説明

シャント抵抗式電流センサ

【課題】被測定電流の検出精度を一層向上させることが可能なシャント抵抗式電流センサを提供する。
【解決手段】シャント抵抗式電流センサ1は、導電部材からなるバスバ10と、バスバ10上に設置された回路基板20と、回路基板20上に設置され、バスバ10に流れる被測定電流の大きさを検出するために回路基板20に印加される電圧値を検出する電圧検出IC30と、回路基板20上に形成され、バスバ10に流れる被測定電流により生じる磁界によって発生する誘導電流を打ち消す補正回路パターン40とを備えている。また、補正回路パターン40は、回路基板20の表裏に形成された回路パターン41と、表裏に形成された回路パターン41を電気的に接続するスルーホール42とからなり、回路パターン41がスルーホール42に接続されることにより回路基板20の表裏に亘るコイルを形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャント抵抗式電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルス電流や交流大電流等を測定するため、抵抗値が既知なシャント抵抗に被測定電流を流し、このシャント抵抗に生じる電圧降下を測定するシャント抵抗式電流センサが提案されている。このようなシャント抵抗式電流センサは、高周波電流等を測定しようとするとインダクタンス成分が生じ、被測定電流に誤差が生じてしまう。
【0003】
そこで、インダクタンス成分を少なくしたシャント抵抗式電流センサが提案されている。このシャント抵抗式電流センサは、抵抗体と固定端子板との間隔を狭くすることでインダクタンス成分を低減して被測定電流の検出誤差を小さくするようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−319501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のシャント抵抗式電流センサは、抵抗体と固定端子板との間隔が存在するため、インダクタンス成分が少なからず残り、被測定電流に検出誤差が生じてしまう。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、被測定電流の検出精度を一層向上させることが可能なシャント抵抗式電流センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシャント抵抗式電流センサは、導電部材からなるバスバと、バスバ上に設置され、バスバに対して電気的に並列接続される電圧検出用回路パターンが形成された回路基板と、回路基板の電圧検出用回路パターン上に設置され、バスバに流れる被測定電流の大きさを検出するために電圧検出用回路パターンに印加される電圧値を検出する電圧検出手段と、回路基板上に形成され、バスバに流れる被測定電流により生じる磁界によって発生する誘導電流を打ち消す補正回路パターンと、を備え、補正回路パターンは、回路基板の表裏に形成された回路パターンと、表裏に形成された回路パターンを電気的に接続する導電部とからなり、回路パターンが導電部に接続されることにより回路基板の表裏に亘るコイルを形成していることを特徴とする。
【0008】
本発明のシャント抵抗式電流センサによれば、バスバに流れる被測定電流により生じる磁界によって発生する誘導電流を打ち消す補正回路パターンを備え、この補正回路パターンは、回路基板の表裏に亘るコイルを形成している。このため、被検出電流が高周波になった場合でも、誘導電流による検出誤差が発生し難くなり、被測定電流の検出精度を一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被測定電流の検出精度を一層向上させることが可能なシャント抵抗式電流センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るシャント抵抗式電流センサを示す上面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るシャント抵抗式電流センサを示す側面図である。
【図3】本実施形態に係るシャント抵抗式電流センサを示す裏面図である。
【図4】本実施形態に係るシャント抵抗式電流センサの補正回路パターンを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るシャント抵抗式電流センサを示す上面図であり、図2は、本発明の実施形態に係るシャント抵抗式電流センサを示す側面図である。なお、図2では説明の便宜上、磁束についても図示している。
【0012】
同図に示すように、シャント抵抗式電流センサ1は、バスバ10と、回路基板20と、電圧検出IC(電圧検出手段)30と、接続部50とを備えている。
【0013】
バスバ10は、平板形状の導電部材であって、例えば銅マンガン合金や銅ニッケル合金などにより構成されている。このバスバ10は、平板形状の鋼材からプレス成形により所望の形状に形成される。また、バスバ10はシャント抵抗の役割を果たし、被測定電流が流れるようになっている。なお、本実施形態においてバスバ10は平板形状であるが、これに限らず、特許文献1のように湾曲する形状等であってもよい。
【0014】
回路基板20は、バスバ10上に設置されるものであり、電圧検出用回路パターン21が形成されている。電圧検出用回路パターン21は、2つの接続部50を介してバスバ10と電気的に並列接続されており、被測定電流の一部が流れる構成となっている。
【0015】
電圧検出IC30は、回路基板20の電圧検出用回路パターン21上に設置され、バスバ10に流れる被測定電流の大きさを検出するために電圧検出用回路パターン21に印加される電圧値を検出するものである。この電圧検出IC30による電圧値の検出により、バスバ10に生じる電圧降下が測定される。
【0016】
ここで、シャント抵抗式電流センサ1では被測定電流が流れることにより、図2に示すように磁束が発生して誘導電流が流れてしまう。すなわち、図2から明らかなようにバスバ10、回路基板20の電圧検出用回路パターン21、及び接続部50により閉回路(コイル)が形成され、この閉回路に誘導電流が流れてしまう。これにより、被測定電流の検出精度が悪化してしまう。
【0017】
そこで、本実施形態に係るシャント抵抗式電流センサ1は、補正回路パターン40を備えている。図3は、本実施形態に係るシャント抵抗式電流センサ1を示す裏面図であり、図4は、本実施形態に係るシャント抵抗式電流センサ1の補正回路パターン40を示す斜視図である。なお、図4では、便宜上、回路基板20と補正回路パターン40のみを図示するものとする。
【0018】
図1、図3及び図4に示すように、補正回路パターン40は回路基板20上に形成されている。この補正回路パターン40は、回路基板20の表裏に形成された回路パターン41と、表裏に形成された回路パターン41を電気的に接続するスルーホール(導電部)42とを備えている。
【0019】
具体的に本実施形態において、回路パターン41は、第1〜第5回路パターン41a〜41eからなり、スルーホール42は、第1〜第4スルーホール42a〜42dからなる。
【0020】
第1回路パターン41aは、被測定電流の入力側の接続部50と電圧検出IC30との間の点Aにおいて電圧検出用回路パターン21から分岐されて形成されており、分岐後、被測定電流の流れ方向に沿って延び、第1スルーホール42aに至る。
【0021】
第1スルーホール42aは、回路基板20の裏面まで延びており、裏面側において第2回路パターン41bに接続されている。第2回路パターン41bは、回路基板20の裏面側において被測定電流の流れ方向を逆方向に延びており、第2スルーホール42bに至る。第2スルーホール42bは、回路基板20の表面まで延びており、表面側において第3回路パターン41cに接続されている。
【0022】
第3回路パターン41cは、回路基板20の表面側において被測定電流の流れ方向に沿って延びており、第3スルーホール42cに至る。第3スルーホール42cは、第1スルーホール42aと同様に、回路基板20の裏面まで延びており、裏面側において第4回路パターン41dに接続されている。
【0023】
第4回路パターン41dは、第2回路パターン41bと同様に、回路基板20の裏面側において被測定電流の流れ方向を逆方向に延びており、第4スルーホール42dに至る。第4スルーホール42dは、第2スルーホール42bと同様に、回路基板20の表面まで延びており、表面側において第5回路パターン41eに接続されている。
【0024】
第5回路パターン41eは、回路基板20の表面側において被測定電流の流れ方向に沿って延びており、且つ、被測定電流の出力側の接続部50と電圧検出IC30との間の点Bにおいて電圧検出用回路パターン21に接続されている。
【0025】
以上のように、補正回路パターン40は、回路パターン41がスルーホール42に接続されることにより回路基板20の表裏に亘るコイルを形成することとなる。また、補正回路パターン40は、被測定電流の流れる方向に直行する方向に伸びるコイルとなっている。よって、被測定電流が流れたことにより発生する磁束を打ち消すこととなる。具体的に補正回路パターン40には、図1、図3及び図4の矢印に示すように誘導電流が流れることとなり、図2に示した磁束を打ち消す磁束を発生させることとなる。よって、本実施形態に係るシャント抵抗式電流センサ1は、被検出電流が高周波になった場合でも、誘導電流による検出誤差が発生し難くなり、被測定電流の検出精度を一層向上させることができる。
【0026】
なお、補正回路パターン40は、被測定電流が流れることにより発生する磁束を打ち消す磁束量となるように形状等が設定されている。また、回路基板20には図示するもののほか、電源回路や演算処理部等が設けられていてもよい。
【0027】
次に、本実施形態に係るシャント抵抗式電流センサ1の作用を説明する。まず、被測定電流が流れたとする。これにより、磁束が発生して図2に示すような誘導電流が発生する。
【0028】
一方、被測定電流の一部は接続部50を通じて回路基板20に流れ、入力側の電圧検出用回路パターン21を通じて電圧検出IC30に至り、出力側の電圧検出用回路パターン21及び接続部50を通じてバスバ10に至る。そして、電圧検出IC30は、電圧検出用回路パターン21に印加される電圧値を検出する。
【0029】
ここで、被測定電流が流れることにより補正回路パターン40にも電流が流れて、図2に示した誘導電流を打ち消すように誘導電流が発生する。よって、補正回路パターン40の形状等を所定のものとしておけば、図2に示した誘導電流を打ち消すだけの誘導電流を補正回路パターン40により発生させることができる。故に、電圧検出IC30による電圧の測定精度を高めることができ、被測定電流の検出精度を一層向上させることができる。
【0030】
このようにして、本実施形態に係るシャント抵抗式電流センサ1によれば、バスバ10に流れる被測定電流により生じる磁界によって発生する誘導電流を打ち消す補正回路パターン40を備え、この補正回路パターン40は、回路基板20の表裏に亘るコイルを形成している。このため、被検出電流が高周波になった場合でも、誘導電流による検出誤差が発生し難くなり、被測定電流の検出精度を一層向上させることができる。
【0031】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0032】
例えば、本実施形態に係るシャント抵抗式電流センサ1において、補正回路パターン40のコイル巻き数は適宜変更可能である。また、位置についても図に示すものに限られるものではない。加えて、補正回路パターン40のみが形成された回路基板を有し、この基板と電圧検出IC30が搭載される回路基板20とが電気接続されるようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…シャント抵抗式電流センサ
10…バスバ
20…回路基板
21…電圧検出用回路パターン
30…電圧検出IC(電圧検出手段)
40…補正回路パターン
41…回路パターン
42…スルーホール(接続部)
50…接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電部材からなるバスバと、
前記バスバ上に設置され、前記バスバに対して電気的に並列接続される電圧検出用回路パターンが形成された回路基板と、
前記回路基板の前記電圧検出用回路パターン上に設置され、前記バスバに流れる被測定電流の大きさを検出するために前記電圧検出用回路パターンに印加される電圧値を検出する電圧検出手段と、
前記回路基板上に形成され、前記バスバに流れる被測定電流により生じる磁界によって発生する誘導電流を打ち消す補正回路パターンと、を備え、
前記補正回路パターンは、前記回路基板の表裏に形成された回路パターンと、表裏に形成された前記回路パターンを電気的に接続する導電部とからなり、前記回路パターンが前記導電部に接続されることにより前記回路基板の表裏に亘るコイルを形成している
ことを特徴とするシャント抵抗式電流センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−44541(P2013−44541A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180281(P2011−180281)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】