説明

シフト可能なキーパッドを有する携帯電話

本発明は、層部(2)と、層部(2)が本体(10)の静止位置から引き出し可能であるように、この層部(2)のための移動機構とを有する電子装置(1)、好ましくは、携帯電話またはハンドヘルド機に関する。前述の層部(2)は、通常、キーパッド(3)を有する。本発明によれば、移動機構は、層部(2)をその静止位置より異なる方向、好ましくは、二、三、または四方向に引き出し可能にする。本発明の配列により、装置の使用がさらに快適かつ柔軟性のあるものになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の発明は、層部と、層部を静止位置から引き出し可能にする層部のための移動機構とを有する電子装置、好ましくは携帯電話またはハンドヘルド機に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置、特に、静止位置から摺動可能である層部を有する携帯電話は一般的に知られている。いくつかの携帯電話のメーカーがその種類の装置を製造している。EP944 219 A2は、このタイプのいくつかの携帯電話を開示している。
【0003】
電気部品の小型化により、現在、携帯電話のサイズを大幅に縮小し、例えばズボンのポケットに入れて携帯するために非常に持ち歩き易くすることが可能である。一方、この利点には次のような欠点もある。小さいサイズの本体では、携帯電話の操作に利用可能な表面が縮小され、実用的な取扱いが幾分不便になる。携帯電話の本体から摺動可能である層部に配置されるキーパッドの使用により、この点に関していくつかの利点が提供される。
【0004】
本体から引き出し可能な層部を追加して使用することにより、装置が一時的に拡大されることが知られている。この拡大により、装置が使用されている際、操作に利用可能な装置の表面がより大きくなり、一時的に携帯電話のサイズを全体的に拡大し、取扱いがより改善される。
【0005】
市場における既知のタイプは、引き出し可能な層部を有するが、装置を操作するための本体表面を適合および増大させる可能性は限られている。この限定は明らかに認識されている。この限定を克服するための試みが、例えばNokia 9500 Communicatorのような機構によりなされている。この機器は、さらに便利なフォーマットを携帯電話の操作者に提供するために本体表面を増大させる別の方法を示す。電子装置は折り畳み可能で、開けると横長フォーマットの広い画面と、パソコンに使用されるものと同様のキーボードを有する。この状態においてこの携帯電話は、ポケットPCとしての機能にさえも適している。このソリューションの欠点は、携帯電話に組み込まれるべきである、さらに多くの構成要素(例えば、二つの異なる表示および二つの異なるキーパッド)にある。さらに、通常の携帯電話として使用される際、装置の操作のために使用可能である追加の表面が存在しない。したがって、折り畳み可能な本体を有する利点は、決してあらゆる状況において有益ではない。
【特許文献1】EP944 219 A2
【発明の開示】
【0006】
以下の発明が解決しようとする課題は、電子装置を単純化し、その構成要素を使用する際にさらに柔軟にすることであり、多目的有用性を提供することである。
【0007】
本発明によると、層部と、その層部を静止位置から引き出し可能にする、層部のための移動機構とを有する電子装置、好ましくは携帯電話またはハンドヘルド機であって、移動機構は、層部をこの静止位置から異なる方向、好ましくは、二、三、または四方向において引き出し可能にし、特に好ましくは、移動機構は摺動機構であることを特徴とする。その静止位置から異なる方向に摺動可能である層部を使用して、同一の層部を異なる目的、つまり異なる構成で使用することが可能である。
【0008】
静止位置から摺動可能であるために、層部は摺動機構を備える。摺動機構は、例えば、図5のような形状であることが可能であり、本説明において以下にさらに説明する。しかしながら、その他の有用な摺動機構も、本発明の目的として考えられる。
【0009】
本発明のさらなる側面において、層部は、一つのキーパッドまたは一つのタッチスクリーンを有し、キーパッドまたはタッチスクリーンの表示方向は、層部が静止位置から引き出される方向に応じて変化する。このようにして、同一のキーパッドまたはタッチスクリーンを異なる構成において使用することが可能で、このようにして多目的有用性を提供する。
【0010】
本発明の好適な実施形態において、層部は、二方向においてその静止位置から引き出し可能である。このようにして、電子装置は、キーパッドまたはタッチスクリーン、あるいはその組み合わせを有する同一の層部で、縦長または横長フォーマットにおいて使用可能である。
【0011】
本発明は、あらゆる種類の電子装置に使用可能である。しかしながら、本発明は、特に携帯電話またはハンドヘルド機、あるいはその組み合わせを構成する装置を対象とする。層部は、この静止位置から異なる方向、好ましくは、二、三、または四方向に引き出し可能であることが好ましい。
【0012】
層部が静止位置から引き出し可能である方向に応じて、備えられるキーパッドまたはタッチスクリーンは、異なる表示を示す。
【0013】
キーパッドが使用される場合、そのキーパッドはいくつかのメカニカルキーを有することが可能である。好ましくは、メカニカルキーは、圧力センサーを有し、最も好ましくは、圧電センサーを有する。
【0014】
単独のメカニカルキーが使用される場合、それらを異なる方向で、異なる標示または同一の標示を表示可能にすることが好ましい。これを可能にするために、異なる可能性が存在する。片手上で、層部が本体から引き出される方向に応じて、共通のボタンが異なる方向で同時(異なる方向で同一の文字を単に押すことによって)または異なる時にそれぞれの文字を示すことが可能である。後者の例においては、キーは、二つ以上の統合ランプを有し、層部が引き出される場合に正確な方向で文字を照らす(図面参照)。
【0015】
ボタンを使用する代わりに、層部の上のキーパッドに、少なくとも部分的にタッチスクリーンを備えることも可能であろう。この解決手段により、タッチスクリーンは、層部が引き出される方向に応じて仮想キーの異なる配列を表示することが可能になる。
【0016】
層部はその静止位置において、電子装置の本体に一体的に格納されることが好ましい。装置が一部のみ本体に格納可能であることも考えられ、本発明の一部であり得る。
【0017】
通常、本発明を適用可能な電子装置はディスプレイを含む。この場合、ディスプレイは自動的にその表示形式を層部が引き出される方向に応じて適合させることが予測できる。電子装置は、多方向で使用可能であるさらなるボタンもその上面に備えることが好ましい。最も好ましくは、これらのボタンは、その機能または意義を、層部が引き出される方向に応じて適合させる。
【発明の詳細な説明】
【0018】
本発明を、以下に図面を使用して説明する。しかしながら、本発明は開示される実施形態に限定されるわけではない。
【0019】
図1および2は、電子装置1、つまり携帯電話における本発明の層部の好適な適用を示す。両図面は、同一の層部2が二つの異なる方向に引き出される状態の同一の携帯電話を開示する。本実施形態において、層部2はキーパッド3を有する。開示されたキーパッド3は、いくつかのメカニカルキー6を有するが、キーパッド3は圧力センサーのみを有することも考えられる。メカニカルキー6または考えられる圧力センサーキーパッドは、好ましくは圧電センサーを有する。図1に示すように、層部2が本体10から引き出された状態で、キーパッド3は、縦長フォーマットの表示4を示す。同一のキーパッド3は、層部2が他方の方向に引き出されると、別の表示5を示すことができる。このようにして、キーパッド3は、表示5を横長フォーマットで示す。より多くのキーを利用可能にする横長フォーマットにおいて、携帯電話は、ハンドヘルトまたはポケットPCとして使用可能である。横長フォーマットのキーパッド3は、同等の機能を有する小型PCのキーボードと同等であることが可能である。
【0020】
キーパッド3が縦長フォーマットで引き出されて表示4を示す場合、全体のキーパッド3のうちの一部のキーのみがユーザーに見えるようになって電子装置の操作に利用可能であり、その他のキーは本体10の下に実際は隠れたままであることに留意されたい。
【0021】
図1および2により、本発明の好適な実施形態において、単独キー6が、層部2が引き出される方向に応じてどのようにして異なる標示または同一の標示を表示することが可能になるかが容易に理解される。図1および2ではメカニカルキーを開示する各キー6は、事実上二つの文字をその表面に有する。しかしながら一度に照らされるのはそのうちの一つである。一つが照らされている間、他方は、ボタンの周辺の表面のコントラストが無いため隠れている(図1および図2のキーの上の破線の標示を参照)。
【0022】
単独キー6は二つを超える、例えば四つの標示を標示可能であることが考えられ、一つの標示は層部2が本体10から引き出し可能である各方向のためのものである。単独キー6は、例えば、各キーの表面にデジタル表示などを提供することによって(図示せず)四つを超える標示を開示することが可能である。これは、多数の適用のために同一のキーパッドが使用される場合意味をなし、異なる機能を示すキーが必要となる。
【0023】
図面は、携帯電話の表面にさらにディスプレイ9を示す。この要素は、好ましくは、層部2が本体10から引き出される方向、つまり縦長または横長フォーマットに対応するその内容を表示することが可能である。
【0024】
また、ディスプレイの隣のボタン8は、層部2が引き出される方向に応じて、およびその方向において、異なる目的で使用され得る。
【0025】
図3は、前述の図面と同一の装置を示す。この図面において、層部2は、その静止位置において本体10と一体的に格納される、または本体10に並列する。この構成において、電子装置1は、大幅に縮小された小さいサイズを有し、ポケットに携帯するのに適している。装置は、この構成においても使用可能であり、引き出されたキーパッドで利用可能な全てのオプションを介して使用することはできないが、発信または受信のための使用は可能である。
【0026】
図4は、前述の図面のような従来のキーパッドの代わりにタッチスクリーン7を有する携帯電話を示す。タッチスクリーンは、いくつかのことなる表示、例えば、異なる仮想キーパッド、つまり層部2が引き出された各方向のためのものを表示することができるため、キーパッドの代わりにタッチスクリーンを使用することは、本発明に関して非常に便利である。図1および2と同様に、タッチスクリーン7を有する層部2は、少なくとも二方向、好ましくは、四方向において本体10から引き出されることが可能である。図示されるボタン8は、層部2が引き出される方向に応じてその機能を変更することも可能である。本発明の特別な適用において、電子装置、例えば携帯電話がゲーム機として使用される場合、タッチスクリーン7は、ゲームを表示するためにも使用可能である。
【0027】
図5は、本発明の目的のための、可能であるいくつかの摺動機構のうちの一つを示す。層部2および本体10は図式的に示され、つまり摺動機構以外にいかなる追加の要素も示されていない。
【0028】
層部2の移動を可能にするために、本体10は、二つのL型の案内部、コンジット、またはチャネル11を有し、その中にガイドピン12が摺動可能に配置される。ガイドピン12は、移動可能な層部2に取り付けられる。案内部、コンジット、またはチャネル11、ならびにガイドピン12は、形状保持のためのデザインを有し(断面X-X参照)、すなわち、ガイドピン12、つまり層部2全体は、L型の案内部、コンジット、またはチャネル11に沿ってのみ移動可能である。前述の摺動機構を強化し、層部2の移動を安定させるために、本体10は、ガイドピン14も備えることが可能で、一方、層部2は、対応するL型の案内部、コンジット、またはチャネル13を備える。それらのL型の案内部、コンジット、またはチャネル11および13、ならびに対応するガイドピン12がそれぞれに備えられるので、層部2は、完全にその静止位置から二つの異なる方向に引き出される。
【0029】
上に説明されたL型のものの代わりに、TまたはX型の案内部、コンジット、またはチャネルを使用することが考えられる。これにより層部が三または四方向に移動することが可能になる。
【0030】
図示される層部2および本体10は、例えば、ディスプレイ、キーパッド、タッチスクリーン、ボタンなどのさらなる要素をその表面に備えてもよい。実際のところ、摺動機構は、好ましくは、層部2に内蔵されており、よって外側からは実際見えない。
【0031】
本発明は、前述の実施形態に限定されず、特に携帯電話に使用されることに限定されない。本発明に関するその他のいくつかの適用が、例えば、ハンドヘルド機、ポケットPC、またはその他の電子機器において考えられる。本発明は、特に前述の機器の組み合わせに相当する装置での使用に適する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】同一の摺動可能な層部が二つの異なる位置で引き出された状態の同一の装置を示す。
【図2】同一の摺動可能な層部が二つの異なる位置で引き出された状態の同一の装置を示す。
【図3】静止位置で一体化して格納された層部を示す。
【図4】キーパッドの代わりにタッチスクリーンを有する電子装置を示す。
【図5】摺動機構に関して可能な構成である。
【符号の説明】
【0033】
1 電子装置
2 層部
3 キーパッド
4 層部が縦長フォーマットで摺動した場合のキーパッドの表示
5 層部が横長フォーマットで摺動した場合のキーパッドの表示
6 メカニカルキー
7 タッチスクリーン
8 ボタン
9 ディスプレイ
10 本体
11 本体上の案内部、コンジット、またはチャネル
12 ガイドピン
13 層部上の案内部、コンジット、またはチャネル
14 ガイドピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層部(2)と、前記層部(2)を静止位置から引き出し可能にする、前記層部(2)のための移動機構とを有する電子装置(1)であって、
前記移動機構は、前記層部(2)をこの静止位置から異なる方向、好ましくは、二、三、または四方向において引き出し可能にし、特に好ましくは、前記移動機構は、摺動機構であることを特徴とする、電子装置(1)。
【請求項2】
この層部(2)はキーパッド(3)を有することを特徴とする、請求項1に記載の電子装置(1)。
【請求項3】
前記キーパッド(3)の表示(4、5)方向は、前記摺動方向に応じて変化することを特徴とする、請求項2に記載の電子装置(1)。
【請求項4】
前記キーパッド(2)は、いくつかのメカニカルキー(6)を有し、前記メカニカルキー(6)は、好ましくは圧力センサーを有し、最も好ましくは圧電センサーを有することを特徴とする、請求項2に記載の電子装置(1)。
【請求項5】
前記単独のメカニカルキー(6)は異なる標示を表示することが可能であることを特徴とする、請求項4に記載の電子装置(1)。
【請求項6】
前記キーパッド(3)は、少なくとも部分的にタッチスクリーン(7)によって代替されることを特徴とする、請求項2に記載の電子装置(1)。
【請求項7】
前記タッチスクリーン(7)は異なるキーの配列を表示することが可能であることを特徴とする、請求項6に記載の電子装置(1)。
【請求項8】
前記層部(2)は、その静止位置で、前記電子装置(1)の本体(10)と一体的に格納される、または本体(10)に並列することを特徴とする、請求項1に記載の電子装置(1)。
【請求項9】
前記電子装置(1)は、前記層部(2)が引き出される方向に応じて自動的に表示形式を適合させるディスプレイ(9)を有し、前記電子装置(1)は、上面にボタン(8)もさらに有し、それらのボタン(8)は前記層部が引き出される方向に応じて機能を変化することを特徴とする、請求項1に記載の電子装置(1)。
【請求項10】
前記移動機構は、少なくとも一つのガイドチャネル(11、13)を有する摺動機構を備え、各ガイドチャネル(11、13)について、対応するガイドピン(12、14)が備えられることを特徴とする、請求項1に記載の電子装置(1)。
【請求項11】
前記ガイドチャネル(11、13)はL型、T型、またはX型の形状であることを特徴とする、請求項10に記載の電子装置(1)。
【請求項12】
前記ガイドチャネル(11、13)および前記対応するガイドピン(12、14)は、形状保持具であるように設計されることを特徴とする、請求項10に記載の電子装置(1)。
【請求項13】
前記キーパッド(2)はいくつかのメカニカルキー(6)を有し、前記メカニカルキー(6)は、好ましくは、圧力センサーを有し、最も好ましくは圧電センサーを有することを特徴とする、請求項3に記載の電子装置(1)。
【請求項14】
前記キーパッド(3)は、少なくとも部分的にタッチスクリーン(7)によって代替されることを特徴とする、請求項3に記載の電子装置(1)。
【請求項15】
前記キーパッド(3)は少なくとも部分的にタッチスクリーン(7)によって代替えされることを特徴とする、請求項4に記載の電子装置(1)。
【請求項16】
前記キーパッド(3)は少なくとも部分的にタッチスクリーン(7)によって代替えされることを特徴とする、請求項5に記載の電子装置(1)。
【請求項17】
前記ガイドチャネル(11、13)および前記対応するガイドピン(12、14)は、形状保持具であるように設計されることを特徴とする、請求項11に記載の電子装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−527620(P2008−527620A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548858(P2007−548858)
【出願日】平成18年1月2日(2006.1.2)
【国際出願番号】PCT/FI2006/000001
【国際公開番号】WO2006/072657
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(398012616)ノキア コーポレイション (1,359)
【Fターム(参考)】