説明

シュレッダーの細断機構

【課題】 細断部から落下した細断屑が屑収容部からはみ出すのを防止することができるようにしたシュレッダーの細断機構を提供する。
【解決手段】 各々が全長に亘って断面半円状の切り欠きを有する一対の回転軸と、前記回転軸の周面に貫装され周縁部に複数の切り刃部を設けた回転刃と、を有し、前記切り欠きが、前記回転軸の両端部では同一位置とされ、前記回転軸の中心にいくに従い前記回転軸の幅方向に同一方向に変位され、前記回転軸の中央において前記回転軸の軸心に対して最も変位されてなり、各回転軸の前記切り刃部の刃先群がV字状を形成するように配列した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄用紙などの被細断物を細断するシュレッダーの細断機構の改良に関し、更に詳細には屑収容部の中心に細断屑を堆積させることができるようにしたシュレッダーの細断機構に関する。
【背景技術】
【0002】
シュレッダーは、不要文書等の被細断物をその内容の判別が不能までに細断刃で細断する機械である。シュレッダー本体の上部には、被細断物を投入するための投入口が設けられており、前記投入口に投入された被細断物を細断するための多数の回転刃から構成される一対の細断刃が設けられている。シュレッダー本体は箱状とされており、前記シュレッダー本体には、投入口側から見た平面視が矩形とされた矩形状のタイプと投入口側から見た平面視が略正方形とされた略正方形状のタイプなどがある。
【0003】
シュレッダーの細断刃で細断された細断屑は、細断刃の下方に設置されたシュレッダー本体内の屑収容箱内に収容されるが、この細断屑は、屑収容箱内に均一に堆積するのではなく、シュレッダー本体内の屑収容箱の幅方向にバラバラに堆積する。そして、前記一対の細断刃は、平行に配置されているため、紙を細断された細断屑はシュレッダー本体内の屑収容箱の奥行き方向にもバラバラに堆積する。結果として、紙を細断された細断屑はシュレッダー本体内の屑収容箱内にバラバラに飛散し、堆積することとなる。
【0004】
一方、従来は、図7に示すように、六角形の軸架用孔126を有し、周縁部に複数の切り刃部116a,116b,116c,116d,116e,116f,116gを設けた円板状の回転刃118を六角形状の軸114に挿入していたが、該回転刃118を挿入するときに、幾枚か毎に(図7の例では3枚毎に)該回転刃118の位相差を変えて組み立てていた。
【0005】
そこで、回転軸にD形断面を構成する平坦部をスパイラル状に捩って形成することで、刃部が滑らかな位相差を有した状態に配列されるようにした文書細断機の細断機構が知られている(特許文献1)。
【0006】
特許文献1のように刃部が滑らかな位相差を有した状態に配列しても、細断屑は、屑収容箱内に均一に堆積するのではなく、シュレッダー本体内の屑収容箱内にバラバラに飛散し、堆積する。
【0007】
このように細断屑がバラバラに飛散すると、シュレッダー本体内の屑収容箱に大部分の細断屑は入るものの、シュレッダー本体の内壁と屑収容箱の外壁との間には若干隙間が空いているため、細断部から落下した細断屑が屑収容箱から少しはみ出して細断屑が屑収容箱の外に散らかることがある。そのため、屑収容箱に溜まった細断屑を捨てる際に、シュレッダー本体内の掃除も行う必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭62−160659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、細断部から落下した細断屑が屑収容部からはみ出すのを防止することができるようにしたシュレッダーの細断機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のシュレッダーの細断機構は、各々が全長に亘って断面半円状の切り欠きを有する一対の回転軸と、前記回転軸の周面に貫装され周縁部に複数の切り刃部を設けた回転刃と、を有し、前記切り欠きが、前記回転軸の両端部では同一位置とされ、前記回転軸の中央にいくに従い前記回転軸の幅方向に同一方向に変位され、前記回転軸の中央において前記回転軸の軸心に対して最も変位されてなり、各回転軸の前記切り刃部の刃先群がV字状を形成するようにしたことを特徴とする。
【0011】
このように、前記断面半円状の切り欠きをV字状に回転軸に設け、前記回転軸の前記切り刃部の刃先群がV字状を形成するようにすることで、従来の特許文献1のようにD形断面を構成する平坦部をスパイラル状に捩って形成する場合に比べて、細断屑が前記切り刃部の刃先群の中央へと集まる構造とされている。故に、細断屑の飛散が低減され、シュレッダーの細断部から落下した細断屑が屑収容部からはみ出すのを防止することができる。
【0012】
また、従来の特許文献1のようにD形断面を構成する平坦部を一定方向に捩って形成する場合に比べて、細断屑の捩れが低減され、切り刃部に噛み込み易いという利点もある。
【0013】
さらに、前記回転軸の中央における変位、すなわち、前記断面半円状の切り欠きを任意の角度で捩れさせてV字状に加工することで、切り刃部の刃先の変位角を滑らかに自由に決定できる。それにより、隣り合わせの切り刃部の刃先のズレを極力少なくすることが可能となり、細断チップのつながりを減少(細断率の向上)させることができる。
【0014】
なお、前記回転軸の周面に回転刃を貫装するだけで任意の捩れ角となるため、従来の六角形回転軸の周面に回転刃を貫装する場合と比べて、回転刃の刃先の位相関係を考えることなく貫装するのみで良いから、作業ミス及び作業時間の低減が可能となるという利点もある。
【0015】
前記切り欠きの前記回転軸の中央から両端部に対する変位角としては、前記回転軸の軸心に対してそれぞれ1°〜25°であるのが好適であり、2°〜20°がさらに好適であり、3°〜10°が最も好適である。すなわち、前記回転軸の両端部に形成されたD形断面の平坦部を水平とし、前記回転軸を側面から見た時の前記回転軸の軸心に対してそれぞれ1°〜25°であるのが好適であり、2°〜20°がさらに好適であり、3°〜10°が最も好適である。
【0016】
前記切り欠きの前記回転軸の中央から両端部に対する変位角を下記式によって算出してなるのが好ましい。
(数1)
θ=tan−1(a×tanθ/b)
(式中、θは中央から両端部に対する切り欠きの変位角、θは切り刃部の刃先の変位角、aは回転軸の外径、bは切り刃部の刃先の外径である。)
【0017】
さらに、前記各回転軸のV字状の刃先群の頂点が互いに接離するように前記各回転軸の回転が同期されてなるのが好ましい。前記各回転軸の回転を同期させるには、モーターなどの駆動手段を同一とし、前記各回転軸の回転を同期的に回転させればよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のシュレッダーの細断機構によれば、細断部から落下した細断屑が屑収容部からはみ出すのを防止することができるという著大な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のシュレッダーの細断機構に用いられる回転軸の周面に複数の回転刃を貫装した状態を示す斜視図である。
【図2】本発明のシュレッダーの細断機構に用いられる回転軸の側面図である。
【図3】本発明のシュレッダーの細断機構に用いられる回転軸の斜視図である。
【図4】本発明のシュレッダーの細断機構に用いられる回転軸と回転刃の捩れ角を説明する説明図である。
【図5】本発明のシュレッダーの細断機構を下方から見た底面図である。
【図6】本発明のシュレッダーの細断機構によって細断された細断屑の堆積状態をよく示す側面図である。
【図7】従来の六角形状の回転軸に回転刃を貫装した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0021】
図において、符号10は本発明のシュレッダーの細断機構の一つの実施の形態を示す。
【0022】
細断機構10は、図1〜図5によく示される如く、各々が全長に亘って断面半円状の切り欠き12を有する一対の回転軸14a,14bと、前記回転軸14a,14bの周面に貫装され周縁部に複数の切り刃部16a,16b,16c,16d,16e,16f,16gを設けた回転刃18と、を有し、前記切り欠き12が、前記回転軸14a,14bの両端部20,22では同一位置とされ、前記回転軸14a,14bの中央Cにいくに従い前記回転軸14a,14bの幅方向に同一方向に変位され、前記回転軸14a,14bの中央Cにおいて前記回転軸14a,14bの両端部20,22に対して最も変位されてなり、各回転軸14a,14bの前記切り刃部16a,16b,16c,16d,16e,16f,16gの刃先群24a,24bが図5によく示されるようにV字状を形成するように配列されている。すなわち、図5によく示されるように、回転刃18の前記切り刃部16a,16b,16c,16d,16e,16f,16gは前記回転軸14a,14bの中央Cにおいて前記回転軸14a,14bの両端部に対して最も変位されるように位相が少しずつずれて配列されている。
【0023】
図1では、端部20から中央への変位において、軸心Qからみた刃先の変位をS、端部22から中央への変位において、軸心Qからみた刃先の変位をSとして示した。このように、回転刃18の前記切り刃部16a,16b,16c,16d,16e,16f,16gを前記回転軸14a,14bの中央Cにおいて前記回転軸14a,14bの両端部に対して最も変位されるように位相が少しずつずれて配列することで、刃先が少しずつずれて配列され、刃先群24a,24bが図5によく示されるようにV字状を形成する。
【0024】
なお、図示例では、複数の切り刃部を7つ設けた例を示したが、数に特別の限定はなく、例えば5〜15個程度設けるのが好適である。
【0025】
また、図1によく示すように、回転刃18には断面半円状の切り欠き12を有する一対の回転軸14a,14bに対応して、回転軸装着用のD形孔26が中央に形成されている。
【0026】
図2では幅方向をy方向、長さ方向をx方向、高さ方向をz方向で示した。前記切り欠き12の前記回転軸14a,14bの中央Cから両端部20,22に対する変位角θとしては、前記回転軸14a,14bの両端部に形成されたD形断面の平坦部40a,40bを水平とし、前記回転軸14a,14bを側面から見た時の前記回転軸14a,14bの軸心Qに対してそれぞれ1°〜25°であるのが好適であり、2°〜20°がさらに好適であり、3°〜10°が最も好適である。
【0027】
このような変位角θの算出について、図4に基づいて説明する。図4では、前記回転軸14a,14bの両端部に形成されたD形断面の平坦部40a,40bを水平とし、前記回転軸14a,14bを側面から見た時の前記回転軸14a,14b回転軸の外径a、切り刃部16a,16b,16c,16d,16e,16f,16gの刃先の外径b、切り刃部16a,16b,16c,16d,16e,16f,16gの刃先の変位角θ、中央部Cから端部20への変位角θを模式的に示してある。前記切り欠き12の回転軸14aの軸心Qに対する回転軸14aの中央における変位角は、下記式によって算出することができる。
(数1)
θ=tan−1(a×tanθ/b)
(式中、θは中央から両端部に対する切り欠きの変位角、θは切り刃部の刃先の変位角、aは回転軸の外径、bは切り刃部の刃先の外径である。)
【0028】
このようにして構成された細断機構10は、図5に示すように、枠体27,28を介して筐体30に取り付けられており、モーター32によって一対の回転軸14a,14bが同期的に回転駆動される。
【0029】
そして、前記各回転軸14a,14bのV字状の刃先群24a,24bの頂点が互いに接離するように前記各回転軸14a,14bの回転が同期されている。図5の図示例では、V字状の刃先群24a,24bの頂点が互いに近接した状態となっている。
【0030】
細断部である細断機構10にて細断された細断屑34はシュレッダー38の筐体30内の屑収容部36に収容される。このとき、図6に示すように、細断部から落下した細断屑34は、各回転軸14a,14bの前記切り刃部16a,16b,16c,16d,16e,16f,16gの刃先群24a,24bがV字状を形成するように配列されているため、細断屑34が刃先群24a,24bの中央へと集まる構造とされている。故に、細断屑34の飛散が低減され、シュレッダー38の細断部である細断機構10から落下した細断屑34が屑収容部36からはみ出すのを防止することができる。
【符号の説明】
【0031】
10:細断機構、12:断面半円状の切り欠き、14a,14b:回転軸、16a,16b,16c,16d,16e,16f,16g,116a,116b,116c,116d,116e,116f,116g:切り刃部、18,118:回転刃、20,22:端部、24a,24b:刃先群、26:D形孔、27,28:枠体、30:筐体、32:モーター、34:細断屑、36:屑収容部、38:シュレッダー、40a,40b:D形断面の平坦部、126:六角形軸架用孔、114:六角形状軸、a:回転軸の外径、b:切り刃部の刃先の外径、C:中央、Q:軸心、θ:変位角、θ:切り刃部の刃先の変位角、S,S:刃先の変位。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が全長に亘って断面半円状の切り欠きを有する一対の回転軸と、前記回転軸の周面に貫装され周縁部に複数の切り刃部を設けた回転刃と、を有し、前記切り欠きが、前記回転軸の両端部では同一位置とされ、前記回転軸の中心にいくに従い前記回転軸の幅方向に同一方向に変位され、前記回転軸の中央において前記回転軸の軸心に対して最も変位されてなり、各回転軸の前記切り刃部の刃先群がV字状を形成するように配列したことを特徴とするシュレッダーの細断機構。
【請求項2】
前記切り欠きの前記回転軸の中央から両端部に対する変位角が、前記回転軸の軸心に対してそれぞれ1°〜25°であることを特徴とする請求項1記載のシュレッダーの細断機構。
【請求項3】
前記切り欠きの前記回転軸の中央から両端部に対する変位角を下記式によって算出してなることを特徴とする請求項1又は2記載のシュレッダーの細断機構。
(数1)
θ=tan−1(a×tanθ/b)
(式中、θは中央から両端部に対する切り欠きの変位角、θは切り刃部の刃先の捩れ角、aは回転軸の外径、bは切り刃部の刃先の外径である。)
【請求項4】
前記各回転軸のV字状の刃先群の頂点が互いに接離するように前記各回転軸の回転が同期されてなることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のシュレッダーの細断機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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