説明

シャント抵抗式電流センサ

【課題】被測定電流に検出精度を一層向上させることが可能なシャント抵抗式電流センサを提供する。
【解決手段】シャント抵抗式電流センサ1は、導電部材からなるバスバ10と、バスバ10上に設置された回路基板20と、回路基板20上に設置され、バスバ10に流れる被測定電流の大きさを検出するために回路基板20に印加される電圧値を検出する電圧検出IC30と、を備え、回路基板20は、バスバ10に流れる被測定電流により生じる磁界によって発生する誘導電流を打ち消す補正回路パターン22が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャント抵抗式電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルス電流や交流大電流等を測定するため、抵抗値が既知なシャント抵抗に被測定電流を流し、このシャント抵抗に生じる電圧降下を測定するシャント抵抗式電流センサが提案されている。このようなシャント抵抗式電流センサは、高周波電流等を測定しようとするとインダクタンス成分が生じ、被測定電流に誤差が生じてしまう。
【0003】
そこで、インダクタンス成分を少なくしたシャント抵抗式電流センサが提案されている。このシャント抵抗式電流センサは、抵抗体と固定端子板との間隔を狭くすることでインダクタンス成分を低減して被測定電流の検出誤差を小さくするようにしている(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−319501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のシャント抵抗式電流センサは、抵抗体と固定端子板との間隔が存在するため、インダクタンス成分が少なからず残り、被測定電流に検出誤差が生じてしまう。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、被測定電流に検出精度を一層向上させることが可能なシャント抵抗式電流センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシャント抵抗式電流センサは、導電部材からなるバスバと、バスバ上に設置された回路基板と、回路基板上に設置され、バスバに流れる被測定電流の大きさを検出するために回路基板に印加される電圧値を検出する電圧検出手段と、を備え、回路基板は、バスバに流れる被測定電流により生じる磁界によって発生する誘導電流を打ち消す補正回路パターンが形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明のシャント抵抗式電流センサによれば、回路基板は、バスバに流れる被測定電流により生じる磁界によって発生する誘導電流を打ち消す補正回路パターンが形成されている。このため、誘導電流による検出誤差が発生しないこととなり、被測定電流に検出精度を一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被測定電流に検出精度を一層向上させることが可能なシャント抵抗式電流センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るシャント抵抗式電流センサを示す上面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るシャント抵抗式電流センサを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るシャント抵抗式電流センサを示す上面図であり、図2は、本発明の実施形態に係るシャント抵抗式電流センサを示す側面図である。なお、これらの図では説明の便宜上、磁束についても図示している。
【0012】
同図に示すように、シャント抵抗式電流センサ1は、バスバ10と、回路基板20と、電圧検出IC(電圧検出手段)30と、接続部40とを備えている。
【0013】
バスバ10は、平板形状の導電部材であって、例えば銅マンガン合金や銅ニッケル合金などにより構成されている。このバスバ10は、平板形状の鋼材からプレス成形により所望の形状に形成される。また、バスバ10はシャント抵抗の役割を果たし、被測定電流が流れるようになっている。なお、本実施形態においてバスバ10は平板形状であるが、これに限らず、特許文献1のように湾曲する形状等であってもよい。
【0014】
回路基板20は、所定の回路パターン21を有し、バスバ10上に設置されて回路パターン21に被測定電流の一部が流れる構成となっている。また、回路基板20は、2つの接続部40を介してバスバ10と電気接続されている。
【0015】
電圧検出IC30は、回路基板20の回路パターン21上に設置され、バスバ10に流れる被測定電流の大きさを検出するために回路パターン21に印加される電圧値を検出するものである。この電圧検出IC30による電圧値の検出により、バスバ10に生じる電圧降下が測定される。
【0016】
ここで、シャント抵抗式電流センサ1では被測定電流が流れることにより、図示のように磁束が発生して誘導電流が流れてしまう。すなわち、図2から明らかなようにバスバ10、回路基板20の回路パターン21、及び接続部40により閉回路(コイル)が形成され、この閉回路に誘導電流が流れてしまう。これにより、被測定電流の検出精度が悪化してしまう。
【0017】
そこで、本実施形態に係るシャント抵抗式電流センサ1は、補正回路パターン22を備えている。補正回路パターン22は回路基板20上に形成されている。この補正回路パターン22は、被測定電流の入力側の接続部40と電圧検出IC30との間の点Aにおいて回路パターン21から分岐され、被測定電流の出力側の接続部40と電圧検出IC30との間の点Bにおいて回路パターン21に接続される。すなわち、補正回路パターン22は、電圧検出IC30を迂回するように回路基板20に形成されている。
【0018】
なお、補正回路パターン22は、被測定電流が流れることにより発生する磁束を打ち消す磁束量となるように形状等が設定されている。また、回路基板20には図示するもののほか、電源回路や演算処理部等が設けられていてもよい。
【0019】
次に、本実施形態に係るシャント抵抗式電流センサ1の作用を説明する。まず、被測定電流が流れたとする。これにより、磁束が発生して図2に示すような誘導電流が発生する。
【0020】
一方、被測定電流の一部は接続部40を通じて回路基板20に流れ、入力側の回路パターン21を通じて電圧検出IC30に至り、出力側の回路パターン21及び接続部40を通じてバスバ10に至る。そして、電圧検出IC30は、回路パターン21に印加される電圧値を検出する。
【0021】
ここで、被測定電流が流れることにより磁束が発生する。このため、補正回路パターン22がコイルの役割を果たし、図2に示した誘導電流を打ち消すように誘導電流が発生する。よって、補正回路パターン22の形状等を所定のものとしておけば、図2に示した誘導電流を打ち消すだけの誘導電流を補正回路パターン22により発生させることができる。故に、電圧検出IC30による電圧の測定精度を高めることができ、被測定電流に検出精度を一層向上させることができる。
【0022】
このようにして、本実施形態に係るシャント抵抗式電流センサ1によれば、回路基板20は、バスバ10に流れる被測定電流により生じる磁界によって発生する誘導電流を打ち消す補正回路パターン22が形成されている。このため、誘導電流による検出誤差が発生しないこととなり、被測定電流に検出精度を一層向上させることができる。
【0023】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0024】
例えば、本実施形態に係るシャント抵抗式電流センサ1において、補正回路パターン22は、図1に示すように四角形状となっているが、これに限らず、円形などの他の形状であってもよい。また、位置についても図1に示すものに限られるものではない。加えて、補正回路パターン22のみが形成された回路基板を有し、この基板と電圧検出IC30が搭載される回路基板20とが電気接続されるようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1…シャント抵抗式電流センサ
10…バスバ
20…回路基板
21…回路パターン
22…補正回路パターン
30…電圧検出IC(電圧検出手段)
40…接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電部材からなるバスバと、
前記バスバ上に設置された回路基板と、
前記回路基板上に設置され、前記バスバに流れる被測定電流の大きさを検出するために回路基板に印加される電圧値を検出する電圧検出手段と、を備え、
前記回路基板は、前記バスバに流れる被測定電流により生じる磁界によって発生する誘導電流を打ち消す補正回路パターンが形成されている
ことを特徴とするシャント抵抗式電流センサ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−220248(P2012−220248A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83704(P2011−83704)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】