説明

ショートスタブ付容量装荷型平面アンテナ

【課題】 小形・低姿勢にすることができると共に、広帯域化を実現し、複数周波数に調整できるショートスタブ付容量装荷型平面アンテナを提供する。
【解決手段】 地板20と、それに平行に設けられるアンテナ素子10と、アンテナ素子10と地板20とを接続する複数のショートスタブ60と、地板20の端部に形成された側壁50とを有して、小形・低姿勢で広帯域化を実現し、ショートスタブ60の長さを可変にして複数周波数に調整でき、ショートスタブをアンテナ素子10と一体に形成され、折り曲げ可能な板状のショートスタブ60′として、構成が簡単で製造が容易なショートスタブ付容量装荷型平面アンテナである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信用基地局アンテナの弱電界エリアで用いる小形アンテナに係り、特に、地板の大きさを変更することなく広帯域にすることができるショートスタブ付容量装荷型平面アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
天井などに設置して使用される移動通信用の屋内中継器には、無指向性でかつ低姿勢で小形の広帯域アンテナが用いられる。
無指向性であるモノポールアンテナを低姿勢化した容量装荷モノポールアンテナは、ポストを複数本配置することで給電線との整合をとることができるようになっている。
【0003】
[従来の容量装荷型平面アンテナの構成:図12]
従来の容量装荷型平面アンテナの構成について図12を参照しながら説明する。図12は、従来の容量装荷型平面アンテナの概略構成図である。
従来の容量装荷型平面アンテナは、図12に示すように、アンテナ素子10と、地板20と、支持板30と、ポスト40とから構成されている。
【0004】
アンテナ素子10は、地板20より小さい円盤状の形状で、地板20に平行に設置される。
地板20は、アンテナ素子10を、支持板30を介して固定されるもので、更に、アンテナ素子10と地板20とを複数のポスト40で接続している。
【0005】
[従来のVSWR:図13]
従来の容量装荷型平面アンテナの構成における電圧定在波比(VSWR:Voltage Standing Wave Ratio)を図13に示す。図13は、従来のVSWRの特性を示す図である。
VSWRとは、インピーダンス不整合により、反射波が発生している伝送路上に発生する電圧振幅分布の山と谷の比である。
【0006】
従来の構成におけるVSWR特性は、図13に示すように、例えば、地板20の大きさ(直径)Dd=160mmの場合、VSWR<1.5の帯域幅は5.6%であり、狭帯域であることがわかる。
また、ポスト40の長さssを、ss=14mmの場合、VSWR<1.5の帯域幅は2.6%であり、狭帯域であることがわかる。
【0007】
[従来の垂直面放射指向性:図14]
従来の構成における垂直面放射指向性を図14に示す。図14は、1.9GHz,2.0GHz,2.1GHz,2.2GHzにおける垂直面放射指向性を示した図である。
【0008】
[従来の水平面放射指向性:図15]
従来の構成における水平面放射指向性を図15に示す。図15は、1.9GHz,2.0GHz,2.1GHz,2.2GHzにおける水平面放射指向性を示した図である。
【0009】
低背型の容量装荷型誘電体モノポールアンテナに関する先行技術には、特開2003−229714号公報(特許文献1)がある。
この特許文献1は、容量電極と接地電極を接続し、給電ピンと当接するショートピンの構造を簡単にして、加工、取り扱いを容易にできる平面アンテナが記載されている。
【0010】
【特許文献1】特開2003−229714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の広帯域アンテナは、アンテナの設置面積を低減するために、地板は小形でかつアンテナ高は低姿勢である必要があるものの、広帯域に渡って給電線との整合をとるために、地板の大きさを変更しなければならず、また、複数周波数に調整が可能とする必要があるため、構成が複雑になるという問題点があった。
【0012】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、小形・低姿勢にすることができると共に、広帯域化を実現し、複数周波数に調整できるショートスタブ付容量装荷型平面アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、ショートスタブ付容量装荷型平面アンテナであって、地板と、地板に平行に設けられるアンテナ素子と、アンテナ素子と地板とを接続する複数のショートスタブと、地板の端部に形成された側壁とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記ショートスタブ付容量装荷型平面アンテナにおいて、ショートスタブの長さを可変にすることで共振周波数を可変にすることを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記ショートスタブ付容量装荷型平面アンテナにおいて、ショートスタブが、アンテナ素子と一体に形成され、折り曲げ可能な板状としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、地板と、地板に平行に設けられるアンテナ素子と、アンテナ素子と地板とを接続する複数のショートスタブと、地板の端部に形成された側壁とを有するショートスタブ付容量装荷型平面アンテナとしているので、小形・低姿勢にすることができると共に、広帯域化を実現できる効果がある。
【0017】
本発明によれば、ショートスタブの長さを可変にすることで共振周波数を可変にする上記ショートスタブ付容量装荷型平面アンテナとしているので、複数周波数に調整できる効果がある。
【0018】
本発明によれば、ショートスタブが、アンテナ素子と一体に形成され、折り曲げ可能な板状とした上記ショートスタブ付容量装荷型平面アンテナとしているので、構成を簡単にして製造を容易にできる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係るショートスタブ付容量装荷型平面アンテナは、地板と、アンテナ素子と、アンテナ素子と地板とを接続する複数のショートスタブと、地板の端部に形成された側壁とを有する構成としたものであり、小形・低姿勢にすることができると共に、広帯域化を実現できるものである。
【0020】
また、本発明の実施の形態に係るショートスタブ付容量装荷型平面アンテナは、上記構成に、ショートスタブの長さを可変にするものであり、共振周波数を可変にし、複数周波数に調整できるものである。
【0021】
また、本発明の実施の形態に係るショートスタブ付容量装荷型平面アンテナは、上記構成に、ショートスタブが、アンテナ素子と一体に形成され、折り曲げ可能な板状としたものであり、構成を簡単にして製造を容易にできるものである。
【0022】
[本アンテナの構成:図1,2]
本発明の実施の形態に係るショートスタブ付容量装荷型平面アンテナ(本アンテナ)の構成について、図1,2を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るショートスタブ付容量装荷型平面アンテナの概略構成図であり、図2は、(a)が平面図、(b)が側面図である。
本アンテナは、図1,2に示すように、アンテナ素子10と、地板20と、支持板30と、側壁50と、ショートピン(ショートスタブ)60とから構成されている。
【0023】
[各部]
アンテナ素子10、地板20、支持板30は、従来と同様の構成である。尚、アンテナ素子10と地板20は円盤状としているが、正多角形であってもよい。
【0024】
[側壁50]
側壁50は、地板20の周辺端部に垂直方向に形成されている。
側壁50の最適な高さは、地板20の大きさ(直径)Ddに依存する。例えば、Dd=160mmの場合、側壁40の高さho<0.17λの範囲で高帯域化が図られ、ho=0.13λのとき帯域幅の最大値32.4%を実現できる。
【0025】
尚、側壁50の厚みは、約1mm程度を予定しているが、これにこだわらない。
また、別の例として、アンテナ素子10の直径dを0.360λとし、地板20の直径Ddを1.067λとした場合に、側壁50の高さhは、0.067λとしてもよい。
【0026】
[ショートピン60]
ショートピン(ショートスタブ)60は、従来のポスト40に比べて、地板20に対して垂直方向に設置されるのではなく、図1に示すように、地板20に対して斜め方向にアンテナ素子10と地板20とを接続する細いピンが設けられている。
ショートピン60は、その長さを可変にすることで、共振周波数を可変にして、複数の周波数に対応可能とするものである。
また、ショートピン60の形状は、直線に限らず曲線であってもよく、また、細いピン形状に限らず、帯状であってもよい。
【0027】
[垂直面放射指向性:図3]
本アンテナの垂直面放射指向性について図3を参照しながら説明する。図3は、本アンテナの垂直面放射指向性を示す図である。図3において、1.9GHz,2.0GHz,2.1GHz,2.2GHzの場合を示している。
【0028】
本アンテナの垂直面放射指向性は、図3に示すように、図14の従来のアンテナにおける垂直面放射指向性と比較して、指向性のパターンは、基本的にはあまり変わらないが、利得が1dBぐらい上がっている。
【0029】
[水平面放射指向性:図4]
本アンテナの水平面放射指向性について図4を参照しながら説明する。図4は、本アンテナの水平面放射指向性を示す図である。図4において、1.9GHz,2.0GHz,2.1GHz,2.2GHzの場合を示している。
【0030】
本アンテナの水平面放射指向性は、図4に示すように、図15の従来のアンテナにおける水平面放射指向性と比較して、指向性のパターンは、基本的にはあまり変わらないものとなっている。
【0031】
[側壁の高さ変化時の帯域幅:図5]
次に、側壁の高さが変化した時の帯域幅について図5を参照しながら説明する。図5は、側壁の高さ変化時のVSWR<1.5の帯域幅を示す図である。
図5では、縦軸が帯域幅(Bandwidth[%])で、横軸が側壁の高さ(ho/λ)であり、地板20の直径Ddが150,160,170,180mmの4つの場合を示している。
【0032】
つまり、図5において、ho/λ=0(左端)は、側壁の高さゼロを示し、右に行くほど高さが高くなる。
図5に示すように、Dd=160mm又は170mmであれば、概ね0.1<ho/λ<0.15の範囲で、高い割合の帯域幅が得られることがわかる。地板20の大きさに応じて側壁50の高さを適正に設定すれば、広い帯域幅が得られる。
【0033】
[ショートスタブの長さを可変としたときのVSWR:図6]
次に、ショートスタブの長さを可変としたときのVSWRについて図6を参照しながら説明する。図6は、ショートスタブの長さを可変としたときのVSWRを示す図である。図6において、縦軸はVSWR、横軸は周波数[GHz]である。
【0034】
尚、図6における曲線aは、本アンテナにおいて側壁50を備えるがショートピン60が地板20に対して垂直の場合であり、曲線bは、本アンテナにおいて側壁50を備え、ショートピン60が地板20に対して斜めに接続されている場合である。
【0035】
図6から、側壁20があっても、ショートピン60が従来のポストと同様に垂直に接続する構成に比べて、ショートピン60が地板20に対して斜めに接続する構成の方が、帯域が広くなっている。
【0036】
[ショートスタブの形状:図7]
次に、ショートスタブの形状について図7を参照しながら説明する。図7は、ショートスタブの3つの構成を示した図である。
図7(a)では、地板20に対して凹状の曲線となった例を示している。図7(b)では、地板20に対して凸状の曲線となった例を示している。図7(c)では、波線の形状となった例を示している。
このように、ショートスタブ(ショートピン)が地板20に垂直に接続する場合より、斜めに直線又は曲線で長くすることで、広帯域化できるものである。
【0037】
[ショートスタブの長さを可変としたときの帯域幅:図8]
次に、ショートスタブの長さを可変としたときの帯域幅について図8を参照しながら説明する。図8は、ショートスタブの長さを可変としたときのVSWR<1.5の帯域幅を示す図である。図8において、縦軸は帯域幅(Bandwidth[%])、横軸はショートスタブの長さsをs/λで示している。
【0038】
尚、図8では、平行に配置されたアンテナ素子10と地板20との垂直方向の距離ssを12mm,14mm,16mmした場合に、ショートスタブの長さsを短くしていった場合の帯域幅を示している。よって、図8の右端は、s=ss(従来技術)となっている。
s/λが概ね0〜0.06の範囲で、良好な帯域幅が得られることがわかる。
【0039】
例えば、距離ss=14mmの場合、従来の構成では、VSWR<1.5の帯域幅は、2.6%であったものが、s<0.09λの範囲で広帯域化が図られ、s=0のとき最大値24.5%を実現できる。
【0040】
[ショートスタブの長さを可変としたときの共振周波数:図9]
また、ショートスタブの長さを可変としたときの共振周波数について図9を参照しながら説明する。図9は、ショートスタブの長さを可変としたときの共振周波数を示す図である。図9において、縦軸は周波数(Frequency[GHz])、横軸はショートスタブの長さsをs/λで示している。
【0041】
そして、図9では、平行に配置されたアンテナ素子10と地板20との垂直方向の距離ssを12mm,14mm,16mmした場合に、ショートスタブの長さsを短くしていった場合の周波数特性を示している。
s/λが概ね0〜0.04の範囲で、良好な周波数特性が得られることがわかる。
【0042】
[ショートスタブの別の形状1:図10]
ショートスタブの別の形状について図10を参照しながら説明する。図10は、ショートスタブの別の形状1を示す図である。尚、図10(a)では平面図を示し、図10(b)では側面図を示している。
【0043】
図10(a)に示すように、対向する1組のショートスタブを板状のショートスタブ60′とし、アンテナ素子10と一体に形成したものである。そして、アンテナ素子10と板状のショートスタブ60′の境部分を地板20側に折り曲げて、アンテナ素子10を地板20に設置し、その後、ショートピン60を形成する。
このように、板状のショートスタブ60′をアンテナ素子10と一体に形成することで、アンテナ素子10を地板20への取り付けを容易にできる。
【0044】
[ショートスタブの別の形状2:図11]
更に、図1に示すようなショートスタブの構成であってもよい。図11は、ショートスタブの別の形状2を示す図である。尚、図11(a)では平面図を示し、図11(b)では側面図を示している。
【0045】
図11(a)に示すように、全てのショートスタブを板状のショートスタブ60′とし、アンテナ素子10と一体に形成したものである。そして、アンテナ素子10と板状のショートスタブ60′の境部分を地板20側に折り曲げて、アンテナ素子10を地板20に設置する。
このように、板状のショートスタブ60′をアンテナ素子10と一体に形成することで、アンテナ素子10を地板20への取り付けを容易にできる。
【0046】
[実施の形態の効果]
本アンテナによれば、アンテナ素子10と地板20とを接続する複数のショートスタブ60と、地板20の端部に形成された側壁50とを有するものであり、小形・低姿勢にすることができると共に、広帯域化を実現できる効果がある。
【0047】
また、本アンテナによれば、ショートスタブ60の長さを可変にするようにしているので、共振周波数を可変にし、複数周波数に調整できる効果がある。
【0048】
また、本アンテナによれば、ショートスタブを、アンテナ素子10と一体に形成され、折り曲げ可能な板状のショートスタブ60′としているので、構成を簡単にして製造を容易にできる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、小形・低姿勢にすることができると共に、広帯域化を実現し、複数周波数に調整できるショートスタブ付容量装荷型平面アンテナに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態に係るショートスタブ付容量装荷型平面アンテナの概略構成図である。
【図2】(a)が平面図、(b)が側面図である。
【図3】本アンテナの垂直面放射指向性を示す図である。
【図4】本アンテナの水平面放射指向性を示す図である。
【図5】側壁の高さ変化時のVSWR<1.5の帯域幅を示す図である。
【図6】ショートスタブの長さを可変としたときのVSWRを示す図である。
【図7】ショートスタブの3つの構成を示した図である。
【図8】ショートスタブの長さを可変としたときのVSWR<1.5の帯域幅を示す図である。
【図9】ショートスタブの長さを可変としたときの共振周波数を示す図である。
【図10】ショートスタブの別の形状1を示す図である。
【図11】ショートスタブの別の形状2を示す図である。
【図12】従来の容量装荷型平面アンテナの概略構成図である。
【図13】従来のVSWRの特性を示す図である。
【図14】従来の垂直面放射指向性を示した図である。
【図15】従来の水平面放射指向性を示した図である。
【符号の説明】
【0051】
10…アンテナ素子、 20…地板、 30…支持板、 40…ポスト、 50…側壁、 60…ショートピン、 60′…板状のショートスタブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショートスタブ付容量装荷型平面アンテナであって、
地板と、前記地板に平行に設けられるアンテナ素子と、前記アンテナ素子と前記地板とを接続する複数のショートスタブと、前記地板の端部に形成された側壁とを有することを特徴とするショートスタブ付容量装荷型平面アンテナ。
【請求項2】
ショートスタブの長さを可変にすることで共振周波数を可変にすることを特徴とする請求項1記載のショートスタブ付容量装荷型平面アンテナ。
【請求項3】
ショートスタブは、アンテナ素子と一体に形成され、折り曲げ可能な板状としたことを特徴とする請求項1又は2記載のショートスタブ付容量装荷型平面アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−290452(P2009−290452A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139617(P2008−139617)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【出願人】(508158229)株式会社ケイエムダブリュジャパン (1)
【Fターム(参考)】