説明

シラン類リサイクルシステム

【課題】半導体製造装置から排出されるシラン類をリサイクルすることを目的とする。
【解決手段】半導体製造装置20から排出される混合ガスに含まれるシラン類が除害装置30によってシリカとして無害化される。除害装置30で生成したシリカはシリカ回収手段40によって回収される。炭素含有物質混合手段50は、シリカ回収手段40で回収されたシリカに炭素含有物質を混合する。塩素化手段60は、炭素含有物質混合手段50で得られた混合物に塩素含有物質を反応させて四塩化珪素を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体や太陽電池、フラットパネルの製造プロセスから排出されるシラン類をリサイクルする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や太陽電池、フラットパネルの製造プロセスにおいて、半導体製造装置によってモノシラン、ジシランといったシラン類のガスがプロセスガスとして利用されている。シラン類のガスは毒性ガスであるため、排出ガス中に含まれているシラン類は除害装置において無害化された後、大気に放出されている。
【0003】
シラン類の除害装置としては、主に燃焼方式やスクラバーによる分解方式が取られており、いずれの場合もシラン類はシリカにすることで無害化されている。除害装置によって生成したシリカは、一般的には除害装置の後段に設置されているフィルタによって除去、もしくはスクラバーによって処理され、廃液中に混在する(図1参照)。
【0004】
現状では、フィルタによって回収されたシリカはそのまま廃棄され、また廃液中に混合しているシリカは、廃液を適切に処理することによって廃棄されている。とりわけ、近年の太陽電池産業の成長に伴って、今後廃棄されるシリカの量が著しく増加していくことが予想される。
【0005】
また、近年の太陽電池産業の成長に伴って、太陽電池用シリコンの需要が逼迫する事態に陥っており、今後新たな太陽電池用シリコンの製造手法や廃シリコンなどのリサイクル手法の確立が必要である。
【0006】
さらに、現在の太陽電池はまだまだ高価であるため、太陽電池によって得られる電力の価格は商業電力の電気代と比較して数倍であり、さらなる原料費の低減・製造コストの低減が望まれている。
【0007】
太陽電池用シリコンを製造する手法としては、(1)シーメンス法:トリクロロシランを水素によって還元することで多結晶シリコンを製造する手法、(2)流動床法:反応炉内にシリコン微粉末を流動させておき、その中にモノシランと水素の混合ガスを導入して多結晶シリコンを製造する手法、(3)亜鉛還元法:四塩化珪素を溶融亜鉛によって還元することで多結晶シリコンを製造する手法、上記の3つの手法が挙げられる。低価格化を指向する太陽電池用シリコンの製造方法としては、(1)シーメンス法、(2)流動床法では高純度金属シリコンの生産効率が低いという基本的な問題があり、生産効率に優れている(3)亜鉛還元法を用いることが好ましいと考えられる。
【0008】
亜鉛還元法の原料として用いられる四塩化珪素は、以下の反応式(ア)に示したように、シリカを原料として製造することができる。
SiO+2C+2Cl→SiCl+2CO・・・(ア)
【0009】
この手法では、上述の反応式(ア)に示したようにシリカ含有物質と炭素、塩素を反応させることで四塩化珪素を得る。しかしながら、シリカ含有物質として珪石等を用いると塩素との反応性が低く、反応を1300℃以上という高温条件下で行っても収率は低く、製造コストの増加や製造設備の劣化が問題である。
【0010】
一方、シリカ含有物質として籾殻などの珪酸バイオマスの灰、炭素含有物質として活性炭やコークス等を用いて塩化反応を行うと、反応性が飛躍的に向上し、400〜1100℃という従来よりも低温条件下でも四塩化珪素を得ることができる(特許文献1参照)。その理由としては、珪酸バイオマスに含まれているシリカは多孔質であり、表面積が大きいことなどが挙げられている。
【0011】
しかしながら、籾殻などの珪酸バイオマスの灰はシリカ以外の不純物を多く含んでいるため、原料の精製処理工程や製造した四塩化珪素の精製工程への負担が大きく、製造コストが高くなる難点がある。
【0012】
また、籾殻などの珪酸バイオマスは比重が小さく、工業化の際に大量の珪酸バイオマスを集荷、運搬する際には膨大なコストがかかってしまうため、より比重が大きい形状である灰化後もしくは炭化後の形状で運搬することが望ましい。とりわけ、灰化処理は単に珪酸バイオマスを燃焼させるだけという比較的容易な処理工程であるため、コスト面からも灰化後の形状で運搬することがさらに好ましい。
【0013】
さらに工業化を考えた際、珪酸バイオマスが大量かつ安定的に供給されるものであることが必須であるため、安定的な供給といった面では米や麦の籾殻は適しているものの、効率よく米や麦の籾殻を集荷するシステムの構築には問題を抱えている。
【0014】
籾殻以外の珪酸バイオマス原料として、バイオマス糖化処理残渣の灰も有望な原料として挙げられている。糖化処理残渣も籾殻同様、含有しているシリカは多孔質であり、表面積が大きいなどの特徴を有している。そのため、上述反応式(ア)の反応性が飛躍的に向上し、400〜1100℃という従来よりも低温条件下でも四塩化珪素を得ることができる(特許文献2参照)。
【0015】
また、バイオマス糖化処理残渣はバイオエタノールの製造に付随して大量かつ安定的に、そして集約した形で得られることが期待できるため、籾殻の際に問題になっているような集荷システムを構築する必要も無く、四塩化珪素製造において有用な原料として期待できる。
【0016】
一方で、バイオマス糖化処理残渣は、あくまでバイオエタノール製造工程において生じる残渣であり、含有するシリカ分の純度は決して高くない。そのため、四塩化珪素製造においては、籾殻以上に原料の精製処理工程や製造した四塩化珪素の精製工程への負担が多くなり、製造コストが高くなる難点がある。
【0017】
半導体製造装置の排出ガス中に含まれているモノシラン、ジシランといったシラン類のガスは、燃焼方式やスクラバーによる分解方式の除害装置において無害化され、固体状のシリカとなる。一方で、シラン類以外のガスの大部分は、除害装置によって処理されても固体状になることはほとんどないため、回収されるシリカは純度が高いことが期待できる。そのため、籾殻灰やバイオマス糖化処理残渣などの珪酸バイオマスを原料としたときに問題になっていた原料の精製処理工程や、製造した四塩化珪素の精製工程への負担を大幅に軽減することが期待できる。
【0018】
また、半導体製造設備によって排出されたシラン類を含むガスを無害化することによって生成したシリカは、大量かつ安定的に供給されることが期待できる。さらに、半導体製造設備は工場などに集約されているためシリカを集約した形で得ることが期待でき、籾殻の際に問題になっているような集荷システムを構築する必要も無く、上記シリカは四塩化珪素製造において有用な原料として期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開昭58-055330号公報
【特許文献2】特開昭58-099116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述した現状を踏まえて、半導体製造設備から排出されるシリカを廃棄することなく、回収、リサイクルすること、とりわけ太陽電池用シリコンの原料としてリサイクルする技術が望まれている。
【0021】
そこで、本発明では廃棄されているシリカをリサイクルするシステムを構築する。とりわけ前記シリカを原料として、太陽電池用シリコンの原料などに利用可能な四塩化珪素を製造することで、結果としてシラン類をリサイクルするシステムを構築する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明のある態様は、シラン類リサイクルシステムである。当該シラン類リサイクルシステムは、少なくともシラン類を含む混合ガスを排出する半導体製造装置と、半導体製造装置から排出されるシラン類を無害化してシリカを形成する除害装置と、除害装置によって形成されたシリカを回収するシリカ回収手段と、シリカ回収手段によって回収されたシリカに炭素含有物質を混合する炭素含有物質混合手段と、炭素含有物質混合手段で得られた混合物を塩素含有物質と反応させて四塩化珪素を製造する塩素化手段と、を備えることを特徴とする。
【0023】
上記態様のシステムによれば、シラン類を回収し、四塩化珪素として再利用することができる。とりわけ前記半導体製造装置の排気ガスを処理した際、シリカ以外の固体成分の生成は少ないことが予想されるため、回収されるシリカは純度が高いことが期待できる。その結果として、原料や生成した四塩化珪素の精製コスト削減が期待でき、安価な四塩化珪素の製造方法としても期待できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、半導体製造装置から排出されるシラン類をリサイクルすることができる。さらには、太陽電池用シリコンの製造原料である四塩化珪素を安定かつ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来のプロセスを示すプロセス図である。
【図2】実施の形態に係るシラン類リサイクルシステムの概略を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良形態を示すが、この限りではない。
【0027】
図2は、実施の形態に係るシラン類リサイクルシステム10の概略を示すブロック図である。シラン類リサイクルシステム10は、半導体製造装置20、除害装置30、シリカ回収手段40、炭素含有物質混合手段50、塩素化手段60を含む。
【0028】
半導体製造装置20が用いられるプロセスは、半導体、太陽電池、フラットパネル等の製造プロセスが挙げられるが、この限りではない。半導体製造装置20から、少なくともシラン類を含む混合ガスが排出される。
【0029】
除害装置30は、半導体製造装置20から排出されるシラン類を無害化してシリカを形成する。具体的には、除害装置30としては、燃焼除害装置やスクラバー等が挙げられるが、この限りではない。また、半導体製造装置20から排出されるシラン類としては、モノシランやジシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、四塩化珪素等が挙げられ、このシラン類のガスには他のガスが混ざっていてもよい。前記他のガスとしては、どのようなガスが混入していてもよく、たとえば、窒素、アルゴン、ヘリウム、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、水素、酸素、ホスフィン、ジボラン、アンモニア、三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素、三フッ化窒素、塩素、塩化水素、一酸化窒素、二酸化窒素、亜酸化窒素、臭化水素、二酸化硫黄、硫化水素、モノゲルマン、アルシンなどが挙げられるがこの限りではない。
【0030】
シリカ回収手段40は、除害装置30によって形成されたシリカを回収する。具体的には、シリカ回収手段40は水素、窒素などのガスを透過し、シリカなどの微粒子を捕獲可能なフィルタである。
【0031】
除害装置30として、燃焼方式やスクラバーによる分解方式を採用した場合には、除害装置30においてシラン類はシリカとなる。特に、除害装置30として燃焼方式が用いられる場合には、除害装置30において、シラン類は粉末状のシリカになる。このため、除害装置30の後段にシリカ回収手段40として、水素、窒素などのガスを透過し、シリカなどの微粒子を捕獲可能なフィルタを設置することにより、シリカの回収を容易にでき、コスト削減を図ることができる。
【0032】
また、除害装置30としスクラバーが用いられる場合には、除害装置30によって生成したシリカは、スクラバーによる処理で生成する廃液中に存在する。この廃液を濾過、乾燥することでシリカを回収することができる。
【0033】
なお、シリカ回収手段40によって回収されたシリカは表面積が大きく、珪石や珪砂等を用いて四塩化珪素を製造する場合よりも、生成収率の向上が期待できる。具体的に回収されたシリカは、表面積(BET法)として、1〜1000m/g、好ましくは10〜700m/g、さらに好ましくは100〜400m/gを有していることが望ましいが、この限りではない。
【0034】
炭素含有物質混合手段50は、シリカ回収手段40によって回収されたシリカに炭素含有物質を混合する。炭素含有物質混合手段50で用いられる炭素含有物質は、コークスや木炭、カーボンブラック、バイオマス由来の炭素などの固体のみならず、一酸化炭素や二酸化炭素、メタンなどの気体であってもよく、さらには四塩化珪素を製造する際に生成する一酸化炭素が再利用されてもよいが、この限りではない。炭素含有物質の添加量としては、シリカのモル数に対して、炭素のモル数が2〜20倍、好ましくは2〜10倍、より好ましくは2〜5倍になるようにすることが適しているが、この限りではない。
【0035】
炭素含有物質とシリカを混ぜ合わせる手法としては、攪拌機などを用いて単に混合させる手法に限られず、炭化処理を採用してもよい。炭化処理とは、炭素含有物質とシリカを混合し、不活性ガス雰囲気下において加熱することでシリカを炭化することを指し、シリカを炭化処理することで、単にシリカと炭素含有物質を混合した時よりもさらにシリカと炭素を高分散にすることができる。なお、炭化処理に使用する不活性ガスとしては窒素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられるがこの限りではない。また、炭化処理時の加熱温度としては、200〜1200℃、好ましくは400〜1000℃、さらに好ましくは600〜800℃が適しているが、この限りではない。
【0036】
四塩化珪素を製造するにあたり、反応を促進する触媒を添加してもよい。上記反応触媒としてはカリウム分や硫黄分が挙げられるが、この限りではない。具体的には、カリウム分としては炭酸カリウム、塩化カリウム、水酸化カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム等を、硫黄分としては硫黄、二酸化硫黄、硫化水素、二硫化炭素等を用いることができるが、この限りではない。触媒を添加する量としては、反応混合物中のシリカ分に対して、0.05〜30質量%、好ましくは0.05〜20質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%であることが適しているが、この限りではない。なお、炭素含有物質とシリカ、必要に応じて固体もしくは液体状の触媒を混合する方法としては、湿式、乾式のいずれでもよく、様々な手法を用いることができる。また、触媒を混合することなく、直接反応器に供給してもよい。
【0037】
塩素化手段60は、炭素含有物質混合手段50で得られた混合物を塩素含有物質と反応させて四塩化珪素を製造する。塩素化手段60で用いられる塩素含有物質としては、塩素や四塩化炭素、テトラクロロエチレン、ホスゲン等の塩素炭化化合物、塩素と一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、塩化炭素水素、不活性ガス等の混合物等が挙げられるが、この限りではない。
【0038】
本実施の形態のシラン類リサイクルシステムにおいて、炭素含有物質、シリカ、必要に応じて触媒を添加した混合物と塩素含有物質との反応は、固定床、流動床などのいずれの方式を用いてもよく、反応温度としては400〜1500℃、好ましくは600〜1200℃、より好ましくは700〜900℃であることが適しているが、この限りではない。
【0039】
なお、塩素化手段60によって得られた四塩化珪素は、さらに不均化反応などの既存の手法によってモノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、モノシランなどとしてリサイクルしてもよい。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
(実施例1)
実施例1のシラン類リサイクルシステムの詳細について、図2を参照して説明する。半導体製造装置20として、薄膜シリコン太陽電池の製造プロセスで用いられるプラズマCVD装置を用いた。除害装置30として、燃焼除害方式を採用した。シリカ回収手段40として、バグフィルターを用いた。シリカ回収手段40で回収されたシリカ(廃シリカと呼ぶ)100mgに、炭素含有物質混合手段50において炭素含有物質としてコークス(JX日鉱日石エネルギー製、炭素含有量:99.9質量%以上)を38mgを混合した。コークスは市販のものをボールミルによって粉砕後、使用した。コークスをシリカに添加、混合後、反応混合物を得た。なお、コークスの添加量は、反応混合物中に含まれているシリカのモル数と炭素のモル比が1:2になるようにした。塩素化手段60において、得られた反応混合物を800℃下で純塩素ガスに1時間接触させることで塩素化反応を行い、生成物を得た。
【0041】
(比較例1)
比較例1のシラン類リサイクルシステムでは、シリカとして市販されているSiO100mg(和光純薬製、純度:99.9質量%)を用いたことを除いて、実施例1と同様な手法あるいは構成を用いて四塩化珪素を作製した。
【0042】
(比較例2)
比較例2のシラン類リサイクルシステムでは、シリカ含有物質としてとして籾殻灰100mgを用い、炭素含有物質としてコークス35mg(JX日鉱日石エネルギー製、炭素含有量:99.9質量%以上)を用いたことを除いて、実施例1と同様な手法あるいは構成を用いて四塩化珪素を作製した。
【0043】
(比較例3)
比較例3のシラン類リサイクルシステムでは、シリカ含有物質としてバイオマス糖化処理残渣の灰100mgを用い、炭素含有物質としてコークス27mg(JX日鉱日石エネルギー製、炭素含有量:99.9質量%以上)を用いたことを除いて、実施例1と同様な手法あるいは構成を用いて四塩化珪素を作製した。
【0044】
(結晶性、表面積、平均粒子径測定)
実施例1のシラン類リサイクルシステムで回収された廃シリカ、比較例1で用いられた市販されているSiO(和光純薬製、純度:99.9質量%)、比較例2で用いられた籾殻灰、および比較例3で用いられたバイオマス糖化処理残渣の灰(以下、糖化処理残渣の灰と呼ぶ)の結晶性(XRD測定)、表面積(BET法)、平均粒子径(SEM測定)測定結果を表1に示す。また、廃シリカ、糖化処理残渣の灰、籾殻灰の組成分析測定結果を表2に示す。
【0045】
【表1】

【表2】

【0046】
廃シリカも籾殻灰や糖化処理残渣の灰同様、非晶質かつ表面積が大きいため、四塩化珪素生成反応において反応性が高いことが期待できる。
【0047】
(組成分析結果)
廃シリカのSiO含有率は99.2%と、籾殻灰(92.1%)や糖化処理残渣の灰(71.8%)と比較して高純度であることがわかる。また、太陽電池用シリコンへの混入を避けたいPの濃度は550ppmと他原料と比較して少なく(籾殻灰:0.11%、糖化処理残渣の灰:1.6%)、生成した四塩化珪素の精製工程への負担軽減が期待できる。
【0048】
(評価結果)
表3に、実施例1、比較例1〜3の各シラン類リサイクルシステムにおける反応転化率および製造された四塩化珪素の純度を示す。なお、四塩化珪素への反応転化率は以下の式(ア)により算出した。
反応転化率(%)=X/Y×100・・・(ア)
X:生成した四塩化珪素のモル数
Y:反応混合物中に含まれているシリカのモル数
また四塩化珪素の純度は、ガスクロマトグラフィーにより算出した。
【0049】
【表3】

【0050】
表3に示すように、廃シリカを原料として用いた実施例1では、四塩化珪素への反応転化率は75.5%であった。また、実施例1において生成した四塩化珪素の純度は98.6%であった。市販されているSiOを用いた比較例1では、四塩化珪素への反応転化率は4.2%であった。籾殻灰を用いた比較例2では、塩化珪素への反応転化率は73.3%であった。また、生成した四塩化珪素の純度は90.1%であった。糖化処理残渣の灰を用いた比較例3では、四塩化珪素への反応転化率は52.1%であった。また、生成した四塩化珪素の純度は79.8%であった。
【0051】
表3に示すように、薄膜シリコン太陽電池の製造プロセスにおいて回収したシリカ(廃シリカ)は、籾殻灰やバイオマス糖化処理残渣などの珪酸バイオマス同様、高収率で四塩化珪素を得ることが可能であることが確認された。さらには、生成した四塩化珪素の純度も籾殻灰やバイオマス糖化処理残渣よりも高く、四塩化珪素の精製工程への負担を軽減することが可能であることが確認された。すなわち、薄膜シリコン太陽電池の製造プロセスにおいて回収したシリカは、高純度な四塩化珪素を収率良く得ることができる原料であり、また大量かつ安定的に集約した形で供給可能であるため、四塩化珪素の製造原料として非常に有望である。
【0052】
以上、実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではなく、様々な変更や改良が可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 シラン類リサイクルシステム、20 半導体製造装置、30 除害装置、40 シリカ回収手段、50 炭素含有物質混合手段、60 塩素化手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともシラン類を含む混合ガスを排出する半導体製造装置と、
前記半導体製造装置から排出されるシラン類を無害化してシリカを形成する除害装置と、
前記除害装置によって形成されたシリカを回収するシリカ回収手段と、
前記シリカ回収手段によって回収されたシリカに炭素含有物質を混合する炭素含有物質混合手段と、
炭素含有物質混合手段で得られた混合物を塩素含有物質と反応させて四塩化珪素を製造する塩素化手段と、
を備えることを特徴とするシラン類リサイクルシステム。
【請求項2】
前記除害装置が燃焼除害装置であり、
前記シリカ回収手段は、前記除害装置で生成したシリカを捕獲するフィルタである請求項1に記載のシラン類リサイクルシステム。
【請求項3】
前記シリカ回収手段で回収されたシリカのBET比表面積が1〜1000m/gである請求項1または2に記載のシラン類リサイクルシステム。

【図1】
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【図2】
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