説明

シャトル式門型クレーン

【課題】レールマウント式門型クレーン(RMT)のレーン間移動を行うことなく、隣接したレーンの荷役を可能とするシャトル式門型クレーン1を提供し、さらに、コンテナヤード15内におけるRMTの効率的な運用を実現することを目的とする。
【解決手段】海上輸送用コンテナを荷役するRMT1において、下部に走行輪79を設けた脚部73を両端に固定した外側ガーダ72の内側に、吊具を装備した横行体(トロリ12)が横行可能な内側ガーダ71を設け、前記内側ガーダ71を外側ガーダ72に沿って長手方向に移動可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば港湾等のコンテナヤード内において、コンテナの運搬を行うレールマウント式門型クレーン及びコンテナヤード内の設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
港湾等のコンテナヤードでは、クレーンによって船舶及びトレーラ間の、コンテナの積み下ろしを行っている。
【0003】
図7にコンテナヤード15の概観を示すように、コンテナ船等の船舶16によって運搬された20ftあるいは40ftコンテナ等のコンテナ31は、岸壁に設置されたコンテナクレーン17によって荷揚げされ、コンテナヤード15内を走行するトレーラ32に搭載される。トレーラ32に搭載されたコンテナ31は、門型クレーン1によって複数列に整然と並べられ、荷揚げを完了する。これらのコンテナ31は他の船舶16に再び積まれたり、トレーラ32により他の場所へ運搬されたりする。
【0004】
ここで、使用されている門型クレーン1は大きく分けて、タイヤにより移動するもの(以下、RTT)と、レール及び車輪の組み合わせで移動するレールマウント式門型クレーン(以下、RMT)がある。RTTはヤード15内を自在に移動することが可能であるが、クレーンの大型化により自重が増加すると、それを支えるためのタイヤの個数を多くしなくてはならない。さらにクレーンの重量が大きい場合は、タイヤでは支えきれなくなるため、レール式のRMTが採用される。
【0005】
また、RMTは、ヤード15内に敷設されたレール13上を移動するので、走行方向が規定され、RMTの位置決めが容易となり、更に吊荷移動の際は荷揺が少ない安定した運搬を実現している。また、レール13に沿って移動するため、ケーブルリール等で給電することが可能となるため、エンジンを搭載したクレーンに比べメンテナンス性が高く、排気ガス等も発生しないため環境性能も高い。
【0006】
他方、RMTは、コンテナヤード15において荷役作業の高効率化や作業の平準化を図るために、例えば図7に示した第1レーン21の荷役作業量が少なく、第2レーン22の作業量が多い場合に、第1レーン21のクレーンC1を第2レーン22に移動させるという要求があり、また、故障時の対策としてRMTをレーン間(例えば第1レーン21と第2レーン22)で移動させるという要求があるが、通常RMTはレーン間を移動する手段を持たないため、あらかじめひとつのレーンに多数のクレーンを配置しておくことが必要で、設備的に無駄が大きく、非効率であるという問題を抱えていた。
【0007】
これに対して、RMTのレーン間移動を行うための発明がなされてきた(例えば特許文献1参照)。
【0008】
特許文献1に記載の発明によれば、RMTのレーン間移動を実現するために、図6に示すように、各レーン(例えば第1レーン21、第2レーン22)に対して垂直に交わる方向に、レーン間移動用レール33を敷設し、RMT37のレーン間移動を実現している。
【0009】
この時、荷役作業用レーン端部38に移動したRMT37は、前記RMT37下部に設置されたジャッキ36によりジャッキアップすることで、車輪11にかかる荷重を抜き、RMT37と車輪11の間に設置された図示しない旋回装置を作動させ、車輪11を90度回転させる。その後、車輪11がレーン間移動用レール33に乗るように、ジャッキアップしたRMT37を降ろすことで、RMT37の方向は変えずに車輪11のみレーン間移動用レール33の方向に回転させ、レーン間移動用レール33上を移動するよう構成されている。
【特許文献1】特開2004−175515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1の記載の方法においては、図6に示すように重量物であるRMT37をジャッキアップし、回転脚部を作動させることで車輪11を90度旋回させた後、位置合わせを行いながらジャッキを解除し車輪11をレーン間移動用レール33に載置し、レーン間移動用レール33を走行移動させ、移動先であるレーンを走行するため再びジャッキアップ及び車輪11の旋回を行うため、レーン間の移動に時間及び手間がかかるので、RMT37のレーン間移動を容易かつ機動的に行うことは困難である。
【0011】
また、RMT37をジャッキアップするジャッキ36や、車輪11を旋回させるための旋回装置等の機構が必要となり、これらの機構には重量物であるRMT37やコンテナ31の重量が常にかかるため、不具合が生じやすくなり、そのためメンテナンス性が低いという問題がある。特に、多忙な港湾で使用される場合は、複雑な機構が潮風の影響を受け、劣化が激しくなり故障の発生頻度が高くなる。
【0012】
更に、図6に示すようにレール13に切断部25が発生し、このレール切断部25をクレーンの車輪11が通過する際、レール切断部25の角で車輪11と接触する部分の摩耗が激しくなり、レール13及びレーン間移動用レール33の交換回数が増加してしまう。
【0013】
特に近年、港湾等のコンテナヤード15は24時間フル稼働となる場合も多く、RMT37のメンテナンス頻度が高くなると、コンテナヤード15の稼働率は著しく低下してしまい、さらに、レール磨耗に伴うレール交換作業中は、そのレール13に関わるRMT1の使用が不可能となるため、コンテナヤード15の稼働率の大幅低下は不可避となってしまう。
【0014】
そこで、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、RMTのレーン間移動を行うことなく、隣接したレーンの荷役を可能とするRMTを提供し、さらに、コンテナヤード15内におけるRMTの効率的な運用を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明に係るレールマウント式門型クレーン1(RMT1)は、海上輸送用コンテナを荷役するRMT1において、下部に走行輪79を設けた脚部73を両端に固定した外側ガーダ72の内側に、吊具を装備した横行体(トロリ12)が横行可能な内側ガーダ71を設け、前記内側ガーダ71を外側ガーダ72に沿って長手方向に移動可能に構成したことを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明に係るRMT1は、前記横行体(トロリ12)に、前記内側ガーダ71上を移動するための車輪11を設置し、前記吊具を上下させるための巻き上げ装置を設置したことを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明に係るRMT1は、前記外側ガーダ72に沿って移動する前記内側ガーダ71を移動させる移動装置を、ワイヤロープ、ラックピニオン、スクリュー、又はチェーンのいずれかにより構成したことを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明に係るRMT1は、前記内側ガーダ71に、他のRMT1又はその内側ガーダ71と衝突を回避するための衝突防止センサ78を設置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の内側ガーダ71を供えたシャトル式門型クレーン(RMT1)により、レーンの異なるコンテナ31の荷役をRMT1のレーン間移動を伴わずに荷役が可能となった。即ち、従来のRMT1の外側ガーダ72から突出可能に設置した内側ガーダ71を隣のレーンのコンテナ31上方に突き出し、その内側ガーダ71上を走行するトロリ12により、コンテナ31の荷役可能とした。
【0020】
内側ガーダ71を前記外側ガーダ72内に引き込まれた状態及び突出した状態のいずれの状態であっても、前記トロリ12によるコンテナ31の荷役を可能にしたため、RMT1が配置されているレーン及び隣接するレーンにおける荷役を機動的に行うことが可能となった。
【0021】
隣接するレーンの荷役を、内側ガーダ71を移動して伸ばすことで可能としたため、従来のレーン間を移動する時間が不要となり、さらに、それぞれのRMT1の荷役可能範囲が広くなったため、コンテナヤード15内における作業量の平準化の制御が容易になった。
【0022】
本発明のシャトル式門型クレーン1は、レール敷設等のコンテナヤード15における工事の必要がなく、RMT1を入れ替えるのみでコンテナヤード15の荷役効率を上げることが可能となる。
【0023】
前記内側ガーダ71に衝突防止センサ78を設置したことで、前記内側ガーダ71が他のRMT1が荷役を行っているレーン上で荷役を行う際の、前記RMT1との衝突を回避することを可能とした。また、他のレーンのRMT1から突き出された内側ガーダ71との衝突も回避することを可能としている。
【0024】
上記のように、本発明のシャトル式門型クレーン(RMT)1により、コンテナヤード15内のレーン間で発生する荷役作業のバラつきを平準化し、RMT1の荷役効率を高めることで、コンテナヤード15全体の荷役の高効率化を実現することを可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は本発明のシャトル式門型クレーンの実施例の1つの斜視図を示している。
図2及び図3は内側ガーダ71の移動機構の1例の概略図を示している。
図4は従来のRMT1における荷役の様子を示しており、図5は本発明のシャトル式門型クレーン1による、隣接したレーンの荷役の状況を示している。
【0026】
図1に示すように、本発明のシャトル式門型クレーン(RMT)1は、外側ガーダ72の両端に脚部73を設置し、更にこの脚部73の下方に走行輪79を設けており、連結部材77で補強された枠体構造を持っている。
【0027】
従来のRMT1は前記外側ガーダ72上にトロリ12を走行可能に配置し、前記トロリ12はワイヤ74を介して、スプレッダ76を懸吊している。前記スプレッダ76は20ftあるいは40ftコンテナを懸吊することが可能である。
【0028】
本発明の特徴として、前記外側ガーダ72の内側に例えば枠体構造で構成した内側ガーダ71を、前記外側ガーダ72の長手方向に駆動装置83を含む移動機構により移動可能に設置している。
【0029】
本発明のRMT1が搭載されているレーン内のコンテナ31に対して荷役作業を行う場合は、内側ガーダ71は外側ガーダ72内に収められ、前記内側ガーダ71上をトロリ12が移動する。
【0030】
また、隣接するレーンの荷役を行う際は、前記外側ガーダ72から内側ガーダ71を伸ばし、前記内側ガーダ71上をトロリ12が移動することで、RMT1の隣接するレーンの荷役を行うことを可能としている。
【0031】
さらに、前記内側ガーダ71には衝突防止センサ78が設置されており、内側ガーダ71を隣接するレーンに突出させたとき、他のRMT1や他のRMT1の内側ガーダ71に接触する危険を監視し、RMT1操作者に通知させ、RMT1の接触事故を防止することが可能となっている。
【0032】
図2及び図3は前記内側ガーダ71が移動するための移動機構の1例を示している。RMT1の脚部73に固定された外側ガーダ72の形成する枠体構造の中に内側ガーダ71が収納され、前記外側ガーダ72に固定された駆動装置83に連結された第1ワイヤ86は、後シーブ82を経由して内側ガーダ71の移動方向前方に固定され、第2ワイヤ87は前シーブ81を経由して内側ガーダ71の後方に固定される。ここで、前シーブ81及び後シーブ82は外側ガーダ72に固定されている。
【0033】
前記駆動装置83を動作させ、図3に示す矢印のように、第1ワイヤ86を送り方向に、第2ワイヤ87を巻き込み方向に牽引することで、外側ガーダ72に収納されていた内側ガーダ71は移動しRMT1から突出する。
【0034】
上記のワイヤ86,87を利用した内側ガーダ71移動装置により、重量物である内側ガーダ71を比較的単純な構造移動させることが可能となった。内側ガーダ71の移動装置は、ラック&ピニオン駆動、スクリュージャッキ駆動又はリンク式チェーン駆動等により実現することも可能である。
【0035】
図4は従来型のRMT1の荷役の様子の正面図を示している。従来のRMT1は、載置されているレーン内のコンテナ31のみ荷役可能となっており、トレーラ32の運んできたコンテナ31をコンテナヤード15内に保管する若しくはコンテナヤード15からトレーラ32へコンテナ31を荷役する。
【0036】
これに対して、本発明のシャトル式門型クレーン(RMT)1の荷役の様子を図5に示す。本発明のRMT1は外側ガーダ72から内側ガーダ71を突出させることで、隣接するレーンの荷役を可能としている。隣接するレーン内に保管されているコンテナ31を、RMT1はレーンを移動することなく、トレーラ32に搭載することが可能となっている。そのため、荷役作業の集中しているレーンまでRMT1を移動させることなく、荷役作業を行うことが可能であるため、他のレーンにおける作業開始までの時間が大幅に短縮される。
【0037】
また、本発明のRMT1のトロリ12は、外側ガーダ72及び内側ガーダ71の範囲を移動するように設置されているため、1台のRMT1における荷役可能範囲が格段に広くなった。そのため、コンテナヤード15内における複数台のRMT1の運用効率を上げることを実現した。
【0038】
上述のように、本発明のシャトル式門型クレーン1により、RMT1のレーン間移動を行うことなく、隣接したレーンの荷役を可能とするRMT1を提供し、さらに、コンテナヤード15内におけるRMTの効率的な運用が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のシャトル式門型クレーンの概略を示した斜視図である。
【図2】本発明の内側ガーダの移動機構の概略図である。
【図3】本発明の内側ガーダの移動機構の概略図である。
【図4】従来のRMTによる荷役の状態を示した正面図である。
【図5】本発明のシャトル式門型クレーンによる荷役の状態を示した正面図である。
【図6】従来のレーン間移動装置の概略図である。
【図7】港湾等のコンテナヤード全体を示した概略図である。
【符号の説明】
【0040】
1 シャトル式門型クレーン(RMT)
71 内側ガーダ
72 外側ガーダ
73 脚部
74 ワイヤ
76 スプレッダ
78 衝突防止センサ
79 走行輪
81 前シーブ
82 後シーブ
83 駆動装置
86 第1ワイヤ
87 第2ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海上輸送用コンテナを荷役するレールマウント式門型クレーンにおいて、下部に走行輪を設けた脚部を両端に固定した外側ガーダの内側に、吊具を装備した横行体が横行可能な内側ガーダを設け、前記内側ガーダを外側ガーダに沿って長手方向に移動可能に構成したことを特徴とするレールマウント式門型クレーン。
【請求項2】
前記横行体に、前記内側ガーダ上を移動するための車輪を設置し、前記吊具を上下させるための巻き上げ装置を設置したことを特徴とする請求項1に記載のレールマウント式門型クレーン。
【請求項3】
前記外側ガーダに沿って移動する前記内側ガーダを移動させる移動装置を、ワイヤロープ、ラックピニオン、スクリュー、又はチェーンのいずれかにより構成したことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のレールマウント式門型クレーン。
【請求項4】
前記内側ガーダに、他のレールマウント式門型クレーン又はその内側ガーダと衝突を回避するための衝突防止センサを設置したことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載のレールマウント式門型クレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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