説明

シャットオフ作動用ユニット、シャットオフ機構、このシャットオフ作動用ユニットまたはシャットオフ機構を備えたポンプ式製品およびエアゾール式製品

【課題】ポンプ式製品およびエアゾール式製品に備えられたシャットオフ機構において、当該機構の製造コストの低減化ならびにデザイン仕様および製造仕様の多様化を図る。
【解決手段】操作ボタンを、逆止弁(3)の案内作用部分(5)と、利用者が触れたり見たりする操作ボタン外部を含む本体部分(1)との別々の部材で形成し、さらには当該案内作用部材にシャットオフ機構の構成要素(逆止弁3,ノズル4,コイルスプリング6)を保持した形のユニット構造を用いた。また、本体部分およびブッシュ(2)のそれぞれを、これら各部材の組立時の回動位置関係のプリセット作業が不要となる形状に設定し、相対回動防止にはスプライン係合(1f,2c)を採用して、組立のときの回動方向の位置合わせを不要としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体内容物の放出操作終了時に外部空間への放出口を閉塞して、その近くの通路域に残留する内容物が当該放出口から外部空間の方に漏出しないようにしたシャットオフ機構、すなわちポンプ式容器におけるたれ(固化)やエアゾール式容器におけるアウタードローなどを防止するためのシャットオフ作動用ユニットや、このシャットオフ作動用ユニットを操作ボタンに取り付けた形のシャットオフ機構などに関する。
【0002】
本明細書においては、前後上下の位置関係を、ノズルの内容物放出口側を「前」、それとは反対の逆止弁付勢用の例えばコイルスプリング側を「後」とそれぞれ記し、また、操作ボタン側を「上」、それとは反対の容器本体側を「下」とそれぞれ記す。
【0003】
適用対象の内容物には、例えば液状またはクリーム状の石けん,シャンプー,リンス,化粧品,乳液や、発泡性のシェービングフォーム,ヘアスタイリングフォームをはじめとして、後述のように各種のものがある。
【背景技術】
【0004】
内容物のたれ防止やアウタードロー対策を図るシャットオフ機構は例えば下記の特許文献1で開示されている。
【0005】
特許文献1では、内容物の放出口aおよびその逆止弁(弁部材C)を備えた操作ボタン(本体B)と、ピストン(ステム7)に取り付けられるブッシュ(装着筒部材A)と、からなるシャットオフ機構が開示されている。
【0006】
ここでは、放出操作の際の押下げ操作力により先ず操作ボタンがブッシュに対して下動し、この操作ボタンの下動にともなうブッシュと操作ボタンとの間のカム作用に基づいて、逆止弁が後退して開状態に移行する。
【0007】
すなわち、ブッシュと操作ボタンとの間の第一のカム作用に基づいて後方へ揺動する揺動板16に設けられた斜面形態の弁体摺動面s1(弁部材駆動部)と逆止弁(弁部材C)との間の第二のカム作用に基づいて駆動される当該逆止弁は、そのシール作用部(被案内部)が操作ボタン内部のシール筒24の内周面に案内されながら後退することにより、内容物の放出口aを開状態に設定している。
【0008】
また、シャットオフ機構の構成要素である逆止弁,逆止弁付勢用コイルスプリングおよび放出口部材(ノズル)などの各部材はそれぞれ、操作ボタンに組み込まれるまで、個々にいわばばらけた状態での管理となる。
【0009】
また、操作ボタン下動時に逆止弁を後退させるブッシュ(装着筒部材A)側のカム作用部である、揺動板16は、当該装着筒部材の平面中央部分ではなく、当該平面の縁部側に偏った部分に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−229596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、上記先行技術のシャットオフ機構は、内容物放出口に対する逆止弁自体のシール作用部が操作ボタン内周面に案内されながら移動する構造を前提としている。
【0012】
また、逆止弁は、その移動方向とは異なる上方向の力を弁部材駆動部から受けるために、操作ボタン内周面に付勢されて、摩耗やかじりつきが発生しやすい。
【0013】
そのため、操作ボタンの材質や作成手順などを決める場合にも、先ず操作ボタン内周面と逆止弁との間のシール性能,耐摩耗生や耐かじりつき性能などの案内性能の確保といった機能上の必要性を考慮しなければならず、これとは別の必要性にも同時に応えること、例えば操作ボタンの装飾性に関するデザイン上の要求に応えることが難しいという問題点を有していた。
【0014】
また、上述のようにシャットオフ機構の組立前には、当該機構の各構成要素は一体化されずに個々の部材となっているので、当該部材それぞれの保管や組立作業が煩雑化するという問題点を有していた。
【0015】
また、上述のように操作ボタン下動時に逆止弁を後退させるための(装着筒部材側の)カム作用部が装着筒部材(ブッシュ)平面の縁部側に偏った後方部分に形成されているので、操作ボタンにブッシュを取り付けるときに、当該ブッシュのカム作用部が操作ボタンの放出口とは反対側の後方にくるように設定する必要があった。
【0016】
そのため、あらかじめ操作ボタンに対するブッシュのいわば回動位置関係を特定するための行程が必要となり、シャットオフ機構の組立て作業が一段と煩雑であった。
【0017】
そこで本発明では、先ず逆止弁に対する案内作用を呈する操作ボタン内周面の部分を当該操作ボタンからいわば切り離した形の別部材として、その中に内容物放出口画定用のノズル部材、当該放出口に対する逆止弁や逆止弁付勢用弾性部材などのシャットオフ機構構成要素をそれぞれ保持し、当該機構の組立時に、操作ボタンに取り付けられる例えば鞘状のシャットオフ作動用ユニットを用いる。
【0018】
すなわち、操作ボタンを、逆止弁の案内作用部分と、利用者が触れたり見たりする操作ボタン外部を含む本体部分との別々の部材で形成し、さらには当該案内作用部材にシャットオフ機構の上記構成要素を保持した形のユニット構造を用いる、ことにより、
(11)案内作用部分および本体部分それぞれの材質,製法などを個々に設定できるようにして、逆止弁に対する案内作用の十全化を図るとともに、操作ボタン外面に対する操作感やデザイン性などの向上化を図り、
(12)かつ、シャットオフ機構の構成要素である逆止弁,逆止弁付勢用コイルスプリングおよび放出口部材(ノズル)などの各部材をユニットとして効率的に保管するとともに、当該構成要素を操作ボタンへ組み込む際の作業の簡単化を図り、当該機構の製造コストの低減化・製造仕様の多様化を図ることを目的とする。
【0019】
また、操作ボタンおよびブッシュ(内容物通過用部材)のそれぞれを、これら各部材の組立時の回動位置関係のプリセット作業が不要となる形状に設定し、これによりシャットオフ機構全体の組み立て作業の簡素化を図り、当該機構の製造コストの一層の低減化を図ることを目的とする。
【0020】
また、操作ボタンとブッシュ(内容物通過用部材)との間の回動を阻止するためこれら双方の部材それぞれに形成される各構成要素(回動阻止部とこれに対する係合部)についても、同様に、当該部材の組立時の部材相互の回動位置関係のプリセット作業を不要とするスプライン係合形状などに設定して、シャットオフ機構の組み立て作業のさらなる簡素化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)操作ボタン(例えば後述の操作ボタン1)の作動モード設定操作にともない、先ず内容物放出口(例えば後述の放出口4a)に対する逆止弁(例えば後述の逆止弁3)の移動により当該放出口がそれまでの閉状態から開状態に設定され、続いて当該開状態のまま、容器本体と連通可能な内容物通過用部材(例えば後述のブッシュ2)が当該操作ボタンと連動して、作動モードに移行するシャットオフ機構の構成要素で、少なくとも内部空間,内周面,外面および周面開口部(例えば後述の開口部5a)を備えたシャットオフ作動用ユニットにおいて、
前記内部空間に、前記逆止弁、前記内容物放出口を画定するノズル部材(例えば後述のノズル4)、および当該放出口が閉状態となるように当該逆止弁を付勢する弾性部材(例えば後述のコイルスプリング6)、のそれぞれが保持され、
前記内周面は、前記逆止弁の移動に対する案内部分として作用し、
前記外面は、前記操作ボタンへの取付け部分として作用し、
前記周面開口部は、前記内容物通過用部材の逆止弁移動用作動部(例えば後述の環状斜面2e,斜面2e’)および内容物流出用出力部(例えば後述の上下方向孔部2h)のそれぞれに対応した開口部とした。
(2)上記(1)のシャットオフ作動用ユニットが操作ボタン取り付けられたシャットオフ機構において、
前記操作ボタンは、
前記逆止弁の移動空間域が形成された鞘状の上側収容部(例えば後述の鞘状部材5)と、
前記内容物通過用部材の移動空間域,前記上側収容部へと続く中央開口部(例えば後述の中央開口部1d)および、前記内容物通過用部材に対する当接面(例えば後述の環状垂下部1eの内周面)が形成された筒状の下側収容部(例えば後述の下側収容部1c)と、を備え、
前記内容物通過用部材は、前記逆止弁移動用作動部に加え、
前記内容物流出用出力部を上端側に有して、前記容器本体からの流入内容物が通過する中央通路部(例えば後述の中央通路部2d)と、
前記下側収容部の当接面に対する被当接部(例えば後述の逆スカート状部2f)と、を備え、
少なくとも前記当接面,前記逆止弁移動用作動部および前記被当接部はそれぞれ、
前記内容物通過用部材がその移動方向中心軸(例えば後述の上下方向中心軸A)に対する任意の回動状態で前記操作ボタンおよび前記逆止弁に対して正しく取り付けられる形の、当該中心軸についての対称的形状に設定されている。
(3)上記(2)において、前記操作ボタンおよび前記内容物通過用部材は、
一方の周面部分に、それぞれ前記対称形状の複数の回動阻止部(例えば後述の内向噛合部1fまたは外向噛合部2c)が設定され、
他方の周面部分に、当該回動阻止部に対する係合部(例えば後述の外向噛合部2cまたは内向噛合部1f)が、前記任意の回動状態における当該内容物通過用部材と当該操作ボタンとの取り付けを行える形状で、設定されている。
【0022】
本発明は、このような構成のシャットオフ作動用ユニットまたはシャットオフ機構を備えたポンプ式製品およびエアゾール式製品も対象としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明はこのように、操作ボタンを、逆止弁の案内作用部分と、利用者が触れたり見たりする本体部分との別々の部材で形成し、かつ、当該案内作用部材にシャットオフ機構の上記構成要素を保持した形のユニット構造を用いているので、逆止弁に対する案内作用の十全化を図るとともに、操作ボタン外面に対する操作感やデザイン性などの向上化を図りかつ、シャットオフ機構の各構成要素をユニットとして効率的に保管するとともに、当該構成要素を操作ボタンへ組み込む際の作業の簡単化を図り、当該機構の製造コストの低減化・製造仕様の多様化を図ることができる。
【0024】
また、操作ボタンおよびブッシュ(内容物通過用部材)のそれぞれを、これら各部材の組立時の回動位置関係のプリセット作業が不要となる形状に設定しているので、シャットオフ機構全体の組み立て作業の簡素化を図り、当該機構の製造コストの一層の低減化を図ることができる。
【0025】
また、操作ボタンとブッシュ(内容物通過用部材)との間の回動を阻止するためこれら双方の部材それぞれに形成される各構成要素(回動阻止部とこれに対する係合部)についても、同様に、当該部材の組立時の部材相互の回動位置関係のプリセット作業を不要とするスプライン係合形状などに設定しているので、シャットオフ機構の組み立て作業のさらなる簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】シャットオフ機構(その1:操作ボタン1に取り付けられる際のブッシュ2の前後が任意で特定されないタイプ)の静止モードの断面状態を示す説明図である。
【図2】図1のシャットオフ機構の作動モードへの移行開始段階の断面状態を示す説明図である。
【図3】シャットオフ機構(その2:操作ボタン1に取り付けられる際のブッシュ2の前後が特定されるタイプ)の静止モードの断面状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1〜図3を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0028】
各図で用いるアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば操作面1a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば操作ボタン1)の一部であることを示している。
【0029】
図1〜図3において、
1は操作ボタン,
1aは利用者が操作の対象とする操作面,
1bは後述の鞘状部材5が嵌合する鞘状の上側収容部,
1cは後述のブッシュ2を収容する筒状の下側収容部,
1dは上側収容部1bに嵌合した後述の鞘状部材5の開口部5aと下側収容部1cとを連通させる形で下側収容部1cの天井部に設けられた中央開口部,
1eは中央開口部1dを囲む形で下側収容部1cの天井部に設けられた環状垂下部,
1fは下側収容部1cの内周面に設けられて、後述の外向噛合部2cとスプライン係合する内向噛合部,
1f’は下側収容部1cの内周面に設けられて、後述の溝状部2c’と係合するリブ状部,
1gは下側収容部1cの内周面の周方向に飛び飛びに設けられて、後述の外周面2bの下端に当接してブッシュ2が下方へ脱落するのを防止する複数の突起部,
1hは後述の鞘状部材5の回動を防止するための前後方向凸状部,
1jは中央開口部の縁の一部に設けられて後述の上側切欠部5bとの協働作用により、当該各切欠部の上下の各空間域(後述の鞘状部材5の内部後方空間域および環状垂下部1eの内側空間域)を連通させるための下側切欠部,
1kは上側収容部1bの内周面に設けられて後述の環状凸部5eが係合する環状凹部,
2は操作ボタン1の押圧操作にともなう下動開始後の所定状態(後述の逆止弁3が後退しきった状態,図2参照)になってから連動(下動)し、かつ、図示横方向の任意の断面の輪郭部分が、上下方向の中心軸A(の点)を通る当該断面上の任意の直線に対して略線対称となる、外面形状を持つ筒状のブッシュ,
2aは環状の天井部,
2bは天井部2aの外側縁部分から下方に連続する外周面,
2cは外周面2bに設けられて、内向噛合部1fとスプライン係合する外向噛合部,
2c’は外周面2bに設けられて、リブ状部1fと係合し、操作ボタン1とブッシュ2との間の回動を防止する溝状部,
2dは後述のピストン6の内容物流出側と後述の鞘状部材5の内部空間との間に設定された内容物通過用の中央通路部,
2eは中央通路部2dの出口側外面に形成されて、後述の鍔状部3bの前面縁部との間で倣い作用を呈する環状斜面,
2e’は後述の逆止弁3の中央細身部を挟む態様で中央通路部2dの出口側外面に形成されて、後述の鍔状部3bの前面縁部との間で倣い作用を呈する一対の斜面,
2fは環状垂下部1eの内周面に当接してシール作用を呈する逆スカート状部,
2gは天井部2aに設けられた上下方向の(空間域)連通孔,
2hは環状斜面2eに囲まれるブッシュ中央部分に形成された内容物流出用の上下方向孔部,
3は操作ボタン1の上側収容部1bに配置されて静止モードにおいては前方端部が後述の放出口4aを閉塞する逆止弁,
3aは当該逆止弁の前端側部分であって放出口4aの開閉作用を呈する弁作用部,
3bは弁作用部3aの後端部分に設けられて、前面縁部がブッシュ2の環状斜面2eとの倣い作用を呈し、後面部が後述のコイルスプリング6を保持する鍔状部,
4は上側収容部1bの前側内周面と嵌合する筒状のノズル,
4aは容器内容物の放出口,
4bはノズル外周面に設けられた環状凸部,
5は図示右の方から左に向かって小径部分,中径部分および大径部分が順に形成され、その内部空間に逆止弁3を収容し、ノズル4と一体化されて、開口部5aから放出口4aにいたる内容物通過用の下流側通路を構成する鞘状部材,
5aはブッシュ2の中央上端側部分(環状斜面2e,上下方向孔部2hなど)の上下動を可能とするための開口部,
5bは下側切欠部1jの真上に設定された上下方向連通用の上側切欠部,
5cは当該鞘状部材の内周面前側部分に形成されてノズル4の外周面環状凸部と嵌合する環状凹部,
5dは操作ボタン1の前後方向凸状部1hと係合して当該鞘状部材の回動を防止するための溝状部,
5eは当該鞘状部材の外周面前側部分に形成されて操作ボタン1の内面環状凸部と嵌合する環状凹部,
6は逆止弁3を前方に付勢するコイルスプリング,
7はブッシュ2の筒状部下側内周面に強く嵌合して上方向に弾性的に付勢される(図示省略)形で設けられ、操作ボタン1の下方への押圧によって周知のポンプ機構またはバルブ機構が作動して容器内容物を中央通路部2dに流出させるピストン,
8は容器本体(図示省略)の開口部に取り付けられたキャップ,
9はキャップ8に取り付けられてピストン7の移動空間域および容器内容物の貯留・通路域として作用するハウジング,
Aは下側収容部1cの内面形状やブッシュ2の外面形状などの軸対称性の上下方向中心軸(ブッシュ2およびピストン7などの移動方向中心軸),
をそれぞれ示している。
【0030】
ここで、操作ボタン1,ブッシュ2,逆止弁3,ノズル4,鞘状部材5,ピストン7,キャップ8およびハウジング9などはポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものであり、コイルスプリング6は金属製,プラスチック製のものである。
【0031】
図1〜図3のシャットオフ機構の基本的特徴は、
(21)もともと操作ボタン1の一部であって逆止弁3の前後方向への移動を案内する部分を、操作ボタンとは別部材の鞘状部材5の形で設定し、
(22)この鞘状部材に、逆止弁3,ノズル4およびコイルスプリング6の三要素を組み込んでシャットオフ作動用ユニットを作成した、
ことである。
【0032】
このシャットオフ作動用ユニットは上記三要素をいわば内在させた状態の鞘状部材5からなる。このユニット単位で保管でき、また操作ボタン1に取り付けられる。
【0033】
シャットオフ作動用ユニットの組立作業は例えば、
(31)先ず、逆止弁3の鍔状部3bの後方周面部にコイルスプリング6の一端側を入れて逆止弁とコイルスプリングとを一体化し、
(32)次に、この一体化した逆止弁およびコイルスプリングを鞘状部材5の内部にその前端側開口部から入れ、
(33)次に、ノズル4を逆止弁3の前側周面部に合わせる形で鞘状部材5の内部に同じく前端側開口部から入れて、当該ノズルの環状凸部4bを鞘状部材5の内周面の環状凹部5cに嵌合させる、
といった手順なる。
【0034】
この組立後のシャットオフ作動用ユニットの放出口4aは逆止弁3の弁作用部3aで閉状態に設定されている。
【0035】
そして図1および図2のシャットオフ機構の付加的特徴は、
・操作ボタン1の下側収容部1c,中央開口部1d,環状垂下部1e,内向噛合部1f
・ブッシュ2の外向噛合部2c,当該噛合部に続く外周面部分,環状斜面2e,逆スカート部2f,
などの各形状が、
上下方向中心軸Aに対して、ブッシュ2をその任意の回動位置で操作ボタン1に図示の下方側から入れて組み込むことにより双方を一体化できるような略軸対象形状になっている、ことである。
【0036】
すなわち、(内向噛合部1fの部分を除く)下側収容部1c,中央開口部1d,環状垂下部1e,外向噛合部2cに続くブッシュ外周面部分,環状斜面2e,逆スカート部2fなどの図示横方向(=上下方向中心軸Aと直交する方向)の任意の断面の輪郭線はそれぞれ「円」となる。
【0037】
また、内向噛合部1fおよび外向噛合部2cについての同横方向の任意の断面の輪郭線もそれぞれ略「円」といえる。当該断面の各噛合部の谷(底)部分または山(頂)部分はそれぞれ「円」上に位置している。
【0038】
ここで、図1〜図3のシャットオフ機構の動作は概略、次のようになる。
(41)利用者が、静止モードの操作ボタン1の操作面1aを押し下げる。
(42)操作ボタン1の下動にともなって、逆止弁3の鍔状部3bとブッシュ2の環状斜面2e,斜面2e’との倣い作用により逆止弁3がコイルスプリング6の弾性力に抗しながら鞘状部材5の内周面などに案内されるかたちで後退する。
このときブッシュ2は下動しない。それはピストン7を上方向に付勢する周知の弾性力がコイルスプリングのそれよりも十分に大きいからである。
(43)その後、操作ボタン1の環状下垂部1eがブッシュ2の環状天井部2aの上面部分に当接すると操作ボタン1,ブッシュ2およびピストン7は一体となって下動する。
(44)ピストン7の下動によりその弁作用部が開いて、容器本体の内容物が「ピストン7の中央通路−中央通路部2d−鞘状部材5の内部空間−ノズル4の内部空間−放出口4a」を経て外部空間に放出される。
【0039】
利用者が操作ボタン1の押圧操作をやめると、シャットオフ機構は次のような(作動モード設定時とは逆の)動作を呈する。
(51)先ず、操作ボタン1およびブッシュ2がピストン7とともに当該ピストンに対する周知の強い弾性復帰力によって静止モード位置まで上動する。この上動により、ピストン側の弁作用部が閉じて容器本体側から中央通路部2dへの内容物流入動作が終了する。
(52)続いて、逆止弁3が、コイルスプリング6の復帰力によって前方向に復帰して放出口4aを閉状態に設定する。なお、この弁部材復帰の際、操作ボタン1は、逆止弁3の鍔状部3bとブッシュ2の環状斜面2e,斜面2e’との倣い作用により上動して静止モードの初期位置に復帰する。
【0040】
図1〜図3のシャットオフ機構の組み立て作業は、
(61)操作ボタン1の上側収容部1bの前方開口部から、逆止弁3,ノズル4,鞘状部材5およびコイルスプリング6で構成されるシャットオフ作動用ユニットを挿入して、鞘状部材外周面の環状凸部5eを上側収容部内周面の環状凹部1kに嵌合させ、
(62)ブッシュ2を操作ボタン1の下方から下側収納部1cに挿入して取り付ける、
といった手順になる。
【0041】
図1〜図3のシャットオフ機構は、上述したように、逆止弁3,ノズル4およびコイルスプリング6の各シャットオフ作動用要素を鞘状部材5に組み込んだ形のユニット構造を用いている。
【0042】
すなわち、逆止弁3の前後方向へ移動する逆止弁3は、操作ボタン1とは別の鞘状部材5の内周面に案内される。
【0043】
これにより操作ボタン1および鞘状部材5の材質や製造法などをそれぞれの機能に適する形で個々に設定できる。例えば操作ボタン1については外観装飾を重視した設定とし、鞘状部材5については逆止弁3の案内機能を重視した設定にすることができる。
【0044】
また、シャットオフ機構を組み立てるまでの保管はシャットオフ作動用ユニットの単位となる。逆止弁3,ノズル4およびコイルスプリング6を個々に保管する必要はない。
【0045】
また、シャットオフ機構の組立作業の際にもこのシャットオフ作動用ユニットを操作ボタン1に挿入すればよい。
【0046】
これに加えて図1および図2のシャットオフ機構は、上述したように、
・下側収容部1c,中央開口部1d,環状垂下部1e,内向噛合部1f
・外向噛合部2c,当該噛合部に続く外周面部分,環状斜面2e,逆スカート部2f,
などの各構成要素を、図示横方向断面の輪郭線が円状で、上下方向中心軸Aに対して略軸対象となる形状に設定している。
【0047】
そのため、操作ボタン1とブッシュ2とを組み立てる際、双方の回動位置関係などは一切確認せずに、ブッシュ2をその環状斜面2e側から操作ボタン1の下側収容部1cに挿入するだけでよい。
【0048】
なお、この確認不要の利点は、操作ボタンの内向噛合部1fとブッシュの外向噛合部2cとの間にも確実に妥当する。
【0049】
それは、内向噛合部1fの歯の下端および外向噛合部2cの歯の上端はそれぞれ、操作ボタン1とブッシュ2との回動方向に対して山形になっているため、操作ボタン1にブッシュ2を挿入するときに内向噛合部1fおよび外向噛合部2cの各歯の凹凸自体が合致していなくても、各歯の山形端部同士の倣い作用によってそれぞれの凹凸が一致するように、操作ボタン1とブッシュ2とが相対的に回動するからである。
【0050】
操作ボタン1の外径19mmの場合、スプライン係合する内向噛合部1fおよび外向噛合部2cの歯数は例えば60である。
【0051】
組立て後のシャットオフ機構は、各種のポンプ容器またはエアゾール容器に取り付けて使用される。
【0052】
本発明が以上の実施形態に限定されないことは勿論であり、例えば特開2008−055333号公報のように、スプライン係合の代わりにブッシュ2に上下方向変位可能な円形ダイアフラム部を設けその外周を操作ボタン1の下側収容部1cの内周面に液密に係合させてもよい。
【0053】
また、内向噛合部1fまたは外向噛合部2cの一方の歯数を減らしても良い。
【0054】
また、ブッシュ2(および操作ボタン1,ピストン7)とキャップ8との間の回動を阻止するため、キャップ内側筒状部の内周面およびブッシュ筒状部の外周面に内向噛合部1f,外向噛合部2cと同様のスプライン係合部を形成してもよい。
これにより、ブッシュ2などとキャップ8との組立て時における双方の回動位置関係の確認作業も不要となる。
【0055】
本発明が適用されるポンプ式製品やエアゾール式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0056】
容器本体に収納する内容物は、液状,クリーム状,ゲル状など種々の形態のものを用いることができ、内容物に配合される成分としては例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分,水などが挙げられる。
【0057】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0058】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0059】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,グリセリン,1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0060】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0061】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,ヒドロキシエチルセルロース,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0062】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0063】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0064】
エアゾール式製品における内容物放出用ガスとしては、炭酸ガス,窒素ガス,圧縮空気,酸素ガス,希ガス,これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス,ジメチルエーテル,フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【符号の説明】
【0065】
1:操作ボタン
1a:操作面
1b:上側収容部
1c:下側収容部
1d:中央開口部
1e:環状垂下部
1f:内向噛合部
1f’:リブ状部
1g:突起部
1h:前後方向凸状部
1j:下側切欠部
1k:環状凹部
2:ブッシュ
2a:天井部
2b:外周面
2c:外向噛合部
2c’:溝状部
2d:中央通路部
2e:環状斜面
2e’:一対の斜面
2f:逆スカート状部
2g:(空間域)連通孔
2h:上下方向孔部
3:弁部材
3a:弁作用部
3b:鍔状部
3c:カム作用部
4:ノズル
4a:放出口
4b:環状凸部
5:鞘状部材
5a:開口部
5b:上側切欠部
5c:環状凹部
5d:溝状部
5e:環状凹部
6:コイルスプリング
7:ピストン
8:キャップ
9:ハウジング
A:軸対称の上下方向中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作ボタンの作動モード設定操作にともない、先ず内容物放出口に対する逆止弁の移動により当該放出口がそれまでの閉状態から開状態に設定され、続いて当該開状態のまま、容器本体と連通可能な内容物通過用部材が当該操作ボタンと連動して、作動モードに移行するシャットオフ機構の構成要素で、少なくとも内部空間,内周面,外面および周面開口部を備えたシャットオフ作動用ユニットにおいて、
前記内部空間に、前記逆止弁、前記内容物放出口を画定するノズル部材、および当該放出口が閉状態となるように当該逆止弁を付勢する弾性部材、のそれぞれが保持され、
前記内周面は、前記逆止弁の移動に対する案内部分として作用し、
前記外面は、前記操作ボタンへの取付け部分として作用し、
前記周面開口部は、前記内容物通過用部材の逆止弁移動用作動部および内容物流出用出力部のそれぞれに対応した開口部である、
ことを特徴とするシャットオフ作動用ユニット。
【請求項2】
請求項1記載のシャットオフ作動用ユニットが操作ボタン取り付けられたシャットオフ機構において、
前記操作ボタンは、
前記逆止弁の移動空間域が形成された鞘状の上側収容部と、
前記内容物通過用部材の移動空間域,前記上側収容部へと続く中央開口部および、前記内容物通過用部材に対する当接面が形成された筒状の下側収容部と、を備え、
前記内容物通過用部材は、前記逆止弁移動用作動部に加え、
前記内容物流出用出力部を上端側に有して、前記容器本体からの流入内容物が通過する中央通路部と、
前記下側収容部の当接面に対する被当接部と、を備え、
少なくとも前記当接面,前記逆止弁移動用作動部および前記被当接部はそれぞれ、
前記内容物通過用部材がその移動方向中心軸に対する任意の回動状態で前記操作ボタンおよび前記逆止弁に対して正しく取り付けられる形の、当該中心軸についての対称的形状に設定されている、
ことを特徴とするシャットオフ機構。
【請求項3】
前記操作ボタンおよび前記内容物通過用部材は、
一方の周面部分に、それぞれ前記対称形状の複数の回動阻止部が設定され、
他方の周面部分に、当該回動阻止部に対する係合部が、前記任意の回動状態における当該内容物通過用部材と当該操作ボタンとの取り付けを行える形状で、設定されている、
ことを特徴とする請求項2記載のシャットオフ機構。
【請求項4】
請求項1記載のシャットオフ作動用ユニットまたは請求項2もしくは請求項3記載のシャットオフ機構を備え、かつ、内容物を収容した、
ことを特徴とするポンプ式製品。
【請求項5】
請求項1記載のシャットオフ作動用ユニットまたは請求項2もしくは請求項3記載のシャットオフ機構を備え、かつ、噴射用ガスおよび内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−179945(P2010−179945A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26102(P2009−26102)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】