説明

シャワーヘッド及び衛生設備

【課題】 散水孔から吐水されるシャワー水がシンクに衝突しても騒音が少なく静かなシャワーヘッド及びそのシャワーヘッドを備えた衛生設備を提供する。
【解決手段】 湯水が通過する通水路12aが形成された本体12と、この本体12の底面に装着される散水板14とを備え、散水板14には多数の散水孔18が穿設され、各散水孔18からシンク4に向けてシャワー水が吐水されるシャワーヘッド7において、前記散水板14は周方向に中央部から外周部に向けて多数の散水孔18が等間隔で穿設され、その周方向の一部は各散水孔18の間隔を他の各散水孔18の間隔より広くすることで蓋部19が形成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シャワー水が吐水されるシャワーヘッドと、このシャワーヘッドを備えシンクに向けてシャワー水が吐水される例えば流し台,洗面化粧台等の衛生設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流し台や洗面化粧台等の衛生設備において、例えば流し台のワークトップでは調理等が行なわれ、シンクでは食器等の洗浄作業が行なわれるが、シンクで食器等の洗浄作業を行なう場合に、シンクの後方のカウンターに取り付けられた水栓のシャワーヘッドから、シンクに向けてシャワー水が吐水される。この場合、食器に付着した汚れを素早く洗い流すには、比較的強い水流でシャワー水を吐水させる必要があるが、シャワー水は食器だけでなく、シンクの表面に対し強い水流で衝突し、この衝突で発生する騒音は、室内が静かであるほど耳触りなものであった。
また、例えば流し台で使用されるシャワーヘッドとして公知のものに参考文献1のものがあり、このシャワーヘッド25では図8に示すように、湯水が吐水される散水板26は円盤型であり、散水板26には散水孔27が中央部と外周部との間で全周にわたって等間隔で環状に、多数穿設されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−271034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような特許文献1において、シャワーヘッド25に設けられた散水板26の各散水孔27から吐水されるシャワー水は、シンク28の表面に衝突する際に騒音が発生すると同時に、シンク28の表面から撥ね返ったシャワー水は排水口29へ向けて流れるが、その一部は、散水板26からシンク28の表面に向けて連続的に吐水される環状のシャワー水の内部で逃げ場がなく閉じ込められ、一時的に渦巻きながら滞留した状態となり、その結果として泡30が発生する。この泡30に対し、散水孔27から吐水されるシャワー水が衝突すると、シャワー水がシンク28の表面に衝突する際に発生する騒音に加わることで拡大されてしまい、その騒音は極めて耳触りなものであり、解決策が望まれていた。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その課題は、散水孔から吐水されるシャワー水がシンクに衝突しても騒音が少なく静かなシャワーヘッド及びそのシャワーヘッドを備えた衛生設備を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、湯水が通過する通水路が形成された本体と、この本体の底面に装着される散水板とを備え、散水板には多数の散水孔が穿設され、各散水孔からシンクに向けてシャワー水が吐水されるシャワーヘッドにおいて、前記散水板は周方向に中央部から外周部に向けて多数の散水孔が等間隔で穿設され、その周方向の一部は各散水孔の間隔を他の各散水孔の間隔より広くすることで蓋部が形成されたものである。
【0007】
請求項2に記載の発明では請求項1記載のシャワーヘッドにおいて、前記散水板の蓋部は本体の後部と向かい合う位置に形成されたものである。
【0008】
請求項3に記載の発明では請求項1記載のシャワーヘッドにおいて、前記散水板の蓋部は、シンクに設けられた排水口と向かい合う位置に形成されたものである。
【0009】
請求項4に記載の発明では請求項1記載のシャワーヘッドにおいて、前記散水板の蓋部は複数個形成されたものである。
【0010】
請求項5に記載の発明では、請求項1乃至4の何れかに記載のシャワーヘッドにおいて、前記散水板は、外周部から中央部に向けて下方に突出する円錐状に形成されたものである。
【0011】
請求項6に記載の発明では、キャビネットの上部にカウンターが固定され、カウンターにはシンクが設けられた衛生設備において、請求項1乃至5の何れかに記載のシャワーヘッドをシンクの周囲に備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1では、シャワーヘッドの散水板からシンクの表面に向けてシャワー水が吐水されると、散水板の蓋部からはシャワー水は吐水されず、この蓋部によりシンクの表面に逃がし通路が形成され、シャワー水はシンクの表面で留まることなく逃がし通路から速やかに流れるため、泡の発生及び消滅が防止され、シャワー水のシンクへの衝突時に発生する騒音を低く抑えることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明では、請求項1記載のシャワーヘッドにおいて、前記散水板の蓋部は本体の後部と向かい合う位置に形成されたので、シャワー水はシンクで後方に向けて速やかに流れるため、シャワー水のシンクへの衝突時に発生する騒音を低く抑えることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明では、請求項1記載のシャワーヘッドにおいて、前記散水板の蓋部は、シンクに設けられた排水口と向かい合う位置に形成されたので、シャワー水はシンクの排水口に向けて速やかに排水され、シャワー水のシンクへの衝突時に発生する騒音を低く抑えることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明では、請求項1記載のシャワーヘッドにおいて、前記散水板の蓋部は複数個形成されたので、シャワー水はシンクの表面で留まることなく複数の逃がし通路から速やかに流れるため、泡の発生及び消滅が一層防止され、シャワー水のシンクへの衝突時に発生する騒音を低く抑えることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、前記散水板は、外周部から中央部に向けて下方に突出する円錐状に形成されたので、広がりのあるシャワー水とすることができ、シンクでの食器洗浄時などに使い勝手が良いうえ、シャワー水はシンクの表面に対し傾斜方向に衝突するため、衝突した際に発生する騒音を低減することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、衛生設備は請求項1乃至5の何れかに記載のシャワーヘッドからシャワー水が吐水されるので、シンクから発生する騒音が低く、快適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
流し台、または洗面化粧台からなる衛生設備において、本実施例では流し台1について説明する。図1に示すように流し台1はキャビネット2の上部にカウンター3が固定されたもので、このカウンター3には例えば食器の洗浄作業等を行なうためのシンク4が設けられている。シンク4は上面が開口した箱型で、底面の略中央には排水管(図示省略)と上下方向に連通する排水口5が設けられ、カウンター3の上面でシンク4の後方には、本発明のシャワーヘッド7を備えた水栓6が取り付けられている。水栓6はカウンター3に対し垂直方向に固定される略円筒状の水栓本体8と、この水栓本体8の外周面に回転自在に装着されるホルダー9と、水栓本体8及びホルダー9の上部に装着され湯水の流量と温度とを調節するためのレバー10とを備え、ホルダー9の先端にはシャワーヘッド7が前方に向けて引出し自在に支持されている。そして、水栓本体8の内部には温度調節機構11が収容されており、この温度調節機構11と連繋したレバー10の上下方向への操作で、シャワーヘッド7から吐水される湯水の吐水、止水及び流量が調節され、左右方向への操作で湯水の温度が調節され、流量及び温度が調節された湯水は、シャワーヘッド7からシンク4に向けて吐水されるものである。
【0020】
図2に示すように、前記シャワーヘッド7は合成樹脂材からなり、中空構造である本体12の内部に形成された通水路12aを湯水が通過するもので、本体12の前部にボタン13が装着され、底面に形成された湯水が吐水される開口部には円盤状の散水板14が装着されている。図3に示すようにこの散水板14は平板状で、中央に貫通孔15が穿設され、この貫通孔15にストレート吐水部16が上下に貫通して設けられており、貫通孔15と環状の外周面との間にシャワー吐水部17が形成されている。そして、シャワーヘッド7は前記ボタン13を操作することで、シンク4に向けて吐水される湯水の流路は、ストレート吐水部16とシャワー吐水部17との何れか一方に切り替わり、ストレート吐水部16からは、例えばシンク4で容器に湯水を吐水するのに最適なストレート状の湯水が吐水され、シャワー吐水部17からは、食器等の洗浄を行なうのに最適なシャワー水が吐水されるものである。
【0021】
前記散水板14は、金属材又は合成樹脂材により円盤型で平板状に形成されており、図3に示すように、多数の散水孔18が垂直方向に穿設されている。散水板14は同心円状に等間隔で中央部から外周部に向けて多数の散水孔18が略環状に穿設され、その一部の間隔を他の散水孔18,18同士の間隔より広くして、散水孔が穿設されない蓋部19が形成されている。この蓋部19は本実施例では散水板14のうち、ボタン13が装着されている本体12の前部とは反対側の後部と向かい合う位置に形成されている。このように散水板14は円盤型であるが、その一部に散水孔18が穿設されない蓋部19が形成されることで、図4に示すように散水孔18からシンク4に向けて吐水されるシャワー水は環状とはならず、シャワー水がシンク4に衝突した後に、シンク4の表面を排水口5に向けて流れ落ちるための水の逃がし通路20となる。即ち、散水板14の散水孔18から吐水されるシャワー水は、シンク4の表面に衝突するとシンク4から垂直方向に跳ね返り、この跳ね返ったシャワー水は逃がし通路20へ向けて案内され、この逃がし通路20から排水口5に向けて流れる。従ってシャワー水はシンク4に衝突した状態の後に、シンク4の表面でいつまでも環状のシャワー水の内部で停留することがなく、逃がし通路20から排水口5に向けて速やかに流れ落ちるため、シンク4の表面で騒音の原因となる泡が発生及び消滅することがなく、シャワー水がシンク4に衝突した際に発生する騒音を低減することができる。
【0022】
なお、シャワーヘッドの散水孔から吐水されるシャワー水がシンクの表面に衝突する角度は、垂直とすると水跳ねが大きく、衝突時の騒音は大きくなり、シャワー水がシンクの表面に衝突する角度を傾斜させると水跳ねは小さくなり、衝突時の騒音は低くなるため、シャワーヘッドから吐水されるシャワー水がシンクに対し垂直とならないように、シャワーヘッドを水栓のホルダーに支持したり、又はシンクの底面を水平でなく奥行き方向又は手前方向に向けて傾斜させることが望ましい。
【0023】
このように本実施例のシャワーヘッドは、散水板の一部に、散水孔が穿設されない蓋部を設け、この部分をシンクでシャワー水が吐水されない逃がし通路としたことで、シャワー水がシンクの表面に衝突した際に、その表面で滞留することなく速やかに排水口へ流れ落ちることで消音効果を高め、シンクに衝突したシャワー水は速やかに排水口へ流れ、いつまでもシンクの上で停留することがないので、シャワー水のシンクへの衝突時に発生する騒音を低く抑えることができる。
【実施例2】
【0024】
次に実施例2のシャワーヘッドを図5に基づいて説明する。なお、実施例2のシャワーヘッドは実施例1とは散水板の形状が異なり、この散水板についてのみ説明する。
実施例1の散水板は平板状であり、散水孔からはシャワー水が垂直方向に吐水されるものであったが、この実施例2のシャワーヘッドにおいては、散水板14aはシャワー吐水部17aが外周部から中央部に向けて下方に突出する円錐状に形成されたものである。また、シャワー吐水部17aの一部には蓋部19aが形成されているが、散水孔18aは散水板14aに対して垂直方向に穿設されているため、シャワー水はシンクへ向けて垂直方向ではなく、中央部分より外側へ向けて傾斜方向へ吐水されるものである。
【0025】
このように散水板は外周部から中央部に向けて下方に突出する円錐状に形成することで、シャワー水はシンクへ向けて傾斜方向へ吐水され、広がりのあるシャワー水とすることができ、シンクでの食器洗浄時などに使い勝手が良いうえ、シャワー水はシンクの表面に対し傾斜方向に衝突するため、衝突した際に発生する騒音を低く抑えることができる。
【実施例3】
【0026】
次に実施例3のシャワーヘッドを図6及び図7に基づいて説明する。なお、実施例3のシャワーヘッドは散水板に複数個の蓋部が形成されたものであり、この点で実施例1と異なる。
【0027】
前記散水板14bは、金属材又は合成樹脂材により円盤型で平板状に形成されており、図6に示すように、多数の散水孔18bが垂直方向に穿設されている。散水板14bは同心円状に多数の散水孔18bが略環状に穿設され、その一部の間隔を他の散水孔18b,18b同士の間隔より広くして、散水孔18bが穿設されない複数個(本実施例では3個)の蓋部19bが形成されている。
【0028】
このように散水板14bは円盤型であるが、その一部に散水孔18bが穿設されない蓋部19bが複数個形成されることで、図7に示すように散水孔18bからシンク4に向けて吐水されるシャワー水は環状とはならず、シャワー水がシンク4に衝突した後に、シンク4の表面を排水口5に向けて流れ落ちるための水の逃がし通路20aとなる。即ち、散水板14bの散水孔18bから吐水されるシャワー水は、シンク4の表面に衝突するとシンク4から垂直方向に跳ね返り、この跳ね返ったシャワー水は複数の逃がし通路20a,20a,20aへ向けて案内され、この逃がし通路20a,20a,20aから排水口5に向けて流れる。従ってシャワー水はシンク4に衝突した状態の後に、シンク4の表面でいつまでも環状のシャワー水の内部で停留することがなく、複数の逃がし通路20a,20a,20aから排水口5に向けて速やかに流れ落ちるため、シンク4の表面で騒音の原因となる泡が発生及び消滅することがなく、シャワー水がシンク4に衝突した際に発生する騒音を一層低減することができる。なお、実施例3のシャワーヘッドにおいても実施例2のシャワーヘッドのように、散水板を外周部から中央部に向けて下方に突出する円錐状に形成してもよい。
【0029】
なお、この出願の発明は、以上の実施形態によって限定されるものではなく、散水板の散水孔の形状、配置、シャワーヘッドの構成等については様様な態様が可能である。水栓本体はシングルレバー式について説明したが、2ハンドル式、ミキシング式、サーモスタット式であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のシャワーヘッドを備えた水栓が流し台のカウンターに取り付けられた状態を示す説明図である。
【図2】シャワーヘッドの斜視図である。
【図3】シャワーヘッドの散水板の斜視図である。
【図4】シャワー水がシンクの表面に衝突した状態の説明図である。
【図5】実施例2のシャワーヘッドの説明図で、散水板の断面図である。
【図6】実施例3におけるシャワーヘッドの斜視図である。
【図7】実施例3において、シャワー水がシンクの表面に衝突した状態の説明図である。
【図8】従来のシャワーヘッドにおいて、シャワー水がシンクの表面に衝突した状態の説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 :衛生設備
4 :シンク
5 :排水口
12 :本体
12a:通水路
14 :散水板
18 :散水孔
19 :蓋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水が通過する通水路が形成された本体と、この本体の底面に装着される散水板とを備え、散水板には多数の散水孔が穿設され、各散水孔からシンクに向けてシャワー水が吐水されるシャワーヘッドにおいて、前記散水板は周方向に中央部から外周部に向けて多数の散水孔が等間隔で穿設され、その周方向の一部は各散水孔の間隔を他の各散水孔の間隔より広くすることで蓋部が形成されたことを特徴とするシャワーヘッド。
【請求項2】
前記散水板の蓋部は、本体の後部と向かい合う位置に形成されたことを特徴とする請求項1記載のシャワーヘッド。
【請求項3】
前記散水板の蓋部は、シンクに設けられた排水口と向かい合う位置に形成されたことを特徴とする請求項1記載のシャワーヘッド。
【請求項4】
前記散水板の蓋部は複数個形成されたことを特徴とする請求項1記載のシャワーヘッド。
【請求項5】
前記散水板は、外周部から中央部に向けて下方に突出する円錐状に形成されたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のシャワーヘッド。
【請求項6】
キャビネットの上部にカウンターが固定され、カウンターにはシンクが設けられた衛生設備において、請求項1乃至5の何れかに記載のシャワーヘッドをシンクの周囲に備えたことを特徴とする衛生設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−112209(P2006−112209A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335810(P2004−335810)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000141451)株式会社喜多村合金製作所 (65)
【Fターム(参考)】