説明

シュードプロリンジペプチド

式(I)(式中、Rはαアミノ酸の側鎖であり、Rはアミノ保護基であり、そしてRおよびRは水素またはC1−4−アルキルから独立して選択され、Rは水素またはメチルである)のシュードプロリンジペプチドを、式(II)(式中、RおよびRは上記の通りである)のアミノ酸誘導体から出発して製造するための3工程の方法を開示する。シュードプロリンジペプチドはSer、ThrおよびCysのための可逆的保護基として使用することができて、それゆえにペプチド化学の分野における多用途の手段である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式
【0002】
【化1】

【0003】
の化合物の製造のための新規方法に関するものである。
【0004】
式Iのシュードプロリンジペプチドは、Ser、ThrおよびCysのための可逆的保護基として使用することができ、ペプチド化学の分野においていくつかの固有の問題を克服するための多用途の手段であることが判明している[JACS 1996,118,9218−9227]。ペプチド配列内でYProの存在はβ−シート構造の分裂をもたらし、分子間凝集の原因として考慮される。得られた増加した溶媒和およびFmoc固体相ペプチド合成のようなペプチド集合体におけるカップリング速度論は、特に「difficult sequences」を含有するペプチドに対して鎖延長を促進する。
【0005】
本発明の目的は、高収率でいかなるクロマトグラフィー精製工程なしに生成物を得ることを可能にさせる式Iのシュードプロリンジペプチドの短期間で技術的に実行可能な合成を提供することである。
【0006】
目的は、以下に概説したような方法で達成されている。

【0007】
【化2】

【0008】
〔式中、Rはαアミノ酸の側鎖であり、Rはアミノ保護基であり、そしてRおよびRは水素またはC1−4−アルキルから独立して選択され、Rは水素またはメチルである〕
の化合物の製造のための方法は、
【0009】
a) 式
【0010】
【化3】

【0011】
〔式中、RおよびRは上記の通りである〕
のアミノ酸誘導体を、セリンまたはトレオニンで変換して、次の工程において、

【0012】
【化4】

【0013】
〔式中、R、RおよびRは上記の通りであり、
、RおよびRの全てが水素でないという条件で、R、RおよびRは水素、C1−4−アルキルまたはC3−7−シクロアルキルから独立して選択される〕
のアンモニウム塩として得られたジペプチドを結晶化すること、
【0014】
b) 式IIIのアンモニウム塩から酸の存在下で遊離酸を遊離して、抽出によりアミンを除去すること、
そして
【0015】
c)
【0016】
【化5】

【0017】
〔式中、RおよびRの両方が水素でないという条件で、RおよびRは水素またはC1−4−アルキルから独立して選択され、R9aおよびR9bは独立してC1−4−アルキルであり、R10はC1−4−アルキル、C1−4−アルカノイルまたはアリールの意味を有し、そしてR11は水素またはC1−3−アルキルである〕
から選択される化合物と、酸触媒の存在下で閉環をもたらすこと
を含む。
【0018】
セリンまたはトレオニンが、ラセミ化合物としてかまたはそれらの異性体のさまざまな混合物中で、そのL−配置中またはそれらのD−配置中のどちらか一方を使用できることがさらに理解される。好ましくはL−配置を使用する。
【0019】
用語「C1−4−アルキル」は、1〜4個の炭素原子の分岐鎖または直鎖の一価の飽和脂肪族炭化水素基を言う。この用語は、さらに、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、S−ブチルおよびt−ブチルなどの基により例示される。
【0020】
用語「C3−7−シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルなどの、3〜7個の炭素原子を含有するシクロアルキル基を言う。
【0021】
用語「アリール」は、フェニル基またはナフチル基、好ましくはフェニル基に関連し、それらは場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、CN、CF、NO、NH、N(H、アルキル)、N(アルキル)、カルボキシ、アミノカルボニル、アルキル、アルコキシ、アリールおよび/またはアリールオキシにより単置換または多置換されることができる。好ましいアリール基はフェニルである。
【0022】
用語「アルカノイル」は、アセチル、n−プロパノイル、イソプロパノイル、n−ブタノイル、s−ブタノイルおよびt−ブタノイルなどのC1−4−アルキルカルボニル基に関連し、好ましくはアセチルである。
【0023】
特に、Rに使用される用語「アミノ酸の側鎖」は、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパラギン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、アラニン、セリン、トレオニン、チロシン、トリプトファン、システイン、グリシン、アミノイソ酪酸およびプロリンから選択されるαアミノ酸の側鎖を言う。
【0024】
ヒドロキシ基を有するアミノ酸の側鎖において、ヒドロキシ基は以下に定義したようなヒドロキシ保護基により場合により保護されていることが理解される。付加アミノ基を有する側鎖において、アミノ基は以下に定義したようなアミノ保護基により場合により保護される。
【0025】
好ましくはRは、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アスパラギン、グルタミン、グルタミン酸、リジン、アスパラギン酸、アラニン、セリン、トレオニン、チロシンおよびトリプトファンの側鎖を表す。より好ましいのは、セリンおよびトレオニンである。
【0026】
用語「アミノ保護基」は、アミノ基の反応性を妨げるために従来使用される任意の置換基を言う。適切なアミノ保護基は、Green T.,“Protective Groups in Organic Synthesis”,Chapter 7,John WileyとSons,Inc.,1991,309-385に記述されている。適切なアミノ保護基は、Fmoc、Cbz、Moz、Boc、Troc、TeocまたはVocである。好ましいアミノ保護基はFmocである。
【0027】
用語「ヒドロキシ保護基」は、ヒドロキシ基の反応性を妨げるために従来使用される任意の置換基を言う。適切なヒドロキシ保護基は、Green T.,“Protective Groups in Organic Synthesis”,Chapter 1,John WileyとSons,Inc.,1991,10-142に記述されている。適切なヒドロキシ保護基は、t−ブチル、ベンジル、TBDMSまたはTBDPSである。好ましいヒドロキシ保護基はt−ブチルである。
【0028】
明細書および請求項に使用される略語の意味は、以下の表に概説される通りである。
【0029】
【表1】

【0030】
工程a)
最初の工程a)において、

【0031】
【化6】

【0032】
〔式中、RおよびRは上記の通りである〕
のアミノ酸誘導体を、セリンまたはトレオニンと反応させ、得られたジペプチドを、

【0033】
【化7】

【0034】
〔式中、R、R、R、R、RおよびRは上記の通りである〕
のアンモニウム塩として結晶化する。
【0035】
式IIのアミノ酸誘導体は、一般の市販の化合物である。RおよびRに与えられる優先によれば、式IIの適切なアミノ酸誘導体は、Fmoc−L−Ser(tBu)−OH、またはFmoc−L−Thr(tBu)−OHである。
【0036】
式IIのセリンまたはトレオニンとカップリングする前に、アミノ酸誘導体を活性化剤で好都合に活性化する。
【0037】
適切な活性化剤は、DIC/HOSu、DIC/ペンタフルオロフェノール、DIC/HOBt、DCC/HOSu、DCC/ペンタフルオロフェノール、DCC/HOBt、EDC(xHCl)/HOSuまたはHBTU/HOBtから選択することができる。好ましいカップリング剤はDIC/HOSuである。式Iのアミノ酸誘導体の1当量に関連して、DICは通常1.0〜1.4当量の量で使用され、HOSuは通常1.0〜1.8当量の量で使用される。
【0038】
一般に、活性化反応は、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトンまたはテトラヒドロフランなどの適切な有機溶媒、好ましくは−5℃〜25℃の温度で酢酸エチルの存在下で実施する。
【0039】
次に、セリンまたはトレオニンとの、好ましくはL−セリンまたはL−トレオニンとのカップリングは、10℃〜30℃の温度で、酢酸エチル、アセトンもしくはテトラヒドロフランなどの有機溶媒、または水とその混合物の存在下で実施することができる。好ましい溶媒は、アセトンと水の混合物である。
【0040】
セリンまたはトレオニンと式IIのアミノ酸誘導体との比率は、通常1.5〜3.0〜1、好ましくは2.0〜1の範囲で選択される。反応混合物のpHは、7.5〜9.0の値で好都合に設定される。
【0041】
式IIIのアンモニウム塩の形成は、

【0042】
【化8】

【0043】
〔式中、R、RおよびRの全てが水素でないという条件で、R、RおよびRは、水素、C1−4−アルキルまたはC3−7−シクロアルキルから独立して選択される〕
のアミンを前もって形成されたジペプチドに加えることにより起こる。
【0044】
式Vの適切なアミンは、全てのR、RおよびRが水素でないという条件で、R、RおよびRは、水素、エチルまたはシクロヘキシルから独立して選択されるものである。シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンおよびトリエチルアミンは、好ましいアミン類であり;ジシクロヘキシルアミンが式Vで使用される最も好ましいアミンである。結晶化は、通例、適切な有機溶媒中で、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノールまたはi−プロパノールのような低級アルコール類中で、あるいは酢酸エチルまたはテトラヒドロフラン中でもたらされる。好ましい溶媒はエタノールである。
【0045】
式IIIのアンモニウム塩は従来記述されておらず、こうして本発明のさらなる実施態様である。
【0046】
好ましいアンモニウム塩は、式IIIのジシクロヘキシルアンモニウム塩(ここで、RおよびRは上記の通りであり、Rは水素またはメチルであり、Rは水素であり、そしてRおよびRはシクロヘキシルである)である。より好ましいのは式IIIの化合物であり、
ここで:
a) RがO−tBu保護を有するL−セリン側鎖を表し、RがFmocであり、RがHであり、Rが水素であり、そしてRおよびRがシクロヘキシルである。
b) RがO−tBu保護を有するL−セリン側鎖を表し、RがFmocであり、Rがメチルであり、Rが水素であり、そしてRおよびRがシクロヘキシルである。
c) RがO−tBu保護を有するL−トレオニン側鎖を表し、RがFmocであり、RがHであり、Rが水素であり、そしてRおよびRがシクロヘキシルである。
d) RがO−tBu保護を有するL−トレオニン側鎖を表し、RがFmocであり、Rがメチルであり、Rが水素であり、そしてRおよびRがシクロヘキシルである。
【0047】
工程b)
続く工程b)において、ジペプチドの遊離酸を酸の存在下で遊離して、式Vのプロトン化アミンを抽出により除去する。特に、式IIIのアンモニウム塩の遊離酸を鉱酸の存在下で遊離して、アミンを水および/または無機塩の水溶液での抽出により除去する間、有機溶媒中に溶解させる。
【0048】
適切な鉱酸は含水硫酸または含水HCl、好ましくは含水硫酸である。
【0049】
遊離酸を溶解するための適切な有機溶媒は、酢酸エチル、t−ブチルメチルエーテルまたは塩化メチレンから選択することができる。t−ブチルメチルエーテルが好ましい溶媒であることが見い出されている。
【0050】
遊離酸を含有する有機相は、一般に水および/または塩化ナトリウムのような無機塩の水溶液で、アミンを完全に除去するために数回洗浄する。
【0051】
工程c)
工程c)において、工程b)で得られたジペプチドの遊離酸の閉環は、酸触媒の存在下で、
【0052】
【化9】

【0053】
〔式中、RおよびRの両方が水素でないという条件で、RおよびRは水素またはC1−4−アルキルから独立して選択され、R9aおよびR9bは独立してC1−4−アルキルであり、R10はC1−4−アルキル、C1−4−アルカノイルまたはアリールの意味を有し、そしてR11は水素またはC1−3−アルキルである〕
から選択される化合物を用いてもたらされる。
【0054】
好ましくは、閉環は、式IVaおよびIVcの化合物を用いてもたらされ、より好ましくは、化合物が2,2−ジメトキシプロパン、2−メトキシプロペンまたは2−アセトキシプロペンから選択され、それにより、2,2−ジメトキシプロパンが最も好ましい化合物である。
理想的には、式IVの化合物は、工程b)で得られたジペプチドとの関連で、6.0〜16.0当量、好ましくは7.0〜10.0当量の量で使用される。
【0055】
適切な酸触媒は、メタンスルホン酸、(+)カンフル−10−スルホン酸、p−トルエンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸ピリジニウムから選択され、さらにメタンスルホン酸が好ましい。酸触媒は、通常、工程b)で得られたジペプチドとの関連で、0.05〜0.30当量、好ましくは0.10〜0.20当量の量で適用される。
【0056】
閉環は、還流温度で、テトラヒドロフラン、塩化メチレンまたはトルエン、好ましくはテトラヒドロフランなどの有機溶媒の存在下でもたらされる。
【0057】
標的生成物の単離および仕上げは、当技術分野で公知である方法を使用することにより実施することができる。
【0058】
以下の実施例は、それを制限することなしに本発明を例示する。
【0059】
実施例
実施例1
機械的な撹拌棒、Pt−100温度計、還流冷却器、滴下漏斗および窒素入口を装備した二重被覆ガラス反応器1000mLに、Fmoc−L−Ser(tBu)−OH(1)25g(64.9mmol)、N−ヒドロキシスクシンイミド9.66g(83.1mmol)および酢酸エチル180mLを仕込んだ。得られた懸濁液を0℃に冷却した。酢酸エチル20mL中のジイソプロピルカルボジイミド10.49g(83.1mmol)の溶液を、15分以内に加えた。得られた混合物を0℃で2時間、次にもう1時間室温で撹拌して、サンプリングした。溶媒を、減圧下(ca.220mbar)で、最大50℃の被覆温度で完全に除去した。残留物を、35℃〜40℃の内部温度でアセトン250mLで処理し、20℃に冷却して、水13.5mLで処理した。pHを、1M HCl 1.0mLで、pH2−3に設定して、得られた混合物を12時間、20℃で撹拌して、サンプリングした。次に、懸濁液を−5℃〜0℃に冷却して、1時間この温度で撹拌した。沈殿物を濾別して、反応器およびフィルターを冷アセトン(0℃)50mLですすいだ。清澄で無色の濾液を、20℃で、60分以内に、水122.5ml中のL−セリン13.57g(127.8mmol)および炭酸ナトリウム13.63g(257mmol)の溶液に加えた。得られた混合物を1時間、20℃で撹拌して、サンプリングした。pHを、HCl(37%)28gで、pH2−3に設定して、有機溶媒を減圧下(<250mbar)で、最大50℃の被覆温度で除去した。得られた懸濁液を35℃〜40℃で、酢酸エチル125mLで処理して、得られた清澄な二相の溶液を20℃に冷却した。相を分離して、有機相を全体として酢酸エチル250mLで2回抽出した。合わせた有機層を全体としてNaCl水溶液(10%w/w)225mLで3回洗浄した。得られた有機溶液を濃縮して、溶媒を減圧下で最大50℃の被覆温度でほとんど完全に除去した。残留物をエタノール250mLに溶解して、その後、溶媒の一部(75mL)を減圧下(ca.170mbar)で、最大50℃の被覆温度で再度除去した。得られた溶液をエタノール462.5mLで処理して、20℃に冷却した。エタノール118mL中のジシクロヘキシルアミン11.83g(63.9mmol)の溶液の約20%(ca.29.5mL)を加えた。生成物が沈殿しはじめたらすぐ、混合物を取り除いた。懸濁液を1時間室温で撹拌して、その後ジシクロヘキシルアミン溶液の残りを少なくとも2時間以内にゆっくり加えた。滴下漏斗をエタノール25mLですすいだ。内部温度を4時間以内に0℃に下げて、その後、懸濁液を一晩この温度で撹拌した。沈殿物を吸引を用いて濾過し、フィルターケークを冷エタノール(0℃)117.5mLで洗浄して、減圧下で乾燥して(50℃、20mbar)、無色の固体として、(S,S)−2−[3−tert−ブトキシ−2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−プロピオニル−アミノ]−3−ヒドロキシ−プロピオン酸ジシクロヘキシル−アンモニウム塩(3) 35.7g[(S)−3−tert−ブトキシ−2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル−アミノ)−プロピオン酸から出発する収率82%、HPLCに基づく96.8%(w/w)純度]が得られた。
【0060】
HPLC分析を純(S,S)−2−[3−tert−ブトキシ−2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−プロピオニル−アミノ]−3−ヒドロキシ−プロピオン酸ジシクロヘキシル−アンモニウム塩(3)の外部標準を使用して実施した。HPCLのための条件:カラム XBridge C18(Waters)、4.6×150mm、3.5μm;紫外検出 206nm;勾配のための溶液:水(A)、20mM KHPO−緩衝液、pH2.5(B)、アセトニトリル(C);流量 1.0mL/min;20℃。
勾配:
【0061】
【表2】

【0062】
保持時間:
(S,S)−2−[3−tert−ブトキシ−2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−プロピオニル−アミノ]−3−ヒドロキシ−プロピオン酸ジシクロヘキシル−アンモニウム塩(3) 8.4分
Fmoc−L−Ser(tBu)−OH(1) 11.6分
【0063】
このHPLC−法は、(3)の遊離酸の分析のための値をもたらす。この値から、対応しているジシクロヘキシルアンモニウム塩の分析値を算出して、遊離酸とジシクロヘキシルアンモニウムの1:1の化学量論的比率を仮定した。
【0064】
ドデカンの内部標準を使用するGC分析を、ジシクロヘキシルアミンの含有量を測定するために使用した。GCのための条件:カラム溶融石英、100% ポリジメチルシロキサン、1μm、L=15m、ID=0.25mm;キャリアガス 水素、圧力:53kPa、lin.速度:73cm/s、分割比:1:100。
温度プログラム:
【0065】
【表3】

【0066】
保持時間:
ドデカン 4.10分
ジシクロヘキシルアミン 4.90分
【0067】
実施例2
機械的な撹拌棒、Pt−100温度計、還流冷却器、綿フィルター付滴下漏斗、および窒素入口を装備した二重被覆ガラス反応器500mLに、(S,S)−2−[3−tert−ブトキシ−2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−プロピオニルアミノ]−3−ヒドロキシ−プロピオン酸ジシクロヘキシルアンモニウム塩(3)25.0g(37.0mmol)、tert−ブチルメチルエーテル100mLおよび水44.3mL中の硫酸(96%)4.70gの溶液を仕込んだ。混合物を90分間室温で撹拌した。水相を分離して、有機相を塩化ナトリウム水溶液(0.5%−w/w)総量76mlを2回で、再度水38mLで洗浄した。有機溶媒を減圧下(500−100mbar)および被覆温度50℃で完全に除去した。泡状の残留物をテトラヒドロフラン100mLに溶解して、溶媒を減圧(500−100mbar)および被覆温度50℃で再度完全に除去した。残留物をテトラヒドロフラン450mlに溶解して、得られた清澄な溶液を2,2−ジメトキシプロパン35.4g(333mmol)とメタンスルホン酸0.65g(6.7mmol)で処理した。分子ふるい(0.4nm)73g上の蒸留液が戻る間、混合物を還流下、被覆温度85℃で加熱した。16時間後、僅かに帯黄色の溶液を20℃に冷却しサンプリングして、混合物をトリエチルアミン0.828g(8.14mmol)で処理して、10分間撹拌した。溶媒を減圧下(350−100mbar)および被覆温度50℃で完全に除去した。残留物をtert−ブチルメチルエーテル100mLで処理して、減圧下(350−100mbar)および被覆温度50℃で再度完全に濃縮した。残留物をtert−ブチルメチルエーテル175mLに溶解して、20℃〜25℃に冷却した。溶液を水87.5mLで処理して、10分間撹拌した。相を分離して、有機相を減圧下(350−100mbar)および被覆温度50℃で完全に濃縮した。泡状の残留物をtert−ブチルメチルエーテル100mLに溶解して、減圧下(350−100mbar)および被覆温度50℃で完全に濃縮した。この工程を、tert−ブチルメチルエーテルの総量200mLを2回で繰り返した。残留物を20℃〜25℃でtert−ブチルメチルエーテル45.2mLに溶解して、イソプロパノール22.6mLで処理した。この温度で、溶液をペンタン175mLで処理し、取り除いて、次に少なくとも15分間の撹拌を維持して、1時間以内にペンタン200mLで再度ゆっくり処理した。得られた溶液を4〜16時間撹拌して、次に1−2時間以内で0℃に冷却して、あと2時間この温度で再度撹拌した。沈殿物を吸引で濾過し、フィルターケークを冷ペンタン(0℃)の総量60mlを2分割で洗浄して、減圧下で乾燥して(50℃、20mbar)、無色の固体として、(S,S)−3−[3−tert−ブトキシ−2−(9H−フルオレン−9−イル−メトキシカルボニルアミノ)−プロピオニル]−2,2−ジメチル−オキサゾリジン−4−カルボン酸(4)14.3g[(S,S)−2−[3−tert−ブトキシ−2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−プロピオニルアミノ]−3−ヒドロキシ−プロピオン酸ジシクロヘキシル−アンモニウム塩から出発する収率75%、HPLCに基づく98.7%(w/w)純度]が得られた。
【0068】
HPLC分析を純(S,S)−3−[3−tert−ブトキシ−2−(9H−フルオレン−9−イル−メトキシカルボニルアミノ)−プロピオニル]−2,2−ジメチル−オキサゾリジン−4−カルボン酸(4)の外部標準を使用して実施した。HPLCのための条件:カラム XBridge C18 (Waters)、4.6×150mm、3.5μm;紫外検出 206nm;勾配のための溶液:水(A)、20mM KHPO−緩衝液、pH2.5(B)、アセトニトリル(C);流量 1.0mL/min;20℃。
勾配:
【0069】
【表4】

【0070】
保持時間:
(S,S)−3−[3−tert−ブトキシ−2−(9H−フルオレン−9−イル−メトキシカルボニルアミノ)−プロピオニル]−2,2−ジメチル−オキサゾリジン−4−カルボン酸(4) 7.3分
(S,S)−2−[3−tert−ブトキシ−2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−プロピオニル−アミノ]−3−ヒドロキシ−プロピオン酸ジシクロヘキシル−アンモニウム塩(3) 3.0分
Fmoc−L−Ser(tBu)−OH(1) 5.6分

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化10】


〔式中、Rは、αアミノ酸の側鎖であり、Rは、アミノ保護基であり、そしてRおよびRは、水素またはC1−4−アルキルから独立して選択され、Rは、水素またはメチルである〕
の化合物の製造方法であって、
a) 式
【化11】


〔式中、RおよびRは上記の通りである〕
のアミノ酸誘導体を、セリンまたはトレオニンで変換して、次の工程において、

【化12】


〔式中、R、RおよびRは上記の通りであり、
、RおよびRの全てが水素でないという条件で、R、RおよびRは、水素、C1−4−アルキルまたはC3−7−シクロアルキルから独立して選択される〕
のアンモニウム塩として得られたジペプチドを結晶化すること、
b) 式IIIのアンモニウム塩から、酸の存在下で遊離酸を遊離して、抽出によりアミンを除去すること、
そして
c)
【化13】


〔式中、RおよびRの両方が水素でないという条件で、RおよびRは水素またはC1−4−アルキルから独立して選択され、R9aおよびR9bは独立してC1−4−アルキルであり、R10はC1−4−アルキル、C1−4−アルカノイルまたはアリールの意味を有し、そしてR11は水素またはC1−3−アルキルである〕
から選択される化合物で、酸触媒の存在下で閉環をもたらすこと
を含む方法。
【請求項2】
が、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパラギン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、アラニン、セリン、トレオニン、チロシン、トリプトファン、システイン、グリシン、アミノイソ酪酸およびプロリンから選択される側鎖であることを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項3】
が、Fmoc、Cbz、Moz、Boc、Troc、TeocまたはVocから選択されることを特徴とする、請求項1または2の方法。
【請求項4】
式IIのアミノ酸誘導体が、セリンまたはトレオニンとカップリングする前に、活性化剤を用いて活性化されることを特徴とする、請求項1〜3の方法。
【請求項5】
活性化剤が、DIC/HOSu、DIC/ペンタフルオロフェノール、DIC/HOBt、DCC/HOSu、DCC/ペンタフルオロフェノール、DCC/HOBt、EDC(xHCl)/HOSuまたはHBTU/HOBtから選択されることを特徴とする、請求項4の方法。
【請求項6】
活性化剤がDIC/HOSuであることを特徴とする、請求項4および5の方法。
【請求項7】
セリンまたはトレオニンと式Iのアミノ酸誘導体の比率が、1.5〜3.0〜1の範囲で選択されることを特徴とする、請求項1〜6の方法。
【請求項8】
式IIIのアンモニウム塩が、

【化14】


〔式中、R、RおよびRの全てが水素でないという条件で、R、RおよびRは、水素、C1−4−アルキルまたはC3−7−シクロアルキルから独立して選択される〕
のアミンをジペプチドに加えることにより形成されることを特徴とする、請求項1〜7の方法。
【請求項9】
、RおよびRの全てが水素でないという条件で、R、RおよびRが、水素、エチルまたはシクロヘキシルから独立して選択されることを特徴とする、請求項8の方法。
【請求項10】
ジシクロヘキシルアミンを加えることを特徴とする、請求項8〜9の方法。
【請求項11】
結晶化が、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、酢酸エチルまたはテトラヒドロフランから選択される有機溶媒中で起こることを特徴とする、請求項8〜10の方法。
【請求項12】
式IIIのアンモニウム塩の遊離酸が鉱酸の存在下で遊離して、アミンを、水および/または無機塩の水溶液で抽出により除去する間、有機溶媒に溶解させることを特徴とする、請求項1〜11の方法。
【請求項13】
閉環が、2,2−ジメトキシプロパン、2−メトキシプロペンまたは2−アセトキシプロペンでもたらされることを特徴とする、請求項1〜12の方法。
【請求項14】
閉環が、2,2−ジメトキシプロパンでもたらされることを特徴とする、請求項13の方法。
【請求項15】
閉環のための酸触媒が、メタンスルホン酸、(+)カンフル−10−スルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウムから選択されることを特徴とする、請求項1〜14の方法。
【請求項16】
閉環が有機溶媒の存在下でもたらされることを特徴とする、請求項1および13〜15の方法。
【請求項17】

【化15】


〔式中、Rはαアミノ酸の側鎖であり、Rはアミノ保護基であり、そしてRは水素またはメチルであり、R、RおよびRの全てが水素でないという条件で、R、RおよびRは、水素、C1−4−アルキルまたはC3−7−シクロアルキルから独立して選択される〕
の化合物。
【請求項18】
およびRが上記の通りであり、Rが水素であり、そしてRおよびRがシクロヘキシルである、請求項17の化合物。

【公表番号】特表2009−541412(P2009−541412A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517104(P2009−517104)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055988
【国際公開番号】WO2008/000641
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】