説明

シャッター羽根

【課題】羽根基部と磁石の間に滑りが生じないようにこれらを強固に一体化できるようにしたシャッター羽根を提供する。
【解決手段】支軸に回動自在に被嵌されるカラン2と羽根基部1aと磁石3とが一体化され、磁石3に作用する磁力によって前記支軸のまわりに回動動作するシャッター羽根1Aであって、羽根基部1aには、カラン2を挿通させるための軸孔1bが形成され、かつ、該軸孔1bの近傍位置に、羽根基部1aと磁石3を一体化するための樹脂材rを充填させる切り抜き部1c,1dを形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、携帯電話機やパソコン等に付設されるカメラ等に露出制御用として設けられるシャッター羽根に関する。
【背景技術】
【0002】
露出時間を制御するためのシャッター羽根には高速で正確な動作が要求されるため、その羽根を駆動させる駆動部分が羽根本体と確実に固定されている必要がある。例えば、一体成型により、羽根母材を駆動部分となる鋲部及び鋲突出部に固定するようにした露出制御用羽根(絞り羽根)とその製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この例では、図3に示すように、羽根母材1に鋲部21、鋲突出部22の径よりも小径な孔部11,12を形成し、かつ、それぞれ鋲部21及び鋲突出部22の上半分と下半分に相当するキャビティを有する上金型と下金型の間に羽根母材1を配置して、キャビティに溶融樹脂を射出して、羽根母材1の表裏両面に突出する鋲部21と鋲突出部22を一体的に形成するようにしている。なお、鋲部31、鋲突出部32も同様に形成される。
【特許文献1】特許第2707622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば、図4に示すシャッター羽根のように、羽根本体1の基部1aに形成した軸孔にカラン2を嵌め込むと共にカラン2の軸部に磁石3を嵌め込んで基部1aとカラン2及び磁石3を一体化し、磁石3に磁力を作用させることによって羽根本体1をカラン2に挿通させた支軸(図示省略)のまわりに回動動作させるように構成する場合、羽根本体1の回動動作時には基部1aに大きなモーメントが作用する。
【0005】
従って、特に、羽根本体1の基部1aと磁石3は滑りが生じないように強固に一体化されていなければならない。この点に関し、基部1aとカラン2及び磁石3を接着剤で一体化する場合、対応する平面間に接着剤層を介在させただけでは、モーメントの作用方向に沿う方向に接着面が形成されるため充分な滑り止め効果が得られないことが懸念される。また、カラン2を樹脂材の一体成型によって形成することで羽根本体1の基部1aと磁石3を一体化する場合においても同様である。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされ、羽根基部と磁石の間に滑りが生じないようにこれらを強固に一体化できるようにしたシャッター羽根を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明のシャッター羽根は、支軸に回動自在に被嵌されるカランと羽根基部と磁石とが一体化され、前記磁石に作用する磁力によって前記支軸のまわりに回動動作するシャッター羽根であって、
前記羽根基部には、前記カランを挿通させるための軸孔が形成され、かつ、該軸孔の近傍位置に、前記羽根基部と磁石を一体化するための素材を充填させる切り抜き部が形成されることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、切り抜き部に充填された一体化のための素材が、シャッター羽根の回動動作時に羽根基部に作用するモーメントの作用方向に直交する方向に立ち上がる形となるため、羽根基部と磁石との間の滑りを阻止するための効果的な抵抗要素となり、強固な一体化が可能となる。
(2)前記羽根基部と磁石を一体化するための素材が樹脂材であり、該樹脂材の一体成型によって前記カランが形成され、前記カランは、前記羽根基部の軸孔に挿通される軸部と、該軸部の一端に形成されるフランジ部を有し、前記磁石には、前記カランの軸部に挿通される貫通孔が形成され、前記カランの軸部が前記羽根基部の軸孔に挿通され、かつ、前記磁石の貫通孔に前記カランの軸部が挿通され、前記フランジ部と磁石の間に前記羽根基部が挟持された状態にて、前記切り抜き部に充填された前記樹脂材を介して前記羽根基部と磁石が一体化されるようにしてもよい。
【0009】
このようにすれば、切り抜き部に充填された樹脂材が、シャッター羽根の回動動作時に羽根基部に作用するモーメントの作用方向に直交する方向に立ち上がる形となるため、羽根基部と磁石との間の滑りを阻止するための効果的な抵抗要素となり、強固な一体化が可能となる。また、樹脂材の一体成型により製作容易であるため、安価に提供することができる。
(3)前記羽根基部と磁石を一体化するための素材が接着剤であり、前記カランは、前記羽根基部の軸孔に挿通される軸部と、該軸部の一端に形成されるフランジ部とを有し、前記磁石には、前記カランの軸部に挿通される貫通孔が形成され、前記カランの軸部が前記羽根基部の軸孔に挿通され、かつ、前記磁石の貫通孔に前記カランの軸部が挿通され、前記フランジ部と磁石の間に前記羽根基部が挟持された状態にて、前記切り抜き部に充填された前記接着剤を介して前記フランジ部と羽根基部と磁石が一体化されるようにしてもよい。
【0010】
このようにすれば、切り抜き部に充填された接着剤が、シャッター羽根の回動動作時に羽根基部に作用するモーメントの作用方向に直交する方向に立ち上がる形となるため、羽根基部と磁石との間の滑りを阻止するための効果的な抵抗要素となり、強固な一体化が可能となる。また、接着剤により3つの部材(カランと羽根基部と磁石)を一度に一体化できるため製作容易であり、安価に提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシャッター羽根は、羽根基部の軸孔の近傍位置に形成した切り抜き部に充填された一体化のための素材が、シャッター羽根の回動動作時に羽根基部に作用するモーメントの作用方向に直交する方向に立ち上がる形となるため、羽根基部と磁石の間の滑りを阻止するための効果的な抵抗要素となり、強固な一体化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の最良の実施の形態に係るシャッター羽根について図面を参照しつつ詳細に説明する。
〔実施の形態1〕
本実施の形態では、シャッター羽根は、樹脂材の一体成型により形成されるカランを介して羽根本体と磁石が一体化されるように構成され、図1(a)は羽根本体の平面図、(b)はシャッター羽根1Aの断面図、(c)はシャッター羽根1Aの平面図である。これらの図にて、符号1は羽根本体で、その基部(本発明の羽根基部)1aには軸孔1bが形成され、かつ、その軸孔1bの近傍位置には切り抜き部1c,1dが形成されている。2はカランで、羽根本体1の基部1aに形成された軸孔1bに挿通される軸部2aと、該軸部2aの両端に形成されるフランジ部2b,2cを有している。3は磁石で、カラン2の軸部2aに挿通される貫通孔3aを有して環状に形成されている。
【0013】
図1(b)(c)は、羽根本体1とカラン2と磁石3が、カラン2を形成する樹脂材の一体成型によって一体化されたシャッター羽根1Aを示す。この状態では、カラン2の軸部2aが、羽根本体1の基部1aの軸孔1bに挿通され、かつ、磁石3の貫通孔3aにカラン2の軸部2aが挿通され、一方のフランジ部2bと磁石3の一面との間に基部1aが挟持され、切り抜き部1c,1dに充填された樹脂材rを介してカラン2と羽根本体1の基部1aと磁石3が一体化され、他方のフランジ部2cは磁石3の他面に密着して、磁石3の両面がカラン2の両フランジ部2b,2cに挟持されている。
【0014】
このようなシャッター羽根1Aは、図示は省略するが、例えば、羽根本体1の基部1aと磁石3を配置したキャビティに樹脂材を充填することによって、羽根本体1と磁石3をカラン2と共に一体成型することによって容易に得ることができ、安価に提供することができる。その樹脂材には、例えば、潤滑性の良好なポリアセタール(POM)を用いたジュラコン(商品名)等を用いることができる。なお、磁石3は一体成型後に着磁させれば、成型時の熱による磁力への影響を回避することができる。
【0015】
このシャッター羽根1Aは、カラン2の軸部2aを支軸(図示省略)に回動自在に挿通させ、磁石3に磁力を作用させることによって支軸のまわりに回動動作する。その際に、切り抜き部1c,1dに充填された樹脂材(カラン2の一部)rが、羽根本体1の基部1aと磁石3の間の滑りの発生を阻止するための効果的な抵抗要素として機能する。即ち、その樹脂材rが、切り抜き部1c,1dの内壁面及び磁石3と一体化されて、シャッター羽根1Aの回動動作時に基部1aに作用するモーメントの作用方向(図1(b)の状態では紙面に直交する方向)に対して直交する方向に立ち上がる形となるため、その樹脂材rによって、羽根本体1の基部1aと磁石3の間の滑りの発生が効果的に阻止されることとなり、基部1aと磁石3が強固な一体化状態に保持され、シャッター羽根1の回動動作が高精度に維持される。
〔実施の形態2〕
本実施の形態では、接着剤により、カランと羽根本体と磁石が一体化されるように構成され、図2(a)は羽根本体の平面図、(b)はシャッター羽根の組み付け対応図、(c)はシャッター羽根1Bの断面図である。これらの図にて、前実施の形態と同等又は同一部材については同一符号を付し、その説明を省略する。この例では、カラン2は、軸部2aの一端側にのみフランジ部2bが形成されており、ポリカーボネート等の接着性の良好な樹脂材からなる成型品が好ましい。
【0016】
この場合、図2(b)に示すように、カラン2の軸部2aを羽根本体1の軸孔1bに挿入して、その軸孔1bと軸部2aの境目及び切り抜き部1c,1dに接着剤bを付着させた後、カラン2の軸部2aに磁石3を被嵌させ、磁石3を羽根本体1の基部1aに押し付けて羽根本体1の基部1aを磁石3とフランジ部2bの間に挟み付けて接着剤bを展延させ、この状態で接着剤bを硬化させると、羽根本体1とカラン2と磁石3を一体化することができる。この例では、切り抜き部1cを円弧状の長孔に形成しているため、接着面積をより広くとれることから、より強固な接着力が得られる。なお、接着剤bにはエポキシ系等の接着剤を用いることができる。
【0017】
本実施の形態においても、切り抜き部1c,1dに充填された接着剤bが、カラン2のフランジ部2b、切り抜き部1c,1dの内壁面及び磁石3に接着して、シャッター羽根1Aの回動動作時に基部1aに作用するモーメントの作用方向(図1(b)の状態では紙面に直交する方向)に対して直交する方向に立ち上がる形となるように硬化しているため、その接着剤bが、羽根本体1の基部1aと磁石3の間の滑りの発生を阻止するための効果的な抵抗要素として機能し、基部1aと磁石3が強固な一体化状態で安定に保持されることとなり、シャッター羽根1Bの回動動作が高精度に維持される。
【0018】
なお、本発明は、実施の形態に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、適宜、必要に応じて、設計変更や改良等を行うのは自由であり、例えば、切り抜き部の形状や数も適宜自由に選択設計されてよい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明に係るシャッター羽根は、羽根基部の軸孔の近傍位置に形成した切り抜き部に、樹脂材又は接着剤を充填させることで、羽根基部と磁石強固に一体化できるので、コンパクト化や低廉化が要請される小型カメラ等の分野に適用することができる。
【0020】
本発明に係るシャッター羽根は、羽根基部と磁石強固に一体化できるので、露出制御を高精度に維持することができるため、高い信頼性と耐久性が要求される小型カメラ等に好適なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は本発明の実施の形態1に係る羽根本体の平面図、(b)はシャッター羽根の断面図、(c)はシャッター羽根の平面図
【図2】(a)は本発明の実施の形態2に係る羽根本体の平面図、(b)はシャッター羽根の組み付け対応図、(c)はシャッター羽根の断面図
【図3】従来の樹脂材の一体成型により形成される露出制御用羽根の断面図
【図4】シャッター羽根の基本的な構成の一例を示す断面図
【符号の説明】
【0022】
1a 羽根基部
1b 軸孔
1c,1d 切り抜き部
2 カラン
2a 軸部
2b,2c フランジ部
3 磁石
3a 貫通孔
r 羽根基部と磁石を一体化するための樹脂材(カランの一部)
b 接着剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支軸に回動自在に被嵌されるカランと羽根基部と磁石とが一体化され、前記磁石に作用する磁力によって前記支軸のまわりに回動動作するシャッター羽根であって、
前記羽根基部には、前記カランを挿通させるための軸孔が形成され、かつ、該軸孔の近傍位置に、前記羽根基部と磁石を一体化するための素材を充填させる切り抜き部が形成されることを特徴とするシャッター羽根。
【請求項2】
前記羽根基部と磁石を一体化するための素材が樹脂材であり、該樹脂材の一体成型によって前記カランが形成され、前記カランは、前記羽根基部の軸孔に挿通される軸部と、該軸部の一端に形成されるフランジ部を有し、前記磁石には、前記カランの軸部に挿通される貫通孔が形成され、前記カランの軸部が前記羽根基部の軸孔に挿通され、かつ、前記磁石の貫通孔に前記カランの軸部が挿通され、前記フランジ部と磁石の間に前記羽根基部が挟持された状態にて、前記切り抜き部に充填された前記樹脂材を介して前記羽根基部と磁石が一体化されることを特徴とする請求項1に記載のシャッター羽根。
【請求項3】
前記羽根基部と磁石を一体化するための素材が接着剤であり、前記カランは、前記羽根基部の軸孔に挿通される軸部と、該軸部の一端に形成されるフランジ部とを有し、前記磁石には、前記カランの軸部に挿通される貫通孔が形成され、前記カランの軸部が前記羽根基部の軸孔に挿通され、かつ、前記磁石の貫通孔に前記カランの軸部が挿通され、前記フランジ部と磁石の間に前記羽根基部が挟持された状態にて、前記切り抜き部に充填された前記接着剤を介して前記フランジ部と羽根基部と磁石が一体化されることを特徴とする請求項1に記載のシャッター羽根。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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