説明

システムキッチン用面材

【課題】全プラスチック製であって、軽量で高級感を有し、リサイクル可能である上、良好なネジ引抜き強度及び扉に用いた場合、開閉繰返しに対する扉の耐久性を有すると共に、形状の良好な丁番取付け用穴を形成し得るシステムキッチン用面材を提供する。
【解決手段】発泡倍率4〜15倍の板状プラスチック発泡体の一方の面に、接着剤層、隠蔽層、絵柄層及びアクリル系樹脂板状体を順に設けると共に、他方の面に接着剤層を介して、無機フィラー20〜85重量%を含むポリオレフィン系樹脂板状体を設けてなるシステムキッチン用面材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムキッチン用面材に関する。さらに詳しくは、システムキッチンにおける各キャビネットの扉・開き戸、引出しなどの面材として用いられ、かつ全プラスチック製であって、軽量で高級感を有し、リサイクル可能である上、良好なネジ引抜き強度及び扉に用いた場合、開閉繰返しに対する扉の耐久性を有すると共に、形状の良好な丁番取付け用穴を形成し得るシステムキッチン用面材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、調理作業の合理性を始め、空間の有効利用、良好な清掃機能、色彩の調和などの特徴を有することから、システムキッチンが脚光を浴びている。
このシステムキッチンとは、調理作業に必要なウォールキャビネット、フロアキャビネット、トールキャビネットなどの各種キャビネットと、加熱調理機器、レンジフード、冷蔵庫、冷凍庫、生ゴミ乾燥処理機、食器洗器などの機器を有機的に結合させたキッチン設備のことである。
このようなシステムキッチンにおいては、各種キャビネットの扉・開き戸、引出しなどの部材の面材としては、従来、芯材としてパーチクルボードや中質繊維板(Medium Density Fiberboard:MDF)を用い、その上に、例えばメラミン樹脂による化粧仕上げ、紫外線硬化システムによるアクリルウレタン系樹脂コート仕上げ、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのプラスチックフィルムによる接合仕上げなどが施された面材が用いられている。これらの面材は、ネジ引抜き強度及び扉に用いた場合、開閉繰返しに対する扉の耐久性については、JIS規格に合格しているものの、軽量性及びリサイクル性については、満足し得るものではなかった。また、木質系とプラスチック材料が一体化されたものが主体で、このためリサイクルが極めて困難で、環境上からも問題が指摘されていた。
軽量で、かつリサイクル性の良好な積層構造体としては、例えばポリオレフィン系発泡体シート又は内部に空間を有するポリオレフィン系軽量材料シートの両面に、接着層を介して無機フィラー20〜85重量%を含む厚み1〜10mmのポリオレフィン系樹脂シートを設けてなるポリオレフィン系積層構造体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
この積層構造体は、ポリオレフィン系発泡体シートなどのポリオレフィン系軽量シートの両面にポリオレフィン系樹脂シートを設けてなるものであるが、板状プラスチック発泡体の表面側に絵柄層を介してアクリル系樹脂板状体を接合してなるシステムキッチン用積層構造体は、これまで知られていない。
【特許文献1】特開2002−29008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような事情のもとで、システムキッチンにおける各キャビネットの扉・開き戸、引出しなどの面材として用いられ、かつ全プラスチック製であって、軽量で高級感を有し、リサイクル可能である上、良好なネジ引抜き強度及び扉に用いた場合、開閉繰返しに対する扉の耐久性を有すると共に、形状の良好な丁番取付け用穴を形成し得るシステムキッチン用面材を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の発泡倍率を有する板状プラスチック発泡体の表面側に、接着剤層、隠蔽層、絵柄層及びアクリル系樹脂板状体を順に設けると共に、裏面側に接着剤層を介して特定のポリオレフィン系樹脂板状体を設けた面材により、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)発泡倍率4〜15倍の板状プラスチック発泡体の一方の面に、接着剤層、隠蔽層、絵柄層及びアクリル系樹脂板状体を順に設けると共に、他方の面に接着剤層を介して、無機フィラー20〜85重量%を含むポリオレフィン系樹脂板状体を設けたことを特徴とするシステムキッチン用面材、
(2)板状プラスチック発泡体が、厚さ5〜40mmの板状ポリスチレン系発泡体又は板状ポリプロピレン系発泡体である上記(1)項に記載のシステムキッチン用面材、
(3)アクリル系樹脂板状体の厚さが2〜6mmである上記(1)又は(2)項に記載のシステムキッチン用面材、
(4)アクリル系樹脂板状体がポリメチルメタクリレート板状体である上記(1)、(2)又は(3)項に記載のシステムキッチン用面材、及び
(5)無機フィラー20〜85重量%を含むポリオレフィン系樹脂板状体が、ポリプロピレン系樹脂板状体であり、厚さが2〜6mmである上記(1)ないし(4)項のいずれかに記載のシステムキッチン用面材、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、システムキッチンにおける各キャビネットの扉・開き戸、引出しなどの面材として用いられ、かつ全プラスチック製であって、軽量で高級感を有し、リサイクル可能である上、良好なネジ引抜き強度及び扉に用いた場合、開閉繰返しに対する扉の耐久性を有すると共に、形状の良好な丁番取付け用穴を形成し得るシステムキッチン用面材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のシステムキッチン用面材は、板状プラスチック発泡体の一方の面(表面側)に、接着剤層、隠蔽層、絵柄層及びアクリル系樹脂板状体を順に設けると共に、他方の面(裏面側)に接着剤層を介して、ポリオレフィン系樹脂板状体を設けてなる面材である。
本発明のシステムキッチン用面材において、芯材として用いられる板状プラスチック発泡体の発泡倍率は、4〜15倍の範囲で選定される。前記発泡倍率が4以上であれば、得られる面材の軽量性が発揮され、また発泡倍率が15倍以下であれば、丁番取付け用穴を座ぐりカッターを付けたドリルで設けた場合、所望の良好な形状を有する穴を形成することができる。当該板状発泡体の好ましい発泡倍率は、6〜12倍の範囲である。
当該板状発泡体に特に制限はないが、芯材としての特性、焼却時の環境非汚染性、リサイクル性及び経済性などの面から、板状のポリオレフィン系発泡体及びポリスチレン系発泡体が好ましく用いられる。これらの板状発泡体の作製方法としては、特に制限はなく、押出発泡成形、射出発泡成形、発泡粒子を用いる金型発泡成形などの中から、それぞれの材質に応じて適宜選択すればよい。
【0007】
前記の板状ポリオレフィン系発泡体としては、樹脂成分としてポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂を用いたものが好ましく、特にリサイクル性の点から、ポリプロピレン系樹脂を用いたものが好適である。また、再生品を用いることもできる。板状ポリスチレン系発泡体の樹脂成分としては、通常汎用ポリスチレン樹脂が用いられる。また、再生品を用いることもできる。
本発明において、板状のポリオレフィン系発泡体又はポリスチレン系発泡体を作製するには、まず、それぞれ前記のポリオレフィン系樹脂又は汎用ポリスチレン樹脂に、所望により、各種添加成分、例えば無機フィラー、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、塩素捕捉剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、離型剤、着色剤、さらには可塑剤やプロセスオイルや流動パラフィンなどの軟化剤、他の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーなどを適宜配合し、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサーなどで混合するか、又は混合後さらに単軸押出機や多軸押出機を用いて溶融混練造粒することにより、各樹脂組成物を調製する。
次に、この各樹脂組成物を用い、それぞれの樹脂の種類に応じた発泡成形法を用い、発泡成形することにより、所望の板状発泡体を得ることができる。
本発明の面材において、芯材として用いられる前記の板状プラスチック発泡体の厚さは、通常5〜40mm、好ましくは8〜25mmの範囲で選定される。
本発明においては、当該板状プラスチック発泡体の表面に、その上に設けられる層との密着性を向上させるためにプライマー層を設けることができる。このプライマー層としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂やオレフィン系樹脂又はそれらの混合物、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂などを溶剤に溶かしたもの、又はこれらの樹脂を微粉砕し、界面活性剤などの添加によりエマルジョン化した塗工液を塗工し、乾燥させて、厚さ1〜5μm程度のプライマー層を設けるのがよい。なお、基材として、スキン層を有しないプラスチック発泡体シート(表面をスライスし、スキン層を取除いたもの)を用いる場合には、前記のプライマー層を設けなくとも、十分な密着性を得ることができるので、本発明で用いる板状発泡体として特に望ましい。
【0008】
本発明の面材は、前述の板状プラスチック発泡体を芯材とする積層構造体であり、図1に、本発明の面材の1例の断面図を示す。
図1に示すように、本発明の面材10は、板状プラスチック発泡体1の表面側に、接着剤層2、隠蔽層3、絵柄層4及びアクリル系樹脂板状体5が順に設けられると共に、該板状プラスチック発泡体1の裏面側に、接着剤層2'を介してポリオレフィン系樹脂板状体6が設けられた構造を有している。
本発明の面材10において、アクリル系樹脂板状体5としては、一般にメタクリル酸メチルを主原料とするものが用いられる。このアクリル系樹脂板状体は、透明性、耐候性、加工性(切断、穴開け、曲げ加工など)、着色性などに優れている。本発明においては、当該アクリル系樹脂板状体の厚さは、通常2〜6mm程度、好ましくは2〜4mmである。上記厚みのアクリル系樹脂板状体を設けることにより、それを通して見える絵柄に深み及び重厚感などを付与することができる。当該アクリル系樹脂板状体は、所望により、着色されたものであってもよい。
本発明の面材10において、絵柄層4は、前記アクリル系樹脂板状体5の一方の面に、直接印刷により設けてもよいし、適当なフィルム、例えばアクリル系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、ポリエステル系フィルムなどの片面に、印刷により絵柄層を設けたものを、該絵柄層がアクリル系樹脂板状体に接するように、接着剤層を介して貼合してもよい。
前記絵柄層4は、アクリル系樹脂板状体5の一方の面に、又は前記プラスチックフィルムの片面に、木目、石目、布目、天然皮革の表面柄、抽象柄、幾何学的模様柄などを表現する層をグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷、転写印刷、フレキソ印刷などの一般的な印刷塗装を施すことにより、厚み1〜20μm程度で形成することができる。
【0009】
次に、面材10における隠蔽層3は、前記絵柄層4に高意匠性を付与するための層であり、通常シルバーやグレイなどの厚み1〜20μm程度の全面べた層である。絵柄層4がアクリル系樹脂板状体の一方の面に直接設けられている場合には、その上に各種の塗布手段により、隠蔽層3を設けることができる。一方、プラスチックフィルムの片面に絵柄層4を設ける場合には、該フィルムとして、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化チタンなどの無機フィラーを含有させて隠蔽力を付与したフィルム、あるいはシルバーやグレイなどの全面べた層を設けたフィルムを用い、その表面に設けられた絵柄層4が、アクリル系樹脂板状体に接するように、接着剤層を介して貼合することにより、隠蔽層及び絵柄層を設けることができる。
本発明の面材10においては、このようにして、一方の面に絵柄層4及び隠蔽層3が順に設けられてなるアクリル系樹脂板状体5を、その隠蔽層3が前述の板状プラスチック発泡体1の表面側に対面するようにして、接着剤層2を介して接合する。
前記接着剤層2を構成する接着剤としては、感熱接着剤及び感圧接着剤のいずれも用いることができる。感熱接着剤としては、例えば塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド系樹脂、アイオノマー系樹脂などを主成分とする公知の接着剤を用いることができ、一方、感圧接着剤としては、例えばアクリル系、シリコーン系、ゴム系などを用いることができる。これらの接着剤の中で、操作性の面から、感圧接着剤が好ましく、特に耐候性の良好なアクリル系感圧接着剤が好適である。この場合、保持力の大きな感圧接着剤を用いることが望ましい。この接着剤層の厚さは、通常1〜50μm程度、好ましくは5〜30μmである。
【0010】
本発明の面材10において、板状プラスチック発泡体1の裏面側に、接着剤層2'を介して設けられるポリオレフィン系樹脂板状体6としては、無機フィラー20〜85重量%を含むものが用いられる。
前記ポリオレフィン系樹脂板状体におけるポリオレフィン系樹脂としては、高密度、中密度、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などのポリエチレン類、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体やランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ジエン化合物共重合体などのポリプロピレン類、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1などを挙げることができる。これらの中で、ポリプロピレン類が好ましい。
このポリプロピレン類の中では結晶性のポリプロピレン系樹脂がよく用いられ、この結晶性のポリプロピレン系樹脂としては、例えば結晶性を有するアイソタクチックプロピレン単独重合体、エチレン単位の含有量の少ないエチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン単独重合体からなるホモ部とエチレン単位の含有量の比較的多いエチレン−プロピレンランダム共重合体からなる共重合部とから構成されたプロピレンブロック共重合体、さらには前記プロピレンブロック共重合体における各ホモ部又は共重合部が、さらにブテン−1などのα−オレフィンを共重合したものからなる結晶性のプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体などが挙げられる。
このポリオレフィン系樹脂は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、再生品を用いることもできる。
本発明においては、ポリオレフィン系樹脂板状体6として、無機フィラーを20〜85重量%、好ましくは30〜75重量%の割合で含有するものが用いられる。無機フィラーの含有量が20重量%未満では切削加工性や剛性などが不十分であるし、85重量%を超えると板状体の成形性及び耐衝撃性が低下する上、重量が重くなり、好ましくない。
ここで、無機フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、カオリン、シリカ、パーライト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、焼成アルミナ、ケイ酸カルシウム、タルク、マイカなどが挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
これらの無機フィラーの中で、切削性及び経済性などの点から、炭酸カルシウム、タルク、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムが好ましく、特に炭酸カルシウムが好適である。この炭酸カルシウムとしては特に制限はなく、沈降製炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなど、いずれも用いることができる。この炭酸カルシウムの平均粒径は、通常0.05〜200μm、好ましくは0.5〜20μmの範囲である。
該板状体には、所望により、各種添加成分、例えば酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、塩素捕捉剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、離型剤、着色剤、さらには可塑剤やプロセスオイルや流動パラフィンなどの軟化剤、他の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーなどを適宜含有させることができる。
このポリオレフィン系樹脂板状体を作製するには、まず、前述したポリオレフィン系樹脂と、成形材料全量に基づき20〜85重量%の炭酸カルシウムなどの無機フィラーと、さらに所望により用いられる各種添加成分とを配合し、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサーなどで混合するか、又は混合後さらに単軸押出機や多軸押出機を用いて溶融混練造粒することにより、ポリオレフィン系成形材料を調製する。次いで、このポリオレフィン系成形材料を、公知の方法、例えばキャスト成形、押出しシート成形などの方法によって成形し、板状体を作製する。
本発明の面材10においては、ポリオレフィン系板状体6の厚さは、通常2〜6mm程度、好ましくは2〜4mmである。
このポリオレフィン系板状体が、例えば無機フィラー20〜85重量%を含むポリプロピレン系樹脂板状体である場合、厚さ3mmにおけるネジ引抜き強度を、厚さ9.5mmにおけるパーチクルボードやMDFのネジ引抜き強度に匹敵する大きさにすることができる。
【0012】
前記ポリオレフィン系樹脂板状体6と板状プラスチック発泡体1とを接合させるのに設けられる接着剤層2'を構成する接着剤としては、通常感熱接着剤が用いられる。この感熱接着剤としては、例えば塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド系樹脂、アイオノマー系樹脂などを主成分とする公知の接着剤を用いることができる。接着剤層2'の厚さは、通常1〜50μm程度、好ましくは5〜30μmである。
なお、ポリオレフィン系樹脂板状体として、板状プラスチック発泡体と接合させる側の反対面に、仕上げ塗装を施したものを用いることができる。
本発明の面材の製造方法に特に制限はないが、例えば以下に示す方法により効率よく製造することができる。
まず、板状プラスチック発泡体の裏面側に、感熱接着剤層を介して、前記ポリオレフィン系樹脂板状体を接合したのち、該板状プラスチック発泡体の表面側に、剥離シート付き感圧接着剤層を設け、積層体Aを作製する。
一方、アクリル系樹脂板状体の一方の面に、前記で説明したように絵柄層及び隠蔽層を順に設け、積層体Bを作製する。
次に、前記積層体Aの剥離シートを剥がし、露出した感圧接着剤層に、前記積層体Bの隠蔽層が接するようにして接合し、一体化させ、積層構造体としたのち、所定形状に裁断し、さらに、エッジ部にアクリル系樹脂板などのエッジ材を接着剤で接合することにより、本発明の面材が得られる。
本発明の面材は、システムキッチンにおける各種キャビネット、例えばウォールキャビネット、フロアキャビネット、トールキャビネットなどの扉・開き戸、引出しなどの部材の面材として用いられ、以下に示す効果を奏する。
当該面材は、全プラスチック製であって、基材に板状プラスチック発泡体を用いているので軽量でかつ省資源製品である上、リサイクル可能である。また、表面に厚みのある透明性に優れるアクリル系樹脂板状体を設けているので、それを通して見える絵柄に深み及び重厚感を付与し、高級感を与える外観を有している。
さらに、当該面材は、板状プラスチック発泡体の裏面側に無機フィラー含有ポリオレフィン系樹脂板状体が積層されているので、良好なネジ引抜き強度及び扉に用いた場合、開閉繰返しに対する扉の耐久性を有すると共に、形状の良好な丁番取付け用穴を形成することができる。
【実施例】
【0013】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
(1)積層体Aの作製
厚さ12mm、発泡倍率8倍の板状ポリスチレン発泡体[ジェイエスピー社製、商品名「ミライトボード」]の裏面側に、エポキシ系感熱接着剤[セキスイエスダイン社製、商品名「エスダイン3200A・B」]を用いて、厚さ3mmの無機フィラー40重量%含有ポリプロピレン板状体[伸興化成社製、商品名「エコクィーンパネル」]を接合した。なお感熱接着剤層の厚さは25μmであった。
次に、剥離シート[千代田グラビア社製、商品名「アルウェーブ」]上に、アクリル系感圧接着剤[恵比寿化成社製、商品名「アクリルドライ」]を、乾燥厚さが50μmになるように塗布したのち、このものを、前記のポリプロピレン板状体を接合してなる板状ポリスチレン発泡体の表面側に、感圧接着剤層が対面するように貼着して剥離シート付き感圧接着剤層を設けることにより、積層体Aを作製した。
(2)積層体Bの作製
厚さ3mmのポリメチルメタクリレート板状体[三菱レイヨン社製、商品名「アクリライトS」]の一方の面に、色の異なる複数種のインキを用いて木目模様を印刷し、厚さ6μmの絵柄層を形成したのち、その上に、厚さ10μmのシルバーのべた印刷を施し、隠蔽層を設けることにより、積層体Bを作製した。
(3)面材の作製
前記(1)で得られた積層体Aの剥離シートを剥がして、感圧接着剤層を露出させたのち、前記(2)で得られた積層体Bを、その隠蔽層が、該感圧接着剤層に接するように貼合し、図1に示す構造の積層構造体を作製した。
次に、この積層構造体(厚さ約18mm)を裁断して、幅445mm、長さ695mmのサイズのものを得たのち、エッジ部に、厚さ2mmのアクリル系樹脂板[パネフリ工業社製、商品名「マーブレットS」]を、スチレン−酢酸ビニル共重合体ホットメルト型接着剤[大響社製、商品名「アイメルト−W−22」]を用いて接合し、目的の面材を作製した。
(4)評価
上記(3)で得られた面材の総重量は3.1kgであり、また木目模様は深み及び重厚感が付与され、高級感を与える外観を有していた。
さらに、下記の方法によりネジ引抜き強度試験、扉・開き戸の耐久性試験及び丁番取付け用穴開け試験を行った。
【0014】
(イ)ネジ引き抜き試験
試験ネジとして、径3.5mm、長さ16mmのタッピングネジを用い、引張り試験機として、島津製作所製「AGS−500B」を用いてネジ引抜き試験を行った。
図2は、ネジ引抜き試験方法を示す説明図である。
まず、引抜き試験機のネジ保持板21[(a)]に、試験ネジ22を取付ける[(b)]。次いで、面材におけるポリプロピレン板状体6aにキリネジで径1mmの穴を開け、そこに試験ネジ22をネジ込む[(c)]。次に、この試験体を、試験機の固定台23に取付け、試験ネジ22の付いた保持板21の上部を、試験機のつまみ24にしっかり固定し、ネジ引抜き強度を測定した[(d)]。その結果、ネジ引抜き強度は43.3kgであり、合格であった(引抜き強度41kg以上が合格)。
なお、図3は、試験ネジのネジ込み部の拡大断面図である。図2、図3における符号1aは板状ポリスチレン発泡体、5aはポリメチルメタクリレート板状体である。
(ロ)扉・開き戸の耐久試験
JIS A 4420:1998 開き戸の耐久性試験(試験箇条8.12)に準拠して、耐久試験を実施した。
<諸条件>
(a)試験に用いた扉:本例で得た面材製扉(W445×H695)自重3.1kg 1枚
(b)開閉回数:40,000回
(c)開閉角度:0度〜45度範囲往復
(d)開閉動作:1分間に約10往復
(e)扉への荷重:扉中心部 表面1.5kg、裏面1.5kg 計3.0kg
上記の(b)〜(e)は、JIS規格の試験条項である。
<付帯品>ヒンジ:(1)本体 金属製丁番110°開き(ワンタッチ式) 2個
(2)座金 金属製座金(前後2点ねじ固定式) 2個
強度おもり:100×50×30mm 質量1.5kg/個 2個
扉開閉試験機 1台
耐久試験の結果、使用上支障となる状態はなかった。
(ハ)丁番取付け用穴開け試験
面材において、ポリプロピレン板状体側から、直径35mm、深さ13mmの穴を、その側壁面が扉側面より5mmの位置になるように座ぐりカッターを取付けたドリルを用いて開け、その形状を観察した。図4に、該穴の断面形状を示す。
また、比較のために、発泡倍率が8倍の板状ポリスチレン発泡体の代わりに、発泡倍率が17倍の板状ポリスチレン発泡体を用いた以外は、前記と同様にして面材を作製し、丁番取付け用穴開け試験を実施し、穴の形状を観察した。図5に、該穴の断面形状を示す。なお、図4及び図5の符号は前記と同じである。
発泡倍率が8倍の板状ポリスチレン発泡体を芯材に用いた本発明の面材は、図4で示すように穴形状は良好で、穴側壁の乱れはあまり見られなかった。これに対し、発泡倍率が17倍の板状ポリスチレン発泡体を芯材に用いた比較例の面材は、図5で示されるように、座ぐりカッターの回転熱で融解又は回転により破壊され、穴側壁の乱れが大きく、所望の穴形状が維持できなかった。
【0015】
比較例1
パーチクルボードの両面に、厚さ1.0mmのメラミン化粧シートを接着剤で接合し、全体の厚さが18mmの積層構造体を作製したのち、裁断して、幅445mm、長さ695mmの面材を作製した。この面材は、実施例1の面材とほぼ同じ体積を有するものである。その重量は5kgであり、実施例1の面材に比べて1.61倍の重さであった。
比較例2
パーチクルボードの裏面側に厚さ1.0mmのメラミン化粧シートを接着剤で接合すると共に、表面側に厚さ80μmの紫外線硬化アクリルウレタン系樹脂層を設け、全体の厚さが18mmの積層構造体を作製したのち、裁断して、幅445mm、長さ695mmの面材を作製した。この面材は、実施例1の面材とほぼ同じ体積を有するものである。その重量は4.8kgであり、実施例1の面材に比べて1.55倍の重さであった。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明のシステムキッチン用面材は、全プラスチック製であって、軽量で高級感を有し、リサイクル可能である上、良好なネジ引抜き強度及び扉に用いた場合、開閉繰返しに対する扉の耐久性を有すると共に、形状の良好な丁番取付け用穴を形成することができ、システムキッチンにおける各キャビネットの扉・開き戸、引出しなどの面材として用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のシステムキッチン用面材の1例の断面図である。
【図2】実施例において、面材のネジ引抜き試験方法を示す説明図である。
【図3】図2における面材のネジ引抜き試験方法において、試験ネジのネジ込み部の拡大断面図である。
【図4】実施例の面材についての丁番取付け用穴開け試験における穴の断面形状図である。
【図5】比較例の面材についての丁番取付け用穴開け試験における穴の断面形状図である。
【符号の説明】
【0018】
1 板状プラスチック発泡体
1a 板状ポリスチレン発泡体
2、2' 接着剤層
3 隠蔽層
4 絵柄層
5 アクリル系樹脂板状体
5a ポリメチルメタクリレート板状体
6 ポリオレフィン系樹脂板状体
6a ポリプロピレン板状体
10 面材
21 ネジ保持板
22 試験ネジ
23 試験機の固定台
24 試験機のつまみ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡倍率4〜15倍の板状プラスチック発泡体の一方の面に、接着剤層、隠蔽層、絵柄層及びアクリル系樹脂板状体を順に設けると共に、他方の面に接着剤層を介して、無機フィラー20〜85重量%を含むポリオレフィン系樹脂板状体を設けたことを特徴とするシステムキッチン用面材。
【請求項2】
板状プラスチック発泡体が、厚さ5〜40mmの板状ポリスチレン系発泡体又は板状ポリプロピレン系発泡体である請求項1に記載のシステムキッチン用面材。
【請求項3】
アクリル系樹脂板状体の厚さが2〜6mmである請求項1又は2に記載のシステムキッチン用面材。
【請求項4】
アクリル系樹脂板状体がポリメチルメタクリレート板状体である請求項1、2又は3に記載のシステムキッチン用面材。
【請求項5】
無機フィラー20〜85重量%を含むポリオレフィン系樹脂板状体が、ポリプロピレン系樹脂板状体であり、厚さが2〜6mmである請求項1ないし4のいずれかに記載のシステムキッチン用面材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−34854(P2006−34854A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222880(P2004−222880)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000110583)ナスステンレス株式会社 (2)
【出願人】(504291904)株式会社イースペース (1)
【Fターム(参考)】