説明

ショーケース

【課題】棚の前端に並べた商品の照度(輝度)ばらつき及び商品間の陰影を軽減できるショーケースを提供する。
【解決手段】本体前面が、ガラス板5を備えた扉6によって開閉自在に閉塞されるショーケースにおいて、扉6で開閉される本体前面の開口部を構成する左右の支柱フレーム12の溝14それぞれに、LED及びレンズからなるLEDランプ(光源)を、長手方向に一定の間隔で点在するように配置して一体化した棒状の照明モジュール16を配置する。そして、棚8の前端に並ぶ商品7を、照明モジュール16(LED)からの直接光で照明すると共に、ガラス板5からの反射光によっても照明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品陳列用の棚が架設された陳列室が、本体前面において透明板によって画成されるショーケースに関し、詳しくは、前記棚に陳列した商品を照明する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ショーケースとして、本体に構成された陳列室内に商品陳列用の棚を架設すると共に、前記陳列室の前面開口を透視可能な扉にて開閉自在に閉塞し、前記開口縁内側の本体に、LED素子からなる照明モジュールを取り付けたショーケースがあった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−112351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、照明モジュールとしてLED素子を用いれば、照明モジュールがスリム化し、陳列商品と照明モジュールとが重なることによる商品の視認性の低下、及び、商品の出し入れの際における照明モジュールと商品との接触を抑制することができる。
しかし、従来のショーケースでは、LED素子による照明光の照射方向をシェードによって棚側に向けてあり、棚に陳列した商品を直接光で照明していた。
【0005】
このため、棚の前端に例えばペットボトルなどの商品を並べて陳列した場合に、照明モジュールに近い商品は明るく照明できるが、照明モジュールから離れるほど暗くなるため、商品の照度(輝度)バラツキが大きく、また、照明モジュールから比較的近い商品でも照明モジュールからの直接光が当たらない陰の部分が暗くなるため、平均照度が高くても全体的に暗い印象を顧客に与えてしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、棚に並べた商品の照度(輝度)ばらつき及び商品間の陰影を軽減できるショーケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るショーケースは、商品陳列用の棚を架設した陳列室が、本体前面において透明板によって画成されるショーケースであって、前記棚に陳列した商品を直接光及び前記透明板からの反射光で照明するLEDを、前記透明板の後側に配置した。
このような構成では、棚に陳列した商品が、LEDからの直接光及び透明板からの反射光を用いて照明されるので、直接光が照射されない商品部分に対して透明板からの反射光を照射することが可能となる。
【0008】
ここで、前記本体前面を画成する透明板と前記棚の前端に並ぶ商品例との間の空間に対して前記LEDが対向し、前記LEDの光を、前記棚の前端に並ぶ商品及び前記透明板に照射させることができる。
このような構成では、本体前面を画成する透明板と棚の前端に並ぶ商品例との間の空間を利用して、LEDの光を、棚の前端に並ぶ商品に向けて照射しつつ、本体前面を画成する透明板に照射し、かつ、透明板での反射光を棚の商品に向けて照射することができる。
【0009】
また、前記本体前面において相互に対向する端部それぞれに、前記LEDを長手方向に沿って複数点在配置することができる。
このような構成では、棚に陳列した商品が、対向配置されるLEDによって両側から照明され、かつ、照明が、直接光及び透明板からの反射光を用いて行われるので、直接光が照射されない商品部分に対して透明板からの反射光を照射することが可能となる。
【0010】
ここで、前記LEDの光軸中心を、対向するLEDに向かう方向、又は、対向するLEDに向かう方向から前記棚側に僅かに傾いた方向に設定することができる。
このような構成では、光軸中心付近の大きな光度の光を、遠い側の商品に向けて照射し、また、光軸中心付近の大きな光度の光を、透明板のLEDから遠い側に向けて照射して反射させることができ、LEDから遠い位置の商品の照度を増加させることが可能となる。
【0011】
また、前記本体前面が、前記透明板を備えた扉によって開閉自在に閉塞され、前記扉で開閉される本体前面の左端部及び右端部に、前記LEDを長手方向に沿って複数点在配置することができる。
このような構成では、本体前面が透明板を備えた扉によって開閉自在に閉塞され、扉の開閉を行って商品の取り出しを行うショーケースにおいて、扉を閉じた状態では、LEDが、棚に陳列した商品を直接光及び透明板からの反射光で照明する。
【0012】
また、前記本体前面の開口部を構成する左右の支柱フレームそれぞれに設けた凹部に、前記LEDを挿置することができる。
このような構成では、支柱フレームからのLEDの出っ張りを小さくでき、商品の視認性の低下及びLEDに商品が接触することを抑制することができる。
【0013】
また、前記本体前面の開口部を構成する左右の支柱フレームそれぞれに長手方向に沿って設けた溝に、前記LEDを複数並べて一体化した棒状の照明モジュールを挿置することができる。
このような構成では、複数のLEDを容易に支柱フレームに配置することができ、かつ、支柱フレームからのLEDの出っ張りを小さくでき、商品の視認性の低下及びLEDに商品が接触することを抑制することができる。
【0014】
また、本体を構成する4本の支柱フレームが、本体の2面を開閉不能に画成する2枚の板を嵌め込むための2本の溝を備えた共通の成型部品からなり、本体前面の開口部を構成する左右の支柱フレームの板を嵌め込まない溝に、前記棒状の照明モジュールを挿置することができる。
このような構成では、4本の支柱フレームを共通の成型部品とすることで、ショーケースを構成する成型部品の種類を削減でき、かつ、LEDを備えた照明モジュールを、板を嵌め込むための溝に挿置することで、支柱フレームへのLEDの配置を簡易に行え、かつ、支柱フレームからの照明モジュール(LED)の出っ張りを小さくできる。
【0015】
また、前記扉を閉じた状態で、前記扉を構成する左右のフレームが、前記LEDの先端よりも前記開口部の中央側に張り出し、前記LEDが、前記扉を構成する左右のフレームの裏側に配置されるようにできる。
このような構成では、扉を閉じた状態で、扉を構成する左右のフレームの裏側にLEDが隠れ、本体の前面側からLEDが直接見えないようにする。
【0016】
また、前記LEDが、配列方向に直交する平面における配光角度を絞るレンズを備えることができる。
このような構成では、配光角度をレンズで絞ることで、配光中央(光軸中心)の光度を大きくでき、これにより、LEDから遠い位置へ光を多く照射させることができる。
ここで、前記レンズによって最大光度の1/2の範囲の配光角度を略50度に絞ることが好ましい。
このような構成では、最大光度の1/2の範囲の配光角度(1/2ビーム角)を略50度に絞ることで、LEDから遠い位置の商品及び透明板への光の照射量と、LEDに近い位置の商品及び透明板への光の照射量との割合が適切となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るショーケースによれば、直接光による照明、及び、本体前面を画成する透明板からの反射光による照明を、本体前面に配置したLEDによって行うので、棚に並べた商品の照度(輝度)ばらつき及び商品間の陰影を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態のショーケースを示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態のショーケースの断面図である。
【図3】本発明の実施形態のショーケースの部分拡大断面図である。
【図4】本発明の実施形態のショーケースにおいて扉を開いた状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態のショーケースに用いる支柱フレームの基本構成を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態のショーケースに用いる支柱フレームに後加工を施して照明モジュールを設置した状態を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態のショーケースに用いる照明モジュールの断面図である。
【図8】本発明の実施形態のショーケースに用いる扉と照明モジュールとの位置関係を説明するための図であり、(A)は扉を開いた状態、(B)は扉を閉じた状態を示す正面図である。
【図9】本発明の実施形態のショーケースに用いる照明モジュールによる直接光及び反射光を示す図である。
【図10】照明モジュールによる直接光のみで商品の照明を行うショーケースにおける理想の配光特性を示す図である。
【図11】照明モジュールによる直接光のみで商品の照明を行うショーケースにおける陰の発生状態を示す図である。
【図12】本発明の実施形態のショーケースにおける反射光の特性を示す図である。
【図13】本発明の実施形態のショーケースにおける直接光及び反射光による照明の特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本実施形態におけるショーケース1の正面図であり、この図1に示すショーケース1は、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどに設置される冷凍或いは冷蔵用のタテ型低温ショーケースである。
尚、本実施形態では低温ショーケースとしたが、保温ショーケース、或いは、保温・冷蔵ショーケースであってもよい。
【0020】
ショーケース1は、内部に陳列室2が画成される箱体3と、箱体3の底面に取り付けた台脚アングル4とからなる。
陳列室2は、前面(展示側、顧客側、売り場側)に開口し、陳列室2の前面開口は、内部を透視可能な透明板であるガラス板5を備えた扉6により開閉自在に閉塞される。扉6は、一側端が箱体3の側部に回転自在に枢支された開き扉である。
【0021】
陳列室2の両側面及び背面は、内部を透視可能な透明板であるガラス板で画成・閉塞され、陳列室2は4方をガラス板で囲まれる。但し、陳列室2の両側面と背面との少なくとも一方を、内部を透視不能な断熱パネルで画成するショーケースであってもよい。
尚、陳列室2を画成するガラス板(扉6のガラス板を含む)を、中空層を備えた2重ガラスとし、更に、ガラス面に透明断熱フィルムを張ったり、透明な断熱塗料を塗布したりすることで、断熱性を高めることが好ましい。
【0022】
また、陳列室2には、ペットボトルなどの商品7を載置するための複数段の棚8が架設されている。陳列室2の内壁を構成する両側面の前部及び後部には、上下に渡って棚支柱(図示省略)が設けられ、この棚支柱に複数形成した係合孔に対して棚8が着脱自在に架設される。
台脚アングル4の前後面及び側面は、化粧パネルで被覆され、これにより、陳列室2の下方に機械室9が形成される。
【0023】
機械室9には、冷却装置を構成する蒸発器、冷気循環用送風機、圧縮機、凝縮器、凝縮器用送風機などが収容され、冷気循環用送風機による冷気の循環は、陳列室2の底壁に形成した冷気吸込口及び冷気吐出口を介して行われる。
また、機械室9内には、4隅にキャスター10を取り付けた取付台11が収容されており、この取付台11に、冷却装置を構成する圧縮機などの部品が配設される。
【0024】
図2は、扉6を閉じた状態での陳列室2の水平面上での断面図であって、陳列室2の前面側を示す。尚、図2では、扉6を構成するフレームの図示を省略してある。
陳列室2を画成する箱体3は、4本の支柱フレーム12と、ガラス板5を備えた扉6と、陳列室2の両側面及び背面を画成するガラス板13と、天板17と、図示省略した底板とからなる。
【0025】
支柱フレーム12は、図3に示すように、陳列室2を画成する2面のガラス板13を嵌め込むため2本の溝14,14(凹部)と、棚8を陳列室2内に架設するための棚支柱部15とを一体的に備えた樹脂成型部品である。係る支柱フレーム12の向きを変え又上下を反転させることで、共通の成型部品である支柱フレーム12を用いて、箱体3を構成する4本の支柱フレームを構成できるようにしてある。
ここで、背面側の左右の支柱フレーム12間、左側面側の左右の支柱フレーム12間、右側面側の左右の支柱フレーム12間には、それぞれにガラス板13が嵌め込まれるが、前面側は扉6で開閉される開口部とするため、前面側の左右の支柱フレーム12間にはガラス板13を嵌め込まない。
【0026】
そして、本実施形態では、前面側の左右の支柱フレーム12のガラス板13を嵌め込まない溝14それぞれに、図3,図4に示すように、棒状の照明モジュール16(光源)を、陳列室2の上下に亘って挿置してあり、この照明モジュール16によって棚8に載置したペットボトルなどの商品7を照明する。
図5に示すように、共通部品である支柱フレーム12の向きを変えまた上下を反転させることで、右前、左前、右後、左後の4本の支柱を構成する。支柱フレーム12には、陳列室2を画成する2面のガラス板13を嵌め込むため2本の溝14,14(凹部)が形成されるが、この溝14の両開口端縁のうち陳列室2の外側となる端縁に、内側に折り曲がったリップ状部を形成し、このリップ状部の先端と、陳列室2の内側となる開口端縁との間の狭窄部に、ガラス板13を挟み込んで保持するようにしてある。
そして、照明モジュール16を挿置する溝として、右前及び左前の支柱フレーム12のガラス板13が嵌め込まれない溝14を用いる。
【0027】
ここで、照明モジュール16の幅は溝14の底部の幅よりも狭いが、リップ状部で狭められる狭窄部の幅よりも大きいため、右前及び左前の支柱フレーム12のガラス板13が嵌め込まれない溝14のリップ状部14aをカットする後加工を施し、図6に示すように、リップ状部14aをカットしたことで開口端が広がった溝14に照明モジュール16を挿置し、固定してある。
照明モジュール16は、図7に示すように、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)16a及びレンズ16bからなるLEDランプ(光源)を、長手方向に一定の間隔(例えば、10〜15mm程度)で点在するように配置して一体化したものである。
【0028】
LED16aは、例えば、0.1W〜0.5W程度の消費電力であって、最大光度の1/2の範囲の配光角度(1/2ビーム角)が120度程度のものを用いる。
また、レンズ16bは、支柱フレーム12(照明モジュール16)の長手方向に直交する平面におけるLED16aの1/2ビーム角を50度程度にまで絞るものであり、このレンズ16bによる配光角度の絞りによって、光軸中心付近の光度を強くしている。
【0029】
レンズ16bによる配光角度の絞りは、棚8の前端に並ぶ商品7のうちの最も近い商品7に直接光を照射しつつ、棚8の前端に並ぶ商品7のうちの最も遠い商品7にも充分な直接光を照射できるように適宜設定すべき値であり、1/2ビーム角を50度に限定するものではない。
尚、レンズ16bから出射時において、光軸中心に対して略対称に光が放射されるようにしてある。
【0030】
また、照明モジュール16は、幅W=15mm程度、高さH=13.5mm程度のものであり、長さは、陳列室2の高さに合わせてある。
そして、溝14に照明モジュール16を挿置したときに、溝14の開口縁からの照明モジュール16の飛び出し高さが例えば1mm以下になるように、照明モジュール16の高さを設定し、照明モジュール16によって陳列室2の開口部の面積が狭められることがないようにしてある。
【0031】
溝14の開口縁からの照明モジュール16の飛び出し高さが高くなると、棚8の左右端に載せた商品7の一部が照明モジュール16の陰に隠れることによって商品7の視認性が低下したり、また、商品7の出し入れの際に照明モジュール16と商品とが接触したりする可能性がある。これに対し、溝14の開口縁から大きく飛び出さないように、溝14内に照明モジュール16を挿置できれば、照明モジュール16によって商品7の視認性が低下すること、及び、商品7の出し入れの際に照明モジュール16と商品とが接触することを抑制できる。
また、溝14に挿置した照明モジュール16の光軸中心は、相互に、対向する照明モジュール16に向けられる。
【0032】
即ち、前面側の左右の支柱フレーム12のガラス板13を嵌め込まない2本の溝14、換言すれば、陳列室2の開口部の左右端に位置し照明モジュール16を挿置する2本の溝14は、本体前面を画成する透明板である扉6のガラス板5と棚8の前端に並ぶ商品列との間の空間において、陳列室2の開口面に平行な平面上で対向し、係る溝14に対して光軸中心が溝14の開口方向に一致するように照明モジュール16を挿置すれば、照明モジュール16の光軸中心は、相互に、対向する照明モジュール16に向けられることになる。
【0033】
図8(A)は、扉6を開いた状態のショーケース1を示し、図8(B)は、扉6を閉じた状態のショーケース1を示す。この図8に示すように、扉6を閉じた状態で、扉6の左右のフレーム6a,6aが、照明モジュール16の先端(レンズ16bを含むLED16aの先端)よりも陳列室2の開口部の中央側に張り出し、照明モジュール16(LED16a)が、扉6の左右のフレーム6a,6aの裏側に配置されるようにしてある。
これにより、ショーケース1を正面から見たときに、照明モジュール16(LED16a)が扉6の左右のフレーム6a,6aの裏側に隠れ、正面からは直接見えることがなく、顧客の視野に照明モジュール16(LED16a)からの光が直接入って眩しさを感じ難いようにしてある。
【0034】
上記照明モジュール16(LED16a)を点灯すると、図9に示すように、扉6を閉じた状態において、照明モジュール16(LED16a)からの光は、棚8の前端に並ぶ商品7に直接照射されると共に、扉6を構成するガラス板5にも照射されることになり、ガラス板5で反射した光は棚8の前端に並ぶ商品7に照射される。
即ち、棚8の前端に並ぶ商品7は、照明モジュール16(LED16a)からの直接光で照明されると共に、ガラス板5からの反射光によっても照明される。
【0035】
照明モジュール16(LED16a)からの直接光のみで棚8の前端に並ぶ商品7を照明する場合、照明モジュール16(LED16a)から見て陰となる商品7の側面側などには光が届かず、商品7に明瞭な陰影が出てしまうが、ガラス板5からの反射光は、照明モジュール16(LED16a)からの直接光とは異なる角度で商品7に照射されるため、照明モジュール16(LED16a)から見て陰となる商品7の側面側などにも光を照射させることができ、商品7の陰影を軽減できる。
【0036】
また、LED16aの配光角度を、レンズ16bによって絞るので、配光中心近傍(光軸中心近傍)での光度が大きくなり、配光中心は、棚8の前端に並ぶ商品7のうちの遠い側に向けられるので、照明モジュール16(LED16a)から遠い商品7に直接光を多く照射させることができ、更に、扉6を構成するガラス板5に照射される光のうち、照明モジュール16から遠い位置に照射される光は、ガラス板5に対する入射角度が大きくなって高い反射率を示すことになるから、照明モジュール16(LED16a)から遠い商品7の照度を高めることができる。
【0037】
更に、上記の直接光による照明と反射光による照明とを、商品列を挟んで左右端に配置される一対の照明モジュール16(LED16a)で行うから、一方の照明モジュール16から遠い位置の商品7の照度を、他方の照明モジュール16からの光(直接光及び反射光)で補うことができ、棚8の前端に並ぶ商品7を平均的に照明でき、棚8の前端に並ぶ商品7毎の照度(輝度)ばらつきを抑制できる。
上記にように、上記実施形態のショーケース1では、棚8の前端に並ぶ商品7毎の照度(輝度)ばらつき及び個々の商品7における陰影を抑制でき、棚8の前端に並ぶ商品7が全体的に明るく見える。
【0038】
棚8の前端に並ぶ商品7毎の照度(輝度)にばらつきがあったり、個々の商品7に陰影があったりすると、平均照度が高くても全体的に暗い印象を顧客に与えることになってしまうが、商品7毎の照度(輝度)ばらつき及び個々の商品7における陰影を抑制できれば、たとえ平均照度が同程度であっても全体的に明るい印象を顧客に与えることができ、購買意欲を喚起できる。
尚、扉6を開くと、棚8の前端に並ぶ商品7は、扉6を構成するガラス板5からの反射光で照明されず、専ら照明モジュール16(LED16a)からの直接光で照明されることになり、扉6を閉じている場合に比べて商品7毎の照度(輝度)ばらつき及び個々の商品7における陰影が大きくなってしまう。
しかし、扉6を開いた時の陰影による暗さが目立つ分、扉6を閉めた時の反射光及び直接光による照明効果が一層際立ち、また、顧客による購買意欲は、扉6を閉じた状態で決まり、顧客が扉6を開くのは購入する商品を決定した後であるので、扉6を閉じた状態で全体的に明るい印象を与えることができればよい。
【0039】
図10は、照明モジュール16からの直接光のみで、棚8に並ぶ商品7を照明することで、棚8の前端に並ぶ商品7毎の照度を揃えるための要求配光特性を示す。
即ち、理論的には、棚8の前端の中央に位置する商品7には、左右の照明モジュール16から略同等の光が届き、その総和で照度が決定されることになるが、中央位置からずれた位置に配される商品7については、左右の照明モジュール16の一方から光量が減り逆に他方からの光量が増えることになり、係る相殺によって中央に位置する商品7と同じ照度になるようにすればよい。
【0040】
しかし、このような理想的な配光を実現することは困難であり、また、直接光のみによる照明の場合、商品7が凹凸のない例えば箱状のものであれば、均一に明るくできるが、陳列する商品7が例えばペットボトルなどの凹凸があるものである場合、図11に示すように、照明モジュール16に近い側の凸が光を遮り、商品7に陰を発生させることになってしまう。
図12は、照明モジュール16からの光を、扉6のガラス板5に反射させ、直接光と共に反射光で商品7を照明する場合における反射光の特性を示す図であり、分かり易くするために、本体前面の左側に配置した照明モジュール16からの光の反射特性のみを示す。
【0041】
ガラス板5における光の反射率は、ガラス板5に対する光の入射角が大きくなるほど高くなり、入射角は、照明モジュール16からより遠い位置でガラス板5に入射する光ほど大きくなるが、入射角と同じ反射角で光が反射することになるため、ガラス板5の左右方向における中央位置を越えるような遠い位置で反射した光は、商品7に照射されず照度アップに寄与しない。
しかし、反射光が商品7に照射されるガラス板5の反射領域内において、照明モジュール16からの遠い程反射率が高くなるから、照明モジュール16から遠い位置の商品7を効果的に照明でき、また、図13に示すように、一方の照明モジュール16からの直接光が届かない商品7の陰の部分に、他方の照明モジュール16からの光がガラス板5で反射した反射光を照射することができ、商品7間に発生する陰影を軽減できる。
【0042】
ところで、上記実施形態では、溝14に挿置した照明モジュール16の光軸中心を、相互に、対向する照明モジュール16に向けるようにしたが、対向する照明モジュール16に向く方向から棚8側に僅かに傾いた方向、例えば、棚8の前端に並ぶ商品7のうち最も遠い位置の商品7に向く方向に設定することができる。
前述のように、照明モジュール16が放射する光のうち、照明モジュール16から遠いガラス板5上に入射した光の反射光は、棚8に載せた商品7に照射されず無駄になってしまうので、照明モジュール16の光軸中心を、対向する他方の照明モジュール16から商品7(棚8)側に傾け、反射光が商品7に照射されないガラス板5上の領域に照射される光度を減らし、相対的に、遠い位置の商品7に対する直接光の光度を増やして、効果的に照明できるようにする。
【0043】
但し、照明モジュール16の光軸中心を、溝14の開口方向に対して傾けるためには、左右一対の照明モジュール16を別部品として形成する必要が生じたり、また、溝14の開口端縁からの照明モジュール16の飛び出しが大きくなったりことがあるのに対し、照明モジュール16の光軸中心を、相互に、対向する照明モジュール16に向けるようにすれば、左右一対の照明モジュール16を共通部品とすることができ、また、溝14の開口端縁からの照明モジュール16の飛び出しを最小にできる。
【0044】
また、相互に対向配置される一対の照明モジュール16を、本体前面を構成するフレームである扉6のフレームの裏側に配置することができる。この場合、扉6を開いたときに、照明モジュール16による直接光が商品7に充分に届かなくなり、棚8の前端に並ぶ商品7の照度が低くなるが、前述のように、扉6を開いた時の陰影による暗さが目立つ分、扉6を閉めた時の反射光及び直接光による照明効果が一層際立つと共に、顧客の購買意欲は扉6を閉じた状態で決定され、また、顧客が扉6を閉じた状態では、支柱フレーム12の溝14に照明モジュール16を挿置した場合と同等の照明を行えるので、購買意欲を充分に喚起でき、更に、照明モジュール16と商品7とが重なることによる視認性の低下や、商品7の取り出し時に商品7が照明モジュール16に接触することを抑制できる。
【0045】
また、相互に対向配置される一対の照明モジュール16を左右端に配置する代わりに上下端に配置することができ、また、左右端に1対の照明モジュール16を配すると共に、上下端にも1対の照明モジュール16を配することができ、更に、左右端の一方側にのみ、又は、上下端の一方側にのみ照明モジュール16を配することもできる。また、本体前面の中央部に、商品を直接光及びガラス板5(透明板)からの反射光で照明するLEDを配することもできる。
また、本実施形態のショーケース1は、陳列室2を開閉する扉6を本体前側に設けてあるが、後側にも開閉扉を備え、この後側の扉から商品の補充などを行うショーケースにも、上記実施形態と同様の照明モジュール16を適用できることは明らかである。
【0046】
更に、本実施形態では、顧客側である前面が扉6で開閉されるショーケースとしたが、前面側がガラス板(透明板)で閉塞され、後側に開閉扉を設けたショーケースにも、本願の照明技術、即ち、本体前面を構成するフレームの陳列室内で対向する部分それぞれに、フレームの長手方向に沿って複数のLEDを点在配置し、このLEDによる直接光及び前面を閉塞するガラス板からの反射光で、棚に陳列した商品を照明する構成を適用でき、上記実施形態と同様な効果が得られる。
【0047】
また、上記実施形態では、陳列室2の周囲を画成する4面を全てガラス板(透明板)で構成したが、前面以外の少なくとも1面を、例えば断熱材上に化粧パネルを貼り付けた不透明な板で構成することができる。
また、上記実施形態では、透明板としてガラス板を用いたが、例えば透明な樹脂板を透明板として用いることができ、透明板をガラス板に限定するものではない。
【符号の説明】
【0048】
1…ショーケース、2…陳列室、3…箱体、4…台脚アングル、5…ガラス板、6…扉、7…商品、8…棚、9…機械室、10…キャスター、11…取付台、12…支柱フレーム、13…ガラス板、14…溝、15…棚支柱部、16…照明モジュール、16a…LED、16b…レンズ、17…天板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品陳列用の棚を架設した陳列室が、本体前面において透明板によって画成されるショーケースであって、
前記棚に陳列した商品を直接光及び前記透明板からの反射光で照明するLEDを、前記透明板の後側に配置したショーケース。
【請求項2】
前記本体前面を画成する透明板と前記棚の前端に並ぶ商品例との間の空間に対して前記LEDが対向し、前記LEDの光を、前記棚の前端に並ぶ商品及び前記透明板に照射させる請求項1記載のショーケース。
【請求項3】
前記本体前面において相互に対向する端部それぞれに、前記LEDを長手方向に沿って複数点在配置した請求項1又は2記載のショーケース。
【請求項4】
前記LEDの光軸中心を、対向するLEDに向かう方向、又は、対向するLEDに向かう方向から前記棚側に僅かに傾いた方向に設定した請求項3記載のショーケース。
【請求項5】
前記本体前面が、前記透明板を備えた扉によって開閉自在に閉塞され、前記扉で開閉される本体前面の左端部及び右端部に、前記LEDを長手方向に沿って複数点在配置した請求項3又は4記載のショーケース。
【請求項6】
前記本体前面の開口部を構成する左右の支柱フレームそれぞれに設けた凹部に、前記LEDを挿置した請求項5記載のショーケース。
【請求項7】
前記本体前面の開口部を構成する左右の支柱フレームそれぞれに長手方向に沿って設けた溝に、前記LEDを複数並べて一体化した棒状の照明モジュールを挿置した請求項6記載のショーケース。
【請求項8】
本体を構成する4本の支柱フレームが、本体の2面を開閉不能に画成する2枚の板を嵌め込むための2本の溝を備えた共通の成型部品からなり、本体前面の開口部を構成する左右の支柱フレームの板を嵌め込まない溝に、前記棒状の照明モジュールを挿置した請求項7記載のショーケース。
【請求項9】
前記扉を閉じた状態で、前記扉を構成する左右のフレームが、前記LEDの先端よりも前記開口部の中央側に張り出し、前記LEDが、前記扉を構成する左右のフレームの裏側に配置される請求項6〜8のいずれか1つに記載のショーケース。
【請求項10】
前記LEDが、配列方向に直交する平面における配光角度を絞るレンズを備える請求項3〜9のいずれか1つに記載のショーケース。
【請求項11】
前記レンズによって最大光度の1/2の範囲の配光角度を略50度に絞った請求項10記載のショーケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−105691(P2012−105691A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254632(P2010−254632)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】