説明

シリカヒュームセメント組成物

【課題】ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位を有する共重合体、水、セメント、およびシリカヒュームを含むシリカヒュームセメント組成物であって、少量の水でも十分な流動性が発現でき、超高強度コンクリートを得ることができる組成物を提供する。
【解決手段】本発明のシリカヒュームセメント組成物は、特定の不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位と特定の不飽和モノカルボン酸系単量体由来の構造単位とを有する共重合体、水、セメント、およびシリカヒュームを含み、該不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体のオキシアルキレン基の平均付加モル数mが30≦m≦70であり、該平均付加モル数mと該共重合体1gあたりのカルボキシル基のミリ当量数G(meq/g)との積(m×G)が35≦(m×G)≦80である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高強度領域においても流動性が良好なシリカヒュームセメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水/水硬性粉体の比率が低い超高強度コンクリートが提案されている。このような超高強度コンクリートに用いられる水硬性粉体の代表的なものとして、シリカヒュームセメントが知られている。シリカヒュームセメントは、水/水硬性粉体の比率が低い場合でも良好な施工性を有し、中長期材齢強度や構造体強度の発現性に優れているという特徴を持つ。
【0003】
しかし、シリカヒュームセメントは粒度性が高いために、シリカヒュームセメントを含む組成物は流動性が非常に低く、少量の水で混練することは容易でない。
【0004】
一方、コンクリートの高耐久化技術の確立が望まれており、それを達成する上で重要な技術の一つとして、ひび割れを低減して信頼性の高いコンクリートとするために、膨張材が利用されている。ひび割れが発生すると、コンクリートの劣化因子である中性化が進む。このため、ひび割れを低減できれば、中性化の影響を小さくすることができ、耐久性の高いコンクリート構造物の建築が可能となる。
【0005】
上記問題を解消するために、特定のポリアルキレングリコールエステル系単量体由来の構造単位を有する共重合体を含む分散剤が提案されている(特許文献1)。
【0006】
他方、少ない添加量で高分散性を示し、特に高減水率領域において優れた分散性能を示す高性能のセメント混和剤として、特定のポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位を有する共重合体が提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−131322号公報
【特許文献2】特許第3683176号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、シリカヒュームセメント組成物の流動性の一層の向上のために、ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位を有する共重合体を使用することについて検討した。しかし、上記共重合体は、その分子構造が異なると、上記流動性が十分に発現できる場合もあるものの、発現できない場合もあることが判明した。
【0008】
本発明の目的は、ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位を有する共重合体、水、セメント、およびシリカヒュームを含むシリカヒュームセメント組成物であって、少量の水でも十分な流動性が発現でき、超高強度コンクリートを得ることができる組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のシリカヒュームセメント組成物は、式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)由来の構造単位と式(2)で表される不飽和モノカルボン酸系単量体(B)由来の構造単位とを有する共重合体、水、セメント、およびシリカヒュームを含み、
該不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)のオキシアルキレン基の平均付加モル数mが30≦m≦70であり、
該平均付加モル数mと該共重合体1gあたりのカルボキシル基のミリ当量数G(meq/g)との積(m×G)が35≦(m×G)≦80である。
【化1】

(式(1)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、Rは、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Rは炭素数2〜18のアルキレン基を表し、ROで表されるオキシアルキレン基は、それぞれ同一でも異なっていても良く、mはROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、30≦m≦70であり、Xは、炭素数1〜5の2価のアルキレン基を表す。ただし、RC=CRX−で表される基がビニル基の場合には、Xは結合手である。)
【化2】

(式(2)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。)
【0010】
好ましい実施形態においては、上記セメントと上記シリカヒュームとの合計量に対する上記水の量の割合が20重量%以下である。
【0011】
好ましい実施形態においては、本発明のシリカヒュームセメント組成物は、さらに膨張物質を含有する。
好ましい実施形態においては、上記セメントと上記シリカヒュームと上記膨張物質との合計量に対する上記膨張物質の量の割合が1〜20重量%である。
好ましい実施形態においては、上記セメントと上記シリカヒュームと上記膨張物質との合計量に対する上記水の量の割合が20重量%以下である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水/水硬性粉体の比率が低い超高強度コンクリートを得ることができるシリカヒュームセメント組成物であって、少量の水でも十分な流動性を有するシリカヒュームセメント組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
〔不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)〕
本発明において、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)は、式(1)で表される。
【化3】

式(1)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表す。Rは、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
上記炭素数1〜20の炭化水素基としては、ラジカル重合性の不飽和結合を有しないものが好ましい。例えば、炭素数1〜20のアルキル基(脂肪族アルキル基または脂環族アルキル基)や、炭素数6〜20のフェニル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキル基、(アルキル)フェニル基で置換されたフェニル基、ナフチル基等のベンゼン環を有する芳香族基が好ましい。
炭化水素基の炭素数が増大するに従って、疎水性が大きくなり、分散性が低下するので、Rが炭化水素基の場合の炭素数は、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜12、さらに好ましくは1〜4である。
として最も好ましくは、水素原子である。
式(1)中、Rは炭素数2〜18のアルキレン基を表し、ROで表されるオキシアルキレン基は、それぞれ同一でも異なっていても良い。Rの炭素数としては、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜4である。また、親水性と疎水性のバランスを確保するため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基を必須に含むことが好ましい。
mはROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。30≦m≦70であり、好ましくは35≦m≦65、より好ましくは40≦m≦60である。mが上記範囲を外れると、少量の水でも十分な流動性を有するシリカヒュームセメント組成物を提供できないおそれがある。
【0014】
式(1)中、Xは、炭素数1〜5の2価のアルキレン基を表す。ただし、RC=CRX−で表される基がビニル基(CH=CH−)、すなわち、R=R=R=Hの場合には、Xは結合手である。つまり、Xに結合している炭素原子および酸素原子が直接に結合している。
Xとしては、結合手または炭素数1〜2の2価のアルキレン基であることが好ましい。RC=CRX−で表されるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、3−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基が好適に挙げられる。これらの中でも、アリル基、メタリル基、3−メチル−3−ブテニル基が好ましい。
【0015】
上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)としては、アルケニル基を有する不飽和アルコールにポリアルキレングリコール鎖が付加した構造を有する化合物が好ましい。具体的には、例えば、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノメタリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、エトキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、1−プロポキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテルが挙げられる。
【0016】
上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)は、任意の適切な方法で製造し得る。例えば、特開平10−236859号公報、特表2004−519406号公報に記載の方法が挙げられる。
【0017】
〔不飽和モノカルボン酸系単量体(B)〕
本発明において、不飽和モノカルボン酸系単量体(B)は、式(2)で表される。
【化4】

式(2)中、Rは、水素原子またはメチル基を表す。
式(2)中、Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。
【0018】
上記不飽和モノカルボン酸系単量体(B)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、もしくは有機アンモニウム塩が挙げられる。好ましくは、アクリル酸、およびこの塩である。共重合性に優れるからである。
【0019】
〔他の単量体〕
本発明において用いる共重合体の原料として、上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)、上記不飽和モノカルボン酸系単量体(B)以外に、任意の適切な他の単量体を用いても良い。例えば、特許第3683176号の段落0015に記載の単量体が挙げられる。
【0020】
〔共重合体〕
本発明において用いる共重合体は、上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)由来の構造単位と上記不飽和モノカルボン酸系単量体(B)由来の構造単位とを有する。本発明において用いる共重合体は、さらに、上記他の単量体由来の構造単位を有していても良い。
【0021】
上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)由来の構造単位は、式(3)で表される。
【化5】

(式(3)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、Rは、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Rは炭素数2〜18のアルキレン基を表し、ROで表されるオキシアルキレン基は、それぞれ同一でも異なっていても良く、mはROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、30≦m≦70であり、Xは、炭素数1〜5の2価のアルキレン基を表す。ただし、RC=CRX−で表される基がビニル基の場合には、Xは結合手である。)
【0022】
上記不飽和モノカルボン酸系単量体(B)由来の構造単位は、式(4)で表される。
【化6】

(式(4)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。)
【0023】
本発明においては、上記共重合体1gあたりのカルボキシル基のミリ当量数をG(meq/g)とするとき、上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)のオキシアルキレン基の平均付加モル数m(30≦m≦70)と該Gとの積(m×G)が、35≦(m×G)≦80である。(m×G)が上記範囲を外れると、少量の水でも十分に混練可能な流動性を常に有するシリカヒュームセメント組成物を提供できないおそれがある。(m×G)は、好ましくは、40≦(m×G)≦75、より好ましくは、45≦(m×G)≦70である。
【0024】
本明細書において「共重合体1gあたりのカルボキシル基のミリ当量数G(meq/g)」とは、共重合体に含まれるカルボキシル基を未中和型に換算したときの共重合体1gあたりのカルボキシル基のミリ当量数である。これは、共重合体が塩を形成する場合を考慮したものである。
【0025】
共重合体中のカルボキシル基が塩を形成していない場合の上記Gの算出方法は、例えば、共重合体中におけるカルボキシル基を有する不飽和モノカルボン酸系単量体(B)由来の構造単位の割合が10重量%であって、該単量体(B)がアクリル酸の場合、アクリル酸の分子量は72であるので、共重合体1gあたりのカルボキシル基のミリ当量数G=(1×0.1/72)×1000=1.39(meq/g)となる。
【0026】
共重合体中のカルボキシル基が塩を形成している場合の上記Gの算出方法は、例えば、共重合体中におけるカルボキシル基の塩を有する不飽和モノカルボン酸系単量体(B)由来の構造単位の割合が20重量%であって、該単量体(B)がアクリル酸ナトリウムの場合、アクリル酸の分子量は72、アクリル酸ナトリウムの分子量は94であるので、共重合体1gあたりのカルボキシル基のミリ当量数G=[(1×0.2×72/94)/(1×0.8+1×0.2×72/94)/72]×1000=2.23(meq/g)となる。なお、例えば、重合時にはアクリル酸を用い、重合後に該アクリル酸由来のカルボキシル基を中和して塩にする場合も、上記計算例と同様に算出する。
【0027】
(m×G)の値が上記範囲を満足するためには、上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)のオキシアルキレン基の平均付加モル数mに応じて、上記共重合体1gあたりのカルボキシル基のミリ当量数Gを変える必要があり、そのためには、上記共重合体を製造する際に用いる上記不飽和モノカルボン酸系単量体(B)の割合を変えて、共重合体中の上記不飽和モノカルボン酸系単量体(B)由来の構造単位の含有比率を変えれば良い。
【0028】
上記共重合体が、上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)由来の構造単位および上記不飽和モノカルボン酸系単量体(B)由来の構造単位のみからなる場合は、上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)由来の構造単位と上記不飽和モノカルボン酸系単量体(B)由来の構造単位との割合は、好ましくは、98〜70重量%/2〜30重量%、より好ましくは、97〜75重量%/3〜25重量%、さらに好ましくは、96〜80重量%/4〜20重量%、特に好ましくは、95〜82重量%/5〜18重量%であり、各構造単位の割合がこのような範囲となるように、上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)と上記不飽和モノカルボン酸系単量体(B)とを共重合させれば良い。
【0029】
なお、上記共重合体を製造する際に、共重合可能な他の単量体を共重合させることができる。
【0030】
上記共重合体中における上記他の単量体由来の構造単位の割合は、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0〜30重量%、さらに好ましくは0〜15重量%である。
【0031】
上記共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレングリコール換算で、好ましくは10000〜100000、より好ましくは10000〜80000、さらに好ましくは20000〜50000、特に好ましくは25000〜45000である。上記共重合体の重量平均分子量が上記範囲を外れると、少量の水でも十分に混練可能な流動性を常に有するシリカヒュームセメント組成物を提供できないおそれがある。
上記共重合体は、任意の適切な方法で製造し得る。例えば、重合開始剤を用いて上記単量体を含んでなる単量体成分を重合させれば良い。重合は、溶媒中でのラジカル重合など、任意の適切な重合方法を採用し得る。例えば、特許第3683176号公報に記載の方法が挙げられる。
【0032】
上記共重合体は、重合反応によって製造した後に、好ましくはpHを5〜9、より好ましくはpHを6〜8、さらに好ましくはpHを実質的に7に調整する。pHを調整する方法は、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、マグネシウムやカルシウム等の2価金属を含む化合物、アンモニア、アミンなどの塩基性化合物を用いて中和することができる。pHを調整するために用いる塩基性化合物としては、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムであり、より好ましくは、水酸化ナトリウムである。上記塩基性化合物は、固形を用いても良いし、任意の適切な濃度の水溶液を用いても良い。
【0033】
〔シリカヒュームセメント組成物〕
本発明のシリカヒュームセメント組成物は、上記共重合体、水、セメント、およびシリカヒュームを含む。別途準備した上記セメントと上記シリカヒュームの代わりに、シリカヒュームセメントとして扱われる市販品を使用しても良い。
【0034】
本発明のシリカヒュームセメント組成物中において、上記セメントと上記シリカヒュームとの合計量に対する上記水の量の割合は、好ましくは20重量%以下、より好ましくは13〜20重量%、さらに好ましくは14〜18重量%、特に好ましくは15〜17重量%である。上記水の量の割合が20重量%より多いと、得られるコンクリートの強度が低下するおそれがある。本発明のシリカヒュームセメント組成物が後述する膨張物質を含む場合には、上記セメントと上記シリカヒュームと上記膨張物質との合計量に対する上記水の量の割合は、好ましくは20重量%以下、より好ましくは13〜20重量%、さらに好ましくは14〜18重量%、特に好ましくは15〜17重量%である。上記水の量の割合が20重量%より多いと、得られるコンクリートの強度が低下するおそれがある。
【0035】
本発明のシリカヒュームセメント組成物中において、上記セメントと上記シリカヒュームとの合計量に対する上記共重合体の量の割合は、固形分で、好ましくは0.2〜1.0重量%、より好ましくは0.25〜0.7重量%、さらに好ましくは0.3〜0.65重量%である。上記共重合体の量の割合が0.2重量%未満の場合、少量の水でも十分に混練可能な流動性を常に有するシリカヒュームセメント組成物を提供できないおそれがある。上記共重合体の量の割合が1.0重量%を超えると、経済的に好ましくないおそれがある。
【0036】
本発明のシリカヒュームセメント組成物中の上記セメントとしては、任意の適切なセメントを採用し得る。例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)が挙げられる。さらに、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、石灰石粉末等の微粉体や石膏が添加されていても良い。
【0037】
本発明のシリカヒュームセメント組成物は、骨材を含むことが好ましい。上記骨材としては、任意の適切な骨材を採用し得る。例えば、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材が挙げられる。また、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材も使用可能である。
【0038】
本発明のシリカヒュームセメント組成物は、膨張物質を含有することが好ましい。本発明において膨張物質とは、膨張する物質であれば、任意の適切な物質を採用し得る。
【0039】
膨張物質としては、大別すると、ガス発泡物質系膨張物質とセメント鉱物系膨張物質とが挙げられる。ガス発泡物質系膨張物質としては、例えば、アルミ粉、鉄粉、過酸化物質、炭素物質が挙げられる。セメント鉱物系膨張物質としては、例えば、エリトンガイト系膨張物質、石灰系膨張物質、石灰−エトリンガイト複合系膨張物質が挙げられる。本発明においては、効果的な膨張性を付与し得る観点から、セメント鉱物系膨張物質を用いることが好ましい。
【0040】
セメント鉱物系膨張物質について、さらに詳細に説明する。セメント鉱物系膨張物質としては、遊離石灰や遊離マグネシアを含む膨張物質が挙げられるが、長期安定性の観点から、遊離石灰を含む膨張物質が好ましい。
【0041】
遊離石灰を含む膨張物質としては、例えば、遊離石灰−無水セッコウ系膨張物質、遊離石灰−水硬性化合物系膨張物質、遊離石灰−水硬性化合物−無水セッコウ系膨張物質が挙げられる。本発明においては、膨張性能が良好なことから、遊離石灰−水硬性化合物−無水セッコウ系膨張物質を用いることが好ましく、遊離石灰の含有量が40〜70重量%の膨張物質を用いることがより好ましい。遊離石灰の含有量が上記範囲を外れると、十分なひび割れ低減効果が得られないおそれがある。
【0042】
水硬性化合物としては、例えば、アウイン、2CaO・SiO(CS)や3CaO・SiO(CS)のカルシウムシリケート、CaO・Fe(CF)や2CaO・Fe(CF)のカルシウムフェライト、6CaO・2Al・Fe(CF)や4CaO・Al・Fe(CAF)や6CaO・Al・2Fe(CAF)のカルシウムアルミノフェライトからなる群より選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0043】
上記のような膨張物質としては、例えば、市販の膨張材や静的破砕材を使用することが可能である。膨張材や静的破砕材は各社から市販されており、その代表例としては、例えば、電気化学工業社製の商品名「デンカCSA」や商品名「デンカパワーCSA」、住友大阪セメント社製の商品名「サクス」などが挙げられる。
【0044】
本発明のシリカヒュームセメント組成物中において、上記セメントと上記シリカヒュームと上記膨張物質との合計量に対する上記膨張物質の量の割合は、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは2〜10重量である。
【0045】
本発明のシリカヒュームセメント組成物は、上記の成分以外にも、任意の適切な添加剤(材)、例えば、AE剤、遅延剤、早強剤、促進剤、起泡剤、発泡剤、消泡剤、防水剤、防腐剤等を併用することができる。中でも、本発明のシリカヒュームセメント組成物は、消泡剤を含むことが好ましい。
【0046】
上記消泡剤としては、任意の適切な消泡剤を採用し得る。例えば、特許第3683176号の段落0041〜0042に記載の消泡剤が挙げられる。中でも、オキシアルキレン系消泡剤(ポリアルキレングリコール誘導体)が好ましく、例えば、(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド;などが好適に用いられる。これらオキシアルキレン系消泡剤は、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0047】
本発明のシリカヒュームセメント組成物中において、上記共重合体の量に対する上記消泡剤の量の割合は、好ましくは0.01〜30重量%、より好ましくは0.03〜25重量%、さらに好ましくは0.03〜20重量%である。
【0048】
本発明のシリカヒュームセメント組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分を含んでいても良い。例えば、特許第3683176号公報に記載の成分が挙げられる。
【0049】
本発明のシリカヒュームセメント組成物は、上記各成分を、任意の適切な方法で配合して調整すれば良い。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は重量基準である。
【0051】
<重量平均分子量の測定条件>
機種:Waters LCM1
検出器:Waters 410示差屈折検出器
解析ソフト:Waters Millenium Ver.2.18
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合液に酢酸ナトリウム三無水物115.6gを溶かし、さらに酢酸でpH=6に調整した溶離液
溶離液流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
カラム:東ソー株式会社製、TSKgel Guard ColumnSWXL+G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
標準物質:ポリエチレングリコール、重量平均分子量(Mw)=272500、219300、85000、46000、24000、12600、4250、7100、1470
【0052】
<固形分測定方法>
直径54mm、高さ15mmのアルミ製容器のから重量と、この容器に共重合体水溶液を約1.0g加えた重量とを、下4ケタ表示の精密天秤で精秤し、約1.5gのイオン交換水を加え、均一になるように混ぜ合わせた。固形分の正確さを保つため、1サンプルあたりのn数を3以上とした。その後、この共重合体水溶液入りアルミ製容器を、130℃×70分(乾燥機:ADVANTEC ELECTRIC DRYING OVEN FS−02D、窒素ガス吹き込み量:200ml/min)で乾燥させた。乾燥機から取り出したアルミ製容器は、このアルミ製容器が収容できる大きさのシリカゲル乾燥剤入りデシケーターの中に入れ、アルミ製容器が室温に冷えるまで入れておいた。冷えたアルミ製容器を、再度、この状態のままで、下4ケタ表示の精密天秤で精秤し、下記式から固形分を計算した。
固形分(重量%)=[{乾燥後の(アルミ製から容器+共重合体)精秤量−アルミ製容器から重量}/乾燥前の共重合体水溶液精秤量]×100(重量%)
【0053】
<フロー値測定方法>
測定は20℃、湿度60%の雰囲気下で行った。直径55mm、高さ50mmの中空円筒の容器を、水平に設置した水密性鋼製平板の上に置き、調製したモルタルに注水し、混練開始後8分後にほぼ等しい2層に分けて詰めた。その各層を、直径7mm、長さ30cmの突き棒(鉄棒、先端が半球形状)でならした後、10回一様に突いた。各層を突くときは、突き棒の突き入れは、その先端がほぼ前層に達する程度とした。この中空円筒の容器に詰めた試料のモルタルの上面をこの中空円筒の容器の上端に合わせてならした後、直ちにこの中空円筒の容器を静かに鉛直に引き上げ、広がったモルタルの直径を縦横2方向について測定し、この平均値をフロー値(mm)とした。フロー値が大きいほど分散性が高いことを示している。
【0054】
〔合成例1〕:IPN50の合成
温度計、撹拌機、窒素およびアルキレンオキシド導入管を備えたステンレス製高圧反応器に、不飽和アルコールとして3−メチル−3−ブテン−1−オール234部、付加反応触媒として水酸化ナトリウム3.1部を仕込み、撹拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で、120℃まで加熱した。安全圧下で、120℃に保持したまま、エチレンオキシド6418部を反応器内に導入し、アルキレンオキシド付加反応が完結するまでその温度を保持して反応を終了した。得られたエチレンオキシドが50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体をIPN50と称する。
【0055】
〔合成例2〕:IPN60の合成
温度計、撹拌機、窒素およびアルキレンオキシド導入管を備えたステンレス製高圧反応器に、不飽和アルコールとして3−メチル−3−ブテン−1−オール234部、付加反応触媒として水酸化ナトリウム3.1部を仕込み、撹拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で、120℃まで加熱した。安全圧下で、120℃に保持したまま、エチレンオキシド7702部を反応器内に導入し、アルキレンオキシド付加反応が完結するまでその温度を保持して反応を終了した。得られたエチレンオキシドが60モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体をIPN60と称する。
【0056】
〔合成例3〕:IPN40の合成
温度計、撹拌機、窒素およびアルキレンオキシド導入管を備えたステンレス製高圧反応器に、不飽和アルコールとして3−メチル−3−ブテン−1−オール234部、付加反応触媒として水酸化ナトリウム3.1部を仕込み、撹拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で、120℃まで加熱した。安全圧下で、120℃に保持したまま、エチレンオキシド5134部を反応器内に導入し、アルキレンオキシド付加反応が完結するまでその温度を保持して反応を終了した。得られたエチレンオキシドが40モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体をIPN40と称する。
【0057】
〔合成例4〕:IPN75の合成
温度計、撹拌機、窒素およびアルキレンオキシド導入管を備えたステンレス製高圧反応器に、不飽和アルコールとして3−メチル−3−ブテン−1−オール234部、付加反応触媒として水酸化ナトリウム3.1部を仕込み、撹拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で、120℃まで加熱した。安全圧下で、120℃に保持したまま、エチレンオキシド9627部を反応器内に導入し、アルキレンオキシド付加反応が完結するまでその温度を保持して反応を終了した。得られたエチレンオキシドが75モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体をIPN75と称する。
【0058】
〔合成例5〕:IPN20の合成
温度計、撹拌機、窒素およびアルキレンオキシド導入管を備えたステンレス製高圧反応器に、不飽和アルコールとして3−メチル−3−ブテン−1−オール234部、付加反応触媒として水酸化ナトリウム3.1部を仕込み、撹拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で、120℃まで加熱した。安全圧下で、120℃に保持したまま、エチレンオキシド2567部を反応器内に導入し、アルキレンオキシド付加反応が完結するまでその温度を保持して反応を終了した。得られたエチレンオキシドが20モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体をIPN20と称する。
【0059】
〔製造例1〕:共重合体(1)の製造
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水を38.19部、IPN50を49.37部仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃まで昇温した後、過酸化水素2%水溶液2.22部を添加し、アクリル酸3.10部およびイオン交換水0.77部からなる水溶液を3.0時間かけて滴下した。この滴下と同時に、3−メルカプトプロピオン酸0.14部、L−アスコルビン酸0.06部、およびイオン交換水15.91部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度(30℃)で48重量%水酸化ナトリウム水溶液とイオン交換水とを用いて反応溶液をpH=7に中和し、固形分が45重量%となるように調製し、重量平均分子量が30000の共重合体(1)の水溶液を得た。
各種測定値等を表1に示す。
【0060】
〔製造例2〕:共重合体(2)の製造
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水を38.45部、IPN50を49.37部仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃まで昇温した後、過酸化水素2%水溶液2.33部を添加し、アクリル酸3.51部およびイオン交換水0.88部からなる水溶液を3.0時間かけて滴下した。この滴下と同時に、3−メルカプトプロピオン酸0.12部、L−アスコルビン酸0.06部、およびイオン交換水15.91部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度(30℃)で48重量%水酸化ナトリウム水溶液とイオン交換水とを用いて反応溶液をpH=7に中和し、固形分が45重量%となるように調製し、重量平均分子量が31500の共重合体(2)の水溶液を得た。
各種測定値等を表1に示す。
【0061】
〔製造例3〕:共重合体(3)の製造
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水を38.90部、IPN50を49.37部仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃まで昇温した後、過酸化水素2%水溶液3.00部を添加し、アクリル酸3.28部およびイオン交換水0.39部からなる水溶液(B1)を1.5時間かけて滴下し、(B1)の滴下終了に引き続き、アクリル酸1.54部およびイオン交換水0.39部からなる水溶液(B2)を1.5時間かけて滴下した。(B1)の滴下と同時に、3−メルカプトプロピオン酸0.16部、L−アスコルビン酸0.08部、およびイオン交換水15.91部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度(30℃)で48重量%水酸化ナトリウム水溶液とイオン交換水とを用いて反応溶液をpH=7に中和し、固形分が45重量%となるように調製し、重量平均分子量が38000の共重合体(3)の水溶液を得た。
各種測定値等を表1に示す。
【0062】
〔製造例4〕:共重合体(4)の製造
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水を39.49部、IPN60を49.37部仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃まで昇温した後、過酸化水素2%水溶液0.75部を添加し、アクリル酸3.04部およびイオン交換水0.76部からなる水溶液を3.0時間かけて滴下した。この滴下と同時に、3−メルカプトプロピオン酸0.12部、L−アスコルビン酸0.10部、およびイオン交換水15.91部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度(30℃)で48重量%水酸化ナトリウム水溶液とイオン交換水とを用いて反応溶液をpH=7に中和し、固形分が45重量%となるように調製し、重量平均分子量が39000の共重合体(4)の水溶液を得た。
各種測定値等を表1に示す。
【0063】
〔製造例5〕:共重合体(5)の製造
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水を39.00部、IPN40を49.37部仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃まで昇温した後、過酸化水素2%水溶液3.47部を添加し、アクリル酸5.42部およびイオン交換水1.36部からなる水溶液を3.0時間かけて滴下した。この滴下と同時に、3−メルカプトプロピオン酸0.19部、L−アスコルビン酸0.09部、およびイオン交換水15.91部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度(30℃)で48重量%水酸化ナトリウム水溶液とイオン交換水とを用いて反応溶液をpH=7に中和し、固形分が45重量%となるように調製し、重量平均分子量が34000の共重合体(5)の水溶液を得た。
各種測定値等を表1に示す。
【0064】
〔比較製造例1〕:比較共重合体(1)の製造
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水を39.67部、IPN50を49.37部仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃まで昇温した後、過酸化水素2%水溶液3.88部を添加し、アクリル酸6.67部およびイオン交換水1.67部からなる水溶液を3.0時間かけて滴下した。この滴下と同時に、3−メルカプトプロピオン酸0.21部、L−アスコルビン酸0.10部、およびイオン交換水15.91部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度(30℃)で48重量%水酸化ナトリウム水溶液とイオン交換水とを用いて反応溶液をpH=7に中和し、固形分が45重量%となるように調製し、重量平均分子量が34000の比較共重合体(1)の水溶液を得た。
各種測定値等を表1に示す。
【0065】
〔比較製造例2〕:比較共重合体(2)の製造
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水を38.42部、IPN75を49.37部仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃まで昇温した後、過酸化水素2%水溶液1.94部を添加し、アクリル酸3.10部およびイオン交換水0.77部からなる水溶液を3.0時間かけて滴下した。この滴下と同時に、3−メルカプトプロピオン酸0.10部、L−アスコルビン酸0.08部、およびイオン交換水15.91部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度(30℃)で48重量%水酸化ナトリウム水溶液とイオン交換水とを用いて反応溶液をpH=7に中和し、固形分が45重量%となるように調製し、重量平均分子量が47000の比較共重合体(2)の水溶液を得た。
各種測定値等を表1に示す。
【0066】
〔比較製造例3〕:比較共重合体(3)の製造
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水を39.02部、IPN20を49.37部仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃まで昇温した後、過酸化水素2%水溶液4.88部を添加し、アクリル酸6.67部およびイオン交換水1.67部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。この滴下と同時に、3−メルカプトプロピオン酸0.49部、L−アスコルビン酸0.13部、およびイオン交換水15.91部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度(30℃)で48重量%水酸化ナトリウム水溶液とイオン交換水とを用いて反応溶液をpH=7に中和し、固形分が45重量%となるように調製し、重量平均分子量が28000の比較共重合体(3)の水溶液を得た。
各種測定値等を表1に示す。
【0067】
〔比較製造例4〕:比較共重合体(4)の製造
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水を38.84部、IPN50を49.37部仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃まで昇温した後、過酸化水素2%水溶液0.61部を添加し、アクリル酸2.00部およびイオン交換水0.50部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。この滴下と同時に、3−メルカプトプロピオン酸0.10部、L−アスコルビン酸0.08部、およびイオン交換水15.91部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度(30℃)で48重量%水酸化ナトリウム水溶液とイオン交換水とを用いて反応溶液をpH=7に中和し、固形分が45重量%となるように調製し、重量平均分子量が32000の比較共重合体(4)の水溶液を得た。
各種測定値等を表1に示す。
【表1】

【0068】
〔実施例1〕:シリカヒュームセメント組成物(1)の製造と評価
20℃、湿度60%の雰囲気下で、君津山砂(5mmカット、密度:2.6g/cm)560重量部、シリカヒュームセメント(宇部三菱セメント社製、密度:3.08g/cm)800重量部を、ミキサー(ホバート社製ミキサー、N−50型、2段変速)に仕込んで、20秒間、1速で混合した。共重合体(1)、消泡剤(ポゾリス物産社製「マイクロエア404」(オキシアルキレン系消泡剤(ポリアルキレングリコール誘導体))(MA404と略する)の入ったイオン交換水128重量部(水/(セメント+シリカヒューム)比=16重量%)を入れ、1速のまま160秒間混練した。その後、2速にすばやく切り替え、さらに180秒間混練し、ミキサーを止めて、モルタルを取り出した。MA404を適宜使用して、空気量を1.2±0.4体積%に合わせた。以上のようにして、シリカヒュームセメント組成物(1)を得た。
評価結果を表2に示す。
【0069】
〔実施例2〕:シリカヒュームセメント組成物(2)の製造と評価
共重合体(1)に代えて共重合体(2)を用いた以外は実施例1と同様に行い、シリカヒュームセメント組成物(2)を得た。
評価結果を表2に示す。
【0070】
〔実施例3〕:シリカヒュームセメント組成物(3)の製造と評価
共重合体(1)に代えて共重合体(3)を用いた以外は実施例1と同様に行い、シリカヒュームセメント組成物(3)を得た。
評価結果を表2に示す。
【0071】
〔実施例4〕:シリカヒュームセメント組成物(4)の製造と評価
共重合体(1)に代えて共重合体(4)を用いた以外は実施例1と同様に行い、シリカヒュームセメント組成物(4)を得た。
評価結果を表2に示す。
【0072】
〔実施例5〕:シリカヒュームセメント組成物(5)の製造と評価
共重合体(1)に代えて共重合体(5)を用いた以外は実施例1と同様に行い、シリカヒュームセメント組成物(5)を得た。
評価結果を表2に示す。
【0073】
〔比較例1〕:比較シリカヒュームセメント組成物(1)の製造と評価
共重合体(1)に代えて比較共重合体(1)を用いた以外は実施例1と同様に行い、比較シリカヒュームセメント組成物(1)を得た。
評価結果を表2に示す。
【0074】
〔比較例2〕:比較シリカヒュームセメント組成物(2)の製造と評価
共重合体(1)に代えて比較共重合体(2)を用いた以外は実施例1と同様に行い、比較シリカヒュームセメント組成物(2)を得た。
評価結果を表2に示す。
【0075】
〔比較例3〕:比較シリカヒュームセメント組成物(3)の製造と評価
共重合体(1)に代えて比較共重合体(3)を用いた以外は実施例1と同様に行い、比較シリカヒュームセメント組成物(3)を得た。
評価結果を表2に示す。
【0076】
〔比較例4〕:比較シリカヒュームセメント組成物(4)の製造と評価
共重合体(1)に代えて比較共重合体(4)を用いた以外は実施例1と同様に行い、比較シリカヒュームセメント組成物(4)を得た。
評価結果を表2に示す。
【表2】

なお、表2中、共重合体(重量%/セメント)とは、シリカヒュームセメントに対する共重合体の固形分の重量%割合である。また、MA404(重量%/共重合体)とは、共重合体に対するMA404そのものの重量%割合である。
【0077】
〔実施例6〕:膨張物質を含むシリカヒュームセメント組成物(6)の製造と評価
20℃、湿度60%の雰囲気下で、君津山砂(5mmカット、密度:2.6g/cm)560重量部、シリカヒュームセメント(宇部三菱セメント社製、密度:3.08g/cm)760重量部、膨張物質(シリカヒューム+セメント+膨張物質の合計量に対して膨張物質が5重量%)「デンカパワーCSA タイプS」(電気化学工業株式会社製)40重量部を、ミキサー(ホバート社製ミキサー、N−50型、2段変速)に仕込んで、20秒間、1速で混合した。共重合体(1)、消泡剤(ポゾリス物産社製「マイクロエア404」(オキシアルキレン系消泡剤(ポリアルキレングリコール誘導体))(MA404と略する)の入ったイオン交換水128重量部(水/(セメント+シリカヒューム+デンカパワーCSA タイプS)比=16重量%)を入れ、1速のまま160秒間混練した。その後、2速にすばやく切り替え、さらに180秒間混練し、ミキサーを止めて、モルタルを取り出した。MA404を適宜使用して、空気量を1.2±0.4体積%に合わせた。以上のようにして、シリカヒュームセメント組成物(6)を得た。
評価結果を表3に示す。
【0078】
〔実施例7〕:膨張物質を含むシリカヒュームセメント組成物(7)の製造と評価
共重合体(1)に代えて共重合体(2)を用いた以外は実施例6と同様に行い、シリカヒュームセメント組成物(7)を得た。
評価結果を表3に示す。
【0079】
〔実施例8〕:膨張物質を含むシリカヒュームセメント組成物(8)の製造と評価
共重合体(1)に代えて共重合体(3)を用いた以外は実施例6と同様に行い、シリカヒュームセメント組成物(8)を得た。
評価結果を表3に示す。
【0080】
〔実施例9〕:膨張物質を含むシリカヒュームセメント組成物(9)の製造と評価
共重合体(1)に代えて共重合体(4)を用いた以外は実施例6と同様に行い、シリカヒュームセメント組成物(9)を得た。
評価結果を表3に示す。
【0081】
〔実施例10〕:膨張物質を含むシリカヒュームセメント組成物(10)の製造と評価
共重合体(1)に代えて共重合体(5)を用いた以外は実施例6と同様に行い、シリカヒュームセメント組成物(10)を得た。
評価結果を表3に示す。
【0082】
〔比較例5〕:膨張物質を含む比較シリカヒュームセメント組成物(5)の製造と評価
共重合体(1)に代えて比較共重合体(1)を用いた以外は実施例6と同様に行い、比較シリカヒュームセメント組成物(5)を得た。
評価結果を表3に示す。
【0083】
〔比較例6〕:膨張物質を含む比較シリカヒュームセメント組成物(6)の製造と評価
共重合体(1)に代えて比較共重合体(2)を用いた以外は実施例6と同様に行い、比較シリカヒュームセメント組成物(6)を得た。
評価結果を表3に示す。
【0084】
〔比較例7〕:膨張物質を含む比較シリカヒュームセメント組成物(7)の製造と評価
共重合体(1)に代えて比較共重合体(3)を用いた以外は実施例6と同様に行い、比較シリカヒュームセメント組成物(7)を得た。
評価結果を表3に示す。
【0085】
〔比較例8〕:膨張物質を含む比較シリカヒュームセメント組成物(8)の製造と評価
共重合体(1)に代えて比較共重合体(4)を用いた以外は実施例6と同様に行い、比較シリカヒュームセメント組成物(8)を得た。
評価結果を表3に示す。
【表3】

なお、表3中、共重合体(重量%/セメント)とは、シリカヒュームセメントと膨張物質との合計量に対する共重合体の固形分の重量%割合である。また、MA404(重量%/共重合体)とは、共重合体と膨張物質との合計量に対するMA404そのものの重量%割合である。
【0086】
表1、2より以下のことが判る。
実施例1(m=50、m×G=46.5)と比較例4(m=50、m×G=33.2)を比較すると、実施例1ではフロー値が160mmであり、十分な流動性が得られたが、比較例4ではフロー値が124mmであり、十分な流動性が得られなかった。比較例4は、mは30≦m≦70を満たすが、(m×G)は35≦(m×G)≦80の下限値を下回る例である。
実施例3(m=50、m×G=66.6)と比較例1(m=50、m×G=86.2)を比較すると、実施例3ではフロー値が168mmであり、十分な流動性が得られたが、比較例1ではフロー値が128mmであり、十分な流動性が得られなかった。比較例1は、mは30≦m≦70を満たすが、(m×G)は35≦(m×G)≦80の上限値を上回る例である。
比較例2(m=75、m×G=72.5)ではフロー値が122mmであり、十分な流動性が得られなかった。比較例2は、(m×G)は35≦(m×G)≦80を満たすが、mは30≦m≦70の上限値を上回る例である。
比較例3(m=20、m×G=35.8)ではフロー値が70mmであり、十分な流動性が得られなかった。比較例3は、(m×G)は35≦(m×G)≦80を満たすが、mは30≦m≦70の下限値を下回る例である。
以上のことから、本発明のシリカヒュームセメント組成物は、少量の水(上記の例では、(水/(セメント+シリカヒューム)比=16重量%)の使用においても、十分な流動性が発現でき、超高強度コンクリートを得ることができる組成物である。
【0087】
表1、3より以下のことが判る。
実施例6(m=50、m×G=46.5)と比較例8(m=50、m×G=33.2)を比較すると、実施例6ではフロー値が112mmであり、十分な流動性が得られたが、比較例8ではフロー値が57mmであり、流動性がなかった。比較例8は、mは30≦m≦70を満たすが、(m×G)は35≦(m×G)≦80の下限値を下回る例である。
実施例7(m=50、m×G=51.4)のフロー値は127mmであり、十分な流動性が得られた。実施例7のmは30≦m≦70を満たし、(m×G)は35≦(m×G)≦80を満たしている。
実施例8(m=50、m×G=66.6)と比較例5(m=50、m×G=86.2)を比較すると、実施例8ではフロー値が117mmであり、十分な流動性が得られたが、比較例5ではフロー値が59mmであり、流動性がなかった。比較例5は、mは30≦m≦70を満たすが、(m×G)は35≦(m×G)≦80の上限値を上回る例である。
実施例9(m=60、m×G=55.0)のフロー値は112mmであり、十分な流動性が得られた。実施例9のmは30≦m≦70を満たし、(m×G)は35≦(m×G)≦80を満たしている。
実施例10(m=40、m×G=59.7)のフロー値は118mmであり、十分な流動性が得られた。実施例10のmは30≦m≦70を満たし、(m×G)は35≦(m×G)≦80を満たしている。
比較例6(m=75、m×G=72.5)ではフロー値が56mmであり、流動性がなかった。比較例6は、(m×G)は35≦(m×G)≦80を満たすが、mは30≦m≦70の上限値を上回る例である。
比較例7(m=20、m×G=35.8)ではフロー値が57mmであり、流動性がなかった。比較例7は、(m×G)は35≦(m×G)≦80を満たすが、mは30≦m≦70の下限値を下回る例である。
以上のことから、一般的に、膨張物質を含むシリカヒュームセメント組成物は、膨張物質を含まないものに比べて、フロー値は全体的に低下してしまうのであるが、本発明の膨張物質を含むシリカヒュームセメント組成物は、少量の水(上記の例では、(水/(セメント+シリカヒューム+膨張物質)比=16重量%)の使用においても、十分な流動性が発現でき、膨張物質を配合した場合でも、超高強度コンクリートを得ることができる組成物である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のシリカヒュームセメント組成物は、超高強度コンクリートに好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)由来の構造単位と式(2)で表される不飽和モノカルボン酸系単量体(B)由来の構造単位とを有する共重合体、水、セメント、およびシリカヒュームを含み、
該不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)のオキシアルキレン基の平均付加モル数mが30≦m≦70であり、
該平均付加モル数mと該共重合体1gあたりのカルボキシル基のミリ当量数G(meq/g)との積(m×G)が35≦(m×G)≦80である、
シリカヒュームセメント組成物。
【化1】

(式(1)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、Rは、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Rは炭素数2〜18のアルキレン基を表し、ROで表されるオキシアルキレン基は、それぞれ同一でも異なっていても良く、mはROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、30≦m≦70であり、Xは、炭素数1〜5の2価のアルキレン基を表す。ただし、RC=CRX−で表される基がビニル基の場合には、Xは結合手である。)
【化2】

(式(2)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。)
【請求項2】
前記セメントと前記シリカヒュームとの合計量に対する前記水の量の割合が20重量%以下である、請求項1に記載のシリカヒュームセメント組成物。
【請求項3】
さらに膨張物質を含有する、請求項1または2に記載のシリカヒュームセメント組成物。
【請求項4】
前記セメントと前記シリカヒュームと前記膨張物質との合計量に対する前記膨張物質の量の割合が1〜20重量%である、請求項3に記載のシリカヒュームセメント組成物。
【請求項5】
前記セメントと前記シリカヒュームと前記膨張物質との合計量に対する前記水の量の割合が20重量%以下である、請求項3または4に記載のシリカヒュームセメント組成物。

【公開番号】特開2008−247730(P2008−247730A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33087(P2008−33087)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】