シフト装置
【課題】装置を大型化することなく、運転者による操作が意図しない操作となったときに所望しないシフトレンジの切換が行われることを回避し得るダイヤル式のシフト装置を提供する。
【解決手段】ロータリエンコーダ15によって検出された1回の操作におけるシフト操作部材14の回動角度θsおよび回動方向に応じて、直列配置されたP、R、N、D、Lのシフトレンジの中から選択するシフトレンジを切り換える制御ユニット11とを有する自動車1のシフト装置10において、例えばNレンジにあるときに、1回の操作においてシフトレンジの切換段数を示すカウンタ値Cが2以上である場合(ST28:No)、制御ユニット11は、カウンタ値Cの符号(回動方向)や現在選択中のシフトレンジ(ST23:Yes)に応じてシフトレンジの切換段数を制限し、LレンジではなくDレンジに切り換える(ST33)。
【解決手段】ロータリエンコーダ15によって検出された1回の操作におけるシフト操作部材14の回動角度θsおよび回動方向に応じて、直列配置されたP、R、N、D、Lのシフトレンジの中から選択するシフトレンジを切り換える制御ユニット11とを有する自動車1のシフト装置10において、例えばNレンジにあるときに、1回の操作においてシフトレンジの切換段数を示すカウンタ値Cが2以上である場合(ST28:No)、制御ユニット11は、カウンタ値Cの符号(回動方向)や現在選択中のシフトレンジ(ST23:Yes)に応じてシフトレンジの切換段数を制限し、LレンジではなくDレンジに切り換える(ST33)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載される変速機の走行レンジを切り換えるためのシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車では、シフト装置の操作レバーはセンターコンソールに設けられるものが多かった。近年では、車室内の空間利用の観点などからステアリングホイール周辺やインストルメントパネルに操作レバーを設けたシフト装置が登場している。
【0003】
ところで、オートマティックトランスミッションのシフトレンジがレバーストローク上に一列に配置されるレバー式のシフト装置では、一般的にP(パーキング)、R(リバース)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)の順にシフトレンジが配置されている。通常走行用のDレンジよりも加速レスポンスやエンジンブレーキを増大させる目的で、S(スポーツモード)、2(セカンド(2速))、L(ロー(1速))、B(回生制動)レンジなど(以下、これらを変速レンジと称する。)を設定する場合には、これらの変速レンジはDレンジに対してNレンジと相反する側に隣接して配置される。そのため、Pレンジから通常走行に使用されるDレンジに切り換える際に運転者が素早く操作しようとすると、レバーがDレンジを通り過ぎてしまうことがあり、この場合、レバーを戻す操作が必要になる。
【0004】
そこで、従来のシフト装置では、Nレンジから操作する場合には釦を押していないとDレンジを通り過ぎることができないようなストッパ機構を設けており、Dレンジ選択時の操作性改善を図っている。
【0005】
一方、操作部材の操作が電気的なレンジ切換信号に変換され、このレンジ切換信号に基づいてシフトレンジの切換制御を行う、いわゆるシフトバイワイヤ式を採用し、操作部材をダイヤル式にして操作部材の回転操作に応じてシフトレンジを切り換えるようにした発明が特許文献1に提案されている。この発明では、操作部材に設けられたカムの回動を規制するためにC字形のストッパを設け、運転者が所定の回転範囲を超えて操作部材を回転させようとすると、カムがストッパに当接して物理的に回動が規制されるようにしている。そして、ストッパが規制する操作部材の回転範囲を変更できるように、ストッパの外周にリングギヤを形成して電動モータによってストッパを回転駆動できるようにしている。
【0006】
また、操作が運転者の意図しないものとなったときに所望しないシフトレンジ切換を回避するために、同じくシフトバイワイヤ式を採用し、操作後に運転者が操作部材から手を離すと操作部材が自動的に中立位置に復帰する、いわゆるモーメンタリ式のシフト制御装置において、選択中のシフトレンジが走行レンジである第1レンジであり、これと逆方向への走行レンジである第2レンジへ切り換える操作が行われたある場合、シフトレンジの切換を認識するのに要する認識時間を、第1レンジ以外のレンジが選択されている場合に比べて長く設定した発明なども提案されている(特許文献2参照)。この発明によれば、Dレンジにあるときに、実際にはDレンジを選択してSレンジなどに切り換えるつもりが、誤ってRレンジを経由して中立位置にシフト操作されたとしても、Rレンジへの切換が認識されずにDレンジを保持させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−511063号公報
【特許文献2】特開2010−90925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の発明では、操作部材の回動操作を規制するために電動モータやリングギヤ付きストッパといった部品が必要となり、部品点数が多くなるとともにシステムが大型化してしまう。また、操作部材をダイヤル式としたシフト装置においては、特許文献1の発明と異なる構成を採ったとしても、シフトレンジの配置はレバー式と同一であるため、Dレンジの選択性を向上させるためには従来のレバー式と同様に、釦操作によるストッパ機構を設ける必要があり、コストが増大する。しかも、Pレンジから操作する場合には、Pレンジ解除のためにこの釦を押して操作する必要があるため、釦を押したまま操作し続けると、Dレンジで操作部材の回動が止まらず、Dレンジ選択時の操作性に更なる改善の余地があった。
【0009】
一方、特許文献2の発明は、モーメンタリ式のシフト装置であり、単純にダイヤル式のシフト装置に適用した場合、PレンジからDレンジを選択しようと操作部材を回転操作すると、操作部材を回し過ぎてLレンジを選択してしまうといったダイヤルシフト特有の課題を解決することができない。
【0010】
本発明は、このような従来技術に含まれる課題を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、操作部材がダイヤル式のシフト装置において、装置を大型化することなく、操作が運転者の意図しないものとなったときに所望しないシフトレンジの切換を回避し得るようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するために、本発明の一側面によれば、ダイヤル式の操作部材(14)と、当該操作部材の回動角度(θs)を検出する角度検出手段(15)と、当該角度検出手段により検出された1回の操作における前記操作部材の回動角度および回動方向に応じて、直列配置された複数段のシフトレンジ(P、R、N、D、L)の中から選択するシフトレンジを切り換える制御手段(11)とを有する車両(1)のシフト装置(10)であって、1回の操作においてシフトレンジを複数段切り換える角度に相当する前記操作部材の回動が前記角度検出手段により検出された場合(ST6,17,28,67,77,89:No、ST86,99,100,111,112:Yes)、前記制御手段は、前記操作部材の回動方向および前記車両の状態に応じて(ST79,92、ST90,91,103,104,115,116:No)シフトレンジの切換段数を制限する(ST11,22,33,71,83,96、ST94,95,106,107,118,119)ことを特徴とする。ここで、1回の操作とは、1つの回動位置で所定時間停止することなく操作部材が回動されている間の操作を意味する。車両の状態としては、選択されているシフトレンジや車両の走行・停止状態などが挙げられる。
【0012】
このシフト装置によれば、運転者が操作部材を意図に反して回し過ぎたとしても、車両の状態に適さないシフトレンジが選択されることを抑制でき、シフト操作性を向上させることができる。また、制御手段の制御によって所望のレンジでシフトレンジの切換を規制することができるため、操作部材の回動を物理的に規制する部材を設けなくて済み、コストを削減することができる。
【0013】
また、本発明の一側面によれば、前記複数段のシフトレンジは、前記車両を前進走行させるDレンジ、および所定の変速モードまたは所定の変速比にて若しくは回生制動を用いて前記車両を前進走行させる変速レンジ(L)を含み、現在選択されているレンジが前記Dレンジ以外および前記変速レンジ以外のレンジであるときに(ST1,12または23:Yes、ST61,72または84:Yes)、1回の操作において前記Dレンジを越えて前記変速レンジに達する角度に相当する前記操作部材の回動が前記角度検出手段により検出された場合(ST6,17,28,67,77,89:No)、前記制御手段はシフトレンジの切換を前記Dレンジにて規制する(ST11,22,33,71,83,96)ことを特徴とする。
【0014】
通常、Dレンジおよび変速レンジ以外のレンジが選択された状態から変速レンジを直接選択する状況あるいは要求は少ない。そこで、このような構成とすることにより、例えばPレンジ、NレンジあるいはRレンジからDレンジを通り過ぎて変速レンジが選択されることを防止でき、運転者が操作部材を意図に反して回し過ぎたとしてもDレンジを選択させることができる。また、運転者が操作部材を回し過ぎたとしても、操作部材を戻す操作の必要がなくなるため、シフト選択の操作性が向上する。
【0015】
また、本発明の一側面によれば、前記制御手段によってシフトレンジの切換が規制されたことにより(ST11,22,33,71,83,96)、現在選択されているレンジが前記Dレンジであるとき(ST34,97:Yes)に、さらに前記変速レンジ側へ切り換える前記操作部材の回動が前記角度検出手段により検出された場合(ST35,98:Yes、ST39,102:No)、前記制御手段は前記変速レンジ側へのシフトレンジを切り換える(ST44,109)ことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、運転者に変速レンジを選択する意思がある場合には、運転者が1回の操作でDレンジへ切換を行った後、再度操作部材をLレンジ側へ操作することで、容易に変速レンジを選択可能とすることができ、シフト操作性の悪化を防止できる。
【0017】
また、本発明の一側面によれば、前記複数段のシフトレンジは、駆動力の伝達を遮断するNレンジと、該Nレンジの隣に配列され、前記車両を前進走行させるDレンジと、前記Nレンジの前記Dレンジと相反する側の隣に配列され、前記車両を後退走行させるRレンジとを少なくとも含み、車速(V)を検出する車速検出手段(16)を更に有し、現在選択されているレンジが前記Dレンジまたは前記変速レンジであるときに(ST84:No)、1回の操作において前記Nレンジを越えて前記RレンジまたはPレンジに達する角度に相当する前記操作部材の回動が前記角度検出手段により検出された場合(ST99,100,111,112:Yes)、前記車速が所定の閾値以下でない限り(ST103,104,115,116:No)、前記制御手段は前記RレンジまたはPレンジへのシフトレンジの切換を規制する(ST107,119)ことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、前進走行状態で運転者がDレンジや変速レンジからNレンジを選択しようとして操作部材を回し過ぎたとしても、車両が所定の閾値よりも早く走行中である場合にはRレンジまたはPレンジが選択されることを防止することができ、適切なシフト切換を行うことができる。また、操作部材が一度にどれだけ回動されても、切換がNレンジで規制されるため、運転者が細かい回動量を気にする必要がなくなり、シフト操作性が向上する。
【発明の効果】
【0019】
このように、本発明によれば、装置を大型化することなく、運転者による操作が意図しない操作となったときに所望しないシフトレンジの切換が行われることを回避し得る車両のシフト装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る自動車の駆動系の要部系統図
【図2】図1に示す自動車の運転席周辺の概略斜視図
【図3】図1に示すシフト装置の概略構成図
【図4】図1に示す制御ユニットの機能ブロック図
【図5】図4に示すレンジ選択部による第1実施例に係るレンジ選択のフロー図
【図6】図4に示すレンジ選択部による第1実施例に係るレンジ選択のフロー図
【図7】図4に示すレンジ選択部による第1実施例に係るレンジ選択のフロー図
【図8】図4に示すレンジ選択部による第1実施例に係るレンジ選択のフロー図
【図9】図4に示すレンジ選択部による第1実施例に係るレンジ選択のフロー図
【図10】図4に示すレンジ選択部による第2実施例に係るレンジ選択のフロー図
【図11】図4に示すレンジ選択部による第2実施例に係るレンジ選択のフロー図
【図12】図4に示すレンジ選択部による第2実施例に係るレンジ選択のフロー図
【図13】図4に示すレンジ選択部による第2実施例に係るレンジ選択のフロー図
【図14】図4に示すレンジ選択部による第2実施例に係るレンジ選択のフロー図
【図15】第1および第2実施例のシフトレンジ選択フローによる作用説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明を一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
先ず、図1を参照して、実施形態に係る自動車1の概略構成について説明する。自動車1は、駆動源としてエンジン2を搭載しており、エンジン2の出力をオートマティックトランスミッション(以下、単にトランスミッション4と記す。)および前輪車軸5介して駆動輪に伝達する。なお、図示例では、自動車1は前輪6fを駆動輪とする前輪駆動車であるが、後輪6rを駆動輪とする後輪駆動車または前後両車輪6を駆動輪とする四輪駆動車とすることもできる。以下、トランスミッション4については、前進4段、後退1段の多段変速式として説明するが、連続可変トランスミッション(CVT)を用いることもできる。
【0023】
なお、自動車1は、駆動源としてエンジン2の代わりに、またはエンジン2とともに、想像線で示すモータ・ジェネレータ3を搭載する電気自動車またはハイブリッド車であってもよい。この場合、モータ・ジェネレータ3は、車両走行用の電動機と回生用の発電機とを兼ねたものであり、二次電池であるバッテリ7からの電力供給とバッテリ7に対する電力供給(充電)とをインバータ8によって制御され、減速時に減速エネルギを電力に変換回生して回生制動を発生する回生制動手段として機能する。
【0024】
自動車1には、マイクロコンピュータやROM、RAM、周辺回路、入出力インタフェース、各種ドライバ等から構成された制御ユニット11と、トランスミッション4のシフトレンジの変更操作に供されるシフト操作部材14と、シフト操作部材14の操作量(回動角度θs)を検出するロータリエンコーダ15と、車速Vを検出する車速センサ16と、アクセルペダル17の踏込量θaを検出するアクセルペダルセンサ18とが設けられている。これら制御ユニット11、シフト操作部材14、ロータリエンコーダ15、車速センサ16などにより、本発明のシフト装置10が構成される。
【0025】
制御ユニット11は、エンジン2の駆動制御の他、シフト操作部材14の操作に応じてトランスミッション4のシフトレンジを選択するとともに、選択したシフトレンジに従ってトランスミッション4のギヤ段を変更するシフト制御を行う。なお、ギヤ段の変更は、トランスミッション4に接続する油圧回路に設けられた図示しないシフトソレノイドバルブを開閉駆動することによって行われる。また、自動車1が電気自動車またはハイブリッド車である場合、制御ユニット11はモータ・ジェネレータ3の駆動/回生も制御する。
【0026】
図2および図3に示すように、シフト操作部材14は、ダイヤル式の円柱状のつまみであり、自動車1のインストルメントパネル19におけるステアリングホイール20の左側下方に設けられている。インストルメントパネル19のシフト操作部材14が設けられた部位は、運転者がシフト操作部材14を操作しやすいように他の部位に比べて突出形成されている。一方、シフト操作部材14を設けるためにセンターコンソールが必要とならないため、車室空間の有効利用が可能となっている。なお、シフト操作部材は、上記配置に限られることはなく、例えばセンターコンソールなど、他の位置に設けることもできる。
【0027】
シフト操作部材14は、回動方向に関わらず無限に回転可能であり、かつ一定角度(ここでは、30度)ごとに節度感(クリック感)が得られるようになっている。そのため、シフト操作部材14が所定角度(30°)回動したことを運転者が触覚で認識することができ、高いシフト操作性が実現している。なお、節度感を生じさせる機構は、例えば特許文献1に開示されるディテント機構など、公知の機構であってよく、ここでは詳細な説明は省略する。
【0028】
図3に示すように、シフト操作部材14の側方には、トランスミッション4のシフトレンジであるP、R、N、D、Lの表示がこの順に左回り(半時計回り)に配置された表示パネル21が設けられている。表示パネル21は、バックライトなどによって選択中のシフトレンジを表示する。なお、シフトレンジの配列は上記例に限定されるものではなく、左回りではなく右回りに配置した配列や、DレンジとLレンジとの間あるいはLレンジの代わりにSレンジや2レンジがある配列、Lレンジの代わりにBレンジがある配列などとすることもできる。
【0029】
ロータリエンコーダ15は、シフト操作部材14の回動角度θsを検出する角度検出手段であり、インストルメントパネル19の背面側に設けられている。ロータリエンコーダ15による回動角度θsの検出信号は制御ユニット11に入力し、トランスミッション4のシフト制御に利用される。
【0030】
図4に示すように、制御ユニット11は、レンジ選択部12とギヤ段選択部13とを有している。レンジ選択部12は、1回の操作によって回動したシフト操作部材14の回動角度θsおよび回動方向に応じて、選択するシフトレンジを現在のシフトレンジから切り換える。つまり、制御ユニット11は、シフト操作部材14が所定角度(ここでは、30度)回動される毎に、原則としてシフトレンジを1段切り換える。例えば、現在のシフトレンジがPレンジであるときに、1回の操作でシフト操作部材14を左回りに90度回動した場合、制御ユニット11は現在のシフトレンジから3段切り換え、Dレンジを選択することになる。なお、1回の操作における回動角度θsが90度よりも大きく、120度よりも小さい場合、シフトレンジの切換段数は、90度回動した場合と同じ3段となる。
【0031】
ここで、1回の操作とは、1つの回動位置で所定時間(ここでは、0.2s)停止することなくシフト操作部材14が回動されている間の操作を意味する。つまり、停止しているシフト操作部材14を回動させ始めてから、シフト操作部材14を停止して0.2sが経過するまでの一連の操作である。例えば、シフト操作部材14を節度感を得られる角度である30度左回りに回し、停止させてから0.2sが経過する前に更に左回りまたは右回り(時計回り)に30度回した場合、最初の左回り30度の操作と、その後の左回りまたは右回り30度の操作とを併せて1回の操作となる。なお、最初の左回り30度の操作後、0.2sが経過する前に左回りに30度回した場合の1回の操作における回動角度θsは60度となり、0.2sが経過する前に右回りに30度回した場合の1回の操作における回動角度θsは0度となる。
【0032】
なお、レンジ選択部12は、ロータリエンコーダ15の検出信号に基づいてシフト操作部材14が変速位置を通過する度にカウンタでカウントし、カウンタ値Cによって1回の操作でシフト操作部材14がどれだけ回動されたかを検知する。なお、レンジ選択部12はシフト操作部材14が止まったときもカウントする。具体的には、現在選択されているシフトレンジをカウンタ値C=0とし(カウント「0」から始め)、1回の操作でシフト操作部材14が左回りに30度回動されると、「+1」がカウントされてカウンタ値C=+1となり、例えば、1回の操作でシフト操作部材14が左回りに90度回動されると、「+3」がカウントされてカウンタ値C=+3となる。また、1回の操作でシフト操作部材14が右回りに30度回動されると、「−1」がカウントされてカウンタ値C=−1となる。
【0033】
シフト操作部材14が回動操作されると、レンジ選択部12は、このようにカウントしたカウンタ値Cに応じて選択するシフトレンジを現在のシフトレンジから切り換える。例えば、現在選択されているシフトレンジがPレンジであるときに、1回の操作でシフト操作部材14が左回りに30度回動されてカウンタ値C=+1が確定すると、レンジ選択部12はRレンジを選択し、Pレンジの状態から1回の操作で左回りに90度回動されてカウンタ値C=+3が確定すると、レンジ選択部12はDレンジを選択する。なお、エンジン始動時には、レンジ選択部12は必ずPレンジを選択するように設定されている。図示していないが、ブレーキペダルの踏込信号がレンジ選択部12に入力するようにし、PレンジからRレンジまたはDレンジへ切り換える際にブレーキペダルが踏み込まれていることを条件としてもよい。
【0034】
ギヤ段選択部13は、レンジ選択部12によって選択されたシフトレンジに従ってトランスミッション4のギヤ段を選択するとともに、シフトソレノイドバルブを駆動してトランスミッション4を選択したギヤ段に制御する。具体的には、ギヤ段選択部13は、PレンジおよびNレンジが選択されると、駆動力の伝達を遮断するようにトランスミッション4を制御し、Rレンジが選択されると、自動車1を後退走行させるようにトランスミッション4を制御し、Dレンジが選択されると、アクセルペダルセンサ18の踏込量θaや車速Vなどに基づいて所定のマップを参照して1速〜4速のギヤ段を選択しながら自動車1を前進走行させるようにトランスミッション4を制御し、Lレンジが選択されると、所定の法則に従って1速または2速などで自動車1を前進走行させるようにトランスミッション4を制御する。
【0035】
<第1実施例>
次に、図5〜図9を参照して、レンジ選択部12によるシフトレンジ選択手順の第1実施例について説明する。上記したように、レンジ選択部12はエンジン始動時にPレンジを選択した後、以下のシフトレンジ選択処理を行う。まず図5に示すように、レンジ選択部12は、現在選択されているシフトレンジがPレンジであるか否かを判定する(ステップST1)。エンジン始動直後は必ずPレンジが選択されており、ステップST1の判定がYesとなるため、次にレンジ選択部12は、ロータリエンコーダ15の検出値に基づいて、シフト操作がなされて1回の操作が完了し、カウンタ値Cが確定したか否かを判定し(ステップST2)、判定結果がNoの場合はステップST2の処理を繰り返す。
【0036】
一方、ステップST2で1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定すると(Yes)、レンジ選択部12は、カウンタ値Cが0以下であるか否か(ステップST3)、1であるか否か(ステップST4)、2であるか否か(ステップST5)、3であるか否か(ステップST6)を順に判定する。カウンタ値Cが0以下でステップST3の判定がYesの場合、レンジ選択部12はPレンジを選択し(選択するシフトレンジをPレンジに保持し)(ステップST7)、カウンタ値Cが1でステップST4の判定がYesの場合、レンジ選択部12はRレンジを選択し(選択するシフトレンジをRレンジに切り換え)(ステップST8)、カウンタ値Cが2でステップST5の判定がYesの場合、レンジ選択部12はNレンジを選択し(選択するシフトレンジをNレンジに切り換え)(ステップST9)、カウンタ値Cが3でステップST6の判定がYesの場合、レンジ選択部12はDレンジを選択し(選択するシフトレンジをDレンジに切り換え)(ステップST10)、カウンタ値Cが4以上でステップST6の判定がNoの場合、レンジ選択部12はDレンジを選択し(選択するシフトレンジをLレンジではなくDレンジに切り換え)(ステップST11)、ステップST1以降の手順を繰り返す。
【0037】
ステップST1で現在選択されているシフトレンジがPレンジ以外のレンジである場合(No)、図6に示すように、レンジ選択部12は、現在選択されているシフトレンジがRレンジであるか否かを判定する(ステップST12)。この判定がYesの場合、ステップST2と同様に1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定したか否かを判定し(ステップST13)、判定結果がNoの場合はステップST13の処理を繰り返す。
【0038】
一方、ステップST13で1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定すると(Yes)、レンジ選択部12は、カウンタ値Cが−1以下であるか否か(ステップST14)、0であるか否か(ステップST15)、1であるか否か(ステップST16)、2であるか否か(ステップST17)を順に判定する。カウンタ値Cが−1以下でステップST14の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをPレンジに切り換え(ステップST18)、カウンタ値Cが0でステップST15の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをRレンジに保持し(ステップST19)、カウンタ値Cが1でステップST16の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをNレンジに切り換え(ステップST20)、カウンタ値Cが2でステップST17の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをDレンジに切り換え(ステップST21)、カウンタ値Cが3以上でステップST17の判定がNoの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをLレンジではなくDレンジに切り換え(ステップST22)、ステップST1以降の手順を繰り返す。
【0039】
ステップST12で現在選択されているシフトレンジがPおよびRレンジ以外のレンジである場合(No)、図7に示すように、レンジ選択部12は、現在選択されているシフトレンジがNレンジであるか否かを判定する(ステップST23)。この判定がYesの場合、ステップST2と同様に1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定したか否かを判定し(ステップST24)、判定結果がNoの場合はステップST24の処理を繰り返す。
【0040】
一方、ステップST24で1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定すると(Yes)、レンジ選択部12は、カウンタ値Cが−2以下であるか否か(ステップST25)、−1であるか否か(ステップST26)、0であるか否か(ステップST27)、1であるか否か(ステップST28)を順に判定する。カウンタ値Cが−2以下でステップST25の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをPレンジに切り換え(ステップST29)、カウンタ値Cが−1でステップST26の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをRレンジに切り換え(ステップST30)、カウンタ値Cが0でステップST27の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをNレンジに保持し(ステップST31)、カウンタ値Cが1でステップST28の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをDレンジに切り換え(ステップST32)、カウンタ値Cが2以上でステップST28の判定がNoの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをLレンジではなくDレンジに切り換え(ステップST33)、ステップST1以降の手順を繰り返す。
【0041】
ステップST23で現在選択されているシフトレンジがP、RおよびNレンジ以外のレンジである場合(No)、図8に示すように、レンジ選択部12は、現在選択されているシフトレンジがDレンジであるか否かを判定する(ステップST34)。この判定がYesの場合、ステップST2と同様に1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定したか否かを判定し(ステップST35)、判定結果がNoの場合はステップST35の処理を繰り返す。
【0042】
一方、ステップST35で1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定すると(Yes)、レンジ選択部12は、カウンタ値Cが−3以下であるか否か(ステップST36)、−2であるか否か(ステップST37)、−1であるか否か(ステップST38)、0であるか否か(ステップST39)を順に判定する。カウンタ値Cが−3以下でステップST36の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをPレンジに切り換え(ステップST40)、カウンタ値Cが−2でステップST37の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをRレンジに切り換え(ステップST41)、カウンタ値Cが−1でステップST38の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをNレンジに切り換え(ステップST42)、カウンタ値Cが0でステップST39の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをDレンジに保持し(ステップST43)、カウンタ値Cが1以上でステップST39の判定がNoの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをLレンジに切り換え(ステップST44)、ステップST1以降の手順を繰り返す。
【0043】
ステップST34で現在選択されているシフトレンジがP、R、NおよびDレンジ以外のレンジ、すなわちLレンジである場合(No)、図9に示すように、レンジ選択部12は、ステップST2と同様に1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定したか否かを判定し(ステップST45)、判定結果がNoの場合はステップST45の処理を繰り返す。
【0044】
一方、ステップST45で1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定すると(Yes)、レンジ選択部12は、カウンタ値Cが−4以下であるか否か(ステップST46)、−3であるか否か(ステップST47)、−2であるか否か(ステップST48)、−1であるか否か(ステップST49)を順に判定する。カウンタ値Cが−4以下でステップST46の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをPレンジに切り換え(ステップST50)、カウンタ値Cが−3でステップST47の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをRレンジに切り換え(ステップST51)、カウンタ値Cが−2でステップST48の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをNレンジに切り換え(ステップST52)、カウンタ値Cが−1でステップST49の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをDレンジに切り換え(ステップST53)、カウンタ値Cが0以上でステップST49の判定がNoの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをLレンジに保持し(ステップST54)、ステップST1以降の手順を繰り返す。
【0045】
<第2実施例>
次に、図10〜図14を参照して、レンジ選択部12によるシフトレンジ選択手順の第2実施例について説明する。上記したように、レンジ選択部12はエンジン始動時にPレンジを選択した後、以下のシフトレンジ選択処理を行う。まず図5に示すように、レンジ選択部12は、現在選択されているシフトレンジがPレンジであるか否かを判定する(ステップST61)。エンジン始動直後は必ずPレンジが選択されており、ステップST1の判定がYesとなるため、次にレンジ選択部12は、Pレンジ解除条件、具体的にはブレーキペダルが踏み込まれているか否か、アクセルペダル17が踏み込まれていない状態であるか否かの各条件が満たされているか否かを判定する(ステップST62)。ステップST62でPレンジ解除条件が満たされていない場合(No)、レンジ選択部12はステップST62の処理を繰り返す。一方、ステップST62でPレンジ解除条件が満たされている場合(Yes)、レンジ選択部12は、ロータリエンコーダ15の検出値に基づいて、シフト操作がなされて1回の操作が完了し、カウンタ値Cが確定したか否かを判定し(ステップST63)、判定結果がNoの場合はステップST62以降の処理を繰り返す。
【0046】
一方、ステップST63で1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定すると(Yes)、レンジ選択部12は、カウンタ値Cが0以下であるか否か(ステップST64)、1であるか否か(ステップST65)、2であるか否か(ステップST66)、3であるか否か(ステップST67)を順に判定する。カウンタ値Cが0以下でステップST64の判定がYesの場合、レンジ選択部12はPレンジを選択し(選択するシフトレンジをPレンジに保持し)(ステップST68)、カウンタ値Cが1でステップST65の判定がYesの場合、レンジ選択部12はRレンジを選択し(選択するシフトレンジをRレンジに切り換え)(ステップST69)、カウンタ値Cが2でステップST66の判定がYesの場合、レンジ選択部12はNレンジを選択し(選択するシフトレンジをNレンジに切り換え)(ステップST70)、カウンタ値Cが3でステップST67の判定がYesの場合、およびカウンタ値Cが4以上でステップST67の判定がNoの場合、レンジ選択部12はDレンジを選択し(選択するシフトレンジをDレンジに切り換え)(ステップST71)、ステップST61以降の手順を繰り返す。
【0047】
ステップST61で現在選択されているシフトレンジがPレンジ以外のレンジである場合(No)、図11に示すように、レンジ選択部12は、現在選択されているシフトレンジがRレンジであるか否かを判定する(ステップST72)。この判定がYesの場合、ステップST63と同様に1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定したか否かを判定し(ステップST73)、判定結果がNoの場合はステップST73の処理を繰り返す。
【0048】
一方、ステップST73で1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定すると(Yes)、レンジ選択部12は、カウンタ値Cが−1以下であるか否か(ステップST74)、0であるか否か(ステップST75)、1であるか否か(ステップST76)、2であるか否か(ステップST77)を順に判定する。カウンタ値Cが−1以下でステップST74の判定がYesの場合、レンジ選択部12は、車速Vの絶対値が所定の第1閾値Vth1(例えば、5km/h)以下であるか否かを判定する(ステップST78)。ここで、Vth1並びに後述するVth2およびVth3は、正の値のときに自動車1の前進方向の速度を表し、負の値のときに自動車1の後進方向の速度を表すこととする。ステップST78の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをPレンジに切り換える(ステップST80)。一方、ステップST78の判定がNoの場合、およびカウンタ値Cが0でステップST75の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをRレンジに保持し(ステップST81)、カウンタ値Cが1でステップST76の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをNレンジに切り換える(ステップST82)。カウンタ値Cが2でステップST77の判定がYesの場合、およびカウンタ値Cが3以上でステップST77の判定がNoの場合はともに、レンジ選択部12は、車速Vが所定の第3閾値Vth3(例えば、−10km/h)以上であるか否かを判定し(ステップST79)、この判定がYesの場合には、選択するシフトレンジをDレンジに切り換える(ステップST83)一方、この判定がNoの場合には、選択するシフトレンジをNレンジに切り換え(ステップST82)、ステップST61以降の手順を繰り返す。
【0049】
ステップST72で現在選択されているシフトレンジがPおよびRレンジ以外のレンジである場合(No)、図12に示すように、レンジ選択部12は、現在選択されているシフトレンジがNレンジであるか否かを判定する(ステップST84)。この判定がYesの場合、ステップST63と同様に1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定したか否かを判定し(ステップST85)、判定結果がNoの場合はステップST85の処理を繰り返す。
【0050】
一方、ステップST85で1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定すると(Yes)、レンジ選択部12は、カウンタ値Cが−2以下であるか否か(ステップST86)、−1であるか否か(ステップST87)、0であるか否か(ステップST88)、1であるか否か(ステップST89)を順に判定する。カウンタ値Cが−2以下でステップST86の判定がYesの場合、レンジ選択部12は、ステップST78と同様に車速Vの絶対値が所定の第1閾値Vth1以下であるか否かを判定し(ステップST90)、この判定がYesの場合、選択するシフトレンジをPレンジに切り換える(ステップST93)。一方、ステップST90の判定がNoの場合、およびカウンタ値Cが−1でステップST87の判定がYesの場合、レンジ選択部12は、車速Vが所定の第2閾値Vth2(例えば、10km/h)以下であるか否かを判定し(ステップST91)、この判定がYesの場合、選択するシフトレンジをRレンジに切り換える(ステップST94)。一方、ステップST91の判定がNoの場合、およびカウンタ値Cが0でステップST88の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをNレンジに保持する(ステップST95)。カウンタ値Cが1でステップST89の判定がYesの場合、およびカウンタ値Cが2以上でステップST89の判定がNoの場合はともに、レンジ選択部12は、ステップST79と同様に車速Vが所定の第3閾値Vth3以上であるか否かを判定し(ステップST92)、この判定がYesの場合には、選択するシフトレンジをDレンジに切り換える(ステップST96)一方、この判定がNoの場合には、選択するシフトレンジをNレンジに保持し(ステップST95)、ステップST61以降の手順を繰り返す。
【0051】
ステップST84で現在選択されているシフトレンジがP、RおよびNレンジ以外のレンジである場合(No)、図13に示すように、レンジ選択部12は、現在選択されているシフトレンジがDレンジであるか否かを判定する(ステップST97)。この判定がYesの場合、ステップST63と同様に1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定したか否かを判定し(ステップST98)、判定結果がNoの場合はステップST98の処理を繰り返す。
【0052】
一方、ステップST98で1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定すると(Yes)、レンジ選択部12は、カウンタ値Cが−3以下であるか否か(ステップST99)、−2であるか否か(ステップST100)、−1であるか否か(ステップST101)、0であるか否か(ステップST102)を順に判定する。カウンタ値Cが−3以下でステップST99の判定がYesの場合、レンジ選択部12は、ステップST78と同様に車速Vの絶対値が所定の第1閾値Vth1以下であるか否かを判定し(ステップST103)、この判定がYesの場合、選択するシフトレンジをPレンジに切り換える(ステップST105)。一方、カウンタ値Cが−2でステップST100の判定がYesの場合、レンジ選択部12は、ステップST91と同様に車速Vが所定の第2閾値Vth2以下であるか否かを判定し(ステップST104)、この判定がYesの場合、選択するシフトレンジをRレンジに切り換える(ステップST106)。他方、ステップST103およびステップST104の判定がNoの場合、並びにカウンタ値Cが−1でステップST101の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをNレンジに切り換える(ステップST107)。カウンタ値Cが0でステップST102の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをDレンジに保持し(ステップST108)、カウンタ値Cが1以上でステップST102の判定がNoの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをLレンジに切り換え(ステップST109)、ステップST61以降の手順を繰り返す。
【0053】
ステップST97で現在選択されているシフトレンジがP、R、NおよびDレンジ以外のレンジ、すなわちLレンジである場合(No)、図14に示すように、レンジ選択部12は、ステップST63と同様に1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定したか否かを判定し(ステップST110)、判定結果がNoの場合はステップST110の処理を繰り返す。
【0054】
一方、ステップST110で1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定すると(Yes)、レンジ選択部12は、カウンタ値Cが−4以下であるか否か(ステップST111)、−3であるか否か(ステップST112)、−2であるか否か(ステップST113)、−1であるか否か(ステップST114)を順に判定する。カウンタ値Cが−4以下でステップST111の判定がYesの場合、レンジ選択部12は、ステップST78と同様に車速Vの絶対値が所定の第1閾値Vth1以下であるか否かを判定し(ステップST115)、この判定がYesの場合、選択するシフトレンジをPレンジに切り換える(ステップST117)。一方、カウンタ値Cが−3でステップST112の判定がYesの場合、レンジ選択部12は、ステップST91と同様に車速Vが所定の第2閾値Vth2以下であるか否かを判定し(ステップST116)、この判定がYesの場合、選択するシフトレンジをRレンジに切り換える(ステップST118)。他方、ステップST115およびステップST116の判定がNoの場合、並びにカウンタ値Cが−2でステップST113の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをNレンジに切り換える(ステップST119)。カウンタ値Cが−1でステップST114の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをDレンジに切り換え(ステップST120)、カウンタ値Cが0以上でステップST114の判定がNoの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをLレンジに保持し(ステップST121)、ステップST61以降の手順を繰り返す。ステップST115の判定がNoの場合、および
【0055】
このような第1および第2実施例に係るシフトレンジ選択を行った際の作用について図15を参照して説明すると、(A)に示すように、例えば選択中のシフトレンジがP、RまたはNレンジである状態では、上段に示すようにDレンジまではシフト操作部材14の回動角度θsに応じてシフトレンジが切り換わるが、運転者が1回の操作でシフト操作部材14をDレンジを越える回動角度θsでLレンジ側に回し過ぎたとしても、或いは1回目の操作で運転者がシフト操作部材14を左回りに、あるいはLレンジ側にいくら回し続けたとしても、シフトレンジはLレンジに切り換わることなく、1回目の操作の後にDレンジが選択されることになる。
【0056】
一方、図15(A)の下段に示すように、シフトレンジがDレンジとなった後に、すなわち1回目の操作でシフト操作部材14の回動を停止してから0.2sが経過し、Dレンジが確定した後に、運転者がシフト操作部材14を再度回動させる2回目の操作を行うと、シフトレンジはLレンジに切り換わる。なお、その後は運転者が左回り(PレンジからLレンジの方向)にいくらシフト操作部材14を回し続けても、シフトレンジはLレンジのままである。
【0057】
通常、Dレンジおよび変速レンジ以外のレンジの状態から直接変速レンジを選択する状況あるいは要求は少ないため、このようにシフトレンジが選択されることにより、運転者がシフト操作部材14を意図に反して回し過ぎたとてもDレンジが選択される。つまり、Pレンジ、NレンジあるいはRレンジからDレンジを通り過ぎて変速レンジであるLレンジが選択されることが防止される。また、運転者がシフト操作部材14を回し過ぎたとしても、シフト操作部材14を戻す操作が必要なくなるため、シフト選択の操作性が向上している。
【0058】
また、運転者にLレンジを選択する意思がある場合には、運転者は、Dレンジへ切換操作を行った後、0.2s以上操作を止めた後に再度シフト操作部材14を操作することで、容易にLレンジを選択できるため、シフト操作性が悪化することもない。
【0059】
他方、第2実施例においては、図15(B)の上段に示すように、例えば選択中のシフトレンジがDレンジである状態からNレンジへ切り換えようとしたときに、運転者が1回の操作でシフト操作部材14をNレンジを越える回動角度θsでR・Pレンジ側に回し過ぎたとしても、自動車1が第2閾値Vth2(例えば10km/h)を超える速度で走行中である場合には、上段に示すようにシフトレンジの切換はインヒビット制御によりNレンジで規制される。一方、図15(B)の下段に示すように、自動車1が停車中または第1閾値Vth1(例えば5km/h)以下で走行中である場合には、Dレンジが選択されている状態において運転者が1回の操作でシフト操作部材14を30度以上N・R・Pレンジ側に回動させた場合であっても、回動角度θsに応じてシフトレンジはPレンジまで順に切り換わる。なお、自動車1が5km/hより速く10km/h以下の速度で走行中の場合には、運転者が1回の操作でシフト操作部材14を90度以上N・R・Pレンジ側に回動させた場合であっても、シフトレンジの切換がNレンジで規制される。
【0060】
このように、DレンジやLレンジからNレンジを選択しようとして走行中に運転者がシフト操作部材14を意図に反して回し過ぎたとしても、自動車1の走行状態に適さないシフトレンジが選択されるのが抑制されるため、シフト操作性が向上する。また、シフト操作部材14が一度にどれだけ回動されても、第1閾値Vth1(例えば5km/h)を超える速度で走行中にはNレンジで規制されるため、運転者が細かい回動量を気にする必要がなくなり、シフト操作性が向上する。さらに、制御ユニット11による制御により、シフトレンジの切換を規制することができるため、シフト操作部材14の回動を物理的に規制する部材を設けなくて済み、コストを削減できる。
【0061】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、角度検出手段としてロータリエンコーダ15を用いているが、シフト操作部材14の回動方向と回動角度θsを検出できるのであれば、レゾルバなど他のセンサを用いてもよい。また、上記実施形態では、シフト操作部材14が所定の回動角度θsごとに節度感を生じるようにしているが、ディテント機構を省略して一定のトルクで回動するようにしてよい。このようにすることにより、シフト装置10の構成を簡単にしてコストを削減することができる。この他、各装置や部材の具体的構成や制御手法など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した本発明に係るシフト装置10および自動車1の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 自動車
4 トランスミッション
10 シフト装置
11 制御ユニット
14 シフト操作部材
15 ロータリエンコーダ(角度検出手段)
16 車速センサ
θs 回動角度
V 車速
Vth1 第1閾値(5km/h)
Vth2 第2閾値(10km/h)
Vth3 第1閾値(−10km/h)
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載される変速機の走行レンジを切り換えるためのシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車では、シフト装置の操作レバーはセンターコンソールに設けられるものが多かった。近年では、車室内の空間利用の観点などからステアリングホイール周辺やインストルメントパネルに操作レバーを設けたシフト装置が登場している。
【0003】
ところで、オートマティックトランスミッションのシフトレンジがレバーストローク上に一列に配置されるレバー式のシフト装置では、一般的にP(パーキング)、R(リバース)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)の順にシフトレンジが配置されている。通常走行用のDレンジよりも加速レスポンスやエンジンブレーキを増大させる目的で、S(スポーツモード)、2(セカンド(2速))、L(ロー(1速))、B(回生制動)レンジなど(以下、これらを変速レンジと称する。)を設定する場合には、これらの変速レンジはDレンジに対してNレンジと相反する側に隣接して配置される。そのため、Pレンジから通常走行に使用されるDレンジに切り換える際に運転者が素早く操作しようとすると、レバーがDレンジを通り過ぎてしまうことがあり、この場合、レバーを戻す操作が必要になる。
【0004】
そこで、従来のシフト装置では、Nレンジから操作する場合には釦を押していないとDレンジを通り過ぎることができないようなストッパ機構を設けており、Dレンジ選択時の操作性改善を図っている。
【0005】
一方、操作部材の操作が電気的なレンジ切換信号に変換され、このレンジ切換信号に基づいてシフトレンジの切換制御を行う、いわゆるシフトバイワイヤ式を採用し、操作部材をダイヤル式にして操作部材の回転操作に応じてシフトレンジを切り換えるようにした発明が特許文献1に提案されている。この発明では、操作部材に設けられたカムの回動を規制するためにC字形のストッパを設け、運転者が所定の回転範囲を超えて操作部材を回転させようとすると、カムがストッパに当接して物理的に回動が規制されるようにしている。そして、ストッパが規制する操作部材の回転範囲を変更できるように、ストッパの外周にリングギヤを形成して電動モータによってストッパを回転駆動できるようにしている。
【0006】
また、操作が運転者の意図しないものとなったときに所望しないシフトレンジ切換を回避するために、同じくシフトバイワイヤ式を採用し、操作後に運転者が操作部材から手を離すと操作部材が自動的に中立位置に復帰する、いわゆるモーメンタリ式のシフト制御装置において、選択中のシフトレンジが走行レンジである第1レンジであり、これと逆方向への走行レンジである第2レンジへ切り換える操作が行われたある場合、シフトレンジの切換を認識するのに要する認識時間を、第1レンジ以外のレンジが選択されている場合に比べて長く設定した発明なども提案されている(特許文献2参照)。この発明によれば、Dレンジにあるときに、実際にはDレンジを選択してSレンジなどに切り換えるつもりが、誤ってRレンジを経由して中立位置にシフト操作されたとしても、Rレンジへの切換が認識されずにDレンジを保持させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−511063号公報
【特許文献2】特開2010−90925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の発明では、操作部材の回動操作を規制するために電動モータやリングギヤ付きストッパといった部品が必要となり、部品点数が多くなるとともにシステムが大型化してしまう。また、操作部材をダイヤル式としたシフト装置においては、特許文献1の発明と異なる構成を採ったとしても、シフトレンジの配置はレバー式と同一であるため、Dレンジの選択性を向上させるためには従来のレバー式と同様に、釦操作によるストッパ機構を設ける必要があり、コストが増大する。しかも、Pレンジから操作する場合には、Pレンジ解除のためにこの釦を押して操作する必要があるため、釦を押したまま操作し続けると、Dレンジで操作部材の回動が止まらず、Dレンジ選択時の操作性に更なる改善の余地があった。
【0009】
一方、特許文献2の発明は、モーメンタリ式のシフト装置であり、単純にダイヤル式のシフト装置に適用した場合、PレンジからDレンジを選択しようと操作部材を回転操作すると、操作部材を回し過ぎてLレンジを選択してしまうといったダイヤルシフト特有の課題を解決することができない。
【0010】
本発明は、このような従来技術に含まれる課題を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、操作部材がダイヤル式のシフト装置において、装置を大型化することなく、操作が運転者の意図しないものとなったときに所望しないシフトレンジの切換を回避し得るようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するために、本発明の一側面によれば、ダイヤル式の操作部材(14)と、当該操作部材の回動角度(θs)を検出する角度検出手段(15)と、当該角度検出手段により検出された1回の操作における前記操作部材の回動角度および回動方向に応じて、直列配置された複数段のシフトレンジ(P、R、N、D、L)の中から選択するシフトレンジを切り換える制御手段(11)とを有する車両(1)のシフト装置(10)であって、1回の操作においてシフトレンジを複数段切り換える角度に相当する前記操作部材の回動が前記角度検出手段により検出された場合(ST6,17,28,67,77,89:No、ST86,99,100,111,112:Yes)、前記制御手段は、前記操作部材の回動方向および前記車両の状態に応じて(ST79,92、ST90,91,103,104,115,116:No)シフトレンジの切換段数を制限する(ST11,22,33,71,83,96、ST94,95,106,107,118,119)ことを特徴とする。ここで、1回の操作とは、1つの回動位置で所定時間停止することなく操作部材が回動されている間の操作を意味する。車両の状態としては、選択されているシフトレンジや車両の走行・停止状態などが挙げられる。
【0012】
このシフト装置によれば、運転者が操作部材を意図に反して回し過ぎたとしても、車両の状態に適さないシフトレンジが選択されることを抑制でき、シフト操作性を向上させることができる。また、制御手段の制御によって所望のレンジでシフトレンジの切換を規制することができるため、操作部材の回動を物理的に規制する部材を設けなくて済み、コストを削減することができる。
【0013】
また、本発明の一側面によれば、前記複数段のシフトレンジは、前記車両を前進走行させるDレンジ、および所定の変速モードまたは所定の変速比にて若しくは回生制動を用いて前記車両を前進走行させる変速レンジ(L)を含み、現在選択されているレンジが前記Dレンジ以外および前記変速レンジ以外のレンジであるときに(ST1,12または23:Yes、ST61,72または84:Yes)、1回の操作において前記Dレンジを越えて前記変速レンジに達する角度に相当する前記操作部材の回動が前記角度検出手段により検出された場合(ST6,17,28,67,77,89:No)、前記制御手段はシフトレンジの切換を前記Dレンジにて規制する(ST11,22,33,71,83,96)ことを特徴とする。
【0014】
通常、Dレンジおよび変速レンジ以外のレンジが選択された状態から変速レンジを直接選択する状況あるいは要求は少ない。そこで、このような構成とすることにより、例えばPレンジ、NレンジあるいはRレンジからDレンジを通り過ぎて変速レンジが選択されることを防止でき、運転者が操作部材を意図に反して回し過ぎたとしてもDレンジを選択させることができる。また、運転者が操作部材を回し過ぎたとしても、操作部材を戻す操作の必要がなくなるため、シフト選択の操作性が向上する。
【0015】
また、本発明の一側面によれば、前記制御手段によってシフトレンジの切換が規制されたことにより(ST11,22,33,71,83,96)、現在選択されているレンジが前記Dレンジであるとき(ST34,97:Yes)に、さらに前記変速レンジ側へ切り換える前記操作部材の回動が前記角度検出手段により検出された場合(ST35,98:Yes、ST39,102:No)、前記制御手段は前記変速レンジ側へのシフトレンジを切り換える(ST44,109)ことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、運転者に変速レンジを選択する意思がある場合には、運転者が1回の操作でDレンジへ切換を行った後、再度操作部材をLレンジ側へ操作することで、容易に変速レンジを選択可能とすることができ、シフト操作性の悪化を防止できる。
【0017】
また、本発明の一側面によれば、前記複数段のシフトレンジは、駆動力の伝達を遮断するNレンジと、該Nレンジの隣に配列され、前記車両を前進走行させるDレンジと、前記Nレンジの前記Dレンジと相反する側の隣に配列され、前記車両を後退走行させるRレンジとを少なくとも含み、車速(V)を検出する車速検出手段(16)を更に有し、現在選択されているレンジが前記Dレンジまたは前記変速レンジであるときに(ST84:No)、1回の操作において前記Nレンジを越えて前記RレンジまたはPレンジに達する角度に相当する前記操作部材の回動が前記角度検出手段により検出された場合(ST99,100,111,112:Yes)、前記車速が所定の閾値以下でない限り(ST103,104,115,116:No)、前記制御手段は前記RレンジまたはPレンジへのシフトレンジの切換を規制する(ST107,119)ことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、前進走行状態で運転者がDレンジや変速レンジからNレンジを選択しようとして操作部材を回し過ぎたとしても、車両が所定の閾値よりも早く走行中である場合にはRレンジまたはPレンジが選択されることを防止することができ、適切なシフト切換を行うことができる。また、操作部材が一度にどれだけ回動されても、切換がNレンジで規制されるため、運転者が細かい回動量を気にする必要がなくなり、シフト操作性が向上する。
【発明の効果】
【0019】
このように、本発明によれば、装置を大型化することなく、運転者による操作が意図しない操作となったときに所望しないシフトレンジの切換が行われることを回避し得る車両のシフト装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る自動車の駆動系の要部系統図
【図2】図1に示す自動車の運転席周辺の概略斜視図
【図3】図1に示すシフト装置の概略構成図
【図4】図1に示す制御ユニットの機能ブロック図
【図5】図4に示すレンジ選択部による第1実施例に係るレンジ選択のフロー図
【図6】図4に示すレンジ選択部による第1実施例に係るレンジ選択のフロー図
【図7】図4に示すレンジ選択部による第1実施例に係るレンジ選択のフロー図
【図8】図4に示すレンジ選択部による第1実施例に係るレンジ選択のフロー図
【図9】図4に示すレンジ選択部による第1実施例に係るレンジ選択のフロー図
【図10】図4に示すレンジ選択部による第2実施例に係るレンジ選択のフロー図
【図11】図4に示すレンジ選択部による第2実施例に係るレンジ選択のフロー図
【図12】図4に示すレンジ選択部による第2実施例に係るレンジ選択のフロー図
【図13】図4に示すレンジ選択部による第2実施例に係るレンジ選択のフロー図
【図14】図4に示すレンジ選択部による第2実施例に係るレンジ選択のフロー図
【図15】第1および第2実施例のシフトレンジ選択フローによる作用説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明を一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
先ず、図1を参照して、実施形態に係る自動車1の概略構成について説明する。自動車1は、駆動源としてエンジン2を搭載しており、エンジン2の出力をオートマティックトランスミッション(以下、単にトランスミッション4と記す。)および前輪車軸5介して駆動輪に伝達する。なお、図示例では、自動車1は前輪6fを駆動輪とする前輪駆動車であるが、後輪6rを駆動輪とする後輪駆動車または前後両車輪6を駆動輪とする四輪駆動車とすることもできる。以下、トランスミッション4については、前進4段、後退1段の多段変速式として説明するが、連続可変トランスミッション(CVT)を用いることもできる。
【0023】
なお、自動車1は、駆動源としてエンジン2の代わりに、またはエンジン2とともに、想像線で示すモータ・ジェネレータ3を搭載する電気自動車またはハイブリッド車であってもよい。この場合、モータ・ジェネレータ3は、車両走行用の電動機と回生用の発電機とを兼ねたものであり、二次電池であるバッテリ7からの電力供給とバッテリ7に対する電力供給(充電)とをインバータ8によって制御され、減速時に減速エネルギを電力に変換回生して回生制動を発生する回生制動手段として機能する。
【0024】
自動車1には、マイクロコンピュータやROM、RAM、周辺回路、入出力インタフェース、各種ドライバ等から構成された制御ユニット11と、トランスミッション4のシフトレンジの変更操作に供されるシフト操作部材14と、シフト操作部材14の操作量(回動角度θs)を検出するロータリエンコーダ15と、車速Vを検出する車速センサ16と、アクセルペダル17の踏込量θaを検出するアクセルペダルセンサ18とが設けられている。これら制御ユニット11、シフト操作部材14、ロータリエンコーダ15、車速センサ16などにより、本発明のシフト装置10が構成される。
【0025】
制御ユニット11は、エンジン2の駆動制御の他、シフト操作部材14の操作に応じてトランスミッション4のシフトレンジを選択するとともに、選択したシフトレンジに従ってトランスミッション4のギヤ段を変更するシフト制御を行う。なお、ギヤ段の変更は、トランスミッション4に接続する油圧回路に設けられた図示しないシフトソレノイドバルブを開閉駆動することによって行われる。また、自動車1が電気自動車またはハイブリッド車である場合、制御ユニット11はモータ・ジェネレータ3の駆動/回生も制御する。
【0026】
図2および図3に示すように、シフト操作部材14は、ダイヤル式の円柱状のつまみであり、自動車1のインストルメントパネル19におけるステアリングホイール20の左側下方に設けられている。インストルメントパネル19のシフト操作部材14が設けられた部位は、運転者がシフト操作部材14を操作しやすいように他の部位に比べて突出形成されている。一方、シフト操作部材14を設けるためにセンターコンソールが必要とならないため、車室空間の有効利用が可能となっている。なお、シフト操作部材は、上記配置に限られることはなく、例えばセンターコンソールなど、他の位置に設けることもできる。
【0027】
シフト操作部材14は、回動方向に関わらず無限に回転可能であり、かつ一定角度(ここでは、30度)ごとに節度感(クリック感)が得られるようになっている。そのため、シフト操作部材14が所定角度(30°)回動したことを運転者が触覚で認識することができ、高いシフト操作性が実現している。なお、節度感を生じさせる機構は、例えば特許文献1に開示されるディテント機構など、公知の機構であってよく、ここでは詳細な説明は省略する。
【0028】
図3に示すように、シフト操作部材14の側方には、トランスミッション4のシフトレンジであるP、R、N、D、Lの表示がこの順に左回り(半時計回り)に配置された表示パネル21が設けられている。表示パネル21は、バックライトなどによって選択中のシフトレンジを表示する。なお、シフトレンジの配列は上記例に限定されるものではなく、左回りではなく右回りに配置した配列や、DレンジとLレンジとの間あるいはLレンジの代わりにSレンジや2レンジがある配列、Lレンジの代わりにBレンジがある配列などとすることもできる。
【0029】
ロータリエンコーダ15は、シフト操作部材14の回動角度θsを検出する角度検出手段であり、インストルメントパネル19の背面側に設けられている。ロータリエンコーダ15による回動角度θsの検出信号は制御ユニット11に入力し、トランスミッション4のシフト制御に利用される。
【0030】
図4に示すように、制御ユニット11は、レンジ選択部12とギヤ段選択部13とを有している。レンジ選択部12は、1回の操作によって回動したシフト操作部材14の回動角度θsおよび回動方向に応じて、選択するシフトレンジを現在のシフトレンジから切り換える。つまり、制御ユニット11は、シフト操作部材14が所定角度(ここでは、30度)回動される毎に、原則としてシフトレンジを1段切り換える。例えば、現在のシフトレンジがPレンジであるときに、1回の操作でシフト操作部材14を左回りに90度回動した場合、制御ユニット11は現在のシフトレンジから3段切り換え、Dレンジを選択することになる。なお、1回の操作における回動角度θsが90度よりも大きく、120度よりも小さい場合、シフトレンジの切換段数は、90度回動した場合と同じ3段となる。
【0031】
ここで、1回の操作とは、1つの回動位置で所定時間(ここでは、0.2s)停止することなくシフト操作部材14が回動されている間の操作を意味する。つまり、停止しているシフト操作部材14を回動させ始めてから、シフト操作部材14を停止して0.2sが経過するまでの一連の操作である。例えば、シフト操作部材14を節度感を得られる角度である30度左回りに回し、停止させてから0.2sが経過する前に更に左回りまたは右回り(時計回り)に30度回した場合、最初の左回り30度の操作と、その後の左回りまたは右回り30度の操作とを併せて1回の操作となる。なお、最初の左回り30度の操作後、0.2sが経過する前に左回りに30度回した場合の1回の操作における回動角度θsは60度となり、0.2sが経過する前に右回りに30度回した場合の1回の操作における回動角度θsは0度となる。
【0032】
なお、レンジ選択部12は、ロータリエンコーダ15の検出信号に基づいてシフト操作部材14が変速位置を通過する度にカウンタでカウントし、カウンタ値Cによって1回の操作でシフト操作部材14がどれだけ回動されたかを検知する。なお、レンジ選択部12はシフト操作部材14が止まったときもカウントする。具体的には、現在選択されているシフトレンジをカウンタ値C=0とし(カウント「0」から始め)、1回の操作でシフト操作部材14が左回りに30度回動されると、「+1」がカウントされてカウンタ値C=+1となり、例えば、1回の操作でシフト操作部材14が左回りに90度回動されると、「+3」がカウントされてカウンタ値C=+3となる。また、1回の操作でシフト操作部材14が右回りに30度回動されると、「−1」がカウントされてカウンタ値C=−1となる。
【0033】
シフト操作部材14が回動操作されると、レンジ選択部12は、このようにカウントしたカウンタ値Cに応じて選択するシフトレンジを現在のシフトレンジから切り換える。例えば、現在選択されているシフトレンジがPレンジであるときに、1回の操作でシフト操作部材14が左回りに30度回動されてカウンタ値C=+1が確定すると、レンジ選択部12はRレンジを選択し、Pレンジの状態から1回の操作で左回りに90度回動されてカウンタ値C=+3が確定すると、レンジ選択部12はDレンジを選択する。なお、エンジン始動時には、レンジ選択部12は必ずPレンジを選択するように設定されている。図示していないが、ブレーキペダルの踏込信号がレンジ選択部12に入力するようにし、PレンジからRレンジまたはDレンジへ切り換える際にブレーキペダルが踏み込まれていることを条件としてもよい。
【0034】
ギヤ段選択部13は、レンジ選択部12によって選択されたシフトレンジに従ってトランスミッション4のギヤ段を選択するとともに、シフトソレノイドバルブを駆動してトランスミッション4を選択したギヤ段に制御する。具体的には、ギヤ段選択部13は、PレンジおよびNレンジが選択されると、駆動力の伝達を遮断するようにトランスミッション4を制御し、Rレンジが選択されると、自動車1を後退走行させるようにトランスミッション4を制御し、Dレンジが選択されると、アクセルペダルセンサ18の踏込量θaや車速Vなどに基づいて所定のマップを参照して1速〜4速のギヤ段を選択しながら自動車1を前進走行させるようにトランスミッション4を制御し、Lレンジが選択されると、所定の法則に従って1速または2速などで自動車1を前進走行させるようにトランスミッション4を制御する。
【0035】
<第1実施例>
次に、図5〜図9を参照して、レンジ選択部12によるシフトレンジ選択手順の第1実施例について説明する。上記したように、レンジ選択部12はエンジン始動時にPレンジを選択した後、以下のシフトレンジ選択処理を行う。まず図5に示すように、レンジ選択部12は、現在選択されているシフトレンジがPレンジであるか否かを判定する(ステップST1)。エンジン始動直後は必ずPレンジが選択されており、ステップST1の判定がYesとなるため、次にレンジ選択部12は、ロータリエンコーダ15の検出値に基づいて、シフト操作がなされて1回の操作が完了し、カウンタ値Cが確定したか否かを判定し(ステップST2)、判定結果がNoの場合はステップST2の処理を繰り返す。
【0036】
一方、ステップST2で1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定すると(Yes)、レンジ選択部12は、カウンタ値Cが0以下であるか否か(ステップST3)、1であるか否か(ステップST4)、2であるか否か(ステップST5)、3であるか否か(ステップST6)を順に判定する。カウンタ値Cが0以下でステップST3の判定がYesの場合、レンジ選択部12はPレンジを選択し(選択するシフトレンジをPレンジに保持し)(ステップST7)、カウンタ値Cが1でステップST4の判定がYesの場合、レンジ選択部12はRレンジを選択し(選択するシフトレンジをRレンジに切り換え)(ステップST8)、カウンタ値Cが2でステップST5の判定がYesの場合、レンジ選択部12はNレンジを選択し(選択するシフトレンジをNレンジに切り換え)(ステップST9)、カウンタ値Cが3でステップST6の判定がYesの場合、レンジ選択部12はDレンジを選択し(選択するシフトレンジをDレンジに切り換え)(ステップST10)、カウンタ値Cが4以上でステップST6の判定がNoの場合、レンジ選択部12はDレンジを選択し(選択するシフトレンジをLレンジではなくDレンジに切り換え)(ステップST11)、ステップST1以降の手順を繰り返す。
【0037】
ステップST1で現在選択されているシフトレンジがPレンジ以外のレンジである場合(No)、図6に示すように、レンジ選択部12は、現在選択されているシフトレンジがRレンジであるか否かを判定する(ステップST12)。この判定がYesの場合、ステップST2と同様に1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定したか否かを判定し(ステップST13)、判定結果がNoの場合はステップST13の処理を繰り返す。
【0038】
一方、ステップST13で1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定すると(Yes)、レンジ選択部12は、カウンタ値Cが−1以下であるか否か(ステップST14)、0であるか否か(ステップST15)、1であるか否か(ステップST16)、2であるか否か(ステップST17)を順に判定する。カウンタ値Cが−1以下でステップST14の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをPレンジに切り換え(ステップST18)、カウンタ値Cが0でステップST15の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをRレンジに保持し(ステップST19)、カウンタ値Cが1でステップST16の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをNレンジに切り換え(ステップST20)、カウンタ値Cが2でステップST17の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをDレンジに切り換え(ステップST21)、カウンタ値Cが3以上でステップST17の判定がNoの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをLレンジではなくDレンジに切り換え(ステップST22)、ステップST1以降の手順を繰り返す。
【0039】
ステップST12で現在選択されているシフトレンジがPおよびRレンジ以外のレンジである場合(No)、図7に示すように、レンジ選択部12は、現在選択されているシフトレンジがNレンジであるか否かを判定する(ステップST23)。この判定がYesの場合、ステップST2と同様に1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定したか否かを判定し(ステップST24)、判定結果がNoの場合はステップST24の処理を繰り返す。
【0040】
一方、ステップST24で1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定すると(Yes)、レンジ選択部12は、カウンタ値Cが−2以下であるか否か(ステップST25)、−1であるか否か(ステップST26)、0であるか否か(ステップST27)、1であるか否か(ステップST28)を順に判定する。カウンタ値Cが−2以下でステップST25の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをPレンジに切り換え(ステップST29)、カウンタ値Cが−1でステップST26の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをRレンジに切り換え(ステップST30)、カウンタ値Cが0でステップST27の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをNレンジに保持し(ステップST31)、カウンタ値Cが1でステップST28の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをDレンジに切り換え(ステップST32)、カウンタ値Cが2以上でステップST28の判定がNoの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをLレンジではなくDレンジに切り換え(ステップST33)、ステップST1以降の手順を繰り返す。
【0041】
ステップST23で現在選択されているシフトレンジがP、RおよびNレンジ以外のレンジである場合(No)、図8に示すように、レンジ選択部12は、現在選択されているシフトレンジがDレンジであるか否かを判定する(ステップST34)。この判定がYesの場合、ステップST2と同様に1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定したか否かを判定し(ステップST35)、判定結果がNoの場合はステップST35の処理を繰り返す。
【0042】
一方、ステップST35で1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定すると(Yes)、レンジ選択部12は、カウンタ値Cが−3以下であるか否か(ステップST36)、−2であるか否か(ステップST37)、−1であるか否か(ステップST38)、0であるか否か(ステップST39)を順に判定する。カウンタ値Cが−3以下でステップST36の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをPレンジに切り換え(ステップST40)、カウンタ値Cが−2でステップST37の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをRレンジに切り換え(ステップST41)、カウンタ値Cが−1でステップST38の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをNレンジに切り換え(ステップST42)、カウンタ値Cが0でステップST39の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをDレンジに保持し(ステップST43)、カウンタ値Cが1以上でステップST39の判定がNoの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをLレンジに切り換え(ステップST44)、ステップST1以降の手順を繰り返す。
【0043】
ステップST34で現在選択されているシフトレンジがP、R、NおよびDレンジ以外のレンジ、すなわちLレンジである場合(No)、図9に示すように、レンジ選択部12は、ステップST2と同様に1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定したか否かを判定し(ステップST45)、判定結果がNoの場合はステップST45の処理を繰り返す。
【0044】
一方、ステップST45で1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定すると(Yes)、レンジ選択部12は、カウンタ値Cが−4以下であるか否か(ステップST46)、−3であるか否か(ステップST47)、−2であるか否か(ステップST48)、−1であるか否か(ステップST49)を順に判定する。カウンタ値Cが−4以下でステップST46の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをPレンジに切り換え(ステップST50)、カウンタ値Cが−3でステップST47の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをRレンジに切り換え(ステップST51)、カウンタ値Cが−2でステップST48の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをNレンジに切り換え(ステップST52)、カウンタ値Cが−1でステップST49の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをDレンジに切り換え(ステップST53)、カウンタ値Cが0以上でステップST49の判定がNoの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをLレンジに保持し(ステップST54)、ステップST1以降の手順を繰り返す。
【0045】
<第2実施例>
次に、図10〜図14を参照して、レンジ選択部12によるシフトレンジ選択手順の第2実施例について説明する。上記したように、レンジ選択部12はエンジン始動時にPレンジを選択した後、以下のシフトレンジ選択処理を行う。まず図5に示すように、レンジ選択部12は、現在選択されているシフトレンジがPレンジであるか否かを判定する(ステップST61)。エンジン始動直後は必ずPレンジが選択されており、ステップST1の判定がYesとなるため、次にレンジ選択部12は、Pレンジ解除条件、具体的にはブレーキペダルが踏み込まれているか否か、アクセルペダル17が踏み込まれていない状態であるか否かの各条件が満たされているか否かを判定する(ステップST62)。ステップST62でPレンジ解除条件が満たされていない場合(No)、レンジ選択部12はステップST62の処理を繰り返す。一方、ステップST62でPレンジ解除条件が満たされている場合(Yes)、レンジ選択部12は、ロータリエンコーダ15の検出値に基づいて、シフト操作がなされて1回の操作が完了し、カウンタ値Cが確定したか否かを判定し(ステップST63)、判定結果がNoの場合はステップST62以降の処理を繰り返す。
【0046】
一方、ステップST63で1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定すると(Yes)、レンジ選択部12は、カウンタ値Cが0以下であるか否か(ステップST64)、1であるか否か(ステップST65)、2であるか否か(ステップST66)、3であるか否か(ステップST67)を順に判定する。カウンタ値Cが0以下でステップST64の判定がYesの場合、レンジ選択部12はPレンジを選択し(選択するシフトレンジをPレンジに保持し)(ステップST68)、カウンタ値Cが1でステップST65の判定がYesの場合、レンジ選択部12はRレンジを選択し(選択するシフトレンジをRレンジに切り換え)(ステップST69)、カウンタ値Cが2でステップST66の判定がYesの場合、レンジ選択部12はNレンジを選択し(選択するシフトレンジをNレンジに切り換え)(ステップST70)、カウンタ値Cが3でステップST67の判定がYesの場合、およびカウンタ値Cが4以上でステップST67の判定がNoの場合、レンジ選択部12はDレンジを選択し(選択するシフトレンジをDレンジに切り換え)(ステップST71)、ステップST61以降の手順を繰り返す。
【0047】
ステップST61で現在選択されているシフトレンジがPレンジ以外のレンジである場合(No)、図11に示すように、レンジ選択部12は、現在選択されているシフトレンジがRレンジであるか否かを判定する(ステップST72)。この判定がYesの場合、ステップST63と同様に1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定したか否かを判定し(ステップST73)、判定結果がNoの場合はステップST73の処理を繰り返す。
【0048】
一方、ステップST73で1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定すると(Yes)、レンジ選択部12は、カウンタ値Cが−1以下であるか否か(ステップST74)、0であるか否か(ステップST75)、1であるか否か(ステップST76)、2であるか否か(ステップST77)を順に判定する。カウンタ値Cが−1以下でステップST74の判定がYesの場合、レンジ選択部12は、車速Vの絶対値が所定の第1閾値Vth1(例えば、5km/h)以下であるか否かを判定する(ステップST78)。ここで、Vth1並びに後述するVth2およびVth3は、正の値のときに自動車1の前進方向の速度を表し、負の値のときに自動車1の後進方向の速度を表すこととする。ステップST78の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをPレンジに切り換える(ステップST80)。一方、ステップST78の判定がNoの場合、およびカウンタ値Cが0でステップST75の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをRレンジに保持し(ステップST81)、カウンタ値Cが1でステップST76の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをNレンジに切り換える(ステップST82)。カウンタ値Cが2でステップST77の判定がYesの場合、およびカウンタ値Cが3以上でステップST77の判定がNoの場合はともに、レンジ選択部12は、車速Vが所定の第3閾値Vth3(例えば、−10km/h)以上であるか否かを判定し(ステップST79)、この判定がYesの場合には、選択するシフトレンジをDレンジに切り換える(ステップST83)一方、この判定がNoの場合には、選択するシフトレンジをNレンジに切り換え(ステップST82)、ステップST61以降の手順を繰り返す。
【0049】
ステップST72で現在選択されているシフトレンジがPおよびRレンジ以外のレンジである場合(No)、図12に示すように、レンジ選択部12は、現在選択されているシフトレンジがNレンジであるか否かを判定する(ステップST84)。この判定がYesの場合、ステップST63と同様に1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定したか否かを判定し(ステップST85)、判定結果がNoの場合はステップST85の処理を繰り返す。
【0050】
一方、ステップST85で1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定すると(Yes)、レンジ選択部12は、カウンタ値Cが−2以下であるか否か(ステップST86)、−1であるか否か(ステップST87)、0であるか否か(ステップST88)、1であるか否か(ステップST89)を順に判定する。カウンタ値Cが−2以下でステップST86の判定がYesの場合、レンジ選択部12は、ステップST78と同様に車速Vの絶対値が所定の第1閾値Vth1以下であるか否かを判定し(ステップST90)、この判定がYesの場合、選択するシフトレンジをPレンジに切り換える(ステップST93)。一方、ステップST90の判定がNoの場合、およびカウンタ値Cが−1でステップST87の判定がYesの場合、レンジ選択部12は、車速Vが所定の第2閾値Vth2(例えば、10km/h)以下であるか否かを判定し(ステップST91)、この判定がYesの場合、選択するシフトレンジをRレンジに切り換える(ステップST94)。一方、ステップST91の判定がNoの場合、およびカウンタ値Cが0でステップST88の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをNレンジに保持する(ステップST95)。カウンタ値Cが1でステップST89の判定がYesの場合、およびカウンタ値Cが2以上でステップST89の判定がNoの場合はともに、レンジ選択部12は、ステップST79と同様に車速Vが所定の第3閾値Vth3以上であるか否かを判定し(ステップST92)、この判定がYesの場合には、選択するシフトレンジをDレンジに切り換える(ステップST96)一方、この判定がNoの場合には、選択するシフトレンジをNレンジに保持し(ステップST95)、ステップST61以降の手順を繰り返す。
【0051】
ステップST84で現在選択されているシフトレンジがP、RおよびNレンジ以外のレンジである場合(No)、図13に示すように、レンジ選択部12は、現在選択されているシフトレンジがDレンジであるか否かを判定する(ステップST97)。この判定がYesの場合、ステップST63と同様に1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定したか否かを判定し(ステップST98)、判定結果がNoの場合はステップST98の処理を繰り返す。
【0052】
一方、ステップST98で1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定すると(Yes)、レンジ選択部12は、カウンタ値Cが−3以下であるか否か(ステップST99)、−2であるか否か(ステップST100)、−1であるか否か(ステップST101)、0であるか否か(ステップST102)を順に判定する。カウンタ値Cが−3以下でステップST99の判定がYesの場合、レンジ選択部12は、ステップST78と同様に車速Vの絶対値が所定の第1閾値Vth1以下であるか否かを判定し(ステップST103)、この判定がYesの場合、選択するシフトレンジをPレンジに切り換える(ステップST105)。一方、カウンタ値Cが−2でステップST100の判定がYesの場合、レンジ選択部12は、ステップST91と同様に車速Vが所定の第2閾値Vth2以下であるか否かを判定し(ステップST104)、この判定がYesの場合、選択するシフトレンジをRレンジに切り換える(ステップST106)。他方、ステップST103およびステップST104の判定がNoの場合、並びにカウンタ値Cが−1でステップST101の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをNレンジに切り換える(ステップST107)。カウンタ値Cが0でステップST102の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをDレンジに保持し(ステップST108)、カウンタ値Cが1以上でステップST102の判定がNoの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをLレンジに切り換え(ステップST109)、ステップST61以降の手順を繰り返す。
【0053】
ステップST97で現在選択されているシフトレンジがP、R、NおよびDレンジ以外のレンジ、すなわちLレンジである場合(No)、図14に示すように、レンジ選択部12は、ステップST63と同様に1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定したか否かを判定し(ステップST110)、判定結果がNoの場合はステップST110の処理を繰り返す。
【0054】
一方、ステップST110で1回のシフト操作によるカウンタ値Cが確定すると(Yes)、レンジ選択部12は、カウンタ値Cが−4以下であるか否か(ステップST111)、−3であるか否か(ステップST112)、−2であるか否か(ステップST113)、−1であるか否か(ステップST114)を順に判定する。カウンタ値Cが−4以下でステップST111の判定がYesの場合、レンジ選択部12は、ステップST78と同様に車速Vの絶対値が所定の第1閾値Vth1以下であるか否かを判定し(ステップST115)、この判定がYesの場合、選択するシフトレンジをPレンジに切り換える(ステップST117)。一方、カウンタ値Cが−3でステップST112の判定がYesの場合、レンジ選択部12は、ステップST91と同様に車速Vが所定の第2閾値Vth2以下であるか否かを判定し(ステップST116)、この判定がYesの場合、選択するシフトレンジをRレンジに切り換える(ステップST118)。他方、ステップST115およびステップST116の判定がNoの場合、並びにカウンタ値Cが−2でステップST113の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをNレンジに切り換える(ステップST119)。カウンタ値Cが−1でステップST114の判定がYesの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをDレンジに切り換え(ステップST120)、カウンタ値Cが0以上でステップST114の判定がNoの場合、レンジ選択部12は選択するシフトレンジをLレンジに保持し(ステップST121)、ステップST61以降の手順を繰り返す。ステップST115の判定がNoの場合、および
【0055】
このような第1および第2実施例に係るシフトレンジ選択を行った際の作用について図15を参照して説明すると、(A)に示すように、例えば選択中のシフトレンジがP、RまたはNレンジである状態では、上段に示すようにDレンジまではシフト操作部材14の回動角度θsに応じてシフトレンジが切り換わるが、運転者が1回の操作でシフト操作部材14をDレンジを越える回動角度θsでLレンジ側に回し過ぎたとしても、或いは1回目の操作で運転者がシフト操作部材14を左回りに、あるいはLレンジ側にいくら回し続けたとしても、シフトレンジはLレンジに切り換わることなく、1回目の操作の後にDレンジが選択されることになる。
【0056】
一方、図15(A)の下段に示すように、シフトレンジがDレンジとなった後に、すなわち1回目の操作でシフト操作部材14の回動を停止してから0.2sが経過し、Dレンジが確定した後に、運転者がシフト操作部材14を再度回動させる2回目の操作を行うと、シフトレンジはLレンジに切り換わる。なお、その後は運転者が左回り(PレンジからLレンジの方向)にいくらシフト操作部材14を回し続けても、シフトレンジはLレンジのままである。
【0057】
通常、Dレンジおよび変速レンジ以外のレンジの状態から直接変速レンジを選択する状況あるいは要求は少ないため、このようにシフトレンジが選択されることにより、運転者がシフト操作部材14を意図に反して回し過ぎたとてもDレンジが選択される。つまり、Pレンジ、NレンジあるいはRレンジからDレンジを通り過ぎて変速レンジであるLレンジが選択されることが防止される。また、運転者がシフト操作部材14を回し過ぎたとしても、シフト操作部材14を戻す操作が必要なくなるため、シフト選択の操作性が向上している。
【0058】
また、運転者にLレンジを選択する意思がある場合には、運転者は、Dレンジへ切換操作を行った後、0.2s以上操作を止めた後に再度シフト操作部材14を操作することで、容易にLレンジを選択できるため、シフト操作性が悪化することもない。
【0059】
他方、第2実施例においては、図15(B)の上段に示すように、例えば選択中のシフトレンジがDレンジである状態からNレンジへ切り換えようとしたときに、運転者が1回の操作でシフト操作部材14をNレンジを越える回動角度θsでR・Pレンジ側に回し過ぎたとしても、自動車1が第2閾値Vth2(例えば10km/h)を超える速度で走行中である場合には、上段に示すようにシフトレンジの切換はインヒビット制御によりNレンジで規制される。一方、図15(B)の下段に示すように、自動車1が停車中または第1閾値Vth1(例えば5km/h)以下で走行中である場合には、Dレンジが選択されている状態において運転者が1回の操作でシフト操作部材14を30度以上N・R・Pレンジ側に回動させた場合であっても、回動角度θsに応じてシフトレンジはPレンジまで順に切り換わる。なお、自動車1が5km/hより速く10km/h以下の速度で走行中の場合には、運転者が1回の操作でシフト操作部材14を90度以上N・R・Pレンジ側に回動させた場合であっても、シフトレンジの切換がNレンジで規制される。
【0060】
このように、DレンジやLレンジからNレンジを選択しようとして走行中に運転者がシフト操作部材14を意図に反して回し過ぎたとしても、自動車1の走行状態に適さないシフトレンジが選択されるのが抑制されるため、シフト操作性が向上する。また、シフト操作部材14が一度にどれだけ回動されても、第1閾値Vth1(例えば5km/h)を超える速度で走行中にはNレンジで規制されるため、運転者が細かい回動量を気にする必要がなくなり、シフト操作性が向上する。さらに、制御ユニット11による制御により、シフトレンジの切換を規制することができるため、シフト操作部材14の回動を物理的に規制する部材を設けなくて済み、コストを削減できる。
【0061】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、角度検出手段としてロータリエンコーダ15を用いているが、シフト操作部材14の回動方向と回動角度θsを検出できるのであれば、レゾルバなど他のセンサを用いてもよい。また、上記実施形態では、シフト操作部材14が所定の回動角度θsごとに節度感を生じるようにしているが、ディテント機構を省略して一定のトルクで回動するようにしてよい。このようにすることにより、シフト装置10の構成を簡単にしてコストを削減することができる。この他、各装置や部材の具体的構成や制御手法など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した本発明に係るシフト装置10および自動車1の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 自動車
4 トランスミッション
10 シフト装置
11 制御ユニット
14 シフト操作部材
15 ロータリエンコーダ(角度検出手段)
16 車速センサ
θs 回動角度
V 車速
Vth1 第1閾値(5km/h)
Vth2 第2閾値(10km/h)
Vth3 第1閾値(−10km/h)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤル式の操作部材と、当該操作部材の回動角度を検出する角度検出手段と、当該角度検出手段により検出された1回の操作における前記操作部材の回動角度および回動方向に応じて、直列配置された複数段のシフトレンジの中から選択するシフトレンジを切り換える制御手段とを有する車両のシフト装置であって、
1回の操作においてシフトレンジを複数段切り換える角度に相当する前記操作部材の回動が前記角度検出手段により検出された場合、前記制御手段は、前記操作部材の回動方向および前記車両の状態に応じてシフトレンジの切換段数を制限することを特徴とする車両のシフト装置。
【請求項2】
前記複数段のシフトレンジは、前記車両を前進走行させるDレンジ、および所定の変速モードまたは所定の変速比にて若しくは回生制動を用いて前記車両を前進走行させる変速レンジを含み、
現在選択されているレンジが前記Dレンジ以外および前記変速レンジ以外のレンジであるときに、1回の操作において前記Dレンジを越えて前記変速レンジに達する角度に相当する前記操作部材の回動が前記角度検出手段により検出された場合、前記制御手段はシフトレンジの切換を前記Dレンジにて規制することを特徴とする、請求項1に記載の車両のシフト装置。
【請求項3】
前記制御手段によってシフトレンジの切換が規制されたことにより、現在選択されているレンジが前記Dレンジであるときに、さらに前記変速レンジ側へ切り換える前記操作部材の回動が前記角度検出手段により検出された場合、前記制御手段は前記変速レンジ側へのシフトレンジを切り換えることを特徴とする、請求項2に記載の車両のシフト装置。
【請求項4】
前記複数段のシフトレンジは、駆動力の伝達を遮断するNレンジと、該Nレンジの隣に配列され、前記車両を前進走行させるDレンジと、前記Nレンジの前記Dレンジと相反する側の隣に配列され、前記車両を後退走行させるRレンジとを少なくとも含み、
車速を検出する車速検出手段を更に有し、
現在選択されているレンジが前記Dレンジまたは前記変速レンジであるときに、1回の操作において前記Nレンジを越えて前記RレンジまたはPレンジに達する角度に相当する前記操作部材の回動が前記角度検出手段により検出された場合、前記車速が所定の閾値以下でない限り、前記制御手段は前記RレンジまたはPレンジへのシフトレンジの切換を規制することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両のシフト装置。
【請求項1】
ダイヤル式の操作部材と、当該操作部材の回動角度を検出する角度検出手段と、当該角度検出手段により検出された1回の操作における前記操作部材の回動角度および回動方向に応じて、直列配置された複数段のシフトレンジの中から選択するシフトレンジを切り換える制御手段とを有する車両のシフト装置であって、
1回の操作においてシフトレンジを複数段切り換える角度に相当する前記操作部材の回動が前記角度検出手段により検出された場合、前記制御手段は、前記操作部材の回動方向および前記車両の状態に応じてシフトレンジの切換段数を制限することを特徴とする車両のシフト装置。
【請求項2】
前記複数段のシフトレンジは、前記車両を前進走行させるDレンジ、および所定の変速モードまたは所定の変速比にて若しくは回生制動を用いて前記車両を前進走行させる変速レンジを含み、
現在選択されているレンジが前記Dレンジ以外および前記変速レンジ以外のレンジであるときに、1回の操作において前記Dレンジを越えて前記変速レンジに達する角度に相当する前記操作部材の回動が前記角度検出手段により検出された場合、前記制御手段はシフトレンジの切換を前記Dレンジにて規制することを特徴とする、請求項1に記載の車両のシフト装置。
【請求項3】
前記制御手段によってシフトレンジの切換が規制されたことにより、現在選択されているレンジが前記Dレンジであるときに、さらに前記変速レンジ側へ切り換える前記操作部材の回動が前記角度検出手段により検出された場合、前記制御手段は前記変速レンジ側へのシフトレンジを切り換えることを特徴とする、請求項2に記載の車両のシフト装置。
【請求項4】
前記複数段のシフトレンジは、駆動力の伝達を遮断するNレンジと、該Nレンジの隣に配列され、前記車両を前進走行させるDレンジと、前記Nレンジの前記Dレンジと相反する側の隣に配列され、前記車両を後退走行させるRレンジとを少なくとも含み、
車速を検出する車速検出手段を更に有し、
現在選択されているレンジが前記Dレンジまたは前記変速レンジであるときに、1回の操作において前記Nレンジを越えて前記RレンジまたはPレンジに達する角度に相当する前記操作部材の回動が前記角度検出手段により検出された場合、前記車速が所定の閾値以下でない限り、前記制御手段は前記RレンジまたはPレンジへのシフトレンジの切換を規制することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両のシフト装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−47074(P2013−47074A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186512(P2011−186512)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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