。
【0063】
アンモニウムペルテクネテート(NH4TcO4)は、National Oak Ridge Laboratory(USA)から購入し、開示される手順を用いて再酸化した(37)。標識化実験において用いられる水溶液の濃度を、244 nmにおいて、純粋なペルテクネテートについて6220 M‐1 cm‐1の吸収係数を仮定し、電子吸収分光法を用いて測定した。
標識化反応混合物の分析は、Prostar 335フォトダイオードアレイ検出器(Varian, Les Ulis, France)とBerthold HERM LB500 γ‐検出器(Berthold, Thoiry, France)とを備えたVarian Prostar HPLCシステムを用いて行った。
【0064】
1.1 ペプチド合成
設計されたペプチドを、自動ペプチド合成装置(モデル433A, Applied Biosystems, Foster City, USA)上での固相合成により、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)‐アミノ酸誘導体、Novasyn TGR(Nova Biochem, France)及びN‐ヒドロキシ‐ベンゾトリアゾール(HOBt)/N,N'‐ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCI, Applied Biosystems)媒介結合を用いることによって得た。ペプチド合成を、1回当たり30分のカップリング及び10倍過剰量のFmoc‐アミノ酸(1 mモル)を用いて0.10 mmolのスケールで行い、その後無水酢酸でキャップした。合成完了後、95%トリフルオロ酢酸、2.5%の水、2.5%のトリイソプロピルシランの混合物で室温にて、13‐マーペプチドについては2時間及びより短いペプチドについては30分間処理することにより、側鎖保護基を同時に除去しながら、樹脂からペプチドを切断した。13‐マーについて、次いで樹脂を濾過し、メチル‐tert‐ブチルエーテル中で4℃にて遊離ペプチドを沈降させた。3回の遠心分離及びエーテルでの洗浄後、ペプチドを20%酢酸に溶解させ、凍結乾燥させた。より短いペプチドについて、溶媒を真空中で除去し、得られた黄色の油状物を20%酢酸に溶解させ、凍結乾燥させた。還元された(reduced)ペプチドを、溶離剤A(水中の0.1%トリフルオロ酢酸)中の溶離剤B(水中の0.09%トリフルオロ酢酸、90%アセトニトリル)の非線形勾配を80分間にわたって、Supelco BioWide Pore C18カラム(10 × 250 mm)上で、4.5 mL/分の流速にて用いる、分取逆相高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によって精製した。ピークを分析的HPLCで分析し、>95%純粋な画分を集積し、凍結乾燥させた。
【0065】
1.2 ペプチド配列分析
アミノ酸配列の分析は、ABI モデル 492 Procise 蛋白質配列決定システム(Applied Biosystems)を用いて、自動エドマン分解により行った。
【0066】
1.3 標識化手順及びHPLC分析
典型的な実験において、15 μlの580 μMペプチド水溶液に、水中の1 mg/mlのSnCl2溶液5 μlを加え、その後10 μlの0.1N NaOH溶液及び新しく調製したNH4TcO4の5.5 mM水溶液2.5 μlを加えた。反応混合物を室温にて5分間インキュベートした。水中の0.05%トリフルオロ酢酸中のカフェインの0.1 mg/ml溶液50 μlを加え、定量化標準として用いた。溶液を0.8 μlの1N HClで酸性化し、溶離剤A(水中の0.05%トリフルオロ酢酸;最終pH 〜2.5)で120 μlに希釈した。この混合物をGrace Altima C8カラム(Grace Davison, Lokeren, Belgium)及び溶離剤A中の溶離剤B(水中の0.045%トリフルオロ酢酸、90%アセトニトリル)の最適化された非線形勾配を用いて分析した。
【0067】
BPTI(配列番号32)及びTGRRRペプチドタグ(配列番号22)とペプチドリンカーGG(配列番号36)とを含むその変化形TGRRRGG‐BPTI(配列番号33)の場合に、50 μgの蛋白質を[TcO]3+標識化実験に用いたことを除き、プロトコル2(実施例2を参照)に記載のものと同様の条件を適用した。
【0068】
各ペプチドについて、標識化率は、内部キャリブレーションを用いて算出する。第1の実験を上記条件下に行い、反応しなかったペプチドに対応するピークの面積を、内部基準カフェインに対応するピークのものに対して標準化し、比R1を得た。第2の実験を、TcO4-を反応混合物に加えないことを除いて、同一の条件下に行った。反応しなかったペプチドに対応するピークを、カフェインのものに対して標準化し、比R2を得た。標識化率を(1−R1/R2)として算出した。
【0069】
1.4 システイン攻撃(Cysteine challenge)
16 μgの凍結乾燥させたTcO[UBI 29‐41](配列番号1)を含む溶液をPBS pH 7.4中のシステイン溶液32 μlに加えた。システイン溶液の3つの濃度を用いた:333、53及び3のシステイン:Tc‐UBI‐WTモル比にそれぞれ対応する100 mM、15 mM及び1 mM。サンプルを20時間310Kにてインキュベートし、その後HPLC及びESI‐MS分析を行った。類似の実験をTcO[TGRRR](配列番号22)錯体について行った。13 μgの凍結乾燥させたTGRRR(配列番号22)‐TcO錯体を、50のTcO[TGRRR](配列番号22):システインのモル比に対応する、PBS pH 7.4中の15 mMシステイン溶液64 μlに加えた。この溶液を20時間室温にてインキュベートし、HPLC分析を行った。
【0070】
1.5 TcO[ペプチド]錯体の大規模精製及び単離
水1 ml中の1 mgのUBI 29‐41(配列番号1)に、333 μlの1 mg/ml SnCl2水溶液、667 μlの0.1 N NaOH及び133 μlの新しく調製したアンモニウムペルテクネテート水溶液を加えた。反応混合物を5時間室温にてインキュベートした。それを9 mlの50 mM水性トリフルオロ酢酸アンモニウム溶液で希釈した後に、HPLCに注入した。テクネチウム錯体を、4.6 × 150 mmのAltima C8カラム上で、40分間にわたる溶離剤A(50 mMアンモニウムトリフルオロ酢酸)中の溶離剤B(70%水性メタノール溶液中の50 mMアンモニウムトリフルオロ酢酸)の20%〜80%の線形勾配を用いて精製した。
【0071】
1.6 質量分析
LC‐MS分析を、ESI‐イオントラップ質量分析器Esquire HCT(Bruker-Daltonics, Germany)とオンラインで連結したHPLC Agilent 1100 Seriesで行った。溶離は、Grace Altima C8カラム(Grace Davison, Lokeren, Belgium)上で、600 μL/分の流速にて、溶離剤A(水中の0.05%トリフルオロ酢酸)中の溶離剤B(水中の0.045%トリフルオロ酢酸、90%アセトニトリル)の線形勾配で行った。分離システムを用いて、カラムからの溶離物の90%をDAD(ダイオード‐アレイ検出器)検出器に割り当て、UV吸収を測定した。
【0072】
カラムからの溶離物の残り10%は、MS収集のためにESI‐MSに割り当てた。窒素を乾燥及び噴霧用ガスとし、ESIにより生じたイオンのトラップ及び冷却の効率化並びにフラグメント化プロセスのためにヘリウムガスをイオントラップに導入した。イオン化及び質量分析条件(キャピラリ高電圧、スキマ及びキャピラリ出口電圧並びにイオン移動パラメータ)を変化させ、化合物の検出に最適化した。
【0073】
1.7 NMR実験
UBI‐29‐41ペプチド(配列番号1)及び精製したTcO錯体を、1.5 mMにて、600 μlの90%H2O/10%D2O中で調製した。pHを両方のサンプルについて5.8に調整した。1H化学シフトを内部基準3‐(トリメチルシリル)[2,2,3,3,-2H4]プロピオネート(TSP)を用いて測定した。
主鎖及び側鎖帰属実験を、295Kにて、UBI‐29‐41(配列番号1)及びそのTcO錯体について、5 mmの三重共鳴凍結探針を備えたBruker DRX-700分光計で行った。
NMR実験を行って、TGRRR(配列番号22)の側鎖及び主鎖共鳴を帰属させ、そのTcO錯体を、90%H2O/10%D2O及び100%D2O中に5 mm BBI Z 勾配探針を備えたBruker DRX-500に記録した。
【0074】
1H‐1H及び1H‐13Cの2D実験を相次いで記録した。1H‐1H全相関分光法(TOCSY)は、混合用DIPSI2シークエンスでの80ミリ秒の混合時間を用いて記録し、勾配での3‐9‐19パルスシークエンスでのウォーターサプレッションを用いて記録した。2Dオフ共鳴ROESYスペクトル(TROESY)は、100ミリ秒のROESYスピンロック時間を用いて記録した。
2D1H‐13C HSQC‐TOCSY実験は、感度が改善された同核種Hartman‐Hahn混合用DIPSI2シークエンスを用いて、double-INEPT移動による相関を用いて記録した。スペクトルをTopspin Brukerソフトウェアで処理し、プログラムSPARKYで分析した。
【0075】
1.8 ラット細胞培養
ソマトスタチン受容体サブタイプ2(SST‐2)を主に発現するラット膵カルチノーマAR4‐2J細胞を用いて、99mTcO標識化ソマトスタチン類似体をインビボで評価した。細胞を組織培養皿(Falcon)中で、37℃にて5%CO2及び95%加湿空気下に、1%L‐グルタミン、20%胎児ウシ血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン及びアンフォテリシンB(1μg/mL)を補給した4.5g/lグルコースを有するDMEM培地中でインキュベートし、成長させた。継代培養は、トリプシン/EDTA(0,05%/0,02% w/v)溶液を用いて行った。全ての製品をSigma社(Saint-Quentin Fallavier; France)から購入した。100%のコンフルーエンスにて、培地を除去し、Versenバッファ(PBS + 5 mM EDTA)を用いて細胞を回収し、氷冷ホスフェートバッファで洗浄し、最後に1000gにて7分間(4℃)遠心分離した。ペレットを氷冷バッファ(10 mM MgCl2, 0,25% BSA, 50 mM HEPES pH 7.5, 1%プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma社))中に懸濁し、細胞懸濁液を氷中に保存し、結合実験に用いた。
【0076】
1.9 [125I]‐[Tyr1]‐ソマトスタチン結合アッセイ
AR4‐2J細胞について全ての結合実験を37℃にて、10 mM MgCl2, 0,25% BSA, 50 mM HEPES pH 7.5, 1%プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma社)中で行った。AR4‐2J細胞懸濁液の密度を結合アッセイ前に毎回確認し、提示された放射性リガンドが10%より多く特異的に結合しないよう(概しておよそ3000 cpm)に調整した。類似の実験を行って、SST‐2を発現するAR4‐2J細胞懸濁液との[125I]‐[Tyr1]‐ソマトスタチンの平衡結合に対するRC‐121(配列番号40)、HTGRRRGG‐RC‐121(配列番号41)及びTcO[HTGRRRGG‐RC‐121]の濃度上昇の効果を測定した。概して、トレーサとしての0.5 nM [125I]‐[Tyr1]‐ソマトスタチンは、15 μlの細胞懸濁液と共に、45分間100 μlの最終アッセイ体積中でインキュベートした。非特異的結合は、5μMのソマトスタチン‐28の存在下に測定した。インキュベーションを、氷冷洗浄バッファ(Tris 10 mM pH7.2)を加えて終了させ、0.5%ポリエチレンイミン中に予め浸漬させたWhatman GF/Cガラスファイバフィルタで迅速に濾過した。フィルタ活性をCobraγカウンタ中で測定した。各実験を少なくとも2回重複して行った。
【0077】
1.10 結合データ分析
個々の実験(n≧2)からの競合結合曲線を、Kaleidagraph 4.0(Synergy Software, Reading, PA)を用いた非線形回帰分析により分析した。
非特異的結合の減算と標準化との後に、[125I]‐[Tyr1]‐ソマトスタチンで得られたデータを、Hill方程式を用いて分析し、IC50値を推定した。[125I]‐[Tyr1]‐ソマトスタチンの結合阻害におけるペプチドの親和性は、pKiとして表され、Cheng‐Prussoff補正(SST‐2についてKd=1nM)を適用することによって、IC50値から算出した。
【0078】
1.11 マウスにおける生体分布及びイメージング研究
体重20gの雌性Balb/cヌードマウスをCharles River Laboratories(L'Arbresle, France)から購入した。マウスは従来の動物施設で飼育され、食物及び飲料を自由に摂取できた。実験プロトコルは、動物実験についての地方倫理委員会によって認可されている。
【0079】
滅菌PBS中に新しく懸濁した、500〜600万のAR4‐2J細胞をマウスに皮下移植した。接種から13日後、触診可能な充実性腫瘍塊を示した。この時、150‐250μCiに相当する、約1μgの99(m+g)TcO‐標識化化合物をマウスの尾静脈に注入した。1時間、4時間又は24時間後、マウスを麻酔中に放血して犠牲にした。興味ある器官、血液及び尿を回収し、重さを測った。放射活性をγカウンタで測定した。評価した化合物はTcO[HTGRRRGG‐RC‐121]及びTcO[HTGRRR]であった。ブロックコントロール実験は、TcO[HTGRRRGG‐RC‐121]錯体と、125倍過剰量の参照化合物RC‐121との同時注入により達成した。
【0080】
1.12 イメージング
全身断面分析:マウスの尾静脈に注射し、4時間後犠牲にした。イメージングについて、マウスを麻酔し、次いで、CNT組織再分布を防ぐためにドライアイスとイソペンタンとの‐80℃の混合物に浸漬した。マウンティングミディアム中で身体をブロッキングした後、スライシングミクロトーム(LEICA Microsystems, France)を用いて、組織断片(20 μm)を‐20℃にて作製した。断片を室温にて2時間、シリカゲルの存在下に保持し、確実に完全乾燥させた。乾燥組織断片の放射活性の定量的測定及びイメージングは、β‐イメージャ(Bioscape Lab, Paris, France)を用いて行った。
【0081】
実施例2 結果
2.1 99m+gTc UBI 29‐41の合成、放射能標識化及び特徴決定
2つの異なるプロトコルを用いて、ペプチドUBI 29‐41(配列番号1)を標識化し、その錯体を特徴決定した。99Mo/99mTcジェネレータから溶離した、商業的に入手可能なペルテクネテート溶液を用いたUBI 29‐41(配列番号1)の直接的な標識化のために、プロトコル1は、Melendez-Alafortらにより報告されたものから適合させた(19)。
【0082】
プロトコル1において、即時調製した1mg/mlのSnCl2水溶液5μl、10μlのNaOH 0.1 N溶液、2.4μlの生理的食塩水中の100 nM 99(m+g)TcO4-を、水中の1mg/mlUBI 29‐41(配列番号1)水溶液15μlに逐次的に加えた。UBI 29‐41(配列番号1)、SnCl299(m+g)TcO4-の最終濃度は、それぞれ270μM、840μM及び7.4μMであった。溶液のpHは10.5であった。
【0083】
反応物は、5分間室温にて放置した。得られた生成物を逆相HPLCによって特徴決定した。ペプチドUBI29‐41(配列番号1)の標識化中に形成した錯体を特徴決定するための、本発明者らが好んだ方法はESI‐MSである。この手法に適合する酸性条件が錯体の脱配位を生じないことを確実にするために、pH2.5、5.5及び6.8の3つの溶離条件を用いた。これら3つの条件間で著しい差は見られなかった。
【0084】
図1Aは、pH2.5で溶離される標識化溶液の(220 nmにおける)UVクロマトグラムとγ‐ラジオクロマトグラムとの重ね合わせを示す。γ‐ラジオクロマトグラムは、220 nmにて最も大きな吸収を示す主要な種よりも長い保持時間で溶離する生成物の存在を示す。しかしながら、プロトコル1で用いられる反応条件では、本発明者らは相当な量のTc[UBI 29‐41](配列番号1)錯体を得ることができず、ESI‐MSによる生成物の特徴決定の妨げとなった。これは主に、99Mo/99mTcジェネレータにより導出されるTc濃度の限界による。
【0085】
標識化率を増加させ、Tc標識化実験の生成物を特徴決定するために、本発明者らは第2の標識化プロトコルであるプロトコル2を設計した。即時調製した1mg/ml SnCl2水溶液2.5μl、10μlのNaOH 0.1N溶液、生理的食塩水中の100 nM 99(m+g)TcO4- 2.4μl及び[NH499gTcO4]の5.5 mM溶液2.4μlを、水中の1mg/mlUBI 29‐41(配列番号1)水溶液15μlに逐次的に加えた。UBI 29‐41(配列番号1)、SnCl2及び99Tcの最終濃度は、それぞれ270μM、840μM及び407μMであった。反応混合物を、5分室温にて放置した。
【0086】
プロトコル2を用いたTc標識化実験の生成物の特徴決定は、LC−陽イオンESI−MS分析により達成した。図1Bに説明するように、HPLC UV及び放射性プロフィールは、同一の保持時間にて1つの最も豊富なピークを示した。この最も豊富なピークのLC‐陽イオン‐ESI‐MS特徴決定は、TcO[UBI 29‐41]モノアダクト(1845.6 Daのm/z)の形成によく一致した。この質量は、1733.5 Da(UBI 29‐41)+115 Da(TcO3+)−3 Da(3H+)に一致し得る。これは、実験誤差の範囲内で見られた質量に合致した。更に、モノアダクトの電子吸収スペクトルは、UBI 29‐41(配列番号1)の吸収スペクトルでは観察されない、274 nmを中心とした大きな吸収を示した(図2)。この吸収は、配位子‐金属電荷移動(LMCT)のバンド(ε=8887 mol-1.l.cm-1)に一致し得る。
【0087】
プロトコル2を用いたUBI 29‐41(配列番号1)のTcO標識化率は、材料及び方法に記載のカリブレーション手順を用いて測定した。これは、UBI 29‐41について表Iに報告する、TcO標識化率の正確な測定を可能にした。プロトコル2の実験条件において、UBI 29‐41(配列番号1)の標識化率が79%であったことに注意しなければならない。
【0088】
2.2 TcO3+キレート化を担う側鎖の同定
UBI 29‐41(配列番号1)中のTcO3+キレート化部位の位置を同定するために、本発明者らは、このペプチドの11の類似体を合成した(表I)。これら類似体の各々は、本来の残基の官能基が除去されている非天然又は天然アミノ酸でのユビキチジンのこのフラグメント中に存在する1つの側鎖の置換えに相当する。アルギニン残基はノルバリン(Nva)残基で置き換え、スレオニン、グルタミン酸及びアスパラギン残基はアミノ酪酸(Abu)残基で置き換え、リジン及びメチオニン残基はノルロイシン(Nle)残基で置き換え、チロシンはフェニルアラニンで置き換えた。アラニン及びグリシン残基は置き換えなかった。
UBI 29‐41(配列番号1)の11の類似体は、以下においてUBI‐A1〜UBI‐A11と称される(表I)。
【0089】
表1:UBI 29‐41(UBI‐WT)の類似体の99(m+g)Tc標識化生成物の特徴決定。
【表1】

【0090】
a標識化率は、(1−R1/R2)として算出し、R1は、プロトコル2の条件下での99(m+g)Tc標識化実験において内部基準カフェインの比に対する、反応しなかったペプチドの比に合致し、R2は、TcO4-を除くプロトコル2の条件下での内部基準カフェインの比に対する、反応しなかったペプチドの比に合致する。HPLCピーク積分の不確定性を考慮し、本発明者らは、算出された標識化率について10%未満の不確定性を見積もった。
【0091】
プロトコル2を用いてこれら類似体を標識化し、生成物をHPLC及びESI‐MSにより特徴決定した。1つの類似体だけが、元のペプチドUBI 29‐41(配列番号1)と比較して、標識化率の著しい変化を示した。類似体UBI‐A1は、アミノ酪酸残基によるT1の置換に相当する。この結果は、T1のOH基がTcOキレート化官能基の一部であり得ることを示唆する。類似体UBI‐A2はUBI 29‐41と類似の標識化率を示したので、R2がTcOのキレート化に関与しないことを示唆する。類似体UBI‐A3〜UBI‐A11は、84〜95%の範囲内の[TcO]3+標識化率を示した。これら観察結果は、これら種々の類似体において抑制される化学的官能基のいずれもが、[TcO]3+核のキレート化に直接的に関与しないことを示唆する。
【0092】
UBI 29‐41(配列番号1)中の[TcO]3+キレート化部位及び配位官能基の正確な位置を決定するために、本発明者らは、TcO[UBI 29‐41]錯体及び遊離ペプチドを、1H及び13C NMR分光法により、pH5.8の水溶液中で分析した。遊離ペプチド及びTcO‐ペプチド錯体において、1組の共鳴だけがNMR実験で観察されたので、1つのコンホメーションだけが溶液中に存在するか、又は1つのコンホメーションが圧倒的に多いことが示唆される。
【0093】
UBI 29‐41(配列番号1)及びTcO[UBI 29‐41]ペプチドの1H及び13Cの帰属を、表II及びIIIに報告する。
Tcを含まないUBI 29‐41の場合に残基R7、R12及びR13並びにTcO‐UBI 29‐41錯体の場合に残基R6、R7、R12及びR131H及び13C共鳴は、1H及び13C共鳴の併発が原因で帰属できなかった。しかしながら、TROESYとTOCSY実験とを組み合わせたHSQC‐TOCSY実験において、その他の残基の特徴的なパターンは、UBI 29‐41(配列番号1)及びTcO[UBI 29‐41]錯体の場合にその他の残基全てのNH、Hα、Hβ、Hγ、Hδ、Hε、Cα、Cβ、Cγ、Cδ及びCε共鳴を明確に帰属させることを可能にした。
【0094】
表II:UBI 29‐41の1H及び13C(括弧内)NMR化学シフトの帰属a
【0095】
【表2】

【0096】
a化学シフトはTSPと比較した参照であり、295Kにて測定した。R6、R7、R12及びR131H及び13C共鳴は、シグナルの完全重複が原因で帰属されなかった。b1H化学シフトは、1H‐13C HSQC‐TOCSY実験における残りのHDOシグナルとの共鳴の重複が原因で帰属できなかった。
【0097】
表III:TcO[UBI 29‐41]錯体(UBI‐WT)の1H及び13C(括弧内)NMR化学シフトの帰属。
【0098】
【表3】

【0099】
a化学シフトはTSPと比較した参照であり、295Kにて測定した。R7、R12及びR131H及び13C共鳴は、シグナルの完全重複が原因で帰属されなかった。
【0100】
[TcO]3+の配位部位の位置について情報を与え得る第1の観察結果は、TOCSYスペクトル及びHSQC‐TOCSY実験における、TcO[UBI 29‐41]の残基G2、R3及びA4のアミドプロトンと対応の側鎖プロトンとの間の相関の不存在に関する。これは、これら3つのプロトンがTcO核の形成により失われることを示唆する。
【0101】
2つのサンプルの1H及び13C化学シフトの比較は、その他の興味深い特徴を明らかにした。残基R3及びA4のCα共鳴は、それぞれ10.72及び4.54 ppmの重要な低磁場シフトを示した。更に、残基T1のCβ共鳴は、9.29 ppmの低磁場シフトを示した。遊離ペプチドとその[TcO]3+錯体との間のその他重大な化学シフトの変化を観察した。残基T1のHα共鳴は0.48 ppmのシフトを示したが、この残基のγCH3は、TcO錯体形成により0.376 ppmの高磁場シフトを示した。
【0102】
更に、2つのサンプルの1H共鳴は、遊離ペプチドにおけるNMRタイムスケール中のコンホメーションの平均化が原因で重複したと思われる残基G2のHα1及びHα2プロトンの共鳴が、TcO[UBI 29‐41]錯体において約0.6 ppmの化学シフトの差を生じたことを示した。これは、[TcO]3+核での錯体形成により、ペプチドがG2の領域中の規定された構造に適合し、2つのHαプロトンについて異なる磁場環境をもたらすことを示唆する。UBI 29‐41(配列番号1)とその[TcO]3+錯体との間の1H化学シフトの変化に関する1つの更なる観察結果は、残基K5のHN共鳴に関する。このHNプロトンがTcO[UBI 29‐41]錯体中になお存在するとしても、0.76 ppmの大きな高磁場化学シフトの変化を示し、その磁場環境が[TcO]3+核の錯体形成により著しく改変されていたことを示す。
【0103】
概して、これら観察結果は、UBI 29‐41中の[TcO]3+キレート化部位がペプチドのN末端側に位置し、残基T1、G2、R3及びA4を含むことを示唆する。残基G2、R3及びA4は、[TcO]3+核の錯体形成により失われるアミド基窒素により[TcO]3+核に配位する可能性がある。
【0104】
2.3 UBI 29‐41(配列番号1)由来の、短く効果的な [TcO]3+キレート化ペプチドの配列。
上記の、TcO[UBI 29‐41]錯体のNMR分析と関連する、UBI 29‐41(配列番号1)及びその類似体の[TcO]3+キレート化能に関する結果により、本発明者らは、UBI 29‐41のN末端の位置にキレート化部位を配置できた。このため、本発明者らは、最小配列TGRA(配列番号14)を合成し、プロトコル2に従って、その本来の[TcO]3+キレート化能を評価した。このペプチド配列について測定した標識化率は11%であった(表IV)。この結果は、プロトコル2の実験条件において、TGRAペプチドの小分画が[TcO]3+核をキレート化するとしても、UBI 29‐41中のTcOキレート化のその他重要な決定因子が、TGRAにおいて失われていることを示す。
【0105】
元のペプチドUBI 29‐41(配列番号1)と比較したこの結果により、本発明者らは、一連のペプチドを合成し、この配列中の[TcO]3+キレート化効率の決定因子を詳細に調査した。これらペプチドの配列及びそれらの標識化率を表IVに報告する。ESI‐MS分析により、得られた錯体が、全ての場合において、3 H+が引き抜かれた[TcO]3+のモノアダクトに相当することが示された。
【0106】
表IV:UBI 29‐41フラグメント及びその類似体の99(m+g)Tc標識化生成物の特徴決定。
【0107】
【表4】

【0108】
a標識化率は、(1−f)として算出し、fは、プロトコル2を用いた99(m+g)Tc標識化実験において、HPLCにより定量化された、反応しなかったペプチドの分画である。SD:HPLCピーク積分の不確定性を考慮し、本発明者らは、算出した標識化率について10%未満の不確定性を見積もった。
【0109】
ペプチドTGRAK(P2)(配列番号15)、TGRAKR(P3)(配列番号16)及びTGRAKRR(P4)(配列番号17)は、元の配列UBI 29‐41(配列番号1)の、最初の5、6及び7N末端残基にそれぞれ相当する。P2、P3についてプロトコル2を用いて得られた[TcO]3+標識化率は、それぞれ40%、67%であった。上記の観察結果は、K5とR6との2つの残基の存在が、TGRA配列(配列番号14)と比較して標識化率の大きな増加を招くので、K5‐R6対が[TcO]3+キレート化効率に重要な役割を果たすことをはっきりと示した。対照的に、ペプチドP3及びP4について得られた結果の比較は、残基R7が[TcO]3+標識化率を著しく改善しないことを示した。このことは、ペプチドP4及びP3について得られた標識化率と類似していた、残基R7がノルバリンで置き換えられたペプチドP5について測定された[TcO]3+標識化率によって更に確認した。上記の結果は、ペプチドUBI 29‐41(配列番号1)において、効果的な[TcO]3+キレート化の決定因子が、本来の配列のN末端ヘキサペプチド中に存在することを示す。このヘキサペプチド中の各位置の具体的な役割を更に調査するために、本発明者らは、第2の一連のより短いペプチドを合成し、それらの[TcO]3+キレート化標識化率を評価した。
【0110】
上記に示したように、塩基性残基K5‐R6対は、[TcO]3+キレート化効率に役割を有する。ペプチドP6を合成し、アルギニン残基による5位リジンの置換の影響を評価した。表IVに示されるように、P3と比較して約20%の、[TcO]3+標識化率の著しい増加を観察した。この観察結果は、それらが塩基性の特徴を共有しているにも拘らず、リジン及びアルギニンが、プロトコル2の条件下での[TcO]3+キレート化効率の決定に異なる影響を有し得ることを示す。更に、ペプチドP7(TGRAAR)について、P6(TGRARR)と比較して約60%の[TcO]3+標識化率の劇的な減少を観察し、このことは、配列中のアルギニンの数及び/又はこれら塩基性残基の位置が標識化率に強い影響を有することを示唆する。
【0111】
より短い[TcO]3+キレート化ペプチドを得るために、本発明者らは、上記で同定された[TcO]3+キレート化決定因子を組み込んだ幾つかのペプチドを合成した。これらは、[TcO]3+キレート化官能基、すなわちT1のヒドロキシ官能基と、2位、3位及び4位残基の3つのNHアミド基と、少なくとも1対の塩基性残基の存在とを含む。これら全ての決定因子を有する最小配列がペプチドP8(TGRR)(配列番号21)に相当する。P8について測定された標識化率は、しかしながら、P6について観察された率のたった半分である約40%だけであった。このことは、上記で同定された決定因子が存在するにも拘らず、その他の因子がP6において[TcO]3+キレート化効率の役割を果たすことを示唆する。本発明者らは、したがって、UBI 29‐41(配列番号1)の最初の3つのN末端残基と4‐5位にアルギニン対とを有するペプチドP9(TGRRR)を合成した。P9中の残基R3の存在が、P8(TGRR)と比較して約25%の著しい増加をもたらした。これにより、本発明者らは、ペプチドP10を合成し、R3のグアニジニウムの特定の貢献があるかどうか、又はこの残基がP9においてキレート化モチーフとアルギニン対との間のスペーサの役割を果たすかどうかを評価した。ペプチドP10(TGGRR)についての[TcO]3+標識化率は、ペプチドP9と比較して約20%著しく減少し、この配列中の残基R3の特定の役割を示唆した。更に、ペプチドP10(TGGRR)、P11(TGRAR)及びP2(TGRAK)について得られた類似の標識化率である約50%は、隣接した位置又は1つの残基によって分離した位置のいずれかにある塩基性残基対が、テトラペプチド配列TGRA(ペプチドP1)と比較して[TcO]3+標識化率の著しい改善をもたらしたという前記結論に一致した。
【0112】
P9(TGRRR)中のアルギニン残基の特定の役割を確認するために、本発明者らは、ペプチドP12(TGKKK)を合成した。P12について測定した非常に低い[TcO]3+標識化率は、プロトコル2の条件下でのP12中の残基3〜5の側鎖中のアンモニウム基と比較して、P9中のグアニジニウム基の特定の貢献をはっきりと証明した。
【0113】
今回の研究で同定したペプチド配列の応用は、ペプチド及び蛋白質の標識化に関する。このような[TcO]3+キレート化ペプチド配列は、蛋白質のN又はC末端の位置に組み込むことができる。したがって、上記に報告した、[TcO]3+キレート化配列への遊離N又はC末端の影響を評価することが重要であった。このために、本発明者らは、遊離アミノ及びカルボキシ末端基をそれぞれ有するペプチドP13及びP14を合成した。P13について測定した、P9と比較して約25%の[TcO]3+標識化率の増加は、P13中の遊離アミノ末端がキレート化効率を著しく改善することを証明した。このペプチドは、したがって、蛋白質又はペプチドのN末端の位置をタグ化するのに用いられる可能性があり、プロトコル2の条件下において、 [TcO]3+核の殆ど定量的な組込みをもたらし得る。N末端アセチル基の欠失の[TcO]3+標識化率への類似の効果が、UBI 29‐41において観察された(表I中のH‐UBI(配列番号13)対UBI‐WT(配列番号1))。P13と比較すればより効率的でないにしても、ペプチドP14の著しい[TcO]3+標識化は、蛋白質又はペプチドのC末端の位置をタグ化するのに、TGRRR配列を用いることができることを示唆する。本発明者らはまた、P9のレトロインベルソ配列(RRRGT)であるペプチドP15を調査した。プロトコル2の条件下においてP15について得られた[TcO]3+標識化率は、この配列をC末端タグとして用いて、[TcO]3+を蛋白質又はペプチドに組み込むこともできることを示唆した。
【0114】
上記の結果により、短く有効な[TcO]3+キレート化ペプチド配列を規定することができた。報告した配列のうち、TGRRR配列(ペプチドP13)は最も有効であり、プロトコル2の条件下において、 [TcO]3+核の殆ど定量的な組込みをもたらした。TGRRR配列中の遊離N末端基の存在が、Nアセチル基と比較して、[TcO]3+標識化率を著しく改善したという観察結果(P13対P9)により、本発明者らは、P13中の[TcO]3+配位官能基を同定しようとした。最終的に、ペプチドP13の遊離形態及び[TcO]3+とのその錯体のNMR研究に着手した。一式の1H‐1H TOCSY、1H‐1H ROESY及び1H‐13C HSQC‐TOCSY実験により、2つの形態において殆どの1H及び13C共鳴を帰属させることができた。UBI 29‐41(配列番号1)の場合に観察されたように、幾つかのNH共鳴は、遊離ペプチドと比較したTcO[TGRRR]において存在しなかった。これらは残基G2、R3及びA4に相当する。
【0115】
表V及びVIに報告する、遊離形態及び[TcO]3+との錯体にあるP13の1H及び13C化学シフトの比較は、[TcO]3+キレート化官能基について幾つか指摘する。
【0116】
表V:HTGRRRペプチド(P13)の1H及び13C(括弧内)NMR化学シフトの帰属a
【0117】
【表5】

【0118】
a化学シフトはTSPと比較した参照であり、298Kにて測定した。bn.d.:測定せず。
【0119】
表VI:TcO[HTGRRR]錯体(P13)の1H及び13C(括弧内)NMR化学シフトの帰属a
【0120】
【表6】

【0121】
a化学シフトはTSPと比較した内部基準であり、298Kにて測定した。
【0122】
幾つかの13C共鳴は、P13の遊離形態とその[TcO]3+錯体との間の重大な化学シフトの変化を示す。これらは、12.7、14.1及び10.50 ppmそれぞれシフトした残基T1、G2及びR3のCα共鳴に関する。更に、残基T1のCβ共鳴は8.09 ppmシフトし、残基R4のCβ共鳴は5.56 ppmシフトする。このような大きな13C化学シフトの変化はまた、TcO[UBI 29‐41]錯体中の3つの炭素、すなわち、T1のCβ炭素並びにR3及びA4のCα炭素について観察され、これらシフトは、[TcO]3+核の配位における隣接原子の直接的関与が原因であると推測した。
【0123】
これら13Cシフトが残基G2、R3及びA4のNH共鳴の不存在と関連するので、本発明者らは、T1のOH基のこれら3つの窒素及び酸素が、[TcO]3+核に配位する4つの原子であると結論付けた。ペプチドP13において、5つの炭素が、遊離形態とその[TcO]3+錯体との間で著しい化学シフトの変化を示したので、状況はより複雑に見える。この観察結果は、UBI 29‐41(配列番号1)において描写した状況とは対照的に、5つの原子が[TcO]3+核の配位に関与し得ることを示唆する。
【0124】
これら観察結果は、T1のヒドロキシ基の酸素が四角平面内又は四角平面の頂点の位置にあるTcの八面体配位と両立した。或いは、今回のデータは、ペプチドの4つの原子の2組が[TcO]3+核のキレート化に参加し得る2つの構造間の平衡と両立した。NMRスペクトルにおける1H及び13C共鳴の単一の組の観察結果は、2つの構造がNMRのタイムスケールで迅速に相互変換し得ることを暗示する。
【0125】
上記の結果から、UBI 29‐41(配列番号1)N‐末端配列に由来するペプチド配列中の[TcO]3+核のキレート化において役割を果たす幾つかの重要な要素を同定することができた。隣接する残基のアミド基の窒素原子と共にそのOH基を介してキレート化に参加する残基スレオニンの存在に加えて、少なくとも1対のアルギニン残基の存在は、ペンタペプチド配列中の標識化率を著しく改善する。
【0126】
ペプチド又は蛋白質を標識化するためのTGRRR配列のインビボ応用に役立てるために、TcO[TGRRR]錯体は、99mTcの期間の1〜3倍の間安定でなければならない。本発明者らは、ペプチドUBI‐WT(配列番号1)及びTGRRR(ペプチドP13;配列番号26)の場合の[TcO]3+錯体の安定性を評価した。最終的に、本発明者らは、システイン攻撃を行った。16μgのTcO[UBI‐WT]を、3、53及び333のモル比にそれぞれ対応する、1、15及び100 mMのシステイン溶液にpH7.4にて加えた。これらサンプルを20時間310Kにてインキュベートした。混合物をHPLC及びLC‐MSにより分析した。
【0127】
UBI‐WTの場合に、元の[TcO]3+錯体の10%だけが100 mMのシステインの存在下において、20時間後に観察された。しかしながら、69%及び95%よりも多い元の錯体が、それぞれ15 mM及び1 mMのシステインの存在下において観察された。[TGRRR]TcOの場合に、57%の元の錯体が、15 mMのシステインの存在下において、20時間310Kにてインキュベーション後に観察された。これら観察結果は、これら錯体が、インビボ調査に用いるのに十分に安定であったことを示唆する。
【0128】
蛋白質を[TcO]3+で標識化するためのTGRRR配列の、分子イメージングの分野における有用性を立証するために、本発明者らは、トリプシン、キモトリプシン、プラスミン及びカリクレインのようなセリンプロテアーゼの天然阻害剤であるアプロチニン(BPTI)を選択した。それはTrasylol(Bayer, Germany)の名の下、商業的に入手可能である。99mTc‐アプロチニンは、直腸の形状を可視化する目的(38)及びアミロイドフィブリルをイメージ化させる目的(20)で既に用いられている。フィブリン溶解性及び/又は好中球由来セリンプロテアーゼ活性のターゲティングを介して、血栓を可視化するのに有用であることも近年示唆されている(39)。
【0129】
イメージング剤として99mTcアプロチニンを用いた研究の殆どは、直接的アプローチにより標識化した。この[TcO]3+標識化は、ジスルフィドの還元を介して起こると認められている。しかしながら、トリプシンとの錯体にあるアプロチニンの3D構造の検証により、これらジスルフィド結合の1つ(14‐38)が、ターゲティングされるセリンプロテアーゼとの相互作用において重要な役割を果たす残基リジン15に隣接した位置に存在することが証明された(21)。更に、このジスルフィド結合は、その標的の1つであるトリプシンによる加水分解に対して保護を与えることが近年示されている(22)。したがって、(1)ジスルフィドを保存し、(2)それらの部位にて[TcO]3+キレート化を回避するプロトコルを用いてBPTIを標識化することは非常に望ましい。
【0130】
本発明者らは、固相化学合成によって、本来の残基M52がノルロイシンで置き換えられ、メチオニン酸化を回避した、BPTIの類似体(BPTIv、配列番号32)を製造した。種々のペプチドを標識化するために今回の研究で用いたプロトコル2の応用を、BPTIv(配列番号32)に適用した。これらの条件において、TcO[BPTIv]錯体は形成されなかった。HPLCにおいて観察され、ESI‐MSにより特徴決定されたピークは、錯体形成していないBPTIvに合致した(表VII)。
【0131】
表VII:プロトコル2を用いたBPTIv(配列番号32)及びTGRRRGG‐BPTIv(配列番号33)のTcO標識化率。
【0132】
【表7】

【0133】
BPTIのN末端配列が標的から約30Å(距離R1 Cα‐K15 Cα、PDBコード2PTC)離れた領域中に位置するので、本発明者らは、固相化学合成によって、今回の研究で発見したTcOキレート化配列TGRRRをBPTIvのN末端の位置に付加した、BPTIv(配列番号32)の類似体を製造した。更に、GGスペーサを、TGRRRとBPTIvの最初の残基との間に付加し、[TcO]3+キレート化を妨害し得るコンホメーション制約の可能性を回避した。この構造体TGRRRGG‐BPTIvを固相化学合成により製造し、ESI‐MSにより特徴決定した。本発明者らは、[TcO]3+標識化プロトコル2をTGRRRGG‐BPTIvに適用した。このサンプルのHPLC分析は1つだけのピークを示し、ESI‐MS分析により、生成物の質量が、TGRRRGG‐BPTIvの質量に+112 Daのアダクトに合致することを示した(表VII)。更に、モノアダクトの電子吸収スペクトルは、錯体形成していないTGRRRGG‐BPTIvの吸収スペクトルにおいても、BPTIvにおいても観察されなかった、274 nmを中心とした大きな吸収を示した。上記の示唆のように、この吸収は、配位子‐金属電荷移動(LMCT)に相当し得る。これらの結果は、TGRRRGG‐BPTIの[TcO]3+標識化率が、プロトコル2の条件下において95%よりも大きいことを示す。
【0134】
2.4 ソマトスタチン類似体RC‐121の99mTc標識化へのTGRRRペプチドの適用。
ターゲティング分子を標識化するHTGRRRペプチド配列の能力及び診断イメージングへのその使用を更に証明するために、本発明者らは、ソマトスタチン受容体SST‐2及びSST‐5の非常に強力なリガンドであるRC‐121(42)を用いた研究に着手した。SST‐2は、多数のヒト腫瘍において発現するので重要である(43)。ここ数十年間で、放射線治療及び核イメージング用途のための、これら受容体の人工の高親和性リガンドを得るために、相当量の研究がなされてきた。RC‐121は、腫瘍学における原型のソマトスタチン類似体の環状オクタペプチド類似体、オクトレオチドである(42)。RC‐121は、残基C2とC7との間のジスルフィドを介して環化された配列DFCYDWKVCTNH2(配列番号40)に合致する(図3a)。
【0135】
本発明者らは、HTGRRRGG配列(配列番号26)をN末端の位置に付加することによってRC‐121を改変し、GGジペプチドをスペーサとして導入した(図3b)。UBI 29‐41由来の短いペプチドを研究する、上記と同一のTcO標識化条件を用いて、本発明者らは、LC‐MSにより評価されたジスルフィドブリッジを保存しつつ、HTGRRRGG‐RC‐121(配列番号41)中へのTcO核の定量的な組込みを実現した(表VIII)。
【0136】
表VIII:RC‐121、HTGRRRGG‐RC‐121及びそのTcO錯体のAR2‐2J細胞及びソマトスタチン受容体への結合。
【0137】
【表8】

【0138】
コントロール実験はまた、タグ化されていないRC‐121が、これら標識化条件においてTcO錯体を形成できないことを示した。15 mMシステインの存在下において測定した、この錯体の安定性は、TcO[HTGRRR]錯体について観察されたものと類似していた。約70%及び60%の錯体が、4時間及び24時間310Kにてインキュベーション後もなお存在していた。
【0139】
TcO[HTGRRRGG‐RC‐121]錯体のソマトスタチン受容体との結合を、次いで特徴決定した。これらの実験は、RC‐121中のHTGRRRGG配列の挿入が、SST‐2受容体へのその結合能力を減少させないことを示した(表IX)。
【0140】
表IX:HTGRRRGG‐RC‐121及びTcOとのその錯体のLC‐MS分析。
【0141】
【表9】

【0142】
SST‐2についてのTcO[HTGRRRGG‐RC‐121]のKd(Kd/SST‐2:20 pM)は、RC‐121について測定したものより約5倍低かった。更に、本発明者らは、TcO[HTGRRRGG‐RC‐121]が、SST‐5についての約100からSST‐4についての約5000までの範囲にある係数でSST‐2受容体の選択的リガンドであることを示した(表IX)。
【0143】
TcO[HTGRRRGG‐RC‐121]錯体を、マウス異種移植腫瘍モデルにおけるイメージング剤として評価した。このモデルについて、本発明者らは、SST‐2ソマトスタチン受容体を発現することが知られているAR4‐2J腫瘍細胞株を選択した。AR4‐2J細胞についてTcO[HTGRRRGG‐RC‐121]のKdは60 pMであった(表X)。
【0144】
AR4‐2J異種移植マウスの第1のグループに、99(m+g)TcO[HTGRRRGG‐RC‐121]を注入した。2つのコントロール実験も行った。AR4‐2J保有ヌードマウス(グループ2)に、99(m+g)TcO[HTGRRRGG‐RC‐121]及び標識化されていないRC‐121化合物の125倍過剰量を注入した。AR4‐2J保有ヌードマウスの第3のグループに、99(m+g)TcO[HTGRRR]錯体をコントロール実験として注入した(グループ3)。注入4時間後に測定した、3つのグループにおける99(m+g)TcO[HTGRRR]の生体分布を表Xに示す。
【0145】
表X:注入4時間後のAR4‐2J異種移植ヌードマウスにおける99mTcO標識化化合物の生体分布。測定した放射活性を、%ID/g(組織のグラムで除した注入量のパーセント)で表す。各グループはマウス6体に相当する。
【0146】
【表10】

【0147】
グループ1の場合に、殆どの器官について測定した%ID/gは、約1%ID/g又はそれよりも低かった。予想通り、尿、腎臓及び肝臓は、最も大きな放射活性取込みに相当した。しかしながら、これらの区画とは別に、TcO[HTGRRR‐RC‐121]の最も大きな取込みは、腫瘍において観察された(%ID/g=5.3 ± 1.3)。125倍過剰量のRC‐121の存在下において、最も大きな放射活性取込みは、尿及び腎臓においても観察され、より低い程度では副腎及び肝臓においても観察された。しかしながら、グループ2のマウスにおいて、腫瘍について測定した%ID/gは、グループ1において測定したもの(%ID/g=0.7 ± 0.2)よりも著しく低かった。
【0148】
これら観察結果は、125倍過剰量のRC‐121、ナノモルのSST‐2リガンドの存在が、TcO[HTGRRRGG‐RC‐121]腫瘍取込みを著しく減少させることを示す。AR4‐2J保有マウスにおけるTcO[HTGRRR]ペプチド錯体の生体分布に相当するコントロール実験(グループ3)は、腫瘍における著しい放射活性取込みを示さなかった。TcO[HTGRRRGG‐RC‐121]錯体のAR4‐2J異種移植腫瘍をイメージ化させる能力は、それぞれ26.5及び53である腫瘍/筋肉比及び腫瘍/血液比によって特徴決定できる。グループ1と比較して著しくより低い腫瘍/筋肉比及び腫瘍/血液比が、グループ2(それぞれ7及び7)及び3(それぞれ2.6及び1)において観察された。全体的に、これらの結果は、AR4‐2j腫瘍におけるTcO[HTGRRRGG‐RC‐121]化合物の特異的で高い腫瘍取込みを示した。
【0149】
診断イメージングのための99(m+g)TcO[HTGRRRGG‐RC‐121]の能力を証明するために、本発明者らは、グループ1のマウスの全身断面を分析した(図4A、B)。図4A、Bは、99(m+g)TcO[HTGRRRGG‐RC‐121]の生体分布から得られた結果に従って、最も大きな放射活性取込みが、腎臓及び肝臓のレベルに位置していることを示す。分析した断面の写真により、腫瘍の明確な位置決定が可能となり、この断面のβイメージングは、この領域中で標識化化合物の大きな取込みを示した。この断面と、グループ2(図4C、D)に属するマウスの断面との比較により、125倍過剰量のRC‐121の存在下において放射活性取込みがないことを確認した。これらの結果は、99(m+g)TcO[HTGRRRGG‐RC‐121]化合物のSST‐2発現腫瘍のイメージングの能力を証明し、HTGRRRペプチドが、インビボ診断応用のために、実質的に全てのターゲティングペプチド及び蛋白質をテクネチウムで標識化する魅力的な方法を提供することを示唆する。
【0150】
3.結論
本発明者らの研究の最初の部分は、UBI 29‐41と称される蛋白質ユビキチジンのトリデカマーフラグメントの[TcO]3+キレート化部位の分析に関した。
【0151】
[TcO]3+標識化ペプチドの分画を決定し、[TcO]3+核のキレート化に関与する残基及び化学的官能基を同定するための今回の研究では、本発明者らは、99Tc源として5.5 mMのNH4TcO4水溶液を用いた[TcO]3+標識化プロトコルを設計した。このことにより、100μMの範囲内のペプチド濃度と比較して、わずかに過剰量のTcO4‐(1.5等価)で研究が可能となった。UBI 29‐41及びその類似体について得られた標識化率は、ペプチドの約30%〜95%の範囲にあり、それらは、したがって、10%未満と推定される適度な正確性をもって定量化された。更に、この標識化プロトコルによって、十分な量の標識化ペプチドを生産し、幾つかの[TcO]3+ペプチド錯体のNMR分析を行うことができた。
【0152】
標識化の効率に関して、本発明者らが開発した、UBI 29‐41の種々の類似体についての結果は、アミノ酪酸による残基T1の置換え及び[TcO]3+標識化率の著しい減少が、[TcO]3+核の配位にT1のヒドロキシ基が直接的に関係することを強く示唆した。その他の類似体はこのような劇的な減少を示さず、それらの標識化率は78〜93%の範囲であった。これは、UBI 29‐41中の残基R3〜R13の化学官能基が、[TcO]3+核の配位に直接的に参加しないようであると強く示唆する。この解釈は、TcO[UBI 29‐41]のNMR分析の結果により確認した。
【0153】
この研究では、遊離状態にて観察された、残基G2、R3及びA4のアミド基プロトン共鳴が錯体中に存在しないという観察結果は、それらのアミド基が[TcO]3+核の配位に関与することを示唆した。更に、残基G2、R3及びA4のCα及び残基T1のCβの遊離ペプチド(10 ppmの範囲)と比較した、大きな13C低磁場化学シフトの変化により、本発明者らは、[TcO]3+核がTcO[UBI 29‐41]錯体中の残基G2、R3及びA4のアミド基窒素及びT1のヒドロキシ基酸素によって配位するという提案ができた。TcO[UBI 29‐41]中のG2のHα1/Hα2共鳴の非等価性のようなその他のNMRの証拠により、この解釈を立証した。錯体形成による残基T1及びR3のHα共鳴の低磁場1H化学シフトの変化もUBI 29‐41において観察した。
【0154】
NMRにより研究された、錯体にあるペプチドUBI 29‐41がN‐アセチル化されていたことに注意しなければならない(UBI‐WT、表I)。UBI 29‐41の非アセチル化型(H‐UBI)は、N‐アセチル化型と比較して、意外にも[TcO3+]標識化率の著しい増加を示した。これは、N‐末端基がH‐UBI中のTcO核のキレート化に直接的な役割を果たし得ることを示唆する。
【0155】
今回の研究により、本発明者らは、UBI 29‐14中の、ペプチドのN末端部分(残基1−4)への[TcO3+]配位部位を同定し、配位原子がT1のヒドロキシ基の酸素並びに残基G2、R3及びA4のアミド官能基の窒素であると同定できた。
【0156】
[TcO]3+キレート化部位が、UBI 29‐41(配列番号1)の残基1〜4に相当するN末端部分に位置するという発見により、本発明者らは、UBI 29‐41由来の最小[TcO]3+キレート化配列を探索した。研究のこの部分の目的は2面であった:(1)UBI 29‐41中の[TcO]3+キレート化の決定因子を詳細に分析すること、及び(2)生体活性ペプチド又は蛋白質のN末端又はC末端側に組み込むことのできる、より短く有効な [TcO]3+キレート化ペプチド配列を規定し、イメージング剤を設計すること。
【0157】
UBI 29‐41のN末端テトラペプチド配列による[TcO]3+のキレート化に関して得られた結果は、配位官能基以外の因子が[TcO]3+標識化率の決定において役割を果たすことをはっきりと示した。これにより、本発明者らは、N末端の位置にスレオニンを有するテトラ、ペンタ及びヘキサペプチドのシリーズを合成した。ペンタペプチドP13のNMR研究により、N末端スレオニンが[TcO]3+核の配位に直接的に関与することが証明された。本発明者らは、したがって、本研究で合成された全てのペプチドが、T1のヒドロキシ基の酸素が常に存在するN末端配列を介して[TcO]3+核をキレート化すると考える。この酸素は、これらペプチド中の[TcO]3+キレート化部位の位置を決定する、一種の推進力を構成し得る。ペプチドP13の[TcO]3+錯体について記録したNMRデータが、ペプチドP9において同定した配位官能基に加えて、N末端基が[TcO]3+核の配位に加担し得ることを強く示唆することに注意しなければならない。これは、ペプチドP13の配列のN‐アセチル化型P9と比較して著しく増加する、ペプチドP13について観察された[TcO]3+核の殆ど定量的な組込みを説明し得る。
【0158】
本発明者らは、N3Oキレート化配列に隣接する残基の存在が、プロトコル2において、ペプチドの[TcO]3+標識化率に強い影響を有することを指摘した。特に、本発明者らは、[TcO]3+キレート化部位に隣接するアルギニン残基の役割を同定した。キレート化部位の近傍に位置するアルギニンの対が、プロトコル2の条件において、[TcO]3+標識化率を著しく改善することを証明した。アルギニン残基が、それらのグアニジニウム基を介して[TcO]3+キレート化効率に役割を果たすことが示唆される。この関係において、TcO4‐アニオンは、還元前に、キレート化部位の近傍に位置するアルギニンのグアニジニウム基と相互作用し得る。この解釈は、P12と比較して(約60%)劇的に増加するペプチドP9の[TcO]3+標識化率の比較と一貫し(表IV)、アルギニン残基が、それらのカチオン性の特徴を超えて特定の貢献を有し得ることを示唆する。今回のデータによって、TGRRRペプチドのセグメントR3〜R5が、[TcO]3+標識化率を劇的に改善する正確なメカニズムを明確に説明できない。しかしながら、本発明者らは、アルギニンが、配位子交換アプローチにおいて用いられるコリガンドに類似の様式でTcO4‐を安定化する可能性を提唱することはできる。この提唱は、[TcO]3+標識化プロトコル2が、ペルテクネテートオキシアニオンの同時還元及び得られた[TcO]3+核の配位を暗示するという事実に一貫する。
【0159】
今回の研究で発見した最も有効なペンタペプチドは、ペンタペプチドであるペプチドP13(TGRRR;配列番号26)である。TGRRR配列(配列番号26)での蛋白質の[TcO]3+標識化の概念の証明として、本発明者らは、トリプシン、キモトリプシン、プラスミン及びカリクレインのようなセリンプロテアーゼの天然阻害剤であるアプロチニンを考慮した。今回の研究において用いた[TcO]3+標識化プロトコル2のTGRRRGG‐BPTIvへの適用は、[TcO]3+核の定量的な組込みを示すが、同様な条件下でBPTIvを用いると、[TcO]3+標識化は観察されなかった。更に、これら実験は、本研究において用いた[TcO]3+標識化プロトコルが、3D構造の保存及び結果として蛋白質の結合能力に必須であるジスルフィドブリッジに影響しないことを証明した。この適用は、分子イメージングの分野において、興味ある蛋白質を標識化するためのプロトコル2と組み合わせたTGRRRタグの価値を証明する。
【0160】
今回の報告に記載された配列に関して非常に魅力的な点は、それらが天然アミノ酸から構成されることである。したがって、それらの使用は、固相ペプチド合成により製造される蛋白質に限定されないが、組換え技術を介して大きいサイズの蛋白質に容易に組み込まれ得る。このようなペプチド配列は、ターゲティング分子のN末端又はC末端配列に、この領域がその受容体との相互作用に関与しないならば付加できる。
【0161】
本発明者らが知る限りにおいて、これは、記載された最初の有効なN3O [TcO]3+キレート化ペプチド配列である。更に、N‐アセチル化型及びN末端遊離型配列を用いて、本発明者らのプロトコル2の条件下に得られた標識化率は、TGRRRタグの両方の型を用いて、ペプチド及び蛋白質を効率的に標識化できることを示す。更に、TGRRR配列(P9)(配列番号22)と類似の[TcO]3+標識化率を示す逆配列AcRRRGT(P15)(配列番号39)を用いて、ペプチド及び蛋白質のC末端側を標識化できる。このアプローチのセリンプロテアーゼ阻害剤BPTIへの適用は、蛋白質のN末端の位置に付加したTGRRRタグが、[TcO]3+核の定量的な組込みをもたらすことを証明した。これらの結果は、固相化学合成及び組換え技術により生産される蛋白質の99mTcイメージング剤としての使用に関して、相当な展望を開く。
【0162】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)Xa12345bc(配列番号37)、
ここで、
‐Xa又はXcは、存在するとき、少なくとも2つのアミノ酸を含み、ペプチドタグを興味ある蛋白質に結合させ、
‐Xbは、存在するとき、ペプチド配列RRMQYNRR(配列番号38)を含み、前記残基の少なくとも1つは、置き換えられる本来の残基中に存在する少なくとも1つの側鎖が存在しない非天然又は天然アミノ酸で置き換えられ、
‐X1は、その側鎖にOH基を含む任意のアミノ酸からなり、
‐X2は、システインを除く任意のアミノ酸からなり、
‐X3は、アルギニン、グリシン、リジンからなる群より選択されるアミノ酸からなり、
‐X4は、アラニン、グリシン、リジン又はアルギニンのいずれかである少なくとも1つのアミノ酸からなり、
‐X5は、システインを除く少なくとも1つのアミノ酸を含む;
b)群a)に記載のペプチドタグのレトロインベルソ型;
からなる群より選択される、興味ある蛋白質をTc又はRe放射性核種で放射能標識化するためのペプチドタグの使用。
【請求項2】
5が、ノルロイシンを含む請求項1に記載の使用。
【請求項3】
1が、スレオニン、セリン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸を含む群より選択される請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
2が、グリシンからなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
ペプチドタグが:
(配列番号14);(配列番号15);(配列番号16);(配列番号17);(配列番号18);(配列番号19);(配列番号20);(配列番号21);(配列番号22);(配列番号23);(配列番号24);(配列番号25);(配列番号26);(配列番号27);(配列番号34);(配列番号39);(配列番号2);(配列番号3);(配列番号4);(配列番号5);(配列番号6);(配列番号7);(配列番号8);(配列番号9);(配列番号10);(配列番号11);(配列番号12);(配列番号13)
からなる群より選択される請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記ペプチドタグが、遊離N末端をN末端残基上に含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記ペプチドタグが、遊離カルボキシレートをC末端残基上に含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記Tc放射性核種が、99mTcである請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記Re放射性核種が、186Re又は188Reである請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に規定されるペプチドタグのコード配列と、前記ペプチドタグにインフレームで蛋白質コード配列が導入され、融合蛋白質を形成するように配置されたクローニングサイトと、標的細胞又は無細胞発現系において前記融合蛋白質を発現するのに必要な転写因子とを含むことを特徴とするベクター。
【請求項11】
前記蛋白質が、液相合成又は固相合成によって合成される、請求項1〜9のいずれか1項に規定されるペプチドタグを含む蛋白質を合成する方法。
【請求項12】
a)前記標的蛋白質の精製サンプルを活性化剤で活性化する工程と、
b)前記ペプチドタグの精製サンプルを活性化剤で活性化する工程と、
c)工程a)及び工程b)の生成物をインキュベートし、ペプチドタグ‐標的蛋白質複合体を精製する工程と
を含む、請求項1〜9のいずれか1項に規定されるペプチドタグを標的蛋白質に化学的に結合させる方法。
【請求項13】
a)前記興味ある蛋白質を含む水溶液に
(i)塩基性pH条件下の還元剤の水溶液と、
(ii)テクネチウム酸(VII)の塩(ペルテクネテート塩)の水溶液と
を逐次的に加える工程と、
b)1〜10分間室温にて、工程a)からの溶液をインキュベートする工程と
を含む、請求項1〜9のいずれか1項に規定されるペプチドタグを含む興味ある蛋白質をTc核で標識化する方法。
【請求項14】
工程a)中、(iii)NH4TcO4の水溶液も加える請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−513980(P2012−513980A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542921(P2011−542921)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007971
【国際公開番号】WO2010/076654
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(510120333)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】25, rue Leblanc, Batiment  Le Ponant D , 75015 PARIS, France
【Fターム(参考)】