説明

シュリンクフィルム被覆カートン及びシュリンクフィルム被覆カートンの開封方法

【課題】製造工程において歩留まりを低下させることなく、簡便で安価な構成で、シュリンクフィルムをカートン表面から容易に剥がし取ることができるシュリンクフィルム被覆カートン及びシュリンクフィルム被覆カートンの開封方法を提供する。
【解決手段】カートン2の表面には、外部からの押圧によってカートン2の内側方向に変形可能とされた押圧変形部4が少なくとも一以上設けられており、押圧変形部4がシュリンクフィルム3上から押圧されてカートン2の内側方向に変形した際、シュリンクフィルム3が押圧変形部4上に押し込まれて破断する箇所が開封開始部5とされ、該開封開始部5からシュリンクフィルム3が開封可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートンの表面がシュリンクフィルムによって被覆されてなるシュリンクフィルム被覆カートン及びシュリンクフィルム被覆カートンの開封方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、店頭における中身商品の改竄防止や、輸送中における誤開封の防止を目的として、製品が収容されたカートン(紙箱)全体を、例えば、延伸ポリプロピレンやポリエチレン等からなるシュリンクフィルムで被覆した、所謂シュリンク包装を施した商品が数多く販売されている。このような、シュリンクフィルム被覆カートンとしては、例えば、特許文献1に記載のものが提案されている。
【0003】
また、上述のようなシュリンクフィルム被覆カートンの包装形態が採用された製品においては、単にカートン表面にシュリンクフィルムを被覆しただけの包装とした場合、使用者が素手でシュリンクフィルムを開封するのが困難になることがある。このため、例えば、図5に示すシュリンクフィルム被覆カートン100のように、カートン101の表面に被覆されたシュリンクフィルム102にミシン目103やフラップ104を設けることにより、シュリンクフィルムの破断やカートン表面からの剥離を容易とした構成が採用されている。
【0004】
しかしながら、図5に示すように、シュリンクフィルム102にミシン目103やフラップ104を形成する場合、加工にレーザーカッター等が必要となることから新たな設備投資が生じるという問題があった。また、カートン101に被覆する前のシュリンクフィルム102に予めミシン目103を形成した場合、カートン101への被覆工程において、シュリンクフィルム102をカートン101に縮退密着させるためのオーブン内で、シュリンクフィルム102が熱によってミシン目103から裂けてしまい、製造上の歩留まりが低下する等の問題があった。また、シュリンクフィルム102にミシン目103やフラップ104を形成する場合、これらの形成処理に要する製造工程が増えるとともに、作業人員を増やす必要が生じる場合があり、コストアップの要因となっていた。
【特許文献1】特開2001−322634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、製造工程において歩留まりを低下させることなく、簡便で安価な構成で、シュリンクフィルムをカートン表面から容易に剥がし取ることができるシュリンクフィルム被覆カートン及びシュリンクフィルム被覆カートンの開封方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意検討し、以下の発明を完成させた。
【0007】
本発明は、板紙からなるカートンの表面がシュリンクフィルムによって被覆されてなるシュリンクフィルム被覆カートンであって、前記カートンの表面には、外部からの押圧によって前記カートンの内側方向に変形可能とされた押圧変形部が少なくとも一以上設けられており、前記押圧変形部が前記シュリンクフィルム上から押圧されて前記カートンの内側方向に変形した際、前記シュリンクフィルムが前記押圧変形部上に押し込まれて破断する箇所が開封開始部とされ、該開封開始部から前記シュリンクフィルムが開封可能とされていることを特徴とするシュリンクフィルム被覆カートンを提供する。
【0008】
係る構成のシュリンクフィルム被覆カートンによれば、使用者が、中身商品を取り出すためにカートンからシュリンクフィルムを剥がし取る際、カートン表面に設けられる押圧変形部をシュリンクフィルム表面から押圧することにより、押圧変形部をカートン内側方向に押し込んで変形させるとともに、この押圧変形部にシュリンクフィルムを押し込んで破断させることができる。そして、このシュリンクフィルムの破断箇所を開封開始部として、使用者がシュリンクフィルムをカートン表面から容易に剥がし取って開封することが可能となる。
【0009】
また、本発明のシュリンクフィルム被覆カートンは、前記カートンが四側壁を有する断面矩形状の角筒体に形成されており、前記押圧変形部が前記カートンの側壁の内の何れかの箇所に設けられてなる構成とすることができる。
【0010】
係る構成のシュリンクフィルム被覆カートンによれば、押圧変形部をカートンの側壁に設けることにより、使用者が手で押圧変形部をカートン内側方向に変形させるとともに、この押圧変形部にシュリンクフィルムを押し込んで破断させ、開封開始部を形成する作業が容易となる。
【0011】
また、本発明のシュリンクフィルム被覆カートンは、前記押圧変形部が、前記カートンに備えられる各側壁の間に形成された折曲罫線にかかるように設けられてなる構成とすることができる。
【0012】
係る構成のシュリンクフィルム被覆カートンによれば、押圧変形部を、上述のようなカートンの折曲罫線にかかるように設けることで、使用者が手で押圧変形部をカートン内側方向に変形させるとともに、シュリンクフィルムを押し込んで破断させ、開封開始部を形成する作業がより容易となる。
【0013】
また、本発明のシュリンクフィルム被覆カートンは、前記押圧変形部が、前記カートン内側方向に変形した際に少なくとも一部が破断されることにより、鋭角部が形成される構成とすることができる。
【0014】
係る構成のシュリンクフィルム被覆カートンによれば、押圧変形部をカートン内側方向に押し込んで変形させた際に、この押圧変形部の一部に鋭角部が形成されるので、この鋭角部に押し当てるようにシュリンクフィルムを押し込むことにより、該シュリンクフィルムを容易に破断することが可能となる。
【0015】
本発明は、板紙からなるカートンの表面がシュリンクフィルムによって被覆されてなるシュリンクフィルム被覆カートンの開封方法であって、前記カートンの表面に設けられる押圧変形部を、前記シュリンクフィルム上から押圧して前記カートン内側方向に変形させるとともに、前記シュリンクフィルムを、前記カートン内側方向に変形した前記押圧変形部上に押し込んで破断させることによって開封開始部を形成し、前記シュリンクフィルムを前記開封開始部から破断しながら前記カートン表面から剥離することによって開封することを特徴とするシュリンクフィルム被覆カートンの開封方法を提供する。
【0016】
係る構成のシュリンクフィルム被覆カートンの開封方法によれば、使用者が、中身商品を取り出すためにカートンからシュリンクフィルムを剥がし取る際、カートン表面に設けられる押圧変形部をシュリンクフィルム表面から押圧することにより、押圧変形部をカートン内側方向に押し込んで変形させるとともに、この押圧変形部にシュリンクフィルムを押し込んで破断させることができる。そして、このシュリンクフィルムの破断箇所を開封開始部として、使用者がシュリンクフィルムをカートン表面から容易に剥がし取って開封することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のシュリンクフィルム被覆カートンによれば、上述のように、カートンの表面に、外部からの押圧によってカートンの内側方向に変形可能とされた押圧変形部が設けられた構成とされているので、シュリンクフィルム上から押圧変形部を押し込んで変形させると同時に、シュリンクフィルムを押し込んで容易に破断させることができる。そして、この破断箇所を開封開始部として、カートン表面からシュリンクフィルムを容易に剥がし取ることができる。
これにより、製造工程において歩留まりを低下させることなく、簡便で安価な構成で、容易に開封することが可能なシュリンクフィルム被覆カートンが実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態であるシュリンクフィルム被覆カートンについて、図1〜図4を適宜参照しながら説明する。
【0019】
本実施形態のシュリンクフィルム被覆カートン1は、板紙からなるカートン2の表面がシュリンクフィルム3によって被覆されてなり、カートン2の表面には、外部からの押圧によってカートン2の内側方向に変形可能とされた押圧変形部4が少なくとも一以上設けられており、押圧変形部4がシュリンクフィルム3上から押圧されてカートン2の内側方向に変形した際、シュリンクフィルム3が押圧変形部4上に押し込まれて破断する箇所が開封開始部5とされ、該開封開始部5からシュリンクフィルム2が開封可能とされ、概略構成される。
【0020】
カートン2は、板紙が所定形状で裁断されたものを折り曲げ、糊付等によって組み付けられてなる紙箱であり、内部に、例えば、樹脂製容器等に整髪剤や育毛剤、用毛剤あるいはシャンプー等の中身製品が収容された商品の他、種々の商品を収容して用いられるものである。
また、図1に示す例のカートン2は、四側壁、つまり、側壁2A、2B、2C、2Dを有する断面矩形状の角筒体に形成されており、天板2E及び底板2Fが開閉可能に構成されている。使用者は、初回使用時、天板2Eを開封することにより、カートン2内部に収容された商品を取り出すことができる。
なお、図1に示す例のカートン2は、四側壁を有する断面矩形状の角筒体に形成されているが、本実施形態では、カートンの形状や大きさ等については特に限定されず、種々のものを使用することが可能である。
【0021】
カートン2を構成する材料としては、上述したように、板紙を主原料とした紙素材を用いることができる。このような紙素材としては、板紙のみを用いたものの他、例えば、板紙にポリエチレン等のプラスチックフィルムをラミネート(PEサンド)したものや、板紙にワックスコートしたもの等を用いることができる。なお、紙素材の米坪量としては400〜700g/mの範囲が好ましく、より好ましくは550〜650g/mである。
【0022】
押圧変形部4は、上述したように、カートン2の表面に少なくとも一以上設けられ、図1に示す例では、カートン2の側壁の内、側壁2Aと側壁2Bとの間の折曲罫線21に係るように、2箇所に設けられている。
押圧変形部4は、外部から押圧することによってカートン2の内側方向に押し込まれるように変形可能とされ、シュリンクフィルム被覆カートン1において、詳細を後述するシュリンクフィルム3上から押圧されて変形するものである。
【0023】
図1に示す例の押圧変形部4は、側壁2A、2B上にミシン目からなる切れ込み部41を設けた構成とすることにより、使用者が折曲罫線21の位置を指で押し込んで、押し込み板43、44をカートン2内側方向に変形させることで切れ込み部41が破断する。この際、押し込み板43、44が、折曲線42からカートン2内側方向へ折り曲げられるとともに、上記した折曲罫線21の内、押圧変形部4に係る部分において折曲方向が反転することにより、図示例のように、押圧変形部4の上部及び下部に、カートン2の内部に連通した開口45、46が形成される。これにより、押圧変形部4は、カートン2において、後述のシュリンクフィルム3を押し込むことが可能なセットバック空間47を形成する。
【0024】
シュリンクフィルム3は、改竄防止や輸送中の誤開封防止等を目的として、カートン2の表面を被覆することによって該カートン2を包装する樹脂フィルムであり、本実施形態においては、カートン2の表面全体に被服される。
シュリンクフィルム3を構成する材料としては、上述のように、輸送中の誤開封防止を目的としてカートン2全体を包装する点から、摩擦等の外的な力にも強い材料を用いることが好ましい。また、シュリンクフィルム3としては、カートン2の表面に印刷された製品名や製品情報を視認できるようする点で、透明の材料を用いることが好ましい。
このような、シュリンクフィルム3を構成する樹脂材料としては、例えば、延伸ポリスチレンフィルム(OPS)を単独で用いる他、ポリエチレン(PE)と延伸ポリプロピレン(OPP)の積層フィルム、OPPと低密度ポリエチレン(LDPE)の積層フィルム、PPとPEとPPの積層フィルム、PPとPEの積層フィルム等、各種樹脂フィルムを用いることができる。
また、シュリンクフィルム3の厚さとしては、例えば、10μm〜20μm程度とすることができる。
【0025】
シュリンクフィルム3は、80℃の温度における熱収縮率が20〜40%の範囲で、かつ100℃の温度における熱収縮率が40〜60%のものを用いることが好ましい。ここで述べる熱収縮率とは、熱収縮前のシュリンクフィルムを、上記各温度のグリセリンバスに30秒間浸けた場合の熱収縮率を言う。
シュリンクフィルム3の熱収縮率が上記範囲内であれば、不均一な収縮が発生することなく、130℃以下の低温で安定して収縮させることが可能である。
【0026】
なお、本実施形態では、カートン2表面にシュリンクフィルムを1枚のみ被覆した例を説明しているが、これには限定されない。例えば、カートン表面に、意匠用シュリンクフィルムを被覆し、この意匠用シュリンクフィルムの上に、さらに改竄防止用シュリンクフィルムを被覆する、複数のシュリンクフィルムが重ねられた構成としても良い。
【0027】
そして、本実施形態では、カートン2に上述のようなシュリンクフィルム3を覆わせた状態として図示略のコンベア上に載置し、130℃程度のオーバーラップシュリンクトンネル内を所定速度で搬送することにより、シュリンクフィルム3を収縮させる。これにより、カートン2全体がシュリンクフィルム3で一括被覆されてなる、本実施形態のシュリンクフィルム被覆カートン1が得られる。
【0028】
上述のような、本実施形態のシュリンクフィルム被覆カートン1を開封する際は、例えば、以下のような方法で開封作業を行うことができる。
まず、図1に示すようなシュリンクフィルム被覆カートン1において、カートン2の表面に設けられた2箇所の押圧変形部4の押し込み板43、44を、使用者が指でシュリンクフィルム3表面から押圧することにより、カートン2の内側方向に押し込む。これにより、側壁2A、2B上に形成されたミシン目からなる切れ込み部41が破断し、押し込み板43、44がカートン2内側方向に変形することで、セットバック空間47が形成される。また、この際、押圧変形部4の押し込み板43、44を押し込みながら、シュリンクフィルム3を、押圧変形部4によって形成される上述のセットバック空間47に押し込み、シュリンクフィルム3の当該箇所を破断させることにより、開封開始部5を形成する。
次いで、シュリンクフィルム3を、上述のような開封開始部5から破断しながら、引き剥がすようにしてカートン2の表面から剥離して取り除く。これにより、シュリンクフィルム被覆カートン1は、カートン2の表面が開放(開封)された状態となる。
そして、カートン2の天板2Eを開封することにより、中身商品を取り出すことが可能となる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態のシュリンクフィルム被覆カートン1によれば、上記構成により、カートン2の表面に、外部からの押圧によってカートン2の内側方向に変形可能とされた押圧変形部4が設けられた構成とされているので、シュリンクフィルム3上から押圧変形部4を押し込んで変形させると同時に、シュリンクフィルム3を押し込んで容易に破断させることができる。そして、この破断箇所を開封開始部5として、カートン2表面からシュリンクフィルム3を容易に剥がし取ることができる。これにより、シュリンクフィルムへのミシン目やフラップ等の形成が不要となり、製造工程における歩留まりの低下や作業の工程並びに人員の増加等を招くことなく、簡便で安価な構成で、容易に開封することが可能なシュリンクフィルム被覆カートン1が実現できる。
【0030】
また、本実施形態のシュリンクフィルム被覆カートン1によれば、押圧変形部4をカートンの側壁、図1に示す例では、側壁2A、側壁2Bに設けているので、使用者が手で押圧変形部4をカートン2の内側方向に変形させるとともに、この押圧変形部4によって形成されるセットバック空間47にシュリンクフィルム3を押し込んで破断させ、開封開始部5を形成する作業が容易となる。またさらに、図示例では、押圧変形部4を、側壁2Aと側壁2Bとの間の折曲罫線21に係るように設けているので、使用者が手で押圧変形部4を変形させるとともに、セットバック空間47にシュリンクフィルム3を押し込んで破断させ、開封開始部4を形成する作業がより一層容易となる。
【0031】
なお、図1に示す例のシュリンクフィルム被覆カートン1は、押圧変形部4が、側壁2Aと側壁2Bとの間の折曲罫線21に係るよう設けられ、押し込み板43、44をカートン2内側方向に変形させることで切れ込み部41が破断する構成とされているが、本実施形態では、このような構成には限定されない。
例えば、図2に示す例のように、カートン27の一側壁(図示例では側壁27A)の横幅方向略中央に設けられ、両開きの板部がカートン27の内部に押し込まれる構成の押圧変形部61、62としても良いし、カートン27の側壁27Aの両側の折曲罫線27a、27bの何れかに接して設けられ、片開きの板部がカートン27の内部に押し込まれる構成の押圧変形部63、64としても良い。また、これらの内、押圧変形部64のように、側壁27Aと折曲罫線27aを介して接して備えられる側壁27Bに、ミシン目からなる破断誘導部64aが設けられた構成としても良い。
また、カートン27の一側壁(図示例では側壁27B)に設けられ、全体が押し込まれることで大きな開口を形成する押圧変形部65としても良い。
【0032】
またさらに、図3に示す例の押圧変形部75のように、カートン28の内側方向に変形した際に、切れ込み部76a、76bが破断され、押し込み板79が折曲線78から折れ曲がることにより、鋭角部77が形成される構成としても良い。図示例の鋭角部77は、頂点77aが下方(図3の下方)を向くように形成されている。このように、鋭角部77が備えられる押圧変形部75とすることにより、鋭角部77に押し当てるようにシュリンクフィルム3をカートン28の内側方向へ押し込むことで、シュリンクフィルム3を破断させるのが一層容易になる。
また、押圧変形部に備えられる鋭角部としては、上述の押圧変形部75に備えられる鋭角部77のような形状のものには限定されない。例えば、図4に示す例のカートン29のように、側壁29Aに設けられた各々の押圧変形部66、67、68、69、70に、複数の各鋭角部66a、67a、68a、69a、70aが備えられた構成としても良い。また、図示例のカートン29の側壁29Bに設けられた各々の押圧変形部71、72、73、74のように、各々の鋭角部71a、71b、72a、73a、74aの形状や数は如何様であっても良く、適宜決定することができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例によって本発明に係るシュリンクフィルム被覆カートンを詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0034】
[シュリンクフィルム被覆カートンのサンプル作製]
本実施例では、図1に示すような、押圧変形部4が設けられてなる、本発明に係るシュリンクフィルム被覆カートンのサンプルを作製するとともに、押圧変形部が設けられていない従来のシュリンクフィルム被覆カートンのサンプルを作製した。
まず、図1に示すような、縦176mm×横72mm×奥行き45mmの寸法とされたカートン2を形成するため、板紙材料を所定形状並びに寸法に裁断した。この際、板紙材料として、表面にアルミ箔を貼り合わせた350g/mの板紙を使用した。
次いで、上記裁断後の板紙において、側壁2A、2B上に、押圧変形部4を構成する切れ込み部41をミシン目で形成するとともに、折曲線42を罫線として形成した。
次いで、上記裁断後の板紙を、糊付によって紙箱として組み立て、カートン2とした。
【0035】
次いで、カートン2の内部に、液剤が樹脂容器内に収容された中身商品{育毛剤:商品名:毛髪力ダブルジー(ZZ):ライオン株式会社製(登録商標)}を収容し、天板2Eを封緘した。
次いで、中身商品が収容されたカートン2の表面に、シュリンクフィルム3を被せた。この際、シュリンクフィルム3として、厚さ17μmのポリプロピレン/ポリエチレン積層フィルムを用いた。
そして、表面がシュリンクフィルム3で覆われたカートン2をコンベア上に載置し、オーバーラップシュリンクトンネル内を所定速度で搬送して熱風を当て、PP/PE積層フィルムからなるシュリンクフィルム3を収縮させることにより、カートン2全体をシュリンクフィルム3で一括被覆し、本発明に係る実施例のシュリンクフィルム被覆カートンのサンプルを作製した。なお、シュリンクフィルム3には、ミシン目等が形成されていないことから、シュリンクフィルムを上記手順で収縮させる際に熱で裂けるようなことは無かった。
【0036】
また、カートンの表面に押圧変形部を設けなかった点を除き、上記実施例と同様の材料及び手順を用いて、比較例のシュリンクフィルム被覆カートンのサンプルを作製した。
【0037】
[評価試験]
上述の手順で得られた実施例及び比較例のシュリンクフィルム被覆カートンを用いて、以下の説明する方法でシュリンクフィルムの破断試験を行った。
ここで、評価パネル(被験者)として、包装用品に関する専門パネル(n=3名)を用い、同条件で評価を行なった。
そして、上記実施例及び比較例のシュリンクフィルム被覆カートンについて、カートン表面に被覆されたシュリンクフィルムを、それぞれ素手の状態で指を用いて破断させ、シュリンクフィルムを引裂いてカートン表面から剥離させる際の作業性を評価した。
実施例及び比較例のシュリンクフィルム被覆カートンの、シュリンクフィルムの破断試験の評価結果を下記表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
[評価結果]
表1に示す結果のように、カートン2の表面に押圧変形部4が設けられてなる実施例のシュリンクフィルム被覆カートンは、全てのパネル(n=3名:パネルA,B,C)が、押圧変形部4をシュリンクフィルム3上から押圧することにより、簡単にシュリンクフィルム3を押し破ることができた。そして、この破断位置を開封開始部として、シュリンクフィルム3を容易に引裂き、カートン2表面から剥離させることができた。
【0040】
一方、カートンの表面に押圧変形部が設けられていない比較例のシュリンクフィルム被覆カートンは、全パネル(n=3名)の内、パネルAが、シュリンクフィルムを破断させて開封開始部を形成することができず、結果として、シュリンクフィルムを引裂いてカートンを取り出すことができなかった。
また、パネルBは、カートン表面にシュリンクフィルムを被覆する際に形成される帯状のサック部に、無理矢理指を差し込んでシュリンクフィルムを引裂き、カートンを取り出すことはできた。しかしながら、開封作業が困難であるとともに、パネルの指が大きい場合には、サック部に指を差し込むこと自体が不可能であることが明らかである。
また、パネルCは、パネルAと同様、シュリンクフィルムを破断させて開封開始部を形成することができず、シュリンクフィルムを引裂いてカートンを取り出すことができなかった。
【0041】
以上の結果により、本発明のシュリンクフィルム被覆カートンが、シュリンクフィルムを容易に破断させて開封開始部を形成することができ、この開封開始部からシュリンクフィルムを容易に引き剥がしてカートンから剥離させることが可能であることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係るシュリンクフィルム被覆カートンの一例を模式的に説明するための図であり、押圧変形部がカートン内側方向へ変形された状態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るシュリンクフィルム被覆カートンの他例を模式的に説明するための斜視図である。
【図3】本発明に係るシュリンクフィルム被覆カートンの別の例を模式的に説明するための斜視図である。
【図4】本発明に係るシュリンクフィルム被覆カートンの更に別の例を模式的に説明するための斜視図である。
【図5】従来のシュリンクフィルム被覆カートンを説明する模式図である。
【符号の説明】
【0043】
1…シュリンクフィルム被覆カートン、2、27、28…カートン、2A、2B、2C、2D、27A、27B、28A、28B…側壁(表面)、2E…天板(表面)、2F…底板(表面)、3…シュリンクフィルム、4、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75…押圧変形部、5…開封開始部、77、66a、67a、68a、69a、70a、71a、71b、72a、73a、74a…鋭角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板紙からなるカートンの表面がシュリンクフィルムによって被覆されてなるシュリンクフィルム被覆カートンであって、
前記カートンの表面には、外部からの押圧によって前記カートンの内側方向に変形可能とされた押圧変形部が少なくとも一以上設けられており、
前記押圧変形部が前記シュリンクフィルム上から押圧されて前記カートンの内側方向に変形した際、前記シュリンクフィルムが前記押圧変形部上に押し込まれて破断する箇所が開封開始部とされ、該開封開始部から前記シュリンクフィルムが開封可能とされていることを特徴とするシュリンクフィルム被覆カートン。
【請求項2】
前記カートンが四側壁を有する断面矩形状の角筒体に形成されており、前記押圧変形部が前記カートンの側壁の内の何れかの箇所に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシュリンクフィルム被覆カートン。
【請求項3】
前記押圧変形部が、前記カートンに備えられる各側壁の間に形成された折曲罫線にかかるように設けられていることを特徴とする請求項2に記載のシュリンクフィルム被覆カートン。
【請求項4】
前記押圧変形部は、前記カートン内側方向に変形した際に少なくとも一部が破断されることにより、鋭角部が形成されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のシュリンクフィルム被覆カートン。
【請求項5】
板紙からなるカートンの表面がシュリンクフィルムによって被覆されてなるシュリンクフィルム被覆カートンの開封方法であって、
前記カートンの表面に設けられる押圧変形部を、前記シュリンクフィルム上から押圧して前記カートン内側方向に変形させるとともに、前記シュリンクフィルムを、前記カートン内側方向に変形した前記押圧変形部上に押し込んで破断させることによって開封開始部を形成し、前記シュリンクフィルムを前記開封開始部から破断しながら前記カートン表面から剥離することによって開封することを特徴とするシュリンクフィルム被覆カートンの開封方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−73522(P2009−73522A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243919(P2007−243919)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】