説明

シャーリング装置

【課題】シャーリング装置が設置される室内の温度に関わらず、ブレード及びブレードが固定されるフレームの温度を略一定に保つことが可能なシャーリング装置を提供する。
【解決手段】シャーリング装置が、切断されるシートの第1面側に向けられた第1のブレードと、第1のブレードが固定される第1のブレード固定用ブロックと、シートの第2面側に向けられた第2のブレードと、第2のブレードが固定される第2のブレード固定用ブロックと、第1及び第2のブレード固定用ブロックの一方を他方に近接する方向にに駆動して前記シートにせん断応力を加えて切断する駆動手段と、その一部が前記第1及び第2のブレード固定用ブロック内を経由し且つ熱媒体が循環可能となっている熱媒体循環経路と、熱媒循環経路内の熱媒体の温度を調整する熱媒体温度調整手段と、第1及び第2のブレードの温度を略一定に保つように熱媒温度調整手段を制御する温度制御手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の材料を一対のブレードで挟み込んで切断するシャーリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板などのシートを適切な長さに切断するために、特許文献1に記載されているもののような、シャーリング装置が広く利用されている。シャーリング装置は、シートの第1面、第2面側の夫々にブレードを有しており、ブレードの一方を他方に対して駆動することにより、シートにせん断応力を加えて切断する装置である。
【特許文献1】特開2000−326136
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
シャーリング装置によってシートを切断する場合、ブレード及びブレードが固定されるフレームの温度を略一定とすることが望ましい。しかしながら、これらの温度は、季節変動など、シャーリング装置が設置される室内の温度に応じて変化しうるものである。
【0004】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、シャーリング装置が設置される室内の温度に関わらず、ブレード及びブレードが固定されるフレームの温度を略一定に保つことが可能なシャーリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明のシャーリング装置は、切断されるシートの第1面側に向けられた第1のブレードと、第1のブレードが固定される第1のブレード固定用ブロックと、シートの第2面側に向けられた第2のブレードと、第2のブレードが固定される第2のブレード固定用ブロックと、第1及び第2のブレード固定用ブロックの一方を他方に近接する方向にに駆動して前記シートにせん断応力を加えて切断する駆動手段と、その一部が前記第1及び第2のブレード固定用ブロック内を経由し且つ熱媒体が循環可能となっている熱媒体循環経路と、熱媒循環経路内の熱媒体の温度を調整する熱媒体温度調整手段と、第1及び第2のブレードの温度を略一定に保つように熱媒温度調整手段を制御する温度制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第1及び第2のブレードが固定される第1及び第2のブレード固定用ブロックに温度調整された熱媒を流すことによって、第1及び第2のブレード固定用ブロック、及び第1及び第2のブレードの温度が一定の温度に維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1及び図2は、夫々本実施形態のシャーリング装置1の側面図及び正面図である。図1及び2に示されるように、本実施形態のシャーリング装置1は、ベースBに固定されているフレーム部10と、フレーム部10に固定されている固定ブレード部20と、固定ブレード部20に対して上下動するようになっている可動ブレード部30と、可動ブレード部30を駆動するための駆動部40とを有する。
【0008】
図2に示されるように、フレーム部10は、ベースB上に固定され且つ鉛直方向に伸びる一対の側壁11と、一対の側壁11をその下端において連結する下部ビーム12と、一対の側壁11をその上端において連結する上部ビーム13とを有する。上部ビーム13の上には、固定ブレード部20のブレード固定ブロック22が固定されている。図1に示されるように、ブレード固定ブロック22には、固定ブレード21が固定されている。
【0009】
ブレード固定ブロック22の上にはシートSが配置されている。シートSは、図示しない搬送手段によって図1中右側(以下、上流側と称す)から図1中左側(以下、下流側と称す)に搬送される。そして、可動ブレード部30と固定ブレード部20によって、シートSが裁断されるようになっている。
【0010】
図1及び2に示されるように、可動ブレード部30は、固定ブレード部20の上側に配置されている。可動ブレード部30は、可動ブレード31と、可動ブレード31が固定されるブレード固定ブロック32とを有する。図1に示されるように、固定ブレード21及び可動ブレード31は、シートSの搬送方向に直交する側面を備えたプレート状の部材である。固定ブレード21の上流側の側面21a及び可動ブレード31の下流側の面31aとは、略同一平面上に配置されており、可動ブレード部30を降下させると、シートSが固定ブレード21と可動ブレード31との間に挟まれ、シートSに大きなせん断荷重が加わり、このせん断荷重によってシートSが裁断される。
【0011】
可動ブレード部30を上下動させるための駆動部40について以下説明する。駆動部は、モータ41、減速ギアボックス42、軸受43a及び43b、回転軸44、偏心カム45、コネクティングロッド46、駆動ロッド47及びガイド部材48を有する。
【0012】
図2に示されるように、可動ブレード部30のブレード固定ブロック32の両端には、夫々駆動ロッド47が固定されている。駆動ロッド47の各々は、側壁11に固定されたガイド部材48によってガイドされており、その移動方向が鉛直方向のみに制限されている。
【0013】
駆動ロッド47は、コネクティングロッド46を介して偏心カム45と連結されている。このため、偏心カム45を回転させると駆動ロッド47、及び可動ブレード部30が上下動する。
【0014】
一対の偏心カム45は、側壁11より外側に突出した回転軸44の両端に夫々固定されている。回転軸44は、側壁11に設けられた軸受43aによってその両端を回転可能に支持されている、水平方向に伸びる軸である。回転軸44は、その略中央部において、減速ギアボックス42を介してモータ41によって回転駆動されるようになっている。また、軸受43bは下部ビーム12の上に固定されており、減速ギアボックス42と軸受43aとの間の位置において、回転軸44を回転可能に支持する。
【0015】
このような構成により、モータ41を駆動して可動ブレード部30を上下動させてシートSが裁断可能となる。
【0016】
本実施形態においては、モータ41からの熱の移動やブレードとシートSの摩擦熱によって、固定ブレード21及び可動ブレード31は加熱されるが、この熱をシステム系外に排出し、ブレードの温度は所定温度範囲(例えば30℃±3℃)に維持されるようになっている。以下、この温度維持機構について説明する。
【0017】
図2に示されるように、固定ブレード部20のブレード固定ブロック22には、シートSの幅方向(鉛直方向とシートSの搬送方向の双方に直交する方向。図2における左右方向)に伸びる2本の横穴23、24が設けられている。横穴23、24は、鉛直方向に並んで配置されており、その奥側(図2中右側)で縦穴25によって連結されている。縦穴25の入口は、キャップ26で塞がれており、横穴23、23及び縦穴25は、全体としてコの字状にブレード固定ブロック22内を往復するブロック内経路27を形成する。
【0018】
同様に、可動ブレード部320のブレード固定ブロック32には、シートSの幅方向に伸びる2本の横穴33、34が設けられている。横穴33、34は、鉛直方向に並んで配置されており、その奥側(図2中右側)で縦穴35によって連結されている。縦穴35の入口は、キャップ36で塞がれており、横穴33、33及び縦穴35は、全体としてコの字状にブレード固定ブロック32内を往復するブロック内経路37を形成する。
【0019】
本実施形態においては、固定ブロック22、32内に設けられたコの字状のブロック内経路27、37に温度調整された熱媒体を流すことによって、各固定ブロックを冷却している。そして、固定ブロック22及び32が冷却されるので、固定ブロック22、32に夫々固定されているブレード21、31から固定ブロック22、32に熱が移動し、ブレード21、31もまた冷却される。なお、このブロック内経路27及び37に流す熱媒体としては、熱媒油や水などが使用される。
【0020】
熱媒体を固定ブロック22、32内のブロック内経路27、37に熱媒体を流す機構について以下説明する。図3は、本実施形態の熱媒体循環機構100を示したものである。熱媒体循環機構100は、ポンプユニット131によってブロック内経路27、37を含む循環路に熱媒体を循環させると共に、循環する熱媒の一部をクーラ133にて冷却して、熱媒体の温度調整を行うものである。
【0021】
図3に示されるように、固定ブロック22、32内のブロック内経路27、37の一端24a及び34aは、分岐ブロック141と接続されている。同様に、ブロック内経路27、37の他端23a、33aは、合流ブロック142と接続されている。
【0022】
分岐ブロック141の熱媒体入口141iは、ポンプユニット131のポンプ出口131oと接続されている。また、合流ブロック142の熱媒体出口142oは、ポンプユニット131のポンプ入口131iと接続されている。このため、熱媒体は、ポンプ出口131oから分岐ブロック141に入り、分岐ブロック141内で分岐してブロック内経路27、37を通過した後、合流ブロック142で合流し、ポンプ入口131iに戻る熱媒体循環経路内を循環するようになっている。
【0023】
合流ブロック142とポンプ入口131iとの間には、分岐部163が設けられている。第1分岐部163からは、熱媒を冷却するためのクーラ133の熱媒体入口133iに向かう温度調整用分岐路164が設けられている。また、クーラ133の熱媒体出口133oは、ポンプ入口131iの上流側に位置する合流部164にて熱媒体循環経路に合流している。温度調整用分岐路164の中途には、ダイヤフラム弁151が配置されており、温度調整用分岐路164を流れる熱媒体の流量を調整できるようになっている。従って、ダイヤフラム弁153が少しでも開いている場合は、分岐ブロック141を出た熱媒体の一部は、クーラ133で冷却されて再びポンプ131に戻る。従ってダイヤフラム弁153の開度を調整することによって、ブロック内経路27及び37に供給する熱媒の温度を細かく調整することが可能になっている。
【0024】
熱媒体分岐ブロック141内を流れる熱媒体、すなわちブロック内経路27、37に導入される直前の熱媒体の温度を計測可能な温度センサTが設けられている。熱媒体循環機構100のコントローラ110は、温度センサTの計測結果に基づいて、ダイヤフラム弁151の開度の調整を行う。例えば、計測された熱媒体の温度がブレード21、31の管理目標温度より低い温度を熱媒体の管理目標温度とし、熱媒温度がこの管理目標温度±3℃程度の範囲に収まるように、ダイヤフラム弁151の開度をフィードバック制御する。なお、熱媒体の管理目標温度をどの程度とするかは、実験等によって適宜制御される。
【0025】
以上のように、本実施形態によれば、熱媒体の温度を調整することによって、シャーリング装置1が設置される室内の温度に関わらず、固定ブレード21及び可動ブレード31の温度は所定の範囲内に収まるように制御される。
【0026】
熱媒体によるブレード固定ブロック22、32の冷却能力は、各ブロックと熱媒体との温度差が大きいほど高くなる。そして、ブロック内経路27、37内では熱媒は固定ブロック22、32から熱を奪いながら流れるため、出口23a、33aに近づくほど熱媒体とブロックとの温度差は小さくなる。本実施形態においては、ブロック内経路27及び37は、横穴24と23、34と33とが近接するコの字状に形成されており、往路(横穴24、34)において冷却されやすいブロック内の領域は、復路(横穴23、33)においては冷却されにくくなる。このため、本実施形態によれば、ブレード固定ブロック22、32内での温度むらを小さく抑えることができる。
【0027】
なお、本実施形態においては、温度センサTは分岐ブロック141内に設けられているが、他の位置、例えば合流ブロック142やポンプユニット131内部に設けられていてもよい。また、熱媒体ではなく、固定ブロック22、32やブレード21、31の温度を計測し、この温度に基づいてダイヤフラム弁151の開度を調整する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態のシャーリング装置の側面図である。
【図2】本発明の実施の形態のシャーリング装置の正面図である。
【図3】本発明の実施の形態の熱媒体循環機構を示したものである。
【符号の説明】
【0029】
1 シャーリング装置
10 フレーム部
20 固定ブレード部
21 固定ブレード
22 ブレード固定ブロック
23、24 横穴
25 縦穴
27 ブロック内経路
30 可動ブレード部
31 可動ブレード
32 ブレード固定ブロック
33、34 横穴
35 縦穴
37 ブロック内経路
40 駆動部
100 熱媒体循環機構
110 コントローラ
131 ポンプユニット
133 クーラ
151 ダイヤフラム弁
164 温度調整用分岐路
S シート
T 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断されるシートの第1面側に向けられた第1のブレードと、
前記第1のブレードが固定される第1のブレード固定用ブロックと、
前記シートの第2面側に向けられた第2のブレードと、
前記第2のブレードが固定される第2のブレード固定用ブロックと、
前記第1及び第2のブレード固定用ブロックの一方を、他方に近接する方向に駆動して前記シートにせん断応力を加えて切断する駆動手段と、
その一部が前記第1及び第2のブレード固定用ブロック内を経由し且つ熱媒体が循環可能となっている熱媒体循環経路と、
前記熱媒循環経路内の熱媒体の温度を調整する熱媒体温度調整手段と、
前記第1及び第2のブレードの温度を略一定に保つように前記熱媒温度調整手段を制御する温度制御手段と、
を有するシャーリング装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のブレード固定用ブロックのいずれか一方内における前記熱媒体循環経路は、前記シートの幅方向に伸びる第1及び第2の横穴と、前記横穴の先端付近にて両横穴を連結する縦穴とを有する、コの字状の経路であることを特徴とする請求項1に記載のシャーリング装置。
【請求項3】
前記熱媒体循環経路は、途中で2つに分岐して夫々前記第1及び第2のブレード固定用ブロックに向かい、前記第1及び第2のブレード固定用ブロックの下流側で再び合流することを特徴とする請求項1又は2に記載のシャーリング装置。
【請求項4】
前記熱媒体の温度を計測する温度センサをさらに有し、
前記熱媒体温度調整手段は、前記温度センサの計測結果に基づいて前記熱媒体の温度を制御する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のシャーリング装置。
【請求項5】
前記第1及び第2のブレード固定用ブロックの温度を計測する温度センサをさらに有し、
前記熱媒体温度調整手段は、前記温度センサの計測結果に基づいて前記熱媒体の温度を制御する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のシャーリング装置。
【請求項6】
前記第1及び第2のブレードの温度を計測する温度センサをさらに有し、
前記熱媒体温度調整手段は、前記温度センサの計測結果に基づいて前記熱媒体の温度を制御する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のシャーリング装置。
【請求項7】
前記熱媒体温度調整手段は、
前記熱媒体循環経路から分岐して再び前記熱媒体循環経路に戻る分岐路と、
前記分岐路中に設けられており分岐路中の熱媒体を冷却するクーラと、
前記分岐路を流れる熱媒体の流量を調整する流量調整手段と、
を有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のシャーリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−120143(P2010−120143A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297893(P2008−297893)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000242242)北川精機株式会社 (26)
【Fターム(参考)】