説明

シリカベースド無機材料の表面処理法およびそれに用いる表面処理剤

【課題】シリカベースド無機材料の新たな表面処理法およびそれに用いる表面処理剤を提供することを課題とする。
【解決手段】γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびγ−グリシジルプロピルトリメトキシシランからなる群から選ばれるシランカップリング剤と1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタンとを、重量比90:10から65:35の範囲内で混合したシラン処理剤と、塩酸溶液とを用いてシリカベースド無機材料を表面処理することにより、接着耐久性に優れた表面処理ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカベースド無機材料の表面処理法およびそれに用いる表面処理剤に関する。更に詳細には、歯科材料用の陶材などのシリカベースド無機材料(セラミックス)を表面改質処理し、接着剤を介して歯質に接合する際に、あるいは、ガラス繊維などの工業材料用のシリカベースド無機質フィラーを表面改質処理して、熱可塑性樹脂などを接着させて複合材料などを製造する際に、優れた接着耐久性を付与する、シリカベースド無機材料の表面処理法およびそれに用いる表面処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シランカップリング剤は、陶歯、焼付陶材冠、ジャケット冠などの歯科用陶材(ポーセレン)を、接着剤を介して歯質に接合する際の表面改質剤として、また、歯科治療に用いる粒子分散型コンポジットレジンのシリカ粒子の表面改質剤として広く使用されている。更にには、ガラス繊維などの工業材料用の無機質フィラーを表面改質処理して、熱可塑性樹脂などを接着させて複合材料を製造する際の、表面改質剤としても、シランカップリング剤は広く使用されている。
初期う蝕の歯科治療では、歯牙のう蝕部位をエアータービンで取り除き、できた空隙に、これに嵌合するシリカベースドセラミックスを冠着することにより行われている。また、歯牙のう蝕部位を取り除き、できた空隙にコンポジットレジンを詰めて、歯冠の形態および咀嚼機能を回復させている。そのため、シリカベースドセラミックスやコンポジットレジンには咬合圧に耐え得る機械的強さと耐磨耗性、更には、口腔内という高湿潤条件下で劣化しないなどの性質が要求される。
【0003】
シリカベースドセラミックスとレジンセメントとの接着強さやコンポジットレジンの機械的強度は、レジンセメントとシリカベースドセラミックスとの接着界面やシリカ/マトリックレジン接着界面での接着性の良否に強く依存することから、接着界面の表面処理剤であるシランカップリング剤の研究が盛んに行われている。
例えば、特許文献1には、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤と無機酸によって、ポーセレンなどを表面改質する方法が記載されている。非特許文献1から3には、分子内にシリコーン官能基を複数有するシランカップリング剤、非特許文献4および5には、分子内に疎水性のフッ素原子を導入したシランカップリング剤、非特許文献6には、ベンゼン環を導入したシランカップリング剤などが合成され、接着耐久性が検討されている。
しかしながら、これらの表面改質法やシランカップリング剤などによっては、いずれも、接着耐久性においては期待したほどの成果が得られていないのが現状である。
【特許文献1】特開昭62−286467号公報
【非特許文献1】Int. Committee Composite Mater,Proceedings of ICCM−10,10,565−752,1995
【非特許文献2】歯科材料・器械、6(6)、737−746、1987
【非特許文献3】J. Biomed Mater Res.,25(2),213−221,1991
【非特許文献4】歯科材料・器械、11(3)、415−422、1992
【非特許文献5】歯科材料・器械、19(6)、509−518、2000
【非特許文献6】歯科材料・器械、21(2)、104−115、2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、接着耐久性において優れた、歯科材料用陶材などのシリカベースド無機材料、およびガラス繊維などの無機質フィラーなどの表面処理法を提供することに在る。更に、本発明の課題は、このような表面処理法に用いる表面処理剤を提供することに在る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として、鋭意研究した結果、表面処理剤として、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤と1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタンとを、特に重量比90:10から65:35の範囲内で混合したシラン処理剤と、塩酸溶液とを用いて、表面処理することによって、接着耐久性に優れた表面処理が達成できること、更に、この表面処理は、ガラス繊維などの工業材料用の無機質フィラーを表面改質処理にも適用できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
しかして、本発明は、
[1] シリカベースド無機材料の表面処理法であって、表面処理剤として、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびγ−グリシジルプロピルトリメトキシシランからなる群から選ばれるシランカップリング剤と1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタンとを、重量比90:10から65:35の範囲内で混合したシラン処理剤と、塩酸溶液とを用いることを特徴とする表面処理法;
[2] シランカップリング剤が、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランまたはγ−アミノプロピルトリメトキシシランである、上記[1]に記載の表面処理法;
[3] シラン処理剤として、シランカップリング剤と1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタンとを、重量比70:30から60:40の範囲内で混合したシラン処理剤を用いる、上記[1]または[2]に記載の表面処理法;
[4] 塩酸溶液が、pH1.0から2.0の塩酸溶液である、上記[1]から[3]のいずれかに記載の表面処理法;
[5] シリカベースド無機材料が、歯科材料用の無機材料(セラミックス)である、上記[1]から[4]のいずれかに記載の表面処理法;
[6] 歯科材料用の無機材料(セラミックス)が、陶材またはシリカ粒子である、上記[5]に記載の表面処理法;
[7] シリカベースド無機材料が、工業材料用の無機質フィラーである、上記[1]から[4]のいずれかに記載の表面処理法;
[8] 工業材料用の無機質フィラーが、ガラス繊維である、上記[7]に記載の表面処理法;
[9] シラン処理剤のアルコール溶液と塩酸アルコール水溶液もしくは塩酸水溶液とを、それぞれ、歯科材料用の無機材料(セラミックス)である陶材に噴霧または塗布して、表面処理する、上記[1]から[4]および[6]のいずれかに記載の表面処理法;
[10] シラン処理剤のアルコール溶液と塩酸水性アルコール溶液もしくは塩酸水溶液との混合溶液に、歯科材料用の無機材料(セラミックス)であるシリカ粒子または工業材料用の無機質フィラーを浸漬して、表面処理する、上記[1]から[8]のいずれかに記載の表面処理法;
【0007】
[11] γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびγ−グリシジルプロピルトリメトキシシランからなる群から選ばれるシランカップリング剤と1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタンとを、重量比90:10から55:45の範囲で混合したシラン処理剤と、塩酸溶液とからなる、シリカベースド無機材料の表面処理理剤;および
[12] シラン処理剤のアルコール溶液と塩酸アルコール水溶液もしくは塩酸水溶液とからなる、歯科材料用の無機材料(セラミックス)の表面処理用である、上記[11]に記載の表面処理剤;
[13] シラン処理剤のアルコール溶液と塩酸アルコール水溶液もしくは塩酸水溶液との混合溶液からなる、工業材料用の無機質フィラーの表面処理用である、上記[11]に記載の表面処理剤;
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の表面処理法および表面処理剤により、歯科材料用の陶材などのシリカベースド無機材料(セラミックス)を表面改質処理し、接着剤を介して歯質に接合することにより、あるいは、ガラス繊維などの工業材料用のシリカベースド無機質フィラーを表面改質処理して、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などを接着させて複合材料などを製造することにより、接着耐久性に優れた歯科用材料や工業用複合材料を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の表面処理法および表面処理剤で対象とするシリカベースド無機材料は、その表面にシラノール基(HO−Si)を有しており、歯科材料用あるいは工業材料用の無機材料として通常用いられるものであれば、いずれの無機材料であってもよい。このようなシリカベースド無機材料としては、例えば、歯科材料では、シリカ、アルミナを主成分とし、これらに融点、焼結性、色調などを改善するために修飾酸化物が含有した歯科用陶材、これらの歯科用陶材で成形されたインレーやラミネートなどが挙げられる。また、CAD/CAM(Computer Aided Design/Computer Aided Manufacturing)用セラミックス、このセラミックで成形されたクラウンやインレーなどが挙げられる。また、粒子分散型レジンの作製に用いられるシリカ粒子などが挙げられる。
工業材料用のシリカベースド無機フィラーとしては、例えば、シリカを基材としたセラミックス;Al、B、TiO、ZrOなどを含有しても良いガラス類;シリカ、カオリン、クレー、雲母などのシリカを基材とする鉱物などが挙げられる。なかでも、ガラス繊維などのガラス類が好ましい。
【0010】
本発明では、これらのシリカベースド無機材料の表面処理に、表面処理剤として、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびγ−グリシジルプロピルトリメトキシシランからなる群から選ばれるシランカップリング剤と1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタンとを、重量比90:10から65:35の範囲内で混合したシラン処理剤と、塩酸溶液とを用いる。
シランカップリング剤としては、歯科材料用の無機材料を表面処理の場合には、処理後に、アクリル樹脂などを接着剤として用いるので、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。工業材料用の無機質フィラーの表面処理の場合には、処理後に、エポキシ樹脂などを用いることが多いので、シランカップリング剤としては、それらと反応するγ−アミノプロピルトリメトキシシランやγ−グリシジルプロピルトリメトキシシランを用いるのが好ましい。
【0011】
本発明では、特に、シランカップリング剤と1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタンとの重量比が70:30から60:40の範囲内で混合したシラン処理剤が好ましく、なかでも、重量比が70:30または60:40で混合したシラン処理剤が好ましい。
シランカップリング剤と1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタンとは、通常、メタノールやエタノールなどのアルコール類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類などに溶解して用いられる。この場合の濃度としては、通常、5mg/mlから100mg/mlの範囲が好ましい。
シランカップリング剤と1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタンとを混合したシラン処理剤とともに用いる塩酸溶液は、pH1.0から2.0の塩酸溶液が好ましく、通常、メタノールやエタノールなどのアルコール類と水とからなるアルコール水溶液あるいは水溶液が好ましい。
表面処理に用いる際の、シランカップリング剤と1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタンとを混合したシラン処理剤の溶液と、塩酸溶液との使用割合は、通常、等容量か好ましい。
【0012】
シリカベースド無機材料を表面処理するには、歯科材料用の陶材の場合には、例えば、次のようにして行われる。先ず最初に、陶材の表面を、シリコンカーバイトペイパーなどで研磨し、次いで、アセトンなどの有機溶媒中で超音波洗浄などにより洗浄するのが好ましい。次いで、研磨・洗浄された表面に、シランカップリング剤と1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタンとを混合したシラン処理剤の溶液と、塩酸溶液とを、それぞれ別々に塗布あるいは噴霧してもよく、あるいは、シランカップリング剤と1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタンとを混合したシラン処理剤の溶液と、塩酸溶液との混合液を塗布あるいは噴霧してもよい。次いで、風乾し、エアーブローすることにより、表面処理を行うことができる。また、歯科材料用として、例えば、シリカ粒子を用い、シリカ粒子を表面処理して粒子分散型レジンを製造する場合には、シランカップリング剤と1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタンとを混合したシラン処理剤の溶液と塩酸溶液との混合液中に、シリカ粒子を浸漬し、一定時間放置し、シリカ粒子を乾燥させることによって表面処理することができる。
工業材料用のシリカベースド無機質フィラーを表面処理するには、例えば、ガラス繊維の場合には、紡糸されたガラスフィラメントを、あるいは、ガラスクロスやテープを、通常の表面処理と同様の方法で行うことができる。すなわち、例えば、紡糸されたガラスフィラメントにシランカップリング剤と1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタンとを混合したシラン処理剤の溶液と塩酸溶液との混合液を噴霧し、また、ガラスクロスやテープを、この混合液中に浸漬し、一定時間放置し、ガラスクロスやテープを乾燥させることによって表面処理することができる。
上記した以外の歯科材料用あるいは工業材料用のシリカベースド無機材料の表面処理も、通常採用されている方法によって、行うことができる。
【0013】
以上に詳細に説明したところから明らかなように、本発明の表面処理法に用いる表面処理剤は、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびγ−グリシジルプロピルトリメトキシシランからなる群から選ばれるシランカップリング剤と1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタンとを、重量比90:10から65:35の範囲で混合したシラン処理剤と、塩酸溶液とからなる。上記した通り、シラン処理剤は、通常、アルコール溶液として用いるのが好ましく、塩酸溶液は、塩酸アルコール水溶液または塩酸水溶液の形態が好ましい。これらは、それぞれ、別々に用いてもよく、あるいは、両者を混合した混合液の形態で用いてもよい。従って、例えば、2液性のキットとして、あるいは、1液性の混合液として、提供することができる。
上記した通り、本発明の表面処理剤は、例えば、歯科材料用の陶材の表面処理用には、2液性のキットとして提供することができ、また、歯科材料用の粒子分散型レジンの製造に用いるシリカ粒子の表面処理用、並びに工業用材料用の無機質フィラーの表面処理用には、両者の混合液として通常提供される。
【0014】
本発明による、シリカベースド無機材料の表面処理後は、歯科材料用の陶材の場合には、表面処理した陶材の表面に、アクリル樹脂などを塗布し、歯質に接合することができる。歯科材料用のシリカ粒子の表面処理後は、通常採用されている方法により、粒子分散型レジンの製造に用いることができる。工業材料用のシリカ無機質フィラーの表面処理後は、例えば、ガラス繊維の場合には、表面処理後に、例えば、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等と通常の方法により組み合わせて、複合材料とすることができる。
【0015】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
γ−メタクロキシプロピルトリメトキシシランと1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタンとを用いた歯科用陶材の表面処理
1)目的:
2液性の表面処理剤を作成した。1つの溶液は、γ−メタクロキシプロピルトリメトキシシラン(γ−MPTS)と1,2−(ビストリメトキシシリル)エタン(BTS)とのエタノール溶液(プライマーA)で、他の一つの溶液は、塩酸アルコール水溶液(プライマーB)である。
本実施例では、γ−MPTSに対するBTSの添加量がポーセレン(陶材)に対するレジンの接着耐久性に及ぼす影響を調べた。
【0016】
2)方法:
γ−MPTSとBTSとを、重量比100:0、90:10、80:20、70:30および50:50の割合で混合した。このシラン処理剤を濃度50mg/mlとなるように、エタノールに溶解し、プライマーAを調製した。また、蒸留水に塩酸を加え、pHを2に調製し、これをエタノールに溶解して濃度50vol%となるようにエタノール水溶液を調製し、プライマーBとした。
つぎに、ポーセレン表面(GN−10、GC)を600番および1000番のシリコーンカーバイトペイパーで研磨した後、その表面にプライマーAおよびBの混和液を塗布し、室温に3分間放置した。その後、シラン処理剤で処理したポーセレン表面に内径3mmの穴が開いた型材を接着し、その内面にリンクマックス(メタクリルレジン)を充填して、可視光線を30秒間照射してレジンを硬化させた。光照射後、型材をポーセレン表面から除去し、37℃の水中に浸漬した。1日後、レジンを接着したポーセレンを冷温水に繰り返し、5000回浸漬した。なお、5℃および55℃の冷温水への浸漬時間はそれぞれ1分ずつである。5000回サーマルサイクルを施した後、ポーセレンに対するレジンのせん断接着強さの測定を行った。なお、ポーセレンに対するレジンのせん断接着強さの測定をサーマルサイクルを施す前に行い、コントロールとした。
【0017】
3)結果:
せん断接着強さの測定結果を表1に示した。
【表1】

【0018】
表1の結果から分かるように、γ−MPTSに対するBTSの混合量が増加するとサーマルサイクル前の接着強さはわずかに低下するが、サーマルサイクルを施した後の接着強さは上昇し、サーマルサイクル前後における接着強さの低下率が小さくなった。γ−MPTSに対してBTSを添加すると、接着耐久性が向上することが明らかとなった。特に、γ−MPTSとBTSの混合割合が重量比で、90:10から70:30の範囲内のときに、接着耐久性が向上することが明らかとなった。この原因として、BTSが接着界面で可塑剤として作用していることが考えられた。
【0019】
比較例1
塩酸エタノール水溶液の代わりに酢酸またはリン酸を用いた歯科用陶材の表面処理
実施例1において、塩酸アルコール水溶液を用いる代わりに、pH3の酢酸水溶液またはpH2のリン酸水溶液を用い、γ−MPTSとBTEとを重量比70:30で用いて同様の実験を行った。
得られた結果を表2に示した。
【表2】

【0020】
表2の結果から明らかなように、塩酸アルコール水溶液を用いる代わりに、pH3の酢酸水溶液またはpH2のリン酸水溶液を用いた場合には、圧縮せん断接着強さが弱くなり、接着耐久性が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明によれば、歯科材料用の陶材などのシリカベースド無機材料を表面改質処理し、接着剤を介して歯質に接合する際に、あるいは、ガラス繊維などの工業材料用のシリカベースド無機質フィラーを表面改質処理して、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などを接着させて複合材料などを製造する際に、優れた接着耐久性を付与する、シリカベースド無機材料の表面処理法およびそれに用いる表面処理剤が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカベースド無機材料の表面処理法であって、表面処理剤として、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびγ−グリシジルプロピルトリメトキシシランからなる群から選ばれるシランカップリング剤と1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタンとを、重量比90:10から65:35の範囲内で混合したシラン処理剤と、塩酸溶液とを用いることを特徴とする表面処理法。
【請求項2】
シランカップリング剤が、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランまたはγ−アミノプロピルトリメトキシシランである、請求項1に記載の表面処理法。
【請求項3】
シラン処理剤として、シランカップリング剤と1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタンとを、重量比70:30から60:40の範囲内で混合したシラン処理剤を用いる、請求項1または2に記載の表面処理法。
【請求項4】
塩酸溶液が、pH1.0から2.0の塩酸溶液である、請求項1から3のいずれかに記載の表面処理法。
【請求項5】
シリカベースド無機材料が、歯科材料用の無機材料(セラミックス)である、請求項1から4のいずれかに記載の表面処理法。
【請求項6】
歯科材料用の無機材料(セラミックス)が、陶材またはシリカ粒子である、請求項5に記載の表面処理法。
【請求項7】
シリカベースド無機材料が、工業材料用の無機質フィラーである、請求項1から4のいずれかに記載の表面処理法。
【請求項8】
工業材料用の無機質フィラーが、ガラス繊維である、請求項7に記載の表面処理法。
【請求項9】
シラン処理剤のアルコール溶液と塩酸アルコール水溶液もしくは塩酸水溶液とを、それぞれ、歯科材料用の無機材料(セラミックス)である陶材に噴霧または塗布して、表面処理する、請求項1から4および6のいずれかに記載の表面処理法。
【請求項10】
シラン処理剤のアルコール溶液と塩酸水性アルコール溶液もしくは塩酸水溶液との混合溶液に、歯科材料用の無機材料(セラミックス)であるシリカ粒子または工業材料用の無機質フィラーを浸漬して、表面処理する、請求項1から8のいずれかに記載の表面処理法。
【請求項11】
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびγ−グリシジルプロピルトリメトキシシランからなる群から選ばれるシランカップリング剤と1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタンとを、重量比90:10から550:45の範囲で混合したシラン処理剤と、塩酸溶液とからなる、シリカベースド無機材料の表面処理理剤。
【請求項12】
シラン処理剤のアルコール溶液と塩酸アルコール水溶液もしくは塩酸水溶液とからなる、歯科材料用の無機材料(セラミックス)の表面処理用である、請求項11に記載の表面処理剤。
【請求項13】
シラン処理剤のアルコール溶液と塩酸水性アルコール溶液もしくは塩酸水溶液との混合溶液からなる、工業材料用の無機質フィラーの表面処理用である、請求項11に記載の表面処理剤。

【公開番号】特開2009−256123(P2009−256123A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105566(P2008−105566)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】