説明

シュリンクラベル及びその製造方法

【課題】 インクジェット式印刷を可能とするシュリンクラベルと、その製造方法を提供することにある。
【解決手段】 シュリンクラベル10は、熱収縮性能を有する樹脂フィルム11の一方の面に受容剤層13が設けられる。このシュリンクラベルの製造方法は、熱収縮性能を有する樹脂フィルムの一方の面に受容剤を塗布し、熱収縮開始温度未満の温度により乾燥させて受容剤層を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトルや缶等の容器用ラベルとして使用されるシュリンクラベル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品用容器等として使用されているペットボトルには、ラベルとしてシュリンクラベルが使用されている。このシュリンクラベルは、3次曲面を有する容器にも装着が可能なように、所定の温度以上に加熱すると収縮するものであり、例えば、特開2003−213103号公報に記載されたような樹脂フィルムが使用されており、原材料及び内容量等と共に模様や色彩等によるデザインが印刷されている。
【0003】
このシュリンクラベルのデザインは製品のイメージを演出するものであり、消費者の購買意欲を高め得るような優れたものが求められている。そのため、デザインが決定されるまでの過程では、数多くの図案がデザイナーにより作成され、図案の修正が繰り返し行われる。多くの場合、図案はコンピューターで作成され、容器に装着したときの状態がコンピューターでシミュレーションされたり、紙に印刷されたりする。そして、デザイン決定の最終段階でデザインが数種類に絞り込まれ、それらのデザインが実際にシュリンクラベルに印刷され、シュリンクラベルを容器に装着したサンプルが作成される。
【0004】
このサンプル作成に対する需要は、デザインの初期段階においても、デザイナーの間に存在する。つまり、デザインを実際にシュリンクラベルに印刷し、これを容器に装着してイメージを確認しながら、デザイン初期段階の創作活動を進めたいとの要望がある。
しかしながら、シュリンクラベルの印刷は、オフセット印刷やグラビア印刷等の方法により行われているため、比較的大量に印刷する場合には適しているが、デザイナーによる単品や数個の印刷には適していない。またパソコン等に接続され得る比較的小型のインクジェット式印刷装置では、シュリンクラベルに用いられる樹脂フィルム上にインクが付着し難く、印刷は不可能であった。
【特許文献1】特開2003−213103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題を鑑みてなされたものであり、その課題は、インクジェット式印刷を可能とするシュリンクラベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、熱収縮性能を有する樹脂フィルムの一方の面に、インクジェット式印刷のためのインクを定着させるための受容剤層を設けたことを特徴とするシュリンクラベルが提供される。
ここで、前記樹脂フィルムは、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニール等から形成されたものを使用することが可能である。
また前記受容剤は、例えば、変性ポリビニールアルコール等をカチオン化させたもの、あるいはアクリル系酢酸エチルビニール等を主成分とするものを使用することができる。
【0007】
また本発明では、請求項1に記載のシュリンクラベルの製造方法であって、熱収縮性能を有する樹脂フィルムの一方の面に、インクジェット式印刷のためのインクを受容し得る受容剤を塗布し、熱収縮開始温度未満の温度により乾燥させて受容剤層を形成することを特徴とするシュリンクラベルの製造方法が提供される。
ここで、前記受容剤は、ほぼ2〜10分程度、ほぼ55℃〜75℃程度の温度により乾燥させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシュリンクラベルは、樹脂フィルムに受容剤層が設けられているため、インクジェット式印刷が可能である。したがって、例えば、パソコン等の電子機器を用いてデザインを創作すれば、これに接続したインクジェット式印刷装置で、単品や数個のシュリンクラベルも容易にサンプル製作が可能になった。
【0009】
本発明のシュリンクラベルの製造方法では、樹脂フィルムが熱収縮を開始する温度未満の温度で受容剤を乾燥させるものであり、これによりインクジェット式印刷可能なシュリンクラベルが製造可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
シュリンクラベル10は、図1の断面図に示したように、熱収縮性能を有する樹脂フィルム11の一方の面にアンカー剤層12が設けられ、この上に受容剤層13が設けられると共に、他の面に剥離可能に紙14が貼着されたものである。
【0011】
ここで、樹脂フィルム11としては、例えば、所定の温度以上に加熱したときに縦方向よりも横方向が大きく収縮するように一軸方向収縮性に優れ、厚さが20〜150μm程度のポリエステルフィルムを使用することが可能である。このようなポリエステルフィルムを例示すれば、東洋紡績株式会社の熱収縮タイプポリエステルフィルム(登録商標名:スペースクリーン)を挙げることができる。この種の樹脂フィルム11は、アンカー剤層12及び受容剤層13が無い状態で使用した場合、オフセット印刷やグラビア印刷の方法では印刷可能であるが、インクジェット式印刷では、樹脂フィルム上への印刷が不可能であった。
【0012】
受容剤層13は、インクジェット式印刷のためのインクを受容して、樹脂フィルム11上に定着させるためのものであり、例えば、変性ポリビニールアルコール等をカチオン化させたもの、アクリル系酢酸エチルビニール等を主成分とするものが使用される。受容剤の塗布量としては、乾燥状態で15〜30g/m2程度であり、塗布する際には16〜50%に希釈する。
【0013】
アンカー剤層12は、受容剤を樹脂フィルム11に定着させるためのものであり、例えば、水分散型ポリウレタンを主成分とするものが使用される。アンカー剤の塗布量としては、例えば、10g/m2程度であり、この塗布したアンカー剤の95%程度が乾燥工程で蒸発される。
なお、アンカー剤は樹脂フィルムの製造時に予め塗布されているか、あるいはシュリンクラベルの製造時に樹脂フィルムに別途塗布するものである。アンカー剤に替わるものとしては、コロナ放電により樹脂フィルム11の表面を処理する方法もある。
【0014】
樹脂フィルム11に貼着される紙14は、ブロッキング防止及び塗工面保護、すなわち、樹脂フィルムが重ねられたときに相互に貼り合わされることを防止すると共に塗工面が傷つくことを防止するものであり、例えば、64g/m2の上質紙を使用することができる。
なお、上質紙に替わるものとしては、グラシン紙、パーチメント等の紙、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等を使用することができる。
【0015】
次に、図2の概略図を参照してシュリンクラベルの製造方法について説明する。
このシュリンクラベルの製造過程で使用される装置20は、主要部として、コーター部21と、乾燥部22と、張力制御装置(図示せず)を有するものである。
コーター部21は、樹脂フィルム等の基材にアンカー剤や受容剤等の薬品類を塗工する装置であり、グラビアコーター、コンマコーター、メイヤバーコーター、リバースコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、ドクターコーター等があり、これら各種のコーターが適宜切り替え可能に設けられている。乾燥部22は、薬品類が塗工された基材を通過させながら乾燥する装置であり、その基材の通過速度は適宜調整することが可能である。乾燥部22としては、例えば、フローティング式乾燥機22a、ロールサポート乾燥機及びドライヤー22b等が使用可能である。張力制御装置はシュリンクラベルの製造過程で樹脂フィルムに作用する張力を最適になるように調整する装置である。
【0016】
以上のような装置20では、樹脂フィルムがロール状に巻かれた原反フィルムが設置され、この原反フィルムからコーター部21に樹脂フィルムを送り出し、ここで、水分散型ポリウレタンを主成分とするアンカー剤10g/m2程度を塗布する。このとき、コーター部21はグラビアコーターが使用される。アンカー剤の塗布後に、これをフローティング式乾燥部22aに送り出す。フローティング式乾燥部22aでは、樹脂フィルムを20m/分程度の速度により1分間程度で通過させ、樹脂フィルムが熱収縮を開始する温度未満の温度、すなわち60℃程度でアンカー剤を乾燥させる。この乾燥工程により、アンカー剤に含まれる95%程度の水が蒸発される。次に、樹脂フィルム上のアンカー剤をドライヤー22bにより更に乾燥させ、ロール状に巻き取って巻取ロールが作られる。
【0017】
このように巻き取られた中間製品である中間ロールは、再び装置20に設置され、この中間ロールからコーター部21に樹脂フィルムを送り出し、ここで、変性ポリビニールアルコールを主成分とする受容剤132g/m2程度を塗布する。このとき、コーター部21はコンマコーターに切り替えられている。受容剤の塗布後に、これをフローティング式乾燥部22aに送り出す。フローティング式乾燥部22aでは、樹脂フィルムを3m/分程度の速度で2〜10分間程度で通過させ、アンカー剤の塗工工程と同様に温度60℃程度で乾燥させる。この乾燥工程により受容剤に含まれる50〜75%程度の水が蒸発される。次に、樹脂フィルム上の受容剤をドライヤー22bにより更に乾燥させ、ロール状に巻かれた原反から送り出した上質紙と共に巻き取ると、巻取ロールすなわちシュリンクラベルの原反が完成する。
【0018】
以上のように、本発明のシュリンクラベルの製造方法では、アンカー剤と受容剤とを塗布した後、従来製品における乾燥部での通過速度に比べ、格段に低速で通過させながら、樹脂フィルムが熱収縮を開始する温度未満の温度で乾燥させることにより、樹脂フィルム上にアンカー剤層と受容剤層とを形成するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のシュリンクラベルの断面図である。
【図2】本発明のシュリンクラベルの製造方法を説明するための簡略図である。
【符号の説明】
【0020】
10 シュリンクラベル
11 樹脂フィルム
13 受容剤層
14 紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱収縮性能を有する樹脂フィルムの一方の面に、インクジェット式印刷のためのインクを定着させるための受容剤層を設けたことを特徴とするシュリンクラベル。
【請求項2】
請求項1に記載のシュリンクラベルの製造方法であって、
熱収縮性能を有する樹脂フィルムの一方の面に、インクジェット式印刷のためのインクを受容し得る受容剤を塗布し、熱収縮開始温度未満の温度により乾燥させて受容剤層を形成することを特徴とするシュリンクラベルの製造方法。
【請求項3】
前記受容剤は、ほぼ2〜10分程度、ほぼ55℃〜75℃程度の温度により乾燥させることを特徴とする請求項2に記載のシュリンクラベルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−178352(P2006−178352A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374043(P2004−374043)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(591053579)日本紙パルプ商事株式会社 (4)
【出願人】(392009009)日東紙工株式会社 (1)
【出願人】(504473566)株式会社インテックシージー (2)
【Fターム(参考)】