説明

シリカゾルの濃縮方法及び前記方法により得られる混合物

【課題】高い固体含有量を有するシリカゾルの簡潔な製造方法を見出し、かつ高い固体含有量を有する非常に安定なシリカゾルを提供する。
【解決手段】シリカゾルの濃縮方法において、BET表面積15〜1000m2/g及びシリカゾルの全質量に対して二酸化ケイ素40質量%までの固体含有量を有するシリカゾルが、混合物の全質量に対して0.01〜10質量%の1種以上のアニオン性ポリエーテルカルボキシラートと混合され、そして得られた混合物が次いで、混合物の全質量に対して二酸化ケイ素20〜70質量%の固体含有量に濃縮されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテルカルボキシラートの添加による固体の豊富なシリカゾルの製造方法及びこの方法により得られるシリカゾルに関する。
【背景技術】
【0002】
シリカゾルは、水、アルコール及び/又はその他の極性溶媒中の、沈殿安定性な、無定形SiO2のコロイド溶液である。シリカゾルは一般的に、水に対する類似の粘度を有し、かつ市販で入手可能な製品の幾つかは、粒度又はBET表面積に依存して比較的高い固体濃度を有し、かつゲル化に対する高い安定性を有する。しかしながら、この固体濃度は、ゾル中のSiO2粒子の粒度に極めて依存性である。従って、BET約500m2/g及び粒径5〜6nmを有するシリカゾルは、SiO215質量%でもってのみ安定なゾルとして市販で入手可能であり、そして表面積300〜350m2/g及び粒径9〜10nmを有するゾルは、SiO230質量%でもってのみシリカゾルとして市販されている。BET表面積200m2/g以下及び平均粒度>40nmの場合にのみ、シリカゾルは、粒度に応じて、固体含有量40〜50質量%を確立することができる。このようにして、この最大固体含有量の限度は、粒度約12nm(〜200m2/g)を有するシリカゾルの場合に、35〜40質量%であり、そして、粒度80〜100nmを有するシリカゾルの場合に、50〜55質量%である。例えば、BET表面積約200m2/gを有するシリカゾルは、固体含有量50質量%を有するゾルとして安定でないか、又は、全く製造できない。というのもゲル化が前もって生ずるからである。300m2/g及び固体含有量40質量%を有するシリカゾルは同様に十分に安定でない。しかしながら、特に、小さな粒子を有するゾルの場合には、SiO2の30質量%よりも高い固体濃度を達成することが望ましく、というのもこの小さな粒子の利点、例えばバインダーとして使用される場合のゲル化に対する高い抵抗性、及び、ゾル−ゲル変換における短い反応時間は、この固体濃度が十分でないためにしばしば様々な適用のために活用できないからである。この低い固体濃度のために、この系中には過剰の水が存在し、まず除去されなくてはならない。これは、バインダーとしての硬化の間に、又はゾルを用いた基材のコーティングの間に、より長い反応時間をもたらす。例えば、ゾル−ゲル適用の場合に、大きい比表面積を有するシリカゾルの高い活性及びゲルの高い強度を、大きい表面積を有するゾルから形成される強いフィルムを最終的に得るべく活用することが望ましい。
【0003】
これに応じて更に、高い固体含有量、有利にはゲル化点を超える高い固体含有量を有する安定なシリカゾルを提供することが必要であった。特に、大きいBET表面積を有する微細に分割されたシリカゾルが本発明では興味をもたれる。
【0004】
この文献は、ゲル化点を超える高い固体含有量を有するシリカゾルについて終始説明するが、このシリカゾルの安定性に関する情報は提供しない。特許出願WO-A 99/01377は、高い固体含有量を有する微細に分割されたシリカゾルの極めて複雑な製造方法を記載し、この濃度は、限外濾過工程を介してのみ達成可能であり、かつこの安定性は様々な部分的イオン交換工程及び部分的アルカリ化によって改善される。WO-A 99/01377に記載される方法は、商業的に適用するには余りに複雑過ぎ、かつその他の点では慣用の、シリカゾルの粒径スペクトルに対して使用されることができない欠点を有する。WO-A 99/01377で得られたシリカゾルは更に、6ヶ月よりも短い保存期限しか有しない。
【特許文献1】WO-A 99/01377
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は従って、高い固体含有量を有するシリカゾルの簡潔な製造方法を見出し、かつ高い固体含有量を有する非常に安定なシリカゾルを提供することであった。
【0006】
意外にも、少量のアニオン性ポリエーテルカルボキシラートの添加が、より高い固体含有量を有するシリカゾルの製造を可能にすることが見出された。高い固体含有量を有するこのようなシリカゾルの安定性は、ポリエーテルカルボキシラートの添加により著しく増加され、有利な実施態様においてはこのゲル化点を超えてさえいる。特性、例えば、ゾルの粒径、pH及びBET表面積は、この添加の結果変化しないことも見出された。無論、この密度及び粘度は、固体の割合に応じて増加する。
【0007】
ポリエーテルカルボキシラートの添加により高い濃度のシリカゾルを達成するとの可能性は、現在までの文献中には説明されていない。ポリカルボキシラートは、例えば、シリカゾルとの関連において、例えば、マウスウォッシュ混合物のための配合物の形において記載されており、前記混合物は添加剤としてポリエーテルカルボキシラート、例えば、無水マレイン酸/ベンジルメチルエーテルコポリマー、及び、常用の構成成分の他に特にシリカゾルを含有する(WO-A 94/00103を参照のこと)。更に、添加剤として、特に、シリカゾル及びポリカルボキシラート及び/又はスルホン化されたナフタレン/ホルムアルデヒド縮合生成物をも含有するモルタル組成物が公知である(例えば、WO-A 2001098227及びWO-A 2001090024を参照のこと)。JP-A 11267585は、コーティング調製物のための組成を記載し、前記調製物は、多数の様々な成分に加えて、シリカゾル及びポリカルボキシラート、例えばグリシジルメタクリラート/ブチルメタクリラート/メチルメタクリラート/2−エチルアクリラートコポリマーをも含有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シリカゾルの濃縮方法であって、
・BET表面積15〜1000m2/g及びシリカゾルの全質量に対して二酸化ケイ素45質量%までの固体含有量を有するシリカゾルが、混合物の全質量に対して0.01〜10質量%の1種以上のアニオン性ポリエーテルカルボキシラートと混合され、そして
・得られた混合物が次いで、混合物の全質量に対して二酸化ケイ素20〜70質量%の固体含有量に濃縮されること
を特徴とするシリカゾルの濃縮方法に関する。
【0009】
45質量%までの濃度から、20〜70質量%の固体含有量とは、本発明の方法によれば、シリカゾル中で、より低い固体含有量から、濃縮により、事前よりもより高い固体含有量が達成されることを意味するものと理解されるべきである。固体含有量20質量%を有するシリカゾルを得るためには、従って、20質量%よりも少ない固体含有量を有するシリカゾルから出発することが必要である。
【0010】
アニオン性ポリエーテルカルボキシラート1種又は複数種は、有利には0.05〜10質量%の量で、特に有利には0.1〜2.0質量%の量でシリカゾルと混合される。
【0011】
適したアニオン性ポリエーテルカルボキシラートは、線状及び分枝状ポリエーテルカルボキシラートの両者である。アニオン性に帯電したこのポリマーは、例えば、ポリカルボン酸又はスルホン酸の単独重合又は共重合により製造され、かつ帯電したか又は帯電していない様々な種類の側鎖、例えば、アルキル鎖、ポリエーテル基及びこの類似物を含有することができる。この分子量は、1000〜2000000、有利には5000〜30000g/molであってよい。
【0012】
合成のアニオン性に帯電した分枝ポリエーテルカルボキシラートが有利である。これは一群の化合物を含み、この化合物は電荷を有するポリエーテル主鎖から構成され、かつ帯電していないポリエチレン側鎖を有し、この側鎖は−数及び鎖長−の点で変動し、かつ分子量500〜6000g/mol−側鎖に対して、全分子量から計算して−を有する。この主鎖は、例えば、ポリアクリル酸、マレイン酸又はポリオールとビニルエーテルとの共重合により得られる。前記鎖は、カルボキシル基による負の電荷を有し、これはカチオン、例えばNa、K又はカルシウム及びアンモニウムにより補償される。分子量(重量平均)は有利には、1000〜50000g/molの範囲にある−5000〜30000g/molの分子量は特に有利である−。分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される。ゲル浸透クロマトグラフィーの手法は当業者に公知である。アニオン性に帯電したこれらのポリマーの更なる特性はこの三次元形態にあり、この形態は直径対主鎖の長さの比により表されることができる。ポリエーテルカルボキシラートの直径(ポリアルキル側鎖の広がり)は、例えば、1.8〜20nmであってよく、ポリエーテル主鎖の長さは3〜15nmであってよい。側鎖を有するポリエーテルカルボキシラートの主鎖の長さ及び直径は、傾斜した鎖を前提とした計算により決定される。この種のポリエーテルカルボキシラートは、無機顔料、例えば二酸化チタン、透明な酸化鉄又は酸化亜鉛のための分散剤及び充填剤として使用される。本発明の文脈において適したこの種のポリエーテルカルボキシラートは、例えば以下の表中で言及される。前記ポリエーテルカルボキシラートは、35〜60質量%の水溶液の形で、また同様に粉末の形で使用され、かつ様々な対イオン、例えばK+、Na+、アンモニウム及び/又はCa2+を有する。対イオンとしてNa+又はK+を用いた場合に、前記ポリエーテルカルボキシラートは、シリカゾルととりわけ相容性である。
【0013】
表1:適したポリエーテルカルボキシラートの選択
【表1】

【0014】
この種のポリエーテルカルボキシラート及びこの製造は、当業者に公知であり(例えば、DE 43 388 867 A1を参照のこと)、かつ幾つかの場合においては市販されてもいる(例えば、表1による商標名Melpers(R)のもとで販売されている、SKW Polymers, GmbH, Trostbergの製品も参照のこと)。
【0015】
シリカゾルとポリエーテルカルボキシラート1種又は複数種との混合は、任意の所望の添加順序により実施されることができる。一方では、ポリエーテルカルボキシラート1種又は複数種をシリカゾルに対して添加し、次いでこの2つの成分を混合、例えば撹拌により混合することが可能である。他方ではしかしながら、ポリエーテルカルボキシラート1種又は複数種(前記ポリエーテルカルボキシラートは場合により溶液の形に、有利には水溶液の形にある)を最初に装入し、そしてシリカゾルを添加し、次いでこの2つの成分を混合、例えば撹拌により混合することも可能である。この組合せ及び混合は、様々な温度で実施されることができる。5℃〜100℃の温度は有利であり、特に有利には15〜50℃である。この組合せ及び混合は極めて特に有利には室温で実施される。
【0016】
シリカゾル/ポリエーテルカルボキシラート混合物の適した濃縮方法は、本発明による方法によれば、例えばこの混合物の所望のSiO2濃度への熱による蒸発又は限外濾過(ultrafiltration)を用いた穏和な濃縮である。この種の方法は原則的に当業者に公知であり、かつ、例えばDE-A 42 16 119に説明されている。熱による蒸発を用いた濃縮は、例えば、20〜100℃の温度で実施されることができる。減圧又は大気圧力下で作業することができる。限外濾過を用いた濃縮は、例えばシリカゾルを膜(セラミック又はポリマー膜)に導通させ、この液相の一部を透過物として前記膜を通過させ、そしてシリカゾルがいわゆる保持物(retentate)としてより高いSiO2濃度を有してこの膜を離れることにより実施されることができる。高い流量速度を達成するために、セラミック膜の場合には高温で作業することが好ましく、というのもシリカゾルのより低い粘度が生じるからである。
【0017】
BET表面積15〜800m2/g、有利には50〜700m2/g、特に有利には100〜600m2/gを有するシリカゾルが有利に使用される。比表面積は、乾燥したSiO2粉末に対するBET法(S. Brunauer, P.H. Emmet及びE. Teller, J. Am. Soc., 1938, 60, p.309を参照のこと)により、又は、直接的に溶液中で、G.W.Sears(Analytical Chemistry, 第28巻, 1981頁, 1956年を参照のこと)による滴定により決定することができる。特に言及していない場合には、本明細書中ではBET法により決定された比表面積に関する値が言及される。
【0018】
使用されるシリカゾルの二酸化ケイ素粒子は有利には、平均粒径3nm〜250nm、有利には5〜150nm、特に有利には9〜120nmを有する。ナノメーター範囲にある粒径の測定のために適した方法は、電子顕微鏡写真のみでなく、その他の様々な方法でもあり、例えばレーザー相関分光法(laser correlation spectroscopy)、光子相関分光法、超音波測定、又は、超遠心(沈殿)を用いた測定でもある。シャープな分離のために、ナノ粒子の粒度分布の決定に超遠心が特に適する。超遠心の場合の特殊な特徴は、実際の測定前に、分散体が粒度に応じて分別されることである。均一な分散体中では、大きな粒子が、同様に存在する中間の大きさの粒子及び小さい粒子よりもより迅速に沈降することが知られている。レーザー線が超遠心セルを通じて投影される場合に、かなり明白な変化が時間の関数として強度中に生じる。強度のこの変化から、粒子の濃度における変動を、そしてここから粒度分布を計算することが可能である。光源はNe−Heレーザーである。超遠心は高い精度及び高い解像度を可能にし、この分布は正確に決定されることができる。超遠心を用いた粒度分布の測定は従って、本発明の文脈において好ましい。
【0019】
使用されるシリカゾルは、pH1.5〜12を有してよい。前記シリカゾルは有利にはpH2〜12、より有利には8〜11を有する。12より高いpHでは、アルカリ金属ケイ酸塩溶液の形成と共に粒子のペプチゼーション及び溶解が増加して生じ、この理由のために、このpH値は不利な傾向にある。特にその他に特記されていない場合には、言及したpH値は、25℃で測定したpH値を意味するものと理解されるべきである。
【0020】
シリカゾルの全質量に対して、二酸化ケイ素10〜40質量%、有利には二酸化ケイ素15〜35質量%の固体含有量を有するシリカゾルが有利に使用される。
【0021】
この混合物は有利には、混合物の全質量に対して、二酸化ケイ素35〜65質量%、有利には二酸化ケイ素40〜60質量%の固体含有量に濃縮される。特に極めて有利には、シリカゾル/ポリエーテルカルボキシラート混合物は、シリカゾルのゲル化点を超えて濃縮され、即ち、前記混合物は、シリカゾルのゲル化点を上回る二酸化ケイ素の固体含有量を有し、前記混合物は本発明の方法により得られる。
【0022】
シリカゾルのゲル化点は、本発明の文脈内において、特定の粒度のシリカゾル粒子を有するシリカゾルが特定の温度で不可逆的なゲル化を経る二酸化ケイ素の固体含有量を意味すると理解されるべきである。本発明の文脈内において、これは、50℃で6ヶ月の間にシリカがゲル化する二酸化ケイ素の固体含有量であるとの定義による。
【0023】
シリカゾルは、核形成相を介したいわゆる成長プロセスにおけるモノケイ酸の縮合により製造されることができ、前記プロセスにおいてはSiO2の小さな粒子が存在する種上で成長する。この出発材料は、分子状シリケート溶液、新規に調整されたケイ酸希薄溶液(いわゆる新規ゾル(fresh sol))であり、これは5nmよりも小さい粒子を含有する。稀ではあるが、シリカゾルはシリカゲルのペプチゼーションにより又はその他の方法により得られ、例えば無定形SiO2粒子の分散化により得られる。シリカゾルの製造のために工業規模で実施されるこの方法の主要部は、工業用水ガラスを出発材料として使用することである。
【0024】
ソーダ水ガラス又はカリウム水ガラスがこの方法のために適していて、ソーダ水ガラスがコストの理由から好ましい。市販で入手可能なソーダ水ガラスは、Na2O・3.34SiO2の組成を有し、かつ、珪砂をソーダ又は硫酸ナトリウム及び炭素の混合物と共に溶融させることにより有利に製造され、無色透明なガラス、いわゆるガラス塊(lump glass)が得られる。このガラス塊は、粉砕された形で高められた温度及び圧力で水と反応し、コロイド状の、強力アルカリ性溶液を生じ、前記溶液はまた次いで精製される。
【0025】
微細に分割された石英又はその他の適したSiO2原料が熱水条件下でアルカリと共に消費され、水性の水ガラスを直接的に生じる方法もまた公知である。
【0026】
使用されるシリカゾルの製造のために、アルカリ不含SiO2溶液が必要とされ、前記溶液は、アルカリ金属カチオンを水ガラスから除去することにより製造される。脱アルカリの最も一般的な方法は、水ガラス希薄溶液をH+の形にあるカチオン交換樹脂で処理することである。適したイオン交換樹脂は、Lanxess AGからのLewatit(R)の種類である。有利には、10質量%よりも少ない二酸化ケイ素含有量を有する水ガラス溶液が、酸性イオン交換体を有する交換カラムに導通される。この溶液のpHが5〜7である交換区域中での短い滞留時間は、溶液のゲル化及び交換樹脂のケイ化を回避するために重要である。
【0027】
生じるケイ酸希薄溶液(いわゆる新規ゾル)は極めて不安定であり、かつ有利には、更なるアルカリ化により、及び存在するシリカゲル粒子上での成長により、及び同時の、途中の、又は引き続く熱処理により、安定化及び濃縮化される。この濃縮は、熱により蒸発により、又は、膜を介した限外濾過により、実施されることができる。セラミック膜は、この目的に適する。シリカゾルは特に有利には、この溶液のSiO2:Na2O比 60〜130:1へのアルカリ化、この溶液の一部の粒度の増加のため60〜100℃への加熱、次いでこの新規のゾル溶液の連続的添加、及び存在する粒子上での成長により安定化される。この溶液の所望の濃度への濃縮は、同時に又は引き続いて蒸発により実施されることができる。無機塩基を用いてアルカリ性にされた微細に分割されたシリカゾル(通常10nmよりも少ない平均粒径)は、このBET表面積が安定に維持されないとの欠点を有する。この種のシリカゾルは従って、例えばアルミニウムイオンで安定化することができる(K. K. Iler, The Chemistry of Silica, Wiley & Sons, New York, 1979, 407-410頁を参照のこと)。
【0028】
シリカゾルの特性、特性決定及び製造の詳細な説明はK. K. Iler, The Chemistry of Silica, Wiley & Sons, New York, 1979, 312〜461頁中に見出される。
【0029】
本発明による方法における使用に適したシリカゾルは、ゲル化点を下回る様々な固体含有量で市販もされている。
【0030】
意外にも、本発明による方法により製造されたシリカゾル/ポリエーテルカルボキシラート混合物は、高い安定性を有する。本発明による方法を用いて、粒度に応じて、SiO270質量%までのシリカゾルの固体含有量を確立することができる。この固体含有量は幾つかの場合においては既にゲル化点を上回り、このゲル化点とは、ポリエーテルカルボキシラート添加無しの際に二酸化ケイ素の同じ固体含有量の濃縮シリカゾルが有するであろうものである。
【0031】
この種の安定なシリカゾル/ポリエーテルカルボキシラート混合物は、現在までの文献中に記載されておらず、従って同様に、本発明の主題である。
【0032】
本発明によるシリカゾルは、例えば、バインダーとしての使用に、ロストワックスキャスティング分野において、接着剤分野において、耐火物分野において、触媒の製造において、繊維のために、更には紙のコーティングのために、飲料の清澄化において、テキスタイル分野においてノンスリップ仕上げ材料として、紙分野においてノンスリップ仕上げ材料のために、建築分野においてコンクリートの添加剤として、ゲルバッテリーのために、シリコンウェファのための研磨剤として、そして電子工学のための薄層の製造において、また同様に濾紙保持(paper retention)において適している。
【0033】
次の実施例は本発明を例示により説明するためのものであり、本発明を限定するものと理解されるべきでない。
【実施例】
【0034】
実施例1:BET表面積300m2/g、SiO2含有量40質量%、及び平均粒径9nmを有するシリカゾル/ポリエーテルカルボキシラート混合物の本発明による製造
シリカゾル300/30%(即ち、BET表面積300m2/g、SiO2含有量30質量%及び平均粒径9.2nmを有する)999gを反応フラスコ中に初期装入し、SKW TrostbergからのMelpers(R) 2450(ポリエーテルカルボキシラート)1gを添加し、100℃での沸騰により、SiO240質量%に濃縮した。
SiO2含有量:40%
粘度:13.3mPa・s
密度:1.290g/ml
平均粒径:9.2nm
保存期限の決定のために、シリカゾルを冷却後に50℃で貯蔵した。50℃での8ヶ月後に、シリカゾルは未だゲル化していなかった。
【0035】
比較例1:BET表面積300m2/g、SiO2含有量40質量%、及び平均粒径9nmを有するシリカゾルの製造
Levasil 300/30% 1000gを反応フラスコ中に初期装入し、100℃での沸騰により、SiO240質量%に濃縮した。
SiO2含有量:40.1%
粘度:20mPa・s
密度:1.292g/ml
平均粒径:9nm
保存期限の決定のために、シリカゾルの一部を冷却後に50℃で貯蔵した。50℃での3.5ヶ月後に、シリカゾルはゲル化した。
【0036】
実施例2:BET表面積200m2/g、平均粒径15nm及びSiO2含有量50質量%を有するシリカゾル/ポリエーテルカルボキシラート混合物の本発明による製造
BET表面積200m2/g及び平均粒径15.4nmを有するシリカゾル200/40% 999gを反応フラスコ中に初期装入し、SKW TrostbergからのMelpers(R) 2450(ポリエーテルカルボキシラート)1gを添加し、100℃での沸騰により、SiO250質量%に濃縮した。
SiO2含有量:50.1%
粘度:72mPa・s
密度:1.392g/ml
平均粒径:15.6nm
保存期限の決定のために、シリカゾルを冷却後に50℃で貯蔵した。50℃での6ヶ月後に、シリカゾルは変化しておらず、かつ未だゲル化していなかった。
【0037】
比較例2:BET表面積200m2/g及びSiO2含有量50質量%を有するシリカゾルの製造
シリカゾル200/40% 1000gを反応フラスコ中に初期装入し、100℃での沸騰により、SiO240質量%より高い固体含有量への濃縮を試みた。固体含有量46質量%で、この粘度は著しく上昇し、ケーキングが生じた。更なる濃縮は可能でなかった。
【0038】
実施例3:BET表面積300m2/g、平均粒径9.3nm及びSiO2含有量40質量%を有するシリカゾル/ポリエーテルカルボキシラート混合物の本発明による製造
シリカゾル300/30% 999gを反応フラスコ中に初期装入し、SKW TrostbergからのMelpers(R) 1828(ポリエーテルカルボキシラート)1gを添加し、100℃での沸騰により、SiO240質量%に濃縮した。
SiO2含有量:40%
粘度:13.3mPa・s
密度:1.290g/ml
平均粒径:9.2nm
保存期限の決定のために、シリカゾルの粒子を冷却後に50℃で貯蔵した。50℃での7ヶ月後に、シリカゾルは未だゲル化していなかった。
【0039】
この実施例は、得られるシリカゾル/ポリエーテルカルボキシラート混合物のゲル化がポリエーテルカルボキシラートの添加により妨げられることができるが、ポリエーテルカルボキシラートの添加無しで、同じBET表面積及び同じSiO2含有量を有するシリカゾルはゲル化し、即ちこれはこのゲル化点を超える固体含有量を有することを明白に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカゾルの濃縮方法において、
・BET表面積15〜1000m2/g及びシリカゾルの全質量に対して二酸化ケイ素40質量%までの固体含有量を有するシリカゾルが、混合物の全質量に対して0.01〜10質量%の1種以上のアニオン性ポリエーテルカルボキシラートと混合され、そして
・得られた混合物が次いで、混合物の全質量に対して二酸化ケイ素20〜70質量%の固体含有量に濃縮されることを特徴とする、シリカゾルの濃縮方法。
【請求項2】
使用されるシリカゾルがBET表面積15〜800m2/gを有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
使用されるシリカゾルがpH2〜12を有することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
使用されるシリカゾルの二酸ケイ素粒子が、平均粒径3nm〜250nmを有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
得られた混合物が、35〜65質量%、有利には40〜60質量%の固体含有量に濃縮されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
使用されるシリカゾルが、1種以上のアニオン性ポリカルボキシラート0.01〜10質量%と混合されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
混合物の濃縮が限外濾過により実施されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
混合物の濃縮が熱による蒸発により実施されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法により得られる混合物。

【公開番号】特開2008−74701(P2008−74701A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242276(P2007−242276)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(507239651)ハー.ツェー.スタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (59)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH
【住所又は居所原語表記】Im Schleeke 78−91, D−38642 Goslar, Germany
【Fターム(参考)】