説明

シリカ粒子とその製造方法、及びそれを含む樹脂組成物

【課題】 粒度分布がシャープで、かつ、吸水率が低く、封止用樹脂組成物の充填材として好適に使用することができるシリカ粒子、その製造方法、及び、このシリカ粒子と樹脂とからなる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】50℃−湿度90%及び85℃−湿度85%条件下において500時間での吸水率が1.0%未満であり、D90/D10が3以下であり、真比重が2.1g/cm以上であり、平均粒子径が10μm以下であるシリカ粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ粒子とその製造方法、及びそれを含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子産業の急速な発展にともない、電子材料や半導体の製造に高純度のシリカが使用されるようになった(例えば、特許文献1参照)。特に、樹脂及び充填材としての球状シリカからなる封止用樹脂組成物を、半導体等の封止材として用いる方法が知られている。このような用途においては、電子部品の細密化や精密化に伴い、粗大粒子を含まない粒度分布のシャープなシリカ粒子が求められている。
【0003】
例えば、水−アルコール混合溶媒などの反応溶媒中で、アンモニアなどの塩基性触媒の存在下でアルコキシシランを加水分解し、この加水分解物を重縮合させて球状シリカ粒子を製造する球状シリカ粒子の製造方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。このようなゾル−ゲル法により、粒度分布の狭い球状シリカを製造する方法が検討されている(特許文献3、4、5及び6)。
【0004】
上述の封止用樹脂組成物を固化させると、シリカ粒子が表面に有するシラノール基により吸湿し、これによって樹脂膜が膨張し、クラックが発生するという問題が生じる。さらに吸湿が進むと、封止状態が破壊されて、半導体装置本体への大気の漏洩が発生することになる。また、半導体装置を小型化かつ軽量化するために封止材の厚みを薄くする傾向がある。しかしながら、このような場合、封止材の壁面を通して水分(湿気)が内部に浸透するおそれがある。上述のシリカ粒子は、いずれもこのような問題を解決するものではなかった。
【0005】
上記の問題を解決するため、特許文献7では、水分吸湿量の多い非晶質シリカを使用して樹脂部分のクラックを抑制する方法が開示されている。しかしながら、このような方法では、封止材部分に水分が含まれることに変わりはなく、充分な効果を得ることはできなかった。
【0006】
また、特許文献8には、特定の大きさの細孔を有するシリカ粒子が記載されている。しかし、特許文献8のシリカは、細孔を有するものであることから、高密度なものではない。更に、シランカップリング剤で表面処理するためにシラノール基量をコントロールして、シランカップリング剤を施している。しかしながら、シランカップリング剤の添加量が少ない場合、シランカップリング剤と反応しなかったシラノール基が存在してしまい、このシラノール基が耐湿性を低下させる可能性がある。また、シランカップリング剤の添加量が多いと、反応に使われなかったフリーのシランカップリング剤が樹脂との密着性を阻害したり、樹脂の変色の原因になったりする場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−31311号公報
【特許文献2】特開昭63−265806号公報
【特許文献3】特開2003−277044号公報
【特許文献4】特開2008―285406号公報
【特許文献5】特開2003−277025号公報
【特許文献6】特開2003−165718号公報
【特許文献7】特開平9−208809号公報
【特許文献8】特開2002−338230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記に鑑み、粒度分布がシャープで、かつ、吸水率が低く、封止用樹脂組成物の充填材として好適に使用することができるシリカ粒子、その製造方法、及び、上記シリカ粒子と樹脂を含有する樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、50℃−湿度90%及び85℃−湿度85%条件下において500時間での吸水率が1.0%未満であり、D90/D10が3以下であり、真比重が2.1g/cm以上であり、平均粒子径が10μm以下であることを特徴とするシリカ粒子である。
上記シリカ粒子は、シランカップリング剤及び/又はシラン化合物により表面処理されたものであることが好ましい。
【0010】
本発明は、テトラエトキシシラン及び/又はその誘導体の加水分解反応によりシリカ粒子を得る工程(1)、及び、上記工程(1)によって得られたシリカ粒子を900〜1050℃で焼成する工程(2)を有する上述したシリカ粒子の製造方法でもある。
【0011】
上記焼成は、焼成温度950〜1050℃で行うことが好ましい。
上記シリカ粒子の製造方法においては、更に、シランカップリング剤及び/又はシラン化合物により表面処理を行うものであることが好ましい。
上記表面処理は、噴霧乾燥により行うものであることが好ましい。
本発明は、上記シリカ粒子及び樹脂を含有することを特徴とする樹脂組成物でもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシリカ粒子は、粒度分布がシャープであり(すなわち、粒子径が極端に大きい粗大粒子の量が少ない)、かつ、幅広い温度範囲において経時での吸水率が従来のシリカ粒子よりも格段に低いものであることを特徴とするものである。このような物性により、半導体等の封止用充填材等の用途において必要とされる、優れた充填性、耐湿性、寸法安定性等を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のシリカ粒子は、50℃−湿度90%及び85℃−湿度85%のいずれの条件下においても500時間保持後の吸水率が1.0%未満である。上記シリカ粒子は公知ではなく、本発明者らによって初めて製造されたものである。従来のシリカ粒子は、上記条件における吸水率が、2〜5%程度であるため、本発明のシリカ粒子の吸水率は、非常に低いものであるといえる。上記吸水率は、0.5%未満であることが好ましく、下限は特に限定されないが、0.01%以上であることが好ましい。なお、本発明において、上記吸水率は、以下の方法により測定される。まず、300ccビーカーにシリカ粉末10gを秤量し、吸湿前の重量を測定する。シリカ粉末が入ったビーカーを恒温恒湿機に入れ、500時間後の吸湿した重量を測定する。上記吸水率の算出方法は式(1)で示される。
吸水率(%)=(吸湿後の重量−吸湿前の重量)/(吸湿前の重量)×100 (1)
例えば、上記吸水率を測定する際の温度及び湿度の管理は、恒温恒湿機(エスペック株式会社製 LH−113)等を用いて行うことができる。
【0014】
本発明のシリカ粒子は、D90/D10が3以下である。粉体の粒子径の分布を測定した場合に、小さい側が10%となる粒子径をD10,小さい側が90%となる粒子径をD90という。本発明のシリカ粒子はD90/D10が3以下であることから、その粒度分布がシャープであることを特徴とするものである。このように粒度分布がシャープな粒子であると、充填率を制御することが容易になる点で好ましい。上記D90/D10は、2.9以下であることがより好ましい。D10及びD90はそれぞれ、粒子径の分布を測定することによって得られる値であるが、本発明において、粒子径の分布はレーザー回折粒度分布測定装置(日機装株式会社製マイクロトラック MT 3300 EX)によって測定された値である。
【0015】
本発明のシリカ粒子は、真比重が2.1g/cm以上である。真比重は、粒子表面、および内部の間隙や細孔が多いほど小さくなるものである。本発明のシリカ粒子は、真比重が通常のシリカ粒子よりも大きく、細孔が少なく、表面のSi−OH基が少ない粒子である。Si−OH基は高親水性の官能基であるから、Si−OH基量を低減させると親水性が低下し、これによって吸水性が低下する。真比重が2.1g/cm以上であるシリカは、細孔が少なく、高密度の網目構造が形成されているからSi−OH基の量が少ない。このため、親水性が低下して吸水性が低いシリカ粒子となるのである。
【0016】
上記真比重は、2.10g/cm以上が好ましく、2.15g/cm以上がより好ましい。真比重の上限は、特に限定されないが、2.20g/cmであることが好ましい。上記真比重が2.1g/cm未満であると、充分に吸水性が抑制できない。真比重は、ベックマン空気比較式比重計により測定することができる。
【0017】
本発明のシリカ粒子は、平均粒子径が10μm以下である。平均粒子径が10μmを超える粒子を封止材に使用すると、封止材の厚みを薄くすることができず、半導体装置を小型化かつ軽量化することが難しくなるため好ましくない。上記平均粒子径は、8μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。上記平均粒子径の下限は特に限定されるものではないが、0.01μmであることが好ましく、0.03μmであることが更に好ましい。本発明において、上記シリカ粒子の平均粒子径は、レーザー回折粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0018】
本発明のシリカ粒子の粒子形状は特に限定されず、針状、棒状、板状、球状等を挙げることができるが、球状に近い形状であることが好ましい。なお粒子の形状は走査型電子顕微鏡(日本電子製JSM−7000f)によって観察することができる。
【0019】
上記シリカ粒子は、更に、シランカップリング剤及び/又はシラン化合物により表面処理されたものであることが好ましい。このような表面処理を行うことにより、樹脂との親和性を高めることができ、樹脂物性の向上、樹脂に配合した場合の成型加工性も向上させることができる。
【0020】
上記シランカップリング剤及び/又はシラン化合物としては特に限定されないが、一般式(I)
−Si−(OR)4−m (I)
(式中、Xは反応性有機官能基を有する有機基を示し、Rは炭素原子数1〜5のアルキル基を示し、mは0〜3の整数を示す。)
で表されるものが好ましく用いられる。上記有機基における反応性有機官能基としては、例えば、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、塩素原子、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等を挙げることができ、従って、このような反応性有機官能基を有する有機基Xとしては、例えば、ビニル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−アミノプロピル基、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピル基、N−フェニル−3−アミノプロピル基、γ−メルカプトプロピル基、3−クロロプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基等を挙げることができ、また、アルキル基Rとして、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、メトキシエトキシル基等を挙げることができる。
【0021】
従って、本発明によれば、このようなシランカップリング剤の好ましい具体例として、例えば、テトラエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0022】
上述のシリカ粒子の製造方法としては特に限定されないが、例えば、テトラエトキシシラン及び/又はその誘導体の加水分解反応によりシリカ粒子を得る工程(1)、及び、上記工程(1)によって得られたシリカ粒子を900〜1050℃で焼成する工程を有する製造方法によって得ることができる。このような製造方法も本発明の一つである。
【0023】
本発明のシリカ粒子の製造方法は、テトラエトキシシラン及び/又はその誘導体を原料として使用し、加水分解により得られたシリカ粒子を焼成温度900〜1050℃で焼成することを特徴とするものである。原因は不明であるが、テトラエトキシシラン及び/又はその誘導体を原料として使用した場合、その他のシラン化合物(例えば、テトラメトキシシラン等)を原料として使用した場合よりも粒度分布がシャープなシリカ粒子を得ることができる。
【0024】
上記テトラエトキシシランの誘導体としては特に限定されず、例えば、テトラエトキシシランを部分的に加水分解して得られる低縮合物等を挙げることができる。上記粒度分布に影響を与えない範囲でその他のシラン化合物を併用することもできる。
【0025】
上記加水分解は、通常のゾル−ゲル法で使用される加水分解反応の条件によって行うことができる。すなわち、原料であるテトラエトキシシラン及び/又はその誘導体を水を含む有機溶媒中で加水分解、縮合して得ることができる。
【0026】
上記有機溶媒としては特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、イソオクタン、シクロヘキサン等のパラフィン類、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、ベンゼン、トルエン等の芳香族化合物等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、一種又は二種以上を混合して使用することもできる。本発明においては、アルコール類を用いることが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノールを使用することがより好ましい。
【0027】
用いられる有機溶媒の量は特に限定されないが、使用される原料1モル当たり、0.1〜50モルであることが好ましい。0.1モル未満の場合、原料との相溶性が失われるおそれがある。また、50モルを超えて使用すると、製造効率が極めて低くなる場合があるため好ましくない。また水の量は特に限定されないが、使用される原料1モル当り、0.5〜15モルであることが好ましい。ここで、使用される水の量は、形成されるシリカ微粒子の粒子径に影響を与える。水の量が相対的に増加すれば、シリカ微粒子の粒子径を小さくすることができ、水の量が相対的に低下すれば、シリカ微粒子の粒子径を大きくすることができる。従って、水と有機溶媒の比によりシリカ微粒子の粒子径を任意に調整することができる。
【0028】
また、有機溶媒には、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の触媒を配合することができる。触媒を使用する場合、その量は特に限定されないが、用いられる原料1モル当り、0.05〜10モルであることが好ましい。
【0029】
上記工程(1)は、本発明の高密度のシリカ粒子を得るためには、均一溶媒系の溶液中で行うことがより好ましい。すなわち、水と任意の割合で混合させることができ、かつ、原料となるシラン化合物を溶解することができる溶媒と水の混合溶液中での反応が好ましい。上記溶媒と水の混合溶液中で反応を行うことによって、高密度のシリカを得やすい点で好ましい。上記水と任意の割合で混合させることができ、かつ、原料となるシラン化合物を溶解することができる溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類を挙げることができる。
【0030】
水を含む有機溶媒中で原料を加水分解,縮合するには、原料を有機溶媒に添加して、0〜100℃、好ましくは0〜70℃の条件で撹拌すればよい。このように、水を含む有機溶媒中で原料を撹拌して加水分解,縮合することにより、球状シリカを含むスラリーを得ることができる。
【0031】
通常、シリカ粒子の焼成は、焼成温度200〜700℃程度の低温で行われる。これは、高温で焼成するとシリカ表面に存在するシラノール基が結合し、凝集体が形成されてしまうことに由来する。本発明は、通常、200〜700℃程度であった焼成温度をあえて高温に設定することで、上記シラノール基量を低減させ、細孔も低減させ、低い吸水率を示すシリカ粒子を得ることができるものである。また、なかでも、テトラエトキシシラン及び/又はその誘導体を原料として使用することにより、効率的に本願の効果が得られることを見出したものである。
【0032】
上記焼成温度は、900〜1050℃である。900℃未満であると、吸水率を充分に下げることができない。また、1050℃を超えると、粒子間での融着によって凝集体が形成され、粒度分布がシャープなシリカ粒子を得ることが困難となる。上記焼成温度としては、950〜1050℃であることがより好ましい。また、上記焼成は、10分〜10時間程度行うことが好ましい。焼成時間が10分未満であると、焼成が不充分であるおそれがあるため好ましくない。
【0033】
上記方法によって製造されたシリカ粒子は、その粒度分布においてシャープなものとなるが、更にシャープなものを得る必要がある場合や、低い割合で含まれている粗大粒子を除去するために、粉砕・篩による分級を行うものであってもよい。粉砕方法は特に限定されず、例えば、アトマイザー等を挙げることができる。また篩による分級方法としては、湿式分級、乾式分級を挙げることができる。
【0034】
本発明のシリカ粒子の製造方法は、更に、シランカップリング剤及び/又はシラン化合物により表面処理を行うものであることが好ましい。上記表面処理を行うことにより、シリカ粒子表面に存在するシラノール基量を低減することができるため、更にシリカ粒子の吸水率を下げることができる。上記シランカップリング剤及び/又はシラン化合物としては特に限定されず、上述のものを挙げることができる。
【0035】
上記表面処理の方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができるが、なかでも噴霧乾燥を行うことが好ましい。本発明のシリカ粒子は、上述のように、表面に存在するシラノール基量を低減させたものであるため、シランカップリング剤との反応性が低いものである。しかしながら、噴霧乾燥により表面処理を行い、その後、焼付け(乾燥工程)によって、好適にシランカップリング剤を付着させることができる。上記噴霧乾燥の方法としては、スプレードライヤーを使用し、出口温度は90℃〜100℃になるようチャージ量をコントロールする。
【0036】
上記シリカ粒子は、樹脂の添加剤として使用することができる。上記シリカ粒子及び樹脂を含有する樹脂組成物も本発明の一つである。この場合、使用する樹脂としては特に限定されず、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよく、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、ポリメタクリル酸メチル、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、液晶樹脂(LCP)、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は二種以上を併用してもよい。特に、上記シリカ粒子及びエポキシ樹脂を含有する樹脂組成物は、封止材組成物として好適に使用することができる。
【0037】
上記樹脂組成物は、上記シリカ粒子と光硬化性樹脂とを含有するものであってもよい。上記光硬化性樹脂としては、2以上のアクリレート基、メタクリレート基を有する化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、アミノ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートを指すものである。
【0038】
上記樹脂組成物において、シリカ粒子の配合量は特に限定されず、用途によって任意に調節することができる。具体的には、封止用樹脂組成物とする場合、樹脂100質量部に対して10〜950質量部であることが好ましく、100〜900質量部であることがより好ましい。
【0039】
上記樹脂組成物においては、粒子径が異なる2種類の本発明のシリカ粒子を混合して使用するものであってもよい。より具体的には、粒子径が大きい粗粒のシリカ粒子と、平均粒子径が当該大きいシリカ粒子の平均粒子径の1/3〜1/40である微粒のシリカ粒子とを組み合わせて使用するものであってもよい。粗粒と微粒の混合割合は体積で、粗粒90〜40%:微粒10〜60%の範囲であることが好ましい。より好ましくは粗粒80〜60%:微粒20〜40%の範囲である。粗粒と微粒の混合割合を上述した範囲内のものとすることによって、細密充填に近い充填構造とすることができ、粒子の充填率を高くすることができるため好ましい。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、充填材として含まれるシリカ粒子が上述の性能を有するものであるため、耐湿性、加工性、寸法安定性等に優れたものである。上記樹脂組成物の用途としては特に限定されず、例えば、半導体、電子部品等の封止用樹脂組成物、接着剤、トナー外添剤等を挙げることができる。これらの用途に使用する場合は、用途に応じて上記シリカ粒子及び樹脂以外の添加剤を添加してもよい。
また、本発明のシリカ粒子は、液状封止材、液晶封止剤、シール剤、ポリイミドフィルム、スパッタリングターゲット、CMPスラリー(研磨剤)、歯科材料、食品添加剤、化粧品等に使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】シリカ粒子の真比重と吸水率との相関関係を示す図である。
【図2】実施例25、26及び27で得られたシリカ粒子の動的粘弾性を測定した結果を示す図である。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。また実施例中、「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
【0043】
以下において、得られたシリカ粒子の粒度分布は、レーザー回折粒度分布測定装置(日機装株式会社製マイクロトラック MT 3300 EX)で測定した。粒子の観察は走査型電子顕微鏡(日本電子製JSM−7000f)を用いた。平均粒子径は、レーザー回折粒度分布測定装置(日機装株式会社製マイクロトラック MT 3300 EX)によって測定された値である。また、真比重は、ベックマン空気比較式比重計930型で測定した。
【0044】
(実施例1)
攪拌機を備えた2Lの反応容器を恒温槽にセットし、エタノール205g、水246g、及び25wt%アンモニア水232gを入れ、攪拌機で混合しながら50℃に加温した。次いでこの混合液を攪拌しながら、テトラエトキシシラン267gを200分で連続的に添加した。添加後、溶液をろ過し、シリカ粒子を得た。その後、130℃で一晩乾燥し、次いで1000℃焼成を行った。焼成条件は1000℃まで10時間で昇温し、5時間維持、その後降温した。得られたシリカ粒子は球状で、平均粒子径は0.05μmであった。D90/D10の値は1.7であった。
【0045】
(実施例2)
攪拌機を備えた2Lの反応容器を恒温槽にセットし、エタノール102g、水184g、及び25wt%アンモニア水204gを入れ、攪拌機で混合しながら33℃に加温した。次いでこの混合液を攪拌しながら、テトラエトキシシラン421gを45分で連続的に添加した。添加後、溶液をろ過し、シリカ粒子を得た。その後、130℃で一晩乾燥し、次いで1000℃焼成を行った。焼成条件は1000℃まで10時間で昇温し、5時間維持、その後降温した。得られたシリカ粒子は球状で、平均粒子径は0.1μmであった。D90/D10の値は1.9であった。
【0046】
(実施例3)
攪拌機を備えた2Lの反応容器を恒温槽にセットし、エタノール85.5g、水184g、及び25wt%アンモニア水204gを入れ、攪拌機で混合しながら25℃に加温した。次いでこの混合液を攪拌しながら、テトラエトキシシラン421gを45分で連続的に添加した。添加後、溶液をろ過し、シリカ粒子を得た。その後、130℃で一晩乾燥し、次いで1000℃焼成を行った。焼成条件は1000℃まで10時間で昇温し、5時間維持、その後降温した。得られたシリカ粒子は球状で、平均粒子径は0.4μmであった。D90/D10の値は1.8であった。
【0047】
(実施例4)
攪拌機を備えた2Lの反応容器を恒温槽にセットし、エタノール171g、水184g、及び25wt%アンモニア水204gを入れ、攪拌機で混合しながら25℃に加温した。次いでこの混合液を攪拌しながら、テトラエトキシシラン421gを45分で連続的に添加した。添加後、溶液をろ過し、シリカ粒子を得た。その後、130℃で一晩乾燥し、次いで1000℃焼成を行った。焼成条件は1000℃まで10時間で昇温し、5時間維持、その後降温した。得られたシリカ粒子は球状で、平均粒子径は0.7μmであった。D90/D10の値は1.7であった。
【0048】
(実施例5)
攪拌機を備えた2Lの反応容器を恒温槽にセットし、エタノール342g、水184g、及び25wt%アンモニア水204gを入れ、攪拌機で混合しながら25℃に加温した。次いでこの混合液を攪拌しながら、テトラエトキシシラン421gを45分で連続的に添加した。添加後、溶液をろ過し、シリカ粒子を得た。その後、130℃で一晩乾燥し、次いで1000℃焼成を行った。焼成条件は1000℃まで10時間で昇温し、5時間維持、その後降温した。得られたシリカ粒子は球状で、平均粒子径は1.5μmであった。D90/D10の値は1.7であった。
【0049】
(実施例6〜10)
焼成温度を900℃に変更したこと以外は、実施例1〜5と同様にしてシリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子は、いずれも球状で、平均粒子径はそれぞれ0.05、0.1、0.4、0.7、及び1.5μmであった。D90/D10の値は、それぞれ1.7、1.9、1.8、1.7及び1.7であった。
【0050】
(実施例11〜15)
焼成温度を950℃に変更したこと以外は、実施例1〜5と同様にしてシリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子は、いずれも球状で、平均粒子径はそれぞれ0.05、0.1、0.4、0.7、及び1.5μmであった。D90/D10の値は、それぞれ1.7、1.9、1.8、1.7及び1.7であった。
【0051】
(実施例16〜20)
焼成温度を1050℃に変更したこと以外は、実施例1〜5と同様にしてシリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子は、いずれも球状で、平均粒子径はそれぞれ0.05、0.1、0.4、0.7、及び1.5μmであった。D90/D10の値は、それぞれ1.7、1.9、1.8、1.7及び1.7であった。
【0052】
(比較例1〜5)
焼成温度を700℃に変更したこと以外は、実施例1〜5と同様にしてシリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子は、いずれも球状で、平均粒子径はそれぞれ0.05、0.1、0.4、0.7、及び1.5μmであった。D90/D10の値は、それぞれ1.7、1.9、1.8、1.7及び1.7であった。
【0053】
(比較例6〜10)
焼成温度を750℃に変更したこと以外は、実施例1〜5と同様にしてシリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子は、いずれも球状で、平均粒子径はそれぞれ0.05、0.1、0.4、0.7、及び1.5μmであった。D90/D10の値は、それぞれ1.7、1.9、1.8、1.7及び1.7であった。
【0054】
(比較例11〜15)
焼成温度を800℃に変更したこと以外は、実施例1〜5と同様にしてシリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子は、いずれも球状で、平均粒子径はそれぞれ0.05、0.1、0.4、0.7、及び1.5μmであった。D90/D10の値は、それぞれ1.7、1.9、1.8、1.7及び1.7であった。
【0055】
(比較例16〜20)
焼成温度を850℃に変更したこと以外は、実施例1〜5と同様にしてシリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子は、いずれも球状で、平均粒子径はそれぞれ0.05、0.1、0.4、0.7、及び1.5μmであった。D90/D10の値は、それぞれ1.7、1.9、1.8、1.7及び1.7であった。
【0056】
(吸水率1)
得られたシリカ粒子10gを300mLのビーカーに入れ、50℃で湿度90%条件下の恒温恒湿機(エスペック株式会社製 LH−113)を用いて500時間保持後における吸水率を測定した。
【0057】
(吸水率2)
85℃で湿度85%条件下に変更したこと以外は、吸水率測定1と同様にして吸水率を測定した。
【0058】
次に、各焼成温度におけるシリカ粒子の比重をベックマン空気比較式比重計930型で測定した。得られたシリカ粒子の真比重を表1に示す。また、50℃−湿度90%条件下での各粒子の吸水率を表2に示す。85℃−湿度85%条件下での各粒子の吸水率を表3に示す。更に、平均粒子径0.4μmの粒子についての真比重と吸水率との関係を図1に示した。表2及び3より、本願のシリカ粒子は低い吸水率を示すことが分かった。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
以上の結果より、真比重と吸水率は相関性があることが示された。また、平均粒子径が0.4μmのシリカ粒子に関して、真比重が2.1g/cmを超えるシリカ粒子は吸水率が1.0%未満であり、耐湿性に優れたシリカ粒子を実現できる
【0063】
(実施例21)
実施例2のシリカ粉末を400g/Lでリパルプし、サンドミルで湿式粉砕を行う。その後、あらかじめ室温で加水分解させたカップリング剤KBM−403(信越シリコーン株式会社製)を上述したスラリーに添加し、60℃で2時間混合する。このスラリーをL−12型スプレードライヤー(大川原化工機株式会社製)で噴霧乾燥を行う。この時、出口温度は90℃〜100℃になるようチャージ量をコントロールする。得られたシリカ粉末を乾燥機で130℃で乾燥させシリカ粒子にKBM−403を添着させた。
【0064】
(実施例22)
実施例4のシリカ粉末を400g/Lでリパルプし、サンドミルで湿式粉砕を行う。その後、あらかじめ室温で加水分解させたカップリング剤KBM−403(信越シリコーン株式会社製)を上述したスラリーに添加し、60℃で2時間混合する。このスラリーをL−12型スプレードライヤー(大川原化工機株式会社製)で噴霧乾燥を行う。この時、出口温度は90℃〜100℃になるようチャージ量をコントロールする。得られたシリカ粉末を乾燥機で130℃で乾燥させシリカ粒子にKBM−403を添着させた。
【0065】
(実施例23)
シランカップリング剤をアルコキシシランであるヘキサメチルジシラザン(HMDS)(信越シリコーン株式会社製)に変更したこと以外は実施例21と同様にしてシリカ粒子の表面処理を行った。
【0066】
(実施例24)
シランカップリング剤をアルコキシシランであるヘキサメチルジシラザン(HMDS)(信越シリコーン株式会社製)に変更したこと以外は実施例22と同様にしてシリカ粒子の表面処理を行った。
【0067】
(表面処理効果例)
(実施例25)
実施例2の0.1μmのシリカ粒子と実施例4の0.7μmのシリカ粒子とをそれぞれ3:7(質量比)で混合し、これをEEA樹脂100質量部に対して232質量部の割合で混合した樹脂組成物を調製した。このようにして得られた樹脂組成物を2mm四方の試験片にした。
【0068】
(実施例26)
実施例21の0.1μmのシリカ粒子と実施例22の0.7μmのシリカ粒子とをそれぞれ3:7(質量比)で混合し、これをEEA樹脂100質量部に対して232質量部の割合で混合した樹脂組成物を調製した。このようにして得られた樹脂組成物を2mm四方の試験片にした。
【0069】
(実施例27)
実施例23の0.1μmのシリカ粒子と実施例24の0.7μmのシリカ粒子とをそれぞれ3:7(質量比)で混合し、これをEEA樹脂100質量部に対して232質量部の割合で混合した樹脂組成物を調製した。このようにして得られた樹脂組成物を2mm四方の試験片にした。
【0070】
(表面処理効果)
実施例25〜27記載の試験片について、キャピラリーレオメータ(型名1D、株式会社 東洋精機製作所製)により、動的粘弾性を測定した(測定条件 190℃、2.0mmのキャピラリー径使用)。使用方法はJIS規格 K 7199に準じた。
結果を図2に示す。シランカップリング剤やシラン化合物により表面処理を行うことで粘度が低減でき、成型加工性も向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明により、粒度分布がシャープで従来よりも低い吸水率を有するシリカ粒子を得ることができる。このようなシリカ粒子は、電子部品等の封止用樹脂組成物、接着剤、トナー外添剤等の分野において好適に使用することができる。
また、本発明のシリカ粒子は、液状封止材、液晶封止剤、シール剤、ポリイミドフィルム、スパッタリングターゲット、CMPスラリー(研磨剤)、歯科材料、食品添加剤、化粧品等に使用することもできる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
50℃−湿度90%及び85℃−湿度85%条件下において500時間での吸水率が1.0%未満であり、D90/D10が3以下であり、真比重が2.1g/cm以上であり、平均粒子径が10μm以下であることを特徴とするシリカ粒子。
【請求項2】
シランカップリング剤及び/又はシラン化合物により表面処理された請求項1記載のシリカ粒子。
【請求項3】
テトラエトキシシラン及び/又はその誘導体の加水分解反応によりシリカ粒子を得る工程(1)、及び、
前記工程(1)によって得られたシリカ粒子を900〜1050℃で焼成する工程(2)を有することを特徴とする請求項1記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項4】
焼成は、焼成温度950〜1050℃で行うものである請求項3記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項5】
更に、シランカップリング剤及び/又はシラン化合物により表面処理を行うものである請求項3又は4記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項6】
表面処理は、噴霧乾燥により行うものである請求項5記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2記載のシリカ粒子及び樹脂を含有することを特徴とする樹脂組成物。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−173779(P2011−173779A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178811(P2010−178811)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000174541)堺化学工業株式会社 (96)
【Fターム(参考)】