説明

シミュレータで使用される擬似医療器具

シミュレータで使用される擬似器具が、ユーザが操作可能な角度制御部105、挿入管102、及び制御本体から延びるアンビリカル103を有する制御本体101を有している。シミュレートされている器具に対応する実際の器具では、角度制御部が動くことで挿入管の先端部の角度が変化するように、少なくとも1つの角度調節ケーブルが、ユーザが操作可能な角度制御部から挿入管の先端部まで延びる。擬似医療器具では、角度調節ケーブルが、ユーザが操作可能な角度制御部からアンビリカルを通って延びる。このアンビリカルは、主ユニット105に解除可能に取り付けられる。器具内のアンビリカルの遠端部にあるモータ20、21が、ケーブルに可変力を加える。器具内にある位置検出器30、31が、角度制御部の角位置を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレータで使用される擬似医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明を適用可能なシミュレータの1タイプは、英国特許出願公開公報第2252656号に開示のシミュレータである。このシミュレータは、内視鏡プロセスの操作をシミュレートする。擬似内視鏡が、擬似内視鏡の長手方向及び回転方向の動きを感知するセンサ機構を備える取付具内に挿入可能である。この情報は、コンピュータのメモリに記憶された仮想のモデル・データに基づいてフォース・フィードバック情報を生成するコントローラに送られる。この擬似内視鏡に適用されるフォース・フィードバックは、処置の視覚的表現と同期され、それにより、実際的なシミュレーションがもたらされ、内視鏡のユーザに有用な訓練道具を提供する。
【0003】
内視鏡などの器具では、内視鏡の先端部を、内視鏡のハンドルにある1つ以上の制御ノブの形の角度制御部によって操作する。この制御ノブは、内視鏡の挿入管内を延びるケーブルと連結される。制御ノブを回すことにより、ケーブルがそれに対応して動き、したがって先端部が動く。1つの内視鏡が、2つの制御ノブを有することができ、そのうちの1つが先端部の左右の動きを制御し、もう1つが先端部の上下の動きを制御する。
【0004】
フォース・フィードバックを制御本体に送る角度調節ケーブルを使用した擬似医療器具の一例が、我々の先願の国際公開第03/058583号に開示されている。この器具では、角度調節ケーブルは、器具のアンビリカルに沿って主ユニットまで向かい、そこでフォース・フィードバックを提供する可変力を生成するモータに巻き付けられている。
【0005】
結腸鏡検査などの処置では、結腸に沿って内視鏡を操作するために、医療従事者が制御本体を何度もねじることがよくある。これを行うと、アンビリカルがかなりねじられた状態になる可能性がある。ねじれを取り除くために、内視鏡専門医或いは助手が、制御本体を結腸内の適切な安全な場所で逆転させるか、又は、アンビリカルを抜いてそのねじれを解くことができる。この後者の選択肢は、国際公開03/658583号に開示の構成では、アンビリカルから延びる4本のワイヤが、アンビリカルが取り付けられている主ユニット内のフォース・フィードバック・モータの周りに永久的に巻き付けられているので、不可能である。さらに、アンビリカルが主ユニットに永久的に取り付けられているので、アンビリカルの運搬及び保管が困難である。
【0006】
この問題に対処するために、本発明者らは、ユーザによって主ユニットから取り外し可能で可変力をケーブルに加える手段を含むコネクタを有する、擬似医療器具を提案した。これは国際公開第04/015654号で特許請求されている。これにより、操作者は、実際に行われる、アンビリカルを取り外してねじれを解いてからアンビリカルを主ユニットに再び差し込むプロセスをシミュレートすることができる。
【0007】
しかし、アンビリカルがこのように取り外されると、角度制御部の位置を感知することがもはや不可能となる。実際には、内視鏡の操作の継続ではなくアンビリカルのねじれを解くことに操作者の注意が集中されるので、操作者は通常、アンビリカルを取り外すときには角度制御部を動かさないものである。しかし、このときに、角度制御部が操作される可能性があり、それにより位置が失われてしまう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、シミュレータで使用される擬似器具が提供される。この器具は、ユーザが操作可能な角度制御部、挿入管、及び制御本体から延びるアンビリカルを有する制御本体を備え、シミュレートされている器具に対応する実際の器具では、角度制御部が動くことで挿入管の先端部の角度が変化するように、少なくとも1つの角度調節ケーブルが、ユーザが操作可能な角度制御部から挿入管の先端部まで延びるが、擬似医療器具では、角度調節ケーブルが、ユーザが操作可能な角度制御部から、主ユニットに解除可能に取り付けられたアンビリカルを通って延びており、この器具はさらに、器具内のアンビリカルの遠端部にあるケーブルに可変力を加えるためのモータと、器具内にある、角度制御部の角位置を検出するための位置検出器とを有する。
【0009】
したがって、アンビリカルは依然として主ユニットから取り外し可能である。しかし、モータ及び位置検出器が器具内にあるので、アンビリカルを外した場合、アンビリカルを再び連結したときに、シミュレーションで角度制御部の位置が分かる。また、モータ及びセンサに対しては取り外し可能な接続がないため、アンビリカルを再び連結するときに、モータ及び位置検出器に再び係合しなければならないという問題もなく、そのような取り外し可能な接続でのすべりの危険もない。
【0010】
位置検出器は、角度制御部の回転を測定することによって角度制御部の位置を直接検出してもよい。或いは、ケーブルの位置を測定することで間接的にそれを検出してもよい。後者の場合、検出器を、モータと一緒にパッケージすることができるように、アンビリカルの遠端部に配置することができる。
【0011】
擬似器具は、2対の角度調節ケーブルを備え、各対が制御本体の周り、及びアンビリカルの遠端部にあるそれぞれのモータの周りでループを形成することが好ましい。このような構成により、通常の内視鏡で提供される左右及び上下制御がもたらされる。或いは、擬似器具が、角度調節ケーブルを1対しかもたない気管支鏡などの器具であってもよい。
【0012】
器具の使用において、ケーブルのループがゆるむ可能性がある。したがって、ループを再緊張させる手段を設けることが好ましい。
【0013】
1つ以上のモータ及び位置センサを有するアンビリカルの端部は、脱着可能であることが意図されるため、特にモータができるだけ軽くなるように設計すべきである。アンビリカルの取り外された端部が操作するには面倒すぎるとユーザが考える場合、アンビリカルの遠端部にあるコネクタを、前記アンビリカルを前記ベース・ユニットに対して相対的に回転させることができるが、前記アンビリカルの重量が依然として前記ベース・ユニットに支えられる、部分的解除位置への解除、及び、前記アンビリカルを前記ベース・ユニットから完全に解除可能である、第2の完全解除位置への解除が可能な2段階(two−part)の解除をもたらすように構成することができる。したがって、ユーザがアンビリカルのねじれを解くことだけを望む場合、モータの重量を支える必要なしに、コネクタをその部分的解除位置まで動かして、アンビリカルのねじれを解くことができる。器具を別の器具と取り替える場合は、コネクタを完全に解除して、交換用器具を導入することができる。
【0014】
角位置を完全に感知するには、高分解能の絶対位置検出が必要である。しかし、このタスクに適した高分解能絶対位置検出器は、大きな構成部品である。したがって、この角度調節ケーブル又は各角度調節ケーブルの位置を、低分解能の絶対位置検出器と、より高分解能の増分エンコーダの組合せによって感知することが好ましい。このような組合せは、高分解能の絶対位置検出器を1つも必要とせずに、必要な高分解能絶対位置検出を提供する。
【0015】
次に、本発明に従って作成された擬似医療器具の例を、添付の図面を参照して説明する。
【実施例】
【0016】
角度調節フォース・フィードバック・ケーブルを内視鏡の挿入部分から内視鏡のアンビリカルを通って進むように戻すことによって、角度調節フォース・フィードバックを提供することの基本的な詳細は、本発明者らの先願の国際公開第03/058583号及び英国特許第2383890号に詳細に記載されている。
【0017】
本発明を適用することができる基本システムが、図1に概略的に示してある。内視鏡100は、挿入管102及び遠端部にコネクタ104を有するアンビリカル103を備える制御本体101からなる。制御本体101は、1対の同心の角度制御ホイール105を備える。国際公開第03/058583号に開示されているように、角度調節ワイヤのそれぞれのループが、各制御ホイールの周りを延び、その後、制御本体内のプーリ・システムを介して180°向きを変え、アンビリカル103を通って戻る。本発明では、以下でさらに詳しく説明するように、制御ワイヤが、コネクタ104のところで外に出てくる。
【0018】
コネクタ104は、フォース・フィードバック・ユニット105に連結される。挿入管102もフォース・フィードバック・ユニット105の開口に挿入される。ここで、挿入管102は、その直線及び回転位置をモニタするセンサ(図示せず)、並びに、直線及び回転フォース・フィードバックを挿入管に適宜送るためのフォース・フィードバック機構(図示せず)と係合する。適切な感知及びフォース・フィードバック構成が、国際公開第03/050783号に開示されている。
【0019】
このシステムは、フォース・フィードバック・ユニット105とインターフェースするコントローラ106によって制御される。コントローラ106はまた、モニタ107に表示されるグラフィック・シミュレーションを制御し、キーボード108ともインターフェースする。マウスやタッチスクリーンなどその他のユーザ・インターフェースをその代わりに使用できることを理解されたい。
【0020】
4本の角度調節ワイヤが、2つの対、すなわち、内視鏡先端部の上下の動きを制御する対と、内視鏡先端部の左右の動きを制御する対とにグループ分けされる。各対は、制御ノブ105の1つを回転させることによって動かされる。擬似器具では、ケーブルが引き戻されているため、器具の先端部は実際には動かない。しかし、ケーブルの対応する動きは感知され、この情報がコントローラ106に送られる。コントローラ106は、内視鏡先端部の「仮想」位置を検出し、それによって、表示された図及び器具に加えられたフォース・フィードバックを計算する。
【0021】
アンビリカル103の遠端部で、4本のケーブルが出てくるところにあるコネクタ104が、添付の図面に示してある。
【0022】
アンビリカル103の遠端部が図面に示してあり、4本のケーブル1、2、3、4が、アンビリカルの遠端部から出てきて、コネクタ104に入るのが示されている。
【0023】
コネクタ104は、分かりやすいように図面から取り除かれた、円筒状のハウジングを有する。これは、2つの円形のエンド・プレート5、6の間に連結される。エンド・プレート5、6は、1対の支持プレート7、8によってさらに支持されるが、図2及び図3は、コネクタ104の内部機構の詳細が分かりにくくならないように、支持プレート8無しで示してある。
【0024】
図1に最もよく示されているように、複数のスペーサ9がアンビリカル103の端部からエンド・プレート6まで延びている。これらのスペースは、図1には示されていない成形されたカバー10によって覆われている。その目的は、ケーブル1〜4が図3で示される程度まで広がるだけのスペースをとるためである。
【0025】
各ケーブル1〜4は、シース12に取り囲まれた内側ワイヤ11からなる。各シース12は、筐体内のフランジ14中にねじ切りされたボルト13で終端する。このような構成により、シース12の位置をワイヤ11に対して動かすことができ、したがって、ケーブルを緊張させることができる。各ワイヤ11は、図1に最もよく示されているように、プーリ・ブロック16に取り付けられ、各ワイヤの方向を約90°変える小さなプーリ15の周りを延びる。この角度は、ワイヤごとに異なってよい。
【0026】
やはりコネクタ内に、1対のフォース・フィードバック・モータ、すなわち上側フォース・フィードバック・モータ20及び下側フォース・フィードバック・モータ21が取り付けられている。各モータは、1対のプーリ・ホイール23、24がしっかりと取り付けられる出力シャフト22を有する。
【0027】
上側モータ20に関して、プーリ23、24は、小さなプーリ15の周りを通った後の、ケーブル1及び2のそれぞれからのワイヤ11と一直線に並ぶように配置される。具体的には、第1のケーブル1からのワイヤ11がプーリ23の上側の面の溝と一直線に並び、第2のケーブル2からのワイヤ11が第2のプーリ24の下側の面の溝と一直線に並ぶ。2つのワイヤは、2つのプーリに、それぞれのねじクランプによってしっかりと固定される。
【0028】
同様の構成が、下側モータ21、並びに第3及び第4のケーブル3、4に関しても使用される。したがって、内視鏡先端部の上下の動き及び左右の動きのためのフォース・フィードバックをそれぞれ提供するために、2つのモータから出力された力をケーブル1、2、及びケーブル3、4の各対に送ることができる。
【0029】
ケーブル・ワイヤの位置の読取りは、モータごとに増分(相対)位置検出器30と搭載絶対位置検出器31の組合せによって行われる。この接続には、ユニットから切断されているとき動力が供給されないので、絶対位置検出器が必要である。しかし、高分解能絶対位置検出器では、利用可能なスペースに収めるには大きすぎる。絶対位置検出器と高分解能増分エンコーダ30を組み合わせることで、この問題が克服される。
【0030】
コネクタが定位置にあるときにベース・ユニットとインターフェースするために、エンド・プレート5には複数のフィーチャが設けられる。具体的には、コネクタが正しい向きで確実に挿入されるように、整合開口40が、ベース・ユニット上の対応するピンと協働するように配置される。2つの空気ポート41が設けられる。これらは、ベース・ユニットの空気供給源に連結され、管がこれらのポートからコネクタに沿ってアンビリカルを上り内視鏡のハンドルまで走っている。その一方は、ハンドルの通気ボタンに空気を供給し、このボタンに現実的感触を与える。もう一方は、空気式フォース・フィードバック・デバイス用の空気の供給源を提供する。モータ20、21に電力を送るための接続を提供するために電力入力ポート42が配置され、データ・ボード42が、コネクタ104との間でデータのやり取りをするための接続を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】器具及びシミュレーション・システム全体の概略図である。
【図2】コネクタのケーシングが取り外された、アンビリカルの遠端部及びコネクタの平面図である。
【図3】図2の構成を一方の端部から見た斜視図である。
【図4】図2の構成をもう一方の端部から見た斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが操作可能な角度制御部、挿入管、及び制御本体から延びるアンビリカルを有する制御本体を有する、シミュレータで使用される擬似器具であって、シミュレートされている前記器具に対応する実際の器具では、前記角度制御部が動くことで前記挿入管の先端部の角度が変化するように、少なくとも1つの角度調節ケーブルが前記ユーザが操作可能な角度制御部から前記挿入管の先端部まで延びるが、前記擬似医療器具では、前記角度調節ケーブルが前記ユーザが操作可能な角度制御部から主ユニットに解除可能に取り付けられた前記アンビリカルを通って延びており、前記器具がさらに、前記器具内の前記アンビリカルの前記遠端部にある、前記ケーブルに可変力を加えるためのモータと、前記器具内にある、前記角度制御部の角位置を検出するための位置検出器とを有している、擬似器具。
【請求項2】
前記位置検出器が前記制御部の回転を測定する、請求項1に記載の擬似器具。
【請求項3】
前記位置検出器が前記ケーブルの変位を測定する、請求項1に記載の擬似器具。
【請求項4】
前記位置検出器が前記アンビリカルの前記遠端部にある、請求項3に記載の擬似器具。
【請求項5】
2対の角度調節ケーブルを備え、各対が前記制御本体の周り、及び前記アンビリカルの前記遠端部にあるそれぞれのモータの周りでループを形成する、請求項1から4のいずれか一項に記載の擬似器具。
【請求項6】
前記ループを再緊張させる手段が設けられている、請求項5に記載の擬似器具。
【請求項7】
前記アンビリカルの前記遠端部にあるコネクタが、前記アンビリカルを前記ベース・ユニットに対して相対的に回転させることができるが、前記アンビリカルの重量が依然として前記ベース・ユニットに支えられる、部分的解除位置への解除と、前記アンビリカルを前記ベース・ユニットから完全に解除可能である、第2の完全解除位置への解除とが可能な2段階の解除をもたらすように構成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の擬似器具。
【請求項8】
前記角度調節ケーブル又は各角度調節ケーブルの位置を、低分解能の絶対位置検出器と、より高分解能の増分エンコーダとの組合せによって感知する、請求項1から7のいずれか一項に記載の擬似器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−522486(P2007−522486A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544551(P2006−544551)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005310
【国際公開番号】WO2005/059866
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(591179374)キーメッド(メディカル アンド インダストリアル イクイプメント) リミテッド (10)
【Fターム(参考)】