説明

シラノール基含有オレフィン化合物の製造方法

【解決手段】一般式(i)で表されるオレフィン化合物と、一般式(ii)で表されるハロゲン含有化合物、又は、ハロゲンとオレフィンを逆にした化合物を、遷移金属触媒存在下で反応させることを特徴とする一般式(1)で表されるシラノール基含有オレフィン化合物の製造方法。






(Xは炭素数1〜60の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい。Halはハロゲン原子又はトリフレート基を表す。nは1〜10の整数で、Yは置換又は非置換の二価の共役性置換基を示す。R1、R2はそれぞれ独立に、炭素数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基を示す。)
【効果】高収率で容易にシラノール基含有オレフィン化合物が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラノール基含有オレフィン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シランカップリング剤は、官能基と加水分解性シリル基を有しており、加水分解することで、シラノール基を与える。これが無機材料表面と共有結合を形成することで通常では結びつきにくい有機材料と無機材料を結びつける働きをし、有機無機複合材料の機械的強度、耐水性、接着性の改良、樹脂改質、表面改質等に使われる。これらの特性を利用し、シランカップリング剤は接着剤、塗料、コーティング剤、複合強化樹脂、合成ゴム、無機充填剤表面処理等、幅広い分野・用途に使用される。
【0003】
このような加水分解性シリル基を持つ化合物の合成法としては、分子中に少なくとも1個のケイ素と結合した水素原子を有する有機ケイ素化合物とオレフィン性不飽和結合を含有する有機化合物とを反応させるヒドロシリル化法が代表的である。他に、非特許文献1(Organic Letters 2002年 1843−1845頁)にはトリエトキシシランとアリールハライドを遷移金属触媒存在下で反応させることで、芳香環に直接加水分解性シリル基を導入する方法が記載されている。
【0004】
シランカップリング剤に用いられる加水分解性シリル基は、加水分解する際にVOC(揮発性有機成分)を生じるため環境的負荷を伴う。VOCが発生しないようにするには、例えばシラノール化合物をシランカップリング剤として用いることが考えられる。
【0005】
シラノールを製造する最も単純な方法として、加水分解性シリル基を加水分解する方法が挙げられる。また、特許文献1(特開2008−63390号公報)、非特許文献2(Bull Chem Soc Jpn 2000年 1409−1417頁)にはハロゲン含有化合物をハロゲン−メタル交換によりアニオン化し、ケイ素を含む求電子剤と反応させてシラノールを合成する方法が示されている。特許文献2(特開2002−20390号公報)にはトリオルガノハイドロジェンシラン化合物と水とを、ルテニウム触媒の存在下に反応させてシラノールを製造する方法が記載されている。また、非特許文献3(Organic Letters 2000年 3221−3224頁)には、シラノール基含有ハロゲン化合物を原料とする遷移金属触媒を用いたカップリング反応ではシリル基が反応して脱シリル化が進行することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−63390号公報
【特許文献2】特開2002−20390号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Organic Letters 2002年 1843−1845頁
【非特許文献2】Bull Chem Soc Jpn 2000年 1409−1417頁
【非特許文献3】Organic Letters 2000年 3221−3224頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1に記載されているようなトリアルコキシシリル基を持つ化合物の加水分解には、一定の反応時間を要する。そのためアルコキシシランの加水分解を行う際には、通常、反応を促進する触媒が用いられるが、これはシラノールを縮合させる触媒にもなるため、反応液がシロキサン化合物との混合物となってしまい、シラノールを単離することは難しい。また、ハロゲン−メタル交換を用いる方法では、基質によってはケイ素試剤との反応性が低下するため、系中で発生したアニオンが未反応のまま還元されてしまい、収率が非常に低くなるという問題があった。ルテニウム触媒存在下でトリオルガノハイドロジェンシラン化合物と水とを反応させてシラノールを製造する方法では、ケイ素を置換する炭化水素基が大きい場合には反応性が低下し、炭化水素基が小さい場合には、生成したシラノールが更に反応してヘキサオルガノジシロキサンとの混合物となり、収率が低下することが問題であった。
そのため、シラノール基が縮合や置換等の副反応を起こすことなく、高収率で容易にシラノールが得られる方法の開発が望まれていた。
【0009】
本発明は、高収率で容易なシラノール基含有オレフィン化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討を行った結果、シラノール基及びハロゲン含有化合物とオレフィン化合物、又はシラノール基含有オレフィン化合物とハロゲン含有化合物との遷移金属触媒を用いたカップリング反応が、シラノール基含有オレフィン化合物の製造に有用であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
即ち、本発明は、高収率で容易にシラノール基含有オレフィン化合物が得られる下記製造方法を提供する。
[1]下記一般式(i)で表されるオレフィン化合物と、下記一般式(ii)で表されるハロゲン含有化合物、又は下記一般式(iii)で表されるハロゲン含有化合物と、下記一般式(iv)で表されるオレフィン化合物を、遷移金属触媒存在下で反応させることを特徴とする下記一般式(1)で表されるシラノール基含有オレフィン化合物の製造方法。
【化1】


(式中、Xは炭素数1〜60の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい。Halはハロゲン原子又はトリフレート基を表す。nは1〜10の整数で、Yは置換又は非置換の二価の共役性置換基を示す。R1、R2はそれぞれ独立に、炭素数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基を示す。)
[II]Yがフェニレン基を表し、nが1である[I]に記載のシラノール基含有オレフィン化合物の製造方法。
[III]R1、R2がメチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、tert−ブチル基から選択される[I]又は[II]記載のシラノール基含有オレフィン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、高収率で容易にシラノール基含有オレフィン化合物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のシラノール基含有オレフィン化合物は、下記一般式(1)で表される。
【化2】


式中、A、Bは一方がX、他方がYn−SiR12OHで表される置換基を示す。従って、式(1)は
【化3】


で表すことができる。
【0014】
Xは炭素数1〜60の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい。Xの具体例としては以下のものが挙げられる。
【0015】
【化4】

【0016】
【化5】

【0017】
nは1〜10の整数で、Yは置換又は非置換の二価の共役性置換基を示す。Yの具体例としては以下のものが挙げられる。
【0018】
【化6】

【0019】
1、R2はそれぞれ独立に、炭素数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基を示す。R1、R2の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、tert−ブチル基、ビニル基、アリル基、メタリル基、ブテニル基、フェニル基等が挙げられる。
【0020】
本発明の一般式(1)で表される化合物の製造方法は、下記一般式(2)と下記一般式(3)を遷移金属触媒の存在下で反応させて製造する。
【化7】


上記式(2)、(3)において、A、Bは上記した通りであり、従って、式(2)は
【化8】


又は
【化9】


で表すことができ、式(3)は
【化10】


又は
【化11】


で表すことができ、式(i)と式(ii)、式(iv)と式(iii)の化合物が反応に供される。
【0021】
上記一般式(2)において、Aは式(1)で定義したものと同じ置換基を表す。上記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、Aが上記で示したXである例に加えて、o−ヒドロキシジイソプロピルシリルスチレン、o−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルスチレン、o−ヒドロキシジシクロペンチルシリルスチレン、o−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルスチレン、o−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルスチレン、o−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルスチレン、o−ヒドロキシジイソプロピルシリルスチレン、o−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルスチレン、o−ヒドロキシジシクロペンチルシリルスチレン、o−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルスチレン、o−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルスチレン、o−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルスチレン、o−ヒドロキシジイソプロピルシリルスチレン、o−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルスチレン、o−ヒドロキシジシクロペンチルシリルスチレン、o−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルスチレン、o−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルスチレン、o−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルスチレン、m−ヒドロキシジイソプロピルシリルスチレン、m−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルスチレン、m−ヒドロキシジシクロペンチルシリルスチレン、m−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルスチレン、m−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルスチレン、m−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルスチレン、m−ヒドロキシジイソプロピルシリルスチレン、m−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルスチレン、m−ヒドロキシジシクロペンチルシリルスチレン、m−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルスチレン、m−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルスチレン、m−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルスチレン、m−ヒドロキシジイソプロピルシリルスチレン、m−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルスチレン、m−ヒドロキシジシクロペンチルシリルスチレン、m−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルスチレン、m−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルスチレン、m−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルスチレン、p−ヒドロキシジイソプロピルシリルスチレン、p−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルスチレン、p−ヒドロキシジシクロペンチルシリルスチレン、p−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルスチレン、p−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルスチレン、p−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルスチレン、p−ヒドロキシジイソプロピルシリルスチレン、p−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルスチレン、p−ヒドロキシジシクロペンチルシリルスチレン、p−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルスチレン、p−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルスチレン、p−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルスチレン、p−ヒドロキシジイソプロピルシリルスチレン、p−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルスチレン、p−ヒドロキシジシクロペンチルシリルスチレン、p−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルスチレン、p−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルスチレン、p−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルスチレン等が挙げられる。
【0022】
上記一般式(3)において、Bは(1)で定義したものと同じ置換基を表す。上記一般式(3)において、Halは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又はトリフレート基を表す。上記一般式(3)で表される化合物の具体例としては、Bが上記で示したXである例に加えて、o−ヒドロキシジイソプロピルシリルクロロベンゼン、o−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルクロロベンゼン、o−ヒドロキシジシクロペンチルシリルクロロベンゼン、o−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルクロロベンゼン、o−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルクロロベンゼン、o−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルクロロベンゼン、o−ヒドロキシジイソプロピルシリルブロモベンゼン、o−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルブロモベンゼン、o−ヒドロキシジシクロペンチルシリルブロモベンゼン、o−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルブロモベンゼン、o−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルブロモベンゼン、o−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルブロモベンゼン、o−ヒドロキシジイソプロピルシリルヨードベンゼン、o−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルヨードベンゼン、o−ヒドロキシジシクロペンチルシリルヨードベンゼン、o−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルヨードベンゼン、o−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルヨードベンゼン、o−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルヨードベンゼン、m−ヒドロキシジイソプロピルシリルクロロベンゼン、m−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルクロロベンゼン、m−ヒドロキシジシクロペンチルシリルクロロベンゼン、m−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルクロロベンゼン、m−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルクロロベンゼン、m−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルクロロベンゼン、m−ヒドロキシジイソプロピルシリルブロモベンゼン、m−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルブロモベンゼン、m−ヒドロキシジシクロペンチルシリルブロモベンゼン、m−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルブロモベンゼン、m−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルブロモベンゼン、m−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルブロモベンゼン、m−ヒドロキシジイソプロピルシリルヨードベンゼン、m−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルヨードベンゼン、m−ヒドロキシジシクロペンチルシリルヨードベンゼン、m−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルヨードベンゼン、m−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルヨードベンゼン、m−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルヨードベンゼン、p−ヒドロキシジイソプロピルシリルクロロベンゼン、p−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルクロロベンゼン、p−ヒドロキシジシクロペンチルシリルクロロベンゼン、p−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルクロロベンゼン、p−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルクロロベンゼン、p−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルクロロベンゼン、p−ヒドロキシジイソプロピルシリルブロモベンゼン、p−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルブロモベンゼン、p−ヒドロキシジシクロペンチルシリルブロモベンゼン、p−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルブロモベンゼン、p−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルブロモベンゼン、p−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルブロモベンゼン、p−ヒドロキシジイソプロピルシリルヨードベンゼン、p−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルヨードベンゼン、p−ヒドロキシジシクロペンチルシリルヨードベンゼン、p−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルヨードベンゼン、p−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルヨードベンゼン、p−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルヨードベンゼン、o−ヒドロキシジイソプロピルシリルフェニルトリフラート、o−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルフェニルトリフラート、o−ヒドロキシジシクロペンチルシリルフェニルトリフラート、o−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルフェニルトリフラート、o−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルフェニルトリフラート、o−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルフェニルトリフラート、o−ヒドロキシジイソプロピルシリルフェニルトリフラート、o−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルフェニルトリフラート、o−ヒドロキシジシクロペンチルシリルフェニルトリフラート、o−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルフェニルトリフラート、o−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルフェニルトリフラート、o−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルフェニルトリフラート、o−ヒドロキシジイソプロピルシリルフェニルトリフラート、o−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルフェニルトリフラート、o−ヒドロキシジシクロペンチルシリルフェニルトリフラート、o−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルフェニルトリフラート、o−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルフェニルトリフラート、o−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルフェニルトリフラート、m−ヒドロキシジイソプロピルシリルフェニルトリフラート、m−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルフェニルトリフラート、m−ヒドロキシジシクロペンチルシリルフェニルトリフラート、m−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルフェニルトリフラート、m−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルフェニルトリフラート、m−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルフェニルトリフラート、m−ヒドロキシジイソプロピルシリルフェニルトリフラート、m−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルフェニルトリフラート、m−ヒドロキシジシクロペンチルシリルフェニルトリフラート、m−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルフェニルトリフラート、m−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルフェニルトリフラート、m−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルフェニルトリフラート、m−ヒドロキシジイソプロピルシリルフェニルトリフラート、m−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルフェニルトリフラート、m−ヒドロキシジシクロペンチルシリルフェニルトリフラート、m−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルフェニルトリフラート、m−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルフェニルトリフラート、m−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルフェニルトリフラート、p−ヒドロキシジイソプロピルシリルフェニルトリフラート、p−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルフェニルトリフラート、p−ヒドロキシジシクロペンチルシリルフェニルトリフラート、p−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルフェニルトリフラート、p−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルフェニルトリフラート、p−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルフェニルトリフラート、p−ヒドロキシジイソプロピルシリルフェニルトリフラート、p−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルフェニルトリフラート、p−ヒドロキシジシクロペンチルシリルフェニルトリフラート、p−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルフェニルトリフラート、p−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルフェニルトリフラート、p−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルフェニルトリフラート、p−ヒドロキシジイソプロピルシリルフェニルトリフラート、p−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルフェニルトリフラート、p−ヒドロキシジシクロペンチルシリルフェニルトリフラート、p−ヒドロキシジシクロヘキシルシリルフェニルトリフラート、p−ヒドロキシシクロヘキシルメチルシリルフェニルトリフラート、p−ヒドロキシ−tert−ブチルメチルシリルフェニルトリフラート等が挙げられる。
【0023】
上記一般式(2)で表されるオレフィン化合物と上記一般式(3)で表されるハロゲン含有化合物を反応させるために使用する遷移金属触媒としては、パラジウム触媒、ルテニウム触媒、ロジウム触媒、白金触媒、コバルト触媒、ニッケル触媒が挙げられるが、中でもパラジウム触媒が好ましい。パラジウム触媒の具体例としては、ジ−μ−クロロビス[(η−アリル)パラジウム(II)]、酢酸パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)、トランス−ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロ(η−シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)、トランス−ジ−μ−ブロモ−ビス[o−(ジメシチルホスフィノ)−3,5−ジメチルベンジル]ジパラジウム(II)、トランス−ジ−μ−クロロ−ビス[o−(ジメシチルホスフィノ)−3,5−ジメチルベンジル]ジパラジウム(II)、トランス−ジ−μ−ヨード−ビス[o−(ジメシチルホスフィノ)−3,5−ジメチルベンジル]ジパラジウム(II)、トランス−ジ−μ−アセテート−ビス[o−(t−ブチル−o−トリルホスフィノ)ベンジル]ジパラジウム(II)、トランス−ジ−μ−アセテート−ビス[o−(ジ−t−ブチルホスフィノ)ベンジル]ジパラジウム(II)、トランス−ジ−μ−アセテート−ビス[o−(ジ−o−トリルホスフィノ)ベンジル]ジパラジウム(II)等が挙げられる。
遷移金属触媒の使用量は、式(2)の化合物1モルに対し0.0001〜10モル、特に0.001〜1モルが好ましい。
【0024】
上記製造方法では反応を行う際に配位子を添加してもよい。このような化合物の例としては、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジ−tert−ブチルホスフィノビフェニル、ジシクロヘキシルホスフィノビフェニル、亜リン酸トリフェニル等のリン化合物が挙げられる。これらの配位子の使用量は触媒として添加した化合物の遷移金属原子に対して0.5〜2当量が好ましく、特に0.8〜1.5当量が好ましい。
【0025】
上記製造方法では反応を行う際に塩基を添加することが好ましい。塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の無機塩、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等の金属アルコキシド、メチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基が挙げられる。塩基の使用量は式(2)の化合物1モルに対し0.1〜10モル、特に1〜3モルが好ましい。
【0026】
本発明の製造方法においては、反応時に重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、t−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等が挙げられ、特に2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールが好ましい。重合禁止剤の使用量は式(2)の化合物1モルに対し0.001〜10モル、特に0.01〜0.1モルが好ましい。上記反応の反応温度は、0〜200℃、特に120〜180℃が好ましい。反応時間は1〜20時間、特に1〜10時間が好ましい。溶媒はニトリル系溶媒やアミド系溶媒が好ましく、具体例として、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド又はこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0028】
[実施例1]m−(4−(ジフェニルアミノ)スチリル)ヒドロキシジイソプロピルシリルベンゼンの合成
窒素雰囲気下、4−(ジフェニルアミノ)スチレン271.0mg(1.00mmol)、m−ヒドロキシジイソプロピルシリルブロモベンゼン286.0mg(1.00mmol)、トリエチルアミン143.3mg(1.42mmol)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール28.9mg(0.13mmol)、トリ−o−トリルホスフィン58.3mg(0.19mmol)、酢酸パラジウム31.6mg(0.14mmol)をジメチルアセトアミド7mlに加え、145℃で10時間撹拌した。得られた溶液を減圧濃縮し、水とトルエンを加えた後、分液操作により有機層を抽出した。得られた溶液を硫酸マグネシウムにより乾燥し、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮した後、HPLCにより精製して黄色液体308.3mgを得た。この溶液のMALDI−TOFMSスペクトルを測定した結果、m−(4−(ジフェニルアミノ)スチリル)ヒドロキシジイソプロピルシリルベンゼンであることが確認された。
MALDI−TOFMS m/z:477.2 (M+
【0029】
[実施例2]p−(4−(ジフェニルアミノ)スチリル)ヒドロキシジイソプロピルシリルベンゼンの合成
窒素雰囲気下、4−(ジフェニルアミノ)スチレン275.3mg(1.01mmol)、p−ヒドロキシジイソプロピルシリルブロモベンゼン290.9mg(1.02mmol)、トリエチルアミン150.6mg(1.49mmol)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール24.9mg(0.11mmol)、トリ−o−トリルホスフィン50.2mg(0.17mmol)、酢酸パラジウム12.3mg(0.06mmol)をジメチルアセトアミド7mlに加え、150℃で9時間撹拌した。この溶液のMALDI−TOFMSスペクトルを測定した結果、p−(4−(ジフェニルアミノ)スチリル)ヒドロキシジイソプロピルシリルベンゼンであることが確認された。
MALDI−TOFMS m/z:477.3 (M+
【0030】
[実施例3]m−(4−(ジフェニルアミノ)スチリル)ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルベンゼンの合成
窒素雰囲気下、4−(ジフェニルアミノ)スチレン273.6mg(1.00mmol)、m−ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルブロモベンゼン297.5mg(0.95mmol)、トリエチルアミン149.6mg(1.48mmol)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール25.6mg(0.12mmol)、トリ−o−トリルホスフィン50.2mg(0.17mmol)、酢酸パラジウム12.1mg(0.05mmol)をジメチルアセトアミド5mlに加え、150℃で20時間撹拌した。この溶液のMALDI−TOFMSスペクトルを測定した結果、m−(4−(ジフェニルアミノ)スチリル)ヒドロキシジ−sec−ブチルシリルベンゼンであることが確認された。
MALDI−TOFMS m/z:505.2 (M+
【0031】
[実施例4]m−(4−(ジフェニルアミノ)スチリル)ヒドロキシジシクロペンチルシリルベンゼンの合成
窒素雰囲気下、4−(ジフェニルアミノ)スチレン162.7mg(0.60mmol)、m−ヒドロキシジシクロペンチルシリルブロモベンゼン202.8mg(0.60mmol)、トリエチルアミン141.5mg(1.40mmol)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール32.5mg(0.15mmol)、トリ−o−トリルホスフィン50.2mg(0.17mmol)、酢酸パラジウム12.1mg(0.05mmol)をジメチルアセトアミド8mlに加え、150℃で8時間撹拌した。この溶液のMALDI−TOFMSスペクトルを測定した結果、m−(4−(ジフェニルアミノ)スチリル)ヒドロキシジシクロペンチルシリルベンゼンであることが確認された。
MALDI−TOFMS m/z:529.3 (M+

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(i)で表されるオレフィン化合物と、下記一般式(ii)で表されるハロゲン含有化合物、又は下記一般式(iii)で表されるハロゲン含有化合物と、下記一般式(iv)で表されるオレフィン化合物を、遷移金属触媒存在下で反応させることを特徴とする下記一般式(1)で表されるシラノール基含有オレフィン化合物の製造方法。
【化1】


(式中、Xは炭素数1〜60の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい。Halはハロゲン原子又はトリフレート基を表す。nは1〜10の整数で、Yは置換又は非置換の二価の共役性置換基を示す。R1、R2はそれぞれ独立に、炭素数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基を示す。)
【請求項2】
Xが、下記式(X−1)〜(X−17)から選ばれるものである請求項1記載のシラノール基含有オレフィン化合物の製造方法。
【化2】


【化3】

【請求項3】
Yが、下記式(Y−1)〜(Y−9)から選ばれるものである請求項1又は2記載のシラノール基含有オレフィン化合物の製造方法。
【化4】

【請求項4】
Yがフェニレン基を表し、nが1である請求項1又は2記載のシラノール基含有オレフィン化合物の製造方法。
【請求項5】
1、R2がメチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、tert−ブチル基から選択される請求項1〜4のいずれか1項記載のシラノール基含有オレフィン化合物の製造方法。
【請求項6】
リン化合物を配位子として添加して反応を行う請求項1〜5のいずれか1項記載のシラノール基含有オレフィン化合物の製造方法。
【請求項7】
塩基を添加して反応を行う請求項1〜6のいずれか1項記載のシラノール基含有オレフィン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2011−132165(P2011−132165A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292506(P2009−292506)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】