説明

シャーベット氷製造機

【課題】 簡単な構成で、蓋部材内側における氷結塊の発生を防止でき、氷生成面に不均一に発生する氷及び/又は塩分濃度2%以下における硬氷の掻き取りが可能であり、冷凍機油の油戻しに充分な冷媒流速を得ることが可能であるシャーベット氷製造機の提供。
【解決手段】 ブライン又は清水を内部に供給する供給部及び生成された氷を排出する排出部を備える内管と、内管外周面との間に冷媒流路となる空間を有して内管の外周面を覆う外管と、内管内部に回転可能に配設された回転部材と、回転部材外周面から半径方向に突出する掻き取り部と、内管両端を閉塞する蓋部材とを備え、掻き取り部がスクレーパを備えると共にスクレーパ端部が内管両端部に至るように配設され、スクレーパが、内管内面に対し所定量の間隙を有すると共に内管の接線に対し所定角度の傾斜角を有して設けられ且つ所定角度の先端角を有し、蓋部材が断熱/加熱されているシャーベット氷製造機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシャーベット氷製造機に関し、より詳しくは、海水等のブライン又は清水を原料として、微細な氷粒子からなるシャーベット状の氷を製造することができるシャーベット氷製造機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
魚の鮮度を長期間に亘り保持するためには、魚体の保存温度の管理と浸透圧による塩分流出入を防ぐ必要がある。
従来用いられている魚の鮮度保持の方法としては、例えば、漁船の船倉内の海水に塊状の真水氷を大量に投入し、魚を保存するというものがある。しかしながら、この氷は融けると真水であるため、時間の経過と共に船倉内における海水中の塩分濃度の変化や低下により、魚の鮮度が著しく落ちてしまうという問題がある。
また、塊氷によって魚体に傷が付くことも懸念される。
【0003】
これに対する方策として、海水等のブラインからシャーベット状の氷を製造する技術が存在する。
海水等のブラインを製氷する技術としては、スタティック氷製造方式とダイナミック氷製造方式とに大別することができる。
スタティック氷製造方式はブラインを容器に入れ、それを間接的に冷却して塊状の氷をつくる方式であるが、これはバッチ方式であり、しかも塊氷を粉砕する工程を別途必要とするため、経済的に不向きである。
ダイナミック氷製造方式はブラインを振動させながら凍結するもので、直接熱交換法と間接熱交換法が存在する。
【0004】
直接熱交換法は、ブラインと冷媒を直接混合し、氷を生成させた後、氷と冷媒とを分離させる方法である。しかし、この方法は、冷媒が水産物へ混入するため、人体への悪影響が懸念されるという問題がある。
また、間接熱交換法としては、掻き取り法、熱媒剥離法(ハーベスト法)、過冷却法を挙げることができる。
【0005】
掻き取り法は、円筒型の製氷板の外面に冷媒管を設置し、平滑な内面へ上部からブラインを膜状に流し、このブライン液膜を流下する間に凍結させ氷を生成し、生成した氷を回転羽根板によって掻き取る方法及び冷媒によって外部から冷却される円筒管の内壁面にできる氷の層を、羽根を持つオーガと呼ばれるスクリューで掻き取り、氷を上方へ取り出す方法である。
熱媒剥離法は、冷媒によって冷却された平面状の製氷板を縦向き、もしくは傾斜させて設置し、製氷板の上部からブラインを流し、製氷板上に氷を生成し、生成した氷を製氷板上から剥離させるために、冷媒と熱媒を交互に流す方法である。
過冷却法はブラインを氷点以下の温度領域まで過冷却し、過冷却状態にあるブラインを機械的、または氷結晶を投入することによって、人工的に過冷却状態を解消する方法である。
しかしながら、熱媒剥離法及び過冷却法は製氷操作の制御が複雑になるという問題があることから、装置の運転操作が容易であり、経済性もある掻き取り法が製氷機として好ましい。
【0006】
掻き取り法を用いた製氷機として、例えば、特許文献1に開示された製氷機が存在している。この特許文献1に開示された製氷機は、内管と外管の二重管構造であり、内管と外管との間に設けられた環状空間内に冷媒を流通させ、内管内部に供給された海水等のブラインを冷却し、内管内面に氷が生成されると同時に内管内部に設けられた回転部材によって、ブライン及び氷を攪拌することにより、氷結晶をブライン内に遊離させシャーベット状の氷を生成することができる。
しかしながら、このような製氷方式では、内管内面における氷結晶の剥離及び、シャーベット状の氷の排出を円滑に行わねばならないため、一定流量のブラインを送り込むための循環回路と、製氷機内で生成されたシャーベット氷とブラインとを順次入れ替えるための制御システムを必要とし、製氷装置全体の規模が大きくなり、制御が複雑になるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2には、内管と外管によって形成される環状空間内に冷媒を流通させ内管内面、即ち氷生成面を冷却し、供給口より内管内部に海水等のブラインを供給し、氷生成面にて生成された氷を、内管内部に配設された回転部材より突出する掻き取り刃で掻き取り、微細な氷粒子からなるシャーベット状の氷を排出口より取り出すように構成されている製氷機が開示されている。
しかし、この製氷機において回転部材より突出する掻き取り刃は、内管内壁に当接するように構成されているため、氷掻き取り時において氷生成面に不均一に氷が発生する際、掻き取り刃が上下に振動してしまい、大きな音が発生すると共に、スクレーパの支持部位が早期に折損してしまうという問題がある。
【0008】
また、一般的に、従来の製氷機においては、内管の両端を閉塞する蓋部材は、ステンレス鋼等の金属材料を使用していたため、蓋の内側に氷結塊が生じ、掻き取りが困難になると共に、供給口及び排出口が氷詰まりを起こすという問題があった。
【0009】
また、上述した如く、魚の鮮度を長期に亘り保持するためには、魚体の温度管理も重要であり、魚の細胞が氷結しない0〜−1.5℃程度の温度が好適である。これを海水等のブラインを用いたシャーベット氷で実現するためには、低塩分濃度での製氷、例えば、塩分濃度2%以下における製氷が必要となる。しかし、塩分濃度2%以下においては硬い氷が生成されるため、従来の製氷機で掻き取ることは困難であった。そこで、従来の製氷機を用いた製氷作業では、塩分濃度3%程度のブラインを用いてシャーベット氷を生成した後、生成されたシャーベット氷に真水を加えて希釈し、塩分濃度を下げるという手法を用いていたゆえ、極めて効率が悪かった。
また、上記した蓋の内側に生じる氷結塊は、このような低塩分濃度での製氷においては特に顕著に生じ、製氷機が過負荷状態となり停止することがあった。
【0010】
更に、冷媒冷却方式を直膨乾式で行う際に必要となる冷媒に溶け込んだ冷凍機油の油戻しにおいて、冷媒は環状空間を流通するため、冷媒流路の断面積が大きくなり、油戻しに必要なだけの冷媒流速を得る事が出来なかった。
【0011】
【特許文献1】特開2005−003231号公報
【特許文献2】特開2003−042611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであって、構成が簡単であり、蓋部材内側における氷結塊の発生を防止でき、また、氷生成面において不均一に発生する氷及び/又は塩分濃度2%以下において生成される硬氷の掻き取りが可能であり、加えて、冷凍機油の油戻しに充分な冷媒流速を得ることが可能であるシャーベット氷製造機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は、海水等のブライン又は清水を内部に供給するための供給部及び生成された氷を排出するための排出部を備える内管と、該内管の外周面との間に冷媒流路となる空間を有して前記内管の外周面を覆う外管と、前記内管内部に回転可能に配設された回転部材と、該回転部材の外周面から半径方向に突出する掻き取り部と、前記内管の両端を閉塞する蓋部材とを具備してなり、前記掻き取り部がスクレーパを備えると共に該スクレーパ端部が前記内管両端部に至るように配設されており、前記スクレーパが、前記内管内面に対して所定量の間隙を有すると共に前記内管の接線に対して所定角度の傾斜角を有して設けられ、且つ所定角度の先端角を有してなり、前記蓋部材が断熱もしくは加熱されていることを特徴とするシャーベット氷製造機に関する。
【0014】
請求項2に係る発明は、前記間隙が0.1〜3mmであり、前記傾斜角が5〜60°であり、前記先端角が鋭角であることを特徴とする請求項1記載のシャーベット氷製造機に関する。
【0015】
請求項3に係る発明は、前記蓋部材がポリプロピレン等の合成樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2記載のシャーベット氷製造機に関する
【0016】
請求項4に係る発明は、前記冷媒流路内において、半環形状の頂部に半円形状の切欠きを有する邪魔板が配設されており、該邪魔板は、前記回転部材の中心軸に対して直交する方向に配設され、且つ該中心軸方向に沿って、所定の間隔をもって180°ずつ位相を変化させながら複数枚配設されてなることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のシャーベット氷製造機に関する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、スクレーパ端部が前記内管両端部に至るように配設されていることにより、蓋部材内壁に生成される氷を確実に掻き取ると共に、供給部及び排出部における氷詰まりを防止することが可能となる。
また、スクレーパが、前記内管内面に対して所定量の間隙を有すると共に前記内管の接線に対して所定角度の傾斜角を有して設けられ、且つ所定角度の先端角を有してなることにより、従来の製氷機のように内管内面に対してスクレーパが接触しないため、内管内面に発生する氷の膜を全て掻き取ることなく、この氷の膜の表面部分のみを掻き取ることが可能となる。これにより内管内面とスクレーパとの摩擦力増大による電動機の容量不足を回避し、効率良い掻き取りを行うことができる。また、スクレーパは氷にのみ接触するので、部品の磨耗が少なく、メンテナンス性にも優れたものとなる。更に、製氷性能としては、塩分濃度2%以下の硬氷に加え、真水氷であっても掻き取ることができる。これにより、魚の保存に好適なシャーベット氷を生成することができ、加えて、真水シャーベット氷も生成可能であるため、水産物以外のもの、例えば、野菜や果物の鮮度保持にも好適に応用することが可能となる。
更に、前記蓋部材が断熱もしくは加熱されていることにより、当該蓋部材の内壁における氷結塊の発生を防ぐことが可能となる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、スクレーパと内管内面との間隙が0.1〜3mmであることにより、シャーベット氷の生成をより効率良く行うことが可能となる。
また、スクレーパの内管の接線に対する傾斜角が5〜60°及びスクレーパの先端角が鋭角であることにより、スクレーパの磨耗を抑えて、効率良く氷を掻き取ることが可能となる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、蓋部材の材質をポリプロピレン等の合成樹脂にすることにより、熱伝導率が極めて小さくなり、蓋の内側における氷結を防ぐことが可能となる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、冷媒流路内において、半環形状の頂部に半円形状の切欠きを有する邪魔板が配設されており、該邪魔板は、回転部材の中心軸に対して直交する方向に配設され、且つ該中心軸方向に沿って、所定の間隔をもって180°ずつ位相を変化させながら複数枚配設されてなることにより、前記冷媒流路の入口から出口までの距離が延長され、伝熱面の熱交換効率を良くすることが可能となる。また、前記冷媒流路の断面積が小さくなり、その結果として、冷媒流速が速くなることで、確実且つ円滑に油戻しを行うことが可能となる。更に、冷媒流れを均一にする効果も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係るシャーベット氷製造機の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係るシャーベット氷製造機の一実施形態を示す断面図である。
尚、本明細書におけるブラインとは、広く不凍液のことを意味しており、海水はもちろん人工海水や希釈された海水も当然含まれる。
【0022】
本発明に係るシャーベット氷製造機(S)は、内管(1)と、内管(1)の外周面との間に冷媒流路(3)となる空間を有して内管(1)の外周面を覆う外管(2)と、内管(1)の内部に回転可能に配設された回転部材(4)と、回転部材(4)の外周面から半径方向に突出する掻き取り部(5)と、内管(1)の両端を閉塞する蓋部材(6)とから構成されている。
このシャーベット氷製造機(S)は、一方の蓋部材(6)端面にボルト等の固定部材(71)で固定された設置用部材(7)によって軸を縦向き(垂直方向)にして支持されている。
【0023】
内管(1)は円筒状体であって、その内部に海水等のブライン(以下、ブラインと称する)又は清水を収容して凍らせるための空間を有している。
内管(1)の下端左部にはブライン又は清水を内部に供給するための供給部(1a)が、内管(1)の上端右部には生成されたシャーベット氷を排出するための排出部(1b)が、夫々蓋部材(6)を介して接続されている。
また、回転部材(4)は、内管(1)内部において内管の中心軸と略同軸に配設された所謂回転軸であり、その外周面には掻き取り部(5)が半径方向に突出するようにして配設されている。
回転部材(4)は、蓋部材(6)の内部においてベアリングによって支持され、且つ、その上端側にカップリング(81)を介してモータ等の電動機(8)が配設されて構成されており、円滑な回転動作を可能としている。
【0024】
冷媒流路(3)の右部下端寄りの位置には冷媒入口(31)が、左部上端寄りには冷媒出口(32)が夫々設けられており、冷媒は、冷媒入口(31)より供給され冷媒流路(3)を通過し、冷媒出口(32)より排出されるという工程を繰り返す。こうして冷媒が冷媒流路(3)を循環することにより、内管(1)内部のブライン又は清水が冷却され、内管(1)の内面に氷が生成することとなる。
また、冷媒流路(3)には、邪魔板(9)が複数枚(図1においては2枚)配設されている。
以下、邪魔板(9)の構成について説明する。
【0025】
図2(a)は、本発明に係るシャーベット氷製造機の一実施形態に設けられる冷媒流路の参考空間透視図であり、図2(b)は、その参考断面形状図である。
尚、図2においては、後述する邪魔板(9)の位置関係を把握し易いように邪魔板(9)を3枚配設した例を図示している。このため、図1と図2とでは、冷媒入口(31)と冷媒出口(32)との位置関係が異なっている。
【0026】
内管(1)と外管(2)との間に形成される冷媒流路(3)には、半環形状の邪魔板(9)が回転部材(4)の中心軸に対して直交する方向に配設され、且つ該中心軸方向に沿って、所定の間隔をもって180°ずつ位相を変化させながら複数枚(図2においては3枚)配設されている。
これにより、冷媒流路(3)において、冷媒入口(31)から冷媒出口(32)までの距離が延長され、伝熱面の熱交換効率を良くすることが可能となる。冷媒の噴射量は、例えば、冷媒液温を感知する感温筒(図示せず)によって制御されるので、効率良く熱交換することで、冷媒噴射制御を安定させることが可能となる。
また、冷媒流路(3)の断面積が極めて小さくなることで、冷媒流速が速くなり、後述する冷凍機油の油戻しに必要なだけの冷媒流速を得る事ができると共に、冷媒流れを均一にする効果も期待できる。
【0027】
更に、図2に示される如く、半環形状の邪魔板(9)頂部に半円形状の切欠き(91)を有することにより、確実且つ円滑に油戻しを行うことができる。
尚、本発明に係るシャーベット氷製造機(S)に使用する冷媒としては、公知のR22,R507A,R404A,R422A,R717等を例示することができる。
【0028】
蓋部材(6)は、内管(1)の両端に配され、内管(1)を閉塞して構成されている。
この蓋部材(6)において、断熱作用を持つ材質を適用することにより、蓋部材(6)内壁面に発生する氷結塊を防ぐことができる。ここで、前記材質としては、合成樹脂を使用することが好ましい。このことにより、ステンレス鋼等の金属材料からなる蓋に比べ、熱伝導率を低下させることができ、蓋部材(6)内壁面における氷結塊の発生を防止することが可能となる。
【0029】
蓋部材(6)に使用する合成樹脂としては、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等を例示できるが、中でもポリプロピレンを用いることが最も好ましい。これは、合成樹脂をポリプロピレンに特定することにより、熱伝導率はきわめて小さくなり、蓋部材(6)における氷結塊の発生を防止することが可能となるためである。(一般的なステンレス鋼の熱伝導率が15W/(m・K)であるのに対し、ポリプロピレンの熱伝導率は0.29W/(m・K)である)
更に、ポリプロピレンは高結晶性樹脂であるゆえ、機械的強度に優れると共に、強酸、強アルカリに対して抵抗力が強いため、ブラインに接触しても硬度が低下することなく、変形を生じることがない。加えて、ポリプロピレンは汎用性樹脂であるため、コストの面から経済的でもある。
【0030】
また、蓋部材(6)を加熱する加熱手段を設けることで、蓋部材(6)内面における氷結を防止することも可能である。
例えば、図3に示すように、内管(1)の一端と蓋部材(6)を覆い且つ、蓋部材(6)外壁面に密接するようにして、加熱ジャケット(10)を配設することにより(他端も同様に配設する)、冷媒により冷却された内管(1)から、蓋部材(6)への低温伝導を防ぐことが可能となる。即ち、蓋部材(6)内面における氷結塊の発生を防止することが可能となる。加熱ジャケット(10)に熱を加える方法としては、特に限定はないが、加熱ジャケット(10)内部に電熱線(ヒーター)を配設するか、もしくは、加熱ジャケット(10)内部に熱源流路(10a)となる空間を設け、温水またはホットガスを流すこと等が考えられる。
尚、図3においては、設置用部材(7)等の図示は省略している。
【0031】
また、蓋部材(6)を加熱するための更なる手段としては、蓋部材(6)自体を直接加熱することが考えられる。加熱方法としては、上記と同様に、蓋部材(6)内部に電熱線(ヒーター)を設ける、もしくは、蓋部材(6)内部に熱源流路を設け、温水またはホットガスを流す等すれば良い。
【0032】
尚、蓋部材(6)としては、内管(1)そのものを閉塞する第一の蓋部材と、回転部材(4)を支持するベアリングのカバーとなる第二の蓋部材とからの二つの部材により構成するようにしても良い。
【0033】
図4(a)は本発明に係るブライン用製氷機の一実施形態に内蔵される回転部材及び掻き取り部の正面図であり、図4(b)はその側面図であり、図4(c)はその斜視図である。
掻き取り部(5)は、回転部材(4)の外周面に固定配設されており、回転部材(4)の半径方向へ向けて突出している。
掻き取り部(5)の固定方法は、特に限定されるものではなく、溶接やボルト止めでも良いし、その他方法を用いても良い。
【0034】
掻き取り部(5)は、図4に示される如く、回転部材(4)周りに三つ、回転部材(4)の中心軸に対して平行に配設されており、より詳しくは、回転部材(4)の回転方向に対して120°ずつ位相を変化させて配設されている。
【0035】
尚、掻き取り部(5)の配置は上記構成に限られるものではなく、小型・大型等の用途に合わせ、以下のような構成を採用することもできる。
例えば、上記した掻き取り部(5)の構成を一組として、この組を回転部材(4)の中心軸方向に隣り合うようにして二組若しくは三組並べ、隣り合う組の掻き取り部(5)を回転部材(4)の回転方向に対し60°ずつ位相を変化させて、総計六つ若しくは九つの掻き取り部を有する構成を採用することができる(例えば、図5参照)。
【0036】
この際、隣り合う組において、互いの掻き取り部(5)が、回転部材(4)の中心軸方向に対して、僅かに重なるようにして配設することが好ましい。このことにより、外部からの伝熱に最も影響を受けない内管(1)の軸方向中心位置付近において、より多く生成される氷を、力強く掻き取ることが可能となる。
尚、更にその他、回転部材(4)の回転方向及び中心軸方向に配設される掻き取り部(5)の配設数や配設方法を変更できることは言うまでもない。
【0037】
掻き取り部(5)は、内管(1)内面に生成される氷を掻き取るスクレーパ(51)と、スクレーパ(51)を支持すると共にスクレーパ(51)の位置調整を可能とする受部材(52)と、受部材(52)に一体に取付けられ回転部材(4)に配設される支持部材(53)とから構成されている。
【0038】
スクレーパ(51)は、長方形状の板状体であり、その長手方向の両端が夫々、内管(1)の両端に至るように形成されている。
この際、図1に示されるように、蓋部材(6)の内壁面には、環状に深さ数mm程度繰り抜かれた凹部(11)が形成されている。この環状の凹部(11)は、外径が内管(1)の内径と略等しく形成されており、また、外径と内径の幅は、スクレーパ(51)の長手方向に直交する方向の長さ(幅)よりも大きく形成されている。
このような凹部(11)を形成することにより、掻き取り部(5)を構成するスクレーパ(51)を確実に内管(1)両端部に至るまで配設することができる。
これにより、第一の蓋部材(61)内壁に生成される氷を確実に掻き取ると共に、供給部(1a)及び排出部(1b)における氷詰まりを防止することが可能となる。
【0039】
また、スクレーパ(51)は、氷掻き取り側の端部(以下、スクレーパ先端と称する)が傾斜しており、所定角度の先端角(鋭角)を有して形成されている。
ここで、スクレーパ(51)先端は、内管(1)内面に対して、所定量(例えば、0.1〜3mm)の間隙を有するように構成する。
【0040】
受部材(52)は、スクレーパ(51)をその幅方向及び厚み方向に対して所定量(数mm程度)調整可能に支持している。スクレーパ(51)の調整方法としては、例えば、図4に示されるように、前記幅方向の調整には、第一ネジ部材(52a)を、前記厚み方向の調整には、第二ネジ部材(52b)を使用する。これにより、スクレーパ(51)先端と内管(1)内面との間隙を二軸構成にて調整することが可能となる。
【0041】
支持部材(53)は、受部材(52)に支持されたスクレーパ(51)先端の傾斜面が、内管(1)の接線に対して所定角度(例えば、5〜60°)傾斜するようにして、受部材(52)と一体となっている。
以上の構成、即ち、スクレーパが、内管(1)内面に対して所定量の間隙を有すると共に内管(1)の接線に対して所定角度の傾斜角を有して設けられ、且つ所定角度の先端角を有してなることにより、従来の製氷機のように内管内面に対してスクレーパが接触しないため、内管内面に発生する氷の膜を全て掻き取ることなく、この氷の膜の表面部分のみを掻き取ることが可能となる。これにより内管内面とスクレーパとの摩擦力増大による電動機の容量不足を回避し、効率良い掻き取りを行うことができる。また、スクレーパは氷にのみ接触するので、部品の磨耗が少なく、メンテナンス性にも優れたものとなる。更に、製氷性能としては、塩分濃度2%以下の硬氷に加え、真水氷であっても掻き取ることができる。
これにより、魚の保存に好適なシャーベット氷を生成することができ、加えて、真水シャーベット氷も生成可能であるため、水産物以外のもの、例えば、野菜や果物の鮮度保持にも好適に応用することが可能となる。
【0042】
またこの際、スクレーパ(51)と内管(1)内面との間隙を0.1〜3mmとすることにより、シャーベット氷の生成をより効率良く行うことが可能となる。
更に、スクレーパ(51)の内管(1)の接線に対する傾斜角が5〜60°及びスクレーパ(51)の先端角が鋭角であることにより、スクレーパの磨耗を抑えて、効率良く氷を掻き取ることが可能となる。
【0043】
図6は本発明に係るシャーベット氷製造機の一実施形態を示す全体装置図である。
本発明に係るシャーベット氷製造機(S)は、内管(1)と、外管(2)の二重管構造であると共に、内管(1)と外管(2)との間に冷媒流路(3)となる空間を有し、内管(1)内部に回転可能に設けられている回転部材(4)と、回転部材(4)の外周面から半径方向に突出すると共に内管(1)の内面より所定量の間隙を有して構成される掻き取り部(5)とを備えており、内管(1)の両端は蓋部材(6)によって閉塞されている。
【0044】
内管(1)内部はブライン又は清水を収容して凍らせるための空間を有しており、内管(1)の下端左部にはブライン又は清水を内部に供給するための供給部(1a)が、内管(1)の上端右部には生成されたシャーベット氷を排出するための排出部(1b)が、内管(1)両端に設けられる蓋部材(6)を介して接続されている。供給部(1a)は、ブライン又は清水を充填した貯蔵タンク(12)に接続されており、電磁バルブ等を介して内管(1)内部に一定量のブライン又は清水が供給される。
尚、ブライン又は清水の供給は、上記した貯蔵タンクによるものに限定されるわけではなく、その他、例えば、海から直接取入れるような構成とすることも当然可能である。
【0045】
冷媒流路(3)の右部下端寄りの位置には冷媒入口(31)が、左部上端寄りには冷媒出口(32)がそれぞれ設けられており、冷媒は、冷媒入口(31)より供給され冷媒流路(3)を通過し、冷媒出口(32)より排出されるという工程を繰り返す。このとき、冷媒流路(3)を循環する冷媒は、冷媒流路(3)内でガス化するので、装置全体としては、図6に示されるように、冷媒が出口(32)より排出された後、これを圧縮機(13)にて吸入・圧縮し、次いで、凝縮器(14)に送り込んで再液化し、更に、膨張弁(15)を介して減圧した後に、冷媒流路(3)へ再度供給するように構成されている。
【0046】
ここで、圧縮機(13)内には、圧縮機(13)を円滑に駆動させるための冷凍機油が充填されている。この冷凍機油は、冷媒が冷媒流路(3)を循環する工程において、その一部が冷媒に溶け込んでしまい、冷媒流路(3)内に流入してしまうことがある。
この対策として、冷媒流路(3)には、半環形状の邪魔板(9)が回転部材(4)の中心軸に対して直交する方向に配設され、且つ該中心軸方向に沿って、所定の間隔をもって180°ずつ位相を変化させながら複数枚(図示例においては2枚)配設されている。
【0047】
これにより、冷媒に溶け込んだ冷凍機油を、ガス化した冷媒が圧縮機(13)に搬送可能となる、即ち油戻しに充分な冷媒流速を得る事ができる。
また、半環形状の邪魔板(9)頂部に半円形状の切欠き(91)が形成されていることにより、確実且つ円滑に油戻しを行うことができる。
【0048】
次に、本発明に係るシャーベット氷製造機(S)の他の実施形態について説明する。
図7は、本発明に係るシャーベット氷製造機の他の実施形態を示す断面図である。
尚、他の実施形態において、上記一実施形態と同様の構成を有する部位には、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0049】
この実施形態の上記一実施形態と異なる構成として、蓋部材について説明する。
この実施形態における蓋部材は、ブライン又は清水が供給される供給部(100a)を備える第一蓋部材(601)と、生成されたシャーベット氷が排出される排出部(100b)を備える第二蓋部材(602)と、両蓋部材(601,602)と内管(1)との間に介装される断熱フランジ(603)とから構成されている。
この構成を採用することにより、冷媒流路(3)と供給部(100a)との距離、及び冷媒流路(3)と排出部(100b)との距離を一定量設けることが可能となり、供給部(100a)及び排出部(100b)における氷詰まりを防止することが可能となる。
【0050】
以上により、本発明に係るシャーベット氷製造機(S)の他の実施形態が構成される。
尚、他の実施形態の装置全体の構成としては、上記一実施形態と同様の構成を採用すれば良い。
【0051】
以上、説明した如く、本発明に係るシャーベット氷製造機(S)は、簡単な構成であるため、小型化を可能とし、加えて、低塩分濃度のシャーベット氷又は真水シャーベット氷を効率良く製氷することが可能なものとなる。
また、従来の製氷機は、動力電源200/220Vを必要としていたが、本発明に係るシャーベット氷製造機(S)は小型化することにより、一般家庭用電源100Vでも駆動することが可能となる。これにより、電力消費の面でも経済的なものとなる。
【0052】
尚、本発明に係るシャーベット氷製造機(S)は、上記した二つの実施形態においては、軸を縦向きにして支持されているが、設置方法は特にこれらに限定されるものではなく、設置スペースに合わせて軸を横向き或いは傾斜させて使用することも当然可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、魚等の鮮度を長期に亘って維持するのに好適な低塩分濃度のシャーベット氷又は野菜や果物の鮮度保持に好適な真水シャーベット氷の製造に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係るシャーベット氷製造機の一実施形態を示す断面図である。
【図2】(a)は、本発明に係るシャーベット氷製造機に設けられる冷媒流路の参考空間透視図であり、(b)は、その参考断面形状図である。
【図3】(a)は、加熱カバーを設けたときの本発明に係るシャーベット氷製造機の部分概略断面図であり、(b)は、その底面透視図である。
【図4】(a)は、本発明に係るシャーベット氷製造機の一実施形態に内蔵される回転部材及び掻き取り部の正面図であり、(b)は、その側面図であり、(c)は、その斜視図である。
【図5】(a)は、本発明に係るシャーベット氷製造機の一実施形態に内蔵される回転部材及び掻き取り部の変形例を示す正面図であり、(b)は、その側面図であり、(c)は、その斜視図である。
【図6】本発明に係るシャーベット氷製造機の一実施形態を示す全体装置図である。
【図7】本発明に係るシャーベット氷製造機の他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
S シャーベット氷製造機
1 内管
1a 供給部
1b 排出部
2 外管
3 冷媒流路
4 回転部材
5 掻き取り部
51 スクレーパ
6 蓋部材
9 邪魔板
91 切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水等のブライン又は清水を内部に供給するための供給部及び生成された氷を排出するための排出部を備える内管と、
該内管の外周面との間に冷媒流路となる空間を有して前記内管の外周面を覆う外管と、
前記内管内部に回転可能に配設された回転部材と、
該回転部材の外周面から半径方向に突出する掻き取り部と、
前記内管の両端を閉塞する蓋部材とを具備してなり、
前記掻き取り部がスクレーパを備えると共に該スクレーパ端部が前記内管両端部に至るように配設されており、
前記スクレーパが、前記内管内面に対して所定量の間隙を有すると共に前記内管の接線に対して所定角度の傾斜角を有して設けられ、且つ所定角度の先端角を有してなり、
前記蓋部材が断熱もしくは加熱されていることを特徴とするシャーベット氷製造機。
【請求項2】
前記間隙が0.1〜3mmであり、
前記傾斜角が5〜60°であり、
前記先端角が鋭角であることを特徴とする請求項1記載のシャーベット氷製造機。
【請求項3】
前記蓋部材がポリプロピレン等の合成樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2記載のシャーベット氷製造機。
【請求項4】
前記冷媒流路内において、半環形状の頂部に半円形状の切欠きを有する邪魔板が配設されており、
該邪魔板は、前記回転部材の中心軸に対して直交する方向に配設され、且つ該中心軸方向に沿って、所定の間隔をもって180°ずつ位相を変化させながら複数枚配設されてなることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のシャーベット氷製造機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−132649(P2007−132649A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209992(P2006−209992)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(504212596)株式会社 泉井鐵工所 (3)
【出願人】(000226703)日新興業株式会社 (4)
【出願人】(597154966)学校法人高知工科大学 (141)