説明

シミュレーション方法及びその装置、プログラム、記憶媒体

【課題】 有機物質を電子デバイスなどに用いる際の電気的特性を予測する。
【解決手段】 材料の分子の電子状態、分子振動の状態、及び電子と分子振動との相互作用を表現するハミルトニアンを構築し(S60)、このハミルトニアンの固有関数がポーラロン型の波動関数と非ポーラロン型の波動関数とを重ね合わせた波動関数となるように構築した固有値方程式を解き(S70)、得られた固有関数を用いて状態間を遷移する確率を求め(S80)、前記材料の移動度などの電気的特性を予測する(S90)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の電気的特性のシミュレーションに関し、特に有機半導体デバイスや有機ELデバイスなどの有機電子素子に用いる材料に好適なシミュレーション方法及びその装置関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機半導体デバイスや有機ELデバイスなどの有機電子素子では、有機材料の、軽く、様々な化学的修飾も可能で、低温プロセスで形成しやすく、低コストで製造でき、フレキシブルデバイスなどに応用できる可能性があるなどの特徴が有効に活用されている。
【0003】
このような有機材料を実際の電子デバイス、光デバイスなどの素子に応用する際には、有機材料がどの程度の速度でキャリアを輸送できるかが重要となる。移動度は、キャリアの輸送特性の1つの指標であり、ある電場を移動した時にキャリアがドリフト移動する際の速度を印加電場で割った値で定義される。一般には、より移動度が高い物質ほど、定電圧下では電流量を大きくでき、定電流下では印加電圧を小さくでき、消費電力を小さくできるというメリットがある。また、積層型のデバイスでは膜厚を厚くできるため、信頼性が高い製造が可能となる。
【0004】
一方、有機EL素子の様に、電子、ホールを輸送し、再結合させる素子では、キャリアのバランスが重要である。片方のキャリアの移動度が高く、別のキャリアの移動度が低い場合に設計が不十分になされた場合、所望の場所で再結合が起こらなくなるなどの問題が生じる場合があり、キャリアのバランスを保つことが重要となる。
【0005】
したがって、有機物質の電気的特性、例えば、移動度を予測する方法があれば、有機物質を実際に製造することなく素子の設計が可能になる。あるいは、素子の試作の回数を減らすことが可能になる。より具体的には、有機物の形態としては、3次元的に配列した分子結晶や、アモルファス材料、分子ワイヤーなどの準1次元的な材料にも適用できる方法が望まれている。更に、実際の素子では、有限バイアスが印加され、有機物中には有限の電場が作用していることを考慮できる方法が望まれている。
【0006】
有機物中のキャリアの移動度を計算した例として、非特許文献1がある。この文献では、キャリアが有機物中を移動する際に、その有機物を構成する(低)分子がもつ双極子モーメントに起因し、その双極子モーメントが様々な方向を持つと仮定することで、各サイトでキャリアが感じるエネルギーがガウス型に従うことを見出している。そのようにして得られたエネルギー場中においてモンテカルロ法を用いてキャリアをホッピングさせることにより、印加電圧に対するドリフト速度を求め、実験的に得られている移動度の電場依存性を再現している。
【0007】
また、非特許文献2では、ナフタレン分子結晶の移動度の理論的計算が行われている。この文献では、電気伝導度の計算に久保公式という手法が用いられている。この久保公式は、線形応答理論と呼ばれる手法であり、無限小の電場が印加された時の電流変化の割合を計算する方法である。
【非特許文献1】“Essential Role of Correlations in Governing Charge Transport in Disordered Organic Materials”Phys. Rev.Lett.,81,p4472(1998).S.V.Novikov,D.H.Dunlap,V.M.Kenkre,P.E.Parris,and A.V.Vannikov
【非特許文献2】“Ab initio theory of charge−carrier conduction in ultrapure organic crystals”Appl.Phys.Lett.85,p.1535−1537(2004).K.Hannewald and P.A.Bobbert
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1では、双極子モーメント以外の有機物の化学的性質は考慮されておらず、ホッピング時間の表式には実験値と合わせこんで決定すべきパラメータが多く用いられている。そのため、材料を変えた場合の化学的性質を考慮した計算は難しかった。
【0009】
また、有機デバイスを実用的に使用する際は、有限の電場が印加されているが、その効果は非特許文献2の手法では正確に取り扱えないという問題があった。さらに、非特許文献2の手法では、分子結晶の様に3次元的に周期境界条件が課された系を対象とする特性の計算は可能であるが、有機EL素子などでよく用いられているアモルファス材料における計算は難しかった。また、電極から有機物へのキャリアの注入過程のシミュレーションや有機物から電極へのキャリアの移動のシミュレーションはできないという問題があった。
【0010】
有機材料を利用し、電子デバイス、光デバイスなどに応用する際には、有機材料の電気的特性、例えば、移動度を予測する方法があれば、試作することなく、あるいは少数回の試作を行うことによりデバイスの構築ができることになる。しかしながら、有機物を構成する分子の特徴、例えば、分子の軌道やエネルギーレベルを考慮し、さらに、有機物の集合体において重要となる、分子と分子間のキャリアのホッピングのしやすさも考慮した手法がなかった。更に、有限バイアス下で、周期性を持つ材料だけではなく、アモルファス材料や分子ワイヤーにも適用できる手法はこれまで提案されておらず、効率的なデバイス開発が行われてこなかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明によれば、シミュレーション方法に、材料の分子の電子状態、分子振動の状態、及び電子と分子振動との相互作用を表現するハミルトニアンを構築するハミルトニアン構築工程と、前記ハミルトニアンの固有関数がポーラロン型の波動関数と非ポーラロン型の波動関数とを重ね合わせた波動関数となるように構築した固有値方程式を解くことにより固有関数を得る固有関数計算工程と、前記固有関数を用いて前記材料の電気的特性を予測する予測工程とを備える。
【0012】
また、本発明の他の態様によれば、シミュレーション装置に、材料の分子の電子状態、分子振動の状態、及び電子と分子振動との相互作用を表現するハミルトニアンを構築するハミルトニアン構築手段と、前記ハミルトニアンの固有関数がポーラロン型の波動関数と非ポーラロン型の波動関数とを重ね合わせた波動関数となるように構築した固有値方程式を解くことにより固有関数を得る固有関数計算手段と、前記固有関数を用いて前記材料の電気的特性を予測する予測手段とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、これまで困難であった有機物質の化学的特徴を考慮した電気的特性をシミュレートすることができ、有機電子デバイスを容易に設計することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
本実施形態では、有機物中のキャリアの状態をより正確に記述できる方法を考案した。具体的には、キャリアがある分子に局在した場合に、局所的なイオン化が起こり、いわゆるポーラロン状態が形成されることが知られている。一方、キャリアが広い領域に広がった場合にはポーラロン状態は形成されず、いわゆる非ポーラロン状態となる。
【0016】
そこで本実施形態では、ポーラロン状態と非ポーラロン状態とを重ね合わせることにより、有機物の電子状態を決定した。その結果、電子的に基底状態だけではなく、励起状態も問題なく決定できることがわかった。その際、有機物中に作用している電場に起因したエネルギーの場所依存性を直接考慮しているため、有限バイアスの計算が可能となった。
【0017】
その次に、上記電子状態間をキャリアが遷移する確率を考慮し、全体的に移動レートを計算するためのレート方程式を解く事により、有機物質の化学的特徴を考慮した移動度の計算が可能になった。
【0018】
図1は、本実施形態における処理手順を示すフローチャートである。
【0019】
この図では、ある分子集合体において、キャリアの移動レートを計算する手法を説明している。まず、ステップS10において孤立分子の構造等の材料情報を入力する。この情報を用いて、ステップS20において分子軌道計算を行い、HOMOレベル、及び、その波動関数やLUMOレベル、及び、その波動関数を計算する。さらに、安定構造における振動モード解析を行う。さらに電子、あるいは、ホールと分子振動との相互作用計算を行う。
【0020】
具体的には、分子から電子を1個抜いたカチオン状態、あるいは、中性分子に1個電子を付け加えたアニオン状態で構造最適化を行う。そして、その構造変化のベクトルと基準振動モードの内積の計算を行うことにより、電子と分子振動の相互作用の計算が可能になる。具体的には、電子と分子振動の相互作用のパラメータは、次式を用いて計算できる。
【0021】
【数1】

【0022】
また、ステップS30において移動レートを計算したい分子集合体の情報を入力する。例えば、分子結晶の様に周期性がある材料においては、文献により知られている構造データを用いても、分析データより求めた構造データを用いてもよい。対象がアモルファス材料の場合には、ステップS10で得た分子をあるユニット内にランダムに配置し、分子力学計算や分子動力学計算を用いて構造最適化することにより、構造データを得ることができる。
【0023】
次にステップS20で得た分子の分子軌道の情報とステップS30で得た分子集合体の情報より得られる隣接した2つの分子における分子軌道間のトランスファー積分を計算する(ステップS40)。このトランスファー積分は分子間のホッピングの大きさを左右する重要なパラメーターである。さらに、ステップS50において印加した電場の情報を入力する。以上より、ステップS60において、系の電子状態、分子振動状態を表現するモデルハミルトニアンを構築する。
【0024】
ハミルトニアンの構築例として、図2に示すような1次元的な分子の鎖があった場合を示す。この場合のハミルトニアンは、次の式の様に書くことができる。
【0025】
【数2】

【0026】
変数や演算子の説明は、以下の通りである。
【0027】
【数3】

【0028】
演算子の物理的意味などは、阿部龍蔵:『統計力学』第2版(東京大学出版会,1992)に詳細に記載されている。
【0029】
【数4】

【0030】
の電子状態を解く際に、2種類の基底関数を考える。
【0031】
【数5】

【0032】
全ハミルトニアンの固有関数を(1)、(2)の重ねあわせで書く(ステップS70)。
【0033】
【数6】

【0034】
上述の系の波動関数を求める際にポーラロン型、及び、非ポーラロン型の波動関数を重ね合わせて記述することが本実施形態の最大のポイントとなる。このように波動関数を与え、固有値方程式を導出し、対角化を行うことにより、電子状態の決定が可能となる。この手法では、電子状態に関し、基底状態だけではなく、励起状態も計算ができるという特徴を持っている。
【0035】
上で述べた、重ね合わせにより記述した波動関数において分子振動(フォノン)部分は、基底状態としていた。
【0036】
【数7】

【0037】
この状態からフォノンが励起した状態も簡単に記述できる。
【0038】
【数8】

【0039】
このように状態を決めることができるので、ハミルトニアンを2つの状態(例えば状態a,状態bとする)で挟んだ場合の行列要素、及び、それを利用した状態間の遷移確率Wabの計算が可能となる(ステップS80)。
【0040】
【数9】

【0041】
このようにして得られた遷移確率を用いてMaster方程式を解く(ステップS90)。
【0042】
【数10】

【0043】
ここで、Pは状態kの占有率を表している。
【0044】
この手法を用いることにより、電場を印加した系でキャリアが、エネルギーが高い上流側からエネルギーが低い下流側へ状態間を遷移する現象をシミュレートすることができる。
【0045】
図3は、タイムオブフライト(TOF)の実験と比較するために、本実施形態を使って移動度を計算した場合の結果を示す。まず、N個のサイトを考え、時刻t=0でキャリアは左端:k=1にあるとする。キャリアにとって、左端のサイト1のエネルギーは最も高く、右側に行くほど、エネルギーが下がり、サイトNで最もエネルギーが低くなるように電場がかかっているとする。キャリアの移動を考える際には、左端の電極にある電子の状態、左端の電極にある電子の状態も含めて考えると便利である。それぞれ、サイト1,サイトNと表記する。状態数が計M個(それぞれ電極に1個ずつ、中央領域にM−2個)あるとする。
【0046】
上述のマスター方程式を解くことにより、各時刻における各サイトの占有率:P(n)(t)を図3(a)のように求めることができる。
【0047】
サイトnのX座標をXn=X0*nとし、キャリアの速度を
【0048】
【数11】

により計算すると、このキャリアの移動に起因した電流は、
I(t)=ev(t)
と書ける。キャリアの対向電極への到達時間Tを図3(b)のように求めると、キャリアのドリフト速度はvD=L/Tとなる。ただし、系のサイズをLとした。印加電圧をVとすると電場はE=V/Lで与えられ、移動度μは、vD=μEで計算されるので、結局μ=L/VTにより移動度を求めることができる。
【0049】
図7は、本実施形態に係るシミュレーション装置のハードウェア構成を示すブロック図である。なお、後述する第2の実施形態も同様の構成により実現される。
【0050】
同図において、CPU102は、フローチャートにつき説明した処理手順を含む各種プログラムを実行し、システムバス108により接続された装置各部を制御する。RAM102は、データやプログラムを一時記憶する。ROM103は、固定的なデータやプログラムを記憶する。キーボード104は、文字を入力したり、機能を選択するためのキーを備えている。更に画面上の位置を指示するためのポインティングデバイスとしてマウスが備えられている。
【0051】
ディスプレイ105は、計算結果の数値やグラフを表示したり、ユーザインターフェース(UI)を提供する。ハードディスクドライブ(HDD)106は、プログラムやデータを永続的に記憶装置である。更にDVD、CD、FDなどの記憶媒体を用いる記憶装置を設けてもよい。通信I/F107は、LANやインターネットなどを経由して装置外部と通信するためのインタフェースである。システムバス108は、上述した装置各部を接続し、装置間でデータやアドレス、制御信号を送受信する媒体として利用される。
【0052】
フローチャートにつき説明した処理手順を含む各種プログラムは、ROM103に記憶されていてもよいし、HDD106からRAM102へ、処理に先立ってあるいは処理の実行中に必要に応じてロードされるようにしてもよい。
【0053】
また、計算に必要なデータは、キーボード104から入力したり、HDD106などの記憶装置から読み出したり、通信I/F107を介して外部から受信するなどして、得ることができる。
【0054】
この例では、1次元的な分子の鎖の例を示したが、3次元的に配列した分子結晶に適用する場合には、その周期を必要な個数繰り返し並べることにより計算できる。また、アモルファス材料や、多種類の分子から構成される有機材料、高分子材料においても適用できる。
【0055】
図4は、3種類のアモルファス材料A,B,Cにおいて本手法を適用し、ホール移動度の電場依存性を計算した場合の結果を示す。本実施形態により、アモルファス材料に対する移動度の電場依存性の計算が可能になった。また、上述の様に、両端のサイトを電極とみなすことにより、電極からのキャリアの注入、及び、有機材料から電極へのキャリアの移動のシミュレーションも可能になった。
【0056】
ここで、本実施形態において、最も重要なステップS70を使わなかった場合について記す。例えば、本実施形態の検討過程において、
【0057】
【数12】

のように未知パラメータ:{Cn},{uλ}を仮定して波動関数を記述し、変分法により、すなわち、エネルギーの期待値を最小化するようにパラメータを決めることにより、系の状態の計算を行った。その結果、基底状態は、本実施形態の図1に示した方法と同等な結果が得られたものの、励起状態においては、{uλ}がポーラロン状態に対応する1より大きくなり、物理的に理解しにくい結果が得られた。
【0058】
すなわち、上記{Cn},{uλ}を用いた手法を用いても、励起状態は正しく計算できないため、結果として、有機物中をキャリアが移動する過程を正確に計算することができないことがわかった。この問題は、図1のステップS70を用いることにより、回避でき、その結果、有機物中をキャリアが移動する過程を正確に計算することができる。
【0059】
(第2の実施形態)
次に、本実施形態の第2の実施形態を図5のフローチャートを用いて説明する。本実施形態では、デバイス構造を入力として、3端子型のデバイスに対する電流電圧特性の計算に応用した場合のフローを示す。ステップS10−S40は、図1に説明した第1の実施形態と同じである。
【0060】
次に、図1のステップS50で電場の条件を入力した代わりに、図5のステップS51−S53を実行する。まず、デバイス構造、および半導体材料、絶縁体材料、電極材料などの材料の情報を入力し(ステップS51)、また、動作条件(ソース(S)−ドレイン(D)間電圧、ゲート電圧)を入力する(ステップS52)。これに基づき、通常の半導体素子などでのデバイスシミュレーションの手法を用い、半導体中の局所的な電場を求める(ステップS53)。ステップS60では、この電場情報を用いてモデルハミルトニアンを構築する。以降、ステップS70−S90は図1の場合と同じである。
【0061】
ステップS100にて他のデバイス条件で電流計算を再度すべきかを判定し、計算の必要がある場合は条件を変えて計算を行い、更なる計算の必要がなければ、電流の計算を終了する。最終的にS110で示すように、ゲート電圧、S/D間電圧に依存したドレイン電流(IV特性)出力を出力する。
【0062】
図6は、3種類のアモルファス材料A,B,Cにおいて本手法を適用し、ゲート電圧を固定した時の、IV特性を計算した場合の結果を示す。
【0063】
すなわち、本実施形態により、図4に示すような有機物質の電気的特性の結果や、図6のように、デバイスに用いた時のIV特性の結果を、材料の選択やデバイス構造の最適化に応用することができる。
【0064】
なお、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0065】
また、本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体が供給されたシステムあるいは装置のコンピュータが、そのプログラムコードを読み出し実行することでも達成される。
【0066】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。また、コンピュータが読み出したプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステムなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0067】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれる場合がある。そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行うことで前述した実施形態の機能が実現される場合も本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】第1の実施形態において、有機物の電気的特性として移動度を計算する手順を示すフローチャートである。
【図2】第1の実施形態におけるモデルハミルトニアンを詳細に説明する図である。
【図3】第1の実施形態における有機物の移動度をシミュレートする方法を説明した図である。
【図4】第1の実施形態を用いて得られた3種類のアモルファス材料のホール移動度の電場依存性を比較した結果を示す図である。
【図5】第2の実施形態において、有機物を半導体層に用いたトランジスタの電流電圧特性を計算する手順を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施形態で得られた3種類のアモルファス材料を半導体層として用いた有機トランジスタの電流電圧特性を比較した結果を示す図である。
【図7】第1の実施形態におけるシミュレーション装置のハードウェア構成を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の分子の電子状態、分子振動の状態、及び電子と分子振動との相互作用を表現するハミルトニアンを構築するハミルトニアン構築工程と、
前記ハミルトニアンの固有関数がポーラロン型の波動関数と非ポーラロン型の波動関数とを重ね合わせた波動関数となるように構築した固有値方程式を解くことにより固有関数を得る固有関数計算工程と、
前記固有関数を用いて前記材料の電気的特性を予測する予測工程とを有することを特徴とするシミュレーション方法。
【請求項2】
前記ポーラロン型の波動関数として、前記ハミルトニアンから電子の異なるサイト間のホッピングに起因した部分を除いたハミルトニアンに対する固有関数を選ぶことを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション方法。
【請求項3】
前記非ポーラロン型の波動関数として、前記ハミルトニアンから電子と分子振動との相互作用に対応する部分を除いたハミルトニアンに対する固有関数を選ぶことを特徴とする請求項1に記載の有機材料の電気的特性シミュレーション方法。
【請求項4】
前記分子の電子状態、分子振動の状態、及び電子と分子振動との相互作用の情報を含む分子軌道情報を獲得する分子軌道情報獲得工程と、
前記分子の分子軌道間のトランスファー積分を獲得するトランスファー積分獲得工程と、
印加電場の情報を入力する電場情報入力工程とを備え、
前記ハミルトニアン構築工程では、前記分子軌道情報と、前記トランスファー積分と、前記印加電場の情報とに基づいてハミルトニアンを構築することを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション方法。
【請求項5】
前記分子の材料情報を入力する工程を備え、
前記分子軌道情報獲得工程では、前記材料情報に基づいて、前記分子の電子状態、分子振動の状態、及び電子と分子振動との相互作用を計算することを特徴とする請求項4に記載のシミュレーション方法。
【請求項6】
前記分子の集合体の構造情報を獲得する構造情報獲得工程を備え、
前記トランスファー積分獲得工程では、前記分子軌道情報と前記構造情報とに基づいて前記トランスファー積分を計算することを特徴とする請求項4に記載のシミュレーション方法。
【請求項7】
前記分子の材料情報を入力する工程を備え、
前記構造情報獲得工程では、前記材料情報に基づく構造最適化により前記構造情報を獲得することを特徴とする請求項6記載のシミュレーション方法。
【請求項8】
前記予測工程では、前記固有関数を用いて状態間の遷移確率を計算し、該遷移確率に基づいて前記電気的特性として移動度を予測することを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション方法。
【請求項9】
前記分子の電子状態、分子振動の状態、及び電子と分子振動との相互作用の情報を含む分子軌道情報を獲得する分子軌道情報獲得工程と、
前記分子の分子軌道間のトランスファー積分を獲得するトランスファー積分獲得工程と、
半導体中に生じる局所電場を獲得する電場情報獲得工程とを備え、
前記ハミルトニアン構築工程では、前記分子軌道情報と、前記トランスファー積分と、前記局所電場の情報とに基づいてハミルトニアンを構築することを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション方法。
【請求項10】
デバイス構造及び使用する材料を入力する工程と
動作条件を入力する工程とを備え、
前記電場情報獲得工程では、前記デバイス構造及び使用する材料と前記動作条件とに基づいて前記局所電場の情報を計算することを特徴とする請求項9に記載のシミュレーション方法。
【請求項11】
前記動作条件はソース・ドレイン間電圧及びゲート電圧であることを特徴とする請求項10に記載のシミュレーション方法。
【請求項12】
前記デバイスは、有機トランジスタ素子、あるいは3以上の端子を有する電子デバイスまたは光デバイスであることを特徴とする請求項10に記載のシミュレーション方法。
【請求項13】
前記電気的特性は電流電圧特性であることを特徴とする請求項9に記載のシミュレーション方法。
【請求項14】
請求項1に記載のシミュレーション方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【請求項16】
材料の分子の電子状態、分子振動の状態、及び電子と分子振動との相互作用を表現するハミルトニアンを構築するハミルトニアン構築手段と、
前記ハミルトニアンの固有関数がポーラロン型の波動関数と非ポーラロン型の波動関数とを重ね合わせた波動関数となるように構築した固有値方程式を解くことにより固有関数を得る固有関数計算手段と、
前記固有関数を用いて前記材料の電気的特性を予測する予測手段とを有することを特徴とするシミュレーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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