説明

シリカ含有ゴム組成物及びその製造方法

ゴムラテックスとシリカとの混合物を共凝固して得られるシリカ含有ゴムクラムのスラリーを、ろ過により含水率を80重量%以下とし、次いで圧縮機能を有する脱水装置で脱水した後に、乾燥して成るシリカ含有ゴム組成物。この発明によると、シリカの分散性が高められたシリカ含有ゴム組成物を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なシリカ含有ゴム組成物及びその製造方法に関し、詳しくは、耐摩耗性及び低燃費性等に優れ、タイヤトレッド用として好適なシリカ含有ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴムの補強用充填材として、カーボンブラックやシリカが広く使用されており、一般的には、バンバリーミキサー、ニーダー等の混練装置を用いてゴムに配合する乾式法が広く採用されている。近年、シリカを充填したゴム組成物は、カーボンブラックを充填したゴム組成物と比較して、自由に着色できしかも環境汚染性が少なく、耐引裂性に優れるばかりでなく、低燃費性と高グリップ性の両立が可能となることが見出され、タイヤトレッド用ゴム材料として注目されている。しかしながら、シリカは通常、表面がシラノール基に覆われ強い自己凝集性を持っているためにゴムとの親和性に乏しく、ゴム中に良好に分散させることは困難であった。
【0003】
そこで、ジエン系ゴムへのシリカの分散性を高めるために、ジエン系ゴムラテックスとシリカスラリーとを混合し、ゴムをシリカと共に凝固させるいわゆる湿式法により得られたジエン系ゴム組成物が提案されている。例えば、ジエン系ゴムラテックスとシリカスラリーとを均一混合させるのに、アルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン系有機界面活性物質やカチオン性樹脂を用いる方法(米国特許第4,482,657号公報、特開2001−213971号公報)、カチオン系物質及び多価金属塩を含む電解質水溶液を用いる方法(特開2002−241507号公報)等が開示されている。またシランカップリング剤等で処理して疎水化されたシリカをジエン系ゴムラテックスやジエン系ゴムの有機溶剤溶液と混合し、共凝固させる方法が開示されている(特開平10−231381号公報)。
【0004】
しかしこれらの方法によっても、ジエン系ゴム中へのシリカの分散は乾式法による混練混合に比べ良好にはなるものの、その後の工程で採用されている脱水、乾燥方法ではゴム組成物の乾燥にエネルギーや時間がかかる上に、得られたジエン系ゴム組成物の補強性や耐摩耗性、タイヤトレッドに使用したときの低燃費性、湿潤路面でのグリップ性の改善効果は十分でなかった。
【発明の開示】
【0005】
本発明の目的は、シリカの分散性が高められたシリカ含有ゴム組成物、該ゴム組成物の架橋成形物、及び該ゴム組成物の製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明者等は、上記技術課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ゴムラテックスとシリカとの混合物を共凝固して得られるシリカ含有ゴムクラムのスラリーの含水率をろ過により所定値以下とし、次いでこれを特定の脱水装置を用いて脱水した後に、乾燥して得られるシリカ含有ゴム組成物を用いることにより、その機械的強度、及びタイヤに成形したときの低燃費性や湿潤路面でのグリップ性が向上することを見出し、本知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0007】
かくして本発明によれば、ゴムラテックスとシリカとの混合物を共凝固して得られるシリカ含有ゴムクラムのスラリーを、ろ過により含水率を80重量%以下とし、次いで圧縮機能を有する脱水装置で脱水した後に、乾燥して成るシリカ含有ゴム組成物が提供される。
【0008】
本発明のシリカ含有ゴム組成物は、さらにカチオン性物質を含有していてもよい。
【0009】
本発明のシリカ含有ゴム組成物において、前記シリカは、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)の吸着により測定した比表面積が40〜230m/gであることが好ましい。
【0010】
本発明のシリカ含有ゴム組成物は、さらに架橋剤を含有していてもよい。
【0011】
本発明のシリカ含有ゴム組成物は、さらにオルガノポリシロキサンまたはポリエーテル系重合体を含有していてもよい。
【0012】
本発明のシリカ含有ゴム組成物は、さらにシランカップリング剤を含有していてもよい。
【0013】
本発明のシリカ含有ゴム組成物は、含水率が5重量%以下であることが好ましい。
【0014】
本発明によれば、上記架橋剤を含有するシリカ含有ゴム組成物を架橋成形して成る架橋成形物が提供される。
【0015】
本発明によれば、ゴムラテックスとシリカの水分散液とを混合し、ゴムラテックスとシリカとの混合物を得る工程(A)、前記混合物中のゴムをシリカとともに共凝固させ、シリカ含有ゴムクラムのスラリーを得る工程(B)、前記スラリーをろ過し、含水率が80重量%以下のゴムクラムを得る工程(C)、前記ろ過したゴムクラムを圧縮機能を有する脱水装置を用いて脱水する工程(D)、及び前記脱水したゴムクラムを乾燥する工程(E)を含んで成るシリカ含有ゴム組成物の製造方法が提供される。
【0016】
本発明のシリカ含有ゴム組成物の製造方法では、前記脱水装置として、内部にスクリューが設置されたバレルを有する押出機を用いることが好ましい。
【0017】
本発明のシリカ含有ゴム組成物の製造方法では、前記押出機のバレルの内圧を通常運転時よりも一時的に高い状態を経過させて、前記ろ過したゴムクラムの脱水を行うことが好ましい。
【0018】
本発明のシリカ含有ゴム組成物の製造方法では、前記押出機の運転の初期、あるいは途中において、前記押出機のクラム吐出口の一部又は全部を一時的に閉塞させることが好ましい。
【0019】
本発明のシリカ含有ゴム組成物の製造方法では、前記押出機内に充填物を充填させてクラム吐出口の一部又は全部を閉塞させることが好ましい。
【0020】
本発明のシリカ含有ゴム組成物の製造方法では、前記充填物として、ゴム、樹脂及び氷の少なくともいずれかを含むものを用いることが好ましい。
【0021】
本発明のシリカ含有ゴム組成物の製造方法では、前記脱水したゴムクラムの乾燥を減圧操作又は/及び加熱操作により行うことが好ましい。
【0022】
本発明のシリカ含有ゴム組成物の製造方法では、前記脱水したゴムクラムの乾燥を圧縮操作及び圧力開放操作により行うことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本実施例で用いた、凝固クラムの脱水、乾燥を行う装置の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(シリカ含有ゴム組成物)
本発明のシリカ含有ゴム組成物は、ゴムラテックスとシリカとの混合物を共凝固して得られるシリカ含有ゴムクラムのスラリーを、ろ過により含水率を80重量%以下とし、次いで圧縮機能を有する脱水装置で脱水した後に、乾燥して成るものである。
【0025】
(ゴム)
上記ゴムラテックスに用いられるゴムは、目的とする用途に応じて適宜選択すればよく、具体的には、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリルニトリル−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合ゴムなどのジエン系ゴム;クロロプレンゴム;ブチルゴム;アクリルゴムなどが挙げられる。これらのゴムは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、アミノ基及びエポキシ基等を有していてもよい。これらのゴムは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、特にタイヤ用途に用いる場合においては、耐摩耗性や低燃費性等のタイヤ性能を勘案すると、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムなどのジエン系ゴムを用いるのが好ましい。
【0026】
上記ゴムは、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法、気相重合法等の方法により、それぞれ、ラテックス、有機溶媒溶液、スラリー又は固体状で得られるが、本発明においては、ラテックスで得られるもの以外は、転相法や粉砕〜再溶解等によりラテックスにして用いることができる。これらの中でも、効率的にシリカを分散させるためには、乳化重合法で得られるラテックスを用いることが好ましい。
【0027】
乳化重合により上記ゴムを得る場合には、公知の乳化重合法によればよく、乳化重合に用いる乳化剤及び重合開始剤も公知のものを用いればよい。また、分子量調整剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、四塩化炭素、チオグリコール酸、ジテルペン、ターピノーレン、γ−テルピネン類などを用いることができる。
【0028】
乳化重合の温度は、使用する重合開始剤の種類によって適宜選択することができるが、通常0〜100℃、好ましくは0〜60℃である。重合様式は、連続重合、回分重合等のいずれの様式でも構わない。
【0029】
重合反応停止の際の重合転化率は、重合体のゲル化を防止する観点から、85重量%以下とすることが好ましく、50〜80重量%の範囲とすることがより好ましい。重合反応停止は、通常、上記所定の重合転化率に達した時点で、重合系に重合停止剤を添加することによって行われる。重合停止剤としては、例えば、ジエチルヒドロキシルアミンやヒドロキシルアミン等のアミン系化合物;ヒドロキノンやベンゾキノンなどのキノン系化合物;亜硝酸ナトリウム、ソジウムジチオカーバメートなどが挙げられる。
【0030】
重合反応停止後からラテックスを凝固するまでの間に反応溶液に老化防止剤を添加するのが好ましい。特にゴムクラムの脱水及び乾燥を、後述する内部にスクリューを設置したバレルを有する押出機を用いて行う場合には、剪断による劣化を防止する観点から老化防止剤を必要量添加するのが好ましい。老化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、オクタデシル−3−(3’,3’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートやスチレン化フェノールなどのフェノール系老化防止剤;2,4−ビス(オクチルチオメチル)−6−メチルフェノールなどのイオウ系老化防止剤;N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンなどのアミン系老化防止剤;2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどのキノリン系老化防止剤;ヒドロキノン系老化防止剤;リン系老化防止剤などが挙げられる。
【0031】
これらの老化防止剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの老化防止剤の添加量は、ゴム100重量部に対し、通常0.05〜10.0重量部、好ましくは0.08〜6.0重量部、より好ましくは0.1〜4.0重量である。また、重合反応停止後、得られたラテックスから必要に応じて未反応モノマーを除去するのが好ましい。
【0032】
乳化重合における各単量体の使用量は、重合体における各単量体単位量が所望の含有量になるよう適宜選択される。スチレン−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合ゴム等のスチレン共重合ジエン系ゴムを用いる場合には、そのスチレン量は60重量%以下、好ましくは50重量%以下である。アクリロニトリル共重合ジエン系ゴムを用いる場合には、そのアクリロニトリル量は60重量%以下、好ましくは55重量%以下である。スチレン量やアクリロニトリル量が多すぎると発熱性が大きくなり、低温脆化に劣る。
【0033】
本発明に用いられるゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、10〜250の範囲が好ましく、30〜200の範囲がより好ましい。
本発明においては、ゴムに、伸展油を混合することもできる。伸展油としては、ゴム工業において通常用いられているものが使用でき、パラフィン系、芳香族系、ナフテン系の石油系軟化剤;植物系軟化剤;脂肪酸などが挙げられる。石油系軟化剤の場合には、多環芳香族の含有量が3%未満であることが好ましい。この含有量は、IP346の方法(英国のTHE INSTITUTE PETROLEUMの検査方法)により測定される。
【0034】
(シリカ)
本発明において用いられるシリカは特に制限されない。例えば、一般的に四塩化珪素を酸水素炎中で燃焼させて得られる乾式シリカ、珪酸アルカリを酸で中和することによって得られる湿式シリカ、テトラメトキシシランやテトラエトキシシラン等の珪素のアルコキシドを酸性あるいはアルカリ性の含水有機溶媒中で加水分解することによって得られるゾル−ゲル法シリカ、珪酸アルカリ水溶液を電気透析により脱アルカリすることによって得られるコロイダルシリカなどを用いることができる。これらのシリカは、単独でも、2種以上を組み合わせても使用できる。本発明においては、生産性に優れる湿式シリカが好ましく、その中でも特にゲルを経ないで得られる沈降シリカが好ましい。
【0035】
上記シリカは、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)の吸着により測定した比表面積が、40〜230m/gのものが好ましく、50〜180m/gのものがより好ましく、60〜120m/gのものが最も好ましい。
【0036】
また、上記シリカは、窒素の吸着法により測定した比表面積(SBET)が50〜250m/gのものが好ましく、60〜190m/gのものがより好ましく、70〜140m/gのものが最も好ましい。
【0037】
さらに、上記シリカは、ジブチルフタレート吸油量(以下、単に吸油量という)が100〜250ml/100gのものが好ましく、110〜210ml/100gのものがより好ましく、120〜180ml/100gのものが最も好ましい。
【0038】
本発明においては、上記の比表面積及び吸油量を有するシリカを用いた場合、得られるシリカ含有ゴム組成物が引張強度や架橋成形物の耐摩耗性などに優れるため、タイヤとして使用した場合の補強性や低燃費性に優れる。
【0039】
さらに、シリカの平均粒子径は特に限定されず、目的とする用途を勘案して適宜決定すればよい。一般的には、0.1〜50μmの範囲が好ましい。上記平均粒子径を0.1μm以上にすることにより、シリカの自己凝集性による分散不良を防ぐことができ、得られるシリカ含有ゴム組成物の硬度に優れる。一方、平均粒子径を50μm以下とすることにより、ゴム中でのシリカの分散が良好となり、十分な補強性や低燃費性が得られる。その中でも、タイヤに用いられる場合は、シリカの平均粒子径を1μm〜30μmとするのが好ましい。
【0040】
シリカの粒子径の調整は、特に制限なく公知の方法が使用できる。例えば、ジェットミル、ボールミル、ナラミル、ミクロミル等を使用して、目的とする粒子径が得られるように適宜調整する乾式粉砕法;ディスパー、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、コロイドミル等を使用して、目的とする粒子径が得られるように適宜調整する湿式粉砕法;などの方法が挙げられる。また、湿式粉砕法によりシリカの粒子径を調整する場合は、水、有機溶媒またはゴムラテックス中、もしくはこれらの混合溶液中にて調整することができる。
【0041】
(カチオン性物質)
本発明のシリカ含有ゴム組成物は、シリカの分散性をより向上させる目的で、カチオン性物質をさらに含んでいてもよい。カチオン性物質としては、米国特許第4,482,657号に記載されているカチオン性物質等を用いることができるが、後述する本発明の脱水、乾燥方法に適用するにはカチオン性高分子であることが、作業上好ましい。
【0042】
カチオン性高分子は、水に溶解させた際に電離してカチオン性を示す高分子であれば何等制限なく使用することができる。具体的には、例えば、高分子主鎖もしくは側鎖に1〜3級のアミノ基及び4級アンモニウム塩基を有する高分子が代表的である。このようなカチオン性高分子としては、例えば、1〜3級のアミノ基やそのアンモニウム塩基、及び4級のアンモニウム塩基を有するモノマーを重合して得られるものが好適に使用される。さらに、上記した効果を阻害しない範囲で、その他のモノマーと共重合したものでもよい。
【0043】
本発明においては、特に3級及び4級のアンモニウム塩基を有するモノマーを重合して得られるものが、得られるジエン系ゴム組成物の補強性が良好になる点で好ましい。
【0044】
本発明において好適なカチオン性高分子を具体的に例示すると、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリアミンスルホン、ポリアリルアミン、ポリジアリルメチルアミン、ポリアミドアミン、ポリアミノアルキルアクリレート、ポリアミノアルキルメタアクリレート、ポリアミノアルキルアクリルアミド、ポリエポキシアミン、ポリアミドポリアミン、ポリエステルポリアミン、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物、ポリアルキレンポリアミン・ジシアンジアミド縮合物、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン縮合物等及びそれらのアンモニウム塩、更に、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリル酸エステルメチルクロライド等の4級アンモニウム塩基を有した高分子を挙げることができる。これらのうち、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリジアリルメチルアミン、ポリエポキシアミン、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン縮合物及びそれらのアンモニウム塩が特に好ましい。
【0045】
上記カチオン性高分子の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜1,000,000、より好ましくは2,000〜900,000、最も好ましくは3,000〜800,000である。上記重量平均分子量を1,000以上にすることにより、得られるシリカ含有ゴム組成物において、引張強度や耐摩耗性などの補強性改善効果が大きくなり、また、上記重量平均分子量を1,000,000以下にすることにより、ゴム中でのシリカ分散性が良好となる。
上記カチオン性高分子のコロイド滴定により算出したカチオン当量分子量の値は、好ましくは200以下、より好ましくは180以下、最も好ましくは150以下である。
これらのカチオン性高分子は、単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらカチオン性物質のゴム組成物への配合量は、シリカ100重量部に対し、0.1〜7.5重量部、好ましくは0.5〜7重量部、より好ましくは1〜6重量部である。
【0046】
(製造方法)
本発明においては、上記のゴムラテックスとシリカとの混合物は、ゴムラテックスとシリカの水分散液とを混合して得られるものが好ましい。また、前記ゴムラテックス中のゴムを、シリカの水分散液中のシリカと共に凝固するのが、補強性、低燃費性に優れるシリカ分散性の向上したシリカ含有ゴム組成物が得られる点で好ましい。
【0047】
すなわち、本発明のシリカ含有ゴム組成物の製造方法は、ゴムラテックスとシリカの水分散液とを混合し、ゴムラテックスとシリカとの混合物を得る工程(A)、前記混合物中のゴムをシリカとともに共凝固させ、シリカ含有ゴムクラムのスラリーを得る工程(B)、前記スラリーをろ過し、含水率が80重量%以下のゴムクラムを得る工程(C)、前記ろ過したゴムクラムを圧縮機能を有する脱水装置を用いて脱水する工程(D)、及び前記脱水したゴムクラムを乾燥する工程(E)を含んで成ることを特徴とする。
【0048】
工程(A)は、上記ゴムラテックスにシリカを混合する工程であり、シリカを水分散液にして該ゴムラテックスと混合することを特徴とする。この工程(A)において、例えば珪酸アルカリと酸との中和反応によって得られたシリカを、乾燥することなくスラリー状あるいは湿ケーク状の形態で水に分散せしめて調製されたシリカの水分散液をゴムラテックスと混合するのがより好ましい。このように、乾燥工程を経ないでシリカを水に分散させる方法を採用することにより、使用できるシリカの選択性が広がり、また乾燥時のシリカの熱収縮による自己凝集等を避けられることによりシリカのゴム中への分散性を向上させることができる。
【0049】
上記方法において、前述したカチオン性物質を配合する場合には、
(1)ゴムラテックスとシリカ水分散液とを混合後、カチオン性物質をそのまま/あるいは水溶液として混合する方法、または、カチオン性物質の水溶液にゴムラテックスとシリカ水分散液の混合液を混合する方法、
(2)シリカとカチオン性物質とを水中で混合して水分散液とし、これにゴムラテックスを混合する方法、
(3)ゴムラテックス、シリカ水分散液及びカチオン性物質を同時に混合する方法、などが挙げられる。中でも上記(2)の方法がクラムの弾力性などに優れ、効果的に本発明の方法で脱水ができるため最も好ましい。
【0050】
上記ゴムラテックス中のゴムの濃度は、特に限定されず、目的、用途に応じて適宜設定すればよい。通常は1〜80重量%、好ましくは3〜55重量%、特に好ましくは5〜30重量%の範囲である。この範囲にあるときに凝固時のクラム粒径等の制御がし易い。
【0051】
上記工程(A)において、ゴムラテックスへのシリカ水分散液の配合量は、特に限定されず、目的とする用途に応じて適宜決定されればよいが、ゴムラテックス中のゴム100重量部に対してシリカ重量で10〜120重量部が好ましく、20〜100重量部がより好ましく、30〜90重量部が最も好ましい。上記範囲内である場合に、得られるシリカ含有ゴム組成物の補強性や低燃費性が良好となる。また上記範囲を外れると、得られるクラムがゴム性状にならず、さらに本発明の方法で脱水するとペースト状となってしまい脱水効率が低下する傾向がある。
【0052】
なお、上記水分散液中のシリカの濃度は、通常は、1〜40重量%のものが好適に使用される。この範囲にあるときにシリカ水分散液の流動性がよくなり、共凝固の制御性がよく、均一なシリカ含有ゴム組成物を得ることが出来る。
【0053】
工程(B)は、工程(A)で得られたゴムラテックスとシリカとの混合物を用い、ゴムラテックス中のゴムをシリカと共に凝固(共凝固)させて、シリカ含有ゴムクラムを得ることを特徴とする。このように、シリカを取り込みつつゴムを凝固することにより、ゴム中のシリカの分散性をより向上させることができる。この工程(B)において、凝固時の系のpHは、3.5〜11.0とするのが好ましく、ゴムラテックスの添加量が過剰であるとpHが上昇するため酸及び/又は塩を添加してpHを調整するのが好ましい。酸及び塩としては、硫酸、燐酸、塩酸などの無機酸;蟻酸、酢酸、酪酸などの有機酸;硫酸アルミニウムなどのルイス酸;などの酸、塩化ナトリウム、塩化カルシウムなどの塩等が挙げられる。
【0054】
本発明のゴム組成物に伸展油を配合する場合には、伸展油を乳化させたオイルエマルションを、凝固開始前に系中に添加するのが好ましく、あらかじめゴムラテックスと混ぜておくことがより好ましい。
【0055】
凝固温度は、10℃〜90℃が好ましく、20℃〜80℃がより好ましい。共凝固の方法は特に制限なく、一般的には、プロペラ、ディスパー、ホモジナイザー等の一般的な分散装置を用いて混合する方法が採用される。
【0056】
工程(C)は、工程(B)で得られたシリカ含有ゴムクラムのスラリー、すなわち、シリカを含有するゴムのクラム(粒状物又は塊状物)及び凝固液(水溶液)の混合物を、篩等によりろ過することで凝固液の一部を予め除去し、ろ過後のゴムクラムの含水率を80重量%以下、好ましくは75重量%以下、より好ましくは65重量%以下のゴムクラムを得ることを特徴とする。
上記のシリカ含有ゴムクラムのスラリーをろ過して凝固液の一部を予め除去し、ろ過後クラムの含水率を所定値以下としておくことで、次工程である脱水効率を上げることができる。なお、ろ過後のゴムクラムの含水率は、通常40重量%以上である。
【0057】
工程(D)は、工程(C)で得られたろ過後のゴムクラムを圧縮機能を有する脱水装置を用いて脱水することを特徴とする。
上記の含水率が所定値以下に調整されたろ過後のゴムクラムを、圧縮機能を有する脱水装置を用いて脱水することにより、従来法では達成できなかったレベルにまでシリカの分散性を高めることが可能になり、その結果、得られるシリカ含有ゴム組成物に、機械的強度及びタイヤ成形時の低燃費性やグリップ性等の優れた特性を付与することができる。
【0058】
(圧縮機能を有する脱水装置)
工程(D)に用いる圧縮機能を有する脱水装置は、上記ろ過したゴムクラムを圧縮することにより凝固液を搾り出すことが可能な機能を有するものであれば特に制限はなく、たとえば、内部にスクリューが設置されたバレル(バレル壁面とスクリューフライト間でクラムを圧縮する)を有する装置、プレス式(一定の体積のキャビティ内にクラムを封入して圧縮する)の装置、ロール(一定のクリアランスのロール間にクラムを通過させて圧縮する)を有する装置、などを用いることができる。特に、上記脱水装置として、内部にスクリューが設置されたバレルを有する押出機を用いることが好ましい。内部にスクリューが設置されたバレルを有する押出機としては、内部にスクリューが設置された加熱可能なバレルや脱水スリットを有する一軸押出機、二軸押出機などを用いることができる。
【0059】
工程(D)においては、これらの脱水装置に上記ろ過したゴムクラムを投入して脱水する。投入するゴムクラムの温度は特に限定されず、凝固温度と同等であってもよく、冷却し、周囲の温度と同等にしてもよい。なお、ゴムクラムの脱水は、上記装置を2種以上組み合わせて行ってもよい。
【0060】
押出機を用いて工程(D)を行う際においては、押出機のバレルの内圧を通常運転時よりも一時的に高い状態を経過させて、前記押出機内で前記ろ過したゴムクラムの脱水を行うことが好ましい。こうすることで、含水クラムを直接、熱風乾燥や真空乾燥する場合に比較して、低エネルギーでゴムクラムの水分含有量(含水率)を低減させることができる。
【0061】
このように、押出機内での脱水時に、押出機バレルの内圧を通常運転時よりも一時的に高い状態にする方法としては、特に限定はないが、押出機のクラム吐出口の一部又は全部を一時的に閉塞させることによるのが好ましい。また、前記のクラム吐出口を一時的に閉塞させる操作は、クラム脱水工程の初期段階で行うのが好ましい。ただし、クラム脱水工程の途中段階で行っても良い。
【0062】
クラム吐出口の一部又は全部を一時的に閉塞させて押出機バレルの内圧を通常運転時よりも一時的に高い状態にすると、押出方向に対して凝固クラムが圧縮される状態になり、スクリューの剪断力等により押出機でゴムクラムがペースト状になるのを防ぐことができる。それによってゴムクラム中の水分が効率的に除去される。
【0063】
上記において、押出機のクラム吐出口の一部又は全部を一時的に閉塞させる方法としては、押出機内のクラム吐出口近傍に充填物を充填させる方法が好ましい。この方法によれば、充填物の種類や充填量等によりクラム吐出口の閉塞の度合いを調整することが可能となる。また、充填物の充填は、ゴムクラムの脱水の直前に行い、充填による閉塞操作は脱水工程の初期に行うのが好ましい。
【0064】
上記において、閉塞に用いる充填物としては、ゴム、樹脂及び氷の少なくともいずれかを含むものを用いることが好ましい。
【0065】
充填物に用いるゴムとしては、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリルゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴムなどのゴム;これらのゴムにカーボンブラックやシリカなどのフィラーを混合したゴム組成物;などが挙げられる。
また、充填物に用いるゴムとしては、本発明方法で脱水するシリカ含有ゴムと同種のゴムを用いてもよい。
【0066】
充填物に用いる樹脂としては、ハイスチレン樹脂、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、シクロオレフィン系樹脂;これらの樹脂にガラス繊維やカーボン繊維等のフィラーを混合した樹脂組成物;などが挙げられる。これらのゴムや樹脂等は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
これらの充填物の形状や大きさに制限はない。押出機の投入口から添加できるものであればよく、閉塞させる度合いに応じて適宜に選択できる。例えば、ゴムの場合はクラム、樹脂の場合はペレットなどを用いることができ、異なる形状や大きさのものを組み合わせて使用することができる。
【0068】
押出機に上記充填物を充填させる方法としては、例えば、上記のゴムのクラム、樹脂粉末、樹脂ペレット等を押出機に投入し、吐出口を封止せずに通常の方法でこれらの充填物を押し出す。投入した充填物が概ね吐出された時点で押出機の運転を停止すれば、通常は吐出口近傍に充填物が残存するので、そのままの状態でシリカ含有ゴムクラムを投入して押出機の運転を再開させ、脱水を行えばよい。
【0069】
尚、充填物が氷である場合には、吐出口近傍に残った氷が融けないうちにクラムの押し出しを開始させる。
【0070】
上記脱水装置にて脱水した後のゴムクラムの含水率は、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは3〜40重量%、特に好ましくは5〜30重量%である。含水率が高過ぎる場合は、効果的に脱水されていないことを示し、ゴムクラムがペースト状になる場合があり、その後の乾燥工程が困難になる。脱水直後のゴムクラムの温度は、好ましくは20〜180℃、より好ましくは40〜150℃、特に好ましくは60〜130℃である。この範囲にあるときに効果的に脱水することができ、得られるゴム組成物の引張強度や耐摩耗性などの補強性、タイヤにしたときの低燃費性が良好となる。
【0071】
工程(E)は、工程(D)で脱水されたゴムクラムを乾燥する工程である。乾燥は、上記脱水後のゴムクラムに、減圧、加熱、遠心及び圧縮の少なくともいずれかの操作をさらに施すことにより行うのが好ましく、減圧又は加熱のいずれかの操作を少なくとも施すのがより好ましく、双方を施すのが最も好ましい。これらの操作は、上記脱水装置に付帯する装置で行っても、別途行ってもよい。
【0072】
脱水後のゴムクラムを、前述した、加熱、減圧、遠心及び圧縮の少なくともいずれかの操作により乾燥する具体的な方法としては、(1)脱水後のゴムクラムを減圧下又は/及び加熱下におくことにより乾燥する方法、(2)脱水後のゴムクラムに、圧縮操作及び圧力開放操作を交互に施すことにより乾燥する方法、などが挙げられる。
【0073】
上記(1)の方法としては、真空乾燥または熱風乾燥が挙げられる。この方法によりゴムクラムを乾燥する場合には、脱水後の互着したゴムクラムをカッターや粉砕機等を用いて細かく切断、粉砕してから真空乾燥または熱風乾燥にて乾燥するのが好ましく、これによりクラムの乾燥時間を短縮することができる。真空乾燥機または熱風乾燥機にて乾燥するときの乾燥温度は、好ましくは50〜200℃、より好ましくは60〜150℃、特に好ましくは70〜120℃である。乾燥温度がこの範囲にあるときに、効果的に乾燥することができ、得られるゴム組成物の劣化や発火等が防止でき、引張強度や耐摩耗性などが良好となる。
【0074】
ゴムクラムを真空乾燥機または熱風乾燥機にて乾燥した後の含水率は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。乾燥後の含水率が高過ぎる場合、袋詰めしたゴム組成物に結露が生じたり、ゴム組成物に各種配合剤を押出機等で混合する際にスコ−チしたりする場合がある。
【0075】
上記(2)の方法としては、脱水後のゴムクラムを、例えば脱水に用いたのと同様の、内部にスクリューを設置したバレルを有する押出機に供給し、排出時にエクスパンジョンさせることでゴムクラムに残留する液体を排出させて乾燥する方法が挙げられる。ここで、エクスパンジョンとは、クラムをバレル内で圧縮し、バレル外に排出するときに圧力を急激に開放することにより、断熱膨張によりクラムを乾燥させる方法のことである。
【0076】
また、上記(1)及び(2)の方法を組み合わせた方法として、加圧部及び減圧部を有し、内部にスクリューが設置されたバレルを有する押出機に脱水後のゴムクラムを供給することによりゴムクラムを乾燥する方法が挙げられる。これらの方法で得られるシリカ含有ゴム組成物は、引張強度や耐摩耗性などの補強性や低燃費性が良好となる。
【0077】
上記の押出機にて乾燥するときの乾燥温度は、好ましくは80〜220℃、より好ましくは100〜200℃、特に好ましくは120〜180℃である。乾燥温度がこの範囲にあるときに、効果的に乾燥することができ、得られるゴム組成物の劣化や発火等が防止でき、引張強度や耐摩耗性などの補強性や低燃費性が良好となる。
上記ゴムクラムの乾燥に用いる押出機は、ダイ近傍におけるゴムクラムの滞留を防止できるスクリューを有することが好ましい。具体的には、実開平1−83522号公報に記載されているような、スクリューヘッド部までフライトが延長されているスクリューを用いたり、特開昭62−21518号公報に記載されているようなスクリューヘッドが非軸対称形であるスクリューを用いたりすることが好ましい。また、この押出機は、スクリューヘッドとの間隙が小さく、出口側に向かって先細りになる内腔を有するダイを備えることが好ましい。このようなスクリューやダイを有する押出機を用いることによって、乾燥して粘度が高くなったシリカ含有ゴムクラムであっても、効率的にダイから排出することが可能となり、乾燥効率が向上する。
【0078】
また、脱水に用いる押出機と乾燥に用いる押出機とは、一体となっていてもよいし、直接結合していてもよく、分割し、脱水したゴムクラムを乾燥に用いる押出機に投入してもよい。なお、本発明において脱水に用いる押出機と乾燥に用いる押出機が一体である場合は、脱水ゾーンと乾燥ゾーンの境界におけるスクリューとバレル間の空隙を脱水に用いる押出機の「クラムの吐出口」として扱うものとする。
【0079】
上記の押出機にて乾燥した後のゴムクラムの含水率は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、特に好ましくは3重量%以下である。押出機にて乾燥した後に、さらに真空乾燥機または熱風乾燥機にて乾燥し、含水率を低下させることができる。
【0080】
上記方法により最終的に得られるシリカ含有ゴム組成物の含水率は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。乾燥後の含水率が高過ぎる場合、袋詰めしたゴム組成物に結露が生じたり、ゴム組成物に各種配合剤を押出機等で混合する際に焼けが生じたりする場合がある。
【0081】
本発明においては、乾燥後のシリカ含有ゴム組成物は、ブロック状、シート状及びペレット状等で得ることができるが、乾燥後に各種配合剤を混合するときの動力負荷を低減させるためにシート状又はペレット状で得るのが好ましい。
【0082】
本発明において、乾燥工程に上記押出機を用いる場合、オルガノポリシロキサンやポリエーテル系重合体を乾燥前にゴムクラムに添加してもよい。ゴムクラムの含水率が低下すると粘度が高くなるが、オルガノポリシロキサンやポリエーテル系重合体を添加することでゴムクラムの粘度が低下し、押出機の動力負荷を小さくすることができる。これらオルガノポリシロキサンは、重合度3〜10,000のものが好ましく、メトキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルコキシ基、エポキシ基、カルボニル基、スルフィド基、スルホニル基、ニトリル基などの官能基を有することが好ましい。またポリエーテル系重合体は、主鎖にエーテル結合を有する重合体であり、例えば、アルキレンオキシド、エピハロヒドリン、不飽和エポキシドなどのオキシラン化合物の重合体であり、分子量100〜10,000,000のものが好ましい。これらは単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
添加量は、押出機の動力の負荷を低減できる範囲で加えればよく、シリカ100重量部に対して0.1〜50重量部の範囲が好ましい。添加方法は特に制限されず、押出機による乾燥工程までに添加できればどこでもよく、乾燥用押出機バレルから投入する方法、脱水後のクラムに添加する方法、脱水用押出機バレルから投入する方法、脱水前のクラムに添加する方法、共凝固工程で添加する方法、ゴムラテックスに予め添加する方法、シリカの水分散液に予め添加する方法などが挙げられる。精度よく添加するには共凝固前のゴムラテックスまたはシリカの水分散液に予め添加するのが好ましい。
【0084】
本発明においては、ゴム組成物にさらにシランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤を配合することで、補強性及び低燃費性がさらに改善される。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−オクタチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィドなど;γ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどのテトラスルフィド類など;が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。シリカ100重量部に対するシランカップリング剤の配合量は、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜15重量部、最も好ましくは1〜10重量部である。
【0085】
本発明においては、ゴム組成物にさらにシリル化剤を配合してもよい。シリル化剤を配合することで、補強性及び低燃費性がさらに改善される。シリル化剤としては、例えば、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、tert−ブチルジメチルクロロシランなどロロシラン化合物;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシ)シラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物;ヘキサメチルジシラザンなどのシラザン化合物;N−トリメチルシリルアセトアミド、N,N−(ビストリメチルシリル)アセトアミドなどのアセトアミド類;N,N−(ビストリメチルシリル)ウレアなどの尿素類;などが挙げられる。これらのシリル化剤は、単独で用いてもよいし、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのシリル化剤のうち、特にクロロシラン化合物、アルコキシシラン化合物、シラザン化合物が好ましく用いられる。
【0086】
シリカ100重量部に対するシリル化剤の配合量は、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜15重量部、最も好ましくは1〜10重量部である。
【0087】
上記シランカップリング剤及びシリル化剤は、上記凝固工程の前後、脱水工程の前後等いずれで配合してもよく、具体的には、上記シリカ水分散液に予め配合する方法、カチオン性物質とシリカとの混合物に予め配合する方法、ゴムラテックスに配合する方法、共凝固時に配合する方法、脱水用押出機バレルに投入して配合する方法、脱水後のゴムクラムに配合する方法などが挙げられる。また、後述するロールやバンバリーミキサーでの混練時に配合して混合してもよい。これら全ての段階で少量ずつ分割して混合してもよい。
精度良く添加するために、共凝固前にゴムラテックスまたはシリカの水分散液に予め添加するのが好ましい。また、ゴム組成物の補強性や低燃費性をさらに改善するために、カチオン性高分子を添加する前のシリカ水分散液に添加するのが特に好ましい。また、シランカップリング剤及びシリル化剤とシリカの水分散液を混合する際の混合温度は、通常10〜100℃、好ましくは40〜90℃、より好ましくは60〜80℃であり、混合時間は、通常0.1〜180分、好ましくは0.5〜150分、より好ましくは1〜120分である。
【0088】
シランカップリング剤及びシリル化剤は、上記オルガノポリシロキサン等と同様にゴム組成物の粘度を低下させる効果を有する。よって、乾燥装置として上記押出機を用いる場合には、その混練時の負荷を低減させて動力を減らすことができるため、乾燥装置にゴムクラムを投入する前に配合しておくのが好ましい。
【0089】
本発明のシリカ含有ゴム組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、カーボンブラック等の補強剤;タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の充填剤;老化防止剤;活性剤;可塑剤等の配合剤を適宜配合してもよい。
【0090】
カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどを用いることができる。これらの中でも、特にファーネスブラックが好ましい。補強剤としては、カーボンブラック、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン−シリカデュアル・フェイズ・フィラーを配合してもよい。補強剤の総量は、ゴム100重量部に対し20〜200重量部が好ましく、所望の濃度となるように用いればよい。また、本発明のシリカ含有ゴム組成物に用いたシリカと異なる比表面積や吸油量のシリカを配合してもよい。
【0091】
(架橋成形物)
本発明のシリカ含有ゴム組成物は、架橋剤を配合して架橋成形することにより特にタイヤ用として好適な架橋成形物とすることができる。架橋剤としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄;一塩化硫黄、二塩化硫黄などのハロゲン化硫黄;ジクミルパーオキシド、ジターシャリブチルパーオキシドなどの有機過酸化物;p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムなどのキノンジオキシム;トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、4,4’−メチレンビス−o−クロロアニリンなどの有機多価アミン化合物;メチロール基をもったアルキルフェノール樹脂;などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましい。これらの架橋剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋剤の配合量は、ゴム100重量部に対して、好ましくは0.3〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0092】
また、上記架橋剤に架橋促進剤や架橋活性化剤を併用することができる。架橋促進剤としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系架橋促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジンなどのグアニジン系架橋促進剤;ジエチルチオウレアなどのチオウレア系架橋促進剤;2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩などのチアゾール系架橋促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのチウラム系架橋促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛などのジチオカルバミン酸系架橋促進剤;イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸系架橋促進剤;などの架橋促進剤が挙げられる。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられるが、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが好ましい。架橋促進剤の配合量は、ゴム100重量部に対して、好ましくは0.3〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0093】
架橋活性化剤としては、例えば、ステアリン酸などの高級脂肪酸や酸化亜鉛などを用いることができる。酸化亜鉛としては、表面活性の高い粒度5μm以下のものを用いるのが好ましく、粒度が0.05〜0.2μmの活性亜鉛華や0.3〜1μmの亜鉛華などを挙げることができる。また、酸化亜鉛は、アミン系の分散剤や湿潤剤で表面処理してあってもよい。これらの架橋活性化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。架橋活性化剤の配合割合は、架橋活性化剤の種類により適宜選択される。高級脂肪酸の配合量は、ゴム100重量部に対して、好ましくは0.3〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。酸化亜鉛の配合量は、ゴム100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.5〜2重量部である。
【0094】
架橋方法は特に限定されず、架橋成形物の性状、大きさなどに応じて選択すればよい。金型中に架橋性ゴム組成物を充填して加熱することにより成形と同時に架橋してもよく、予め成形しておいた未加硫ゴム組成物を加熱して架橋してもよい。架橋温度は、好ましくは120〜200℃、より好ましくは100〜190℃、最も好ましくは120〜180℃である。
【0095】
本発明のシリカ含有ゴム組成物は、例えば、トレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウオール、ビード部などのタイヤ用部材;ホース、窓枠、ベルト、靴底、防振ゴム、自動車部品、免震ゴムなどのゴム部材;耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂等の樹脂強化ゴム部材;などに利用できる。なかでも、タイヤ用部材として好適であり、低燃費タイヤのタイヤトレッドとして特に好適である。
【実施例】
【0096】
本発明をさらに具体的に説明するために、以下に実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に示さない限り、「部」及び「%」は重量基準である。実施例及び比較例における各種物性は、下記の方法により測定した。
【0097】
(物性評価)
(1)シリカの平均粒子径は、光散乱回折式の粒度分布測定装置(コールター社製、LS−230)を用いて測定した体積基準中位径の値を採用した。
【0098】
(2a)セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)の吸着による比表面積(SCTAB)は、シリカ湿ケークを乾燥器(120℃)に入れて乾燥した後、ASTM D3765−92記載の方法に準じて得られた値を採用した。ただし、ASTM D3765−92記載の方法は、カーボンブラックの(SCTAB)を測定する方法なので、若干改良を加えた方法とした。すなわち、カーボンブラックの標準品であるITRB(83.0m/g)を使用せず、別途にCTAB標準液を調製し、これによってエアロゾルOT溶液の標定を行い、シリカ表面に対するCTAB1分子あたりの吸着断面積を35平方オングストロームとしてCTABの吸着量から比表面積を算出した。これは、カーボンブラックとシリカとでは表面状態が異なるので、同一比表面積でもCTABの吸着量に違いがあると考えられるためである。
【0099】
(2b)窒素吸着法による比表面積(SBET)は、シリカ湿ケークを乾燥器(120℃)に入れて乾燥した後、マイクロメリティクス社製のアサップ2010を使用して、窒素吸着量を測定し、相対圧0.2における1点法の値を採用した。
【0100】
(3)吸油量は、JIS K6220により求めた。
【0101】
(4)共重合体中のスチレン単位量は、JIS K6383(屈折率法)に準じて測定した。
【0102】
(5)シリカ含有率は、熱分析装置TG/DTA(セイコー電子工業製TG/DTA320〜)を用いて、乾燥試料の空気中での熱分解後の燃焼残分率及び150℃までの重量減少率を測定し、下記式を用いて算出した。実施例では、ゴム100部に対する量(部、重量基準)に換算して記載した。測定条件は、空気中で昇温速度20℃/min、到達温度600℃での保持時間20分で行った。
【0103】
シリカ含有率(%)=燃焼残分率/〔100−(150℃までの重量減少率)〕×100
【0104】
(6)硬度は、JIS K6253に準じて、Duro−A硬度計を用いて測定した。この特性は、基準サンプルを100とする指数で表示した。
【0105】
(7)100%、300%モジュラスは、JIS K6251の引張応力試験法により測定した。さらに300%伸張時応力(MPa)と100%伸張時応力(MPa)の比率を計算した。この特性は、基準サンプルを100とする指数(補強性指数)で表示した。これらの値は大きいほどシリカの分散が良好で機械的強度や補強性に優れることを示す。
【0106】
(8)tanδ及びG’(−10℃)は、レオメトリックス社製造RDA−IIを用い、0.5%ねじれ、20Hzの条件で−10℃におけるtanδ及びG’を測定した。この特性は、指数で表示した。このtanδ(−10℃)値が大きい及び/またはG’(−10℃)値が小さいと湿潤路面でのグリップ性に優れることを示す。
【0107】
(9)tanδ(60℃)は、レオメトリックス社製造RDA−IIを用い、0.5%ねじれ、20Hzの条件で60℃におけるtanδを測定した。この特性は、指数で表示した。このtanδ(60℃)値が小さいと低燃費性に優れることを示す。
【0108】
(10)弾性率のひずみ依存性は、レオメトリックス社製造RDA−IIを用い、1Hzの条件で、50℃におけるねじれを0.05%から10%の範囲で測定した。10%ねじれでのG’の値と0.1%ねじれでのG’の値の差をΔG’として求めた。この特性は、指数で表示した。この値が小さいとシリカの分散が良好で低燃費性に優れることを示す。
【0109】
(ゴム製造例1)
攪拌機付き耐圧反応器に脱イオン水200部、ロジン酸石鹸1.5部、脂肪酸石鹸2.1部、単量体として1,3−ブタジエン72部、スチレン28部、及びt−ドデシルメルカプタン0.20部を仕込んだ。反応器温度を10℃とし、重合開始剤としてジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.03部、ソディウム・ホルムアルデヒド・スルホキシレート0.04部を、及び、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.01部と硫酸第二鉄0.03部とを反応器に添加して重合を開始した。重合転化率が45%に達した時点で、t−ドデシルメルカプタン0.05部を添加して反応を継続させた。重合転化率が70%に達した時点で、ジエチルヒドロキシルアミンを0.05部添加して反応を停止させた。
【0110】
次に、未反応単量体を水蒸気蒸留により除去した後、重合体100部に対して、老化防止剤として、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート0.8部及び2,4−ビス(n−オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール0.12部を30%乳化水溶液にして添加し、重合体ラテックス(R1)を得た。次に、重合体ラテックス(R1)の一部を取り出し、硫酸でpH3〜5になるように調整しながら、塩化ナトリウムにより、50℃で重合体ラテックスを凝固し、クラム状の重合体を得た。得られたクラム状の重合体を80℃の熱風乾燥機で乾燥し、固形ゴムを得た。得られたゴムのスチレン量は23.5%で、ムーニー粘度は52であった。
【0111】
(ゴム製造例2)
反応器に仕込み又は添加する各成分の量を以下に変えたこと以外は、製造例1と同様の方法で重合反応を行った。1,3−ブタジエン57.5部、スチレン42.5部、t−ドデシルメルカプタン0.12部(最初の仕込量)、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部、ソディウム・ホルムアルデヒド・スルホキシレート0.06部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.014部、硫酸第二鉄0.02部。
【0112】
次に、未反応単量体を水蒸気蒸留により除去した後、重合体100部に対して、老化防止剤として、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン0.21部と2,2,4−トリメチル−1,2−ジハイドロクイノリン0.14部を60%乳化水溶液にして添加し、重合体ラテックス(R2)を得た。次に、重合体ラテックス(R2)の一部を取り出し、重合体ラテックス中の重合体100部に対して、伸展油としてEnerthene1849A(ブリティッシュペトロリアム社製)を脂肪酸石鹸により66%乳化水溶液として37.5部を添加した。その後、これを硫酸でpH3〜5になるように調整しながら、塩化ナトリウムにより、60℃で、伸展油を含む重合体ラテックスを凝固し、クラム状の重合体を得た。得られたクラム状の重合体を80℃の熱風乾燥機で乾燥し、固形ゴムを得た。得られたゴムのスチレン量は35.0%で、ムーニー粘度は49であった。
【0113】
(シリカ製造例1)
温度調節機付きの1mの反応容器に、珪酸ナトリウム水溶液(SiO濃度:10g/L、モル比:SiO/NaO=3.41)201Lを投入し、95℃に昇温した。次に、22%硫酸77Lと、珪酸ナトリウム水溶液(SiO濃度:90g/L、モル比:SiO/NaO=3.41)455Lとを、同時に140分かけて投入した。10分間熟成後、22%硫酸16Lを15分で投入した。上記反応は反応液温度を95℃に保持し、反応液を常時攪拌しながら行い、最終的に反応液のpHが2.9のシリカスラリーを得た。これをフィルタープレスでろ過、水洗し、シリカ固形分が25%のシリカ湿ケーク(A)を得た。得られたシリカ湿ケーク(A)の一部を乾燥して得たシリカ粉末のBET比表面積(SBET)は121m/g、CTAB比表面積(SCTAB)は110m/g、吸油量は170ml/100gであった。
【0114】
(シリカ製造例2)
珪酸ナトリウム水溶液の投入量を150Lとした以外は、製造例1と同じ反応容器及び珪酸ナトリウム水溶液を用い、同じ温度まで昇温した。次に、22%硫酸と珪酸ナトリウム水溶液の投入量をそれぞれ78L及び461Lとし、これらの投入時間を190分とし、22%硫酸の投入量を15Lとした以外は、製造例1と同様にして、pHが3.1のシリカスラリーを得た。製造例1と同様にして、シリカ固形分が27%のシリカ湿ケーク(B)を得た。得られたシリカ湿ケーク(B)の一部を乾燥して得たシリカ粉末のBET比表面積(SBET)は100m/g、CTAB比表面積(SCTAB)は93m/g、吸油量は165ml/100gであった。
【0115】
(シリカ製造例3)
珪酸ナトリウム水溶液の投入量を201Lとした以外は、製造例1と同じ反応容器及び珪酸ナトリウム水溶液を用い、90℃まで昇温した。次に、反応液温度を90℃に保持した以外は、製造例1と同じ、22%硫酸と珪酸ナトリウム水溶液の投入量、及び投入時間とし、同じ量の22%硫酸を投入して、pHが3.0のシリカスラリーを得た。製造例1と同様にして、シリカ固形分が25%のシリカ湿ケーク(C)を得た。得られたシリカ湿ケーク(C)の一部を乾燥して得たシリカ粉末のBET比表面積(SBET)は135m/g、CTAB比表面積(SCTAB)は125m/g、吸油量は175ml/100gであった。
【0116】
(シリカ製造例4)
珪酸ナトリウム水溶液の投入量を224Lとし、90℃まで昇温した以外は、製造例1と同じ反応容器及び珪酸ナトリウム水溶液を用いた。次に、22%硫酸と珪酸ナトリウム水溶液の投入量をそれぞれ76L及び452Lとし、これらの投入時間を125分とし、22%硫酸の投入量を17Lとし、反応液温度を90℃に保持した以外は、製造例1と同様にして、pHが3.2のシリカスラリーを得た。製造例1と同様にして、シリカ固形分が24%のシリカ湿ケーク(D)を得た。得られたシリカ湿ケーク(D)の一部を乾燥して得たシリカ粉末のBET比表面積(SBET)は150m/g、CTAB比表面積(SCTAB)は138m/g、吸油量は177ml/100gであった。
【0117】
(シリカ製造例5)
珪酸ナトリウム水溶液の投入量を305Lとし、80℃まで昇温した以外は、製造例1と同じ反応容器及び珪酸ナトリウム水溶液を用いた。次に、22%硫酸と珪酸ナトリウム水溶液の投入量をそれぞれ75L及び444Lとし、これらの投入時間を90分とし、22%硫酸の投入量を18Lとし、反応液温度を80℃に保持した以外は、製造例1と同様にして、pHが3.2のシリカスラリーを得た。製造例1と同様にして、シリカ固形分が24%のシリカ湿ケーク(E)を得た。得られたシリカ湿ケーク(E)の一部を乾燥して得たシリカ粉末のBET比表面積(SBET)は300m/g、CTAB比表面積(SCTAB)は275m/g、吸油量は250ml/100gであった。
【0118】
(シリカ水分散液製造例1)
上記シリカ製造例1で得られたシリカ湿ケーク(A)に、シリカ濃度が15%となるように純水を混合し、シリカに対して1%のビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィドを10%水溶液として加え、温度50℃でホモジナイザーを用いて10分間攪拌した。次に、カチオン性高分子(重量平均分子量が2万、コロイド滴定により算出したカチオン当量分子量146のポリジアリルメチルアンモニウムクロライド)の3%水溶液をシリカに対してカチオン性高分子が3%となるように加え、ホモジナイザーを用いて20分間攪拌混合し、シリカ水分散液(I)を得た。該水分散液のpHは3.5、シリカ濃度は13%、水分散液中のシリカの平均粒子径は17μmであった。
【0119】
(シリカ水分散液製造例2)
上記シリカ製造例2で得られたシリカ湿ケーク(B)に、シリカ濃度が15%となるように純水とカチオン性高分子(重量平均分子量が2万、コロイド滴定により算出したカチオン当量分子量162のポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド)の3%水溶液をシリカに対して3%となるように加え、ホモジナイザーを用いて20分間攪拌混合し、シリカ水分散液(II)を得た。該水分散液のpHは3.5、水分散液中のシリカの平均粒子径は16μmであった。
【0120】
(シリカ水分散液製造例3)
上記シリカ製造例3で得られたシリカ湿ケーク(C)に、シリカ濃度が15%となるように純水とカチオン性高分子(製造例1と同じ)の3%水溶液をシリカに対してカチオン性高分子が3.5%となるように加えた以外は、製造例2と同様にして、シリカ水分散液(III)を得た。該水分散液のpHは3.4、水分散液中のシリカの平均粒子径は15μmであった。
【0121】
(シリカ水分散液製造例4)
シリカの製造例4で得られたシリカ湿ケーク(D)に、シリカ濃度が15%となるように純水とカチオン性高分子(製造例1と同じ)の3%水溶液をシリカに対してカチオン性高分子が4%となるように加えた以外は、製造例2と同様にして、シリカ水分散液(IV)を得た。該水分散液のpHは3.4、水分散液中のシリカの平均粒子径は16μmであった。
【0122】
(シリカ水分散液製造例5)
シリカの製造例5で得られたシリカ湿ケーク(E)に、シリカ濃度が15%となるように純水とカチオン性高分子(製造例1と同じ)の3%水溶液をシリカに対してカチオン性高分子が5%となるように加えた以外は、製造例2と同様にして、シリカ水分散液(V)を得た。該水分散液のpHは3.2、水分散液中のシリカの平均粒子径は14μmであった。
【0123】
(シリカとゴムの共凝固クラム製造例1)
ゴムの製造例1で得られたSBRラテックス(固形分23%)720部を純水2000部で希釈し、攪拌しながら50℃に昇温させた。次いで、上記希釈されたラテックスにシリカ水分散液(I)600部を攪拌下、添加してシリカとゴムの混合物を生成させた。混合液のpHは7.5であった。次に、上記混合液に10%硫酸を添加しSBRラテックスを完全に凝固させ、シリカ含有ゴムの凝固クラムを含むスラリーを得た。混合液(スラリー)の最終的なpHは6.5であった。なお、混合液の温度は50℃に維持して行った。得られた凝固クラムを水洗し40メッシュの金網で回収して凝固クラム(A)を得た。この凝固クラム(A)を120℃で3時間乾燥し、その前後の重量減少率から含水率を測定した結果、61%であった。さらに、この凝固クラム(A)の一部を取り出し、乾燥させて、シリカ含有率を測定した結果、SBR100部に対して47部であった。
【0124】
(シリカとゴムの共凝固クラム製造例2)
シリカ水分散液を(II)520部とする以外は(シリカとゴムの共凝固クラム製造例1)と同様に実施し、シリカ含有ゴムの凝固クラムを含むスラリーを得た。混合液(スラリー)の最終的なpHは6.7であった。得られた凝固クラムを水洗し40メッシュの金網で回収して、含水率が58%の凝固クラム(B)を得た。この凝固クラム(B)の一部を取り出し、乾燥させて、シリカ含有率を測定した結果、SBR100部に対して47部であった。
【0125】
(シリカとゴムの共凝固クラム製造例3)
ゴム製造例2で得られたSBRラテックス(固形分23%)720部と脂肪酸石鹸により伸展油Enerthene1849A(ブリティッシュペトロリアム社製)62部とポリシロキサンFZ3704(日本ユニカー社製)5部とを66%乳化水溶液として混合した。この混合液を純水2000部で希釈し、60℃に昇温させた。次いで、上記希釈されたラテックスにシリカ水分散液(III)750部を攪拌下、添加して、次いで、上記混合液に10%硫酸を添加しSBRラテックスを完全に凝固させ、シリカ含有ゴムの凝固クラムを含むスラリーを得た。混合液(スラリー)の最終的なpHは6.8であった。なお、混合液の温度は60℃に維持して行った。得られた凝固クラムを水洗し40メッシュの金網で回収して、含水率が65%の凝固クラム(C)を得た。この凝固クラム(C)の一部を取り出し、乾燥させて、シリカ含有率を測定した結果、SBR100部に対して68部であった。
【0126】
(シリカとゴムの共凝固クラム製造例4)
シリカ水分散液を(IV)520部とし、ポリシロキサンを未添加とする以外は(シリカとゴムの共凝固クラムの製造例3)と同様に実施し、シリカ含有ゴムの凝固クラムを含むスラリーを得た。混合液(スラリー)の最終的なpHは6.6であった。得られた凝固クラムを水洗し40メッシュの金網で回収して、含水率が62%の凝固クラム(D)を得た。この凝固クラム(D)の一部を取り出し、乾燥させて、シリカ含有率を測定した結果、SBR100部に対して47部であった。
【0127】
(シリカとゴムの共凝固クラム製造例5)
シリカ水分散液を(V)とする以外は(シリカとゴムの共凝固クラムの製造例2)と同様に実施し、シリカ含有ゴムの凝固クラムを含むスラリーを得た。混合液(スラリー)の最終的なpHは6.6であった。得られた凝固クラムを水洗し100メッシュの金網で回収して、含水率が81%の凝固クラム(E)を得た。この凝固クラム(E)の一部を取り出し、乾燥させて、シリカ含有率を測定した結果、SBR100部に対して46部であった。
【0128】
実施例1
本実施例では、凝固クラムの脱水、乾燥を行う装置として、図1に示す押出機2を用いた。押出機2は、12個のバレルユニットで構成されるバレル4を有する。No.1〜6のバレルユニットが脱水ゾーン、No.7〜12のバレルユニットが乾燥ゾーンを構成する。No.1のバレルユニットは、シリカ含有ゴムクラムのスラリーが供給される供給ユニットである。No.3とNo.6のバレルユニットは、スラリーから脱水された水が排出される脱水ユニットであり、脱水スリット間隔は0.25mmである。No.8とNo.10のバレルユニットは、ゴムクラムに含まれる水分が加熱により揮散して除去されるベントスリットを有するベントユニットであり、ベントスリット間隔は2.0mmである。上記以外のバレルユニットは、円筒形状の標準ユニットである。バレル4のユニット構成を表1に示す。
【0129】


【0130】
バレル4の内部には、2本のスクリュー(全長L=2,340mm、外径D=56mm)6が平行に設けられている。スクリュー6の基端(図1では紙面方向に対して左側)には、これを駆動する駆動モータ(図示省略)が接続されており、これによりスクリュー6は回転駆動自在とされている。本実施例では、2本のスクリュー6を、互いに同方向に回転駆動させるとともに、一方のスクリュー6の山部を他方のスクリュー6の谷部に噛み合わせ、一方のスクリュー6の谷部を他方のスクリュー6の山部に噛み合わせるようにした。すなわち、同方向に回転する二軸噛合型のスクリューを用いた。
【0131】
スクリュー6は、バレル4の内部に形成された上述した各ゾーンに対応する位置に配置された、脱水用スクリューブロックと乾燥用スクリューブロックとを有する。脱水用スクリューブロックと乾燥用スクリューブロックとは、2種類のスクリューエレメント(細ピッチ順送りスクリューエレメントA、粗ピッチ順送りスクリューエレメントB)、及び3種類のニーディングディスク(順送りニーディングディスクC、ニュートラルニーディングディスクD、及び逆送りニーディングディスクE)を適宜組み合わせて構成されている。ニーディングディスクは、ほぼ楕円形状のディスクプレートを角度をずらして複数枚組み合わせた構成を有する。ディスクプレート1枚のみでは、送りに対してニュートラルであるが、複数枚のディスクプレートを角度をずらして組み合わせることにより、順送りニーディングディスク、ニュートラルニーディングディスク、又は逆送りニーディングディスクとすることができる。ニュートラルニーディングディスクとは、複数枚の軸方向に垂直のディスクプレートを90度ずらして軸方向に平行に形成したものである。圧縮の効果は、ピッチが同じであれば、B→A→C→D→Eの順に強くなる。
【0132】
本実施例では、各ゾーンに対応する領域に、たとえば、次に示すスクリューエレメント及びニーディングディスクが配置されたスクリュー6を用いた。
【0133】
脱水ゾーン:BBBAABAAABAACAAABAAAB、
乾燥ゾーン:AAAEAAABAAABEAABAAABAAAB。
【0134】
なお、使用したスクリューエレメントとニーディングディスクを表2に示す。
【0135】

【0136】
なお、押出機2は、No.12のバレルブロックの下流側には、脱水・乾燥後のシリカ含有ゴム組成物をストランド状などの所定形状で押し出すためのダイ8が接続されている。
【0137】
本実施例では、押出機2のスクリュー6を250rpmで回転させた。脱水ゾーンは115℃、乾燥ゾーンは160℃に加熱し実施した。
【0138】
実施例作業前にNipol SBR1502(日本ゼオン社製)を用い運転を行い、押出機2の内部のクリーニングを実施した。ニーディングディスクに同SBRが付着していたが、これを押出機2のクラム吐出口(脱水ゾーンと乾燥ゾーンの境界におけるスクリューとバレル間の空隙)を閉塞するための充填物として用いるべく、そのままにしておいた。
【0139】
このようにしておくことで、押出機2の運転初期から押出機2のクラム吐出口をSBRで一時的に閉塞させ、その結果、押出機2のクラム吐出口側のバレル内圧を通常運転時よりも高い状態を経過させるようにできる。
【0140】
そして以下の実施例作業を行った。上記凝固クラム(A)を、上記押出機2の供給口より投入し、上記条件のもと、脱水、乾燥させた。出口より排出したゴム組成物(A1)の温度は157℃で、含水率は0.6%であった。排出時の形状は直径5mm程度、長さ20mm程度の紐状であった。上記充填物(SBR)の混入が無い部分で次の作業を行った。
【0141】
得られたゴム組成物(A1)を表3に示す配合量になるように、シランカップリング剤(Si69、デグッサ社製)、パラフィンワックス、ステアリン酸、亜鉛華(粒度0.4μm、亜鉛華#1:本荘ケミカル社製)、老化防止剤(ノクラック6C:大内新興社製)を50℃オープンロールで混合し、次いで、バンバリーミキサー(東洋精機製ラボプラストミル型式100CミキサータイプB−250)を用いて2分間混練した。混錬終了時の温度は150℃であった。次いで硫黄及び架橋促進剤(CBS:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドとDPG:ジフェニルグアニジン)とを50℃のオープンロールで混練した後、シート状に取り出した。得られたゴム組成物を160℃で15分プレス加硫して試験片を作製し、各物性を測定した。結果を表4に示す。
【0142】
比較例1
上記凝固クラム(A)を80℃で熱風乾燥させ、ゴム組成物(A2)を含水率0.3%で得た。得られたゴム組成物(A2)を実施例1と同様に表3の配合で試験片を作製し、各物性を測定した。結果を表4に示す。
【0143】

【0144】


【0145】
実施例2
凝固クラムの脱水を行う装置として、スクリュー全長L=890mm、脱水ゾーン482mm、脱水ゾーンでの圧縮比が1.45倍、スリット間隔0,25mmの一軸押出機を用いた。一軸押出し機のスクリューは100rpmで回転させ、出口コーン開度(スクリューに装着したテーパーブッシュとアウターケース出口間隔)を1.5mmとし、脱水ゾーンを36℃に加熱し実施した。
【0146】
なお、実施例作業前に、押出機2の内部に、充填物としてのNipol SBR1502(日本ゼオン社製)を投入して押し出し、該SBRの全てが押出機2の出口コーン部(クラム吐出口)から排出される前に運転を止めた。そして以下の実施例作業を行った。
【0147】
上記凝固クラム(B)を上記押出機供給口より投入し、上記条件のもと、脱水させた。出口より排出したゴム組成物(B1)の温度は74℃で、含水率は10.8%であった。排出時の形状は直径5mm程度、長さ20mm程度の紐状であった。得られたゴム組成物(B1)を熱風乾燥させゴム組成物(B2)を含水率0.3%で得た。上記充填物(SBR)の混入が無い部分で次の作業を行った。
【0148】
得られたゴム組成物(B2)を表5に示す配合量になるように、実施例1と同様に試験片を作製し、各物性を測定した。結果を表6に示す。
【0149】
比較例2
上記凝固クラム(B)を80℃で熱風乾燥させ、ゴム組成物(B3)を含水率0.4%で得た。得られたゴム組成物(B3)を実施例2と同様に表5の配合で試験片を作製し、各物性を測定した。結果を表6に示す。
【0150】


【0151】

【0152】
実施例3
実施例2で用いた一軸押出機を用いて、同様の手法にて上記凝固クラム(C)を脱水させた。出口より排出したゴム組成物(C1)の温度は77℃で、含水率は16.2%であった。排出時の形状は直径5mm程度、長さ20mm程度の紐状であった。得られたゴム組成物(C1)を実施例1で用いた二軸押出し機を用いて乾燥させた。次のようにスクリューエレメント及びニーディングディスクを配置したスクリューを用い、脱水ゾーンでゴム組成物(C1)に負荷をかけないようし、実質的に乾燥操作のみ行うようにした。
【0153】
脱水ゾーン:BBBAABBBBBBAAAABBB
乾燥ゾーン:AAADAAABAAABEAABAAABAAAB
【0154】
押出機のスクリューは250rpmで回転させた。脱水ゾーンは115℃、乾燥ゾーンは145℃に加熱し実施した。実施例1と同様に乾燥を行った。出口より排出したゴム組成物(C2)の温度は148℃で、含水率は0.3%であった。排出時の形状は直径5mm程度、長さ20mm程度の紐状であった。
【0155】
得られたゴム組成物(C2)を表7に示す配合量になるように、実施例1と同様に試験片を作製し、各物性を測定した。結果を表8に示す。
【0156】
比較例3
上記凝固クラム(C)を80℃で熱風乾燥させ、ゴム組成物(C3)を含水率0.4%で得た。得られたゴム組成物(C3)を実施例3と同様に表7の配合で試験片を作製し、各物性を測定した。結果を表8に示す。
【0157】

【0158】

【0159】
実施例4
上記凝固クラム(D)を50℃のオープンロールにて、間隙3mmとし、8回通すことで脱水を行った。得られたシート状のゴム組成物(D1)の含水率は49%であった。得られたゴム組成物(D1)を熱風乾燥させ、ゴム組成物(D2)を含水率0.7%で得た。
【0160】
得られたゴム組成物(D2)を表9に示す配合量になるように、カーボンブラック(シースト7HM、東海カーボン社製)、シランカップリング剤(Si69、デグッサ社製)、パラフィンワックス、ステアリン酸、亜鉛華(粒度0.4μm、亜鉛華#1:本荘ケミカル社製)、老化防止剤(ノクラック6C:大内新興社製)をバンバリーミキサー(東洋精機製ラボプラストミル型式100CミキサータイプB−250)を用いて2分間混練した。混錬終了時の温度は150℃であった。
【0161】
次いで硫黄及び架橋促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドとジフェニルグアニジン)とを50℃のオープンロールで混練した後、シート状に取り出した。得られたゴム組成物を160℃で15分プレス加硫して試験片を作製し、各物性を測定した。結果を表10に示す。
【0162】
比較例4
上記凝固クラム(D)を80℃で熱風乾燥させ、ゴム組成物(D3)を含水率0.6%で得た。得られたゴム組成物(D3)を実施例4と同様に表9の配合で試験片を作製し、各物性を測定した。結果を表10に示す。
【0163】

【0164】

【0165】
比較例5
実施例1の押出機を用いて、同様の手法にて上記凝固クラム(E)を投入した。出口より排出したゴム組成物(E1)の温度は151℃で、含水率は72%であり、その形状はペースト状となった。十分に脱水されなかったことから物性測定を実施しなかった。
【0166】
比較例6
実施例2の一軸押出機を用いて、同様の手法にて上記凝固クラム(E)を投入した。出口より排出したゴム組成物(E1)の温度は34℃で、含水率は79%であり、その形状はペースト状となった。十分に脱水されなかったことから物性測定を実施しなかった。
【0167】
比較例7
実施例4のオープンロールを用いて、同様の手法にて上記凝固クラム(E)を投入し、脱水しようとしたが、2回通した状態で、その形状がペースト状となり、それ以上作業を行うことができなかった。この時点での含水率は79%であり、十分に脱水されなかったことから物性測定を実施しなかった。
【0168】
考察
以上、実施例1〜4より、所定値以下の含水率を持つろ過後凝固クラムを、本発明の圧縮機能を有する脱水装置で脱水して得たシリカ含有ゴム組成物は、tanδ(−10℃)値が大きく、G’(−10℃)値が小さいことから、圧縮機能を有さない脱水方式である比較例に対し、湿潤路面でのグリップ性に優れることが分かる。また、tanδ(60℃)、ΔG’が比較例に対し小さく、シリカ分散性に優れ、低燃費性に優れることが分かる。
【0169】
また、300%モジュラスが大きく、その100%モジュラスとの比が比較例に対し大きくなることから、シリカ分散性に優れ、補強性に優れることが分かる。さらに、乾燥工程へも圧縮機能を有する乾燥装置を用いることで、これらの特性がさらに良好となることが分かる。
【0170】
比較例5〜7では含水率が80%を超える凝固クラム(E)を用いたため、効果的な脱水が行えなかった。これに対し、実施例1〜4では含水率が80%以下の凝固クラム(A)〜(D)を用いたため、脱水の効率が向上し、良好に脱水できた。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明によれば、シリカの分散性が高められたシリカ含有ゴム組成物、該ゴム組成物の架橋成形物、及び該ゴム組成物の製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムラテックスとシリカとの混合物を共凝固して得られるシリカ含有ゴムクラムのスラリーを、ろ過により含水率を80重量%以下とし、次いで圧縮機能を有する脱水装置で脱水した後に、乾燥して成るシリカ含有ゴム組成物。
【請求項2】
さらにカチオン性物質を含有して成る請求項1記載のシリカ含有ゴム組成物。
【請求項3】
前記シリカは、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)の吸着により測定した比表面積が40〜230m/gである請求項1記載のシリカ含有ゴム組成物。
【請求項4】
さらに架橋剤を含有して成る請求項1記載のシリカ含有ゴム組成物。
【請求項5】
請求項4記載のシリカ含有ゴム組成物を架橋成形して成る架橋成形物。
【請求項6】
さらにオルガノポリシロキサンまたはポリエーテル系重合体を含有して成る請求項1記載のシリカ含有ゴム組成物。
【請求項7】
さらにシランカップリング剤を含有して成る請求項1記載のシリカ含有ゴム組成物。
【請求項8】
含水率が5重量%以下である請求項1記載のシリカ含有ゴム組成物。
【請求項9】
ゴムラテックスとシリカの水分散液とを混合し、ゴムラテックスとシリカとの混合物を得る工程(A)、
前記混合物中のゴムをシリカとともに共凝固させ、シリカ含有ゴムクラムのスラリーを得る工程(B)、
前記スラリーをろ過し、含水率が80重量%以下のゴムクラムを得る工程(C)、
前記ろ過したゴムクラムを圧縮機能を有する脱水装置を用いて脱水する工程(D)、及び
前記脱水したゴムクラムを乾燥する工程(E)を含んで成るシリカ含有ゴム組成物の製造方法。
【請求項10】
前記脱水装置として、内部にスクリューが設置されたバレルを有する押出機を用いる請求項9記載のシリカ含有ゴム組成物の製造方法。
【請求項11】
前記押出機のバレルの内圧を通常運転時よりも一時的に高い状態を経過させて、前記ろ過したゴムクラムの脱水を行う請求項10に記載のシリカ含有ゴム組成物の製造方法。
【請求項12】
前記押出機の運転の初期、あるいは途中において、前記押出機のクラム吐出口の一部又は全部を一時的に閉塞させる請求項11に記載のシリカ含有ゴム組成物の製造方法。
【請求項13】
前記押出機内に充填物を充填させてクラム吐出口の一部又は全部を閉塞させる請求項12に記載のシリカ含有ゴム組成物の製造方法。
【請求項14】
前記充填物として、ゴム、樹脂及び氷の少なくともいずれかを含むものを用いる請求項13に記載のシリカ含有ゴム組成物の製造方法。
【請求項15】
前記脱水したゴムクラムの乾燥を減圧操作又は/及び加熱操作により行う請求項9に記載のシリカ含有ゴム組成物の製造方法。
【請求項16】
前記脱水したゴムクラムの乾燥を圧縮操作及び圧力開放操作により行う請求項9に記載のシリカ含有ゴム組成物の製造方法。

【図1】
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【国際公開番号】WO2005/000957
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【発行日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511081(P2005−511081)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009151
【国際出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】