説明

ショベル

【課題】ショベルにおいて、各部の駆動源の応答性を向上すると共に、省エネルギー化を達成する。
【解決手段】本発明の実施例に係るショベルは、走行部、前記走行部に搭載された旋回部、及び作業部を有するショベルであって、旋回部に配置される運転室と、旋回部に配置されるエンジンと、旋回部に配置され、エンジンの回転動力を電力へ変換する発電機と、旋回部に配置され、発電機により発電された電力により、走行部に対して旋回部を旋回動作させる旋回用電動発電機と、有する。また、エンジン及び発電機は、運転室よりも後方に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行部と旋回部と作業部からなり、各部の駆動源を電動式として操作性および応答性を向上させると共に、走行部と旋回部と作業部の駆動源の内の1つ以上を電動発電機とし、制動時のエネルギーを回生電力として回収して省エネルギー化を達成するようにした電動ショベルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のパワーショベルは、図4、図5に示す構成を備えていた。
【0003】
まず、図4について説明する。従来のパワーショベルの全体は、旋回部49と走行部48と作業部50よりなる。作業部50は、ブーム、アーム、バケットを駆動する油圧シリンダー44を有する。旋回部49はエンジン40からなる動力源を含みポンプ41、コントロールバルブ42、油圧旋回モータ43およびセンタージョイント45からなる主要油圧回路を有する。走行部48は油圧走行モータ46を有する。
【0004】
以下、従来のパワーショベルを詳述する。
【0005】
エンジン40で油圧回路のポンプ41を駆動し、このポンプ41で発生した油圧で、コントロールバルブ42を介して、作業部駆動用シリンダー44、旋回モータ43および走行モータ46を駆動していた。
【0006】
油圧系を図5に示す。この系を示す油圧回路は、エンジン40にカップリングした油圧ポンプ41から直接コントロールバルブ42に連結し、コントロールバルブ42から油圧シリンダー44に給排出する回路、油圧旋回モータ43に給排出する回路、油圧走行モータ46に給排出する回路が接続された回路になっていた。この回路では、圧力源である油圧ポンプ41に対し、負荷を構成する各種油圧モータ43、46及び油圧シリンダー44等のアクチュエータの複数対象同時制御を行っていた。また、油圧系は駆動力を発生する必要性から高圧回路部分を有していた。なお、47は作動油タンクである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−312605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した従来のパワーショベルの油圧回路は、メンテナンス、騒音、省エネルギー、多機能性、接続部からの油漏れ、油の膨張伸縮特性に基づく応答性の悪さ、制御および切換の衝撃による制御の困難さ、複数負荷同時制御時のポンプ流量圧の不十分さなどに基づく操作性の悪さ、制御の高度化の困難性の問題点があると共に、減速時、リリーフ又はオリフィスにより油圧を熱として捨て、また、低圧側の排出油のエネルギーを無駄にしていた。
【0009】
本発明は、上記状況に鑑みて、構造が簡単で、多機能性、高度な制御性、低騒音、メンテナンスの容易性、応答性の良い制御が可能になるとともに、省エネルギー化を達成した電動ショベルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕走行部、前記走行部に搭載された旋回部、及び作業部を有するショベルであって、前記旋回部に配置される運転室と、前記旋回部に配置されるエンジンと、前記旋回部に配置され、前記エンジンの回転動力を電力へ変換する発電機と、前記旋回部に配置され、前記発電機により発電された電力により、前記走行部に対して前記旋回部を旋回動作させる旋回用電動発電機と、有し、前記エンジン及び前記発電機は、前記運転室よりも後方に配置されることを特徴とする。
【0011】
〔2〕上記〔1〕記載のショベルにおいて、前記旋回用電動発電機を制御する電力コントローラを備え、前記電力コントローラは、前記運転席よりも後方に配置されることを特徴とする。
【0012】
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕に記載のショベルにおいて、前記エンジンの出力軸と前記発電機の入力軸とは向かい合うように配置されることを特徴とする。
【0013】
〔4〕上記〔1〕乃至〔3〕の何れかに記載のショベルにおいて、前記旋回用電動発電機は、操作指令及び旋回角度検出センサからのデータに基づいて、所定のスピードの範囲内に制御されることを特徴とする。
【0014】
〔5〕上記〔2〕に記載のショベルにおいて、前記電力コントローラへ送る演算結果を生成する制御装置を備え、前記制御装置は、前記運転席よりも後方に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、流体の特性により制約があった制御を、電動発電機およびそれらの制御手段により、エネルギー損失の少ない制御に置き換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例を示す電動ショベルの模式図である。
【図2】本発明の実施例を示す電動ショベルの電力供給系ブロック図である。
【図3】本発明の実施例を示す電動ショベルの制御系ブロック図である。
【図4】従来のパワーショベルの機構系の模式図である。
【図5】従来のパワーショベルの油圧系のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の走行部と旋回部と作業部からなる電動ショベルは、前記旋回部に備えられたエンジンと、このエンジンと機械的に接続された状態で前記旋回部に備えられ、このエンジンの動力を電気エネルギーへ変換する発電機と、この発電機と電気的に接続された状態で前記旋回部に備えられ、この発電機で発生させた電気エネルギーを蓄えるバッテリと、前記旋回部に備えられ、前記発電機とともに発電装置を構成する変換装置(インバータ)と、前記旋回部に備えられ、処理プログラムが記憶されるとともに、操作入力装置からの操作指令、及び、各種センサからのデータに基づき前記処理プログラムによって演算を行う制御装置とを有する。
【0018】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明の実施例を示す電動ショベルの模式図、図2はその電動ショベルにおける電力供給系ブロック図である。
【0020】
これらの図において、Aは走行部、Bは旋回部、Cは作業部である。また、1はエンジンであり、その回転数を発電電力との関係で制御できるようになっている。2は発電装置であり、基本的には、発電機単体か又はそれと変換装置とからなる。特に、バッテリ3の充電および各電動発電機等の急変負荷および長時間稼働に対応するために、低圧大電流を発生する発電機単体か、又は、高電圧発電機と電流変換器とからなる装置として構成することが好ましい。バッテリ3は、発電装置2から各電動発電機等への給電が不足したとき、又は発電装置2のバックアップのために設けられている。
【0021】
4は電力コントローラであり、発電装置2で発生させた電力をバッテリ3に充電し、また、回生発電しない状況では、負荷となる作業用電動発電機7、旋回用電動発電機6、走行用電動発電機5に発電装置2およびバッテリ3の電力を適切に給電制御し、また、急激に負荷が大きくなった電動発電機等に対し、発電装置2の発電電力を増加又は減少するように給電制御する。その際、負荷の緊急性を判断して発電装置2の電力をバッテリ3へ給電せず、特定の負荷のみに給電するように制御することもできる。
【0022】
この電力コントローラ4での各電動発電機等の制御態様はトルクを重視したもの、回転精度を重視したもの等種々ある。例えば、交流機の場合、コンバータ、インバータを用いた位相制御、周波数制御、パルス幅制御等が予定され、精度良く制御できるようになる。
【0023】
走行用電動発電機5は、電動機として動作させるときは、ショベルに負荷がかかった状態でも走行可能となるように、トルクが比較的大きく、始動特性が良好な電動発電機となっていて、そのための制御回路も備えている。従来の油圧モータでは、自動変速機構付でも2速走行であったが、電動発電機では無段変速にできるため、操作性能および走行性能が良好になる。発電機として動作させるときは、ロータコイルの回転に対して遅れ位相となるようにステータコイルに回転磁界を発生させるように通電制御する。このとき、回生電力を発生するとともに制動動作を行なう。
【0024】
旋回用電動発電機6は、旋回動作中は電動機として動作し、旋回終了動作時は電磁ブレーキ作用を奏する発電機として動作して回生発電し、発生した電力は電力コントローラ4を介してバッテリ3に充電される。電動発電機を用いることにより、ブレーキ動作により回生発電でき、また、微妙な制御ができるようになる。
【0025】
作業用電動発電機7は、具体的には、回生機能付き電動発電シリンダーにより構成し、上記したような回生発電機能を有するものであればよく、油圧系でのピストン・シリンダーのように伸縮動作ができる機構の駆動源である。前記伸縮動作機構としては、たとえば、ボールネジとボールナットからなり、ボールネジには一方の係止部をベアリング支持すると共に歯車機構を介して電動機として連結し、ボールナットには他方の係止部を固定することで基本的に構成できる。その他、電動機として回転運動を直線運動である伸縮動作に変換する変換機構であれば基本的にどのようなものであっても適用できる。
【0026】
図3は、コンソールのパネルに設けられる、この電動ショベルシステムの制御系ブロック図である。
【0027】
この図において、制御装置10は、CPU、メモリ、入出力ポートをバスで接続した構成になっている。入力ポートには、エンジンの回転数を検出する回転数検出センサ13、発電装置2およびバッテリ3の出力電圧、電流を検出する電圧・電流検出センサ14、伸縮動作機構の伸縮状態での長さ、角度等を検出する伸縮検出センサ15、ショベルに掛かる土砂等の荷重を検出する荷重検出センサ16、台車に対する旋回装置の旋回角度等を検出する旋回角度検出センサ17、走行スピード検出センサ18等からなる各種のセンサと、操作レバーおよびキーボード等の操作入力装置11が接続されている。
【0028】
一方、出力ポートには、電力コントローラ4、エンジンの回転数制御を行うエンジン制御装置19、モニター装置12が接続されている。
【0029】
電力コントローラ4には、その制御対象として、前述したように、発電装置2、作業用電動発電機7、旋回用電動発電機6、走行用電動発電機5、バッテリ3が接続されている。制御装置10のメモリには、必要な処理プログラムがマイクロプログラムとして記憶されている。
【0030】
操作者は、主に操作入力装置11からの入力データにより、各種センサ13〜18の出力データを取り込みメモリに記憶すると共に処理プログラムを実行し、モニター装置12に表示させながら、操作入力装置11を操作して、電力コントローラ4並びに各種制御対象を制御する。なお、マニュアルの設定をすれば、レバー操作で自由に作業を行うこともできる。
(動作態様)
(旋回系)
制御装置10は、操作入力装置11からの操作指令に基づき、各種センサからのデータを入力し、特に、荷重検出センサ16のデータを基に、土砂等の負荷が軽いときは旋回速度を速くし、重いときは遅くするように演算する。これは、旋回時の慣性力を制御可能な一定範囲内に抑えるように制御しているためである。
【0031】
更に、制御装置10は上記演算結果を電力コントローラ4に出力し、旋回用電動発電機6を所定のスピードの範囲内に制御する。旋回終了時に制動をかけるときは、今までの慣性力により回転を続けようとするモータ軸に設けたロータコイルの回転に対して遅れた位相となる回転磁界を発生するようにステータコイルを通電制御し、ステータコイルに誘導起電力を発生させる。このようにステータコイルに誘導起電力を発生させた状態でも、モータ軸に連結されたロータを回転させると、電動機軸に制動力が作用するようになる。
【0032】
この誘導起電力は、回生電力としてバッテリ3等に給電される。その際、制御装置10は、旋回終了直前の所定時間間隔での旋回角度検出センサ17のデータと荷重検出センサ16のデータとを基に、制動荷重およびその制動荷重を発生するための電流位相を演算し、その演算結果を電力コントローラ4に出力し、旋回用電動発電機6を発電機として機能させて制動をかける。この結果、慣性力の大きさの程度に応じて電流位相を変えることによって制動荷重を変えることができ、さらには電流位相に応じて発電電力を変えることができる。これにより、油圧の代わりに電動発電機を用いたので、作動油を不要にでき、環境に対する負荷を軽減できる。また、従来の油圧駆動では困難であったエネルギーの回生が電動発電機の使用により実現することで省エネルギー化が達成できるだけでなく、流体の特性により制約のあった複数アクチュエータの同時制御が、電動発電機の使用により可能となったことで、操作性が向上する。また、大きな騒音源であった管路の流体通過音を抑制できることで、騒音を低減することができる。
(作業系)
制御装置10は、操作入力装置11からの操作入力に基づいて、作業用電動発電機7を電動機として機能させ、荷重検出センサ16のデータを取り込み、作業系で処理可能な荷重か否かを判断し、処理可能と判断されたときは、前記荷重データを基に作業用電動発電機7への供給電流を演算し、その演算データを電力コントローラ4に出力して作業用発電電動機7を駆動する。初期トルクを大きくしたいときは、駆動電流を大きく制御する。
【0033】
例えば、インバータのデューティ比制御などにより制御する。この系は、伸縮検出センサ15と制御装置10と作業用電動発電機7によってフィードバック系を構成している。作業用電動発電機7を発電機として機能させるときは、上記旋回用電動発電機6と同じ発電機としての動作原理に基づいて回生制動させると共に回生発電する。これにより、油圧の代わりに電動発電機を用いたので、作動油を不要にでき、環境に対する負荷を軽減できる。また、従来の油圧駆動では困難であったエネルギーの回生が電動発電機の使用により実現することで省エネルギー化が達成できるだけでなく、流体の特性により制約のあった複数アクチュエータの同時制御が、電動発電機の使用により可能となったことで、操作性が向上する。また、大きな騒音源であった管路の流体通過音を抑制できることで、騒音を低減することができる。
(走行系)
制御装置10は、操作入力装置11からの操作入力に基づいて、走行用電動発電機5を電動機として機能させ、走行スピード検出センサ18のデータを取り込み、操作入力と検出データとの偏差に基づいて走行用電動発電機5への供給電流を演算し、その演算結果を電力コントローラ4に出力して走行用電動発電機5を制御する。供給電流を連続的に増減することによって、走行スピードを無段階に連続的に変えることができる。発電機として機能させるときは、上記と同じく回生制動と回生発電を行なわせる。
(発電装置・バッテリ)
制御装置10は、バッテリ3の電圧・電流検出センサ14の検出データを取り込み、電圧または電流が所定範囲よりも低下しているときは、エンジン制御装置19へ指令を出して発電装置2を駆動し、発生した発電電力を電力コントローラ4を介してバッテリ3に充電する。この系もフィードバック系を構成する。
(他の実施の態様)
図1及び図2における発電装置とエンジンからなる電源装置を、商用電源(交流電源)と変換器の組み合わせ又は燃料電池、付随的に太陽電池とすることができる。
【0034】
このようにすると、エンジン音の発生およびエンジンの回転歪みによる出力変動を抑制できる。また、電動発電機に電磁クラッチ、電磁ブレーキを設けることもできる。そうすれば、確実な制動および静止位置の保持が可能になる。
【0035】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の電動ショベルは、各部の駆動源の応答性を向上すると共に、省エネルギー化を達成する電動ショベルとして利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
A 走行部
B 旋回部
C 作業部
1 エンジン
2 発電装置
3 バッテリ
4 電力コントローラ
5 走行用電動発電機
6 旋回用電動発電機
7 作業用電動発電機
10 制御装置
11 操作入力装置
12 モニター装置
13 回転数検出センサ
14 電圧・電流検出センサ
15 伸縮検出センサ
16 荷重検出センサ
17 旋回角度検出センサ
18 走行スピード検出センサ
19 エンジン制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部、前記走行部に搭載された旋回部、及び作業部を有するショベルであって、
前記旋回部に配置される運転室と、
前記旋回部に配置されるエンジンと、
前記旋回部に配置され、前記エンジンの回転動力を電力へ変換する発電機と、
前記旋回部に配置され、前記発電機により発電された電力により、前記走行部に対して前記旋回部を旋回動作させる旋回用電動発電機と、有し、
前記エンジン及び前記発電機は、前記運転室よりも後方に配置される、
ショベル。
【請求項2】
前記旋回用電動発電機を制御する電力コントローラを備え、
前記電力コントローラは、前記運転席よりも後方に配置される、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記エンジンの出力側と前記発電機の入力側とは向かい合うように配置される、
請求項1又は2に記載のショベル。
【請求項4】
前記旋回用電動発電機は、操作指令及び旋回角度検出センサからのデータに基づいて、所定のスピードの範囲内に制御される、
請求項1乃至3の何れか一項に記載のショベル。
【請求項5】
前記電力コントローラへ送る演算結果を生成する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記運転席よりも後方に配置される、
請求項2に記載のショベル。
【請求項6】
前記発電機と前記電力コントローラとを接続する配線は、前記エンジンの上端よりも下方に配置される、
請求項2又は5に記載のショベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−32702(P2013−32702A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−253559(P2012−253559)
【出願日】平成24年11月19日(2012.11.19)
【分割の表示】特願2011−186519(P2011−186519)の分割
【原出願日】平成12年1月28日(2000.1.28)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】